(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
シリンダボアを有する内燃機関のシリンダブロックの溝状冷却水流路に設置され、全シリンダボアのボア壁の全部又は全シリンダボアのボア壁のうちの一部を保温するための保温具であり、
上から見たときに円弧形状を有し、該溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面を保温するための各ボア壁保温部と、合成樹脂製であり、該保温具の設置位置の該溝状冷却水流路の形状に沿う形状を有し、該各ボア壁保温部が固定される支持部と、を有し、
該各ボア壁保温部は、該溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面に接触し、該溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面を覆うためのゴム部材と、該ゴム部材の背面側に設けられ、該ゴム部材全体を背面側から該溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面に向かって押し付けるための背面押し付け部材と、該溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面に向かって、該背面押し付け部材が該ゴム部材を押し付けるように付勢する弾性部材と、を有し、
前記各ボア壁保温部の背面側に前記支持部が配置され、
該各ボア壁保温部は、円弧方向の中央又は中央近傍のみが、該支持部に固定されるとともに、
前記各ボア壁保温部に設けられた弾性部材が、前記支持部に設けられた開口を通り抜けて張り出していること、
を特徴とするシリンダボア壁の保温具。
前記シリンダボア壁の保温具が、全シリンダボアのボア壁のうちの片側半分のボア壁の保温用の保温具であることを特徴とする請求項1又は2いずれか1項記載のシリンダボア壁の保温具。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のシリンダボア壁の保温具及び本発明の内燃機関について、
図1〜
図15を参照して説明する。
図1〜
図4は、本発明のシリンダボア壁の保温具が設置されるシリンダブロックの形態例を示すものであり、
図1及び
図4は、本発明のシリンダボア壁の保温具が設置されるシリンダブロックを示す模式的な平面図であり、
図2は、
図1のx−x線断面図であり、
図3は、
図1に示すシリンダブロックの斜視図である。
図5は、本発明のシリンダボア壁の保温具の形態例を示す模式的な斜視図である。
図6は、
図5中の保温具36aを上から見た図である。なお、
図6では、保温具36aに固定されている各ボア壁保温部35のうち、右端の保温部については、構成部材毎に分離して示した。
図7は、
図5中の保温具36aを横から見た図であり、ゴム部材31の接触面側から見た図である。
図8は、
図5中の保温具36aを横から見た図であり、背面側から見た図である。
図9は、
図5中の支持部34aに固定されている各ボア壁保温部35の1つ分を拡大した図であり、各ボア壁保温部35及び支持部34aを上から見た図である。
図10は、
図9のX−X線及びY−Y線の端面図である。
図11は、
図5中の各ボア壁保温部35を作製する様子を示す図である。
図12は、支持部34aに固定される前の各ボア壁保温部35を示す斜視図である。
図13は、各ボア壁保温部35を支持部34aに固定する様子を示す図である。
図14は、金属バネ付設部材33を作製する様子を示す図である。
図15は、
図1に示すシリンダブロック11に、シリンダボア壁の保温具36aを設置する様子を示す模式図である。
【0018】
図1〜
図3に示すように、シリンダボア壁の保温具が設置される車両搭載用内燃機関のオープンデッキ型のシリンダブロック11には、ピストンが上下するためのボア12、及び冷却水を流すための溝状冷却水流路14が形成されている。そして、ボア12と溝状冷却水流路14とを区切る壁が、シリンダボア壁13である。また、シリンダブロック11には、溝状冷却水流路11へ冷却水を供給するための冷却水供給口15及び冷却水を溝状冷却水流路11から排出するための冷却水排出口16が形成されている。
【0019】
このシリンダブロック11には、2つ以上のボア12が直列に並ぶように形成されている。そのため、ボア12には、1つのボアに隣り合っている端ボア12a1、12a2と、2つのボアに挟まれている中間ボア12b1、12b2とがある(なお、シリンダブロックのボアの数が2つの場合は、端ボアのみである。)。直列に並んだボアのうち、端ボア12a1、12a2は両端のボアであり、また、中間ボア12b1、12b2は、一端の端ボア12a1と他端の端ボア12a2の間にあるボアである。端ボア12a1と中間ボア12b1の間の壁、中間ボア12b1と中間ボア12b2の間の壁及び中間ボア12b2と端ボア12a2の間の壁(ボア間壁191)は、2つのボアに挟まれる部分なので、2つのシリンダボアから熱が伝わるため、他の壁に比べ壁温が高くなる。そのため、溝状冷却水流路14のシリンダボア側の壁面17では、ボア間壁191の近傍が、温度が最も高くなるので、溝状冷却水流路14のシリンダボア側の壁面17のうち、各シリンダボアのボア壁の境界192及びその近傍の温度が最も高くなる。
【0020】
また、本発明では、溝状冷却水流路14の壁面のうち、シリンダボア13側の壁面を、溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面17と記載し、溝状冷却水流路14の壁面のうち、溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面17とは反対側の壁面を壁面18と記載する。
【0021】
また、本発明において、片側半分とは、シリンダブロックをシリンダボアが並んでいる方向で垂直に二分割したときの片側の半分を指す。よって、本発明において、全シリンダボアのボア壁のうちの片側半分のボア壁とは、全シリンダボア壁をシリンダボアが並んでいる方向で垂直に二分割したときの片側の半分のボア壁を指す。例えば、
図4では、シリンダボアが並んでいる方向がZ−Z方向であり、このZ−Z線で垂直に二分割したときの片側半分のボア壁のそれぞれが、全シリンダボアのボア壁のうちの片側半分のボア壁である。つまり、
図4では、Z−Z線より20a側の片側半分のボア壁が、全シリンダボアのボア壁のうちの一方の片側半分のボア壁21aであり、Z−Z線より20b側の片側半分のボア壁が、全シリンダボアのボア壁のうちの他方の片側半分のボア壁21bである。また、全シリンダボア壁のうちの片側とは、片側半分のボア壁21a又は片側半分のボア壁21bのいずれかを指し、片側の一部とは、片側半分のボア壁21aの一部又は片側半分のボア壁21bの一部を指す。
【0022】
また、本発明において、各シリンダボアのボア壁とは、1つ1つのシリンダボアに対応する各ボア壁部分を指し、
