特許第6283188号(P6283188)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6283188
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】ゴルフクラブ
(51)【国際特許分類】
   A63B 53/02 20150101AFI20180208BHJP
   A63B 53/04 20150101ALI20180208BHJP
【FI】
   A63B53/02
   A63B53/04 A
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-208148(P2013-208148)
(22)【出願日】2013年10月3日
(65)【公開番号】特開2015-70942(P2015-70942A)
(43)【公開日】2015年4月16日
【審査請求日】2016年7月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】504017809
【氏名又は名称】ダンロップスポーツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100156845
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 威一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100112896
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 宏記
(74)【代理人】
【識別番号】100179213
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 未知子
(72)【発明者】
【氏名】水谷 成宏
(72)【発明者】
【氏名】松永 聖史
【審査官】 高木 亨
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0165111(US,A1)
【文献】 特開2013−039367(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0100926(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 53/02
A63B 53/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトと、
ホーゼル部、及び前記ホーゼル部とは反対側に形成され当該ホーゼル部の内部空間に連通する開口部を有し、前記内部空間が前記ホーゼル部におけるシャフトの取付孔に開口するとともに、前記取付孔の開口近傍にホーゼル連結部を有するゴルフクラブヘッドと、
第1の端部及び第2の端部を有する第1アダプタであって、前記第1の端部側に開口し、前記シャフトと固定されるシャフト用凹部を有するとともに、前記第1の端部に連結部を有し、前記第2の端部が前記取付孔から前記ホーゼル部の内部空間に収容される第1アダプタと、
第1の軸線の両端部に第1の端部及び第2の端部を有し、前記第1アダプタが貫通する貫通孔が形成された第2アダプタであって、前記第1の端部に前記第1アダプタの連結部と着脱自在に連結する第1連結部を有するとともに、前記第2端部に前記ホーゼル連結部と着脱自在に連結する第2連結部を有する第2アダプタと、
前記第1アダプタを、前記ホーゼル部の内部空間に着脱自在に固定する固定部材と、
を備え、
前記シャフトは、前記第1アダプタの連結部に対して傾斜して連結されるように構成され、
前記第2アダプタの外周面の軸線と、前記第2アダプタの貫通孔の軸線とが交差することで、前記第1アダプタは、前記第2アダプタに対して傾斜して連結されるように構成され、
前記第1アダプタの連結部と、前記第2アダプタの第1連結部とは、軸線回りの複数の回転位置において連結可能となっており、
前記第2アダプタの前記第2連結部と、前記ホーゼル連結部とは、軸線回りの複数の回転位置において連結可能となっており、
前記第1アダプタの連結部、及び前記第2アダプタの第1連結部は、前記ホーゼル部の外部で連結している、ゴルフクラブ。
【請求項2】
前記第1アダプタは、第1の軸線の両端部に前記第1の端部及び前記第2の端部を有し、当該第1の軸線に沿って筒状に形成され、前記シャフト用凹部は、前記第1の軸線と交差する第2の軸線に沿って延びており、
