(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2カム面が、前記支持部材の移動可能な前記所定の範囲において、前記第2カム面の前記カムフォロアへの押圧力の前記第1方向の成分が前記付勢力の方向に作用する第1の領域と、前記第2カム面の前記カムフォロアへの押圧力の前記第1方向の成分が前記付勢力の方向とは逆向きに作用する第2の領域とを有することを特徴とする請求項1に記載の荷重支持機構。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この種の物品支持機構は、実用上の観点から見て、構造が簡単で部品点数が少なく、小型かつ軽量に構成することが好ましい。ところが、特許文献1に記載のモニター装置支持機構では、エネルギー保存部材のコイルばねが、その軸方向をモニター装置の移動方向と略直交させた向きに配置され、そのばね力で、移動体に回転可能に取り付けられた腕部材の先端のカム従動部材をカム面に押圧している。モニター装置を支持する力は、カム従動部材に対するカム面からの反力の全部ではなく、移動体の移動方向の第1成分によってのみ得られる。
【0007】
そのため、エネルギー保存部材として、移動体及びモニター装置の重量よりも相当大きいばね力を発揮し得る大型のコイルばねが必要である。しかも、このコイルばねは、カムの前側及び/又は背後に配置されている。その結果、特許文献1のモニター装置支持機構は、装置全体が特に奥行き方向に大型化し、構造が複雑になるから、小型化・軽量化を図ることは困難である。
【0008】
更に、特許文献1に記載のモニター装置支持機構は、モニター装置の支持力がばねとカム形状との組み合わせによって決定されるから、重量の異なるモニター装置を支持するためには、ばねとカム形状とを取り替えたり支持機構自体を交換することが必要になる。そのため、支持する対象物品の重量毎に個別の支持機構又は構成部品を用意しなければならず、価格も高くなるという問題が生じる。
【0009】
本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、物品等の荷重を支持するための荷重支持機構であって、構造が比較的簡単で部品点数が少なく、小型かつ軽量であり、構成部品や装置全体を取り替えることなく、荷重の異なる対象物品を所望の位置にかつ変位可能に支持することができる荷重支持機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の荷重支持機構は、
固定部材に関して所定の
移動方向に沿って所定の範囲で移動可能な、荷重を支持するための支持部材と、
その一端が
固定部材に固定され、かつ他端が荷重に抗して支持部材にその移動方向に沿った向きに付勢力を発揮するばね部材と、
支持部材又はばね部材の少なくともいずれか一方に、付勢力の方向に関して所定の角度で傾斜するように設けられ、支持部材とばね部材の他端との間で荷重及び付勢力を伝達しかつそれらと共に移動方向に沿って変位す
る第1カム面
と、
固定部材に、付勢力の方向に関して所定の角度で傾斜
するように設けられた第2カム面と、
第1カム面及び第2カム面に当接し、第1カム面と第2カム面との間に保持されるカムフォロアと、
固定部材に設けられ、荷重及び/又は付勢力に対し
て第1カム面に
、付勢力の方向と直交する向き
にその変位を規制する反力を発生する側方支持部とを備え、
第2カム面のカムフォロアへの押圧力が、記支持部材の移動可能な所定の範囲においてその位置によって発生する付勢力の方向に沿った第1方向の成分と、少なくとも付勢力の方向に直交する第2方向の成分とを含み、
第1カム面及び第2カム面が、カムフォロア周りに作用する荷重とばね部材の付勢力と第2カム
面のカムフォロアへの押圧力と側方支持部の第1カム面への反力とが、支持部材の移動可能な所定の範囲において平衡するように設計され、
第2カム面が、そのカムフォロアに対する向きを、異なる大きさの荷重に対して変更可能であり、かつ、カムフォロアに対する向きの変更後も、カムフォロア周りに作用する前記力の平衡状態を保持し得るように設けられていることを特徴とする。
【0011】
