(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記低密度弾性多孔質体層を構成する低密度弾性多孔質体および前記高密度弾性多孔質体層を構成する高密度弾性多孔質体の少なくも一種が、繊維集成体、フェルトおよび樹脂発泡体から選ばれる一種以上である請求項1に記載の防音カバー。
設置時に音源側となる面から外表面側に向かって、前記低密度弾性多孔質体層からなる低周波音吸音層、前記低通気性シートで周囲を被覆された高密度弾性多孔質体層からなる第一の高周波音吸音層、前記低通気性シートで周囲を被覆された高密度弾性多孔質体層からなる第二の高周波音吸音層が順次積層された積層材からなる請求項1〜請求項4のいずれかに記載の防音カバー。
設置時に音源側となる面から外表面側に向かって、多孔質ライナー、前記低密度弾性多孔質体層からなる低周波音吸音層、前記軟質遮音フィルムで周囲を被覆された高密度弾性多孔質体層からなる第一の高周波音吸音層、前記軟質遮音フィルムで周囲を被覆された高密度弾性多孔質体層からなる第二の高周波音吸音層、外装材シートが順次積層された積層材からなる請求項3に記載の防音カバー。
設置時に音源側となる面から外表面側に向かって、多孔質ライナー、前記低密度弾性多孔質体層からなる低周波音吸音層、前記軟質遮音フィルムで周囲を被覆された多孔質ライナーおよび高密度弾性多孔質体層の積層物からなる第一の高周波音吸音層、前記軟質遮音フィルムで周囲を被覆された高密度弾性多孔質体層からなる第二の高周波音吸音層、外装材シートが順次積層された積層材からなる請求項3に記載の防音カバー。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る防音カバーは、密度0.005〜0.100g/cm
3の低密度弾性多孔質体層が一層以上と、通気量が10cc/cm
2・sec以下である低通気性シートで周囲を被覆された密度0.125〜1.000g/cm
3の高密度弾性多孔質体層が一層以上積層された積層材からなることを特徴とするものである。
以下、本発明に係る防音カバーについて、適宜図面を参照しつつ説明するものとする。
【0018】
本発明に係る防音カバーの形態としては、特に制限されないが、例えば、設置時に音源側となる面から外表面側に向かって、上記低密度弾性多孔質体層からなる低周波音吸音層、上記低通気性シートで周囲を被覆された高密度弾性多孔質体層からなる第一の高周波音吸音層、上記低通気性シートで周囲を被覆された高密度弾性多孔質体層からなる第二の高周波音吸音層が順次積層された積層材からなる防音カバーを挙げることができる。
【0019】
このような防音カバーとしては、例えば、
図2に断面図で示すように、設置時に音源側となる面から外表面側に向かって、多孔質ライナー2、低密度弾性多孔質体層3からなる低周波音吸音層4、低通気性シートである軟質遮音フィルム5、5で周囲を被覆された高密度弾性多孔質体層6からなる第一の高周波音吸音層7a、低通気性シートである軟質遮音フィルム5、5で周囲を被覆された高密度弾性多孔質体層6からなる第二の高周波音吸音層7b、外装材シート8が順次積層された積層材からなる防音カバー1を挙げることができる。
【0020】
また、上記防音カバーとしては、
図3に断面図で示すように、設置時に音源側となる面から外表面側に向かって、多孔質ライナー2、低密度弾性多孔質体層3からなる低周波音吸音層4、低通気性シートである軟質遮音フィルム5、5で周囲を被覆された多孔質ライナー2および高密度弾性多孔質体層6の積層物からなる第一の高周波音吸音層7a、低通気性シートである軟質遮音フィルム5、5で周囲を被覆された高密度弾性多孔質体層6からなる第二の高周波音吸音層7b、外装材シート8が順次積層された積層材からなる防音カバー1を挙げることができる。
【0021】
本発明に係る防音カバーにおいて、低密度弾性多孔質体層(
図2および
図3に例示する低密度弾性多孔質体層3)は、低密度弾性多孔質体からなるものであって、その密度が0.005〜0.100g/cm
3であり、0.010〜0.100g/cm
3であることが好ましく、0.020〜0.100g/cm
3であることがより好ましく、0.040〜0.100g/cm
3であることがさらに好ましい。
上記密度は、低密度弾性多孔質体層の構造および厚み等に応じて、低周波音を吸音し得るものから適宜選択される。
上記密度を達成する上で、低密度弾性多孔質体層は、その目付量が50〜1,000g/m
2である低密度弾性多孔質体により構成されていることが好ましく、目付量が100〜500g/m
2である低密度弾性多孔質体により構成されていることがより好ましく、目付量が250〜500g/m
2である低密度弾性多孔質体により構成されていることがさらに好ましい。
低密度弾性多孔質体の目付量が上記範囲内にあることにより、軽量で所望形状を有する防音カバーを容易に得ることができる。
【0022】
本発明に係る防音カバーにおいて、低密度弾性多孔質体層の密度や低密度弾性多孔質体層を構成する低密度弾性多孔質体の目付量が上記範囲内にあることにより、軽量化およびコンパクト化(薄型化)を図りつつ、低密度弾性多孔質体層に十分な柔軟性を付与し、固体伝播音(振動)に起因する400〜800Hzの低周波数域の音を効果的に減衰することができる。
【0023】
本発明に係る防音カバーにおいて、低密度弾性多孔質体層を構成する低密度弾性多孔質体としては、繊維集成体、フェルトおよび樹脂発泡体から選ばれる一種以上を挙げることができる。
【0024】
