特許第6283102号(P6283102)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6283102誘導的電力伝送のためのコイル装置及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6283102
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】誘導的電力伝送のためのコイル装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 38/14 20060101AFI20180208BHJP
   H02J 50/10 20160101ALI20180208BHJP
   B60M 7/00 20060101ALI20180208BHJP
   B60L 5/00 20060101ALI20180208BHJP
   B60L 11/18 20060101ALI20180208BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
   H01F38/14
   H02J50/10
   B60M7/00 X
   B60L5/00 B
   B60L11/18 C
   H02J7/00 301D
【請求項の数】14
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-517204(P2016-517204)
(86)(22)【出願日】2014年5月8日
(65)【公表番号】特表2016-528715(P2016-528715A)
(43)【公表日】2016年9月15日
(86)【国際出願番号】EP2014059420
(87)【国際公開番号】WO2014195079
(87)【国際公開日】20141211
【審査請求日】2015年12月4日
(31)【優先権主張番号】102013210411.1
(32)【優先日】2013年6月5日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501125231
【氏名又は名称】ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100095957
【弁理士】
【氏名又は名称】亀谷 美明
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100128587
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 一騎
(72)【発明者】
【氏名】エッカート、ベルント
(72)【発明者】
【氏名】エプラー、シュテファン
【審査官】 池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/099170(WO,A1)
【文献】 特開平06−013762(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/046366(WO,A1)
【文献】 特開2008−255923(JP,A)
【文献】 特開平03−101203(JP,A)
【文献】 特開2006−005049(JP,A)
【文献】 特開2012−172906(JP,A)
【文献】 特開昭63−301143(JP,A)
【文献】 特開昭50−018986(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/00−17/02
B60L 5/00
B60L 5/00
B60M 7/00
F16K 37/00
G01M 3/00−3/40
H01F 38/14
38/18
H02J 7/00
H02J 50/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導的電力伝送のためのコイル装置(100)であって、
前記コイル装置(100)の伝送側(106)で電磁場(112)を放出及び/又は受信する電磁コイル(102)と、
前記伝送側(106)の前記電磁コイル(102)を被覆し、前記電磁場(112)を通すハウジング壁(104)と、
前記ハウジング壁(104)に破裂孔(110)が形成された際に当該破裂孔(110)を通って自身が出ることで前記ハウジング壁(104)の損傷を知らせるハウジング媒体(108)であって、前記ハウジング壁(104)により包接された前記ハウジング媒体(108)と、
を備え
前記ハウジング媒体(108)は、顔料を有する、コイル装置(100)。
【請求項2】