ここで、「平衡」とは、本願明細書を通して、或る物体又は部材(例えば、カムフォロア)にいくつかの外力が作用しているときに、それらの合力が0であり、その結果、その物体又は部材が静止している状態にあることをいうものとする。また、前記物体又は部材に作用する外力には、該物体又は部材と他の物体又は部材との間に発生する摩擦力、該物体又は部材に前記外力を作用させる他の物体又は部材において発生する摩擦力が含まれる。
【0012】
このような構成において、第1カム
面からカムフォロアへの押圧力は、前記付勢力の方向に沿った第1方向の成分と、それに直交する第2方向の成分とを含み、この第2方向の成分は側方支持部の第1カム
面への反力である。従って、カムフォロア周りに作用する前記力が平衡状態にあるとき、前記付勢力の方向には、前記荷重と、ばね部材の付勢力と、第2カム面のカムフォロアへの押圧力の第1方向の成分とが平衡し、前記付勢力の方向に直交する方向には、側方支持部の第1カム面への反力、即ち第1カムからカムフォロアへの押圧力の第2方向の成分と、第2カム面のカムフォロアへの押圧力の第2方向の成分とが平衡している。
【0013】
通常、ばね部材の付勢力はその変位によって変動するから、支持部材の位置によって荷重より小さく又は大きくなる。本発明によれば、
カムフォロア周りで前記荷重、付勢力、押圧力及び反力が平衡状態にあるとき、
前記付勢力の方向において、第2カム面のカムフォロアへの押圧力の第1方向の成分が、ばね部材の付勢力が荷重より小さい場合は、これを補助する向きに作用し、荷重より大きい場合は、これを削減する向きに作用することになる。従って、支持部材の移動可能な所定の範囲において、荷重を支持した状態で支持部材を所望の位置に保持しかつ少ない力で簡単に移動させることができる。
【0014】
しかも、本発明の第2カム面は、異なる大きさの荷重に対しても、単にそのカムフォロアへの向きを変更することによって、前記平衡状態を維持して、支持部材を所望の位置に静止させかつ移動可能に保持することができる。このとき、第2カム面や第1カム面又はばね部材を取り替えたり装置全体を交換する必要がないから、有利である。
【0015】
また、ばね部材は、支持部材の全移動範囲において荷重を超える大きさの付勢力を発揮する必要が無い。従って、比較的小型で軽量なものを採用することが可能であり、装置全体の小型化、軽量化を図ることができる。
【0016】
或る実施態様では、第2カム面が、支持部材の移動可能な前記所定の範囲において、第2カム面のカムフォロアへの押圧力の第1方向の成分が前記付勢力の方向に作用する第1の領域と、該第2カム面のカムフォロアへの押圧力の第1方向の成分が前記付勢力の方向とは逆向きに作用する第2の領域とを有する。このように構成すると、第2カム面の前記付勢力の方向に対する傾きの大きさは、第1の領域又は第2の領域の一方が過度に大きくなったり小さくなることがない。従って、支持部材を所望の位置に移動させる際に、カムフォロアを第2カム面の全体に亘って円滑に従動させることができる。
【0017】
別の実施態様では、前記荷重支持機構は、第2カム面を有するカム部材を更に備え、該カム部材が、カムフォロアに対する第2カム面の向きを変更し得るように、固定軸を中心に回転可能に
固定部材に設けられている。これによって、簡単な構造及び少ない部品点数で、異なる大きさの荷重に対応させることができる。
【0018】
更に別の実施態様では、前記荷重支持機構は、
第1カム面が、支持部材と一体に移動方向に沿って変位するように設けられた支持部材のカム面と、ばね部材の他端と一体に移動方向に沿って変位するように設けられたばね部材の他端のカム面とからなり、支持部材のカム面とばね部材の他端のカム面とがそれぞれカムフォロアに当接し、かつ該カムフォロアを挟んで互いに対向し、第2カム面との間で前記カムフォロアを保持する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、添付図面を参照しつつ、本発明の好適な実施態様を詳細に説明する。尚、添付図面において、本明細書全体を通して類似の構成要素には、同様の参照符号を付して表すこととする。
【0021】
図1及び
図2は、本発明による荷重支持機構の好適実施態様である物品支持装置1を概略的に示している。同図に示すように、本実施態様の物品支持装置1は、基部部材2と、支持部材3と、圧縮コイルばねからなるばね部材4と、ばね力伝達部材5と、カム部材6と、カムフォロア部材7とを備える。