上記繊維集成体としては、例えば、グラスウール、ロックウール等の人造鉱物繊維の吹き付け物や成形物等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
上記フェルトとしては、ポリエチレンテレフタレートフェルト等のポリエステル繊維フェルト、ナイロン繊維フェルト、ポリエチレン繊維フェルト、ポリプロピレン繊維フェルト、アクリル繊維フェルト、シリカーアルミナセラミックスファイバーフェルト、シリ力繊維フェルト、綿、羊毛、木毛、クズ繊維等を熱硬化性樹脂でフェルト状に加工したレジンフェルト等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
上記樹脂発泡体としては、ポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリプロピレンフォーム、フェノールフォーム、メラミンフォーム等の樹脂フォームから選ばれる一種以上や、二トリルブタジエンラバー、クロロプレンラバー、スチレンラバー、シリコーンゴム、ウレタンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム等を連泡状に発泡させるか、発泡後にクラッシング加工などにより連泡化した連続気泡体から選ばれる一種以上を挙げることができる。
【0025】
本発明に係る防音カバーは、低密度弾性多孔質体層を一層以上含み、通常、一層〜三層程度含んでもよいが、軽量化、コンパクト化を図る上では(
図2または
図3に例示するように)低密度弾性多孔質体層を一層含むものが好ましい。
【0026】
低密度弾性多孔質体層の厚みは、2.5〜20mmであることが好ましく、2.5〜10mmであることがより好ましく、2.5〜5mmであることがさらに好ましい。
本発明に係る防音カバーが低密度弾性多孔質体層を複数含む場合、複数の低密度弾性多孔質体層を合計した厚みが上記範囲内にあればよい。
低密度弾性多孔質体に厚みが上記範囲内にあることにより、容易にコンパクト化(薄型化)を図ることができ、このためにエンジンルーム等の設置スペースの制限を受ける場所に配置する場合においても、オイルパン用の防音カバー等として好適に使用することができる。
【0027】
本発明に係る防音カバーにおいて、低密度弾性多孔質体層は、ヤング率が5〜20kPaである低密度弾性多孔質体により構成されていることが好ましく、ヤング率が6〜17kPaである低密度弾性多孔質体により構成されていることがより好ましく、ヤング率が8〜16kPaである低密度弾性多孔質体により構成されていることがさらに好ましい。
低密度弾性多孔質体層が上記ヤング率を有する低密度弾性多孔質体により構成されていることにより、低密度弾性多孔質体層が優れた柔軟性を容易に発揮する(後述するバネ定数を十分に小さくする)ことができる。
なお、本出願書類において、ヤング率は、JIS K 7127の規定に準拠して測定される値を意味する。
【0028】
本発明に係る防音カバーにおいて、低密度弾性多孔質体層は、設置時に高密度弾性多孔質体層よりもオイルパン等の設置対象物側(音源側)に設けられることが好ましく、設置時に設置対象物(音源)に密着して設けられることがより好ましい。
このように設置されることにより、低密度弾性多孔質体が設置対象物側(音源側)を直接支持する形態となり、空気中への音の放射を効果的に抑制しつつ、その優れた柔軟性によって固体伝播音(振動)に起因する400〜800Hzの低周波数域の音を効果的に減衰することができる。
【0029】
本発明に係る防音カバーは、低密度弾性多孔質体層を含むものであるために、この低密度弾性多孔質体層が、固体伝搬音(振動)のうち専ら400〜800Hzの低周波音の吸音層として機能する。
本発明に係る防音カバーにおいて、低密度弾性多孔質体層は、車輛向オイルパン等の配設対象から伝播する固体伝搬音(振動)のうち、特に横波伝搬音に対し振動変形を繰り返すいわゆる共振現象を生じ、機械エネルギー損失に起因する減衰器(ダンパー)的な作用を生じて専ら400〜800Hzの低周波数域の音を効果的に減衰し得ると考えられる。
【0030】
本発明に係る防音カバーにおいて、高密度弾性多孔質体層(
図2および
図3に例示する高密度弾性多孔質体層6)は、高密度弾性多孔質体からなるものであって、その密度が0.125〜1.000g/cm
3であり、0.125〜0.500g/cm
3であることが好ましく、0.125〜0.200g/cm
3であることがより好ましい。
上記密度は、高密度弾性多孔質体層の構造および厚み等に応じて、高周波音を吸音し得るものから適宜選択される。
上記密度を達成する上で、高密度弾性多孔質体層は、その目付量が500〜3,000g/m
2である高密度弾性多孔質体により構成されていることが好ましく、目付量が500〜2,000g/m
2である高密度弾性多孔質体により構成されていることがより好ましく、目付量が500〜1,500g/m
2である高密度弾性多孔質体により構成されていることがさらに好ましい。
低密度弾性多孔質体の目付量が上記範囲内にあることにより、軽量な防音カバーを容易に得ることができる。
【0031】
本発明に係る防音カバーにおいて、高密度弾性多孔質体層を構成する高密度弾性多孔質体としては、繊維集成体、フェルトおよび樹脂発泡体から選ばれる一種以上を挙げることができ、その具体例としては、上述した低密度弾性多孔質体層を構成する低密度弾性多孔質体と同様のものを挙げることができる。
【0032】
本発明に係る防音カバーは、高密度弾性多孔質体層を一層以上含み、通常、一層〜六層程度含んでもよいが、軽量化、コンパクト化を図る上では高密度弾性多孔質体層を一層または二層含むものが好ましく、具体的には、