前記第2アダプタは、第1の軸線の両端部に前記第1の端部及び前記第2の端部を有し、当該第1の軸線に沿って筒状に形成され、前記第1連結部は、前記第1の軸線と交差する第2の軸線に沿って形成されている、請求項1に記載のゴルフクラブ。
【請求項3】
前記第2アダプタは、リング状に形成されており、前記取付孔に沿って、少なくとも一部が外部に露出するように配置されている、請求項1または2に記載のゴルフクラブ。
【請求項4】
前記第1アダプタの連結部は、径方向外方に突出するフランジ部により形成されており、
前記フランジ部が、前記第2アダプタの第1連結部に連結している、請求項1から3のいずれかに記載のゴルフクラブ。
【請求項5】
前記第1アダプタのフランジ部には、周方向に沿って凹凸部が形成されており、
前記第2アダプタの第1連結部には、外部から視認可能な状態で、前記フランジ部の凹凸部に係合する凹凸部が形成されている、請求項4に記載のゴルフクラブ。
【請求項6】
前記ホーゼル連結部には、前記取付孔の周方向に沿う凹凸部が形成されており、
前記第2アダプタの第2連結部には、前記ホーゼル連結部の凹凸部に係合する凹凸部が形成されている、請求項1から5のいずれかに記載のゴルフクラブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ゴルフクラブヘッドとシャフトとの種々の連結方法が提案されている。例えば、特許文献1には、ゴルフクラブヘッドのホーゼル部と、シャフトとの間に2つのアダプタを取付けることで、ゴルフクラブヘッドに対するシャフトの取付け角度を変更できるようにしたゴルフクラブが開示されている。具体的には、次のように構成されている。まず、シャフトに取付けられるシャフトアダプタは、シャフトに対して傾斜した状態で固定されている。一方、ホーゼル部に取付けられるヘッドアダプタは、ヘッドに対して複数の回転位置で着脱自在に取付けられるようになっている。そして、シャフトアダプタは、ヘッドアダプタに対して傾斜した角度で嵌め込まれるようになっており、さらに複数の回転位置で嵌め込むことができるようになっている。したがって、ホーゼル部に対するヘッドアダプタの回転位置、及ヘッドアダプタに対するシャフトアダプタの回転位置の2つを調整することで、シャフトは、ゴルフクラブヘッドに対して種々の角度で取付けることができる。そして、このようにすることで、ゴルフクラブのライ角、ロフト角、及びフェース角をユーザの好みに合わせて調整することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2013−500059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のようなゴルフクラブでは、シャフトアダプタがホーゼル部の内部空間に収容されているため、外部からはヘッドアダプタがホーゼル部に対してどのような回転位置で取付けられているかを視認できなかった。そのため、ユーザが、ヘッドアダプタの回転位置を確認するためには、両アダプタを取り外して分解するしかなく、作業が煩雑になるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、シャフトとゴルフクラブヘッドとの連結構造を分解することなく、アダプタの回転位置を視認することができるゴルフクラブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るゴルフクラブは、シャフトと、ホーゼル部、及び前記ホーゼル部とは反対側に形成され当該ホーゼル部の内部空間に連通する開口部を有し、前記内部空間が前記ホーゼル部におけるシャフトの取付孔に開口するとともに、前記取付孔の開口近傍にホーゼル連結部を有するゴルフクラブヘッドと、第1の端部及び第2の端部を有する第1アダプタであって、前記第1の端部側に開口し、前記シャフトと固定されるシャフト用凹部を有するとともに、前記第1の端部に連結部を有し、前記第2の端部が前記取付孔から前記ホーゼル部の内部空間に収容される第1アダプタと、第1の軸線の両端部に第1の端部及び第2の端部を有し、前記第1アダプタが貫通する貫通孔が形成された第2アダプタであって、前記第1の端部に前記第1アダプタの連結部と着脱自在に連結する第1連結部を有するとともに、前記第2端部に前記ホーゼル連結部と着脱自在に連結する第2連結部を有する第2アダプタと、前記第1アダプタを、前記ホーゼル部の内部空間に着脱自在に固定する固定部材と、を備え、前記シャフトは、前記第1アダプタの連結部に対して傾斜して連結されるように構成され、前記第1アダプタは、前記第2アダプタに対して傾斜して連結されるように構成され、前記第1アダプタの連結部と、前記第2アダプタの第1連結部とは、前記第2アダプタの第2の軸線回りの複数の回転位置において連結可能となっており、前記第2アダプタの前記第2連結部と、前記ホーゼル連結部とは、軸線回りの複数の回転位置において連結可能となっており、前記第1アダプタの連結部、及び前記第2アダプタの第1連結部は、前記ホーゼル部の外部で取付孔の外部で連結している。