図4では、両矢印22a1で示す範囲が、シリンダボア12a1のボア壁23a1であり、両矢印22b1で示す範囲が、シリンダボア12b1のボア壁23b1であり、両矢印22b2で示す範囲が、シリンダボア12b2のボア壁23b2であり、両矢印22a2で示す範囲が、シリンダボア12a2のボア壁23a2であり、両矢印22b3で示す範囲が、シリンダボア12b1のボア壁23b3であり、両矢印22b4で示す範囲が、シリンダボア12b2のボア壁23b4である。つまり、シリンダボア12a1のボア壁23a1、シリンダボア12b1のボア壁23b1、シリンダボア12b2のボア壁23b2、シリンダボア12a2のボア壁23a2、シリンダボア12b1のボア壁23b3及びシリンダボア12b2のボア壁23b4が、それぞれ、各シリンダボアのボア壁である。
【0023】
図5に示すシリンダボア壁の保温具36aは、
図4中、一方の片側半分(20a側)のボア壁21aを保温するための保温具であり、また、シリンダボア壁の保温具36bは、
図4中、他方の片側半分(20b側)のボア壁21bを保温するための保温具である。シリンダボア壁の保温具36aとシリンダボア壁の保温具36bとでは、シリンダボア壁の保温具36aには、冷却水流れ仕切り部材38が付設されていないのに対して、シリンダボア壁の保温具36bには、冷却水流れ仕切り部材38が付設されている点で異なるが、他は同様である。冷却水流れ仕切り部材38は、
図4に示すシリンダブロック11では、冷却水供給口15から溝状冷却水流路14へ供給された冷却水が、直ぐに近傍にある冷却水排出口16から排出されることなく、先ず、20b側の片側半分の溝状冷却水流路14を、冷却水供給口15の位置とは反対側の端に向かって流れ、20b側の片側半分の溝状冷却水流路14の冷却水供給口15の位置とは反対側の端まで来ると、20a側の片側半分の溝状冷却水流路14に回り、次いで、20a側の片側半分の溝状冷却水流路14を、冷却水排出口16に向かって流れ、最後に、冷却水排出口16から排出されるように、冷却水の供給口15と排出口16との間を仕切るための部材である。また、
図4には、20a側の片側半分の溝状冷却水流路14を端まで流れた冷却水が、シリンダブロック11の横側に形成されている冷却水排出口16から排出される形態のシリンダブロックを記載したが、他には、例えば、20a側の片側半分の溝状冷却水流路14を一方の端から他方の端まで流れた冷却水が、シリンダブロックの横側から排出されるのではなく、シリンダヘッドに形成されている冷却水流路に流れ込む形態のシリンダブロックがある。
【0024】
シリンダボア壁の保温具36aは、4つの各ボア壁保温部35と、各ボア壁保温部35が固定される支持部34aと、を有する。つまり、シリンダボア壁の保温具36aでは、支持部34aの4か所に、各ボア壁保温部35が固定されている。同様に、シリンダボア壁の保温具36bは、4つの各ボア壁保温部35と、各ボア壁保温部35が固定される支持部34bと、を有する。そして、シリンダボア壁の保温具36a及びシリンダボア壁の保温具36bでは、各ボア壁保温部35は、保温部35の折り曲げ部37が折り曲げられて、支持部34a又は支持部34bの上下端部を、折り曲げ部37が挟み込むことにより、支持部34a又は支持部34bに、各ボア壁保温部35が固定されている。
【0025】
図5〜
図8に示すように、シリンダボア壁の保温具36aは、
図4に示すシリンダブロック11の片側半分のボア壁21aを保温するための保温具であり、シリンダブロック11の片側半分のボア壁21aには、シリンダボア12a1のボア壁23a1、シリンダボア12b1のボア壁23b1、シリンダボア12b2のボア壁23b2及びシリンダボア12a2のボア壁23a2と、4つの各シリンダボアのボア壁がある。そして、シリンダボア壁の保温具36aでは、この4つの各シリンダボアのボア壁を保温するために各ボア壁保温部35が設けられる。そのため、シリンダボア壁の保温具36aには、4つの各ボア壁保温部35が設けられている。
【0026】
シリンダボア壁の保温具36aでは、シリンダボア壁側に、ゴム部材31の接触面26が向き、ゴム部材31の接触面26が、溝状冷却水流路14のシリンダボア側の壁面17に接触できるように、各ボア壁保温部35が固定されている。また、シリンダボア壁の保温部36aの背面側では、各ボア壁保温部35に付設されている金属板バネ39が、支持部34の開口42を通って、ゴム部材31とは反対側に向けて張り出している。そして、金属板バネの39の張り出した先端27が、溝状冷却水流路14のシリンダボア側の壁面17とは反対側の壁面18に接触する。
【0027】
シリンダボア壁の保温部36aに固定されている各ボア壁保温部35は、
図6、
図9及び
図10に示すように、ゴム部材31と、背面押し付け部材32と、金属板バネ付設部材33と、からなる。
【0028】
ゴム部材31は、上から見たときに、円弧状に成形されており、ゴム部材31の接触面26側の形状は、溝状冷却水流路14のシリンダボア側の壁面に沿う形状である。ゴム部材31は、各シリンダボアのボア壁22に直接接触して、ボア壁22の保温箇所を覆い、各シリンダボアのボア壁22を保温するための部材である。また、背面押し付け部材32は、上から見たときに、円弧状に成形されており、ゴム部材31の全体をゴム部材31の背面側から押し付けることができるように、ゴム部材31の背面側(接触面26側とは反対側の面)に沿う形状である。また、金属板バネ付設部材33は、上から見たときに、円弧状に成形されており、背面押し付け部材32の背面側(ゴム部材31とは反対側の面)に沿う形状であり、弾性部材である金属板バネ39が付設されている。金属板バネ39は、縦長の長方形の金属板であり、長手方向の一端が金属板バネ付設部材33に繋がっている。金属板バネ39は、先端27が金属板バネ付設部材33から離れるように、金属板バネ付設部材33に繋がっている他端側28で、金属板バネ付設部材33から折り曲げられることにより、金属板バネ付設部材33に付設されている。そして、ゴム部材31及び背面押し付け部材32は、金属板バネ付設部材33の上側及び下側に形成されている折り曲げ部40が折り曲げられて、金属板バネ付設部材33と折り曲げ部40の間に挟み込まれることにより、金属板バネ付設部材33に固定されている。ゴム部材31では、背面押し付け部材32側とは反対側のゴム部材31の面が、溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面17に接する接触面26である。
【0029】
各ボア壁保温部35は、各シリンダボアのボア壁を保温するための部材であり、シリンダボア壁の保温具36aが、シリンダブロック11の溝状冷却水流路14に設置されたときに、溝状冷却水流路14のシリンダボア側の壁面17に、ゴム部材31が接触して、ゴム部材31で溝状冷却水流路14のシリンダボア側の壁面17を覆い、且つ、弾性部材である金属板バネ39の付勢力で、背面押し付け部材32が、ゴム部材31を背面側から溝状冷却水流路14のシリンダボア側の壁面17に向けて押し付けて、ゴム部材31を溝状冷却水流路14のシリンダボア側の壁面17に密着させることにより、各ボア壁保温部35が各シリンダボアのボア壁を保温する。
【0030】