図2または
図3に示すように高密度弾性多孔質体層6を二層含むものを例示することができる。
【0033】
高密度弾性多孔質体層の厚みは、2.5〜50mmであることが好ましく、2.5〜20mmであることがより好ましく、5〜10mmであることがさらに好ましい。
本発明に係る防音カバーが高密度弾性多孔質体層を複数含む場合、複数の高密度弾性多孔質体層を合計した厚みが上記範囲内にあればよい。
高密度弾性多孔質体に厚みが上記範囲内にあることにより、容易にコンパクト化(薄型化)を図ることができ、このためにエンジンルーム等の設置スペースの制限を受ける場所に配置する場合においても、オイルパン用の防音カバー等として好適に使用することができる。
【0034】
本発明に係る防音カバーにおいて、高密度弾性多孔質体層は、ヤング率が20kPa超である低密度弾性多孔質体により構成されていることが好ましく、ヤング率が20kPa超〜2000kPaである高密度弾性多孔質体により構成されていることがより好ましく、ヤング率が20kPa超〜1000kPaである高密度弾性多孔質体により構成されていることがさらに好ましい。
高密度弾性多孔質体層が上記ヤング率を有する高密度弾性多孔質体により構成されていることにより、適度な剛性を有し所定の形状を容易に維持することができる。
なお、上述したように、本出願書類において、ヤング率は、JIS K 7127の規定に準拠して測定される値を意味する。
【0035】
本発明に係る防音カバーにおいて、高密度弾性多孔質体層は、例えば
図2および
図3に例示する軟質遮音フィルム5のような低通気性シートで周囲を被覆されている。
【0036】
本発明に係る防音カバーにおいて、低通気性シートとしては、軟質遮音フィルムや、後述する外装材シート(設置時に外表面側に設置されるシート状カバー)等から選ばれる一種以上を挙げることができ、軟質遮音フィルムであることが好ましい。
本発明に係る防音カバーにおいて、高密度弾性多孔質体層が外表面側に設置される場合には、外表面側に配置する低通気性シートを外装材シートとし、内側(音源側)に配置する低通気性シートを軟質遮音フィルムとすることもでき、このように配置することにより、高密度弾性多孔質体層の外表面側に設置される低通気性シートが高密度弾性多孔質体層を被覆し得るとともに外装材としての機能を発揮させることができる。
【0037】
本発明に係る防音カバーにおいて、軟質遮音フィルムとしては、それ自身が変形して高密度弾性多孔質体層を透過した音を減衰させるとともに、高密度弾性多孔質体層を密閉していわゆる空気放射音を減衰させ、低減させ得るものであれば、特に制限されない。
【0038】
本発明に係る防音カバーにおいて、低通気性シートは、通気量が、10cc/cm
2・sec以下であり、0.001〜10cc/cm
2・secであることが好ましく、0.01〜1cc/cm
2・secであることがより好ましい。
本発明に係る防音カバーにおいて、低通気性シートの通気量が10cc/cm
2・sec以下であることにより、高密度弾性多孔質体層からなる遮音層の遮音性を高めることができる。
なお、本出願書類において、通気量は、JIS L1018に準拠して測定した値を意味するものとする。
【0039】
本発明に係る防音カバーにおいて、低通気性シートは、音の振動によって変形する程度に柔軟な素材によって形成され、ヤング率が、0.001〜0.5GPaであるものが好ましく、0.02〜0.1GPaであるものがより好ましい。
なお、上述したように、本出願書類において、ヤング率は、JIS K7127に準拠して測定される値を意味するものとする。
【0040】
本発明に係る防音カバーが低通気性シートとして軟質遮音フィルムを有するとともに後述する外装材シートを有するものである場合、軟質遮音フィルムのヤング率は、後述する外装材シートのヤング率の1/5以下であることが好ましく、1/10以下であることがより好ましい。
このようにすることで、防音カバーを音源に敷設したときに、低密度弾性多孔質体層を透過した音波が、高密度弾性多孔質体層の周囲に被覆された軟質遮音フィルムを選択的に振動変形させることによって消費され遮音性が高まるとともに、軟質遮音フィルムで減衰された音波が高密度弾性多孔質体層に吸音されさらに適宜設けられる外装材シートで遮音されることにより、防音カバーの防音性能をより向上させることができる。
【0041】
上記軟質遮音フィルムとしては、例えば、樹脂フィルム等を挙げることができ、所定のヤング率、通気量を有するものの中から適宜選択することができる。
【0042】
本発明に係る防音カバーは、高密度弾性多孔質体層を含むものであるために、この高密度弾性多孔質体層が固体伝搬音(振動)の吸音層として機能するとともに、専ら空気放射音に起因する800Hzを超える高周波数域の吸音層として機能する。
本発明に係る防音カバーにおいて、高密度弾性多孔質体層は、車輛向オイルパン等の配設対象から伝播する固体伝搬音(振動)のうち、特に横波伝搬音に対し振動変形を繰り返すいわゆる共振現象を生じ、機械エネルギー損失に起因する減衰器(ダンパー)的な作用を生じるとともに、軟質遮音フィルムで周囲を被覆され密閉された状態にあるために、圧縮空気の弾力性を利用したいわゆる空気バネとして作用し、専ら空気放射音として放出される800Hzを超える高周波域の音を効果的に減衰し得ると考えられる。
【0043】
本発明に係る防音カバーとしては、低密度弾性多孔質体層が一層、高密度弾性多孔質体層が一層または二層積層された積層体からなるものを挙げることができ、低密度弾性多孔質体層が一層、高密度弾性多孔質体層が二層積層された積層体からなるものが好適である。
