特許第6283017号(P6283017)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6283017
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】プロテアーゼ制御抗体
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/36 20060101AFI20180208BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20180208BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20180208BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20180208BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
   C07K16/36
   C12N15/00 AZNA
   A61K39/395 P
   A61P7/04
   A61P43/00 111
【請求項の数】14
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-503299(P2015-503299)
(86)(22)【出願日】2013年3月14日
(65)【公表番号】特表2015-514085(P2015-514085A)
(43)【公表日】2015年5月18日
(86)【国際出願番号】US2013031363
(87)【国際公開番号】WO2013148248
(87)【国際公開日】20131003
【審査請求日】2016年3月9日
(31)【優先権主張番号】61/617,837
(32)【優先日】2012年3月30日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507021757
【氏名又は名称】バイエル・ヘルスケア・エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Bayer HealthCare LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(74)【代理人】
【識別番号】100203035
【弁理士】
【氏名又は名称】五味渕 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ワン・ジュオジ
(72)【発明者】
【氏名】ルース・ウィンター
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・マーフィー
【審査官】 松岡 徹
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/017196(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/001087(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/109452(WO,A1)
【文献】 特表2010−535832(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K
C12N
A61K
A61P
UniProt/GeneSeq/DDBJ
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変ドメイン、定常ドメインおよび可変ドメインを定常ドメインと連結させるアミノ酸配列を含み、ここで、該アミノ酸配列がトロンビン開裂部位および第Xa因子開裂部位から成る群より選択されるプロテアーゼ開裂部位を含む、組織因子経路インヒビター(TFPI)に特異的に結合するプロテアーゼ制御抗体。
【請求項2】
プロテアーゼ開裂部位がトロンビン開裂部位である、請求項1に記載のプロテアーゼ制御抗体。
【請求項3】
プロテアーゼ開裂部位が第Xa因子開裂部位である、請求項1に記載のプロテアーゼ制御抗体。
【請求項4】
アミノ酸配列がさらにアミノ酸リンカーを含む、請求項1〜3のいずれかに記載のプロテアーゼ制御抗体。
【請求項5】
完全長抗体である、請求項1〜4のいずれかに記載のプロテアーゼ制御抗体。
【請求項6】
抗体フラグメントである、請求項1〜4のいずれかに記載のプロテアーゼ制御抗体。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のプロテアーゼ制御抗体および薬学的に許容される媒体を含む、医薬組成物。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載のプロテアーゼ制御抗体をコードする、単離核酸分子。
【請求項9】
凝固障害の処置用医薬の製造における、請求項1〜6のいずれかに記載のプロテアーゼ制御抗体の使用。
【請求項10】
凝固障害が血友病である、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
