(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
配線材料として銅またはタングステンを含み、かつ、バリアメタル材料としてタンタル、チタン、コバルト、ルテニウム、マンガン、及びこれらの化合物よりなる群から選択される少なくとも1種を含む配線基板を、請求項1ないし請求項8のいずれか一項に記載の保管方法により保管された半導体洗浄用組成物を用いて洗浄する工程を含む、洗浄方法。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、下記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含む。
【0021】
1.半導体洗浄用組成物
本実施形態で用いられる半導体洗浄用組成物は、必要に応じて純水などの水系媒体で希釈して、主にCMP終了後の被研磨体の表面に存在するパーティクルや金属不純物などを除去するための洗浄剤として使用することができる。以下、本実施形態で用いられる半導体洗浄用組成物に含まれる各成分について詳細に説明する。
【0022】
1.1.粒子径0.1〜0.3μmの粒子
本実施形態で用いられる半導体洗浄用組成物は、粒子径が0.1〜0.3μmの粒子(以下、「特定粒子」ともいう。)を3×10
1〜1.5×10
3個/mL含有することができる。本実施形態で用いられる半導体洗浄用組成物は、特定粒子を所定の割合で含有することにより、洗浄工程において被研磨面に残留した研磨屑を効果的にそぎ落とし除去できると考えられる。これに対して、半導体洗浄用組成物に含有される特定粒子の含有割合が前記範囲を超える場合、洗浄後の被研磨面に特定粒子が残留し、被洗浄体である半導体回路の電気特性の悪化による歩留まりの低下等が誘発されるため好ましくない。一方、半導体洗浄用組成物に含有される特定粒子の含有割合が前記範囲よりも小さい場合、被研磨面に付着した研磨屑を効果的にそぎ落とすことが困難となり、洗浄面の平坦性が劣化してしまうと考えられる。
【0023】
一般的に、国際公開第1999/049997号等に記載されているように、半導体装置の製造工程において、粒子は可能な限り除去すべき異物であると認識されている。しかしながら、本願発明においては、これまでの概念を覆し、粒子径が0.1〜0.3μmの粒子を所定の割合で含有する半導体洗浄用組成物を用いて被研磨面を洗浄する場合には、半導体特性を大幅に劣化させず、逆に洗浄特性を向上させる効果があることが判明した。
【0024】
本実施形態で用いられる半導体洗浄用組成物に含有される特定粒子としては、金属粒子や金属酸化物粒子であることが好ましく、絶縁性の粒子であることがより好ましい。
【0025】
このような金属粒子や金属酸化物粒子としては、例えば、鉄、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、マグネシウム、及びこれらの金属の酸化物(酸化鉄、チタニア、アルミナ、ジルコニア、マグネシア等)、シリカ、ステンレス鋼(SUS201、202、301、302、303、304、305、316、317、403、405、420、430、630等)等を用いることができる。これらの中でも、半導体回路の電気特性を悪化さ
せず、被研磨面に付着した研磨屑を効果的に除去できる点から、酸化鉄、ステンレス鋼、酸化チタン、シリカ及び酸化アルミニウムが好ましく、シリカがより好ましい。
【0026】
また、特定粒子は、長径(Rmax)と短径(Rmin)との比率(Rmax/Rmin)が、好ましくは1.3以上、より好ましくは1.4以上3.0以下、特に好ましくは1.5以上2.5以下の形状を有する特定粒子(以下、「特定形状粒子」ともいう。)を含有していることが好ましい。本実施形態で用いられる半導体洗浄用組成物が特定形状粒子を含有することにより、被研磨面に付着した研磨屑を除去する効果が向上する。また、特定形状粒子は、凹凸形状を有しているため、後述する水溶性高分子、有機酸、アミンなどの成分を凹部に取り込んだり、放出したりすることができる。そのため、洗浄工程において、これらの成分が放出されることで効果的に作用すると考えられる。
【0027】
本実施形態で用いられる半導体洗浄用組成物に含まれる特定粒子の全質量を100質量部としたときに、特定粒子は、特定形状粒子を30質量部以上含有することが好ましく、40質量部以上含有することがより好ましく、50質量部以上含有することが特に好ましい。
【0028】
ここで、粒子の長径(Rmax)とは、透過型電子顕微鏡により撮影された一つの独立した粒子像について、粒子像の重心を通り、かつ、粒子像の端部と端部とを結んだ距離のうち最も長い距離を意味する。一方、粒子の短径(Rmin)とは、透過型電子顕微鏡により撮影された一つの独立した粒子像について、粒子像の重心を通り、かつ、粒子像の端部と端部とを結んだ距離のうち最も短い距離を意味する。
【0029】
ここで、粒子の粒子径および半導体洗浄用組成物中の粒子の含有量は、レーザー回折法を測定原理とする粒度分布測定装置を用いて測定することができる。本発明における粒子径とは、前記粒度分布測定装置を用いて粒度分布を測定し、小さい粒子から粒子を累積したときの粒子数の累積度数が50%となる粒子径(D50)の値である。このようなレーザー回折式粒度分布測定装置としては、例えばHORIBA LA−300シリーズ、HORIBA LA−920シリーズ(以上、株式会社堀場製作所製)等を挙げることができる。この粒度分布測定装置は、粒子の一次粒子だけを評価対象とするものではなく、一次粒子が凝集して形成された二次粒子をも評価対象とする。従って、この粒度分布測定装置によって得られた粒子径は、半導体洗浄用組成物中に含まれる粒子の分散状態の指標とすることができる。
【0030】
なお、配線材料としてタングステンを有する被研磨体のCMPでは、鉄イオンおよび過酸化物(過酸化水素、ヨウ素酸カリウムなど)を含有するCMPスラリーが使用される。このCMPスラリー中に含まれる鉄イオンが被研磨体の表面に吸着しやすいため、被研磨面は鉄汚染されやすい。この場合、本実施形態で用いられる半導体洗浄用組成物を用いて被研磨面を洗浄することにより、特定粒子が被研磨面の鉄汚染をそぎ落として効果的に除去できると考えられる。
【0031】
1.2.カリウムおよびナトリウム
本実施形態で用いられる半導体洗浄用組成物は、カリウムおよびナトリウムを含有することができる。一般的に、特開2000−208451号公報等に記載されているように、半導体の製造工程では、ナトリウムやカリウムなどのアルカリ金属は可能な限り除去すべき不純物であると認識されている。そのため、CMPスラリーにおいても、pHをコントロールするための塩基としては、水酸化ナトリウムなどの無機塩基ではなく、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)などの有機塩基が使用されている。しかしながら、本願発明においては、これまでの概念を覆し、CMP研磨後の洗浄工程において、カリウムおよびナトリウムを所定の割合で含有する半導体洗浄用組成物を用いることにより、半
導体特性を大幅に劣化させずに、逆に洗浄特性を向上させる効果があることが判明した。
【0032】
本実施形態に係る半導体洗浄用組成物におけるカリウムおよびナトリウムの含有比率は、カリウムの含有量をM
K(ppm)、ナトリウムの含有量をM
Na(ppm)としたときに、M
K/M
Na=5×10
3〜1×10
5であることが好ましく、5.5×10
3〜9.5×10
4であることがより好ましく、6×10
3〜9×10
4であることがさらにより好ましく、7×10
3〜8×10