支持部34aは、上から見たときに、4つの円弧が連続する形状に成形されており、支持部34aの形状は、溝状冷却水流路14の片側半分に沿う形状である。また、支持部34aには、各ボア壁保温部35に付設されている金属板バネ39が、シリンダボア壁の保温具36aの背面側から、支持部34aを通り抜けて、溝状冷却水流路14のシリンダボア側の壁面17とは反対側の壁面18に向かって張り出すことができるように、開口42が形成されている。
【0031】
支持部34aは、各ボア壁保温部35が固定される部材であり、各ボア壁保温部35の位置が溝状冷却水流路14内でずれないように、各ボア壁保温部35の位置を定める役割を果たす。支持部34aは、合成樹脂の成形体である。
【0032】
そして、シリンダボア壁の保温具36aでは、各ボア壁保温部35は、上から見たときの円弧方向の中央又は中央近傍(各ボア壁保温部を上から見たときに、円弧状の各ボア壁保温部の中央又は中央近傍)のみが、支持部34aに固定されている。
図10のX−X端面図は、各ボア壁保温部35の中央で切った端面図であるが、X−X端面図では、金属板バネ付設部材33の上端及び下端のそれぞれが、折り曲げ部37によって、支持部34aに固定されていることが示されている。それに対して、
図10のY−Y端面図は、各ボア壁保温部35の端の方の部分を切った端面図であるが、Y−Y端面図では、金属板バネ付設部材33は、支持部34aに固定されていないことが示されている。
【0033】
シリンダボア壁の保温具36aの作製手順について説明する。
図11に示すように、ゴム部材31に、その背面側から、背面押し付け部材32と、金属板バネ39が付設され且つ折り曲げ部40及び折り曲げ部37が形成されている金属板バネ付設部材33と、を順に合わせ、次いで、折り曲げ部40を折り曲げて、
図12に示すように、折り曲げ部40で、背面押し付け部材32及びゴム部材31を挟み込ませることにより、金属板バネ付設部材33に、背面押し付け部材32及びゴム部材31を固定して、各ボア壁保温部35を作製する。そして、
図13に示すように、各ボア壁保温部35を4つ作製し、支持部34aの固定箇所に、折り曲げ部37を折り曲げて、折り曲げ部37で、支持部34aを挟み込ませることにより、支持部34aに、各ボア壁保温部35を固定して、シリンダボア壁の保温具36aを作製する。
【0034】
なお、金属板バネ付設部材33の作製手順であるが、
図14に示すように、金属板43を用意し、
図14(A)中の点線の位置で、金属板43を打ち抜くことにより、
図14(B)のように、金属板バネ39、折り曲げ部40及び折り曲げ部37を形成させて、金属板の打ち抜き物45を作製する。次いで、金属板の打ち抜き物45全体を円弧状に成形し、且つ、金属板バネ39を背面側に曲げることにより、金属板バネ付設部材33を作製する。また、支持部34aであるが、合成樹脂を射出成形することにより、支持部34aを作製する。
【0035】
シリンダボア壁の保温具36aは、例えば、
図1に示すシリンダブロック11の溝状冷却水流路14に設置される。
図15に示すように、シリンダボア壁の保温具36aを、シリンダブロック11の溝状冷却水流路14に挿入して、
図16及び
図17に示すように、シリンダボア壁の保温具36aを、溝状冷却水流路14に設置する。また、
図15には図示しないが、同様にして、シリンダボア壁の保温具36bを、シリンダブロック11の溝状冷却水流路14に挿入して、
図16及び
図17に示すように、シリンダボア壁の保温具36bを、溝状冷却水流路14に設置する。このようにして、シリンダボア壁の保温具36aは、片側半分の壁面17a側に、シリンダボア壁の保温具36bは、もう片側半分の壁面17b側に、それぞれ設置される。
【0036】
このとき、シリンダボア壁の保温具36aでは、各ボア壁保温部35のゴム部材31の接触面26から金属板バネ39の先端側27までの距離が、溝状冷却水流路14の幅よりも大きくなるように、金属板バネ39が付設されている。そのため、シリンダボア壁の保温具36aが、溝状冷却水流路14に設置されると、金属板バネ39が、各ボア壁保温部35の背面と壁面18との間に挟まれることにより、金属板バネ39の先端27には、金属板バネ付設部材33に向かう方向に力が加えられる。このことにより、金属板バネ39は、先端27が金属板バネ付設部材33側に近づくように変形するので、金属板バネ39には、元に戻ろうとする弾性力が生じる。そして、この弾性力により、金属板バネ付設部材33は、溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面17に向かって押され、その結果、金属板バネ付設部材33により押された背面押し付け部材32により、ゴム部材31が、溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面17に押し付けられる。つまり、シリンダボア壁の保温具36aが、溝状冷却水流路14に設置されることにより、金属板バネ39が変形し、その変形が戻ろうとして生じる弾性力により、ゴム部材31を溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面17に押し付けるように、背面押し付け部材32が付勢される。このようにして、シリンダボア壁の保温具36aの各ボア壁保温部35のゴム部材31が、溝状冷却水流路のシリンダボア側の全壁面17のうちの一方の片側半分の壁面17aの各シリンダボアのボア壁面に接触し、シリンダボア壁の保温具20bの各ボア壁保温部35のゴム部材31が、溝状冷却水流路のシリンダボア側の全壁面17のうちの他方の片側半分の壁面17bの各シリンダボアのボア壁に接触する。
【0037】
このとき、シリンダボア壁の保温具36aでは、各ボア壁保温部35は、各ボア壁保温具を上から見たときの円弧方向の中央又は中央近傍のみが、支持部34aに固定されているので、各ボア壁保温部35の金属板バネ付設部材33及び背面押し付け部材32が金属板バネ39で付勢されたときに、支持部34aとは独立して、金属板バネ付設部材33、背面押し付け部材32及びゴム部材31が変形することができる。
図19を参照して説明する。シリンダボア壁の保温具の作製においては、各ボア壁保温部のゴム部材の接触面の曲率が、ゴム部材が接触する各シリンダボアのボア壁の壁面の曲率と合うように、ゴム部材は加工されるが、実際には、ゴム部材の接触面及び各シリンダボアのボア壁の壁面のいずれにも、設計値に対して加工誤差が生じてしまう。そして、ゴム部材の接触面又は各シリンダボアのボア壁の壁面の加工誤差により、ゴム部材の接触面の曲率が各シリンダボアのボア壁の壁面の曲率より小さくなってしまった場合に、
図18(A)に示すように、保温部の全体が、支持部に固定されていたならば(例えば、保温部を上から見たときの円弧方向の中央近傍と両端近傍の合計3か所が支持部に固定されていたならば)、金属板バネで付勢されたときに、ゴム部材56の円弧方向の中央近傍は、各シリンダボアのボア壁23に接触することはできるが、端の方の部分は、ボア壁には接触できない。それに対して、ゴム部材の接触面の曲率が各シリンダボアのボア壁の壁面の曲率より小さくなってしまった場合に、