抗TFPI抗体の軽鎖可変ドメインと軽鎖定常ドメインの間及び重鎖可変ドメインと重鎖定常ドメインの間にプロテアーゼ開裂部位を導入することを含み、該プロテアーゼ開裂部位がトロンビン開裂部位および第Xa因子開裂部位から成る群より選択される、抗TFPI抗体の凝固促進活性を調節する方法。
【請求項12】
プロテアーゼ開裂部位がトロンビン開裂部位である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
プロテアーゼ開裂部位が第Xa因子開裂部位である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
トロンビンまたはプラスミンの産生を促進するための医薬の製造における、請求項1〜6のいずれかに記載のプロテアーゼ制御抗体の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2012年3月30日出願の米国出願番号61/617,837の利益を主張し、当該出願の全体を引用により本明細書に包含させる。
【0002】
本明細書において引用する全ての文献は、その全体を引用により本明細書に包含させる。
【0003】
本出願は、本出願に関する配列表である、2012年3月26日に作製し、“0297301274sequencelisting.txt”なるファイル名の64kbテキストファイルを引用により包含する。
【発明の概要】
【0004】
技術分野
技術分野は血友病および他の凝固障害の処置である。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】プロテアーゼ制御抗体の一態様の図示。VH、重鎖可変領域;VL、軽鎖可変領域;CH、重鎖定常領域;CL、軽鎖定常領域。
図2】トロンビン消化しおよびしていない2個のプロテアーゼ制御抗TFPI Fabフラグメント(“Fab−1”および“Fab−2”)のウェスタンブロット。
図3】ELISAによりアッセイした、トロンビン消化しおよびしていないFab−1およびFab−2の組織因子経路インヒビター(TFPI)結合を示すグラフ。
図4】トロンビン消化しおよびしていないFab−1(Fab1)およびFab−2(Fab2)のTFPI結合のBIACORETM測定を示すグラフ。
図5】HEK293 6E細胞に発現される精製IgG抗体のSDS−PAGE。
図6】親IgG(“親IgG”;上部)およびIgG2−リンカー1(下部)のウェスタンブロット。レーン1、トロンビン(1単位)で消化;レーン2、プロテアーゼなし(コントロール);レーン3、ウシプラスミンで消化;レーン4、エンテロキナーゼ(0.02μg)で消化;レーン5、ウシ第Xa因子(1μg)で消化;レーン6、マトリプターゼ(MTSP)(0.5μg)で消化;レーン7、ウロキナーゼ(uPA)(0.25μg)で消化;レーン8、ヒトライノウイルス3Cプロテアーゼ(HRV 3C)(2単位)で消化。
図7】ELISAによりアッセイした、トロンビン消化しおよびしていない、IgGのTFPI結合を示すグラフ。
図8】トロンビン消化しおよびしていない、親IgGおよびIgG−リンカー1のTFPI結合のBIACORETM測定を示すグラフ。
図9】ヒトプロテアーゼでのIgG−リンカー1およびWT抗体のプロテアーゼ消化を示す、ウェスタンブロット。
【発明を実施するための形態】
【0006】
詳細な記載
本明細書は、組織因子経路インヒビター(TFPI)に特異的に結合するプロテアーゼ制御抗体を開示する。本抗体は、血友病のような出血障害の処置に有用である。ある態様において、プロテアーゼ制御抗TFPI抗体はトロンビンおよび/またはプラスミンにより開裂され得る。先行するTFPI阻害により、かかるプロテアーゼ制御抗TFPI抗体はトロンビンおよび/またはプラスミンの産生を促進し、次いで本抗体を開裂し、そのTFPIへの結合活性を除きまたは著しく低下させる。このネガティブフィードバックにより、本抗体が安全治療域内で血液凝固を促進することが可能となる。
【0007】
1. プロテアーゼ制御抗TFPI抗体
ここに開示するプロテアーゼ制御抗体はTFPIと特異的に結合する。すなわち、当該抗体は、無関係の抗原(例えば、BSA、カゼイン)に対する結合親和性よりも高い(例えば、少なくとも2倍高い)親和性でTFPIに結合する。ここで使用する用語“組織因子経路インヒビター”または“TFPI”は、細胞により自然に発現されるヒトTFPIのあらゆる変異体、アイソフォームおよび種ホモログをいう。
【0008】
ある態様において、プロテアーゼ制御抗体は、TFPIと少なくとも約10−1〜約1012−1(例えば、10−1、105.5−1、10−1、106.5−1、10−1、107.5−1、10−1、108.5−1、10−1、109.5−1、1010−1、1010.5−1、1011−1、1011.5−1、1012−1)の親和性で結合する。抗原と結合する抗体の親和性(K)は、例えば、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、二分子相互作用分析(BIA)(例えば、Sjolander & Urbaniczky; Anal. Chem. 63:2338-2345, 1991; Szabo, et al., Curr. Opin. Struct. Biol. 5:699-705, 1995)および抗原を発現する細胞への抗体の結合を定量するための蛍光標識細胞分取(FACS)のような免疫アッセイを含む、当分野で知られる任意の方法を使用してアッセイできる。BIAはいずれの相互作用物(例えば、BIACORETM)も標識せずに、リアルタイムで生体分子特異的相互作用を分析するテクノロジーである。光学現象表面プラズモン共鳴(SPR)における変化を、生体分子間のリアルタイム反応の指標として使用できる。