【0022】
基部部材2は、垂直方向に延長しかつ上向きに開口する矩形筒状の固定コラム8と、物品支持装置1を床面や作業台面に設置するために固定コラム8の下端に一体に設けられたベースプレート9とを有する。固定コラム8の対向する1対の側面8aには、固定コラム8の長手方向に延長する比較的大きい1対の開口部10が、対向位置に形成されている。
【0023】
支持部材3は、垂直方向に延長しかつ下向きに開口する矩形筒状の可動コラム11と、所望の物品を載置するために可動コラム11の上端に一体に設けられた載置プレート12とを有する。載置プレート12の上面中央には、前記物品を位置決めするための位置決めピン13が突設されている。可動コラム11の対向する1対の側面11aには、可動コラム11の長手方向に関して斜めに、該可動コラムの略全幅に亘って延長する同一形状かつ寸法の1対の第1カム溝14が、対向位置に形成されている。各第1カム溝14は、可動コラム11の中心軸に関して所定の角度で直線状に傾斜する内周上側の端面からなる下向きカム面15を有する。
【0024】
ばね力伝達部材5は、垂直方向に延長しかつ下向きに開口する短い八角形筒状のスライド部16と、該スライド部の上端に一体に設けられた同一形状かつ寸法の1対のカム17とを有する。カム17は、互いにかつスライド部16の対向する或る1対の側面16aと平行に、該スライド部の中心軸に関して鏡面対称に配置された平板カムである。各カム17は、スライド部
16の略全幅に亘って延長し、該スライド部の中心軸に関して所定の角度で直線状に傾斜する上端面からなる上向きカム面18を有する。
【0025】
図3及び
図4に示すように、支持部材3の可動コラム11の内孔11b内には、ばね力伝達部材5が、内孔11bの各内面にスライド部16の隣接する外側面を摺接させて、上下方向に相対的に摺動可能に挿入されている。ばね力伝達部材5は、可動コラム11の中心軸に関して、各カム17とそれに対応する前記可動コラムの第1カム溝14とがそれぞれ同じ側になるように配置される。このとき、下向きカム面15と上向きカム面18とは、互いに傾斜方向を逆向きにして対向するように配置される。
【0026】
カム部材6は、所定の間隔をもって平行に対向配置された同一形状かつ寸法の1対のカムプレート19を有する。両カムプレート19は、それらの片側の上部側縁で連結プレート20により、図面上方から見てコ字状に一体に構成されている。各カムプレート19には、それぞれ上下方向に延長する同一形状かつ寸法の第2カム溝21が、対向位置に形成されている。第2カム溝21は、その内周の
図3において左側、即ち上向きカム面18及び下向きカム面15を向いた側の端面からなる横向きカム面22を有する。横向きカム面22は、その上端から下端まで全長に亘って又は部分的に接線方向の傾きが変化するように、図中右向きに即ち上向きカム面18及び下向きカム面15を向いて凸状に湾曲している。
【0027】
各カムプレート19の下端付近には、その幅方向に延長する下向き凸の弧状をなすカム位置調整溝23が形成され、該溝に沿ってその下側に目盛り24が付されている。更に、各カムプレート19の連結プレート20とは反対側の側縁上端に、カム部材6を揺動可能に枢支するための軸孔25が形成されている。
【0028】
カムフォロア部材7は、例えば金属製の真直ぐな円形ロッドからなり、その外周には、前記ロッドの軸線方向に沿って複数の同一外径の転がり軸受が嵌装されている。これにより、カムフォロア部材7は、後述するように前記各軸受を上向きカム面18、下向きカム面15及び横向きカム面22にそれぞれ当接させて円滑に転動することができる。別の実施例では、前記軸受を省略することもできる。
【0029】
基部部材2の固定コラム8の内孔8b内には、ばね部材4が配置され、その下端が該内孔の底面に当接させて固定されている。ばね力伝達部材5を内孔11b内に装着した可動コラム11は、固定コラム8の内孔8b内に上下方向に相対的に移動可能に挿入される。ばね部材4の上端には、ばね力伝達部材5が、前記上端をスライド部
16の内孔
16a上端面に当接させて上向きに付勢されるように装着されている。
【0030】
