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特許6283033ウイルス感染症およびさらなる疾患の処置のためのアシルアミノピリミジン誘導体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6283033
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】ウイルス感染症およびさらなる疾患の処置のためのアシルアミノピリミジン誘導体
(51)【国際特許分類】
   C07D 239/48 20060101AFI20180208BHJP
   C07D 401/12 20060101ALI20180208BHJP
   A61K 31/505 20060101ALI20180208BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20180208BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20180208BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20180208BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20180208BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
   C07D239/48CSP
   C07D401/12
   A61K31/505
   A61K31/506
   A61P43/00 117
   A61P31/12
   A61P37/02
   A61P35/00
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-535019(P2015-535019)
(86)(22)【出願日】2013年10月3日
(65)【公表番号】特表2015-534559(P2015-534559A)
(43)【公表日】2015年12月3日
(86)【国際出願番号】EP2013070619
(87)【国際公開番号】WO2014053595
(87)【国際公開日】20140410
【審査請求日】2016年8月16日
(31)【優先権主張番号】12187519.9
(32)【優先日】2012年10月5日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】510020022
【氏名又は名称】ヤンセン・サイエンシズ・アイルランド・ユーシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】エムシー ゴーワン,デビッド クレッグ
(72)【発明者】
【氏名】ピーテルス,サージ マリア アロシウス
(72)【発明者】
【氏名】エムブレチス,ウェルナー
(72)【発明者】
【氏名】ラスト,ステファーン ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】ジョンカーズ,ティム ヒューゴ マリア
(72)【発明者】
【氏名】ラボアソン,ピエール ジャン−マリー ベルナルド
【審査官】 齋藤 光介
(56)【参考文献】
【文献】 特表2014−512360(JP,A)
【文献】 米国特許第05434157(US,A)
【文献】 国際公開第2006/053109(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物
【化1】
またはその薬学的に許容できる塩、溶媒和物もしくは多形体
[式中
1Aは、水素基およびアシルからなる群から選択され、
1Bは、水素基およびアシルからなる群から選択され、
ただし、R1AとR1Bの両方ともが水素であるのではないことを条件とし、
は、C1〜6アルキル、アリールアルキルまたはヘテロアリールアルキルであり、その各々が、C1〜6アルコキシで、任意選択的に置換されており、
は、C1〜8アルキルであり、それは、ヒドロキシル、C1〜6アルキル、カルボン酸、たは脂肪族のカルボン酸エステルから独立に選択される1つまたは複数の置換基で、任意選択的に置換されている]。
【請求項2】
は−CHであり、Rはアルキルエステルで置換されているC1〜8アルキルである、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容できる塩、溶媒和物もしくは多形体
【請求項3】
1Aおよび/またはR1Bはイソブチリルであり、Rは−CHであり、Rはヘプタン−3−イルイソブチラートである、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容できる塩、溶媒和物もしくは多形体