【0009】
プロテアーゼ制御抗TFPI抗体は、TFPIに特異的に結合できる実質的に完全長免疫グロブリン分子(例えば、IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3、IgG4、IgM、IgD、IgE、IgA)、FabまたはF(ab’)のようなその抗原結合フラグメントまたはscFv、Fvまたは二重特異性抗体のような抗原結合部位を含む構築物を使用して構築できる。用語“抗体”はまた、抗体相補性決定領域(CDR)挿入断片を天然抗体で見られるのと同じ活性結合立体配座に、これらのキメラタンパク質のTFPIへの結合がCDRを得た天然抗体のTFPI結合活性と比較して維持されるように、方向づけできる他のタンパク質足場も含む。
【0010】
ここで使用する“単離抗体”は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体である(例えば、TFPIに結合する単離抗体は、TFPI以外の抗原と結合する抗体を実質的に含まない)。ヒトTFPIのエピトープ、アイソフォームまたは変異体と結合する単離抗体は、しかしながら、例えば、他の種由来の他の関連抗原(例えば、TFPI種ホモログ)と交差反応性を有してよい。単離抗体は、他の細胞物質および/または化学物質を実質的に含まない。
【0011】
ここに開示するプロテアーゼ制御抗体は、1個以上のプロテアーゼにより認識されるプロテアーゼ開裂部位を含むように操作されている。ここで使用する“プロテアーゼ開裂部位”は、プロテアーゼにより認識され、開裂されるアミノ酸配列をいう。ある態様において、プロテアーゼ開裂部位は、その可変領域と定常領域の間に位置する。ある態様において、プロテアーゼ制御抗TFPI抗体は、トロンビン、プラスミンおよび/または第Xa因子により開裂され得る1個以上のプロテアーゼ開裂部位を含む。ある態様において、プロテアーゼ制御抗TFPI抗体の可変領域と定常領域の間のアミノ酸配列は、プロテアーゼ開裂部位に加えてポリペチドリンカーを含む(例えば、図1に図示するとおり)。リンカーは、一アミノ酸またはポリペチド配列(例えば、100個までのアミノ酸)であり得る。例えば、リンカーはGGGGS(配列番号149)であり得る。他の有用なリンカーは、配列番号151〜176に記載のものを含む。他の態様において、リンカーは存在せず、開裂部位自体が可変領域と定常領域の間に挿入されている。
【0012】
トロンビンについて、(1)X−X−P−R−X−X(配列番号147)(ここで、XおよびXは疎水性アミノ酸であり、XおよびXは非酸性アミノ酸である)および(2)GRGの少なくとも2個の最適開裂部位が決定されている。トロンビンは、特にアルギニン残基後で開裂される。プラスミンはまた2個の上記開裂部位でも開裂できるが、いずれにしても、トロンビンと比較して特異性は低い。他の有用なトロンビン開裂部位は配列番号1〜60として提供する。他の有用なプラスミン開裂部位は配列番号12、47、48、53および61〜130として提供する。ある態様において、開裂部位はLVPRGS(配列番号137)である。
【0013】
ある態様において、I−(EまたはD)−G−R(配列番号148)のような第Xa因子開裂部位を使用する。他の有用な第Xa因子開裂部位は配列番号29、59および61〜69として提供する。他のトロンビンおよび第Xa因子開裂部位または配列は、Bianchini [Bianchini EP et al 2002 JBC]が記載した先の刊行物に見ることができる。1個のプロテアーゼ制御抗体は1個を超えるプロテアーゼ開裂部位を含み得る。
【0014】
開裂部位に加えて、プロテアーゼの第二の結合部位、いわゆるエキソサイトを、開裂がより効率的となるようにプロテアーゼ制御TFPI抗体に導入し得る。トロンビンのエキソサイトは、PAR1、フィブリノーゲンおよびヒルジンのようなプロテアーゼ基質または阻害剤の天然エキソサイトに由来し得る。エキソサイトはまた天然エキソサイトの誘導体でもよい。
【0015】
プロテアーゼ制御TFPI抗体は合成によりまたは組み換えにより製造できる。抗体を製造するための多くのテクノロジーが利用可能である。例えば、ファージ抗体テクノロジーを使用して抗体を製造できる(Knappik et al., J. Mol. Biol. 296:57-86, 2000)。抗体を得るための他の方法は、WO91/17271およびWO92/01047に記載のとおり、B細胞からのDNAライブラリーのスクリーニングである。これらの方法において、メンバーがその外表面に異なる抗体を提示するファージのライブラリーを作製する。抗体は、通常FvまたはFabフラグメントとして提示される。抗体を提示するファージを、選択したタンパク質に対する結合の親和性富化により選択する。抗体はまたトリオーマ法を使用しても製造できる(例えば、Oestberg et al., Hybridoma 2:361-367, 1983;米国特許4,634,664;米国特許4,634,666)。