図18(B)に示すように、各ボア壁保温部を上から見たときの円弧方向の各ボア壁保温部35の中央又は中央近傍のみが、支持部34aに固定されていると、金属板バネ39で付勢されたときに、各ボア壁保温部35の端の方の部分が、支持部34aから離れて、各シリンダボアのボア壁23に向かうように変形できるので、ゴム部材31の円弧方向の中央近傍だけでなく、端の方も各シリンダボアのボア23壁に接触することができる。このようなことから、シリンダボア壁の保温具36aでは、加工誤差により、ゴム部材31の接触面26と各シリンダボアのボア壁23の壁面の曲率に差があったとしても、ゴム部材31を確実に各シリンダボアのボア壁の壁面に接触させることができるので、ゴム部材31の各シリンダボアのボア壁23の壁面(溝状冷却水流路14のシリンダボア側の壁面17)への密着性が高くなる。
【0038】
本発明のシリンダボア壁の保温具は、シリンダボアを有する内燃機関のシリンダブロックの溝状冷却水流路に設置され、全シリンダボアのボア壁の全部又は全シリンダボアのボア壁のうちの一部を保温するための保温具であり、
上から見たときに円弧形状を有し、該溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面を保温するための各ボア壁保温部と、合成樹脂製であり、該保温具の設置位置の該溝状冷却水流路の形状に沿う形状を有し、該各ボア壁保温部が固定される支持部と、を有し、
該各ボア壁保温部は、該溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面に接触し、該溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面を覆うためのゴム部材と、該ゴム部材の背面側に設けられ、該ゴム部材全体を背面側から該溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面に向かって押し付けるための背面押し付け部材と、該溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面に向かって、該背面押し付け部材が該ゴム部材を押し付けるように付勢する弾性部材と、を有し、
該各ボア壁保温部は、円弧方向の中央又は中央近傍のみが、該支持部に固定されていること、
を特徴とするシリンダボア壁の保温具である。
【0039】
本発明のシリンダボア壁の保温具は、内燃機関のシリンダブロックの溝状冷却水流路に設置される。本発明のシリンダボア壁の保温具が設置されるシリンダブロックは、シリンダボアが直列に2つ以上並んで形成されているオープンデッキ型のシリンダブロックである。シリンダブロックが、シリンダボアが直列に2つ並んで形成されているオープンデッキ型のシリンダブロックの場合、シリンダブロックは、2つの端ボアからなるシリンダボアを有している。また、シリンダブロックが、シリンダボアが直列に3つ以上並んで形成されているオープンデッキ型のシリンダブロックの場合、シリンダブロックは、2つの端ボアと1つ以上の中間ボアとからなるシリンダボアを有している。なお、本発明では、直列に並んだシリンダボアのうち、両端のボアを端ボアと呼び、両側が他のシリンダボアで挟まれているボアを中間ボアと呼ぶ。
【0040】
本発明のシリンダボア壁の保温具が設置される位置は、溝状冷却水流路である。内燃機関の多くでは、シリンダボアの溝状冷却水流路の中下部に相当する位置が、ピストンの速さが速くなる位置なので、この溝状冷却水流路の中下部を保温することが好ましい。
図2では、溝状冷却水流路14の最上部9と最下部8の中間近傍の位置10を、点線で示しているが、この中間近傍の位置10から下側の溝状冷却水流路14の部分を、溝状冷却水流路の中下部と呼ぶ。なお、溝状冷却水流路の中下部とは、溝状冷却水流路の最上部と最下部の丁度中間の位置から下の部分という意味ではなく、最上部と最下部の中間位置の近傍から下の部分という意味である。また、内燃機関の構造によっては、ピストンの速さが速くなる位置が、シリンダボアの溝状冷却水流路の下部に当たる位置である場合もあり、その場合は、溝状冷却水流路の下部を保温することが好ましい。よって、溝状冷却水流路の最下部からどの位置までを本発明のシリンダボア壁の保温具で保温するか、つまり、ゴム部材の上端の位置を溝状冷却水流路の上下方向のどの位置にするかは、適宜選択される。
【0041】
本発明のシリンダボア壁の保温具は、溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面を保温するための保温部と、保温部が固定される支持部と、を有する。そして、本発明のシリンダボア壁の保温具は、周方向に見たときに、溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面の全部又は溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面のうちの一部を保温するための保温具である。つまり、本発明のシリンダボア壁の保温具は、周方向に見たときに、全シリンダボアのボア壁の全部又は全シリンダボアのボア壁の一部を保温するための保温具である。本発明のシリンダボア壁の保温具のとしては、例えば、
図5に示す形態例のように、全シリンダボアのボア壁のうち片側半分を保温するための保温具、
図21に示す形態例のように、全シリンダボアのボア壁のうち片側の一部を保温するための保温具、
図22に示す形態例のように、全シリンダボアのボア壁の全部を保温するための保温具が挙げられる。なお、本発明において、片側半分又は片側の一部とは、シリンダボア壁又は溝状冷却水流路の周方向の片側半分又は片側の一部との意味である。
【0042】
本発明のシリンダボア壁の保温具では、各ボア壁保温部は、各ボア壁保温部で保温しようとする各シリンダボアのボア壁毎に設置される。各ボア壁保温部の数及び設置範囲は、各ボア壁保温部で保温しようとする各シリンダボアのボア壁の数及び保温部位によって、適宜選択される。本発明のシリンダボア壁の保温具では、1つの支持部各ボア部に1つの各ボア壁保温部が設置されていてもよいし、1つの支持部各ボア部に2つの各ボア壁保温部が設置されていてもよいし、1つの支持部各ボア部に3つ以上の各ボア壁保温部が設置されていてもよいし、あるいは、これらの組み合わせであってもよいし、あるいは、支持部各ボア部の一部に各ボア壁保温部が設置されていないものがあってもよい。例えば、
図5に示すシリンダボア壁の保温具36a及び
図21に示すシリンダボア壁の保温具36cでは、支持部各ボア部1つに対して各ボア壁保温部が1つ設置されている。また、
図22に示すシリンダボア壁の保温具36dでは、端ボアのボア壁側の支持部各ボア部に対しては各ボア壁保温部が2つ設置されており、中間ボアのボア壁側の支持部各ボア部に対しては各ボア壁保温部が1つ設置されている。また、
図24に示すシリンダボア壁の保温具36eでは、一方の端ボアのボア壁側及び中間ボアのボア壁側の支持部各ボア部1つに対しては各ボア壁保温部が1つ設置されており、他方の端ボアのボア壁側の支持部各ボア部には各ボア壁保温部が設置されていない。また、
図25に示すシリンダボア壁の保温具36fでは、一方の片側半分の支持部には、各シリンダボアのボア壁側の支持部各ボア部1つに対して各ボア壁保温部が1つ設置されており、他方の片側半分の支持部には、各ボア壁保温部が設置されていない。また、