固定コラム8の上端には、左右1対のガイドローラー26が、可動コラム11の第1カム溝14を設けた側面11aに直交する他の対向する1対の側面11bに当接するように設けられている。更に可動コラム11の下端の各角部には、ガイドローラー27が、それぞれ側面11bに隣接する固定コラム8の内孔8bの内面に当接するように設けられている。これらのガイドローラー26,27を介して、可動コラム11は固定コラム8によって左右方向に両側から支持されるので、該固定コラムに対して左右にガタついたり変位することなく、上下方向に円滑に移動することができる。
【0031】
カム部材6は、
図2に示すように、固定コラム8にその側方から、該固定コラムの開口部10を設けた各側面8aにそれぞれカムプレート19を重ねるように被せて、各軸孔24にそれぞれ枢支ピン28を挿通しかつ該枢支ピンを固定コラム8上端のねじ孔に螺着させて取り付けられる。これにより、カム部材6は、
図1に想像線で示すように、前記枢支ピンを中心に揺動可能に保持される。更にカム部材6には、位置決めねじ29がカム位置調整溝23に外側から挿通され、その背後の固定コラム8の側面8aに突設したカムプレート固定部30に螺着される。位置決めねじ29を締め付けることによって、カム部材6即ち各カムプレート19が固定コラム8に対して所望の回転位置で固定される。
【0032】
本実施態様では、カム位置調整溝23の下側の目盛り24に、1.5、2、2.5の3つの数字が記されており、物品支持装置1に載置可能な物品の荷重が、1.5〜2.5kgの範囲内であることを示している。
図3の実施態様では、位置決めねじ29が目盛り24の数字「2」に合わされ、荷重2kgの物品を支持するように設定されている。物品の荷重が1.5kgのとき、カムプレート19は、
図1において想像線19’で示す位置に配置され、物品の荷重が2.5kgのとき、想像線19″で示す位置まで回転させて固定される。
【0033】
カムフォロア部材7は、第1カム溝14、第2カム溝22及び固定コラム8の開口部10を挿通してカム17の上側に水平に配置され、その外周面が下向きカム面15、上向きカム面18及び横向きカム面22と当接するように装着される。このとき、カムフォロア部材7の前記ロッドに嵌装される前記転がり軸受は、下向きカム面15に対して転がり軸受71、上向きカム面18に対して転がり軸受72、及び横向きカム面22に対して転がり軸受73をそれぞれ配置し、対応する前記カム面に個別に当接させる。また、第2カム溝22からカムプレート19の外側に突出するカムフォロア部材7の両端には、適当な止め輪を装着して抜け止めすることが好ましい。
【0034】
本実施態様では、第2カム溝21におけるカムフォロア部材7の上下方向の移動範囲が、支持部材3即ち載置プレート12の上下ストロークである。この範囲内で、載置プレート12上の物品Aを昇降し、所望の高さ位置で静止させかつその位置に保持することができる。
【0035】
次に、物品支持装置1の動作及び機能について説明する。以下の説明では、前記物品支持装置が支持する物品の荷重が2kgの場合を標準モード、最小使用荷重1.5kgの場合を軽量モード、最大使用荷重2.5kgの場合を重量モードとする。
【0036】
また、第2カム溝21の横向きカム面22は、カムフォロア部材7との当接位置によって次の3つの領域は分けられる。第1領域S1は、カムフォロア部材7との接点における法線方向が水平方向に関して上向きの領域である。第2領域S2は、前記カムフォロア部材との接点における法線方向が実質的に水平方向の領域である。別言すれば、第2領域S2は、前記カムフォロア部材との接点における接線方向が実質的に垂直方向の領域である。ここで、実質的とは、完全な水平方向よりも僅かに上向き又は下向きであるが、その程度は、本発明の作用効果上又は本実施態様の物品支持装置1の動作もしくは機能上無視できるほどに小さく、水平方向と見なし得る場合を含むという意味である。また、第3領域S3は、カムフォロア部材7との接点における法線方向が水平方向に関して下向きの領域である。
【0037】
図3は、標準モードにおいて、荷重Wの物品Aを載せた載置プレート12が最上位置にある場合を示している。カムフォロア部材7は、横向きカム面22の第1領域S1の上限位置で静止している。
【0038】