【0016】
抗体はまた抗体コード化発現構築物を遺伝子導入されている宿主細胞を含む、抗体を発現する任意の細胞から精製できる。宿主細胞は、抗体を発現する条件下で培養できる。精製抗体は、当分野で周知の方法を使用して、ある種のタンパク質、炭水化物または脂質のような、細胞内で抗体と結合し得る他の細胞成分から分離できる。このような方法は、分子ふるいクロマトグラフィー、硫酸アンモニウム分画、イオン交換クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィーおよび調製用ゲル電気泳動を含むが、これらに限定されない。調製物の純度は、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動のような当分野で知られるあらゆる手段により評価できる。精製抗体の調製物は、1種を超える抗体を含み得る。
【0017】
あるいは、プロテアーゼ制御抗TFPI抗体を、固相技法を使用する直接ペプチド合成によるような、そのアミノ酸配列を合成する化学法を使用して製造できる(例えば、Merrifield, J. Am. Chem. Soc. 85:2149-2154, 1963; Roberge et al., Science 269:202-204, 1995)。タンパク質合成は手動技法を使用してまたは自動化により実施できる。所望により、化学方法を使用して、抗体の複数フラグメントを別々に合成し、完全長分子を製造するために組み合わせてよい。
【0018】
プロテアーゼ制御抗TFPI抗体はまた“一本鎖Fv(scFv)形式”での構築もでき、ここでは、プロテアーゼ開裂部位が、scFvの軽鎖可変領域と重鎖可変領域の間のペプチドリンカー内またはリンカー周辺に挿入されている。ペプチドリンカーが抗原結合のためにscFvの2個の可変領域を結び付けておくために必要であるため、ペプチドリンカーまたは隣接領域の開裂は、目的のプロテアーゼの、その抗原に対するscFvの結合を不活性化または下方制御させる。配列番号179のアミノ酸配列(配列番号180によりコードできる)は、scFv形式のプロテアーゼ制御抗TFPI抗体の一例である。
【0019】
ある態様において、プロテアーゼ制御TFPI抗体を、2個の結合部位を有し、重鎖、軽鎖または両者の上に1個、2個、3個または4個のプロテアーゼ開裂部位を有し得る“IgG形式”で構築する。各場合、プロテアーゼ開裂部位は、リンカーのいずれか片側または両側の横に配置できる。さらに、各場合、開裂部位は同一でも異なってもよい。“IgG−リンカー1”(実施例5)および“IgG−リンカー2”は、IgG形式のプロテアーゼ制御抗TFPI抗体の例である。
【表1】
【0020】
2. ネガティブフィードバック
プロテアーゼ制御抗体は、本抗体の機能の結果として上方制御され、または産生されるプロテアーゼのプロテアーゼ開裂部位を含み得る。このようなプロテアーゼは、次いで、本プロテアーゼ制御抗体を開裂し、それによりネガティブフィードバックループを提供し、それによりプロテアーゼ制御抗体の過剰な活性の阻止に有用である。
【0021】
例えば、トロンビンおよび/またはプラスミンにより開裂できるプロテアーゼ制御抗TFPI抗体は、このようなネガティブフィードバック効果を発揮できる。このようなプロテアーゼ制御抗TFPI抗体はトロンビンおよび/またはプラスミンの産生を促進する。トロンビンおよびプラスミンは、続いてプロテアーゼ制御抗TFPI抗体を開裂し、そのTFPIへの結合活性を除去し、または著しく減少させる。このネガティブフィードバックにより、本抗体が安全な治療域で血液凝固を促進することが可能となる。
【0022】
3. ポリヌクレオチド
本開示はまたプロテアーゼ制御抗体をコードするポリヌクレオチドを提供する。これらのポリヌクレオチドは、例えば、治療使用のための、一定量の抗体の産生に使用できる。
【0023】
抗体コード化cDNA分子は、鋳型としてmRNAを使用して、標準的分子生物学技法により製造できる。その後、cDNA分子を、当分野で知られ、Sambrook, et al.(Molecular Cloning: A Laboratory Manual, (Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press; Cold Spring Harbor, N.Y.; 1989) Vol. 1-3)のようなマニュアルに開示された分子生物学技法を使用して複製できる。PCRのような増幅技法を使用して、ポリヌクレオチドのさらなるコピーを得てよい。あるいは、合成化学技法を使用して、プロテアーゼ制御抗TFPI抗体をコードするポリヌクレオチドを合成できる。
【0024】