4であることが特に好ましい。カリウムおよびナトリウムの含有比率が前記範囲内にあると、半導体洗浄工程において、被研磨面に露出した銅やタングステンなどの金属材料が過剰にエッチングされて溶出することを抑制することができると考えられる。これに対して、半導体洗浄用組成物に含有されるナトリウムとカリウムの比率が前記範囲を超える場合、洗浄後の被洗浄体にナトリウムやカリウムが付着して残留し、被洗浄体である半導体回路の電気特性の悪化による歩留まりの低下等が誘発されるため好ましくない。一方、半導体洗浄用組成物に含有されるナトリウムとカリウムの比率が前記範囲未満である場合、被研磨面に露出した銅やタングステンなどの金属材料と洗浄剤中に存在するナトリウムとカリウムのイオン積のバランスが崩れるため、銅やタングステンなどの金属材料のエッチングが進行して洗浄面の平坦性が劣化してしまうと考えられる。
【0033】
本実施形態で用いられる半導体洗浄用組成物は、ナトリウムを1×10
−6〜10×10
0ppm含有することが好ましく、4×10
−6〜6×10
0ppm含有することがより好ましい。また、本実施形態で用いられる半導体洗浄用組成物は、カリウムを1×10
−1〜5×10
4ppm含有することが好ましく、1.2×10
−1〜4×10
4ppm含有することがより好ましい。カリウムおよびナトリウムを前記含有比率で含有し、かつ、カリウムおよびナトリウムの含有量が前記範囲内にあることにより、洗浄工程において、被研磨面に露出した銅やタングステンなどの金属材料が過剰にエッチングされて溶出することをより効果的に抑制し、安定した洗浄特性を維持することができると考えられる。
【0034】
本実施形態で用いられる半導体洗浄用組成物は、カリウムやナトリウムを水溶性の塩として配合することにより、カリウムやナトリウムを半導体洗浄用組成物に含有させることができる。このような水溶性の塩としては、例えば、ナトリウムやカリウムの水酸化物、炭酸塩、アンモニウム塩、ハロゲン化物等を用いることができる。
【0035】
なお、本発明において、半導体洗浄用組成物に含有されるカリウムの含有量をM
K(ppm)およびナトリウムの含有量をM
Na(ppm)は、半導体洗浄用組成物をICP発光分析法(ICP−AES)、ICP質量分析法(ICP−MS)または原子吸光光度法(AA)を用いて定量することにより求めることができる。ICP発光分析装置としては、例えば「ICPE−9000(株式会社島津製作所製)」等を使用することができる。ICP質量分析装置としては、例えば「ICPM−8500(株式会社島津製作所製)」、「ELAN DRC PLUS(パーキンエルマー社製)」等を使用することができる。原子吸光分析装置としては、例えば「AA−7000(株式会社島津製作所製)」、「ZA3000(株式会社日立ハイテクサイエンス)」等を使用することができる。
【0036】
なお、配線材料としてタングステンを有する被研磨体のCMPでは、鉄イオンおよび過酸化物(過酸化水素、ヨウ素酸カリウムなど)を含有するCMPスラリーが使用される。このCMPスラリー中に含まれる鉄イオンが被研磨体の表面に吸着しやすいため、被研磨面は鉄汚染されやすい。この場合、本実施形態で用いられる半導体洗浄用組成物を用いて被研磨面を洗浄することにより、洗浄工程においてタングステン酸カリウムやタングステン酸ナトリウムのような易溶性の塩の生成が促進される。これにより、配線基板上の金属汚染を低減でき、被研磨体のダメージを低減しながら研磨残渣を効率的に除去できると考えられる。
【0037】
1.3.その他の成分
本実施形態で用いられる半導体洗浄用組成物は、主成分である水系媒体の他、水溶性高分子、有機酸、アミン、その他の成分を含有することができる。
【0038】
1.3.1.水溶性高分子
本実施形態で用いられる半導体洗浄用組成物は、水溶性高分子を含有することができる。水溶性高分子は、被洗浄面の表面に吸着して腐食を低減させる機能を有している。そのため、半導体洗浄用組成物に水溶性高分子を添加すると、被洗浄面の腐食を低減させることができる。なお、本発明において「水溶性」とは、20℃の水100gに溶解する質量が0.1g以上であることをいう。また、本発明において「水溶性高分子」とは、2以上の繰り返し単位が線状あるいは網目状に共有結合を介して連なった水溶性の化合物のことをいう。
【0039】
このような水溶性高分子としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、およびこれらの塩;
スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレン等のモノマーと、(メタ)アクリル酸、マレイン酸等の酸モノマーとの共重合体や、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸等をホルマリンで縮合させた芳香族炭化水素基を有する繰り返し単位を有する重合体およびこれらの塩;
ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリアクリルアミド、ポリビニルホルムアミド、ポリエチレンイミン、ポリビニルオキサゾリン、ポリビニルイミダゾール、ポリアリルアミンなどのビニル系合成ポリマー;ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、加工澱粉などの天然多糖類の変性物;
などが挙げられるが、これらに限定されない。これらの水溶性高分子は、1種単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
本実施形態で用いられる水溶性高分子は、ホモポリマーであってもよいが、2種以上の単量体を共重合させた共重合体であってもよい。このような単量体としては、カルボキシル基を有する単量体、スルホン酸基を有する単量体、ヒドロキシル基を有する単量体、ポリエチレンオキシド鎖を有する単量体、アミノ基を有する単量体、複素環を有する単量体などを用いることができる。
【0041】
本実施形態で用いられる水溶性高分子の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1千以上150万以下、より好ましくは3千以上120万以下である。なお、本明細書中における「重量平均分子量」とは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によって測定されたポリエチレングリコール換算の重量平均分子量のことを指す。
【0042】
水溶性高分子の含有量は、半導体洗浄用組成物の常温における粘度が2mPa・s以下となるように調整するとよい。半導体洗浄用組成物の常温における粘度が2mPa・sを超えると、粘度が高くなりすぎることで被洗浄体に半導体洗浄用組成物を安定して供給することができない場合がある。半導体洗浄用組成物の粘度は、添加する水溶性高分子の重量平均分子量や含有量によりほぼ決定されるので、それらのバランスを考慮しながら調整するとよい。
【0043】
また、水溶性高分子の含有量は、被洗浄体であるCMP後の被研磨体の表面に露出している銅やタングステン等の金属配線材、酸化シリコン等の絶縁材、窒化タンタルや窒化チタン等のバリアメタル材等の材質や、使用されたCMPスラリーの組成により適宜変更す
ることができる。
【0044】
さらに、本実施形態で用いられる半導体洗浄用組成物の希釈度合によっても適宜変更することができる。この場合、水溶性高分子の含有量は、半導体洗浄用組成物を希釈して調製される洗浄剤100質量部に対して、下限値が好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、上限値が好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.1質量部以下である。水溶性高分子の含有量が前記範囲内にあると、腐食の抑制とCMPスラリー中に含まれていたパーティクルや金属不純物の配線基板上からの除去効果との両立が促進されて、より良好な被洗浄面が得られやすい。