また、本発明に係る防音カバーとしては、設置時に音源側となる面から外表面側に向かって、低密度弾性多孔質体層が一層、高密度弾性多孔質体層が一層または二層積層された積層体からなるものを挙げることができ、設置時に音源側となる面から外表面側に向かって、低密度弾性多孔質体層が一層、高密度弾性多孔質体層が二層積層された積層体からなるものが好適である。
あるいは、本発明に係る防音カバーとしては、設置時に音源側となる面から外表面側に向かって、高密度弾性多孔質体層が一層または二層、低密度弾性多孔質体層が一層、高密度弾性多孔質体層が一層または二層積層された積層体からなるものを挙げることができ、このような防音カバーとしては、設置時に音源側となる面から外表面側に向かって、高密度弾性多孔質体層が一層、低密度弾性多孔質体層が一層、高密度弾性多孔質体層が一層順次積層された積層体からなるものが好適である。
【0044】
本発明に係る防音カバーを構成する積層材は、設置時に音源側となる面に多孔質ライナー(
図2および
図3に示す例における多孔質ライナー2)を有するものが好ましい。
【0045】
本発明において、多孔質ライナーは、設置時に設置面と接着するための裏地層として機能するものを意味し、撥水性や撥油性を有するものが好ましく、このような多孔質ライナーとしては、例えば、不織布および熱可塑性樹脂フィルム等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
【0046】
上記熱可塑性フィルムとしては、例えば、ポリアミド系樹脂フィルム、ポリエステル系樹脂フィルム、ポリオレフィン系樹脂フィルム、軟質塩化ビニル系樹脂フィルム、ポリビニルアルコール系樹脂フィルム、ポリカーボネート系樹脂フィルム、ポリスチレン系樹脂フィルム、ポリアクリロニトリル系樹脂フィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合系樹脂フィルム等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
【0047】
上記熱可塑性樹脂フィルムの中でも、強靭性、耐衝撃性、柔軟性に優れたポリアミド系樹脂フィルムを用いるのが好ましい。上記熱可塑性樹脂フィルムは、延伸フィルム、無延伸フィルムのいずれであってもよいが、例えば各構成部材に対応する形成材を積層した積層材を所定形状に熱プレス成形して防音カバーを製造する場合には、成形性を考慮して無延伸フィルムであることが好ましい。
【0048】
上記成形性の向上を目的とする場合、無延伸フィルムとしては、伸び率5〜500%で延伸可能であるものが好ましく、伸び率10〜500%で延伸可能であるものがより好ましく、伸び率20〜200%で延伸可能であるものがさらに好ましい。
なお、無延伸フィルムの伸び率は、JIS K7161に準拠して引っ張り試験を行い、幅25mm×長さ150mmの短冊状の試験片を100mm/分の速度で引っ張ったときに、荷重が10Nに達したときの当該フィルムの伸び率を意味するものとする。
【0049】
設置時に音源側となる面に上記多孔質ライナーが設けられる場合、低密度弾性多孔質体層(低周波吸音層)側に接着して積層するために、上記多孔質ライナーの裏面側には、例えば、ポリウレタンエラストマーフィルム、ポリオレフィンブレンド系エラストマーフィルム、ポリオレフィン共重合系エラストマーフィルム、ポリスチレン共重合系エラストマーフィルム、ポリエステル共重合系エラストマーフィルム等の接着剤からなる接着層を積層してもよい。
【0050】
本発明の防音カバーが、上記多孔質ライナーとして熱可塑性樹脂フィルムを有する場合、設置面から内部への雨水等の浸入を抑制することができ、低密度弾性多孔質体層や高密度弾性多孔質体層等の吸水に伴う劣化や吸音性能の低下を抑制することができる。
【0051】
本発明に係る防音カバーを構成する積層材は、設置時に外表面側となる面に、外装材シートが積層されたものであることが好ましい。
外装材シートとしては、樹脂シートまたは金属シートを挙げることができる。
外装材シートとしては、複数の樹脂シートまたは金属シートが接着層等を介して積層、複合化されたものであってもよく、例えば、外装材シートとして、補強クロスおよび表皮フィルムが順次積層、複合化されたものであってもよい。
軽量性や成形性、コスト等を考慮した場合、外装材シートとしては樹脂シートからなるものが好ましい。
【0052】
本発明に係る防音カバーにおいて、外装材シートは、通気量が、10cc/cm
2・sec以下であることが好ましく、0.001〜10cc/cm
2・secであることがより好ましく、0.01〜1cc/cm
2・secであることがさらに好ましい。
本発明に係る防音カバーにおいて、外装材シートの通気量が10cc/cm
2・sec以下であることにより、その内側に高密度弾性多孔質体層からなる遮音層が配置された場合に、その遮音性を容易に高めることができる。
なお、上述したように、本出願書類において、通気量は、JIS L1018に準拠して測定した値を意味するものとする。
【0053】
外装材シートが金属シートである場合、金属シートを構成する金属としてはステンレス鋼等を挙げることができる。
また、外装材シートが樹脂シートである場合、樹脂シートを構成する樹脂としては、ポリプロピレン樹脂、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612等のポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂,ポリテトラフルオロエチレン樹脂等のフッ素樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイソブチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
