特許第6283029号(P6283029)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6283029
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】粘着剤組成物及び粘着剤シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 125/04 20060101AFI20180208BHJP
   C09J 123/02 20060101ALI20180208BHJP
   C09J 7/20 20180101ALI20180208BHJP
   C09J 7/00 20180101ALI20180208BHJP
【FI】
   C09J125/04
   C09J123/02
   C09J7/02 Z
   C09J7/00
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-526320(P2015-526320)
(86)(22)【出願日】2014年7月7日
(86)【国際出願番号】JP2014068024
(87)【国際公開番号】WO2015005266
(87)【国際公開日】20150115
【審査請求日】2016年9月21日
(31)【優先権主張番号】特願2013-143936(P2013-143936)
(32)【優先日】2013年7月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004020
【氏名又は名称】ニチバン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】竹田 慎也
(72)【発明者】
【氏名】松下 洋己
【審査官】 吉田 邦久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−142132(JP,A)
【文献】 特開平06−234821(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/011561(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/149708(WO,A1)
【文献】 特開2009−241477(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/113153(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 125/04
C09J 7/00
C09J 7/20
C09J 123/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0〜100℃における損失正接tanδが0.6以下であり、かつ0〜100℃における貯蔵弾性率G’が100,000Pa以上であり、
ガラス転移点Tgが−5℃以下であるスチレン系エラストマー(成分A)と、
ガラス転移点Tgが−5℃以下である非晶質ポリオレフィンエラストマー(成分B)と
を含む、粘着剤組成物。
【請求項2】
成分Aと成分Bとの合計100質量部のうち、当該成分Aを51質量部〜80質量部、当該成分Bを49質量部〜20質量部含む、請求項記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の粘着剤組成物を含む粘着剤シート。
【請求項4】
塗膜表面保護用である、請求項記載の粘着剤シート。
【請求項5】
車両用塗膜表面保護用である、請求項記載の粘着剤シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な粘着剤組成物及び当該粘着剤組成物を含む粘着剤シートに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの塗膜表面保護用の粘着剤シートを押出し製法により製造する場合、多くはスチレン系エラストマーが使用される。
特許文献1には、加工性の観点から、スチレン重合ブロックと共役ジエン重合ブロックからなる重合体の混合物を水素添加した共重合体を主体とする粘着剤組成物が開示されている。
特許文献2には、スチレン(1〜50重量%)−ジエン系炭化水素(99〜50重量%)のランダム共重合体の水素添加物と非晶質ポリプロピレン系エラストマーを特定の比率で配合した粘着剤組成物が開示されている。