前記ハウジング媒体(108)は、大気(118)に対して内圧(P)が上げられた流体(116)を有する、請求項1に記載のコイル装置(100)。
【請求項3】
前記流体(116)は、液体及び/又はジェルを有する、請求項2に記載のコイル装置(100)。
【請求項4】
前記内圧(P)を感知する内圧センサ(120)と、
前記内圧(P)が所定の内圧閾値(Pth)を下回る場合には信号(132、133)を出力する信号ユニット(122)と、
をさらに備える、請求項2又は3に記載のコイル装置(100)。
【請求項5】
前記コイル装置(100)は、前記大気(118)の外圧(P)を感知する外圧センサ(121)を更に備え、前記信号ユニット(122)は、前記外圧(P)に従って前記内圧閾値(Pth)を設定する閾値設定ユニット(124)を備える、請求項4に記載のコイル装置(100)。
【請求項6】
誘導的電力伝送のためのコイル装置(100)であって、
前記コイル装置(100)の伝送側(106)で電磁場(112)を放出及び/又は受信する電磁コイル(102)と、
前記伝送側(106)の前記電磁コイル(102)を被覆し、前記電磁場(112)を通すハウジング壁(104)と、
前記ハウジング壁(104)に破裂孔(110)が形成された際に当該破裂孔(110)を通って大気(118)が出るように、前記ハウジング壁(104)によって包接されたハウジング真空(109)と、
前記ハウジング壁(104)に前記破裂孔(110)が形成された際の前記ハウジング真空(109)の内圧(P)を感知する内圧センサ(120)と、
前記内圧(P)が所定の内圧閾値(Pth)を上回る場合には信号(132、133)を出力する信号ユニット(122)と、
を備え、
前記コイル装置(100)は、前記大気(118)の外圧(P)を感知する外圧センサ(121)を更に備え、前記信号ユニット(122)は、前記外圧(P)に従って前記内圧閾値(Pth)を設定する閾値設定ユニット(124)を備える、コイル装置(100)。
【請求項7】
前記ハウジング壁(104)は、内壁(104’)と外壁(104’’)とを備え、前記内壁(104’)と前記外壁(104’’)とは、前記伝送側(106)の前記電磁コイル(102)を被覆する、請求項1〜6のいずれか1項に記載のコイル装置(100)。
【請求項8】
前記ハウジング壁(104)は、前記電磁コイル(102)を包囲する、請求項1〜7のいずれか1項に記載のコイル装置(100)。
【請求項9】
前記ハウジング媒体(108)は、粉末顔料(112)を有する、請求項1に記載のコイル装置(100)。
【請求項10】
電気貯蔵器(206)と、前記電気貯蔵器(206)への誘導的電力伝送のための、請求項1〜9のいずれか1項に記載のコイル装置(100)と、を備えた車両(200)。
【請求項11】
前記コイル装置は、前記車両(200)のアンダーボディ(204)に配置され、前記伝送側(106)は下方を向いている、請求項10に記載の車両(200)。
【請求項12】
前記ハウジング壁(104)は、前記電磁コイル(102)の下方及び側方を被覆する、請求項11に記載の車両(200)。
【請求項13】
電磁場(112)を放出及び/又は受信する電磁コイル(102)を準備する工程(300)と、
前記電磁場(112)を通すハウジング壁(104)により伝送側(106)の前記電磁コイル(102)を被覆する工程(302)と、
大気(118)に対して内圧(P)が変更されている流体(116)を前記ハウジング壁(104)により包接する工程(304)と、
前記ハウジング壁(104)に破裂孔(110)が形成された際の前記内圧(P)を感知する工程(306)と、
前記内圧(P)が所定の内圧閾値(Pth)に達しているかを判定する工程(312)と、
前記内圧(P)が前記内圧閾値(Pth)に達している場合には、信号(132、133)を出力する工程(316)と、
大気(118)の外圧(P)を感知する工程(308)と、
前記外圧(P)に従って前記内圧閾値(Pth)を設定する工程(310)と、
を含む、誘導的電力伝送のための方法。
【請求項14】
前記方法は、前記内圧(P)が前記内圧閾値(Pth)に達している場合には、前記電磁コイル(102)を停止させる工程(314)を更に有する、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導的電力伝送のための方法及びコイル装置に関する。さらに、本発明は、このようなコイル装置を備えた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、誘導的電力伝送のための任意のコイル装置に適用が可能であるが、一般性を失うことなく、電気的に駆動される車両のバッテリを、非接触式で誘導的に充電するためのコイル装置を例に提示される。