抗体をコードするポリヌクレオチドを発現するために、ポリヌクレオチドを、挿入されたコーディング配列の転写および翻訳に必要な要素を含む発現ベクターに挿入できる。当業者に周知の方法を、抗体および適当な転写および翻訳調節エレメントをコードする配列を含む発現ベクターの構築に使用できる。これらの方法は、インビトロ組み換えDNA技法、合成技法およびインビボ遺伝的組換えを含む。このような技法は、例えば、Sambrook, et al. (1989)およびAusubel, et al. (Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York, N.Y., 1995)に記載されている。
【0025】
多様な発現ベクター/宿主系を、抗体をコードする配列の包含および発現に利用できる。これらは、組み換えバクテリオファージ、プラスミドまたはコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌のような微生物;酵母発現ベクターで形質転換された酵母;ウイルス発現ベクターに感染させた昆虫細胞系(例えば、バキュロウイルス);ウイルス発現ベクターで形質転換された植物細胞系(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV);または細菌発現ベクター(例えば、TiプラスミドまたはpBR322プラスミド)または動物細胞系を含むが、これらに限定されない。
【0026】
調節エレメントまたは制御配列は、転写および翻訳を行うために宿主細胞タンパク質と相互作用するベクターの非翻訳領域 − エンハンサー、プロモーター、5’および3’非翻訳領域 − である。このようなエレメントの強度および特異性は変化し得る。ベクター系および宿主によって、構成的および誘導型プロモーターを含む任意の数の適切な転写および翻訳エレメントを使用できる。例えば、細菌系にクローニングするとき、誘導型プロモーターを使用できる。バキュロウイルスポリヘドリンプロモーターを昆虫細胞で使用できる。植物細胞ゲノム(例えば、ヒートショック、ルビスコおよび貯蔵タンパク質遺伝子)または植物ウイルス(例えば、ウイルスプロモーターまたはリーダー配列)由来のプロモーターまたはエンハンサーをベクターにクローン化できる。哺乳動物細胞系において、哺乳動物遺伝子または哺乳動物ウイルスからのプロモーターを使用できる。抗体をコードするヌクレオチド配列の複数コピーを含む細胞株の製造が必要であるならば、SV40またはEBVに基づくベクターを、適当な選択可能マーカーと共に使用できる。
【0027】
抗体の製造を含む、さらなる有用な分子生物学的技術を記載する一般的教科書は、Berger and Kimmel (Guide to Molecular Cloning Techniques, Methods in Enzymology, Vol. 152, Academic Press, Inc.); Sambrook, et al., (Molecular Cloning: A Laboratory Manual, (Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press; Cold Spring Harbor, N.Y.; 1989) Vol. 1-3); Current Protocols in Molecular Biology, (F. M. Ausabel et al. [Eds.], Current Protocols, a joint venture between Green Publishing Associates, Inc. and John Wiley & Sons, Inc. (supplemented through 2000)); Harlow et al., (Monoclonal Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1988), Paul [Ed.]); Fundamental Immunology, (Lippincott Williams & Wilkins (1998)); およびHarlow, et al. (Using Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1998))である。
【0028】
4. 医薬組成物
プロテアーゼ制御抗TFPI抗体は、薬学的に許容される担体を含む医薬組成物で提供できる。薬学的に許容される担体は、好ましくは非発熱性である。プロテアーゼ制御抗TFPI抗体を含む医薬組成物は、単独で、または、食塩水、緩衝化食塩水、デキストロースおよび水を含むが、これらに限定されない種々の無菌、生体適合性医薬担体中で投与できる、安定化剤のような少なくとも1種の他の成分と組み合わせて投与できる。多様な水性担体、例えば、0.4%食塩水、0.3%グリシンなどを用いることができる。これらの溶液は無菌であり、一般的に微粒子状物質を含まない。これらの溶液を、慣用の、周知の滅菌法(例えば、濾過)により滅菌できる。組成物は、pH調整および緩衝剤などのような、生理学的条件に近似させるために必要な薬学的に許容される補助的物質を含み得る。医薬組成物中のプロテアーゼ制御抗TFPI抗体の濃度は広範囲で変わり得て、約0.5重量%未満から、通常1重量%または少なくとも約1重量%から15または20重量%程度までの範囲で、主に液剤の体積、粘性などに基づいて選択した特定の投与方法によって選択される。米国特許番号5,851,525参照。所望により、1種を超える異なるプロテアーゼ制御抗TFPI抗体を医薬組成物に包含できる。