特許文献3には、非晶性オレフィン共重合体、結晶性オレフィン系重合体及びスチレン系ブロック共重合体の水素添加物を特定の比率で含み、10HZでのtanδが0.2以上1.0未満である粘着剤組成物が開示されている。
特許文献4には、ビニルイソプレンブロックを含有し特定の粘着層の硬度(マルテンス硬さ)を有する粘着層を備える表面保護フィルムが開示されている。
特許文献5には、ポリスチレンブロックとビニル−イソプレンブロックが結合したトリブロック共重合体の水素添加物と非晶質ポリプロピレン系エラストマーを特定の比率で配合した粘着剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平5−74627号公報
【特許文献2】特許第4275191号公報
【特許文献3】特開2006−188646号公報
【特許文献4】特開2010−126711号公報
【特許文献5】国際公開第2013/011561号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、スチレン系粘着剤は経時にて粘着力が亢進する現象がしばしば観察されるが、これは保護シートの機能の一つである再剥離性能を損なうものとなる。また、保護シートは様々な環境下で使用することが想定されるので、幅広い温度域にて粘着性を示す必要があり、剥離後に被着体への糊残りや塗膜貼り跡などの異常は望ましくない。
【0005】
これら問題点を解決するため、例えば、特許文献5では、水添スチレン系エラストマーにオレフィン系共重合体を配合した粘着組成物が提案されている。
しかしながら、従来の保護シート用の粘着剤組成物は、耐熱性を得るために、ガラス転移点(Tg)が高い水添スチレン系エラストマーやオレフィン系共重合体を用いてきたので、低温特性を良好なものにするためには、軟化剤などを多量に配合する必要があった。その結果、従来の保護シート用の粘着剤組成物では低温特性と粘着力亢進抑制とを両立することが困難であった。
【0006】
本発明は、低温から高温までの幅広い温度領域で良好な粘着特性を示す一方、経時による粘着力亢進がなく、剥離後の糊残りや塗膜貼り跡も抑えられた、新規な塗膜保護用粘着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の目的を達成するために、鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、0〜100℃における損失正接tanδが0.6以下であり、かつ0〜100℃における貯蔵弾性率G’が100,000Pa以上であることを特徴とする粘着剤組成物に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の粘着組成物は、低温から高温までの幅広い温度領域で粘着性を示す一方、経時による粘着力亢進がなく、剥離後の糊残りや塗膜貼り跡も抑えられ、良好な再剥離性も示す。
また、本発明の粘着剤組成物では、軟化剤の配合量を、高温で垂れない程度に、かつ接着ライクになって粘着力が亢進しない程度に、適切な範囲、例えば、後述の成分Iと成分IIとの合計100質量部又は後述の成分Aと成分Bとの合計100質量部に対して、15〜30質量部に収めることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1の損失正接tanδ、貯蔵弾性率G’、及び損失弾性率G”の温度分散を示す図である。
図2】実施例2の損失正接tanδ、貯蔵弾性率G’、及び損失弾性率G”の温度分散を示す図である。
図3】実施例3の損失正接tanδ、貯蔵弾性率G’、及び損失弾性率G”の温度分散を示す図である。
図4】実施例4の損失正接tanδ、貯蔵弾性率G’、及び損失弾性率G”の温度分散を示す図である。
図5】比較例1の損失正接tanδ、貯蔵弾性率G’、及び損失弾性率G”の温度分散を示す図である。
図6】比較例2の損失正接tanδ、貯蔵弾性率G’、及び損失弾性率G”の温度分散を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔粘着剤組成物〕
本発明の粘着剤組成物は、低温から高温までの幅広い温度領域で粘着性を示すために、0〜100℃における損失正接tanδが0.6以下、好ましくは0.55以下の範囲に収まる。また、当該損失正接tanδの下限値は特に制限されないが、例えば0.1以上であってもよい。
