特許第6283078号(P6283078)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6283078可動時計要素を枢動するための可撓性軸受
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6283078
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】可動時計要素を枢動するための可撓性軸受
(51)【国際特許分類】
   G04F 7/08 20060101AFI20180208BHJP
   G04B 27/00 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
   G04F7/08 A
   G04B27/00 E
【請求項の数】11
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-176292(P2016-176292)
(22)【出願日】2016年9月9日
(65)【公開番号】特開2017-83429(P2017-83429A)
(43)【公開日】2017年5月18日
【審査請求日】2016年9月9日
(31)【優先権主張番号】15191369.6
(32)【優先日】2015年10月26日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591048416
【氏名又は名称】ウーテーアー・エス・アー・マニファクチュール・オロロジェール・スイス
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】ローマン・エグリ
(72)【発明者】
【氏名】マテウス・フリードリ
【審査官】 藤田 憲二
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第02757426(EP,A1)
【文献】 実開昭50−060070(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04F 7/08
G04B 27/00,31/00−31/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基本時計機構(10)において、理論的枢軸(D)の周りで第1のハウジング(20)を保持する第1の構造要素(21)、第2のハウジング(30)を保持する第2の構造要素(31)、及び可動要素(1)を備え、前記可動要素(1)は、第1端において前記第1のハウジング(20)内で枢動するように配置された第1の肩部(2)を、また、第2端において前記第2のハウジング(30)内で枢動するように配置された第2の肩部(3)を備え、前記第2のハウジング(30)は、少なくとも第1の当接表面(36)を備え、前記少なくとも第1の当接表面(36)は、前記可動要素(1)が前記第1の当接表面(36)上で当接状態にあるときに前記理論的枢軸(D)上での前記可動要素(1)のアライメントを保証するように配置され、前記基本時計機構(10)は、前記可動要素(1)を前記第1の当接表面(36)に戻すように配置された少なくとも1つの弾性戻り手段(5)を備える、前記基本時計機構(10)であって、前記可動要素(1)は、前記可動要素(1)の前記第1の肩部(2)の軸に対して偏心ハートピース(6)を備えることを特徴とする、基本時計機構(10)。
【請求項2】
前記基本時計機構(10)は、前記可動要素(1)を前記第1の当接表面(36)に戻すように配置された前記弾性戻り手段(5)を保持する第3の構造要素(50)を備えることを特徴とし、また、前記基本時計機構(10)は、前記弾性戻り手段(5)用の停止部として働くように配置された当接表面(52)を備える第4の構造要素(51)を備え、前記可動要素(1)と前記弾性戻り手段(5)との間に遊び(play)(J)を可能にし、前記可動要素の前記第2の肩部(3)は、前記第1の当接表面(36)上で当接状態になることを特徴とする、請求項1に記載の基本時計機構(10)。
【請求項3】
前記第1のハウジング(20)は、前記理論的枢軸(D)の周りに回転対称を有することを特徴とする、請求項1に記載の基本時計機構(10)。
【請求項4】
前記第2のハウジング(30)は、少なくとも1つの前記第1の当接表面(36)、及び、前記理論的枢軸(D)から異なる距離にある第2の当接表面(37)を備え、前記第2の当接表面(37)は、前記可動要素(1)が前記第2の当接表面(37)上で当接状態にあるときに前記理論的枢軸(D)に対して前記可動要素(1)の傾斜位置に対応することを特徴とする、請求項1に記載の基本時計機構(10)。
【請求項5】
前記第2のハウジング(30)は、前記可動要素(1)の枢軸の平面軌跡に対応する直線軌跡上で前記第2の肩部(3)を誘導するように配置されることを特徴とする、請求項1に記載の基本時計機構(10)。
【請求項6】
前記第2のハウジング(30)は、平行な側部を有する楕円形であることを特徴とする、請求項1に記載の基本時計機構(10)。
【請求項7】
前記弾性戻り手段(5)は、前記第1の肩部(2)及び前記第2の肩部(3)と別個の前記可動要素(1)の第3の肩部(4)と協働することを特徴とする、請求項1に記載の基本時計機構(10)。
【請求項8】
前記弾性戻り手段(5)は、前記理論的枢軸(D)に実質的に垂直に前記可動要素(1)に力を加えるように配置されることを特徴とする、請求項1に記載の基本時計機構(10)。
【請求項9】
前記可動要素(1)はドライブ手段(7)を備えることを特徴とする、請求項1に記載の基本時計機構(10)。
【請求項10】