【0007】
なお、本明細書では、アダプタ間の関係、アダプタとホーゼルとの関係について「連結」と言う文言を使用しているが、連結という文言の意図としては、少なくとも両者が動かないように接していればよく、両者が外力を加えても分離しないことまでは要求されない。したがって、「連結」という文言のほか、「係合」という文言でこの状態を表すこともある。
【0008】
上記ゴルフクラブにおいて、前記第1アダプタは、第1の軸線の両端部に前記第1の端部及び前記第2の端部を有し、当該第1の軸線に沿って筒状に形成され、前記シャフト用凹部は、前記第1の軸線と交差する第2の軸線に沿って延びており、前記第2アダプタは、第1の軸線の両端部に前記第1の端部及び前記第2の端部を有し、当該第1の軸線に沿って筒状に形成され、前記第1連結部は、前記第1の軸線と交差する第2の軸線に沿って形成することができる。
【0009】
上記ゴルフクラブにおいて、前記第2アダプタは、リング状に形成されており、前記取付孔に沿って、少なくとも一部が外部に露出するように配置することができる。
【0010】
上記各ゴルフクラブにおいて、前記第1アダプタの連結部は、径方向外方に突出するフランジ部により形成され、前記フランジ部を、前記第2アダプタの第1連結部に連結することができる。
【0011】
上記ゴルフクラブにおいて、前記第1アダプタのフランジ部には、周方向に沿って凹凸部が形成されており、前記第2アダプタの第1連結部には、外部から視認可能な状態で、前記フランジ部の凹凸部に係合する凹凸部が形成することができる。
【0012】
上記ゴルフクラブにおいて、前記ホーゼル連結部には、前記取付孔の周方向に沿う凹凸部が形成されており、前記第2アダプタの第2連結部には、前記ホーゼル連結部の凹凸部に係合する凹凸部が形成することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るゴルフクラブによれば、前記第1アダプタの連結部、及び前記第2アダプタの第1連結部が、前記ホーゼル部の外部で取付孔の外部で連結しているため、両アダプタの連結状態が、外部から視認可能となっている。そのため、シャフトとゴルフクラブヘッドとの連結構造を分解することなく、アダプタの回転位置を視認することができ、その結果、連結状態からゴルフクラブのライ角、ロフト角、及びフェース角などを確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係るゴルフクラブの斜視図である。
図2図1の平面図である。
図3】連結構造の分解図である。
図4】両アダプタ、ワッシャ、及び固定具が装着されたゴルフクラブヘッドをヒール側から見た正面図である。
図5図4のA−A線断面図である。
図6図4のゴルフクラブヘッドをソール部側から見た底面図である。
図7】ホーゼル部の内部空間を示す断面図である。
図8A】第1アダプタの側面図である。
図8B】第1アダプタの断面図である。
図9A】第2アダプタの上から見た斜視図である。
図9B】第2アダプタの断面図である。
図9C】第2アダプタを下から見た斜視図である。
図10】ゴルフクラブヘッドの他の例を示す正面図である。
図11A図4のゴルフクラブヘッドの他の例を示す正面図である。
図11B図11AのB-B線断面図である。
図12】第1アダプタの他の例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るゴルフクラブの一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図1は本実施形態に係るゴルフクラブヘッドの斜視図、図2図1の平面図である。なお、ゴルフクラブヘッドの基準状態については、後述する。以下の説明では、図面内の向きを基準として説明を行うことがあるが、説明の便宜上のためであり、この向きは発明を限定するものでない。また、以下の説明で軸方向とは、特に断りのない限りは、概ねシャフトの延びる方向であるが、厳密なものではない。
【0016】
<1.ゴルフクラブの全体構造>
図1及び図2に示すように、本実施形態に係るゴルフクラブは、シャフト20と、その端部に連結されたゴルフクラブヘッド10(以下、単に「ヘッド」ということがある)とを備えている。また、シャフト20とゴルフクラブヘッド10とは、後述する連結構造により連結されており、ヘッド10に対するシャフト20を軸回りの回転位置を変更できるように構成されている。以下、各部材について詳細に説明する。