本発明の粘着剤組成物は、また、凝集力を高め、良好な再剥離性を得るために、0〜100℃における貯蔵弾性率G’が100,000Pa以上、好ましくは150,000Pa以上、より好ましくは200,000Pa以上であることを特徴とする。上記貯蔵弾性率G’の上限値は、特に制限されないが、例えば、1,000,000Pa以下である。
なお、上記の粘着剤組成物のtanδ及び貯蔵弾性率G’は実施例に記載の方法で測定される。
【0011】
前記の粘着組成物は、例えば、従来のような高Tgのエラストマーではなく、低Tgのエラストマーを用いて得ることができる。例えば、低Tgは、−5℃以下が好ましく、−9℃以下がより好ましく、−15℃以下がさらに好ましい。この場合、押出加工性に優れ、耐熱性を有する粘着剤組成物が得られるばかりではなく、軟化剤の添加量も抑えられるため、粘着亢進を抑制することもできる。上記のエラストマーとしては、Tgが低ければ特に制限されず、具体的にはスチレン系エラストマー、非晶質ポリオレフィンエラストマーなどが例示される。
【0012】
特に、前記の粘着組成物は、耐熱性のあるハードセグメント(結晶部)を有する低Tgのエラストマー(成分I)、及び明瞭な結晶ドメインを有さず、かつ押出加工性に優れる低Tgエラストマー(成分II)を用いて得ることができる。
上記の成分Iにおける耐熱性のあるハードセグメント(結晶部)とは、常温よりガラス転移点(Tg)が高く、Tg以上に加熱すると結晶構造が崩れて、可塑化される材料のことをいい、スチレン、α−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、ジビニルスチレン、1,1−ジフェニルスチレンビニルナフタレン、ビニルアントラセンなどが例示される。成分Iは、上記の耐熱性のあるハードセグメントを有していれば特に制限されず、例えば、SEBS、SEPS、SEEPS、HSBRなどがある。
また、成分IIは、非晶構造であれば特に制限されず、例えば、非晶性ポリオレフィン、ブチルゴムなどがある。
成分I及び成分IIのガラス転移点Tgは、それぞれ同一であっても又は異なっていてもよく、低いTgが好ましく、例えば、良好な耐熱性を有する粘着剤組成物が得られる点、そしてメルトインデックス(MI)を低く抑えて共押し出しでの生産性が上がる点から、−5℃以下が好ましく、−9℃以下がより好ましく、−15℃以下がさらに好ましい。
【0013】
前記の粘着剤組成物は、スチレン系エラストマー(成分A)及び非晶質ポリオレフィンエラストマー(成分B)を含んでいてもよい。
【0014】
本発明の粘着剤組成物に用いるスチレン系エラストマー(成分A)は、特に限定されず、公知のスチレン系エラストマーを用いることができる。スチレン系ブロック共重合体が好ましく、水添スチレン系ブロック共重合体がより好ましく、ポリスチレン-ポリ(エチレン-エチレン/プロピレン)ブロック-ポリスチレンブロック共重合体(SEEPS)がさらに好ましい。
上記成分Aに用いることのできる市販のスチレン系エラストマーとしては、例えば、株式会社クラレ製のハイブラー(登録商標)などがあるが、これに限定されない。
【0015】
本発明の粘着剤組成物に用いる非晶質ポリオレフィンエラストマー(成分B)は、非晶質でないVistamaxx(登録商標)などの結晶性ポリオレフィンエラストマーと比較して、得られる粘着剤組成物の接着亢進が抑制される点で有利である。
上記の非晶質ポリオレフィンエラストマーとしては、特に限定されず、公知の非晶質ポリオレフィンエラストマーを用いることができ、非晶質ポリプロピレン系エラストマー、特に非晶質プロピレン−αオレフィン共重合体エラストマー(ただし、αオレフィンにはエチレンおよびプロピレンを含まない)が好ましい。
なお、本発明における「非晶性ポリオレフィンエラストマー」とは、(結晶部分の重量)/(ポリマー全体の重量)が0.5以下であることを意味する。ここで、結晶部分の重量は、結晶化度(全質量に対する結晶部分の質量分率)から求めることができる。この結晶化度は、ポリマーのX線回折図から求めることができる(S.Krimm, A. V. Tobolsky: J. Polymer Sci., 7, 57, 1951)。特に製品として限定はされないが、上記(結晶部分の重量)/(ポリマー全体の重量)は0であるものが好ましく、例えば、住友化学(株)製タフセレンX1102がある。