図26(D)に示す形態例では、各シリンダボアのボア壁側の支持部各ボア部1つに対して2つの各ボア壁保温部が設置されている。また、本発明のシリンダボア壁の保温具では、接触面側から見たときに、1つの支持部各ボア部の略全体に各ボア壁保温具が設置されていてもよいし、1つの支持部各ボア部の一部分に各ボア壁保温具が設置されていてもよいし、あるいは、これらの組み合わせであってもよい。例えば、
図26(A)に示す形態例では、接触面側から見たときに、支持部各ボア部46b1の略全体に各ボア壁保温部35が設置されている。また、
図26(B)に示す形態例では、接触面側から見たときに、支持部各ボア部46b2の略下側半分に各ボア壁保温部35fが設置されている。また、
図26(C)に示す形態例では、接触面側から見たときに、支持部各ボア部46b3の略上側半分に各ボア壁保温部35eが設置されている。また、
図26(D)に示す形態例では、接触面側から見たときに、支持部各ボア部46b4の左下略4分の1に各ボア壁保温部35d1が、右上略4分の1に各ボア壁保温部35d2が設置されている。
図26(B)、(C)及び(D)に示す形態例では、
図26(A)に示す形態例より更に細かく保温範囲を設定するができる。また、支持部は、各ボア壁保温部が固定されて支持される支持部材であり、各ボア壁保温部が固定されることにより、各ボア壁保温部の位置が溝状冷却水流路内でずれないように、各ボア壁保温部の位置を定める役割をするので、支持部は、上から見たときに、本発明のシリンダボア壁の保温具が設置される溝状冷却水流路に沿う形状を有する。なお、支持部各ボア部とは、各シリンダボアのボア壁側の支持部の部分のことであり、上から見たときの支持部を形成する円弧形状の1つ分である。また、
図26は、本発明のシリンダボア壁の保温具の形態例の模式図であり、支持部各ボア部の1つ分を示した図であり、左側が各形態例を背面側から見た図であり、右側が各形態例を接触面側から見た図である。
【0043】
各ボア壁保温部は、ゴム部材と、背面押し付け部材と、弾性部材と、を有する。
【0044】
ゴム部材は、溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面に直接接して、溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面を覆い、シリンダボア壁を保温する部材であり、弾性部材の付勢力で、背面押し付け部材により、溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面に押し付けられる。そのため、このゴム部材は、上から見たときに、溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面に沿う形状、つまり、円弧状の形状に成形されている。また、ゴム部材を横から見たときの形状は、ゴム部材で覆わせようとする溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面の部分に合わせて、適宜選択される。
【0045】
ゴム部材の材質としては、例えば、ソリッドゴム、膨張ゴム、発泡ゴム、軟性ゴム等のゴム、シリコーン系ゲル状素材等が挙げられる。シリンダボア壁の保温具を溝状冷却水流路内に設置するときに、ゴム部材がシリンダボア壁に強く接触して、ゴム部材が削られるのを防ぐことができる点で、シリンダボア壁の保温具の設置後に、溝状冷却水流路内でゴム部材部分を膨張させることができる感熱膨張ゴム又は水膨潤性ゴムが好ましい。
【0046】
ソリッドゴムの組成としては、天然ゴム、ブタジエンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、シリコーンゴム、フッ素ゴム等が挙げられる。
【0047】
膨張ゴムとしては、感熱膨張ゴムが挙げられる。感熱膨張ゴムは、ベースフォーム材にベースフォーム材より融点が低い熱可塑性物質を含浸させ圧縮した複合体であり、常温では少なくともその表層部に存在する熱可塑性物質の硬化物により圧縮状態が保持され、且つ、加熱により熱可塑性物質の硬化物が軟化して圧縮状態が開放される材料である。感熱膨張ゴムとしては、例えば、特開2004−143262号公報に記載の感熱膨張ゴムが挙げられる。ゴム部材の材質が感熱膨張ゴムの場合は、本発明のシリンダボア壁の保温具が溝状冷却水流路に設置され、感熱膨張ゴムに熱が加えられることで、感熱膨張ゴムが膨張して、所定の形状に膨張変形する。
【0048】
感熱膨張ゴムに係るベースフォーム材としては、ゴム、エラストマー、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等の各種高分子材料が挙げられ、具体的には、天然ゴム、クロロプロピレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ニトリルブタジエンゴム、エチレンプロピレンジエン三元共重合体、シリコーンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム等の各種合成ゴム、軟質ウレタン等の各種エラストマー、硬質ウレタン、フェノール樹脂、メラミン樹脂等の各種熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0049】
感熱膨張ゴムに係る熱可塑性物質としては、ガラス転移点、融点又は軟化温度のいずれかが120℃未満であるものが好ましい。感熱膨張ゴムに係る熱可塑性物質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、スチレンブタジエン共重合体、塩素化ポリエチレン、ポリフッ化ビニリデン、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン酢酸ビニル塩化ビニルアクリル酸エステル共重合体、エチレン酢酸ビニルアクリル酸エステル共重合体、エチレン酢酸ビニル塩化ビニル共重合体、ナイロン、アクリロニトリルブタジエン共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリクロロプレン、ポリブタジエン、熱可塑性ポリイミド、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、熱可塑性ポリウレタン等の熱可塑性樹脂、低融点ガラスフリット、でんぷん、はんだ、ワックス等の各種熱可塑性化合物が挙げられる。
【0050】
また、膨張ゴムとしては、水膨潤性ゴムが挙げられる。水膨潤性ゴムは、ゴムに吸水性物質が添加された材料であり、水を吸収して膨潤し、膨張した形状を保持する保形性を有するゴム材である。水膨潤性ゴムとしては、例えば、ポリアクリル酸中和物の架橋物、デンプンアクリル酸グラフト共重合体架橋物、架橋カルボキシメチルセルロース塩、ポリビニルアルコール等の吸水性物質がゴムに添加されたゴム材が挙げられる。また、水膨潤性ゴムとしては、例えば、特開平9−208752号公報に記載されているケチミン化ポリアミド樹脂、グリシジルエーテル化物、吸水性樹脂及びゴムを含有する水膨潤性ゴムが挙げられる。ゴム部材の材質が水膨潤性ゴムの場合は、本発明のシリンダボア壁の保温具が溝状冷却水流路に設置され冷却水が流されて、水膨潤性ゴムが水を吸収することで、水膨潤性ゴムが膨張して所定の形状に膨張変形する。
