特許第6283169号(P6283169)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6283169大スパンコンクリート床版型枠および該床版型枠を用いた施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6283169
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】大スパンコンクリート床版型枠および該床版型枠を用いた施工方法
(51)【国際特許分類】
   E01D 19/12 20060101AFI20180208BHJP
   E01D 21/00 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
   E01D19/12
   E01D21/00 B
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-50234(P2013-50234)
(22)【出願日】2013年3月13日
(65)【公開番号】特開2014-95282(P2014-95282A)
(43)【公開日】2014年5月22日
【審査請求日】2016年3月8日
(31)【優先権主張番号】特願2012-224107(P2012-224107)
(32)【優先日】2012年10月9日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】509200613
【氏名又は名称】株式会社横河住金ブリッジ
(73)【特許権者】
【識別番号】000230010
【氏名又は名称】ジオスター株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】303057365
【氏名又は名称】株式会社安藤・間
(74)【代理人】
【識別番号】100087491
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 享
(74)【代理人】
【識別番号】100104271
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 保子
(72)【発明者】
【氏名】竹内 大輔
(72)【発明者】
【氏名】関口 修史
(72)【発明者】
【氏名】中谷 郁夫
(72)【発明者】
【氏名】横尾 彰彦
(72)【発明者】
【氏名】国谷 一彦
【審査官】 須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−170311(JP,A)
【文献】 実公昭56−004111(JP,Y2)
【文献】 特開2000−038798(JP,A)
【文献】 特開平10−121419(JP,A)
【文献】 実開昭58−031322(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 1/00−24/00
E04B 5/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持構造体上に鉄筋コンクリート床版を打設するための大スパンコンクリート床版型枠であって、型枠底板と、前記型枠底板上に並列し、コンクリート打設時の荷重に耐え得るだけの断面剛性を有する複数の鋼製リブ材とを備え、前記鋼製リブ材はコンクリート打設前に作用する荷重を支持可能な下側リブ材と、該下側リブ材に対して連結部材を介して着脱可能な上側リブ材に2分され、前記型枠底板と前記下側リブ材は接合して一体化されており、前記下側リブ材と上側リブ材とを連結した状態でコンクリート打設時の荷重を支持するようにしたものであり、前記下側リブ材の上端部に前記コンクリート床版に配筋される鉄筋を載置可能としたことを特徴とする大スパンコンクリート床版型枠。
【請求項2】