【0003】
今日試作品として又は走行試験において検査される電気自動車には、このようなコイル装置が備えられており、このコイル装置は、絶縁性のプラスチックハウジング内に組み込まれた1つ以上の電磁コイルを含み、通常では、車両アンダーボディに取り付けられ又は車両アンダーボディに嵌め込まれており、従って、車両のアンダーボディの最も奥に存在する部品である。これにより、地面に配置された対応する他のコイル装置を備える充電ポイントに車両が停止され次第、快適なやり方で充電過程を直ちに開始することが可能となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、縁石又は劣悪な走行区間の上方を走行する際には、従来の構造形態の道路車両は通常、底部が接触し又は底部に沿ってかすり傷が付くことが予想される。このような接触によって、車両のアンダーボディの最も奥に存在する部品が損傷を被ることになる。コイル装置の絶縁に対するダメージにより機械的な損傷が生じた際には、電圧が充分に絶縁されていないため、接触した際に感電することが予想される。同様のことが、地面に配置されたコイル装置にも当てはまり、この地面に配置されたコイル装置は、ガレージ又は駐車場の地面の上に存在し又は地中に埋め込まれおり、その上を走行され又はその上方をかすめて走行されることで損傷を被ることが予想される。従って、誘導的電力伝送のためにコイル装置が利用される際には、感電による電気事故の危険を防止することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
これに応じて、誘導的電力伝送のためのコイル装置であって、コイル装置の伝送側で電磁場を放出及び/又は受信する電磁コイルと、伝送側のコイルを被覆し電磁場を通すハウジング壁と、を備える上記コイル装置が設けられる。コイル装置は、複数のコイルを含んでもよく、誘導的電力伝送のために、更なる別の側の方に向けて設計されてもよい。コイル装置は、ハウジング壁に破裂孔が形成された際に当該破裂孔を通ってハウジング媒体が出るようにハウジング壁により包接されたハウジング媒体を有する。従ってハウジング媒体は、破裂孔を通って流出することで、ハウジング壁が自身を包接する空間を出る。ハウジング媒体は、適切な化学物質、又は、適切な物質の混合物であってもよく、その際に、ハウジング媒体の種類と、当該ハウジング媒体を包接する条件と、が相互に調整され、ハウジング媒体を流出させるための破裂孔の形成は、例えば、拡散によって、破裂孔自体が形成される間の振動によって、又は、既に存在する圧力差若しくは後に生じる圧力差によって起こる。
【0006】
更なる別の観点において、誘導的電力伝送のための方法が提供される。本方法は、電磁場を放出及び/又は受信する電磁コイルを準備する工程と、電磁場を通すハウジング壁により伝送側のコイルを被覆する工程と、大気に対して内圧が変更されている流体をハウジング壁により包接する工程と、内圧を感知する工程と、内圧が所定の内圧閾値に達しているかを判定する工程と、内圧が内圧閾値に達している場合には信号を出力する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るコイル装置は、伝送側からの機械的損傷が生じた際にも、誘導的電力伝送のために利用されるコイルによる電気事故を確実に防止することを可能にする。まず、通常駆動時には、ハウジング壁が伝送側のコイルを被覆しているため、このハウジング壁によって、コイルの、電圧が流れる部分にユーザが直接的に接触することが予防される。例えばハウジング壁が破れるほどではない機械的衝撃によって損傷がより小さい際にも、伝送側のコイルの未だ完全な被覆をもたらすハウジング壁によって、ユーザは電気事故から守られる。最後に、場合によりコイルが剥き出しになる大きな損傷が発生した場合には、必然的に、コイルと、伝送側から機械的に作用する物体と、の間に存在するハウジング壁に破裂孔も生じ、本発明に基づいて、ハウジング媒体が破裂孔を通って出る。このことによって、ハウジング媒体の適切な監視によって損傷の存在を確認することが可能となり、その際に、損傷自体の位置を厳密に特定する必要はなく、従ってコイル装置の停止によって誘導的電力伝送が速やかに終了し、電圧が流れる剥き出しになった部分による危険な状態が続くことが回避される。
【0008】