【0017】
シャフト20は、中空の管状に形成されており、下方の端部には上述したゴルフクラブヘッド10が連結され、上方の端部には、図示を省略するグリップが固定されている。
【0018】
ゴルフクラブヘッド10は、中空構造であり、フェース部1、クラウン部2、ソール部3、サイド部4、及びホーゼル部5によって壁面が形成されている。フェース部1は、ボールを打球する面であるフェース面を有しており、クラウン部2はフェース部1と隣接し、ヘッドの上面を構成する。ソール部3は、ヘッド10の底面を構成し、フェース部1及びサイド部4と隣接する。また、サイド部4は、クラウン部2とソール部3との間の部位であり、フェース部1のトウ側からヘッド10のバック側を通りフェース部1のヒール側へと延びる部位である。さらに、ホーゼル部5は、クラウン部2のヒール側に隣接して設けられる円筒状の部位であり、後述する第1アダプタ6が挿入される取付孔51を有している。なお、ここで説明するヘッド10は、ドライバー(#1)又はフェアウェイウッドといったウッド型であるが、そのタイプは限定されず、いわゆるユーティリティ型及びハイブリッド型等であってもよい。
【0019】
<2.シャフトとゴルフクラブヘッドとの連結構造>
次に、シャフト20とゴルフクラブヘッド10との連結構造について説明する。図3は、連結構造の分解図である。同図に示すように、この連結構造において、シャフト20とゴルフクラブヘッド10とは、第1アダプタ6及び第2アダプタ7を介して連結されており、これら両アダプタ6,7は、ワッシャ8及び固定具9によって、ゴルフクラブヘッド10内で固定されている。以下、この連結構造について詳述する。
【0020】
<2.1 ゴルフクラブヘッドの連結に係る構造>
まず、ゴルフクラブヘッド10の構造について、図4から図6も参照しつつ説明する。図4は、両アダプタ部、ワッシャ、及び固定具が装着されたゴルフクラブヘッドをヒール側から見た正面図、図5図4のA−A線断面図、図6図4のゴルフクラブヘッドをソール部側から見た底面図、図7はホーゼル部の内部空間を示す断面図である。
【0021】
図4から図6に示すように、ホーゼル部5の内部空間は、概ねシャフト20の軸方向と平行にサイド部4側及びソール部3側まで貫通している。ソール部3において、ホーゼル部5と反対側の部位には、凹部31が形成されている。この凹部31は、内部空間とほぼ平行に延びる円弧状の側面311と、この側面311から概ね垂直に延びる基面312とで構成されている。そして、この基面312に、内部空間と通じる下部開口313が形成されている。
【0022】
図7に示すように、ホーゼル部5の内部空間50は、円筒状に形成されており、上部がシャフトの取付孔51を構成するとともに、下部が上述した下部開口313を構成している。そして、内部空間50の内壁面は、上方から下方にいくにしたがって、径が若干広がるようなテーパ状に形成されている。また、取付孔51の内壁面には、周方向に沿って複数の凹部(ホーゼル連結部)52が形成されており、この凹部52に、後述する第2アダプタ7の第2凸部74が係合するようになっている。一方、下部開口313の内壁面には、径方向内方に突出する環状の突出部53が形成されており、この突出部53に後述する固定具9が取り付けられるようになっている。組立て時においては、取付孔51側に第2アダプタ7が取り付けられた後、この第2アダプタ7を貫通するように、第1アダプタ6が挿入される。そして、内部空間50において、第1アダプタ6を、上述した突出部53に固定するため、ワッシャ8及びネジ状の固定具9が用いられる。図3に示すように、固定具9は、頭部91とこれに連結されるネジ部92とで形成されており、頭部91には、レンチが挿入される矩形状の凹部911(図5図6参照)が形成されている。
【0023】
<2.2 第1アダプタ>
次に、第1アダプタ6について、図8を参照しつつ説明する。図8Aは第1アダプタの側面図、図8B図8Aの断面図である。同図に示すように、第1アダプタ6は、筒状に形成された本体部61を備えており、本体部61の上端部には、径方向外方に突出するフランジ部612が形成されるとともに、本体部61の下端部には、本体部61よりも小径の筒状の連結部62が形成されている。そして、これらは、一体的に形成されている。本体部61は第1軸線X1を軸心とし、この第1軸線X1に沿って円筒状に延びるような外形を有するとともに、上端側に開口するシャフト用凹部611を有している。そして、このシャフト用凹部611は、第1軸線X1と約1度の角度で交差する第2軸線X2に沿って延びる円筒状の内壁面を有しており、このシャフト用凹部611にシャフト20の下端部が挿入される。シャフト20は、接着などでこのシャフト用凹部611に固定される。これにより、シャフト20の軸心S(図1参照)は、第1アダプタ6の第2軸線X2に沿って延び、第1アダプタ6から傾斜して延びるように固定される。