【0045】
1.3.2.有機酸
本実施形態で用いられる半導体洗浄用組成物は、有機酸を含有することができる。有機酸は、カルボキシ基、スルホ基等の酸性基を1個以上有することが好ましい。なお、本発明における「有機酸」は、上述の水溶性高分子を含まない概念である。
【0046】
有機酸の具体例としては、クエン酸、マレイン酸、リンゴ酸、酒石酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、エチレンジアミン四酢酸、アクリル酸、メタクリル酸、安息香酸、フェニル乳酸、ヒドロキシフェニル乳酸、フェニルコハク酸、ナフタレンスルホン酸、およびこれらの塩等が挙げられる。これらの有機酸は、1種単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
【0047】
有機酸としては、アミノ酸を用いてもよい。アミノ酸としては、下記一般式(1)で表される化合物等が挙げられる。
【0048】
【化1】
(上記一般式(1)中、R
1は水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基およびヘテロ原子を有する炭素数1〜20の有機基よりなる群から選択されるいずれかを示す。)
【0049】
上記一般式(1)中のR
1における炭素数1〜10の炭化水素基としては、例えば炭素数1〜10の飽和脂肪族炭化水素基、炭素数1〜10の環状飽和炭化水素基、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基等を挙げることができ、これらの中でも炭素数1〜10の飽和脂肪族炭化水素基が好ましい。
【0050】
上記一般式(1)中のR
1におけるヘテロ原子を有する炭素数1〜20の有機基としては、例えばカルボキシ基を有する炭素数1〜20の炭化水素基、ヒドロキシル基を有する炭素数1〜20の炭化水素基、アミノ基を有する炭素数1〜20の炭化水素基、メルカプト基を有する炭素数1〜20の炭化水素基、複素環を有する炭素数1〜20の有機基等を挙げることができ、これらの基はさらに酸素、硫黄、ハロゲン等のヘテロ原子を含んでいてもよく、その一部は他の置換基で置換されていてもよい。
【0051】
上記式(1)で表される化合物としては、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、セリン、トレオニン、チロシン、パリン、トリプトファン、ヒスチジン、2−アミノ−3−アミノプロパン酸等を挙げることができる。これらのアミノ酸は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いても良い
。
【0052】
有機酸としては、下記一般式(2)で表される化合物を用いることも好ましい。
【0053】
【化2】
(上記一般式(2)中、R
2は、炭素数1〜20の有機基を示す。)
【0054】
上記一般式(2)中のR
2における炭素数1〜20の有機基としては、例えば炭素数6〜20の飽和脂肪族炭化水素基、炭素数6〜20の不飽和脂肪族炭化水素基、環状飽和炭化水素基を有する炭素数6〜20の有機基、不飽和環状炭化水素基を有する炭素数6〜20の有機基、カルボキシ基を有する炭素数1〜20の炭化水素基、ヒドロキシル基を有する炭素数1〜20の炭化水素基、アミノ基を有する炭素数1〜20の炭化水素基、複素環基を有する炭素数1〜20の有機基等を挙げることができ、この中でも不飽和環状炭化水素基を有する炭素数6〜20の有機基またはカルボキシ基を有する炭素数1〜20の炭化水素基が好ましく、アリール基を有する炭素数6〜20の有機基またはカルボキシメチル基が特に好ましい。ただし、上記一般式(2)で表される化合物は、上記一般式(1)で表される化合物を除くものである。
【0055】
上記一般式(2)で表される化合物の具体例としては、ヒドロキシフェニル乳酸、ヒドロキシマロン酸等を挙げることができ、これらのうちヒドロキシフェニル乳酸であることが好ましい。上記例示した化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いても良い。
【0056】
有機酸の含有量は、被洗浄体であるCMP後の被研磨体の表面に露出している銅やタングステン等の金属配線材、酸化シリコン等の絶縁材、窒化タンタルや窒化チタン等のバリアメタル材等の材質や、使用されたCMPスラリーの組成により適宜変更することができる。
【0057】
さらに、本実施形態で用いられる半導体洗浄用組成物の希釈度合によっても適宜変更することができる。この場合、有機酸の含有量は、半導体洗浄用組成物を希釈して調製される洗浄剤100質量部に対して、下限値が好ましくは0.0001質量部以上、より好ましくは0.0005質量部以上、上限値が好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下である。有機酸の含有量が前記範囲内にあると、配線材料表面に付着した不純物を効果的に除去することができる。また、過度のエッチングの進行をより効果的に抑制し、良好な洗浄面を得ることが出来る。
【0058】
1.3.3.アミン
本実施形態で用いられる半導体洗浄用組成物は、アミン(但しアミノ酸を除く。)を含有することができる。アミンは、エッチング剤としての機能を有すると考えられる。アミンを添加することにより、CMP終了後における洗浄工程において、配線基板上の金属酸化膜(例えば、CuO、Cu
2O及びCu(OH)
2層)や有機残渣(例えばBTA層)をエッチングして除去することができると考えられる。
【0059】
アミンは、水溶性アミンであることが好ましい。「水溶性」の定義については、上述したとおりであり、20℃の水100gに溶解する質量が0.1g以上であることをいう。
アミンとしては、例えば、アルカノールアミン、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン等が挙げられる。
【0060】
アルカノールアミンとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジブチルエタノールアミン、N−(β−アミノエチル)エタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等が挙げられる。第一級アミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、1,3−プロパンジアミン等が挙げられる。第二級アミンとしては、ピペリジン、ピペラジン等が挙げられる。第三級アミンとしては、トリメチルアミン、トリエチルアミン等が挙げられる。これらのアミンは、1種単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
【0061】
これらのアミンの中でも、配線基板上の金属酸化膜や有機残渣をエッチングする効果が高い点で、モノエタノールアミン、モノイソプロパノールアミンが好ましく、モノエタノールアミンがより好ましい。
【0062】
アミンの含有量は、被洗浄体であるCMP後の被研磨体の表面に露出している銅やタングステン等の金属配線材、酸化シリコン等の絶縁材、窒化タンタルや窒化チタン等のバリアメタル材等の材質や、使用されたCMPスラリーの組成により適宜変更することができる。
【0063】
さらに、本実施形態で用いられる半導体洗浄用組成物の希釈度合によっても適宜変更することができる。この場合、アミンの含有量は、半導体洗浄用組成物を希釈して調製される洗浄剤100質量部に対して、下限値が好ましくは0.0001質量部以上、より好ましくは0.0005質量部以上であり、上限値が好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下である。アミンの含有量が前記範囲内にあると、CMP終了後における洗浄工程において、配線基板上の金属酸化膜や有機残渣をより効果的にエッチングして除去することができる。