コイル装置の好適な発展形態において、ハウジング媒体は顔料を有する。このことによって、コイル装置のユーザは、ハウジング壁が破られるというコイル装置の損傷を、流出した顔料によって、特に簡単なやり方で目視するだけで認識することが可能であり、引き続いて、例えばコイル装置の停止又は修理等の安全対策を促すことが可能である。好適に、顔料は、特に簡単に認識される粉末顔料として構成される。なぜならば、粉末顔料は、破裂孔を通じて流出した後に、非常に速く大きなエリアに拡散するからである。
【0009】
好適な発展形態によれば、ハウジング媒体は、大気に対して内圧が上げられた流体を有する。例えば、圧力が掛かった流体は、空気、他の気体、又は、液体で構成されてもよい。破裂孔が形成された場合には、流体は破裂孔を通って外へ流出し、ハウジング壁により包接された空間内の内圧の低下が、例えば圧力計によって特に確実に確認出来るようになる。好適に、流体は、液体及び/又はジェルを有する。このことによって、最小の破裂孔によって、損傷を特に確実に確認出来るようになる。なぜならば、ジェルや液体の著しい非圧縮性により、破裂孔を通って流出する流体の量が最小量であっても、内圧は急激に低下し当該低下が容易に確認出来るからである。
【0010】
好適な発展形態によれば、コイル装置は、内圧を感知する内圧センサと、内圧が所定の内圧閾値を下回る場合には信号を出力する信号ユニットと、をさらに備える。このことによって、潜在的に危険な損傷の存在について、継続的かつ自動的にコイル装置を監視することが可能となり、従って、快適に利用しながら特に高い安全性が実現される。
【0011】
代替的な観点において、本発明は、ハウジング壁に破裂孔が形成された際に当該破裂孔を通ってハウジング媒体が出るようにハウジング壁により包接されたハウジング媒体の代わりに、ハウジング壁に破裂孔が形成された際に当該破裂孔を通って大気が出るようにハウジング壁により包接されたハウジング真空が利用されるコイル装置を提供する。その際に、信号ユニットは、上記の実施形態とは異なって、内圧が所定の内圧閾値を上回る場合に信号を出力するよう構成される。「ハウジング真空」(Gehaeusevakuum)とは、理想的な真空状態としてのみならず、広義において、大気圧に対して内圧が下げられた流体、特に空気又は他の気体又は混合気体を有するハウジング媒体としても理解される。
【0012】
好適な発展形態によれば、コイル装置は、大気の外圧を感知する外圧センサを更に備える。その際に、信号ユニットは、外圧に従って内圧閾値を設定する閾値設定ユニットを備える。このことによって、大気圧の変動による誤った信号が防止され、このようにして、特に高い安全性が実現され、その際に、大気圧とは異なる余剰の内圧と、例えばハウジング壁の余剰の強度のような、対応する構造面でのコストと、は必要ではない。
【0013】
好適な発展形態によれば、ハウジング壁は内壁と外壁とを備え、この内壁と外壁とは、伝送側のコイルを被覆する。即ちハウジング壁は、伝送側では二重に実現される。このことによって、一方では、非常に少量のハウジング媒体を有するコイル装置を構成することが可能となり、利用されるハウジング媒体に従って、コイル装置の材料コスト及び総重量に鑑みて有利である。さらに、コイル自体が、ハウジング媒体で満たされた空間の外に存在しているため、コイルの保守及び検査が容易になる。代替的な発展形態によれば、ハウジング壁はコイルを包囲し、このことにより、壁の材料を節約することが可能となる。なぜならば、ハウジング壁を二重に実現する必要がないからである。
【0014】
更なる別の観点において、本発明は、電気貯蔵器への誘導的電力伝送のためのこのようなコイル装置を備えた、電気貯蔵器を有する車両を提供する。好適に、コイル装置は、車両のアンダーボディに配置され、その際に、伝送側は下方を向いている。このことにより、地面の上又は地中に存在する他のコイル装置との効率の良い電力伝送のために、地面の上方の特に奥深くにコイル装置を配置することが可能となり、その際に、電気事故のリスクが上がることはない。さらに好適に、ハウジング壁は、コイルの下方及び側方を被覆する。これにより、下からのみならずサイドからのコイル装置への機械的な損傷にまで、電気事故からの保護の範囲が広がる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1A】本発明の一実施形態に係るコイル装置の概略的な断面図を示す。
図1B】損傷を受けた状態の図1のコイル装置の概略的な断面図を示す。
図2】一実施形態に係るコイル装置の概略的な断面図を示す。
図3】一実施形態に係るコイル装置の概略的な断面図を示す。
図4】一実施形態に係る車両の概略的な側面図を示す。
図5】一実施形態に係る誘導的電力伝送のための方法のフロー図を示す。
【0016】