【請求項4】
ンターフェロンの誘導物質として活性を有する、任意の立体化学形態の、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物、およびその薬学的に許容できる塩、溶媒和物または多形体。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の式(I)の化合物、またはその薬学的に許容できる塩、溶媒和物もしくは多形体を、1種または複数種の薬学的に許容できる賦形剤、希釈剤または担体とともに含む医薬組成物。
【請求項6】
薬剤としての、請求項1〜3のいずれか一項に記載の式(I)の化合物、またはその薬学的に許容できる塩、溶媒和物もしくは多形体、または式(I)の前記化合物、もしくはその薬学的に許容できる塩、溶媒和物もしくは多形体を含む請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
インターフェロンの誘導が関与する障害処置するための、請求項1〜3のいずれか一項に記載の式(I)の化合物、またはその薬学的に許容できる塩、溶媒和物もしくは多形体、または、請求項5に記載の医薬組成
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アシルアミノピリミジン誘導体、その調製方法、医薬組成物、および治療におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、ウイルス感染症、免疫異常およびがんの処置における、またはワクチンアジュバントとしての、アシルアミノピリミジン誘導体の使用に関し、それにより、インターフェロンの誘導を目的とする。C型肝炎ウイルス(HCV)の場合のように、一定のウイルス感染症の処置では、インターフェロン(IFN−I型)の定期的な注射を投与することができる。詳細については、参照文献Fried et.al.Peginterferon−alfa plus ribavirin for chronic hepatitis C virus infection,N Engl J Med 2002;347:975−82を参照されたい。経口投与可能な低分子IFN誘導物質は、免疫原性の低下と投与の簡便性という利点を提供し得る。従って、新規なIFN誘導物質は、ウイルス感染の処置に有効となり得る新種の薬物である。抗ウイルス効果を有する低分子IFN誘導物質の文献中の例については、De Clercq,E.;Descamps,J.;De Somer,P.Science 1978,200,563−565を参照されたい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、現在知られている化合物と比較して、安全性プロファイルが改良されている新規なインターフェロン誘導物質が強く求められている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によって、式(I)の化合物、
【化1】

またはその薬学的に許容できる塩、溶媒和物もしくは多形体を提供し、式中、
1Aは、水素基、置換または非置換のアシル、またはアシルオキシ基から選択され、
1Bは、水素基、置換または非置換のアシル、またはアシルオキシ基から選択され、
ただし、R1AとR1Bの両方ともが水素であるのではないことを条件とし、
は、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ、アリールアルキルまたはヘテロアリールアルキルであり、その各々が、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、ジ−(C1〜6)アルキルアミノ、C1〜6アルキルアミノ、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ、C3〜6シクロアルキル、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸アミド、複素環、二環式複素環、アリール、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、またはニトリルから独立に選択される1つまたは複数の置換基で、任意選択的に置換されており、
は、C1〜8アルキルまたはアリールアルキルであり、その各々が、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、C1〜6アルキル、ジ−(C1〜6)アルキルアミノ、C1〜6アルキルアミノ、C1〜6アルコキシ、C3〜6シクロアルキル、カルボン酸、芳香族または脂肪族のカルボン酸エステル、カルボン酸アミド、複素環、アリール、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、またはニトリルから独立に選択される1つまたは複数の置換基で、任意選択的に置換されている。