【0064】
1.3.4.水系媒体
本実施形態で用いられる半導体洗浄用組成物は、水系媒体を主成分とする液体である。この水系媒体は、水を主成分とした溶媒としての役割を果たすことができるものであれば特に制限されない。このような水系媒体としては、水、水およびアルコールの混合媒体、水および水との相溶性を有する有機溶媒を含む混合媒体等が挙げられる。これらの中でも、水、水およびアルコールの混合媒体を用いることが好ましく、水を用いることがより好ましい。
【0065】
1.3.5.その他の成分
本実施形態で用いられる半導体洗浄用組成物は、適時必要な成分を含有してもよく、例えばpH調整剤や界面活性剤等を含有してもよい。
【0066】
<pH調整剤>
本実施形態に係る半導体洗浄用組成物は、配線材料として銅を含む被研磨面を洗浄する場合、pHの下限値は9以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、pHの上限値は14以下であることが好ましい。配線材料としてタングステンを含む被研磨面を洗浄する場合、pHの上限値は7以下であることが好ましく、6以下であることがより好ましく、pHの下限値は2以上であることが好ましい。
【0067】
本実施形態で用いられる半導体洗浄用組成物において、上述した有機酸やアミンを添加することによって所望のpHが得られない場合には、pHを上記範囲内に調整するためにpH調整剤を添加してもよい。pH調整剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属の水酸化物、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の有機アンモニウム塩、アンモニア等の塩基性化合物が挙げられる。これらのpH調整剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
【0068】
<界面活性剤>
界面活性剤としては、公知の成分を適時使用することができるが、ノニオン性界面活性剤またはアニオン性界面活性剤を好ましく使用することができる。界面活性剤を添加することにより、CMPスラリー中に含まれていたパーティクルや金属不純物を配線基板上から除去する効果が高まり、より良好な被洗浄面が得られる場合がある。
【0069】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアリールエーテル;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。上記例示したノニオン性界面活性剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
【0070】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸等のアルキルベンゼンスルホン酸;アルキルナフタレンスルホン酸;ラウリル硫酸等のアルキル硫酸エステル;ポリオキシエチレンラウリル硫酸等のポリオキシエチレンアルキルエーテルの硫酸エステル;ナフタレンスルホン酸縮合物;アルキルイミノジカルボン酸;リグニンスルホン酸等が挙げられる。これらのアニオン性界面活性剤は、塩の形態で使用してもよい。この場合、カウンターカチオンとしては、例えばナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン等が挙げられるが、半導体洗浄用組成物にカリウムやナトリウムが過剰に含まれることを防止する観点からアンモニウムイオンが好ましい。
【0071】
配線材料としてタングステンを有する被研磨体のCMPでは、鉄イオンおよび過酸化物(過酸化水素、ヨウ素酸カリウムなど)を含有するCMPスラリーが使用される。このCMPスラリー中に含まれる鉄イオンが被研磨体の表面に吸着しやすいため、被研磨体の表面は鉄汚染されやすい。この場合、鉄イオンはプラスにチャージするため、半導体洗浄用組成物にアニオン性界面活性剤を添加することにより、被研磨体の表面の鉄汚染を効果的に除去できる場合がある。
【0072】
界面活性剤の含有量は、被洗浄体であるCMP後の被研磨体の表面に露出している銅やタングステン等の金属配線材、酸化シリコン等の絶縁材、窒化タンタルや窒化チタン等のバリアメタル材等の材質や、使用されたCMPスラリーの組成により適宜変更することができる。
【0073】
さらに、本実施形態で用いられる半導体洗浄用組成物の希釈度合によっても適宜変更することができる。この場合、界面活性剤の含有量は、半導体洗浄用組成物を希釈して調製される洗浄剤100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上1質量部以下であ
る。界面活性剤の含有量が前記範囲内にあると、CMP終了後における洗浄工程において、被洗浄体の腐食を低減しながら、有機残渣を効率的に除去することができる。
【0074】
1.4.半導体洗浄用組成物の調製方法
本実施形態で用いられる半導体洗浄用組成物は、特に制限されず、公知の方法を使用することにより調製することができる。具体的には、水等の水系媒体に上述した各成分を溶解させて、ろ過することにより調製することができる。上述した各成分の混合順序や混合方法については特に制限されない。
【0075】
本実施形態で用いられる半導体洗浄用組成物の調製方法では、必要に応じて、デプスタイプまたはプリーツタイプのフィルタでろ過して粒子量を制御することが好ましい。ここで、デプスタイプのフィルタとは、深層ろ過または体積ろ過タイプのフィルタとも称される高精度ろ過フィルタである。このようなデプスタイプのフィルタは、多数の孔が形成されたろ過膜を積層させた積層構造をなすものや、繊維束を巻き上げたものなどがある。デプスタイプのフィルタとしては、具体的には、プロファイルII、ネクシスNXA、ネクシスNXT、ポリファインXLD、ウルチプリーツプロファイル等(全て、日本ポール社製)、デプスカートリッジフィルタ、ワインドカートリッジフィルタ等(全て、アドバンテック社製)、CPフィルタ、BMフィルタ等(全て、チッソ社製)、スロープピュア、ダイア、マイクロシリア等(全て、ロキテクノ社製)等が挙げられる。
【0076】
プリーツタイプのフィルタとしては、不織布、ろ紙、金属メッシュなどからなる精密ろ過膜シートをひだ折り加工した後、筒状に成形するとともに前記シートのひだの合わせ目を液密にシールし、かつ、筒の両端を液密にシールして得られる筒状の高精度ろ過フィルタが挙げられる。具体的には、HDCII、ポリファインII等(全て、日本ポール社製)、PPプリーツカートリッジフィルタ(アドバンテック社製)、ポーラスファイン(チッソ社製)、サートンポア、ミクロピュア等(全て、ロキテクノ社製)等が挙げられる。
【0077】
フィルタは、定格ろ過精度が0.01〜20μmであるものを用いることが好ましい。定格ろ過精度が前記範囲のものを用いることにより、パーティクルカウンタで測定したときの、1mL当たりにおける粒子径20μm以上の粒子の数が0個であるろ液を効率良く得ることができる。また、フィルタに捕捉される粗大粒子の数が最小限になるため、フィルタの使用可能期間が延びる。
【0078】
ろ過する際の条件(フィルタ前後の圧力差(差圧)、液温など)は、差圧は、使用するフィルタの最大耐差圧を超えない範囲で適宜設定すればよいが、具体的には0.2〜0.4MPaGであることが好ましい。また、液温は10〜50℃であることが好ましい。また、線速度は11〜150L/minが好ましく、13〜130L/minがより好ましい。ろ過する際の線速度を前記範囲とすることにより、泡噛を抑制すると同時に、異物を効果的に除去することができ、スループットが良好となる。