図面では、他に明示的に言及されない限り、同じ符号は同一又は等価の構成要素に関わる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1Aは、地面119の上に置いて配置されたコイル装置100であって、図示されない他のコイルへの、電磁場112を用いた誘導的電力伝送のための上記コイル装置100の概略的な断面図を示しており、図示されない他のコイルは、伝送側106と呼ばれるコイル装置110の上側の上方に配置することが可能であり、例えば、コイル100の上方に停められた図示されない電気自動車に取り付けられる。コイル装置100は、その対称軸101が投影面上に存在する平坦な円筒の形状に巻線全体が巻回するコイル102と、当該コイル102を包囲し、同じように円筒形状の壁104を有するハウジングと、を備える。
【0018】
コイル装置100のハウジングの壁104は、非伝導性材料から成る内壁104’と外壁104’’との二重の壁により環状に実現されており、その際に、伝送側とは反対に向いたコイル装置の下側で内壁104’を支持するために、内壁104’と外壁104’’との間にスペーサ107が挿入されている。コイル102に電力を供給するための二心の供給線103が、スペーサ107の一方を通って外へと案内される。内壁104’の内部に存在する空間であって、コイル102がその中に存在する上記空間は、適切な媒体で、例えば、油、遮蔽ガスで満たされ、又は、例えばスペーサ107を介して大気118の外気に連通した空気又は外気に対して気密しうる空気で満たされている。
【0019】
ハウジングの内壁104’と外壁104’’との間に存在する空間は、大気118に対して密閉され、かつ、大気圧が掛かった空気の他に目立つ色彩の粉末顔料114の形態による顔料を含むハウジング媒体108によって充填されている。粉末顔料114は、外壁104’’への損傷があった場合に、場合により放出された際に非常に速く半径数cm又は数dmに渡って拡散して知覚し易い形跡を残すように、選択されている。代替的な実施形態において、過剰圧力が掛かったハウジング媒体が、内壁104’と外壁104’’との間に挿入されてもよい。
【0020】
図1Bは、上から、即ち伝送側106から機械的な力が作用した後の、損傷を受けた状態の図1のコイル装置を示している。力の作用によって、ハウジング壁104には小さな破裂孔110が形成され、この破裂孔110は、外壁104’’の穴と、内壁104’のやや小さな穴と、を貫通して、内壁104’内に作られた空間にまで達しているため、当該空間内に存在するコイル102は、部分的に剥き出しになっている。力が作用する間の振動によって、外壁104’’と内壁104’との間に存在するハウジング媒体108が、破裂孔110を通って外壁104’’の外の大気118へと流出し、ハウジング媒体108に含まれる粉末顔料114が、外壁104’’の外側で、半径数センチに渡って拡散する。大気118に対してハウジング媒体に過剰圧力が掛かっている実施形態の場合は、この過剰圧力によって、外部へのハウジング媒体108へ流出、及び、粉末顔料114の拡散が支えられる。その目立つ色彩から、粉末顔料114は色がついた汚れとしてコイル装置100のユーザに容易に知覚され、ユーザは、供給線103を介した電力供給を停止しコイル100の修理又は交換を促すことで、危急の電気事故から自身を守ることが可能となる。
【0021】
図2は、更なる別の実施形態に係るコイル装置100を示し、この更なる別の実施形態に係るコイル装置100は、地中119に完全に埋められて配置されているため、伝送側106のハウジング壁104が地面119とぴったり重なる。図1A図1Bの実施形態とは異なって、ハウジング壁104は一重の壁として実現され、この一重の壁は、コイル102がその中に配置された内部空間を密閉して包囲する。ハウジング壁104により包囲される内部空間の内部には、ハウジング真空109が存在するが、その際に、この概念は、理想的な真空に限定されず、一般的に、内部空間が、大気118に対して内圧Pが下げられた空気又はその他の気体又は混合気体によって満たされていることを示す。本実施形態では、内圧Pは、例えば100hPaである。供給線103は、密閉された状態でハウジング壁104を通って案内される。
【0022】
本実施形態のコイル装置100は、ハウジング壁104により包囲された内部空間内に、内圧Pを感知しその出力口で対応する圧力信号を提供する内圧センサ120と、内圧センサ120の出力口と接続された信号ユニット122であって、圧力センサから受信された圧力信号に従って、内圧Pを、事前に自身に格納された閾値Pth、例えば550hPaと比較し、比較結果に対応する信号132をその出力口で提供する上記信号ユニット122と、信号ユニット122の出力口に接続された警報装置134及び切り替え素子123と、をさらに備える。警報装置134は、本実施形態では例えば警報ランプとして構成され、代替的な実施形態では、この警報ランプは、音波発生装置のような他の警報装置で置換又は補充されてもよい。切り替え素子123は、本実施形態では、例えば、供給線103内に配置されたスイッチ接点133を有するリレーとして構成され、代替的な実施形態において、このリレーは、例えば半導体スイッチ素子で置換されてもよい。