【0024】
第1アダプタ6の本体部61の外径は、ホーゼル部5の取付孔51よりも小径であるが、上述したフランジ部612は、これより大きく、且つ後述する第2アダプタ7に連結されるようになっている。より詳細に説明すると、フランジ部612の下端部には、下方に開放する複数の凹部613が形成されており、この凹部613に、第2アダプタ7の第1凸部73が係合するようになっている。したがって、第1アダプタ6は、フランジ部612が取付孔51より外部に配置され、フランジ部612よりも下方の部分がホーゼル部5の内部空間50に配置される。また、例えば、図4に例示するように、フランジ部612の外周面には、複数の回転位置表示65が施されており、これら回転位置表示65のいずれかを、第2アダプタ7に付された基準表示75と合わせるように位置決めすることで、後述するように、ユーザの好みに応じた角度にすることができる。
【0025】
第1アダプタ6の連結部62は、第1軸線X1に沿って延びる筒状に形成されるとともに、下方に開口するネジ穴621を有しており、このネジ穴621には雌ネジが形成されている。なお、図8における第1アダプタ6の上端部が本発明の第1の端部に相当し、第1アダプタ6の下端部が本発明の第2の端部に相当する。
【0026】
<2.3 第2アダプタ>
次に、第2アダプタ7について、図9を参照しつつ説明する。図9Aは第2アダプタを上方から見た斜視図、図9Bは第2アダプタの断面図、図9Cは第2アダプタを下方から見た斜視図である。これらの図に示すように、第2アダプタ7は、貫通孔71を有するリング状の本体部72を備えており、ホーゼル部5の取付孔51の上部に連結される。本体部72は、ホーゼル部5の取付孔51とほぼ同径に形成されており、その上端には、周方向に沿って所定間隔をおいて配置された複数(本実施形態では4個)の第1凸部73が形成されている。一方、本体部72の下端には、軸方向に下方へ突出する複数の第2凸部74が形成されている。第2凸部74は、第1凸部73間の隙間と対応する位置に形成されており、ホーゼル部5の凹部52に係合するようになっている。また、この第2凸部74は、本体部72の外周面よりも径方向内方に取付けられており、これがホーゼル部5の凹部52に係合したときには、内部空間50に配置され、外部から見えないようになっている。なお、図9Bにおける第2アダプタ7の上端部が本発明の第1の端部に相当し、第2アダプタ7の下端部が本発明の第2の端部に相当する。
【0027】
また、第2アダプタの本体部72は、第1軸線Y1を軸心とし、この第1軸線Y1に沿って円筒状に延びる外形を有している。そして、第2アダプタ7の貫通孔71は、第1軸線Y1と約1度の角度で交差する第2軸線Y2に沿って延びる円筒状の内壁面を有しており、この貫通孔71に第1アダプタ6が着脱自在に挿入される。この貫通孔71の内径は、第1アダプタ6の本体部61とほぼ同じである。そして、挿入された第1アダプタの凹部613に、第2アダプタの第1凸部73が係合し、両アダプタ6,7は軸回りに回転不能に連結される。こうして、挿入された第1アダプタ6は、第2アダプタ7の第2軸線Y2に沿って延びるため、第2アダプタ7から傾斜して延びるように固定される。このとき、両アダプタ6,7は、凹部613や第1凸部73の数だけ、回転位置を変えて連結することができる。なお、凹部613や第1凸部73の数は、特には限定されないが、例えば、2〜12とすることができる。また、第1アダプタ6の第2軸線X2と第2アダプタ7の第2軸線Y2とは、平行ではなく、両アダプタ6,7が連結されたときに交差するように構成されている。
【0028】
また、第2アダプタ7の外周面には、基準表示75が施されており、上述した第1アダプタ6の回転位置表示65との位置決めに用いられる。
【0029】
なお、上記連結構造で用いる各アダプタ6,7は、種々の材料で形成できるが、例えば、Ti(6-4Ti)、Al(Al5052)などで形成することができる。
【0030】
<3.シャフトとゴルフクラブヘッドとの組立て>