【0005】
第1の実施形態において、本発明は、式(I)の化合物を提供し、式中、R1Aおよび/またはR1Bは置換または非置換のアシルであり、RはC1〜6アルキル、好ましくは−CHであり、Rはアルキルエステルで置換されているC1〜8アルキルである。
【0006】
第2の実施形態において、本発明は、式(I)の化合物を提供し、式中、R1Aおよび/またはR1Bはイソブチリルであり、Rは−CHであり、Rはヘプタン−3−イルイソブチラートである。
【0007】
任意の立体化学形態の式(I)の化合物、およびその薬学的に許容できる塩、溶媒和物または多形体は、医薬品として、特にインターフェロンの誘導物質として活性を有する。
【0008】
したがって、さらなる態様において、本発明は、式(I)の化合物、またはその薬学的に許容できる塩、溶媒和物もしくは多形体を、1種または複数種の薬学的に許容できる賦形剤、希釈剤または担体とともに含む医薬組成物を提供する。
【0009】
さらに、本発明に係る式(I)の化合物、またはその薬学的に許容できる塩、溶媒和物もしくは多形体、または式(I)の前記化合物、もしくはその薬学的に許容できる塩、溶媒和物もしくは多形体を含む医薬組成物は、薬剤として使用され得る。
【0010】
本発明の別の態様は、式(I)の化合物、またはその薬学的に許容できる塩、溶媒和物もしくは多形体、または式(I)の前記化合物、もしくはその薬学的に許容できる塩、溶媒和物もしくは多形体を含む前記医薬組成物が、インターフェロンの誘導が関与する障害の処置に相応に使用され得ることである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
「アルキル」という用語は、規定数の炭素原子を含有する直鎖状または分枝鎖状飽和脂肪族炭化水素を指す。
【0012】
「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を指す。
【0013】
「アシル」という用語は、−(C=O)Rと定義される基を指し、Rは、置換または非置換のアルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールである。
【0014】
「アシルオキシ」という用語は、−(C=O)ORと定義される基を指し、Rは置換または非置換のアルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールである。
【0015】
「アルケニル」という用語は、少なくとも2つの炭素原子および少なくとも1つの炭素−炭素二重結合からなる上に定義されるアルキルを指す。
【0016】
「アルキニル」という用語は、少なくとも2つの炭素原子および少なくとも1つの炭素−炭素三重結合からなる上に定義されるアルキルを指す。
【0017】
「シクロアルキル」という用語は、規定数の炭素原子を含有する炭素環を指す。
【0018】
「アルコキシ」という用語は、酸素に単結合されるアルキル(炭素と水素との鎖)基(例えば、メトキシ基またはエトキシ基)を指す。
【0019】
「アリール」という用語は、N、OおよびSから、特にNおよびOから選択される1つまたは2つのヘテロ原子を任意選択的に含む芳香環構造を意味する。前記芳香環構造は、5つ、6つまたは7つの環原子を有し得る。特に、前記芳香環構造は、5つまたは6つの環原子を有し得る。
【0020】
「二環式複素環」という用語は、2つの縮合芳香環を含む、「アリール」という用語について定義される芳香環構造を意味する。各環は、N、OおよびSから、特に、NおよびOから選択されるヘテロ原子を任意選択的に含む。
【0021】
「アリールアルキル」という用語は、アルキル基で任意選択的に置換される、「アリール」という用語について定義される芳香環構造を意味する。
【0022】
「ヘテロアリールアルキル」という用語は、アルキル基で任意選択的に置換される、「ヘテロアリール」という用語について定義される芳香環構造を意味する。
【0023】
「複素環」は、飽和または部分的に飽和した分子を指し、エチルオキシド、テトラヒドロフラン、ジオキサンまたは他の環状エーテルを含む。窒素を含有する複素環としては、例えば、アゼチジン、モルホリン、ピペリジン、ピペラジン、ピロリジンなどが挙げられる。他の複素環としては、例えば、チオモルホリン、ジオキソリニル(dioxolinyl)、および環状スルホンが挙げられる。
【0024】
「ヘテロアリール」基は、芳香族性の複素環式基である。これは、N、OまたはSから選択される1つまたは複数のヘテロ原子を含有する、単環式、二環式または多環式である。ヘテロアリール基は、例えば、イミダゾリル、イソオキサゾリル、フリル、オキサゾリル、ピロリル、ピリドニル、ピリジル、ピリダジニル、ピラジニルなどとすることができる。