【0054】
外装材シートが、補強クロスおよび表皮フィルムが順次積層、複合化されたものである場合、補強クロスとしては、各種織布からなるものを挙げることができ、例えば、ポリプロピレン系樹脂繊維等のポリオレフィン系樹脂繊維、ポリエステル系樹脂繊維、ポリアミド系樹脂繊維、軟質塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂繊維、ポリアクリロニトリル系樹脂繊維等の熱可塑性樹脂繊維等から選ばれる一種以上の繊維を織製してなる織布からなるものを挙げることができる。
【0055】
上記補強クロスとしては、例えば本発明に係る防音カバーが各構成部材に対応する形成材の積層物を所定形状に熱プレス成形して作製されたものである場合には、その成形性や成形後の形状保持性を考慮して、ポリプロピレン系樹脂繊維、ポリエステル系樹脂繊維、ポリアミド系樹脂繊維等から選ばれる一種以上の繊維を織製してなる織布からなるものが好ましい。
上記織布は、平織り、あや織りなどによって織製された織布であってもよいが、本発明に係る防音カバーが各構成部材に対応する形成材の積層物を所定形状に熱プレス成形して作製されたものである場合には、その成形性を考慮して、2wayトリコット織りによって織製された伸縮性を有する織布からなるものが好ましい。
【0056】
また、外装材シートが、補強クロスおよび表皮フィルムが順次積層、複合化されたものである場合、表皮フィルムとしては、上述した多孔質ライナーの説明で例示したものと同様の熱可塑性樹脂フィルムを挙げることができる。
【0057】
上記補強クロスおよび表皮フィルムを積層するに際しては、必要に応じて接着剤層などを介在させてもよく、例えば、補強クロスを高密度弾性多孔質体層(高周波吸音層)側に接着して積層するために、補強クロスの裏面側に、ポリウレタンエラストマーフィルム、ポリオレフィンブレンド系エラストマーフィルム、ポリオレフィン共重合系エラストマーフィルム、ポリスチレン共重合系エラストマーフィルム、ポリエステル共重合系エラストマーフィルム等から選ばれる接着剤からなる接着層を積層してもよい。
【0058】
外装材シートが、上記補強クロスおよび表皮フィルムを有するものである場合、例えば各構成部材に対応する形成材を積層した積層物を熱プレス成形して防音カバーを作製する際に、補強クロスを形成する織布の繊維が溶融し、成形後は、所定の形状に成形された状態で冷却固化して上記繊維どうしが固着することによって剛性が高まり、成形後の形状が良好に保持される。
そして、このような外装材シートを表皮フィルムが表面側に位置するように吸音材層に積層することで、例えばオイルパンの防音カバー等として使用された場合に、エンジンルーム内で扱われる冷却水(LLC)、バッテリー液、ウインドウォッシャー液などに対する耐久性や、エンジンからの熱に対する耐熱性や、油脂類に対する耐油性や、風雨や飛び石などの外部環境に対する耐久性等を高めることができ、過酷な使用環境下にあっても経年劣化を抑制しつつ、長期にわたり使用することができる。
【0059】
熱プレス成形時の成形性と、成形後の形状保持性を良好にするためには、成形前の(外装材シートの形成材料となる)外装材シート形成用シート状物のヤング率が、0.005GPa〜0.5GPaであることが好ましく、0.05GPa〜0.3GPaであることがより好ましく、(成形後の)外装材シートのヤング率が、0.6GPa〜5.0GPaであることが好ましく、1.0GPa〜3.0GPaであることがより好ましい。
なお、上述したように、本出願書類において、ヤング率は、JIS K7127に準拠して測定される値を意味するものとする。
【0060】
本発明に係る防音カバーは、低密度弾性多孔質体層が、車輛向オイルパン等の配設対象から伝播する固体伝搬音(振動)のうち、特に横波伝搬音に対し振動変形を繰り返すいわゆる共振現象を生じ、機械エネルギー損失に起因する減衰器(ダンパー)的な作用を生じて専ら400〜800Hzの低周波数域の音を効果的に減衰し得ると考えられる。
また、本発明に係る防音カバーは、高密度弾性多孔質体層が、固体伝搬音(振動)の吸音層として機能するとともに、専ら空気放射音に起因する800Hzを超える高周波数域の吸音層として機能する。
本発明に係る防音カバーにおいて、高密度弾性多孔質体層は、車輛向オイルパン等の配設対象から伝播する固体伝搬音(振動)のうち、特に横波伝搬音に対し振動変形を繰り返すいわゆる共振現象を生じ、機械エネルギー損失に起因する減衰器(ダンパー)的な作用を生じるとともに、軟質遮音フィルムで周囲を被覆され密閉された状態にあるために、圧縮空気の弾力性を利用したいわゆる空気バネとして作用し、専ら空気放射音として放出される800Hzを超える高周波域の音を効果的に減衰し得ると考えられる。
【0061】
本発明の防音カバーにおける吸音効果を、
図2および
図3に示す防音カバー1を例にとって説明すると以下のようになると考えられる。
すなわち、
図2および
図3に示す防音カバー1をバネーマス系モデルに置き換えた場合、
図4に模式的に示すように、固体伝搬音入射側に配置された低密度弾性多孔質体層3からなる低周波音吸音層4が隣接する多孔質ライナー2および軟質遮音フィルム5とともにバネ定数の小さいバネI(バネ定数κ
1、質量m