請求項記載の大スパンコンクリート床版型枠を、前記上側リブ材を未連結の状態で前記支持構造体による支持スパン間に架設し、前記下側リブ材の上に前記コンクリート床版の支持スパン直角方向に配筋される複数の鉄筋を載置し、連結部材を用いて前記下側リブ材に前記上側リブ材を連結した後、コンクリートを打設することを特徴とする大スパンコンクリート床版型枠を用いた鉄筋コンクリート床版の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば掘割道路その他、地下・半地下大空間上部にスラブ厚の大きい大スパンのコンクリート床版を構築する場合に使用可能な大スパンコンクリート床版型枠およびその型枠を用いた大スパン鉄筋コンクリート床版の施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
掘割道路や地下・半地下大空間の上部に、例えば500〜1000mmといったスラブ厚の大きいコンクリート床版を構築する場合、コンクリートの打設荷重に耐え得る大がかりな支保工で型枠を支持するのが一般的である。
【0003】
しかし、構築される床版下に大がかりな支保工を設置するには長い工期を要し、設置作業も含め支保工のコストが膨大となる他、施工中は支保工を設置した床版下のスペースでの作業が大きく制限されることになる。
【0004】
また、大スパン構造では内空も大きく、支保工の設置や解体のための足場も大がかりとなる。
【0005】
これに対し、例えば特許文献1、2等に記載された底鋼板を有する鋼コンクリート合成床版を用い、大スパンの床版を支保工なしで架設することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3191569号公報
【特許文献2】特開2008−144459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、合成床版は支保工の省略や急速施工が可能であるという利点がある。しかしながら、耐火性が問題となる構造物では、床版の下面に鋼板が露出する鋼コンクリート合成床版は、耐火性の面で使用が制限されることになる。
【0008】
本発明は、上述のような課題を図ったものであり、耐火性が問題とならない構造での支保工の省略や急速施工を可能とする大スパンコンクリート床版型枠および該床版型枠を用いた施工方法を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の床版型枠は、柱あるいは壁などの支持構造体上に鉄筋コンクリート床版を打設するための大スパンコンクリート床版型枠であって、型枠底板と、この型枠底板上に並列し、コンクリート打設時の荷重に耐え得るだけの断面剛性を有する複数の鋼製リブ材とを備え、前記型枠底板と前記鋼製リブ材は接合して一体化されており、鋼製リブ材のウェブにコンクリート床版に配筋される鉄筋を載置可能なスリットが複数形成されている。鋼製リブ材はコンクリート打設前に作用する荷重を支持可能な下側リブ材と、下側リブ材に対して連結部材を介して着脱可能な上側リブ材に2分され、型枠底板と下側リブ材は接合して一体化されており、下側リブ材と上側リブ材とを連結した状態でコンクリート打設時の荷重を支持するようにしたものであり、下側リブ材の上端部にコンクリート床版に配筋される鉄筋を載置可能としてある。
【0010】
構築される床版は要求される断面合成および強度を備えた鉄筋コンクリート床版としてコンクリート強度や鉄筋の配筋設計がなされる。
【0011】
型枠底板上に並列させて配置される鋼製リブ材は、コンクリート打設時の荷重に耐え得るだけの断面剛性を有すればよく、断面剛性の確保の面からは帯状鋼板あるいは形鋼が好ましい。
【0012】
型枠底板の材質は特に限定されないが、鋼製リブ材を溶接あるいはボルト接合可能であるといった点では鋼板が好ましい。
【0013】
もしくは、型枠底板に、プレキャストコンクリート板(以下、PCa版)を用いてもよい。ここでいうPCa版とは、例えば鉄筋コンクリート板、鉄骨鉄筋コンクリート板、プレストレストコンクリート板、超高強度繊維補強コンクリート板などである。型枠底板にPCa版を用いる場合は、あらかじめ鋼製リブ材をPCa版内部に備えておけばよい(図5(a)参照)。
【0014】
この場合、PCa版を捨て型枠として利用することができ、PCa版の厚みを耐荷被覆(耐荷性能を確保するために必要なかぶりの一部)とすることもできる。
【0015】
また、型枠底板に鉄骨鉄筋コンクリート板を用いる場合は、図6のように補強鋼材と下側リブ材に複数の孔を設けて、鉄筋をその孔に貫通させるように設置する。補強鋼材と下側リブ材に設けた孔がずれ止めとして作用するため、型枠底板のコンクリートと鋼材との一体化を図ることができる。