【0025】
式(I)の化合物の薬学的に許容できる塩は、その酸付加塩および塩基塩を含む。好適な酸付加塩は、非毒性塩を形成する酸から形成される。好適な塩基塩は、非毒性塩を形成する塩基から形成される。
【0026】
本発明の化合物はまた、非溶媒和および溶媒和形態で存在してもよい。「溶媒和物」という用語は、本発明の化合物と、1種または複数種の薬学的に許容できる溶媒分子、例えば、エタノールとを含む分子錯体を表すために、本明細書において使用される。
【0027】
「多形体」という用語は、本発明の化合物が2つ以上の形態または結晶構造で存在する能力を指す。
【0028】
本発明の化合物は、結晶性または非晶質製品として投与され得る。それらは、沈殿、結晶化、凍結乾燥、噴霧乾燥、または蒸発乾燥などの方法によって、例えば、固体プラグ、粉末、またはフィルムとして得ることができる。それらは、単独でまたは本発明の1種または複数種の他の化合物と組み合わせて、または1種または複数種の他の薬物と組み合わせて投与され得る。一般に、それらは、1種または複数種の薬学的に許容できる賦形剤とともに製剤として投与されるであろう。「賦形剤」という用語は、本発明の化合物以外の任意の成分を表すために、本明細書において使用される。賦形剤の選択は、具体的な投与形態、溶解性および安定性に対する賦形剤の影響、および剤形の性質などの要因に大きく左右される。
【0029】
本発明の化合物またはその任意のサブグループは、投与のために様々な医薬品形態へと製剤化され得る。適切な組成物として、薬物の全身投与のために通常使用される全組成物を挙げることができる。本発明の医薬組成物を調製するために、有効量の、活性成分としての特定の化合物を、任意選択的に付加塩形態で、薬学的に許容できる担体と組み合わせて緊密な混合物とする。この担体は、投与に所望される製剤の形態に応じて、非常に様々な形態をとり得る。これらの医薬組成物は、例えば、経口、経直腸、または経皮投与に好適な単一の剤形であるのが望ましい。例えば、経口剤形の組成物を調製する際に、懸濁剤、シロップ剤、エリキシル剤、乳剤および溶液剤などの経口液体製剤の場合には、例えば水、グリコール、油、アルコールなどの通常の医薬媒体のいずれも使用することができ、または散剤、丸剤、カプセル剤および錠剤の場合には、デンプン、糖、カオリン、希釈剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤などの固体担体を使用することができる。投与が容易であるため、錠剤およびカプセル剤は最も有利な経口単位剤形となり、その場合、固体医薬担体が当然使用される。使用の直前に液体形態に変換され得る固形製剤も含まれる。経皮投与に好適な組成物においては、担体は、浸透促進剤および/または好適な湿潤剤を、任意選択的に、少ない割合の任意の性質の好適な添加剤と組み合わせて含み、これらの添加剤は、有意な有害作用を皮膚に及ぼすものではない。前記添加剤は、皮膚への投与を容易にすることができ、かつ/または所望の組成物の調製に有用となり得る。これらの組成物は、様々な方法で、例えば、経皮貼付剤として、スポットオン剤(spot−on)として、軟膏剤として投与され得る。本発明の化合物はまた、この方法による投与のための当該技術分野において使用される方法および製剤を用いて、吸入または吹送によって投与され得る。したがって、一般に、本発明の化合物は、溶液剤、懸濁剤または乾燥散剤の形態で肺に投与され得る。
【0030】
前述した医薬組成物を、投与を容易にし、投与量を均一にするために、単位剤形に製剤化することが特に有利である。本明細書で使用される単位剤形とは、単位投与量として好適な物理的に個別の単位を指し、各単位は、必要な医薬担体と共同して所望の治療効果を生じるよう計算された所定量の活性成分を含有する。そのような単位剤形の例としては、錠剤(分割錠剤またはコーティング錠剤を含む)、カプセル剤、丸剤、粉末パケット、オブラート、坐剤、注射液、または懸濁剤など、およびそれらを複数に分割したものがある。
【0031】
感染症の処置の当業者は、以下に示される試験結果から有効量を決定することができるであろう。一般に、有効な一日当たりの量は、0.01mg/kg〜50mg/kg体重、より好ましくは0.1mg/kg〜10mg/kg体重であろうと考えられる。必要な用量を2、3、4またはそれ以上のサブ用量として、一日において適切な間隔で投与することが適切であり得る。前記サブ用量は、例えば、単位剤形当たり1〜1000mg、特に、5〜200mgの活性成分を含有する単位剤形として製剤化され得る。
【0032】