1)を構成し、高密度弾性多孔質体層6からなる第一の高周波音吸音層7aが上下に配置された2層の軟質遮音フィルム5(および
図3に示す例においてはさらに多孔質ライナー2)とともに空気バネII(バネ定数κ
2,質量m
2)を構成し、高密度弾性多孔質体層6からなる第一の高周波音吸音層7bが上下に配置された2層の軟質遮音フィルム5、外装材シート8とともに空気バネIII(バネ定数κ
3,質量m
3)を構成して、上記バネI、バネIIおよびバネIIIを直列に繋げた多自由度バネーマス系を成す。
そして、上記バネI、バネIIおよびバネIIIは、各々Biotモデルで表現される弾性多孔質材骨格の振動伝搬、特に横波伝搬時に振動変形を繰り返すことによる機械エネルギー損失に起因する減衰器(ダンパー)として機能して、各々減衰d
1、d
2およびd
3を生じるが、特にバネIには防音カバーの全質量(m
1+m
2+m
3)が負荷されて大きな減衰作用d
1を生じ、車輛向オイルパン等の配設対象から伝播する固体伝搬音(振動)のうち、特に横波伝搬音に対し振動変形を繰り返すいわゆる共振現象を生じ易くなると考えられ、また、バネIIおよびバネIIIは、軟質遮音フィルムで周囲を被覆され密閉された状態にあるために、圧縮空気の弾力性を利用したいわゆる空気バネとして作用し空気バネによる振動絶縁効果を発揮して空気放射音を抑制すると考えられる。
【0062】
物理学上、バネ振り子の固有周波数(共振周波数)f(Hz)は、下記式
f(Hz)=1/2π×(κ/m)
1/2
により算出できるとされており(ただし、κは各バネのバネ定数、mはバネに負荷されるおもりの質量を意味する)、上記バネI、バネIIおよびバネIIIにおいても、各バネを構成する低密度弾性多孔質体層や高密度弾性多孔質体層の柔軟性や密度を制御することにより各バネのバネ定数や質量を制御して、所望の吸音性を発揮することができる。
図2および
図3に示す防音カバーは、特に上記バネ部Iを構成する低密度弾性多孔質体層が、上記バネIIおよびバネIIIに比較して柔軟性に優れるためにバネ定数が小さく、かつ上記バネIIおよびバネIIIに比較して負荷される質量(m
1+m
2+m
3)が大きいために固有周波数(共振周波数)が小さくなり、低周波数域における音を効果的に減衰し得ると考えられる。
【0063】
本発明に係る防音カバーは、各種車輛の構成部材の防音カバーとして好適に使用することができ、例えば自動車のエンジンルーム内に設置されるエンジン回り、特にエンジン下面に設置されたオイルパン等の音源に隣接ないし密着して施設することにより、その防音対策に好適に使用することができ、例えば、
図1に示すように、音源であるオイルパンの表面を覆うように配置して使用可能な防音カバー10を提供することができる。
【0064】
次に、本発明に係る防音カバーを製造する方法について説明する。
本発明に係る防音カバーは、例えば、得ようとする防音カバーの構成部材に対応する形成材の全部を順次積層した状態で所定形状に熱圧成形することにより作製することができる。
また、本発明に係る防音カバーは、例えば、得ようとする防音カバーの構成部材に対応する全形成材のうち一部のみを順次積層した状態で所定形状に熱圧成形したものと、得ようとする防音カバーの構成部材に対応する他の形成材を順次積層した状態で所定形状に熱圧成形したものを、適宜接着剤等で固定することにより作製することができる。
【0065】
具体的には、本発明に係る防音カバーとして、例えば
図2に示す防音カバーを作製する場合は、(1)多孔質ライナー、(2)低密度弾性多孔質体、(3)軟質遮音フィルム、(4)高密度弾性多孔質体、(5)軟質遮音フィルム、(6)高密度弾性多孔質体、(7)軟質遮音フィルム、(8)外装材シートを各々形成する形成材をこの順番で順次積層した状態で所定形状に熱圧成形することにより作製することができる。
【0066】
また、本発明に係る防音カバーとして
図2に示す防音カバーを作製する場合は、(1)多孔質ライナー、(2)低密度弾性多孔質体および(3)軟質遮音フィルムを形成する形成材を予めこの順番で順次積層した状態で熱圧成形して得られた低周波音吸音層形成用一体化物と、(4)高密度弾性多孔質体、(5)軟質遮音フィルム、(6)高密度弾性多孔質体、(7)軟質遮音フィルム、(8)外装材シートを形成する形成材を予めこの順番で順次積層した状態で熱圧成形して得られた高周波音吸音層形成用一体化物とを、上記低周波音吸音層形成用一体化物の(3)軟質遮音フィルム側と上記高周波音吸音層形成用一体化物の(4)高密度弾性多孔質体側とを接着剤等で固定することにより作製することができる。
【0067】
本発明に係る防音カバーとして
図3に示す防音カバーを作製する場合は、例えば、(1)多孔質ライナー、(2)低密度弾性多孔質体および(3)軟質遮音フィルムを形成する形成材を予めこの順番で順次積層した状態で熱圧成形して得られた低周波音吸音層形成用一体化物と、(1)多孔質ライナー、(4)高密度弾性多孔質体、(5)軟質遮音フィルム、(6)高密度弾性多孔質体、(7)軟質遮音フィルム、(8)外装材シートを形成する形成材を予めこの順番で順次積層した状態で熱圧成形して得られた高周波音吸音層形成用一体化物とを、上記低周波音吸音層形成用一体化物の(3)軟質遮音フィルム側と上記高周波音吸音層形成用一体化物の(1)多孔質ライナー側とを接着剤等で固定することにより作製することができる。
【0068】
得ようとする防音カバーの構成部材に対応する形成材の全部を順次積層した状態で所定形状に熱圧成形した場合、低密度弾性多孔質体の形成材が過度に加圧されて所望の密度を有する低密度弾性多孔質体層を形成し難い場合があるが、上述したように低周波音吸音層形成用一体化物と高周波音吸音層形成用一体化物とを別個に熱圧成形して作製した上で、得られた熱圧成形物を接着剤等で固定した場合には、各々所望密度を有する低密度弾性多孔質体層と高密度弾性多孔質体層とを容易に形成することができる。