【0016】
本体にコンクリートを打設する時には、下側リブ材を型枠底板から引抜くような方向に荷重が作用することになるが、補強鋼材と下側リブ材を貫通する鉄筋を設けていることによって、この引抜き荷重に対して効率的に抵抗することができる。
【0017】
鋼製リブ材によって、コンクリート打設時の荷重に耐え得る断面剛性を確保するという観点からは、鋼製リブ材を床版側でなく、型枠底板の下側に設けることも考えられるが、その場合には内空断面を侵すため、利用空間が少なくなるという欠点や、鋼製リブ材を取り外してこの欠点を克服しようとしたとしても、その取外しが高所作業となり困難であるといった問題がある。
【0018】
そこで、本発明では、鋼製リブ材をあえて埋め殺しとし、コンクリート打設時の荷重に耐えるための型枠の補剛の機能に加え、鉄筋コンクリート床版中に配筋される鉄筋、主として下端筋を支持するスペーサーの機能を持たせることとし、そのため鉄筋コンクリート床版下面からの必要なかぶり厚に相当する位置にスリットを設けている。
【0019】
このように、本発明の床版型枠は、鋼製リブ材も含め、脱型せずそのまま捨型枠として使用することができるが、耐火性は期待していないため、必要なかぶり厚を確保して鉄筋が配筋され、鉄筋コンクリート床版として要求される耐火性能を満たすように設計することになる。
【0020】
この場合、鉄筋は複数のスリット間に架設される形で配筋されるため、スリットの幅、特に水平方向に余裕がないと配筋作業が困難となるため、鋼製リブ材の長手方向に長い長溝状のスリット形状とするのが好ましい。長溝状のスリット形状であれば、鉄筋を斜めの状態から差し込んだり、複数本の鉄筋をまとめて差し込み、その後に適切な間隔になるよう水平移動させるといったことが可能となる。
【0021】
このようにして、コンクリート床版の支持スパン直角方向に配筋される鉄筋を1本または複数本ずつ配置し、コンクリートを打設することで、鉄筋コンクリート床版を構築していくことができる。
【0022】
鋼製リブ材は、下側リブ材と、該下側リブ材に対して連結部材を介して着脱可能な上側リブ材とに2分して構成することもできる。
【0023】
その場合、下側リブ材は、下側リブ材を型枠底板上に並列配置した状態で、前記型枠底板と前記下側リブ材は接合して一体化されており、コンクリート打設前に作用する荷重を支持できるだけの断面剛性が確保できるようにする。すなわちその状態ではコンクリートの打設時の荷重を支えるには不十分であっても、作業者が型枠底板上で配筋作業を行う等、コンクリート打設前に作用する荷重を支持できるようにする。
【0024】
その後、下側リブ材の上端部にコンクリート床版に配筋される鉄筋を載置し、下側リブ材に対し、連結部材を介して上側リブ材を接続することで、コンクリートの打設時の荷重に耐え得るだけの断面剛性となるようにする。
【0025】
この場合、床版に配筋される鉄筋は、下側リブ材の上端部に載せればよいため、上述したスリットに鉄筋を差し込む場合に比べ、さらに配筋作業が容易となる。
【0026】
連結部材の形態や接続方法は特に限定されないが、スプライスプレートと高力ボルトを使用すれば、下側リブ材と上側リブ材を接続した状態での剛性確保が比較的容易である。
【0027】
このようにして、上側リブ材を未連結の状態で架設し、下側リブ材の上にコンクリート床版の支持スパン直角方向に配筋される複数の鉄筋を載置し、連結部材を用いて下側リブ材に上側リブ材を連結した後、コンクリートを打設することで、鉄筋コンクリート床版を構築していくことができる。
【発明の効果】
【0028】
底鋼板が構造部材としての床版の一部を構成する合成床版の場合、耐火性の問題があるのに対し、本発明では必要なかぶり厚を確保した鉄筋によって補強された鉄筋コンクリート床版構造であるため、耐火性の問題をクリアすることができる。
【0029】
コンクリート打設圧を、型枠底板上に並列させた複数の鋼製リブ材の断面剛性で受けることで、大がかりな支保工を要することなく、大スパンの施工が可能であり、特に急速施工が求められる条件において有用である。また、支保工等によって内空断面が侵されないことで、内空断面での作業を並行させることができる。