正確な投与量および投与頻度は、当業者に周知のように、使用される式(I)の特定の化合物、治療される特定の病態、治療される病態の重症度、特定の患者の年齢、体重および全身的な身体状態ならびに個体が摂取している可能性のある他の薬剤に応じて決まる。さらに、有効量は、治療される対象の応答に応じて、かつ/または本発明の化合物を処方する医師の評価に応じて、減少または増加させ得ることが明らかである。したがって、上記の有効量の範囲は指針に過ぎず、本発明の範囲または使用を、いかなる程度であれ限定することは意図されていない。
【実施例】
【0033】
実験部分
化合物1の調製
【化2】

磁気撹拌子を備えた50mLバイアル中に、2,4−ジクロロ−5−メトキシピリミジン(2.0g、11.7mmol)およびアセトニトリル(20mL)、ジイソプロピルエチルアミン(3.02g、23.4mmol)ならびに(S)−3−アミノヘプタノール(4.59g、35.1mmol)を入れた。反応混合物を室温で15時間撹拌した。溶媒を減圧留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーで、ジクロロメタンからジクロロメタン中10%メタノールへの勾配を使用して、粗生成物を精製した。最良の画分をプールし、溶媒を減圧留去して、白色固体、Bを得た。
【0034】
【化3】

磁気撹拌子を備えた厚肉ガラスバイアルに、B(1g、3.66mmol)、NH(10mL、水溶液)、炭酸水素アンモニウム(3.34g、42.3mmol)および酸化銅(I)(121mg、0.85mmol)を添加した。バイアルを密封し、油浴に入れ、15時間150℃に加熱した。反応混合物をジクロロメタン(3×25mL)で抽出し、有機層をプールし、硫酸マグネシウムで脱水した。固体を濾過により除去し、濾液の溶媒を減圧留去した。粗生成物CをHPLCで精製した。
【0035】
【化4】

C(463mg、1.82mmol)をTHF(13mL)中に溶解し、−78℃に冷却した。NaH(145mg、3.64mmol、鉱油中60%分散系)を一度に添加し、−78℃で30分間撹拌した。塩化イソブチリル(389μL、3.64mmol)を−78℃で滴加し、10分間撹拌した。冷却浴を除去し、混合物を室温に到達させた。混合物を室温で30分間撹拌した。混合物を水で反応停止し、真空濃縮した。残渣をHPLC(RP Vydac Denali C18 10μm、200g、5cm、移動相0.25%NHHCOの、水、アセトニトリル溶液)によって精製し、所望の画分を回収し、溶媒を減圧留去して、純生成物を得た。
【0036】
LC−MSm/z=395(M+H)、保持時間1.1分、LC法A。
【0037】
H NMR(400MHz,DMSO−d)δppm0.83(t,J=6.90Hz,3H)0.98〜1.07(m,12H)1.16〜1.35(m,4H)1.44〜1.62(m,2H)1.84(q,J=6.78Hz,2H)2.45(spt,J=7.00Hz,1H)2.96(br.s.,1H)3.80(s,3H)3.92〜4.07(m,2H)4.18〜4.31(m,1H)6.69(d,J=9.03Hz,1H)7.60(s,1H)9.49(s,1H)。
【0038】
Aを調製するための合成スキーム
【化5】
【0039】
A2の調製
【化6】

バレルアルデヒド(43g、500mmol)のTHF(1L)溶液に、A1(200g、532mmol)を添加し、反応混合物を室温で16時間撹拌した。溶媒を蒸発させ、残渣を石油エーテルで希釈し、濾過した。濾液の溶媒を減圧留去し、残渣を、シリカクロマトグラフィーで、石油エーテルから石油エーテル中3%酢酸エチルへの勾配を使用して精製し、A2(90g)を無色油状物として得た。
【0040】
H NMR(400MHz,CDCl):δppm6.81〜6.77(m,1H)、5.68〜5.64(td,J=1.2Hz,15.6Hz,1H)、2.11〜2.09(m,2H)、1.41(s,9H)、1.38〜1.26(m,4H)、0.85〜0.81(t,J=7.2Hz,3H)。
【0041】
化合物A4の調製
【化7】

n−ブチルリチウム(290mL、725mmol)を、撹拌したA3(165g、781mmol)のTHF(800mL)溶液に、−78℃で添加した。反応混合物を30分間撹拌した後、A2(90g、488.4mmol)のTHF(400mL)溶液を添加し、反応物を−78℃で2時間撹拌した。混合物を飽和NHCl水溶液で反応停止し、室温に加温した。生成物を酢酸エチルと水との間で分配した。有機相を塩水で洗浄し、脱水し、蒸発させた。残渣をカラムクロマトグラフィーで、5%酢酸エチルの石油エーテル溶液で溶出して精製し、無色油状物、A4(132g)を得た。
【0042】
H NMR(400MHz,CDCl):δppm7.36〜7.16(m,10H)、3.75〜3.70(m,2H)、3.43〜3.39(d,J=15.2Hz,1H)、3.33〜3.15(m,1H),1.86〜1.80(m,2H)、1.47〜1.37(m,2H)、1.32(s,9H)、1.26〜1.17(m,7H)、0.83〜0.79(t,J=7.2Hz,3H)。