【0069】
また、本発明に係る防音カバーを製造する場合、得ようとする防音カバーの構成部材に対応する形成材の一部または全てを予め接着剤等で固定した固定化物を配置して所定形状に熱圧成形してもよいし、成形型内に得ようとする防音カバーの構成部材に対応する形成材の一部または全てを単に順次積層配置した状態で所定形状に熱圧成形することにより作製してもよい。
例えば、上記(7)軟質遮音フィルム、(8)外装材シートは各形成材を予めラミネート加工等で一体化した固定化物を積層して熱圧成形してもよいし、積層時に順次積層配置して熱圧成形してもよい。
【0070】
上記(3)軟質遮音フィルム、(5)軟質遮音フィルムおよび(7)軟質遮音フィルムの形成材の縦および横の長さは、各々、(4)高密度弾性多孔質体や(6)高密度弾性多孔質体の形成材の縦および横の長さよりも大きいことが好ましく、このような軟質遮音フィルムを使用し、熱圧成形により圧着したり接着剤により接着することにより高密度弾性多孔質体の周囲(端部)まで十分に被覆することができる。
【0071】
本発明に係る防音カバーを、各構成部材に対応する形成材を熱圧成形することにより作製する場合、熱圧成形時の加圧力は、3〜50MPaが好ましく、3〜30MPaがより好ましく、5〜20MPaがさらに好ましく、熱圧成形時の雰囲気温度は、120〜200℃が好ましく、140〜200℃がより好ましく、160〜180℃がさらに好ましく、熱圧成形時の加圧時間は、3〜60秒間が好ましく、5〜45秒間がより好ましく、10〜30秒間がさらに好ましい。
【0072】
本発明によれば、低周波音吸音層として軽量で軟質な低密度弾性多孔質体層が一層以上と、高周波音吸音層として軟質遮音フィルムで周囲を被覆された軽量で軟質な高密度弾性多孔質体層が一層以上積層され、上記低周波吸音層が専ら固体伝播音(振動)に起因する400〜800Hzの低周波数域の音を減衰することができるとともに、上記高周波音吸音層が固体伝播音とともに専ら空気放射音に起因する800Hzを超える高周波数域の音を減衰することができる。
このため、本発明によれば、800Hzを超える高周波数領域の音を抑制するとともに、400Hz〜800Hzの低周波数領域の音を効果的に抑制し得る、軽量でかつ軟質な防音カバーを提供することができる。
【0073】
次に、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【0074】
(実施例1)
得ようとする目的形状に対応する成形面が施された成形型内に、(設置時に音源側に配設される)(1)多孔質ライナーの形成材(目付量127g/m
2、厚さ1.5mm撥水撥油処理ポリエステル短繊維不織布)を配置した上で、その上に接着剤(湿気硬化型ポリウレタンホットメルト)30gを均等に塗布し、次いで、その上に、(2)低密度弾性多孔質体の形成材(目付量250g/m
2、厚さ10mmのポリエチレンテレフタレート短繊維フェルト)、(3)軟質遮音フィルムAの形成材(目付量38g/m
2、厚さ30μm、通気量0cc/cm
2・secのポリウレタンエラストマーフィルム)、(4)高密度弾性多孔質体Iの形成材(目付量500g/m
2、厚さ5mmのポリエチレンテレフタレート短繊維フェルト)、(5)軟質遮音フィルムBの形成材(目付量70g/m
2、厚さ55μm、通気量0cc/cm
2・secのポリオレフィン系樹脂/ポリアミド系樹脂/ポリオレフィン系樹脂共押し出し積層フィルム)、(6)高密度弾性多孔質体IIの形成材(目付量500g/m
2、厚さ5mmのポリエチレンテレフタレート短繊維フェルト)、(7)軟質遮音フィルムCの形成材と(8)外装材シートの形成材である補強クロスおよび表皮フィルムの形成材とのラミネート化物(通気量0cc/cm
2・secのポリウレタンエラストマーフィルムと2wayトリコット織りによって織製された伸縮性を有する織布とポリアミド/ポリオレフィン系樹脂共押し出し積層フィルムとを熱ロール圧着/一体化した目付量236g/m
2、厚さ0.38mmのラミネート化物)を、この順番で((1)多孔質ライナーの形成材、(2)低密度弾性多孔質体の形成材、(3)軟質遮音フィルムAの形成材、(4)高密度弾性多孔質体Iの形成材、(5)軟質遮音フィルムBの形成材、(6)高密度弾性多孔質体IIの形成材、(7)軟質遮音フィルムCの形成材、(8)外装材シートの形成材の順番になるように)順次積層し、5MPaの加圧力下、175℃で15秒間熱圧成形することにより、密度0.01g/cm
3、厚さ5mm、ヤング率8kPaの低密度弾性多孔質体層一層と、通気量0cc/cm
2・sec、ヤング率20kPaの軟質遮音フィルムで密封された密度0.133g/cm
3、厚さ3.75mm、ヤング率760kPaの高密度弾性多孔質体層Iおよび通気量0cc/cm
2・sec、ヤング率20kPaの軟質遮音フィルムで被覆された密度0.133g/cm
3、厚さ3.75mm、ヤング率760kPaの高密度弾性多孔質体層IIからなる二層の高密度弾性多孔質体層とを有する積層体からなり、厚さ(最大厚さ)15mm、目付量1751g/m
2で、端部4辺を1.5mm程度の厚さに圧縮、溶着した表面に表皮フィルムを有する防音カバーを得た。得られた防音カバーは、上述したように端部4辺が圧縮、溶着されたものであることから、上記二層の高密度弾性多孔質体層は、いずれも周囲全面が軟質遮音フィルムで被覆された密封状態に形成されていた。