【0079】
ろ過工程は、例えば、
図1に示すようなろ過装置300を用いて行うことができる。
図1に示すろ過装置300は、異物除去前の半導体洗浄用組成物を貯蔵し供給する供給タンク210と、異物除去前の半導体洗浄用組成物を一定の流量で流すための定量ポンプ220と、カートリッジフィルタ(図示せず)及びこのカートリッジフィルタを収納(装着)したハウジングを有するろ過器240と、定量ポンプ220とろ過器240の途中に位置する脈動防止器230と、脈動防止器230とろ過器240との間に配置された第一圧力計270aと、ろ過器240の下流に配置された第二圧力計270bと、を備えている。そして、ろ過装置300は、ろ過器240から供給タンク210に半導体洗浄用組成物を戻す戻り導管260と、ろ過器240によりろ過された半導体洗浄用組成物を排出する排出導管250と、を備えている。
【0080】
ろ過装置300において、異物除去前の半導体洗浄用組成物は、供給タンク210から定量ポンプ220により昇圧された脈動防止器230に供給される。定量ポンプ220による脈動がある場合は、脈動防止器230によって脈動が低減される。脈動防止器230から排出された半導体洗浄用組成物は、ろ過器240に供給され、異物が除去された後、排出導管250を通って回収される。ここで、「異物」とは、粒子径が20μm以上の粒子のことである。
【0081】
排出導管5を通って回収された半導体洗浄用組成物は、後述する保管用の容器に充填される。この際、容器への充填の際の線速度は11〜150L/minとすることが必要であり、13〜130L/minがより好ましい。線速度を前記範囲内とすることにより、泡噛を抑制すると同時に、大気中からの異物混入を抑制することができ、半導体洗浄用組成物の品質を安定化させることができる。
【0082】
排出導管250を通って回収された半導体洗浄用組成物の異物の除去が十分でない場合には、半導体洗浄用組成物を排出導管250から排出させずに、戻り導管260を通して供給タンク210に戻し、再びろ過器240にてろ過することもできる。また、定量ポンプ220による脈動が生じない場合には、脈動防止器230を配置しなくてもよい。更に、半導体洗浄用組成物の粘度が高い場合には、供給タンク、導管、またはこれらの両方を加温することにより、半導体洗浄用組成物の粘度を低下させることができる。即ち、供給タンク、導管、またはこれらの両方を加温可能な加温手段を更に備えていてもよい。
【0083】
なお、ろ過装置300は、第一圧力計270aと第二圧力計270bとを備えているが、圧力計を備えないろ過装置を用いてもよい。但し、第一圧力計270aと第二圧力計270bとを備えることにより、ろ過器が正常に機能するようにろ過器に生じる差圧を管理することができる。また、供給タンク210に代えて、運搬用のコンテナから直接、異物除去前の半導体洗浄用組成物を供給してもよい。そして、ろ過装置300は、1つのろ過器240を用いた例であるが、複数のろ過器を用いることもできる。複数のろ過器を用いる場合、複数のろ過器を直列に連結してもよいし、並列に配置してもよい。
【0084】
1.5.半導体洗浄用組成物の保管方法
本実施形態に係る半導体洗浄用組成物の保管方法(以下、単に「保管方法」ともいう)は、半導体洗浄用組成物を容器に充填して保管する方法であって、前記容器の内容積に対する前記半導体洗浄用組成物の占める容積を除いた空隙部の容積の比率を5〜20%とし、前記空隙部の酸素濃度が0〜5%であり、5℃以上40℃以下の温度で保管することを特徴とする。かかる保管方法によれば、安定剤等を添加していない半導体洗浄用組成物であっても異物や変色の発生を抑制することができ、保存安定性が良好となることが判明した。
【0085】
本実施形態に係る保管方法は、半導体洗浄用組成物であれば適用可能であるが、上述の方法で作製された半導体洗浄用組成物に好適に用いることができる。すなわち、半導体洗浄用組成物に含有される粒子が凝集しやすい傾向のある場合に、本願発明の保管方法は特に効果を発揮する。
【0086】
本実施形態に係る保管方法は、半導体洗浄用組成物を5〜40℃の温度で保管することが必須であり、好ましくは5〜35℃である。保管温度が前記範囲を超える場合、長期間の保存の間に水分が揮発することで容器が膨張しやすく、また半導体洗浄用組成物の変色が発生しやすくなるため、安定に保管することができない。保管温度が前記範囲未満では、液中に存在する粒子が凝集し、ゲル状物や異物が発生する傾向にあり、安定に保管することができない。
【0087】
本実施形態に係る保管方法は、上記の半導体洗浄用組成物を充填して保存する容器において、該容器の内容積に対する半導体洗浄用組成物の占める容積を除いた空隙部の容積の比率(%)(以下、「空隙率」ともいう。)が5〜20%であることが必須であり、好ましくは5〜15%である。空隙率が前記範囲を超えると、保管温度が変化した場合の水分の揮発が大きくなり、気液界面と容器壁面において半導体洗浄用組成物が乾燥することで異物が形成されるため、安定に保管することができない。空隙率が前記範囲未満では、温度の変化により半導体洗浄用組成物が体積変化を起こした場合、容器の変形や容器の破裂が発生するため、安定に保管することができない。
【0088】
また、本実施形態に係る保管方法において、前記空隙部の酸素濃度が0〜5%であることが必須であり、その上限値は、好ましくは4%以下、より好ましくは3%以下、よりさらに好ましくは2%以下、特に好ましくは1%以下である。前記空隙部の酸素濃度が前記範囲内であると、長期間の保存の間に半導体洗浄用組成物に含有される成分が酸化および/または変質することによる異物や変色の発生を効果的に抑制することができる。
【0089】
本実施形態に係る保管方法では、半導体洗浄用組成物を保管するための容器の形状、材質、大きさは特に限定されないが、半導体洗浄用組成物への金属イオンの溶出濃度が50ppm以下である容器が好ましい。金属イオンが半導体洗浄用組成物中に溶出すると、組成物中に分散している粒子表面のゼータ電位バランスが崩れるため、粒子の凝集が発生しやすくなる。このようにして凝集した粒子は、被洗浄面の洗浄工程において被洗浄面の汚染を招き、さらには被洗浄面を傷付けてしまう場合がある。
【0090】
なお、このような金属溶出の少ない容器としては、例えばガラス製、樹脂製の材質により形成されているものが好ましい。例えば、特開昭59−035043号公報の方法等により製造されたクリーンな容器を好ましく使用することができる。
【0091】
本実施形態に係る保管方法によれば、保存期間が6月でも、好ましくは12月でも、さらに好ましくは18月でも、保管中に半導体洗浄用組成物の品質がほとんど変化しない。また、ゲル状物を生ずることもない。したがって、保管後の半導体洗浄用組成物を改めてろ過する必要もなく、製造直後の半導体洗浄用組成物と同じ条件で、被洗浄面の洗浄工程に供することができる。また、半導体洗浄用組成物の生産性を向上できる効果は、保存期間が6月、12月、18月と長くなるほど大きくなる。
【0092】
2.洗浄剤
本発明における「洗浄剤」とは、上述の半導体洗浄用組成物に水系媒体を添加して希釈することにより調製された、実際に被洗浄面を洗浄する際に用いられる液体のことをいう。上述の半導体洗浄用組成物は、通常、各成分が濃縮された状態で存在する。そのため、各ユーザーが、上述の半導体洗浄用組成物を適宜水系媒体で希釈して洗浄剤を調製し、その洗浄剤を使用に供する。
【0093】
ここで希釈に用いられる水系媒体は、上述の半導体洗浄用組成物に含有される水系媒体と同義であり、水、水およびアルコールの混合媒体、水および水との相溶性を有する有機溶媒を含む混合媒体等を用いることができる。