【0030】
コンクリート床版に配筋される鉄筋を鋼製リブ材に形成したスリットで受けるようにしたことで、配筋作業も容易である。
【0031】
鋼製リブ材を下側リブ材と上側リブ材に2分し、上側リブ材を連結部材で着脱可能とした場合には、配筋作業がさらに容易である。
【0032】
型枠底板をPCa版とした場合には、型枠底板を捨型枠兼耐荷被覆(耐荷性能を確保するために必要なかぶりの一部)として利用することができる。
【0033】
また、型枠底板のPCa版を鉄骨鉄筋コンクリート板とし、補強鋼材および下側リブに複数の孔を設け、両者の孔を貫通する鉄筋を設置する場合、補強鋼材と下側リブに設けた孔がずれ止めとして作用し、コンクリートと鋼材とを一体化させることができる。
【0034】
本体コンクリート打設時は、下側リブを型枠底板から引抜くように荷重が作用するが、補強鋼材と下側リブの両者を貫通する鉄筋を配置することで、この引抜き荷重に対して効率的に抵抗することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の一実施形態を示したもので、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線断面図、(c)は(a)のB−B線断面図である。
図2】(a)は図1(b)の一部を拡大して示した図、(b)は図1(c)の拡大図である。
図3】本発明の他の実施形態を示した鉛直断面図である。
図4】(a)〜(d)は、図3の実施形態における施工手順を示す拡大断面図である。
図5】本発明における型枠底板にPCa版を用いた場合の一実施形態であり、パネルを敷設した時を示した概略斜視図である。
図6図5の実施形態の次の手順を示したものであり、床版の下側に配筋した時を示した概略斜視図である。
図7図6の実施形態の次の手順を示したものであり、上側リブ材を接合した時を示した概略斜視図である。
図8】本発明において、型枠底板に鉄骨鉄筋コンクリート板を用いた場合の一実施形態を示したものであり、(a)(b)は断面図、(c)は補強鋼材、鉄筋、下側リブ材を示した概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の具体的な実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0037】
図1および図2は本発明の一実施形態として、掘割道路の上部を横断する支間(側壁と中央壁間)約7m、床版厚50cmの大スパンの鉄筋コンクリート床版を構築するための床版型枠を示したものである。
【0038】
図1(a)は平面図、図1(b)はそのA−A線断面図、図1(c)はB−B線断面図、図2(a)は図1(b)の一部を拡大して示した図、図2(b)は図1(c)の拡大図である。
【0039】
主要な型枠構成要素は、型枠底板11と、その型枠底板11上に並列配置した鋼製リブ材12であり、支持構造体としての道路側壁1a、中央壁1b間に大がかりな支保工を用いることなく架け渡した状態で、後述する配筋作業を行い、コンクリート7を打設養生することで、支持構造体1a、1bの上部に大スパンの鉄筋コンクリート床版2が構築される。なお、反対側の道路側壁は図示を省略しているが、ほぼ対称な構造となる。
【0040】
本実施形態において、型枠底板11は幅50cmの長尺の帯状鋼板を接続プレート11aで幅方向に複数枚接続し、その上面に鋼製リブ材12として、高さ25cmの長尺の帯状鋼板を長手方向を一致させて、鉛直に取り付けることで、コンクリートの打設圧に耐える断面剛性を確保している。型枠底板11と鋼製リブ材12はボルト接合したり、あるいは予め溶接しておくなどして一体化する。
【0041】
本実施形態では、既に構築されている道路側壁1aおよび中央壁1bの上面に型枠受け材14を設置して、型枠受け材14で型枠底板11の両端から突出する鋼製リブ材12の余長部分を支持するようにしている。また、型枠底板11の両端部にはハンチ部底板15が連結材16を介して取り付けられ、ハンチ部の底型枠となっている。
【0042】