【0075】
(防音性評価)
以下の方法で得られた防音カバーの防音性を評価した。
上記防音カバーの(1)多孔質ライナー側を試験体鋼板(縦150mm、横150mm、厚さ3mmの鋼板)に密着配置した状態で、上記試験体鋼板に加振機(ブリュエル・ケアー・ジャパン社製type4809)によりホワイトノイズ(白色雑音)を入力して1/3オクターブバンド周波数で400Hz〜10kHzの音を生じさせ、防音カバーから150mm離れた位置に配置したマイク(1/2インチコンデンサマイク)により音圧レベル(dB)の変化を測定した。
上記測定結果に基づいて、防音カバーを配置しない場合と防音カバーを配置した場合との差を求めることで防音性(挿入損失)を評価した。結果を
図5に示す。得られた防音カバーは、
図5に示すように、400Hzで約11dB、500Hzで約13dB、630Hzで約3dB、800Hzで約8dBの防音効果(音圧の低減効果)を有するものであった。
【0076】
(比較例1)
得ようとする目的形状に対応する成形面が施された成形型内に、(設置時に音源側に配設される)(1)多孔質ライナーの形成材(目付量127g/m
2、厚さ1.5mm撥水撥油処理ポリエステル短繊維不織布)を配置した上で、その上に接着剤(湿気硬化型ポリウレタンホットメルト)30gを均等に塗布し、次いで、その上に、(4)高密度弾性多孔質体IIの形成材(目付量1,000g/m
2、厚さ10mmのポリエチレンテレフタレート短繊維フェルト)、(5)軟質遮音フィルムBの形成材(目付量70g/m
2、厚さ55μm、通気量0cc/cm
2・secのポリオレフィン系樹脂/ポリアミド系樹脂/ポリオレフィン系樹脂共押し出し積層フィルム)、(6)高密度弾性多孔質体IIの形成材(目付量1,000g/m
2、厚さ10mmのポリエチレンテレフタレート短繊維フェルト)、(7)軟質遮音フィルムCの形成材と(8)外装材シートの形成材である補強クロスおよび表皮フィルムの形成材とのラミネート化物(通気量0cc/cm
2・secのポリウレタンエラストマーフィルムと2wayトリコット織りによって織製された伸縮性を有する織布とポリアミド/ポリオレフィン系樹脂共押し出し積層フィルムとを熱ロール圧着/一体化した目付量236g/m
2、厚さ0.38mmのラミネート化物)を、この順番で((1)多孔質ライナーの形成材、(4)高密度弾性多孔質体IIの形成材、(5)軟質遮音フィルムBの形成材、(6)高密度弾性多孔質体IIの形成材、(7)軟質遮音フィルムCの形成材、(8)外装材シートの形成材の順番になるように)順次積層し、5MPaの加圧力下、175℃で15秒間熱圧成形することにより、通気量0cc/cm
2・secの軟質遮音フィルムで密封された密度0.133g/cm
3、厚さ7.5mmの高密度弾性多孔質体層Iと、通気量0cc/cm
2・secの軟質遮音フィルムで被覆された密度0.133g/cm
3、厚さ7.5mmの高密度弾性多孔質体層IIとからなる二層の高密度弾性多孔質体層を有する積層体からなり、厚さ(最大厚さ)15mm、目付量2,463g/m
2で、端部4辺を1.5mm程度の厚さに圧縮、溶着した比較用防音カバーを得た。
得られた比較用防音カバーを用いて実施例1と同様に防音性を評価した。結果を
図5に示す。得られた比較用防音カバーは、
図5に示すように、防音カバーを配置しない場合と比べ、400Hzで約8dB、500Hzで約6dB、630Hzで約3dB、800Hzで約4dB音圧レベルが上昇し、400Hz〜800Hzの周波数領域における騒音が増大するものであった。
【0077】
(比較例2)
(設置時に音源側に配設される)両面スキン層付発泡ウレタンフォーム(目付量3,400g/m
2、厚さ20mm)に剛性遮音材としてポリアミド6(目付量2,400g/m
2、厚さ2mm)を貼り付けることにより、厚さ22mm、目付量5,800g/m
2の比較用防音カバーを得た。
得られた比較用防音カバーを用いて実施例1と同様に防音性を評価した。結果を
図5に示す。得られた比較用防音カバーは、
図5に示すように、防音カバーを配置しない場合と比べ、400Hzで約7dB、500Hzで約3dB、630Hzで約0dB、800Hzで約7dB音圧レベルが低減し、一定の防音効果(音圧の低減効果)を有するものであったが、得られた比較用防音カバーは、実施例1で得られた防音カバーの3倍以上の質量(目付量)を有し、厚みも増大するものであることから、防音カバーの軽量化、コンパクト化を図り難いものであった。
【0078】
実施例1、比較例1および比較例2の結果を表1に示す。
【0080】
表1および
図5より、実施例1で得られた防音カバーは、低周波音吸音層として軽量で軟質な低密度弾性多孔質体層と、高周波音吸音層として軟質遮音フィルムで周囲を被覆された軽量で軟質な高密度弾性多孔質体層が積層され、軽量かつコンパクトである(薄型なものである)とともに、上記低周波吸音層が専ら固体伝播音(振動)に起因する400〜800Hzの低周波数域の音を効果的に減衰することができるとともに、上記高周波音吸音層が固体伝播音とともに専ら空気放射音に起因する800Hzを超える高周波数域の音を減衰することができることが分かる。
【0081】
一方、表1および
図5より、比較例1で得られた比較用防音カバーは、低密度弾性多孔質体層を有さないことから、固体伝播音(振動)に起因する400〜800Hzの低周波数域の音を減衰し得ず、また、比較例2で得られた比較用防音カバーは、低密度弾性多孔質体層および高密度弾性多孔質体層のいずれも有さないことから、防音カバーの軽量化、コンパクト化を図り難いものであることが分かる。