【0094】
半導体洗浄用組成物に水系媒体を加えて希釈する方法としては、半導体洗浄用組成物を供給する配管と水系媒体を供給する配管とを途中で合流させて混合し、この混合された洗浄剤を被洗浄面に供給する方法がある。この混合は、圧力を付した状態で狭い通路を通して液同士を衝突混合する方法;配管中にガラス管などの充填物を詰め液体の流れを分流分離、合流させることを繰り返し行う方法;配管中に動力で回転する羽根を設ける方法など
通常に行われている方法を採用することができる。
【0095】
また、半導体洗浄用組成物に水系媒体を加えて希釈する別の方法としては、半導体洗浄用組成物を供給する配管と水系媒体を供給する配管とを独立に設け、それぞれから所定量の液を被洗浄面に供給し、被洗浄面上で混合する方法がある。さらに、半導体洗浄用組成物に水系媒体を加えて希釈する別の方法としては、1つの容器に、所定量の半導体洗浄用組成物と水系媒体を入れ混合してから、被洗浄面にその混合した半導体洗浄用組成物を供給する方法がある。
【0096】
半導体洗浄用組成物に水系媒体を加えて希釈する際の希釈倍率としては、半導体洗浄用組成物1質量部を、水系媒体を添加して1〜500質量部(1〜500倍)に希釈することが好ましく、20〜500質量部(20〜500倍)に希釈することがより好ましく、30〜300質量部(30〜300倍)に希釈することが特に好ましい。なお、上述の半導体洗浄用組成物に含有される水系媒体と同じ水系媒体で希釈することが好ましい。このように半導体洗浄用組成物を濃縮された状態とすることにより、洗浄剤をそのまま運搬し保管する場合と比較して、より小型な容器での運搬や保管が可能になる。その結果、運搬や保管のコストが低減できる。また、そのまま洗浄剤を濾過等するなどして精製する場合よりも、より少量の半導体洗浄用組成物を精製することになるので、精製時間の短縮化を行うことができ、これにより大量生産が可能になる。
【0097】
3.洗浄方法
本発明の一実施形態に係る洗浄方法は、配線材料として銅またはタングステンを含み、かつ、バリアメタル材料としてタンタル、チタン、コバルト、ルテニウム、マンガン、及びこれらの化合物よりなる群から選択される少なくとも1種を含む配線基板を、上述の方法によって保管された半導体洗浄用組成物(もしくはこれを水系媒体で希釈した洗浄剤、以下これらを単に「洗浄剤」という。)を用いて洗浄する工程を含む。以下、本実施形態に係る洗浄方法の一例について、図面を用いながら詳細に説明する。
【0098】
<配線基板の作製>
図2は、本実施形態に係る洗浄方法に用いられる配線基板の作製プロセスを模式的に示す断面図である。かかる配線基板は、以下のプロセスを経ることにより形成される。
【0099】
図2は、CMP処理前の被処理体を模式的に示す断面図である。
図2に示すように、被処理体100は、基体10を有する。基体10は、例えばシリコン基板とその上に形成された酸化シリコン膜から構成されていてもよい。さらに、基体10には、図示していないが、トランジスタ等の機能デバイスが形成されていてもよい。
【0100】
被処理体100は、基体10の上に、配線用凹部20が設けられた絶縁膜12と、絶縁膜12の表面ならびに配線用凹部20の底部および内壁面を覆うように設けられたバリアメタル膜14と、配線用凹部20を充填しかつバリアメタル膜14の上に形成された金属膜16と、が順次積層されて構成される。
【0101】
絶縁膜12としては、例えば、真空プロセスで形成された酸化シリコン膜(例えば、PETEOS膜(Plasma Enhanced−TEOS膜)、HDP膜(High Density Plasma Enhanced−TEOS膜)、熱化学気相蒸着法により得られる酸化シリコン膜等)、FSG(Fluorine−doped silicate glass)と呼ばれる絶縁膜、ホウ素リンシリケート膜(BPSG膜)、SiON(Silicon oxynitride)と呼ばれる絶縁膜、Siliconnitride等が挙げられる。
【0102】
バリアメタル膜14としては、例えば、タンタル、チタン、コバルト、ルテニウム、マンガン、およびこれらの化合物等が挙げられる。バリアメタル膜14は、これらの1種から形成されることが多いが、タンタルと窒化タンタルなど2種以上を併用することもできる。
【0103】
金属膜16は、
図2に示すように、配線用凹部20を完全に埋めることが必要となる。そのためには、通常、化学蒸着法または電気めっき法により、10000〜15000Åの金属膜を堆積させる。金属膜16の材料としては、銅またはタングステンが挙げられるが、銅の場合には純度の高い銅だけでなく、銅を含有する合金を使用することもできる。銅を含有する合金中の銅含有量としては、95質量%以上であることが好ましい。
【0104】
次いで、
図2の被処理体100のうち、配線用凹部20に埋没された部分以外の金属膜16をバリアメタル膜14が露出するまでCMPにより高速研磨する(第1研磨工程)。さらに、表面に露出したバリアメタル膜14をCMPにより研磨する(第2研磨工程)。このようにして、
図3に示すような配線基板200が得られる。
【0105】
<配線基板の洗浄>
次いで、
図3に示す配線基板200の表面(被洗浄面)を上述の洗浄剤を用いて洗浄する。本実施形態に係る洗浄方法によれば、CMP終了後の配線材料およびバリアメタル材料が表面に共存する配線基板を洗浄する際に、配線材料およびバリアメタル材料の腐食を抑制すると共に、配線基板上の酸化膜や有機残渣を効率的に除去することができる。
【0106】
本実施形態に係る洗浄方法は、配線基板の配線材料としてタングステンを含み、前記配線基板を特開平10−265766号公報等に記載されている鉄イオンおよび過酸化物を含有する組成物(フェントン試薬)を用いて化学機械研磨した後に行うと非常に有効である。配線材料としてタングステンを有する被研磨体のCMPでは、鉄イオンおよび過酸化物(過酸化水素、ヨウ素酸カリウムなど)を含有するCMPスラリーが使用される。このCMPスラリー中に含まれる鉄イオンが被研磨体の表面に吸着しやすいため、被研磨体の表面は鉄汚染されやすい。この場合、希フッ酸を用いて被研磨体の表面を洗浄することで鉄汚染を除去することができるが、被研磨面の表面がエッチングされてしまいダメージを受けやすい。しかしながら、上述の半導体洗浄用組成物が特定粒子を所定の割合で含有している場合には、特定粒子が被研磨面の鉄汚染をそぎ落として効果的に除去できると考えられる。また、上述の半導体洗浄用組成物が所定の割合でカリウムおよびナトリウムを含有している場合には、洗浄工程においてタングステン酸カリウムやタングステン酸ナトリウムのような易溶性の塩の生成が促進される。これにより、配線基板上の金属汚染を低減でき、被研磨体のダメージを低減しながら研磨残渣を効率的に除去できると考えられる。
【0107】
洗浄方法としては、特に制限されないが、配線基板200に上述の洗浄剤を直接接触させる方法により行われる。洗浄剤を配線基板200に直接接触させる方法としては、洗浄槽に洗浄剤を満たして配線基板を浸漬させるディップ式;ノズルから配線基板上に洗浄剤を流下しながら配線基板を高速回転させるスピン式;配線基板に洗浄剤を噴霧して洗浄するスプレー式等の方法が挙げられる。また、このような方法を行うための装置としては、カセットに収容された複数枚の配線基板を同時に洗浄するバッチ式洗浄装置、1枚の配線基板をホルダーに装着して洗浄する枚葉式洗浄装置等が挙げられる。
【0108】
本実施形態に係る洗浄方法において、洗浄剤の温度は、通常室温とされるが、性能を損なわない範囲で加温してもよく、例えば40〜70℃程度に加温することができる。
【0109】