【0023】
コイル装置100が障害なく動作する場合には、スイッチ接点133が閉鎖され、従って、コイル102には供給線103を介して電力が供給され、伝送側106へと広がる電磁場112が発生する。内圧センサ120は連続的に、ハウジング壁104内で支配する内圧値P=100hPaを、信号ユニット122へとシグナリングし、信号ユニット122は、内圧Pが内圧閾値Pth=550hPaを下回ることを確認し、対応して自身の出力口では信号を放出ない。切り替え素子123が信号ユニット122の信号を獲得しない限りは、スイッチ接点133は閉鎖されたままであるため、コイル装置100は、誘導的電力伝送のための電磁場112を生成し続ける。
【0024】
ハウジング壁104に破裂孔(図示せず)が生じるという、コイル装置100への機械的な損傷があった場合には、例えば、1000hPaの典型的な圧力が掛かった大気118からの空気が、ハウジング壁104により包囲される内部空間に流入し、これにより、内圧Pが大気圧に適合される。内圧センサ120は、内圧P=1000を、信号ユニット122へとシグナリングし、信号ユニット122は、内圧Pが、内圧閾値Pth=550hPaに達し又は当該内圧閾値を上回ったことを確認し、対応する信号132を切り替え素子123及び警報装置134へと出力する。この信号132に応じて、切り替え素子123は、コイル102への電力供給を停止し、警報装置134は、ユーザへの報知のために警報灯を点灯させる。
【0025】
代替的な実施形態において、内圧Pは大気圧よりも高く調整されてもよい。例えば、内圧P=2000hPaであってもよく、内圧閾値Pthは、本実施形態のように、調整された内圧Pと1000hPaの典型的な大気圧との間の中央値、即ち1500hPaに設定されてもよく、その際に、信号ユニット122は、内圧Pが内圧閾値Pthに達し又は当該内圧閾値Pthを下回った場合には信号を出力するよう構成される。
【0026】
図3は、全高のほぼ半分が地中119に埋められて配置された、更なる別の実施形態に係るコイル装置100を示している。本実施形態では、地中119に埋められた壁の部分のハウジング壁104は一重の壁として実現されるが、地面119の上に存在する側壁及び伝送側10t6の部分は、二重の壁として実現される。内壁104’と外壁104’’との間に存在する空間は、ハウジング媒体108としての、大気118の典型的な圧力に対して上げられた内圧Pが掛かった液体で満たされている。例えば、ハウジング媒体108の充填時に設定された内圧はP=3000hPaとなる。内圧センサ120は、内壁104’と外壁’’との間のハウジング媒体108の中に配置され、内圧センサ120と接続された信号ユニット122は、コイル102と共に、大気圧が掛かった空気で満たされたコイル空間105内に存在し、このコイル空間105は、内壁104’と、ハウジング壁104の、一重の壁として実現された部分と、によって包囲されている。
【0027】
図2の実施形態とは異なって、本実施形態のコイル装置100は、大気118中で支配する外圧Pを感知するための、コイル装置100の外側に繋がった外圧センサ121と、外圧Pに従って内圧閾値Pthを設定するための、コイル空間105内に配置された閾値設定ユニット124と、を有し、この目的のために、外圧センサ121の出力口は、閾値設定ユニット124の入力口と接続され、閾値設定ユニット124の出力口は、信号ユニット122の入力口と接続されている。代替的な実施形態において、コイル空間105は、適切な圧力補正孔によって、外気118に連通してもよく、この場合には、外圧センサ121は、コイル空間105内に配置されてもよい。同様に、ハウジング媒体108は、代替的に、ジェル又は気体又は、例えば空気のような混合気体であってもよく、更に安全性を上げるために、粉末顔料又は他の顔料を含んでいてもよい。
【0028】
コイル装置100が障害なく動作する際には、外圧センサ121は、大気118の気圧Pを連続的に定め、当該気圧Pを閾値設定ユニット124にシグナリングする。閾値設定ユニット124は、外圧Pと、事前に信号ユニットに格納された基準内圧Pであって、コイル装置100が損傷を受けていない状態で設定されたハウジング媒体108の内圧Pに相当する上記基準内圧Pと、の中央値を例えば形成することで、外圧Pに従って内圧閾値Pthを設定する。