【0029】
活性成分に加えて、医薬組成物は、薬学的に使用できる製剤への組成物の加工を容易にする賦形剤および助剤を含む、適切な薬学的に許容される添加物を含み得る。医薬組成物は、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、髄腔内、脳室内、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、非経腸、局所、舌下または直腸を含むが、これらに限定されない任意の経路により投与できる。
【0030】
医薬組成物製剤後、適当な容器に分注し、適応症状の処置についてラベルする。このようなラベルは投与量、投与頻度および投与方法を含む。
【0031】
5. 方法
1種以上のプロテアーゼ制御抗TFPI抗体を含む医薬組成物を、血友病または他の凝固障害を処置するために、患者に単独でまたは他の薬剤、薬物または凝固因子と組み合わせて投与できる。プロテアーゼ制御抗TFPI抗体の“治療有効量”は、血液凝固を促進するまたは出血時間を短縮するプロテアーゼ制御抗TFPI抗体の量である。治療有効量の決定は十分に当業者がなし得る範囲である。
【0032】
治療有効量は、初めに細胞培養アッセイまたは動物モデル、通常ラット、マウス、ウサギ、イヌまたはブタを用いて推定できる。動物モデルを、適当な範囲および投与経路の決定にも使用できる。その後、このような情報を使用して、ヒトのための有用な投与量および投与経路を決定できる。
【0033】
プロテアーゼ制御抗TFPI抗体の治療効果および毒性、例えば、ED50(集団の50%に治療効果がある投与量)およびLD50(集団の50%に致死である投与量)を、細胞培養または実験動物を用いる標準的方法により決定できる。毒性対治療効果の用量比は治療指数と称し、LD50/ED50の比として表すことができる。
【0034】
大きい治療指数を示す医薬組成物が好ましい。細胞培養アッセイおよび動物試験で得たデータをヒトに使用するための投与量範囲の計算に使用する。このような組成物に含まれる投与量は、好ましくは毒性がほとんどないかまたは全くなく、ED50相当量を含む循環濃度の範囲とする量である。用いる投与形態、患者の感受性および投与経路によって投与量はこの範囲内で変わる。
【0035】
正確な投与量は、処置を必要とする患者の関連因子を考慮して、医師により決定される。用法および用量は、プロテアーゼ制御TFPI抗体の十分なレベルを提供するためまたは所望の効果を維持するように調整される。考慮すべき因子は、疾患状態の重症度、対象の一般的健常度、対象の年齢、体重および性別、食習慣、投与の時間および頻度、併用剤、反応感受性および治療に対する耐容性/応答を含む。長時間作用型医薬組成物は、特定の製剤の半減期およびクリアランス速度によって、3〜4日毎、週毎または2週毎に投与できる。
【0036】
ある態様において、プロテアーゼ制御抗TFPI抗体のインビボ治療上有効な投与量は、約5μg〜約100mg/kg患者体重、約1mg〜約50mg/kg患者体重、約10mg〜約50mg/kg患者体重の範囲である。
【0037】
プロテアーゼ制御抗TFPI抗体を含む医薬組成物の投与方法は、抗体を宿主に送達する適切な経路のいずれかである(例えば、皮下、筋肉内、静脈内または鼻腔内投与)。
【0038】
ある態様において、プロテアーゼ制御抗TFPI抗体を他の治療剤を併用せずに投与する。ある態様において、プロテアーゼ制御抗TFPI抗体を、トロンビンの初期産生を増強し、同時にトロンビンレベルを、凝固障害を有する人々で血栓症を誘発し得る範囲より低く維持されることを確実にするために、薬物または凝固因子のような他の薬剤と組み合わせて投与する。プロテアーゼ制御抗TFPI抗体の投与は、他の薬剤の投与前、投与後、または実質的に同時でもよい。
【0039】
明細書中の如何なる記載も、本開示の範囲を限定すると解釈してはならない。記載されている全ての例は、非限定的代表例である。上記態様は、上記教示に照らして、当業者に認識されるとおり、修飾または変更できる。従って、ここに開示する態様は、特許請求の範囲およびこれと均等な範囲内で、具体的記載とは異なる態様でも実施できることが理解されるべきである。
【実施例】
【0040】
実施例1
プロテアーゼ制御抗TFPI Fabフラグメントの構築
“Fab−1”および“Fab−2”である2個のプロテアーゼ制御抗TFPI Fabは、配列番号177(重鎖)および配列番号178(軽鎖)に示す抗TFPI抗体配列に基づくものであった。両Fabとも、両可変ドメインのC末端に導入されたトロンビン/プラスミンプロテアーゼ開裂部位であるLVPRGS(配列番号137)を有する。Fab−1の開裂部位は(Gly)Serリンカーが隣接する。Fab−2は6アミノ酸開裂部位のみを含み、リンカーは存在しない。トロンビンおよびプラスミンは、LVPRGS(配列番号137)のArg(R)残基のC末端を開裂する。FabをコードするDNAは、細菌発現のための最適化コドンを用いてGenScriptで合成した。Fabのアミノ酸およびDNA配列を下の表に示す。