図5は、この上限位置においてカムフォロア部材7、固定コラム8、可動コラム11、ばね力伝達部材5及びカムプレート19からなる系に作用する力の平衡状態を模式的に示している。尚、説明を簡単化するため、支持部材3及びばね力伝達部材5の荷重、可動コラム11と固定コラム8及び前記ばね力伝達部材との間の摩擦力は省略する。実際の設計では、これらの要素を考慮しなければならないことは言うまでもなく、前記支持部材及びばね力伝達部材の荷重を、前記カムフォロア部材、固定コラム、可動コラム、ばね力伝達部材及びカムプレートからなる系に作用する力に加え、それらの合力が、前記可動コラムと固定コラム及び前記ばね力伝達部材との間で発生する摩擦力より小さければ、前記平衡状態は保たれる。
【0039】
ここで、ばね定数kの圧縮コイルばねからなるばね部材4のばね力Fsは、前記圧縮コイルばねの軸方向の変位x(ばねの自由長即ち無負荷状態の長さからの変位:ここでは、圧縮方向に正とする)についてFs=k・xで表される。物品Aを最上位置で支持できるように、前記ストロークの上限位置において、前記圧縮コイルばねは、自由長から所定の初期変位量x0だけ予め圧縮され、既に垂直方向上向きに初期ばね力(Fs0=k・x0)を発揮しているように構成されている。これは、支持する荷重に合わせて、カムプレート19を回転させてその固定位置を変化させた場合も同様である。
【0040】
図5において、カムフォロア部材7と下向きカム面15との接点Paでは、物品Aの荷重Wと、カムフォロア部材7から下向きカム面15の法線方向に作用する反力Raと、固定コラム8から可動コラム11に作用する水平方向の反力Rd1とが平衡している。反力Raの垂直方向成分Ra1の大きさは荷重Wの大きさに等しく、水平方向成分Ra2の大きさは固定コラム8からの反力Rd1に等しい。下向きカム面15からカムフォロア部材7を押圧する力Faは、荷重Wと反力Rd1との合力である。
【0041】
カムフォロア部材7と上向きカム面18との接点Pbでは、ばね部材4のばね力Fsと、カムフォロア部材7から上向きカム面18の法線方向に作用する反力Rbと、固定コラム8から可動コラム11を介してばね力伝達部材5に水平方向に作用する反力Rd2とが平衡している。反力Rbの垂直方向成分Rb1の大きさはばね力Fsに等しく、水平方向成分Rb2の大きさは固定コラム8の反力Rd2に等しい。上向きカム面18からカムフォロア部材7を押圧する力Fbは、ばね力Fsと反力Rd2との合力である。
【0042】
カムフォロア部材7と横向きカム面22との接点Pcでは、カムフォロア部材7に下向きカム面15及び上向きカム面18から作用する力Fa、Fbと、横向きカム面22から法線方向に作用する反力Rcとが平衡している。カムフォロア部材7は横向きカム面22の第1領域S1内にあるので、反力Rcは上向きの垂直方向成分Rc1を有する。反力Rcの水平方向成分Rc2の大きさは、可動コラム11及びばね力伝達部材5が固定コラム8から受ける反力Rd1と反力Rd2との合計である。
【0043】
カムフォロア部材7が横向きカム面22上の或る位置で静止しているとき、荷重Wとばね力Fsと反力Rcの垂直方向成分Rc1との間には、力の作用方向を垂直方向上向き正として、次の関係が理論上常に成立する。
W+Fs+Rc1=0
尚、実際の設計では、前述したように各部材の間で摩擦力が発生し、この関係式で表す合力が0でなく、僅かに値を持っていたとしても、その合力が前記各部材間の摩擦力よりも小さければ、平衡状態が保たれる。
【0044】
図3の場合、ばね部材4のばね力Fsが最小の初期ばね力(Fs0=k・x0)であり、荷重Wの大きさよりも小さい。そこで、ばね力Fsに、横向きカム面22から上向きに作用している反力Rcの垂直方向成分Rc1をアシスト力として加えることによって、垂直方向に荷重Wとの平衡を実現している。この状態では、物品A又は載置プレート12を手で押し下げると、その押し下げ力が荷重Wに付加されて、前記平衡が崩れるため、該物品を比較的小さい力で簡単に下降させることができる。
【0045】
載置プレート12を下降させると、カムフォロア部材7は、前記横向きカム面、下向きカム面及び上向きカム面に沿って左右方向に変位しながら、下方に移動する。カムフォロア部材7が横向きカム面22の第1領域S1の範囲内にある間、反力Rcの上向きの垂直方向成分Rc1がばね力Fsを、荷重Wと平衡させるように作用する。