【0043】
A5の調製
【化8】

A4(130g、328mmol)をTHF(1.5L)に溶解し、LAH(20g、526mmol)を0℃で少量ずつ添加した。得られた混合物を同じ温度で2時間撹拌した後、室温に加温した。混合物を飽和NHCl水溶液で反応停止した。生成物を酢酸エチルと水との間で分配した。有機相を塩水で洗浄し、脱水し、蒸発させた。合わせた有機層を硫酸ナトリウムで脱水し、固体を濾過により除去し、濃縮して、粗製A5(100g)を得、これをさらに精製することなく次の工程に使用した。
【0044】
H NMR(400MHz,CDCl):δppm7.33〜7.14(m,10H)、3.91〜3.86(m,1H)、3.80〜3.77(d,J=13.6Hz,1H)、3.63〜3.60(d,J=13.6Hz,1H)、3.43〜3.42(m,1H)、3.15〜3.10(m,1H)、2.70〜2.63(m,2H)、1.65〜1.28(m,10H)、0.89〜0.81(m,3H)。
【0045】
Aの調製
【化9】

A5(38g、116.75mmol)と10%Pd/Cとのメタノール(200mL)溶液を50PSIの水素下で、50℃にて24時間水素化した。反応混合物を濾過し、溶媒を蒸発させてAを得た。
【0046】
H NMR(400MHz,DMSO−d):δppm8.04(s,3H)、3.60〜3.49(m,2H)、3.16〜3.15(m,1H)、1.71〜1.67(m,2H)、1.60〜1.55(m,2H)、1.33〜1.26(m,4H)、0.90〜0.87(t,J=6.8Hz,3H)。
【0047】
分析方法
下記の表中の化合物1〜8を、LC−MSで、以下のLC−MS法に従って特性化した。
【0048】
逆相UPLC(超高速液体クロマトグラフィー)を、架橋エチルシロキサン/シリカハイブリッド(BEH)C18カラム(1.7μm、2.1×50mm;Waters Acquity)で、流速0.8ml/分で行った。2つの移動相(HO中10mM酢酸アンモニウム/アセトニトリル95/5;移動相B:アセトニトリル)を使用して、1.3分間で95%Aおよび5%Bから5%Aおよび95%Bへの勾配条件を実行し、0.7分間保持した。注入量0.75μLを使用した。コーン電圧は、正イオン化モードの場合30V、負イオン化モードの場合30Vとした。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
in vivoでのIFN−αの産生およびCXCL10mRNAの上方制御
化合物がin vivoでIFN−αの産生およびCXCL10mRNAの上方制御を誘導する可能性を、C57BL/6マウスに経口投与した後に評価した。体循環中のIFN−αの量を、マウスの全IFN−αELISA(PBL InterferonSource,ref.42120)を使用して、経時フォローした。このELISAは、マウスのすべてのIFN−αサブタイプを識別する。CXCL10はインターフェロン活性化遺伝子(ISG)であり、その発現は、IFN−Iが受容体IFNAR(インターフェロンα−受容体)に結合すると高度に誘導される。CXCL10mRNAの発現レベルは、RT−qPCRでフォローした。
【0052】
試験対象の各化合物および用量については、3匹の雌のC57BL/6Jマウス、6〜10週齢、体重20〜22gで試験した。動物に化合物1を、給餌チューブを使用して、単回経口用量15.5mg/kgとして、20%水性ヒドロキシプロピルβ−シクロデキストリンビヒクル中1.55mg/mL溶液として与えた。投与から0.5、1、2、4および7時間後に、全身血液を尾静脈から抜いてK−EDTAを含有するチューブに入れた。遠心分離によって、1500g、10分、4℃で、血漿を血液細胞から分離し、−80℃で保管してからELISA分析を行った。各時点で、3匹の動物の中央値および標準偏差を計算して、化合物の効力を評価した。
【0053】
血液をやはり尾静脈から抜いて500μlのPAXgene溶液を含有するmicronicチューブ(PreAnalytixのPAXgene血液RNAチューブ)に入れた。室温で終夜インキュベーションした後、チューブを−20℃で保管してから、PAXgene 96 Blood RNA kit(PreAnalytix)で全RNA抽出を行った。精製したRNAを、ランダム6−merプライマー(High−Capacity cDNA Archive kit、Applied Biosystems)を使用して逆転写した。CXCL10mRNAレベルについては、Taqman qPCR技術(Applied BiosystemsのTaqman universal PCR master mix、UNG AmpEraseなし、およびTaqman Gene Expression assay Mm00445235_m1)により、7900HT Fast Real−time PCR system(Applied Biosystems)で調べた。