次に、上記のように構成されたゴルフクラブの組立て方法について説明する。まず、ホーゼル部5の取付孔51に、第2アダプタ7を取付ける。このとき、第2アダプタ7の回転位置を適宜決定し、所望の回転位置で、第2アダプタ7の第2凸部74を取付孔51の凹部52に嵌め込む。これにより、第2アダプタ7はホーゼル部5に対して回転不能に連結される。続いて、シャフト20が固定された第1アダプタ6を、第2アダプタ7の貫通孔71に挿入する。このとき、第1アダプタ6のフランジ部612の凹部613に、第2アダプタ7の第1凸部73を嵌め込み、回転位置表示65のいずれかを、第2アダプタ7の基準表示75に位置決めする。こうして、第1アダプタ6と第2アダプタ7とが、回転不能に連結される。
【0031】
また、図5に示すように、第1アダプタ6のフランジ部612よりも下方の部分は、内部空間50に挿入され、第1アダプタ6の下端部に設けられた連結部62が内部空間50に固定される。具体的には、ワッシャ8を内部空間50の突出部53に下側から配置した後、固定具9のネジ部92を下側から、第1アダプタ6の連結部62にネジ留めする。このとき、固定具9の頭部91が突出部53に係合するため、固定具9は、内部空間50に保持される。そして、この固定具9が第1アダプタ6にネジ留めされるため、第1アダプタ6は、内部空間50において、軸方向の位置が固定される。こうして、シャフト20とヘッド10とは、図1図2図4及び図5に示すように連結される。
【0032】
以上のようにシャフト20とヘッド10とを固定したとき、シャフト20は、第1アダプタ6に対して1度傾斜した状態で固定される。また、第1アダプタ6は、第2アダプタ7に対して1度傾斜した状態で固定される。したがって、シャフト20は、第2アダプタ7に対して、最大2度傾斜した状態で固定されることになる。このように、第1アダプタ6は、第2アダプタ7やホーゼル部5の取付孔51に対して、いずれかの回転位置で傾斜して固定されるが、第1アダプタ6が収容される内部空間はテーパ状に形成されているため、第1アダプタ6がいずれの回転位置で第2アダプタ7に固定されても、第1アダプタ6が内部空間の内壁面と干渉しないようになっている。
【0033】
ここで、第2アダプタ7の取付孔51に対する回転位置を固定したまま、第2アダプタ7に対する第1アダプタ6の回転位置を変更すると、ヘッド10に対するシャフト20の取付角度が変更されるため、ライ角、ロフト角、及びフェース角を変更することができる。そして、第2アダプタ7の取付孔51に対する回転角度を変更すると、さらに細かくライ角、ロフト角、フェース角を変更することができる。例えば、第2アダプタ7に対する第1アダプタ6の回転角度が4種類、第2アダプタ7の取付孔51に対する回転角度が2種類であれば、合計8種類のライ角、ロフト角、フェース角の組み合わせに変更することができる。
【0034】
このとき、第1アダプタ6のフランジ部612、及び第2アダプタ7は外部に露出し、フランジ部612の凹部613と、第2アダプタ7の第1凸部73との係合状態は外部から視認可能である。そして、第1アダプタ6のフランジ部612には回転位置表示65が施され、外部に露出して知いるので、ユーザは、第1アダプタ6の回転位置がどこであるかということを容易に視認することができる。また、第2アダプタ7にも基準表示75が施されているので、ホーゼル部5に対する回転位置を確認することができる。したがって、ユーザは、連結構造を分解することなく、第1アダプタ6の回転位置及び第2アダプタ7の回転位置を確認することができ、これによって、このゴルフクラブのライ角、ロフト角、及びフェース角を確認することができる。
【0035】
<4.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。例えば、以下の変更が可能である。
【0036】
<4.1>
上記実施形態では、第2アダプタ7の第2凸部74が、本体部72の外周面から径方向内方に位置するように設けられているが、第2凸部74の外周面と、本体部72の外周面とが同一面上にあるように形成することもできる。この場合、図10に示すように、ホーゼル部5には、取付孔51の周縁に沿って、複数の凹部511を形成し、この凹部511に第2アダプタ7の第2凸部74が係合するようにする。これにより、第2アダプタ7がどの回転位置で、ホーゼル部5に連結されているかを、さらに容易に視認することができる。
【0037】
<4.2>
上記実施形態では、第2アダプタとホーゼル部の取付孔との連結、第1アダプタと第2アダプタとの連結について、凸部と凹部とを係合させているが、これ以外の連結手段を用いることもできる。例えば、凸部と凹部とを反対にしてもよい。要するに、これらの連結に際し、着脱自在に、複数の回転位置で連結され、且つ、軸回りに回転不能に連結されていればよい。
【0038】