請求項1に記載の少なくとも1つの基本時計機構(10)を含むクロノグラフ機構(20)。
【請求項11】
請求項10に記載のクロノグラフ機構(20)を備えるかつ/又は請求項1に記載の少なくとも1つの基本時計機構(10)を含むウォッチ(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基本時計機構に関し、基本時計機構は、理論的枢軸の周りで第1のハウジングを保持する第1の構造要素、第2のハウジングを保持する第2の構造要素、及び可動要素を備え、可動要素は、第1端において前記第1のハウジング内で枢動するように配置された第1の肩部を、また、第2端において前記第2のハウジング内で枢動するように配置された第2の肩部を備え、前記第2のハウジングは、少なくとも第1の当接表面を備え、少なくとも第1の当接表面は、前記可動要素が前記第1の当接表面上で当接状態にあるときに前記理論的枢軸上での前記可動要素のアライメントを保証するように配置され、前記基本機構は、前記可動要素を前記第1の当接表面に戻すように配置された少なくとも1つの弾性戻り手段を備える。
【0002】
本発明は、同様に、少なくとも1つのこうした基本機構を含むクロノグラフ機構に関する。
【0003】
本発明は、同様に、こうしたクロノグラフ機構を含むかつ/又は少なくとも1つのこうした基本機構を含むウォッチに関する。
【0004】
本発明は、時計機構、また特に、トゥーシング以外の手段によって戻されるかつ/又は所定の位置に支持される必要がある車セットに関する機構に関する。
【背景技術】
【0005】
一部の時計機構は、特にクロノグラフに制限はしないが、カムに連結された可動要素、特にハートピースを備え、ハートピースは、ハンマーのペインと協働して、所与の位置への戻り(ゼロへの戻り)及び/又は前記特定の位置における支持を達成する。これらのハンマーは、しばしば、可撓性であるよう又は幾つかの関節式部品で作られる、或は、機構は位置決めばねを必要とする。
【0006】
MONTRES BREGUET SAの名の下の欧州特許第275746号明細書は、時計ムーブメントのアーバを枢動させるためのデバイスを開示し、ピボットは台座内に固定されたジュエルを通過し、受け石は、ピボットの端を受取る軸受表面を備え、受け石上でのピボットの停止位置において、ピボット及び軸受表面に共通の接平面に対する垂線は、カント角の軸に対して斜めであり、また、その軸によって、ムーブメントの基準プレートに対してヨー角で配向する受け石平面を規定する。このデバイスは、ムーブメントのレートを調節し調整するため、ヨー角及び/又はカント角を調整するための手段を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許第275746号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、クロノグラフカウンタがゼロに戻るときに、可撓性ハンマーか、複数コンポーネントか、又は位置決めばねを必要とすることなく、クロノグラフカウンタの精密な位置決めを保証することを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのため、本発明は、基本時計機構において、理論的枢軸の周りで第1のハウジングを保持する第1の構造要素、第2のハウジングを保持する第2の構造要素、及び可動要素を備え、可動要素は、第1端において前記第1のハウジング内で枢動するように配置された第1の肩部を、また、第2端において前記第2のハウジング内で枢動するように配置された第2の肩部を備え、前記第2のハウジングは、少なくとも第1の当接表面を備え、少なくとも第1の当接表面は、前記可動要素が前記第1の当接表面上で当接状態にあるときに前記理論的枢軸上での前記可動要素のアライメントを保証するように配置され、前記基本機構は、前記可動要素を前記第1の当接表面に戻すように配置された少なくとも1つの弾性戻り手段を備える、基本時計機構であって、前記可動要素は、前記可動要素の前記第1の肩部の軸に対して偏心ハートピースを備えることを特徴とする、基本時計機構に関する。
【0010】
本発明は、同様に、少なくとも1つのこうした基本機構を含むクロノグラフ機構に関する。
【0011】
本発明は、同様に、こうしたクロノグラフ機構を含むかつ/又は少なくとも1つのこうした基本機構を含むウォッチに関する。
【0012】
本発明の他の特徴及び利点は、添付図面を参照して以下の詳細な説明を読むと明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】基礎機構内に包括れる可動要素の理論的枢軸を通る断面内で、可動要素がその理論的枢軸上に整列される実線の第1の位置及び可動要素が傾斜する点線の第2の位置における本発明による基礎機構の略図を示す。
図2】第1の位置における図1の機構の上面図である。
図3】第2の位置における図1の機構の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、時計機構内で可動時計要素を枢動させるためのモノリシック関節式構造又は可撓性軸受に関する。
【0015】
本発明は、より詳細には、基本時計機構10に関し、基本時計機構10は、図1に見られるように、
−理論的枢軸Dの周りで第1のハウジング20を保持する第1の構造要素21、
−第2のハウジング30を保持する第2の構造要素31、
−及び可動要素1を含み、可動要素1は、第1端において第1のハウジング20内で枢動するように配置された第1の肩部2を、また、第2端において第2のハウジング30内で枢動するように配置された第2の肩部3を備える。
【0016】