上記成分Bに用いることのできる市販の非晶質ポリオレフィンエラストマーとしては、例えば、住友化学株式会社製のタフセレン(登録商標)などがあるが、これに限定されない。
【0016】
前記成分Aと前記成分Bのガラス転移点Tgは、同一であっても又は異なっていてもよく、良好な耐熱性を有する粘着剤組成物が得られる点、そしてMIを低く抑えて共押し出しでの生産性が上がる点から、−5℃以下が好ましく、−9℃以下がより好ましく、−15℃以下がさらに好ましい。
【0017】
前記成分Aと前記成分Bの合計100質量部のうち、得られる粘着剤組成物の粘着亢進が抑えられる点から、前記成分Aが51質量部〜80質量部であり、前記成分Bが49質量部〜20質量部であることが好ましく、前記成分Aが60質量部〜80質量部であり、前記成分Bが40質量部〜20質量部であることがより好ましい。
【0018】
本発明の粘着剤組成物には、本発明の効果に悪影響を与えない限り、前記成分Aと前記成分B以外のエラストマーを加えることができる。
【0019】
また、本発明の粘着剤組成物には、本発明の効果に悪影響を与えない限り、粘着付与樹脂、軟化剤、耐光安定剤、老化防止剤あるいは酸化防止剤、顔料、無機充填剤、有機充填剤、帯電防止剤、その他添加剤を加えることができる。
【0020】
粘着付与樹脂は、目標に応じて部数をコントロールするため特に質量部数を限定するものではないが、再剥離性、貯蔵弾性率、低温粘着性を考慮すると、前記成分Aと前記成分Bの合計100質量部に対して、5〜50質量部、5〜35質量部がより好ましい。
粘着付与樹脂は、特に限定されず、ロジン系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂、クマロン・インデン粘着付与樹脂、スチレン系樹脂、脂肪族系又は脂環属系又は芳香族系石油樹脂、及びそれらの水素添加物など公知の粘着付与樹脂を用いることができる。
【0021】
軟化剤は、目標に応じて部数をコントロールするため特に質量部数を限定するものではないが、再剥離性、貯蔵弾性率、低温粘着性を考慮すると、前記成分Aと前記成分Bの合計100質量部に対して、10〜30質量部がより好ましい。
軟化剤は、公知のものを一種又はそれ以上用いることもできるが、粘着性のある軟化剤を用いる場合は、プロセスオイルのような粘着性のない軟化剤を全軟化剤中に50質量%以上ブレンドすることが好ましい。
なお、本発明において、Tgが従来から使用されてきたものより低いエラストマーを使用する場合は、耐熱性の問題を解決するために、適切な軟化剤を選択して、その配合量を従来のものより減らすことが好ましい。なお、軟化剤の配合量を減らすと粘着力の亢進が高まりやすくなる。
【0022】
老化防止剤は、目標に応じて部数をコントロールするため特に質量部数を限定するものではないが、前記成分Aと前記成分Bの合計100質量部に対して、0.5〜5質量部がより好ましい。
【0023】
〔粘着剤シート〕
本発明の粘着剤シートは、前記の粘着剤組成物を含み、例えば、基材の少なくとも片面に有する。
【0024】
本発明の粘着剤シートの基材は、特に限定されず、フィルム、不織布、織布、又は紙などが使用できるが、粘着剤シートの貼り付け作業性、耐久性、コストの観点から、フィルムが好ましい。フィルムの材質としては、加工性の面から、熱可塑性樹脂が好ましく、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂がより好ましく、コストの観点から、ポリプロピレン系熱可塑性樹脂又はポリエチレン系熱可塑性樹脂がさらに好ましい。
【0025】
本発明の粘着剤シートの基材は単層又は2層以上とすることができる。
【0026】
本発明の粘着剤シートの基材は、粘着剤シートをロール状に巻き取ったものの解きほぐしを軽くするために、粘着剤組成物を有する面の反対側の面に長鎖アルキル系剥離剤、シリコーン系剥離剤等の公知の剥離剤をコーティングしてもよい。また、基材に公知のブロッキング防止剤を配合又はコーティングしてもよい。
【0027】
本発明の粘着剤シートの基材層の厚さは、特に限定されないが、作業性やコストの観点から見て、20〜80μmが好ましくは、30〜70μmがより好ましい。
【0028】
本発明の粘着剤シートの粘着剤組成物層の厚さは、特に限定されないが、作業性やコストの観点から見て、5〜20μmが好ましい。
【0029】