【0051】
発泡ゴムは、多孔質のゴムである。発泡ゴムとしては、連続気泡構造を有するスポンジ状の発泡ゴム、独立気泡構造を有する発泡ゴム、半独立発泡ゴム等があげられる。発泡ゴムの材質としては、具体的には、例えば、エチレンプロピレンジエン三元共重合体、シリコーンゴム、ニトリルブタジエン共重合体、シリコーンゴム、フッ素ゴム等が挙げられる。発泡ゴムの発泡率は、特に制限されず、適宜選択され、発泡率を調節することにより、ゴム部材の含水率を調節することができる。なお、発泡ゴムの発泡率とは、((発泡前密度−発泡後密度)/発泡前密度)×100で表される発泡前後の密度割合を指す。
【0052】
ゴム部材の材質が水膨潤性ゴム、発泡ゴムのように、含水することができる材料の場合、本発明のシリンダボア壁の保温具が、溝状冷却水流路内に設置され、溝状冷却水流路に冷却水が流されたときに、ゴム部材が含水する。溝状冷却水流路に冷却水が流されたときに、ゴム部材の含水率を、どのような範囲とするかは、内燃機関の運転条件等により、適宜選択される。なお、含水率とは、(冷却水重量/(充填剤重量+冷却水重量))×100で表される重量含水率を指す。
【0053】
ゴム部材の材質として、膨張ゴムを用いる場合、
図19に示すように、膨張前に比べ、膨張後のゴム部材31cの表面26cの位置が、折り曲げ部40cよりボア壁側に(溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面寄りに)、膨張するように設計することが好ましい。
図19に示す形態例では、ゴム部材31cが溝状冷却水流路内で弾性部材39により付勢される前且つ膨張する前は(
図19(A))、ゴム部材31cの接触面の曲率が、ゴム部材が接触する各シリンダボアのボア壁23の曲率より大きい。そのため、ゴム部材31cとボア壁23との間に隙間がある。そして、その状態から、ゴム部材31cが弾性部材により付勢され且つ膨張すると(
図19(B))、ゴム部材31cの表面26cの位置が、折り曲げ部40cよりボア壁側になるように、ゴム部材31cが膨張すると共に、各ボア壁保温部35cの円弧方向の中央又は中央近傍の部分が、弾性部材39により背面側から押されることにより、各ボア壁保温部35の円弧方向の中央又は中央近傍以外の部分が、支持部34cとは独立して、各ボア壁保温部35の円弧方向の両端側の部分が、外に開くように変形する。また、本発明のシリンダボア壁の保温具では、このような、各ボア壁保温部のゴム部材の接触面の曲率が、ゴム部材が接触する各シリンダボアのボア壁の曲率より大きい場合に、各ボア壁保温部の円弧方向の中央又は中央近傍の部分が、弾性部材により背面側から押されて、各ボア壁保温部の円弧方向の中央又は中央近傍以外の部分が、支持部とは独立して、各ボア壁保温部の円弧方向の両端側の部分が、外に開くように変形することは、ゴム部材が膨張ゴムであっても、ゴム部材が膨張しないゴムであっても、起こる。なお、各ボア壁保温部のゴム部材が膨張ゴムの場合、各ボア壁保温部には、本発明のシリンダボア壁の保温具が溝状冷却水流路に設置された後、膨張ゴムが、冷却水に接触し又は加熱されることによって膨張して、溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面に接触するようになる形態もある。
【0054】
ゴム部材の厚みは、特に制限されず、適宜選択される。
【0055】
背面押し付け部材は、上から見たときに、円弧状に成形されており、ゴム部材の全体をゴム部材の背面側から押し付けることができるように、ゴム部材の背面側(接触面側とは反対側の面)に沿う形状であり、ゴム部材の背面側全体又はほぼ背面側全体を覆う形状である。背面押し付け部材の材質は、弾性部材により背面側から押されたときに、ゴム部材を溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面に向かって押し付けることができるよう変形できるものであればよく、適宜選択されるが、ステンレス鋼、アルミニウム合金等の金属板が好ましい。背面押し付け部材の厚みは、弾性部材により背面側から押し付けられたときに、ゴム部材を溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面に向かって押し付けることができるよう変形できるものであればよく、適宜選択される。
【0056】
弾性部材は、各ボア壁保温部の背面側に付設されている。この弾性部材は、本発明のシリンダボア壁の保温具が、溝状冷却水流路に設置されることにより、弾性変形し、溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面に向かって、背面押し付け部材がゴム部材を押し付けるように、弾性力により付勢するための部材である。
【0057】
弾性部材は、各ボア壁保温部を上から見たときに、各ボア壁保温部の円弧方向に、2つ以上付設されている。弾性部材の付設箇所が1つの場合、保温具全体を押し付けるために、弾性部材を各ボア壁保温部の円弧方向の中央又は中央近傍に付設することになるが、これだと、各ボア壁保温部の中央又は中央近傍は、支持部に固定されているので、各ボア壁保温部を支持部と一緒に押し付けることになる。そのため、各ボア壁保温部が、支持部とは独立に、各ボア壁保温部の端の方の部分が支持部から離れて変形して、溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面に向かって、ゴム部材が押し付けられることはない。このようなことから、各ボア壁保温部の両方の端の方の部分が、支持部とは独立に、支持部から離れて変形して、溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面に向かって、ゴム部材を押し付けられるように、弾性部材は、少なくとも、各ボア壁保温部の一方の端側寄りに1か所、他方の端寄りに1か所の合計2か所に付設されている必要がある。そして、各ボア壁保温部の全体が押し付けられ、且つ、各ボア壁保温部の両方の端の方の部分が、支持部とは独立に押し付けされるように、弾性部材が、各ボア壁保温部の円弧方向の中央又は中央近傍に1か所、各ボア壁保温部の一方の端側寄りに1か所、他方の端寄りに1か所の合計3か所に付設されていることが好ましい。更に、各ボア壁保温部のゴム部材の溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面への密着性を高めるために、円弧方向の4か所以上に弾性部材が付設されていてもよい。
【0058】
弾性部材の形態は、特に制限されず、例えば、板状の弾性部材、コイル状の弾性部材、重ね板バネ、トーションバネ、弾性ゴム等が挙げられる。弾性部材の材質は、特に制限されないが、耐LLC性が良く及び強度が高い点で、ステンレス鋼(SUS)、アルミニウム合金等が好ましい。弾性部材としては、金属板バネ、コイルバネ、重ね板バネ、トーションバネ等の金属弾性部材が好ましい。
【0059】