鋼製リブ材12には、長手方向に間隔をおいて複数のスリット13が形成されている。スリット13はその下端が構築される床版の下端筋3a、3bのかぶり厚に相当する高さになるように形成されており、架設スパン方向と直交する方向の下端筋3aを挿入することで、下端筋3aに対するスペーサーとして機能する。スリット13を長溝状のスリット形状とすれば、下端筋3aを挿入して仮置きする作業が容易である。
【0043】
型枠底板11は脱型の必要はなく、鋼製リブ材12とともに捨て型枠となるが、耐火性に関しては強度に算入せず、構築される床版は鉄筋コンクリート床版として設計する。
【0044】
一般的な施工手順としては、所定幅に分割され、あらかじめ鋼製リブ材12を取り付けた型枠底板11を、道路側壁1a、中央壁1b間に架設しながら、大がかりな支保工を用いることなく架け渡した状態で、接続プレート11aと高力ボルト等で幅方向に接続して行く。
【0045】
道路側壁1aおよび中央壁1bへの架設は、前述のように型枠受け材14で鋼製リブ材12の余長部分を支持する形で行い、ハンチ部底板15をハンチ位置にセットする。また、コンクリート打設範囲について必要な側型枠等(図示せず)をセットする。
【0046】
次に、鋼製リブ材12の長溝状のスリット13に、スパン直交方向(鋼製リブ材12の長手方向と直角な方向)の下端筋3aを複数本ずつ挿入し、配筋設計に応じて間隔を整え、下端筋3aの上にさらにスパン方向の下端筋3bを載せ、結束線などで固定する。続いて、スペーサー(図示せず)を利用して上端筋4a、4bの配筋作業を行う。
【0047】
この状態で、コンクリートの打設を行い、養生を行うことで床版が完成する。型枠底板11はそのまま捨て型枠として残すが、側型枠等は脱型する場合と、捨て型枠として残す場合といずれでもよい。
【0048】
床版の幅によっては、以上の作業を複数回繰り返すことになる。
【0049】
図3および図4は本発明の他の実施形態を示したもので、対象や施工条件は図1および図2の実施形態と同様である。
【0050】
図3は鉛直断面図、図4(a)〜(d)は図3に対応する施工手順を示したもので、それぞれ左側の図がスパン直交方向からみた拡大断面図、右側の図がそれと直交する方向の拡大断面図である。
【0051】
本実施形態は、鋼製リブ材を、下側リブ材22aと上側リブ材22bに分けて構成し、これらを複数枚の連結プレート23を介して高ボルトなどで接合するようにしたものである。
【0052】
連結プレート23は、あらかじめ下側リブ材22aまたは上側リブ材22bに取り付けておくことで、現場作業が容易となる。その場合、あらかじめ取り付けておく側はボルト接合でなく、溶接でもよい。
【0053】
下側リブ材22aは、型枠底板11上に並列配置した状態で、作業者が型枠底板11上で配筋作業を行う等、コンクリート打設前に作用する荷重を支持するのに十分な断面剛性が確保できるようにする。
【0054】
その後、下側リブ材22aの上端部にコンクリート床版2に配筋される下端筋3a、3bを載置し、下側リブ材22aに対し、連結部材23を介して上側リブ材22bを接続することで、コンクリート7の打設時の荷重に耐え得る断面剛性を確保する。
【0055】
この場合、床版に配筋される下端筋3a、3bは、下側リブ材22aの上端部に載せるだけでよいため、図1図2の実施形態のように、スリット13に下端筋3aを差し込む場合に比べ、配筋作業が容易である。他の構成は、図1図2の実施形態と同様である。
【0056】
一般的な施工手順としては、所定幅に分割され、あらかじめ下側リブ材22aを取り付けた型枠底板11を、道路側壁1a、中央壁1b間に架設しながら、大がかりな支保工を用いることなく架け渡した状態で、接続プレート11aと高力ボルト等で幅方向に接続して行く(図4(a)参照)。
【0057】
道路側壁1aおよび中央壁1bへの架設は、型枠受け材14で下側リブ材22aの余長部分を支持する形で行い、ハンチ部底板15をハンチ位置にセットする(図3参照)。
【0058】
次に、下側リブ材22aの上端部に、スパン直交方向の下端筋3aを載置して行き、配筋設計に応じて間隔を整え、下端筋3aの上にさらにスパン方向の下端筋3bを載せ、結束線などで固定する(図4(b)参照)。
【0059】
下端筋3a、3bの配筋作業を行った後、連結プレート23を介して下側リブ材22aの上方に上側リブ材22bを高力ボルト接合等により連結する(図4(c)参照)。
【0060】