<4.3>
上記実施形態では、シャフト20を第1アダプタ6に対して1度傾斜させ、さらに第1アダプタ6を第2アダプタ7に対して1度傾斜させているが、この角度は特には限定されない。また、2つの角度を異なるものとしてもよい。
【0039】
<4.4>
上記実施形態では、ゴルフクラブヘッド10の表面に形成された凹部31を介して、内部空間に通じる下部開口313を臨むようにしているが、この凹部31を塞ぐキャップを設けてもよい。例えば、図11A及び図11Bに示すように、このキャップ85は、凹部31の側面311に沿う側壁面851と、ゴルフクラブヘッド10の外周面に沿う外壁面852と、凹部31の基面312と対向する端面853とで囲まれた形状を有している。側壁面851の軸方向の長さは、凹部31の側面311よりも短く、これによって、凹部31の基面312と端面853との間には隙間が形成される。また、外壁面852と端面853との間には、軸方向に延びる貫通孔854が形成されており、この貫通孔54を介して、キャップ85の外部からレンチなどの工具を挿入することができる。そして、この工具を固定具9の頭部91に係合させ、固定具9をキャップ85を閉じたまま取り外すことができる。この構成により、キャップ85で凹部31が塞がれるため、ヘッド10のデザイン性が向上し、また、固定具9を取り外す際に紛失を防止することができる。
【0040】
<4.5>
また、第1アダプタ6及び第2アダプタ7における回転位置表示65、基準表示75は、線で示されているが、これ以外にも図形、数字などで表示することもできるし、あるいは、各アダプタ7の一部を加工することもでき、例えば、切り欠いたり、または突部を設けるなどすることもできる。なお、回転位置表示、基準位置は特には区別されるものではなく、回転位置の位置合わせができれば、特には限定されない。すなわち、何らかの表示がなされていればよく、第1アダプタ6に基準位置を設けたり、第2アダプタ7に回転位置表示を設けることもできる。
【0041】
<4.6>
上記実施形態では、ホーゼル部の内部空間をヘッドの一部として成形しているが、例えば、図7に示すような、ホーゼル部5を、別体としてゴルフクラブヘッドに取付けられることで構成してもよい。
【0042】
<4.7>
上記実施形態では、第1アダプタ6の外周面を第1軸線X1と平行に形成し、シャフト用凹部611を第1軸線X1と交差する第2軸線X2に沿って形成しているが、例えば、第1アダプタ6を図12に示すように形成することもできる。同図に示すように、この例では、第1アダプタ6の本体部61をフランジ部612及び凹部613に対して傾斜させている。すなわち、フランジ部612及び凹部613を第1軸線X1に沿うように形成し、本体部61の外周面を第2軸線X2に沿って形成している。また、本体部61に形成されるシャフト用凹部611も第2軸線X2に沿って延びるように形成している。このように構成しても、シャフト20の軸線は第2軸線X2に沿うため、シャフト20を第1アダプタ6に対して傾斜して固定することができる。なお、フランジ部612全体が、第2アダプタ7に対して接するようにするため、フランジ部612は、本体部61に対して傾斜した状態で形成されている。また、フランジ部612の本体部61に対する傾斜角度と、第2アダプタ7における貫通孔71の傾斜角度とは、同じでもよいし、相違していてもよく、要するに、2つの傾斜が設けられていれば、第1アダプタ6が第2アダプタ7に対して傾斜した状態で連結される。
【0043】
<4.8>
上記のように構成されたゴルフクラブヘッドは、中空構造であるため、2以上の部材を接合することにより製造される。すなわち、中空部に通じる1または2以上の開口が形成されたヘッド本体と、開口を塞ぐ別部材とを接合することで製造される。例えば、クラウン部2やフェース部1のみを別部材で構成して、これをヘッド本体と組み合わせたり、あるいはソール部3やサイド部4に開口を設けたヘッド本体を形成し、この開口を別部材で塞ぐことでヘッドを構成することもできる。そして、このようなヘッド本体は、例えば、公知のロストワックス精密鋳造法などの鋳造によって製造することができる。
【符号の説明】
【0044】
10 ゴルフクラブヘッド
20 シャフト
31 下部開口
5 ホーゼル部
51 取付孔
52 凹部(ホーゼル連結部)
6 第1アダプタ
612 フランジ部
613 凹部(連結部)
7 第2アダプタ
73 第1凸部(第1連結部)
74 第2凸部(第2連結部)
9 固定具(固定部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図10
図11A
図11B
図12