【表2】
【0041】
Fabコーディング領域を制限酵素BsaIおよびHindIII(New England Biolabs)で消化した。DNAフラグメントを、アガロースゲルを使用して精製し、pBADmycHisA(Invitrogen)にサブクローン化した。クローン化DNAを、標準的方法を使用してライゲートし、形質転換した。陽性クローンをDNA配列決定により確認し、BL21大腸菌(E. coli)発現に使用した。
【0042】
実施例2
トロンビン開裂Fabのウェスタンブロット
約2.5μgの粗精製したFab−1およびFab−2を0単位、2単位または10単位のトロンビン(Novagen)で1時間、37℃で消化した。消化物を4〜15%CRITEREONTMTGXTMゲル(Bio-Rad)を流した。タンパク質をニトロセルロース膜に移し、抗ヒトFab抗体(Southern Biotech)でプローブした。
【0043】
Fab−1およびFab−2開裂のウェスタンブロットを図2に示す。全てのサンプルを還元した。トロンビンで処理したとき、約12kDAのバンドが両Fabで観察された。これらのバンドはトロンビン消化していないサンプルに存在せず、小サイズタンパク質がトロンビン開裂の産物であったことを示す。
【0044】
実施例3
トロンビン消化Fab−1およびFab−2のTFPI ELISA
約2.5μgの一部精製したFab−1およびFab−2を、2単位のビオチニル化トロンビン(Novagen)で23℃で一夜消化した。ストレプトアビジンセファロースビーズ(100μL)を消化物に添加して、トロンビンを枯渇させた。消化Fabサンプルを、セファロースビーズ/トロンビン複合体を捕獲するカラムに適用した。溶離液は消化Fabを含んでいた。
【0045】
MAXISORP(登録商標)96ウェルプレート(Nunc)を、1μg/mLのTFPIのPBS溶液で一夜、4℃で被覆した。プレートを1時間、室温(RT)で、5%脱脂粉乳PBS/0.5%TWEEN−20(登録商標)(PBS−T)中でブロックした。非消化および消化Fab−1およびFab−2の連続2倍希釈をウェルに添加し(100μL/ウェル)、1時間、RTでインキュベートした。プレートをPBS−Tで5回洗浄した。AMPLEX(登録商標)Red(Invitrogen)溶液での検出のために、二次HRP接合抗Fab抗体(100μLの1:10,000希釈物)を添加した。図3に示すとおり、トロンビン消化は、TFPI結合のシグナルを有意に減少させた。
【0046】
実施例4
トロンビン消化Fab−1およびFab−2のBIACORETM測定
約2.5μgの粗く精製したFab−1およびFab−2を、2単位のビオチニル化トロンビン(Novagen)で、23℃で一夜消化した。ストレプトアビジンセファロースビーズ(100μL)を消化物に添加して、トロンビンを枯渇させた。消化Fabサンプルを、セファロースビーズ/トロンビン複合体を捕獲するカラムに適用した。溶離液は消化Fabを含んでいた。
【0047】
BIACORETM分析のために、ヒトTFPI(American Diagnostica)を、100相対単位(RU)の標的レベルでアミンカップリングにより固定化し、抗体を移動相に注入した。HBS−pをランニング緩衝液として使用した。対照チャネルを、固定化タンパク質なしで表面を活性化し、次いで不活性化したブランク固定化を使用して調製した。手動ランを実施して、Fabおよび緩衝液対照の上昇したRUを測定した。
【0048】
図4に示すとおり、開裂可能リンカーがない親Fabは24.6RUを生じ、未消化Fab−1(25.6RU)およびFab2(27.9RU)と同等であった。トロンビン開裂後、Fab−1およびFab−2の結合シグナルは50%を超えて減少し、開裂Fab−1およびFab−2が定常ドメインを失っただけでなく、TFPIへの結合活性も失ったことを示した。
【0049】
実施例5
IgG発現および精製
プロテアーゼ制御抗TFPI免疫グロブリン分子である“IgG−リンカー1”を、配列番号177(重鎖)および配列番号178(軽鎖)に示す親抗TFPI抗体配列に基づき構築した。分子クローニングを促進するために、BlpI部位を重鎖コーティング配列に導入した。Fab−1のプロテアーゼ開裂可能リンカーの位置と比較して、BlpI部位の導入は、IgG−リンカー1のリンカー位置を、2アミノ酸定常領域側にシフトさせる。
【0050】
HEK293 6E細胞に、構築IgG発現ベクターを遺伝子導入し、IgG抗体を含む培養上清を回収した。抗体を、MABSELECT SURETMの親和性カラム、続いてSUPERDEXTM200クロマトグラフィーを使用して精製した。SDS−PAGE上の精製IgG−リンカー1を図5に示す。
【0051】
実施例6
親IgGおよびIgG−リンカー1のウェスタンブロット