また、上述の洗浄剤を配線基板200に直接接触させる方法に加えて、物理力による洗浄方法を併用することも好ましい。これにより、配線基板200に付着したパーティクル
による汚染の除去性が向上し、洗浄時間を短縮することができる。物理力による洗浄方法としては、洗浄ブラシを使用したスクラブ洗浄や超音波洗浄が挙げられる。
【0110】
さらに、本実施形態に係る洗浄方法による洗浄の前および/または後に、超純水または純水による洗浄を行ってもよい。
【0111】
4.実施例
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、本実施例における「部」および「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0112】
4.1.実施例1
4.1.1.半導体洗浄用組成物の調製
ポリエチレン製容器に、表1に示す含有割合となるように各成分を添加し、イオン交換水を適量入れ、15分間撹拌した。この混合物に、全構成成分の合計量が100質量部となるようにイオン交換水、水酸化カリウムおよび水酸化ナトリウムを加え、表1に示すpH、K含有量、Na含有量となるように組成物を調整した。
【0113】
このようにして得られた組成物に対してコロイダルシリカ(商品名「PL−1」、扶桑化学工業株式会社製、一次粒径15nm)を0.01質量部添加した後、
図1に示すろ過装置300を用いてろ過を行った(ろ過工程)。
図1に示すろ過装置300は、異物除去前の組成物を貯蔵し供給する供給タンク210と、異物除去前の組成物を一定の流量で流すための定量ポンプ220と、カートリッジフィルタ(図示せず)及びこのカートリッジフィルタを収納(装着)したハウジングを有するろ過器240と、定量ポンプ220とろ過器240の途中に位置する脈動防止器230と、脈動防止器230とろ過器240との間に配置された第一圧力計270aと、ろ過器240の下流に配置された第二圧力計270bと、を備えている。そして、ろ過装置300は、ろ過器240から供給タンク210に半導体洗浄用組成物を戻す戻り導管260と、ろ過器240によりろ過された半導体洗浄用組成物を排出する排出導管250と、を備えている。
【0114】
本実施例において、ろ過器240は、ハウジング内にメンブレンタイプのカートリッジフィルタ「ウォーターファイン」(日本ポール社製、定格ろ過精度0.05μm、長さ10インチ)を1本装着したものである。定量ポンプ220は、エア駆動式のダイヤフラムポンプを用い、ろ過器前後の差圧が0.2〜0.3MPaG、組成物の流速が表1の線速度となるようにした。
【0115】
適時組成物をサンプリングして、組成物中に含有される0.1〜0.3μmの粒子数が表1に記載の濃度となった時点で濾過を停止し、実施例1の半導体洗浄用組成物を調製した。なお、組成物1mL当たりにおける粒子の数を以下のようにして測定した。
【0116】
パーティクルカウンタには、リオン株式会社製の液中パーティクルセンサ「KS−42AF」を使用した。具体的には、まず測定されるパーティクルの数が「300個/mL(0.1μm)」(すなわち、「粒子径が0.1μmよりも大きな粒子が、1mL中に300個以下」)となるまで超純水でブランク測定を繰り返した。その後、半導体洗浄用組成物(サンプル)100mLを用意し、このサンプルをシリンジサンプラ「KZ−31W」にセットした。その後、前記液中パーティクルセンサにより前記サンプルの1mL当りにおける粒子径0.1〜0.3μmの粒子の数が2回測定され、平均値が算出される。この平均値を半導体洗浄用組成物1mL当りにおける粒子径0.1〜0.3μmの粒子の数とした。
【0117】
4.1.2.配線基板の洗浄試験
(1)化学機械研磨工程
銅配線のパターン付き基板(直径8インチのシリコン基板上にPETEOS膜を厚さ5000Å積層させた後、「SEMATECH 854」マスクにてパターン加工し、その上に厚さ250Åのコバルト膜、厚さ1000Åの銅シード膜および厚さ10000Åの銅メッキ膜を順次積層させたテスト用の基板)を、株式会社荏原製作所製の化学機械研磨装置「EPO112」を用いて、下記の条件で二段階化学機械研磨を実施した。なお、第一段目の化学機械研磨では、コバルト膜が露出するまで銅シード膜および銅メッキ膜を化学機械研磨した。第二段目の化学機械研磨では、PETEOS膜が露出するまでコバルト膜、銅シード膜および銅メッキ膜を化学機械研磨した。
【0118】
<第一段目の化学機械研磨>
・化学機械研磨用水系分散体:JSR(株)製、「CMS7501/CMS7552」
・研磨パッド:ロデール・ニッタ(株)製、「IC1000/SUBA400」
・定盤回転数:70rpm
・ヘッド回転数:71rpm
・ヘッド荷重:50g/cm
2
・化学機械研磨用水系分散体供給速度:200mL/分
・研磨時間:150秒
【0119】
<第二段目の化学機械研磨>
・化学機械研磨用水系分散体:JSR(株)製、「CMS8501/CMS8552」
・研磨パッド:ロデール・ニッタ(株)製、「IC1000/SUBA400」
・定盤回転数:70rpm
・ヘッド回転数:71rpm
・ヘッド荷重:250g/cm
2
・化学機械研磨用水系分散体供給速度:200mL/分
・研磨時間:60秒
【0120】
(2)洗浄工程
上記で得られた研磨後の基板表面を、上記で得られた半導体洗浄用組成物に表1に記載の希釈倍率となるように超純水(粒子径0.3μm以上のパーティクルが10個/mL以下、pH=6.5)を添加して希釈することにより洗浄剤を調製し、下記の条件で定盤上洗浄に供した。その後、同様にブラシスクラブ洗浄に供した。
【0121】
<定盤上洗浄>
・洗浄剤:上記で調製した洗浄剤
・ヘッド回転数:71rpm
・ヘッド荷重:100g/cm
2
・定盤回転数:70rpm
・洗浄剤供給速度:300mL/分
・洗浄時間:30秒
【0122】
<ブラシスクラブ洗浄>
・洗浄剤:上記で調製した洗浄剤
・上部ブラシ回転数:100rpm
・下部ブラシ回転数:100rpm
・基板回転数:100rpm
・洗浄剤供給量:300mL/分
・洗浄時間:30秒
【0123】
4.1.3.評価試験
<腐食評価>
上記で得られた洗浄後の基板表面を走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ製、型番「S−4800」)を用いて、倍率120,000倍で、テストパターンの0.175μmの銅配線部を観察することにより腐食の評価を行った。その結果を表1に示す。なお、評価基準は下記のとおりである。
(評価基準)
銅配線10本における腐食が観察された銅配線の数が、
・3本以下であり、かつ、バリアメタルとの間にスリットが認められない場合、非常に良好と判断して「◎」
・3本を超え5本以下であり、かつ、バリアメタルとの間にスリットが認められない場合、使用可能と判断して「○」。
・5本を超える、または、バリアメタルとの間にスリットが認められる場合、不良と判断して「×」
と表記した。
【0124】
<欠陥評価>
上記で得られた洗浄後の基板表面をウエハ欠陥検査装置(ケーエルエー・テンコール社製、型番「KLA2351」)を用いて、被研磨面全面の欠陥数を計測した。その結果を表1に示す。なお、評価基準は下記のとおりである。
(評価基準)
基板表面全体における欠陥数が、
・250個以下である場合、非常に良好であるであると判断して「◎」
・250個を超え500個以下である場合、使用可能と判断して「○」
・500個以上である場合、不良であると判断して「×」
と表記した。
【0125】
<信頼性評価>
上記第二段目の化学機械研磨を行った基板(銅膜を厚さ5000Å積層させたテスト用の基板)1000枚を上記で得られた洗浄剤を用いて上記ブラシスクラブ洗浄にてランニングで洗浄した。洗浄後の基板を欠陥検査し、基板表面全体における欠陥数が250個より多い場合を不良とした。1000枚中不良となった基板数をカウントすることにより、洗浄剤の信頼性について評価した。その結果を表1に示す。評価基準は以下の通りである。