本発明の粘着剤シートの製造方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができるが、ホットメルト塗工(熱溶融塗工)によって粘着剤シートを作成するのが好ましい。しかし、これに限定されず、例えば、粘着剤組成物が溶剤可溶であれば、溶展塗工法で作成してもよい。
また、本発明の粘着剤シートの基材が熱可塑性樹脂である場合には、粘着剤組成物と共押し出しすることもできる。
【実施例】
【0030】
以下に実施例を用いて、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下の実施例及び比較例中の部及び%は、原則として、それぞれ質量部及び重量%を示す。
【0031】
〔原料〕
成分A:ハイブラー7311、(株)クラレ製、SEEPS、スチレン重合体ブロック−イソプレン重合体ブロック−ビニルイソプレン重合体ブロック−1,3−ブタジエン重合体ブロック−ビニル1,3−ブタジエン重合体ブロックのブロック共重合体の水素添加物、Tg=−32℃;
成分B1:タフセレンX1102、住友化学(株)製、非晶質ポリプロピレンエラストマー、Tg=−9℃;
成分B2:タフセレンX1104、住友化学(株)製、非晶質ポリプロピレンエラストマー、Tg=−24℃;
粘着付与樹脂:クリアロンK100、ヤスハラケミカル(株)、芳香族水添テルペン樹脂;
軟化剤1:日石ポリブテンHV300、JX日鉱日石エネルギー(株)、ポリブテン;
軟化剤2:ダイアナプロセスオイルPW−150、出光興産(株)、パラフィンオイル;
耐光安定剤:チヌビン326、BASF、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;
酸化防止剤:アンテージW500、川口化学工業(株)、フェノール系酸化防止剤;
【0032】
実施例1
成分A:ハイブラー7311 70質量部
成分B2:タフセレンX1104 30質量部
粘着付与樹脂:クリアロンK100 15質量部
軟化剤1:日石ポリブテンHV300 11.25質量部
軟化剤2:ダイアナプロセスオイルPW−150 11.25質量部
耐光安定剤:チヌビン326 1質量部
酸化防止剤:アンテージW500 0.6質量部
【0033】
〔粘弾性測定用試料の作製〕
上記組成の組成物を、10ton卓上テストプレス機〔(株)ゴンノ油圧機械製作所)にて、160℃、圧力40kgf/cmの条件で、厚み1mmのシート状に成形した。これを粘弾性測定用試料とした。
〔粘着特性測定用試料及び引張試験用試料の作製〕
上記組成の粘着剤組成物3kgを、予め、二軸押出機(製品名TEM−35BH、東芝機械(株))を使用して、180℃、200rpmで混練して、粘着剤組成物層(厚さ10μm)とし、ポリプロピレン基材層(厚さ40μm)とともに、30mmφTダイ押し出し機を用いて、Tダイ温度210℃、フィルム引き取り速度5m/minで、溶融共押出をして成形を行い、粘着剤シートを作成した。この粘着剤シートを、25mm幅のテープ状に裁断して、粘着特性測定用試料及び引張試験用試料とした。
【0034】
実施例2
成分A:ハイブラー7311 65質量部
成分B2:タフセレンX1104 35質量部
粘着付与樹脂:クリアロンK100 15質量部
軟化剤1:日石ポリブテンHV300 11.25質量部
軟化剤2:ダイアナプロセスオイルPW−150 11.25質量部
耐光安定剤:チヌビン326 1質量部
酸化防止剤:アンテージW500 0.6質量部
【0035】
成分Aと成分B2を上記組成に変え、成分B2の割合を増やした以外は、実施例1と同様にして測定用試料を作製した。
【0036】
実施例3
成分A:ハイブラー7311 70質量部
成分B2:タフセレンX1104 30質量部
粘着付与樹脂:クリアロンK100 15質量部
軟化剤1:日石ポリブテンHV300 10質量部
軟化剤2:ダイアナプロセスオイルPW−150 10質量部
耐光安定剤:チヌビン326 1質量部
酸化防止剤:アンテージW500 0.6質量部
【0037】
粘着付与樹脂と軟化剤の質量部数を上記組成に変え、軟化剤を若干減らした以外は、実施例1と同様にして測定用試料を作製した。
【0038】
実施例4
成分A:ハイブラー7311 70質量部
成分B2:タフセレンX1104 30質量部
粘着付与樹脂:クリアロンK100 15質量部
軟化剤1:日石ポリブテンHV300 12.5質量部
軟化剤2:ダイアナプロセスオイルPW−150 12.5質量部