第1のハウジング20及び第2のハウジング30は、軸受からなってもよく、軸受は、ジュエル等、第1の構造要素21及び/又は第2の構造要素31内に機械加工されたボア、或は更に、第1の構造要素21及び/又は第2の構造要素31内に作られた単純なオリフィスを付加されてもされなくてもよい。
【0017】
第1のハウジング20は、図で示す特定の変形において、回転対称を有するハウジングである。すなわち、この特定の場合、第1のハウジング20は、好ましくは、理論的枢軸Dに対して同軸である。第1のハウジング20は、同様に、異なる形状、特に非円形、例えば、楕円形又は別の形状を有する可能性がある。
【0018】
第2のハウジング30は、少なくとも第1の当接表面36を備える。
【0019】
図で示す特定でかつ非制限的な変形において、第2のハウジング30は、第2の当接表面37を備え、第2の当接表面37は、第1の当接表面36と比べて、理論的枢軸Dから異なる距離にある。
【0020】
しかし、第2のハウジング30は、必ずしも閉鎖されるわけではなく、例えば、一方の側が開口した単純なノッチからなってもよい。
【0021】
第1の当接表面36は、可動要素1が第1の当接表面36上で当接状態にあるときに理論的枢軸D上での可動要素1のアライメントを保証するように配置される。
【0022】
基本機構10は、可動要素1を第1の当接表面36に戻すように配置される少なくとも1つの弾性戻り手段5を備える。
【0023】
第2のハウジング30は、第2の当接表面37を備え、第2の当接表面37は、可動要素1が第2の当接表面37上で当接状態にあるときに理論的枢軸Dに対して可動要素1の傾斜位置に対応する。可動要素1は、その後、傾斜し、第2のハウジング30上のP1でまた第1のハウジング20上のP2で支えられる。
【0024】
第2のハウジング30は、第2の肩部を、好ましくは、しかしそれに制限されずに、可動要素1の枢軸の平面軌跡に対応する直線軌跡に沿って誘導するように配置される。
【0025】
特定の非制限的な実施形態において、また、図2及び3に見られるように、前記第2のハウジング30は、平行な側部を有する楕円形である。
【0026】
可動要素1の第2端3が、第2のハウジング30であって、その楕円形が、(適した位置での不動化の前に、ツールビオン、脱進機、又は他の要素の組立て及び初期設定を容易にするため)他の所で知られている機能と非常に異なる機能を有する、第2のハウジング30内を移動することが理解される。本発明の文脈において、可動要素1のアーバは、第1のハウジング20の周りで、好ましくは、こうした楕円形で規定される平面内で枢動する。
【0027】
より具体的には、第1の構造要素21か、第2の構造要素31か、又は図2及び3に示すように第3の構造要素50は、可動要素1を第1の当接表面36に、したがって、その理論的枢軸Dに向かって戻すように配置される弾性戻り手段5を保持する。
【0028】
第1の構造要素21か、第2の構造要素31か、第3の構造要素50か、又は図2及び3に示すように第4の構造要素51は、第1の当接表面36と、弾性戻り手段5の軸受表面55上への可動要素1の当接に対応する遠隔位置との間で可動要素1の第2の肩部3が可動である位置において、弾性戻り手段5用の停止部として働くように配置される当接表面52を備える。
【0029】
図の特定でかつ非制限的な実施形態において、弾性戻り手段5は、第1の肩部2及び第2の肩部3と別個の可動要素1の第3の肩部4と協働する。
【0030】
この弾性戻り手段5は、理論的枢軸Dに実質的に垂直に可動要素1に力を加えるように配置される。単純な実施形態において、弾性戻り手段5は、可撓性ストリップで形成され、可撓性ストリップは、第1の構造要素21及び/又は第2の構造要素31及び/又は第3の構造要素50及び/又は第4の構造要素51と一体型であってよい。
【0031】
一変形において、第1のハウジング20及び第2のハウジング30は、共に楕円形すなわち同様である。すなわち、弾性戻り手段5によって可動要素1に加えられる、結果得られる力は、その後好ましくは、第1のハウジング20と第2のハウジング30との間の可動要素1の中央エリアに印加される。好ましくは、第1のハウジング20及び第2のハウジング30は、互いに平行である楕円形である。
【0032】
本発明によれば、図1で示す特定の用途において、可動要素1は、可動要素1の第1の肩部2の軸に対して偏心ハートピースを備える。
【0033】
特定の一実施形態において、その機能に応じて、可動要素1は、ドライブ手段7を備える。
【0034】
当然、台座20及び30の機能は、切換えられてもよい。
【0035】
本発明は、同様に、幾つかの可動要素を備え、また、少なくとも1つのこうした基本機構10を備える時計機構に関する。
【0036】
より具体的には、本発明は、少なくとも1つのこうした基本機構10を含むクロノグラフ機構200に関する。
【0037】
本発明は、同様に、こうしたクロノグラフ機構200を含むかつ/又は少なくとも1つのこうした基本機構10を含むウォッチ100に関する。
【0038】
本発明は、ガタの吸収による補償を保証することを可能にする。
【0039】
それは、製造公差の増加の可能性がある結果として、機構の生産コストの低減を可能にする。
【0040】
本発明は、同様に、後続の補正操作が全くな状態で一体型ハンマーの使用を可能にする。
【符号の説明】
【0041】
1 可動要素
2 第1の肩部
3 第2の肩部
4 第3の肩部
5 弾性戻り手段
7 ドライブ手段
10 基本時計機構
20 第1のハウジング
21 第1の構造要素
30 第2のハウジング
31 第2の構造要素
36 第1の当接表面
37 第2の当接表面
50 第3の構造要素
51 第4の構造要素
52 当接表面
55 軸受表面
D 理論的枢軸
図1
図2
図3