【0029】
図4は、車両200の概略的な側面図を示しており、この車両200は、当該車両200を駆動するための電動機202であって、電気貯蔵器として充電可能なバッテリ206によって電力供給される上記電動機202を有する。バッテリ206は、当該バッテリ206を充電するための供給線103を介して、車両アンダーボディ204に取り付けられたコイル装置100と接続されている。コイル装置100は、この場合は下方を向いた伝送側106からの誘導的電力受信のためのコイル102を含む。図3のコイル装置のように、車両200のコイル装置100は、伝送側106及びサイドの方向が2重のハウジング壁104によって被覆され、ハウジング壁104内には、過剰圧力が掛かったジェル108がハウジング媒体として存在する。
【0030】
図4は、地面119の上に設置された更なる別のコイル装置100’の上方に停められた状態の車両200を示しており、更なる別のコイル装置100’は、地中119を通る供給線103’を介して電気系統と接続されている。更なる別のコイル装置100’も同様に、本発明の一実施形態に従って構成されていてもよい。
【0031】
充電動作時には、更なる別のコイル装置100’は、供給線103’を介して供給されるネット電力を用いて交番磁界112を生成し、この交番磁界112は、車両アンダーボディ204に取り付けられたコイル装置100のコイル102も通る。これにより、コイル102内で電圧が誘導され、この電圧によって、バッテリ206を充電するための、コイル102及び供給線103を通って流れる充電電流がもたらされる。コイル装置100の信号ユニット122は、内圧Pを所定の閾値と比較し当該閾値を下回る際には、車両200の計器盤に警報ランプ132を点灯させる信号132を発することで、内圧Pを監視する。
【0032】
図5は、誘導的電力伝送のための方法のフロー図を示している。本方法の開始に際して、工程300において、1のコイルが、他のコイルと協働による誘導的電力伝送のために準備される。工程302において、伝送側のコイルがハウジング壁によって被覆され、この伝送側には、更なる別のコイルが誘導的電力伝送の間配置される。
【0033】
工程304において、ハウジング壁により包囲された空間であって、コイルを共に包囲してもよく又はハウジング壁の中にコイルから離して形成されてもよい上記空間の中に、所定の内圧が掛かった流体がハウジング媒体として配置される。所定の内圧は、意図された適用について大気圧の変動が見込まれる範囲を上回っている。工程308において、現在の周囲の大気の外圧が、外圧センサを用いて定められる。工程310において、所定の内圧と検知された外圧との間に存在する内圧閾値が、例えば、所定の内圧と工程308で検知された外圧とから中央値を形成することで、設定される。
【0034】
工程305では、工程302でハウジング壁により被覆された伝送側に、更なる別のコイルが配置され、一方のコイルにより交番磁界が生成されることで、誘導的な電力伝送が開始され、この交番磁界は他方のコイルを通り、当該他方のコイル内で電圧が誘導される。工程306において、ハウジング媒体内に配置された内圧センサによって、そこで現在支配する内圧が検知される。判定工程312では、工程306で検知された内圧が、工程310で設定された内圧閾値を上回っているのかが判定される。工程306で検知された内圧が、工程310で設定された内圧閾値を上回っている場合には、本方法は工程306に戻る。しかしながら判定工程312で、ハウジング媒体が包接されてからの内圧が、例えばハウジング壁の損傷により、内圧閾値に達する程度又は内圧閾値を既に下回る程度にまで下がったことが確認された場合には、本方法は工程314に飛び、工程314ではコイルへの電力供給が断たれ、誘導的電力伝送が中断される。工程316では、ユーザに事故を報知するために、例えば音響的又は光学的な警報信号が出力される。
【0035】
本方法の変更された実施形態において、工程304において、意図された適用について大気圧の変動が見込まれる範囲を下回る所定の内圧が掛かったハウジング媒体が包接される。このように変更された実施形態では、本方法は、判定工程312において、工程306で検知された内圧が、工程310で設定された内圧閾値を下回る場合には工程306に戻り、検知された内圧が内圧閾値に達する程度又は内圧閾値を既に上回る程度にまで上がった場合には工程314に飛ぶ。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5