精製親IgGおよびIgG−リンカー1(0.5μg)を、トロンビン、ウシプラスミン、ウシ第Xa因子、マトリプターゼ(MTSP)、ウロキナーゼ(uPA)またはヒトライノウイルス3Cプロテアーゼ(HRV 3C)で消化した。抗体をこれらプロテアーゼと1時間、37℃でインキュベートした。消化物は4〜20%CRITEREONTMTGXTMゲル(Bio-Rad)上を流した。タンパク質をニトロセルロース膜に移し、抗ヒトIgG重および軽鎖抗体(Pierce)でプローブした。IgG2およびIgG2−リンカー1のウェスタンブロットを図6に示す。全てのサンプルを還元した。
【0052】
完全IgGは、還元条件下2個のバンドを生じた。2個のバンドは重鎖(50kD)および軽鎖(25kD)に対応する。消化抗体IgG−リンカー1は、非消化抗体に対して分子量のシフトを示した。次のプロテアーゼを抗体の消化に使用した:トロンビン、プラスミン、ウシ第Xa因子、MTSPおよびuPA。消化IgG−リンカー1抗体は、重鎖の50kDから37kDへの分子量のシフトを示した。このシフトサイズは、重鎖からのVHドメイン消失に対応する。25kD軽鎖から約16kDaへの弱いバンドの分子量シフトもあり、これは、軽鎖からのVLドメインの開裂を示す。これらのプロテアーゼは親IgGを開裂せず、分子量減少は、抗体に操作した開裂部位によるプロテアーゼ消化の結果であることが示された。
【0053】
実施例7
トロンビン消化親IgGおよびIgG−リンカー1のTFPI結合ELISA
1μgの完全長抗体である親IgGおよびIgG−リンカー1を、1時間、37℃で1単位のビオチニル化トロンビン(Novagen)で消化した。50μLのストレプトアビジンセファロースビーズを消化物に添加して、トロンビンを枯渇させた。消化IgGサンプルを、セファロースビーズ/トロンビン複合体を捕獲するカラムに適用した。溶離液は消化IgGを含んでいた。
【0054】
MAXISORP(登録商標)96ウェルプレート(Nunc)を、1μg/mLのTFPIのPBS溶液で、一夜、4℃で被覆した。プレートを1時間、室温(RT)で5%脱脂粉乳PBS/0.5%TWEEN(登録商標)20(PBS−T)中でブロックした。非消化および消化親IgGおよびIgG−リンカー1の連続2倍希釈をウェルに添加し(100μL/ウェル)および1時間、RTでインキュベートした。プレートをPBS−Tで5回洗浄した。AMPLEX(登録商標)RED(Invitrogen)溶液での検出のために、二次HRP接合抗Fab抗体(100μLの1:10,000希釈物)を添加した。
【0055】
TFPI結合ELISAの結果を図7に示す。トロンビン消化IgGリンカー−1によるTFPI結合の消失を示す。未消化IgG−リンカー1のTFPI結合は非消化およびトロンビン消化親IgGのTFPI結合と同等であった。
【0056】
実施例8
親IgGおよびIgG−リンカー1のBIACORETM分析
CM4センサーチップを、アミンカップリングキット(GE HealthCare)を使用する低密度のヒトTFPIで固定化した。親IgGおよびIgG−リンカー1の動態アッセイを、種々の濃度の抗体と、続くpH1.5 グリシン緩衝液での再構築を使用して行った。1μg濃度の親IgGおよびIgG−リンカー1抗体を、1単位のビオチニル化トロンビン(Novagen)で1時間、37℃で消化した。消化し、およびしていない抗体を、TFPI結合分析のためにBIACORETM系に注入した。次の数値は、45μlの6.25μg/ml抗体または対照サンプル注入により生じたシグナルを示す。
【0057】
動態アッセイにおいて、親IgGおよびIgG2−リンカー1は、それぞれ会合速度(ka)1.536×10/Msおよび1.902×10/Msを示した。この2抗体とも、30分で測定可能は解離はなかった。これは、リンカー1の挿入が抗体の結合活性を顕著に変えなかったことを示す。
【0058】
抗体に対するトロンビン開裂の効果を図8に示す。トロンビン消化は、TFPIに対する親IgG結合をわずかに減少させ、一方トロンビン消化は、TFPIに対するIgG2−リンカー1結合を20RUから5RUへ減少させ、これは75%減少に相当する。。
【0059】
実施例9
プロテアーゼ/凝固因子処理IgG−リンカー1および親IgGのウェスタンブロット
次のヒトプロテアーゼ/凝固因子を、80nMのIgG−リンカー1およびWT抗体消化に使用した:トロンビン(0.1μM)、プラスミン(0.1μM)、第VIIa因子(0.01μM)、第IXa因子(0.089μM)、第Xa因子(13μM)、第XIa因子(0.031μM)、第XIIIa因子(0.03μM)。処置材料を4〜15%CRITEREONTMTGXゲル(Bio-Rad)上に流した。タンパク質をニトロセルロース膜に移し、抗ヒトIgG抗体(Pierce)でプローブした。
【0060】
37kDaバンドの出現により示されるとおり、ヒトトロンビン、プラスミンおよび第Xa因子はIgG−リンカー1を消化し、トロンビンが最も効率的に消化した(図9)。プロテアーゼは親IgGを開裂せず、分子量減少は、抗体に操作した開裂部位によるプロテアーゼ消化の結果であることが示された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]