(評価基準)
1000枚中不良となった基板の数が、
・50枚以下の場合、非常に良好であると判断して「◎」
・50枚より多く100枚以下である場合、使用可能と判断して「○」
・100枚より多い場合、不良であると判断して「×」
【0126】
<保存安定性評価>
半導体洗浄用組成物を保管容器に表1の線速度で注入し、容器の内容積との比率(空隙率)、保管温度、容器内に残留する気体中の酸素濃度を表1に記載の条件とし、静置して6ヶ月保管した。なお、酸素濃度は半導体洗浄用組成物を保管容器へ移し替えた後、容器内へ高純度窒素を吹き付けて置換することにより調整した。6ヶ月保管後の半導体洗浄用組成物の異物発生の有無および保管容器外観を目視にて判断した結果を表1に示す。評価基準は以下の通りである。
(評価基準−異物発生有無)
6ヶ月保管後の保管容器内において、
・目視にて異物(沈降物)が確認できず、保管前と比較して変色が認められない場合、良好であると判断して「○」
・目視にて異物(沈降物)が視認でき、または、保管前と比較して変色が認められる場合、不良であると判断して「×」
(評価基準−保管容器外観)
6ヶ月保管後の保管容器において、
・目視にて保管容器外観に変化がない場合、良好であると判断して「○」
・目視にて保管容器外観に変化がある場合、不良であると判断して「×」
【0127】
なお、表1〜表3において、「CB」はクリーンボトルを表し、株式会社アイセロより市販されている20リットルの角缶型のクリーンボトルを使用した。「PL」は洗浄ポリ容器を表し、市販されている20リットルの角缶型のポリプロピレン容器の内部をクリーンルーム中で洗浄したものを使用した。「ME」は金属缶を表し、市販の金属製の一斗缶を使用した。
【0128】
4.2.実施例2〜26および比較例1〜12
半導体洗浄用組成物を表1〜表2に記載の組成に変更し、表1〜表2に記載の組成の洗浄剤とした以外は、実施例1と同様にして配線基板の洗浄試験および評価試験を行った。
【0129】
4.3.実施例27
4.3.1.半導体洗浄用組成物の調製
表3に記載の組成に変更し、必要に応じて水酸化カリウムおよび水酸化ナトリウムを用いて表3に示すpH、K含有量、Na含有量となるように調整した以外は、実施例1と同様にして半導体洗浄用組成物を調製した。
【0130】
4.3.2.配線基板の洗浄試験
(1)化学機械研磨工程
銅配線のパターン付き基板(直径8インチのシリコン基板上にPETEOS膜を厚さ5000Å積層させた後、「SEMATECH 854」マスクにてパターン加工し、その上に厚さ250Åのコバルト膜、厚さ1000Åのタングステンシード膜および厚さ10000Åのタングステンメッキ膜を順次積層させたテスト用の基板)を、株式会社荏原製作所製の化学機械研磨装置「EPO112」を用いて、下記の条件で一段階化学機械研磨を実施した。
【0131】
<研磨条件>
・化学機械研磨用水系分散体:キャボット(株)製、「W2000」(鉄イオンおよび過酸化水素を含有するスラリー)
・研磨パッド:ロデール・ニッタ(株)製、「IC1000/SUBA400」
・定盤回転数:70rpm
・ヘッド回転数:71rpm
・ヘッド荷重:50g/cm
2
・化学機械研磨用水系分散体供給速度:200mL/分
・研磨時間:150秒
【0132】
(2)洗浄工程
上記で得られた研磨後の基板表面を、上記で得られた半導体洗浄用組成物に表3に記載の希釈倍率となるように超純水(粒子径0.3μm以上のパーティクルが10個/mL以下、pH=6.5)を添加して希釈することにより洗浄剤を調製し、下記の条件で定盤上洗浄に供した。その後、同様にブラシスクラブ洗浄に供した。
【0133】
<定盤上洗浄>
・洗浄剤:上記で調製した洗浄剤
・ヘッド回転数:71rpm
・ヘッド荷重:100g/cm
2
・定盤回転数:70rpm
・洗浄剤供給速度:300mL/分
・洗浄時間:30秒
【0134】
<ブラシスクラブ洗浄>
・洗浄剤:上記で調製した洗浄剤
・上部ブラシ回転数:100rpm
・下部ブラシ回転数:100rpm
・基板回転数:100rpm
・洗浄剤供給量:300mL/分
・洗浄時間:30秒
【0135】
4.3.3.評価試験
<腐食評価>
上記で得られた洗浄後の基板表面を実施例1と同様に評価した。その結果を表3に示す。
【0136】
<欠陥評価>
上記で得られた洗浄後の基板表面を実施例1と同様に評価した。その結果を表3に示す。
【0137】
<信頼性評価>
上記の化学機械研磨を行った基板(タングステン膜を厚さ3000Å積層させたテスト用の基板)1000枚を上記で得られた洗浄剤を用いて上記ブラシスクラブ洗浄にてランニングで洗浄した。洗浄後の基板を欠陥検査し、基板表面全体における欠陥数が250個より多い場合を不良とした。1000枚中不良となった基板数をカウントすることにより、洗浄剤の信頼性について評価した。その結果を表3に示す。評価基準は以下の通りである。
(評価基準)
1000枚中不良となった基板の数が、
・50枚以下の場合、非常に良好であると判断して「◎」
・50枚より多く100枚以下である場合、使用可能と判断して「○」
・100枚より多い場合、不良であると判断して「×」
【0138】
<保存安定性評価>
上記「4.1.3.評価試験」の保存安定性評価と同様に評価した。その結果を表3に示す。
【0139】
4.4.実施例28〜31および比較例13〜15
半導体洗浄用組成物を表3に記載の組成に変更し、表3に記載の組成の洗浄剤とした以外は、実施例27と同様にして配線基板の洗浄試験および評価試験を行った。
【0140】
4.5.評価結果
下表1〜表3に、半導体洗浄用組成物の組成および評価結果を示す。
【0144】
上表1〜表3において、各成分の数値は質量部を表す。各実施例および各比較例において、各成分の合計量は100質量部となり、残部はイオン交換水である。また、上表1〜3における下記の成分について補足する。
・ポリアクリル酸(Mw=700,000):東亜合成株式会社製、商品名「ジュリマーAC−10H」
・ポリアクリル酸(Mw=55,000):東亜合成株式会社製、商品名「ジュリマーAC−10L」
・ポリアクリル酸(Mw=6,000):東亜合成株式会社製、商品名「アロンA−10SL」
・ポリマレイン酸(Mw=2,000):日油株式会社製、商品名「ノンポールPWA−50W」
・ポリアリルアミン(Mw=25,000):ニットーボーメディカル株式会社製、商品名「PAA−25」
・ポリアリルアミン(Mw=15,000):ニットーボーメディカル株式会社製、商品
名「PAA−15」
・ポリスチレンスルホン酸(Mw=50,000):東ソー有機化学株式会社製、商品名「PS−5H」
・スチレン−マレイン酸共重合体:第一工業製薬株式会社製、商品名「DKSディスコートN−10」
・スチレン−マレイン酸ハーフエステル共重合体:第一工業製薬株式会社製、商品名「DKSディスコートN−14」
・ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物Na塩:第一工業製薬株式会社製、商品名「ラベリンFD−40」
・ポリビニルアルコール(Mw=26,000):株式会社クラレ製、商品名「PVA405」
・ポリエチレンイミン(Mw=70,000):株式会社日本触媒製、商品名「エポミン
P−1000」
【0145】
上表1〜表3から明らかなように、本発明に係る半導体洗浄用組成物の保管方法によれば、6ヶ月間保管後においても、半導体洗浄用組成物の異物や変色の発生は認められず、また保管容器外観についても変化が認められなかった。
【0146】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。