HPRT1(ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ1)mRNAレベルを内在性コントロールとして使用した(Mm01545399_m1)。ΔΔCt法(相対定量のため)を使用して、化合物によるCXCL10発現の制御をビヒクルコントロールと比較して評価した。各時点で、3匹の動物の中央値および標準偏差を計算して、化合物の効力を評価した。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】マウスに化合物1を15.5mg/kgで単回経口投与した後に測定した、肝臓中(A)および血漿中(B)のインターフェロンレベル。
図2】マウスに化合物1を15.5mg/kgで単回経口投与した後に測定した、肝臓中(C)および血液中(D)のCXCL10発現。4時間時点の試料の1つは、HPRT1値が高かったため、除去した。
【0055】
マウスにおいて、化合物1の単回用量での経口投与の後に、内在性インターフェロンの誘導およびCXCL10の上方制御が肝臓および血液/血漿中に観察された。

本発明は、以下の態様を包含し得る。
[1]
式(I)の化合物
【化10】
またはその薬学的に許容できる塩、溶媒和物もしくは多形体
[式中
1Aは、水素基、置換または非置換のアシル、またはアシルオキシ基から選択され、
1Bは、水素基、置換または非置換のアシル、またはアシルオキシ基から選択され、
ただし、R1AとR1Bの両方ともが水素であるのではないことを条件とし、
は、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ、アリールアルキルまたはヘテロアリールアルキルであり、その各々が、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、ジ−(C1〜6)アルキルアミノ、C1〜6アルキルアミノ、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ、C3〜6シクロアルキル、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸アミド、複素環、二環式複素環、アリール、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、またはニトリルから独立に選択される1つまたは複数の置換基で、任意選択的に置換されており、
は、C1〜8アルキルまたはアリールアルキルであり、その各々が、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、C1〜6アルキル、ジ−(C1〜6)アルキルアミノ、C1〜6アルキルアミノ、C1〜6アルコキシ、C3〜6シクロアルキル、カルボン酸、芳香族または脂肪族のカルボン酸エステル、カルボン酸アミド、複素環、アリール、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、またはニトリルから独立に選択される1つまたは複数の置換基で、任意選択的に置換されている]。
[2]
1Aおよび/またはR1Bは置換または非置換のアシルであり、RはC1〜6アルキル、好ましくは−CHであり、Rはアルキルエステルで置換されているC1〜8アルキルである、上記[1]に記載の化合物。
[3]
1Aおよび/またはR1Bはイソブチリルであり、Rは−CHであり、Rはヘプタン−3−イルイソブチラートである、上記[1]に記載の化合物。
[4]
医薬品として、特にインターフェロンの誘導物質として活性を有する、任意の立体化学形態の、上記[1]〜[3]のいずれか一項に記載の化合物、およびその薬学的に許容できる塩、溶媒和物または多形体。
[5]
上記[1]〜[3]のいずれか一項に記載の式(I)の化合物、またはその薬学的に許容できる塩、溶媒和物もしくは多形体を、1種または複数種の薬学的に許容できる賦形剤、希釈剤または担体とともに含む医薬組成物。
[6]
薬剤としての、上記[1]〜[3]のいずれか一項に記載の式(I)の化合物、またはその薬学的に許容できる塩、溶媒和物もしくは多形体、または式(I)の前記化合物、もしくはその薬学的に許容できる塩、溶媒和物もしくは多形体を含む上記[5]に記載の医薬組成物。
[7]
インターフェロンの誘導が関与する障害の処置における、上記[1]〜[3]のいずれか一項に記載の式(I)の化合物、またはその薬学的に許容できる塩、溶媒和物もしくは多形体、または式(I)の前記化合物、もしくはその薬学的に許容できる塩、溶媒和物もしくは多形体を含む上記[5]に記載の医薬組成物の使用。
図1
図2