続いて、スペーサー(図示せず)を利用して上端筋4a、4bの配筋作業を行い、コンクリート7を打設し、養生を行うことで床版が完成する(図4(d)参照)。
【0061】
その他の作業は、図1図2の実施形態と同様である。
【0062】
図5図8は、本発明の他の実施形態を示したもので、対象や施工条件は図1および図2の実施形態と同様である。
【0063】
図5図7は、本発明の型枠底板11にPCa版と鋼製リブ材12を組み合わせたハイブリッド型枠を使用した場合の概略斜視図であり、施工手順を示している。鋼製リブ材は、図3図4と同様で、下側リブ材22aと上側リブ材22bに分けて構成し、これらを複数枚の連結プレート23を介して高ボルトなどで接合するようにしたものである。
【0064】
まず、ステップ1として、図5にパネル敷設時を示した。型枠底板11にはあらかじめ工場などで下側リブ材22aを設けたPCa版を使用する。
【0065】
下側リブ材22aは、型枠底板11上に並列配置した状態で、作業者が型枠底板11上で配筋作業を行う等、コンクリート打設前に作用する荷重を支持するのに十分な断面剛性が確保できるようにする。
【0066】
連結プレート23は、あらかじめ下側リブ材22aに取り付けておくことで、現場作業が容易となる。その場合、あらかじめ取り付けておく側はボルト接合でなく、溶接でもよい。
【0067】
次に、ステップ2として、図6に床版下側の配筋を示した。下側リブ材22aの上端部にコンクリート床版2に配筋される下端筋3a、3bを載置し、下側リブ材22aをスペーサとして利用している。
【0068】
ステップ3として、図7に上側リブ材22bの接合を示した。下側リブ材22aに対し、連結部材23を介して上側リブ材22bを接続し、コンクリート7の打設時の荷重に耐え得る断面剛性を確保する。
【0069】
この場合、床版に配筋される下端筋3a、3bは、下側リブ材22aの上端部に載せるだけでよいため、図1図2の実施形態のように、スリット13に下端筋3aを差し込む場合に比べ、配筋作業が容易である。
【0070】
また、PCa版を捨て型枠として利用することができ、PCa版の厚みを耐荷被覆(耐荷性能を確保するために必要なかぶりの一部)とすることもできる。
【0071】
他の構成やその他の作業は、図1〜4の実施形態と同様である。
【0072】
図8は、本発明の型枠底板11のPCa版に補強鋼材として溝形鋼を設けた鉄骨鉄筋コンクリート板を使用した場合を示したもので、図8(a)、(b)は断面図、図8(c)は斜視図である。
【0073】
図8(a)〜(c)に示したように、溝形鋼31と下側リブ材22aにそれぞれ複数の孔を設け、溝形鋼31と下側リブ材22aの孔を貫通させるように鉄筋を設け、PCa版を構成する。
【0074】
溝形鋼31と下側リブ材22に設けた孔がずれ止めとして作用し、型枠底板のコンクリートと鋼材との一体化を図ることができる。
【0075】
下側リブ材22aに連結プレート23を高ボルトなどで接合する以降の作業や他の構成は図1〜7の実施形態と同様である。
【0076】
型枠底板11に鉄骨鉄筋コンクリート板を用いる場合、本体にコンクリートを打設する時には、下側リブ材22aを型枠底板11から引抜くような方向に荷重が作用することになる。しかし、補強鋼材31と下側リブ材22aを貫通する鉄筋を設けていることによって、この引抜き荷重に対して効率的に抵抗することができる。
【0077】
溝型鋼31が、図8(a)では外向き、図8(b)では内向きで設置した例を示しているが、どちらも有効的である。
【0078】
ここでは補強鋼材として溝形鋼を用いた例を示しているが、H形鋼その他補強鋼材に複数の孔を設けることができ、強度面で問題のないものであればよく、特に限定されない。
【符号の説明】
【0079】
1a…側壁(支持構造体)、1b…中央壁(支持構造体)、2…大スパン鉄筋コンクリート床版、3a、3b…下端筋、4a、4b…上端筋、5…壁主筋、6…せん断補強筋、7…コンクリート、
11…底板、11a…接続プレート、12…リブ材、13…スリット、14…型枠受け材、15…ハンチ部底板、16…連結材、
22a…下側リブ材、22b…上側リブ材、23…連結プレート、
31…補強鋼材(溝形鋼)、32…鉄筋
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8