耐光安定剤:チヌビン326 1質量部
酸化防止剤:アンテージW500 0.6質量部
【0039】
粘着付与樹脂と軟化剤の質量部数を上記組成に変え、粘着付与樹脂と軟化剤を若干増やした以外は、実施例1と同様にして測定用試料を作製した。
【0040】
比較例1
成分A:ハイブラー7311 75質量部
成分B1:タフセレンX1102 25質量部
粘着付与樹脂:クリアロンK100 15質量部
軟化剤1:日石ポリブテンHV300 33質量部
耐光安定剤:チヌビン326 1質量部
酸化防止剤:アンテージW500 0.6質量部
【0041】
成分B1をTgのより高いものとし、粘着付与樹脂と軟化剤の質量部数を上記組成に変え、粘着付与樹脂を若干増やし、そして軟化剤をポリブテンのみとして質量部数増やした以外は、実施例1と同様にして測定用試料を作製した。
【0042】
比較例2
成分A:ハイブラー7311 75質量部
成分B1:タフセレンX1102 25質量部
粘着付与樹脂:クリアロンK100 25質量部
軟化剤1:日石ポリブテンHV300 33質量部
耐光安定剤:チヌビン326 1質量部
酸化防止剤:アンテージW500 0.6質量部
【0043】
粘着付与樹脂を若干増やした以外は、比較例1と同様にして測定用試料を作製した。
【0044】
〔粘弾性測定方法〕
試料を、粘弾性測定器(製品名Phyca MCR301、Anton Paar社製)により、測定周波数1Hz、振り角γ=0.05%、測定温度−40℃〜100℃(低温側から測定)、昇温速度5℃/minで測定し、粘着剤組成物の損失正接tanδ、貯蔵弾性率G’、及び損失弾性率G”を測定した。結果は図1〜6及び表1に示した。
【0045】
〔粘着特性測定方法〕
粘着特性として、粘着力、対塗膜粘着力、経時後対塗膜粘着力、及び5℃対塗膜粘着力を下記の方法で測定した。結果は表1に示した。
【0046】
粘着力測定方法:
試料の粘着力測定は、JIS Z0237 2000に準拠して、180°ピール力を測定した。すなわち、BA SUS板に25mm幅の試料を貼付し、2kgの圧着ローラーで一往復後、23℃雰囲気下に30分放置し、その後、0.3m/minの引張り速度で180°ピール力を測定した。
【0047】
対塗膜粘着力測定方法:
試料の対塗膜粘着力測定は、JIS Z0237 2000に準拠して、180°ピール力を測定した。すなわち、塗装板に25mm幅の試料を貼付し、2kgの圧着ローラーで一往復後、23℃雰囲気下に30分放置し、その後、0.3m/minの引張り速度で180°ピール力を測定した。
【0048】
経時後対塗膜粘着力測定方法:
試料の経時後対塗膜粘着力測定は、JIS Z0237 2000に準拠して、180°ピール力を測定した。すなわち、塗装板に25mm幅の試料を貼付し、2kgの圧着ローラーで一往復後、70℃雰囲気下に9日間放置し、その後、0.3m/minの引張り速度で180°ピール力を測定した。
【0049】
5℃対塗膜粘着力測定方法:
試料の5℃対塗膜粘着力測定は、JIS Z0237 2000に準拠して、180°ピール力を測定した。すなわち、塗装板に25mm幅の試料を貼付し、2kgの圧着ローラーで一往復後、5℃雰囲気下に5時間放置し、その後、5℃の雰囲気下で0.3m/minの引張り速度で180°ピール力を測定した。
【0050】
〔引張試験〕
引張試験として、上降伏点荷重、5%引張荷重、10%引張荷重、破断点伸度、及び破断点荷重をJISなどの常法の方法で測定した。結果は表1に示した。
【表1】
【0051】
表1及び図1〜4に示すとおり、実施例1〜4では、0℃〜100℃におけるtanδが0.6以下の範囲にあり、かつ0℃〜100℃における貯蔵弾性率G’が100,000Pa以上であり、粘着力亢進も少なく再剥離性良好であり、糊残りや塗膜の貼り跡も良好で、5℃における粘着力も高く良好であった。
これに対して比較例1〜2は、0℃〜100℃における粘着剤組成物のtanδが0.6を超えており、糊残りや塗膜の貼り跡は良好であるが、粘着力亢進が実施例と比較して進んでおり、5℃における粘着力も実施例に比べ大幅に低かった。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の粘着剤組成物は、自動車などの車両の塗膜表面保護用の粘着剤シートなどに利用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6