弾性部材としては、溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面とは反対側の壁面に接する部分及びその近傍が、溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面とは反対側の壁面に対して膨出する曲面状に成形されていることが、本発明のシリンダボア壁の保温具を溝状冷却水流路内に挿入するときに、弾性部材の壁面との接触部分により、溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面とは反対側の壁面が傷付けられるのを防ぐことができる点で好ましい。このような形態例としては、
図23に示す形態例が挙げられる。
図23中、各ボア壁保温具35aの背面側には、金属板バネ39aが付設されている金属板バネ付設部材33aが設けられている。
図23(A)に示すように、金属板バネ39aの先端部27aは、折り返し部271が、各ボア壁保温具35a側に折り曲げられることにより形成されている。そして、
図23(B)及び(C)に示すように、先端部27aは、接触する壁面(溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面とは反対側の壁面)に対して膨出する曲面状に成形されている。つまり、
図23に示す形態例では、弾性部材である金属板バネのうち、溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面とは反対側の壁面に接触する先端部分が、溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面とは反対側の壁面に対して膨出する曲面状に成形されている。なお、
図23(A)は各ボア壁保温部35aの端面図であり、各ボア壁保温部35aを円弧方向の中央で垂直に切った端面図であり、また、
図23(B)は各ボア壁保温部35aが固定されている支持部各ボア部を背面側斜め上から見た図であり、また、
図23(C)は
図23(B)中の点線で囲った部分Aを上から見た図である。
【0060】
本発明のシリンダボア壁の保温具では、溝状冷却水流路に設置されたときに、弾性部材により、ゴム部材が適切な押し付け力で付勢されるように、溝状冷却水流路の形状等に合わせて、弾性部材の形態、形状、大きさ、設置位置、設置数等が、適宜選択される。
【0061】
図5に示すシリンダボア壁の保温具36aでは、金属板バネ付設部材と弾性部材である金属板バネが一体成形され、金属板バネが形成されている金属板バネ付設部材に、ゴム部材及び背面押し付け部材が固定されることにより、弾性部材が各ボア壁保温部に付設されているが、各ボア壁保温部に弾性部材を付設する方法は、特に制限されない。他の方法としては、例えば、金属板バネ、金属コイルバネ、重ね板バネ又はトーションバネ等の金属製の弾性部材を金属板からなる背面押し付け部材に溶接し、弾性部材が溶接された背面押し付け部材に、ゴム部材を固定する方法等が挙げられる。
図20に示す形態例では、金属板からなり且つ上下にゴム部材を固定するための折り曲げ部40d及び保温具を支持部に固定するための折り曲げ部37dが形成されている背面押し付け部材47に、縦長の矩形の金属板からなる金属板バネ39dが、溶接されている。
【0062】
各ボア壁保温部の形態例としては、
図27及び
図28に示す形態例が挙げられる。
図27に示すように、膨張ゴムであるゴム部材31gに、その背面側から背面押し付け部材32と、金属板バネ39が付設され且つ折り曲げ部40、折り曲げ部41及び折り曲げ部37が形成されている金属板バネ付設部材33gと、を順に合わせ、更に、ゴム部材31gの接触面側に、ロ字状の金属薄板からなるロ字状当て板30を合わせる。次いで、折り曲げ部40及び折り曲げ部41を折り曲げて、
図28に示すように、折り曲げ部40及び折り曲げ部41で、背面押し付け部材32、ゴム部材31g及びロ字状当て板30を挟み込ませることにより、金属板バネ付設部材33gに、背面押し付け部材32、ゴム部材31g及びロ字状当て板30を固定して、各ボア壁保温部35dを作製する。つまり、各ボア壁保温部としては、膨張ゴムであるゴム部材と、背面押し付け部材と、弾性部材と、ゴム部材の接触面側に配置され、ロ字状の金属板からなるロ字状当て板と、を有する各ボア壁保温部が挙げられる。ロ字状当て板は、接触面側から見たときに、ロ字状であるので、ゴム部材の面の4辺側の端に接している。言い換えると、ロ字状当て板は、内側に矩形の開口を有している。そして、膨張ゴムであるゴム部材が膨張することにより、この開口の部分から、膨張ゴムが、当て板よりも外に飛び出し、飛び出した部分の表面がゴム部材の接触面となる。このようなロ字状当て板を有する各ボア壁保温部では、ゴム部材を固定するための折り曲げ部が、直接ゴム部材に接触せず、且つ、折り曲げ部に比べ非常に接触面積が大きいロ字状当て板がゴム部材に接触するので、ゴム部材との接触面積が小さい折り曲げ部が、ゴム部材に食い込むことにより、ゴム部材がちぎれ易くなることを防ぐことができる。
【0063】
本発明のシリンダボア壁の保温具では、溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面の方に、ゴム部材の接触面が向き、ゴム部材の接触面が、溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面に接触できるように、各ボア壁保温部が支持部に固定されている。また、本発明のシリンダボア壁の保温具の背面側では、各ボア壁保温部に付設されている弾性部材が、溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面とは反対側の壁面に接触できるように、支持部の開口を通り抜けて、ゴム部材とは反対側に向けて張り出している。
【0064】
支持部に固定される各ボア壁保温部の数は、各ボア壁保温部により保温しようとする各シリンダボアのボア壁の数、保温部位により、適宜選択される。
【0065】
支持部は、溝状冷却水流路内での各ボア壁保温部の位置がずれないように、各ボア壁保温部が固定される部材であるので、本発明のシリンダボア壁の保温具の設置位置の溝状冷却水流路に沿った形状をしており、上から見たときに、全シリンダボアを一周囲む形状又は複数の円弧が連続する形状に成形されている。支持部は、合成樹脂製であり、通常、合成樹脂の射出成形により、冷却水流れ仕切り部材等の支持部に付設される部材と共に、一体成形されて作製される。支持部の材料は、耐熱性及び耐LLC性を有していれば、特に制限されず、シリンダボアのボア壁の保温具やウォータージャケットスペーサに用いられる合成樹脂であればよい。
【0066】
支持部には、支持部より溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面側にある各ボア壁保温部に付設されている弾性部材が、溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面とは反対側の壁面に接することができるように、弾性部材が通り抜ける開口部が形成されている。
【0067】
本発明のシリンダボア壁の保温具は、支持部各ボア部の全てに各ボア壁保温部が設置されているものであっても、全支持部各ボア部のうちの一部に各ボア壁保温部が設置されていているものであってもよい。全支持部各ボア部のうちの一部に各ボア壁保温部が設置されていている本発明のシリンダボア壁の保温具の形態としては、例えば、支持部の形状が、全シリンダボアのボア壁を一周囲む形状であり、各ボア壁保温部が、全支持部各ボア部のうちの一部に設置されている保温具、例えば、
図25に示すシリンダボア壁の保温具36fや、支持部の形状が、全シリンダボアのボア壁のうち片側半分に対応する形状であり、各ボア壁保温部が、全支持部各ボア部のうちの一部に設置されている保温具、例えば、
図24に示すシリンダボア壁の保温具36eが挙げられる。
【0068】
本発明のシリンダボア壁の保温具では、各ボア壁保温部は、上から見たときの円弧方向の中央又は中央近傍のみ、支持部に固定されている。よって、本発明のシリンダボア壁の保温具では、各ボア壁保温部のうち、円弧方向の中央又は中央近傍以外の部分は、支持部には固定されていないので、弾性部材により背面側から押されたときに、各ボア壁保温部の円弧方向の中央又は中央近傍以外の部分は、支持部から離れて、溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面に向かうように変形することができる。あるいは、各ボア壁保温部の円弧方向の中央又は中央近傍の部分が、弾性部材により背面側から押されたときに、各ボア壁保温部の円弧方向の中央又は中央近傍以外の部分は、支持部とは独立して、各ボア壁保温部の円弧方向の両端側の部分が、外に開くように変形することができる。
【0069】
このようなことから、本発明のシリンダボア壁の保温具では、シリンダボア壁の保温具の作製又はシリンダブロックの作製において、加工誤差のために、各ボア壁保温部のゴム部材の接触面の曲率が、ゴム部材が接触する各シリンダボアのボア壁の曲率より小さくなっていても、各ボア壁保温部の円弧方向の中央又は中央近傍以外の部分が、弾性部材により背面側から押されることにより、支持部から離れて、溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面に向かうように変形して、ゴム部材が溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面に密着することができるので、ゴム部材の溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面への密着性が高くなる。あるいは、加工誤差のために、各ボア壁保温部のゴム部材の接触面の曲率が、ゴム部材が接触する各シリンダボアのボア壁の曲率より大きくなっていても、各ボア壁保温部の円弧方向の両端側の部分が、外に開くように変形して、ゴム部材が溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面に密着することができるので、ゴム部材の溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面への密着性が高くなる。
【0070】
特に、本発明のシリンダボア壁の保温具のゴム部材として、感熱膨張ゴムや水膨潤ゴムのような膨張ゴムを用いる場合、膨張前のゴム部材の接触面の加工を精度良く行っても、ゴム部材を膨張させたときの膨張量のムラにより、膨張後のゴム部材の接触面の形状が、密着する相手である溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面の表面形状とずれることがある。そのような場合にも、本発明のシリンダボア壁の保温具では、各ボア壁保温部の円弧方向の中央又は中央近傍以外の部分が、弾性部材により背面側から押されることにより、支持部から離れて、溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面に向かうように変形して、あるいは、各ボア壁保温部の円弧方向の両端側の部分が、外に開くように変形して、ゴム部材が溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面に密着することができるので、ゴム部材の溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面への密着性が高くなる。
【0071】
なお、
図18では、本発明の効果の説明のため、保温部の両端側全体に、ゴム部材の両端側の接触面とボア壁との間に大きな隙間ができている図(
図18(A))を用いたが、実際は、これほど大きな加工誤差が生じることはない。しかし、実際に、加工誤差により、小さな隙間が生じたり、部分的にゴム部材の接触面とボア壁が離れていたりすることはある。
【0072】
本発明のシリンダボア壁の保温具において、各ボア壁保温部が支持部に固定される範囲、具体的には、上から見たときの円弧方向の固定部分の長さ及び横から見たときの上下方向の固定部分の長さは、本発明の効果を奏する範囲で、適宜選択される。例えば、
図5に示す形態例のように、上から見たときの各ボア壁保温部の円弧方向の中央近傍且つ横から見たときの各ボア壁保温部の上端側と下端側のみで、各ボア壁保温部を支持部に固定することができる。
【0073】
本発明のシリンダボア壁の保温具は、
図5に示す形態例のように、一端側に、冷却水流れ仕切り部材を有することができる。また、本発明のシリンダボア壁の保温具は、支持部に、保温具全体が上方向にずれるのを防止するための部材、例えば、支持部の両側の上側に付設され、上端がシリンダヘッド又はシリンダヘッドガスケットに当接するシリンダヘッド当接部材を有することができる。また、本発明のシリンダボア壁の保温具は、その他の冷却水の流れを調節するための部材等を有することもできる。
【0074】
図5に示すシリンダボア壁の保温具36aは、
図4に示すシリンダブロック11の全シリンダボア壁のうちの片側半分のボア壁の保温用の保温具であるが、本発明のシリンダボア壁の保温具としては、
図21に示す形態例のように、全シリンダボア壁のうちの片側の一部のボア壁の保温用の保温具が挙げられる。
図21に示すシリンダボア壁の保温具36cは、
図4に示すシリンダブロック11の片側半分のボア壁21aのうちの一部、すなわち、シリンダボア12b1と12b2のボア壁の保温用の保温具である。なお、
図21は、本発明のシリンダボア壁の保温具の形態例の模式的な斜視図であり、
図21(A)は内側斜め上から見た斜視図であり、
図21(B)は外側斜め上から見た斜視図である。また、本発明のシリンダボア壁の保温具としては、
図22に示す形態例のように、全シリンダボアのボア壁の全部の保温用の保温具が挙げられる。
図22に示すシリンダボア壁の保温具36dは、
図4に示すシリンダブロック11の全シリンダボアのボア壁の全部の保温用の保温具である。つまり、本発明のシリンダボア壁の保温具は、シリンダブロックの全シリンダボアのボア壁の全部の保温用の保温具であってもよいし、シリンダブロックの全シリンダボアのボア壁のうちの一部、例えば、片側半分や片側の一部の保温用の保温具であってもよい。なお、
図22は、本発明のシリンダボア壁の保温具の形態例の模式的な斜視図である。
【0075】
本発明の内燃機関は、本発明のシリンダボア壁の保温具が設置されていることを特徴とする内燃機関である。
【0076】
本発明の自動車は、本発明の内燃機関を有することを特徴とする自動車である。