【0046】
ばね部材4のばね力Fsは、カムフォロア部材7に押圧されてばね力伝達部材5が下方に移動し、前記圧縮コイルばねの変位が大きくなるのに対応して増大する。ばね力Fsの増大に伴って、横向きカム面22からの反力Rcの垂直方向成分Rc1によるアシスト力も小さくて済むようになる。従って、横向きカム面22の接線方向の垂直方向に対する傾きも、下方に行くほど小さくなる。
【0047】
下向きカム面15及び上向きカム面18からの押圧力によってカムフォロア部材7が横向きカム面22を水平方向に押圧する力が大きくなるほど、反力Rcの水平方向成分Rc2が大きくなり、従って反力Rc及びその垂直方向成分Rc1が大きくなる。反力Rd1及び反力Rd2は、それぞれ下向きカム面15及び上向きカム面18の垂直方向に対する傾きを小さくすれば大きくなり、大きくすれば小さくなる。下向きカム面15及び上向きカム面18の垂直方向に対する傾きを調整することによって、横向きカム面22に対する適当な押圧力が得られる。
【0048】
別言すれば、横向きカム面22の反力Rcは、該横向きカム面に対する水平方向の押圧力が大きいと、前記横向きカム面の垂直方向に対する傾きを小さくしても、同じ大きさの垂直方向成分Rc1、即ちばね力Fsへの垂直方向上向きのアシスト力が得られる。横向きカム面22は、垂直方向に対する傾きが小さくなると、それだけ緩い即ち湾曲の小さい横向き凸形状に設計することができる。
【0049】
逆に、下向きカム面15及び/又は上向きカム面18の垂直方向に対する傾きを大きくしたり、下向きカム面15又は上向きカム面18の一方を省略することによって、横向きカム面22に対する水平方向の押圧力が小さくなると、それだけ横向きカム面22の反力Rcは小さくなる。ここで、同じ大きさの上向き垂直方向成分Rc1を得るためには、横向きカム面22の垂直方向に対する傾きを大きくしなければならず、それだけきつい即ち湾曲の大きい横向き凸形状になる。
【0050】
標準モードにおいて、荷重Wの物品Aを載せた載置プレート12を
図3の最上位置から中間位置まで押し下げたとき、カムフォロア部材7は、
図3に想像線で示すように、横向きカム面22の第2領域S2の範囲内に位置する。
図6は、この中間位置において、カムフォロア部材7、固定コラム8、可動コラム11、ばね力伝達部材5及びカムプレート19からなる系に作用する力の平衡状態を模式的に示している。同様に簡単化のため、支持部材3及びばね力伝達部材5の荷重、可動コラム11と固定コラム8及び前記ばね力伝達部材との間の摩擦力は省略して説明する。
【0051】
図5の場合と同様に、カムフォロア部材7と下向きカム面15との接点Paでは、物品Aの荷重Wと、カムフォロア部材7から下向きカム面15の法線方向に作用する反力Raと、固定コラム8から可動コラム11に作用する水平方向の反力Rd1とが平衡している。反力Raの垂直方向成分Ra1の大きさは荷重Wと等しく、水平方向成分Ra2の大きさは固定コラム8の反力Rd1と等しい。カムフォロア部材7に下向きカム面15から作用する力Faは、荷重Wと反力Rd1との合力である。
【0052】
カムフォロア部材7と上向きカム面18との接点Pbでは、ばね部材4のばね力Fsと、カムフォロア部材7から上向きカム面18の法線方向に作用する反力Rbと、固定コラム8から可動コラム11を介してばね力伝達部材5に作用する水平方向の反力Rd2とが平衡している。反力Rbの垂直方向成分Rb1の大きさはばね力Fsと等しく、水平方向成分Rb2の大きさは固定コラム8の反力Rd2と等しい。カムフォロア部材7に上向きカム面18から作用する力Fbは、ばね力Fsと反力Rd2との合力である。
【0053】
カムフォロア部材7と横向きカム面22との接点Pcでは、カムフォロア部材7に下向きカム面15及び上向きカム面18から作用する力Fa、Fbと、横向きカム面22から法線方向に作用する反力Rcとが平衡している。この場合、カムフォロア部材7は横向きカム面22の第2領域S2内にあるので、反力Rcは、実質的に水平方向成分だけであり、垂直方向成分を有していない。反力Rcの大きさは、可動コラム11及びばね力伝達部材5に固定コラム8から作用する反力Rd1と反力Rd2との合計である。
【0054】
このようにカムフォロア部材7が横向きカム面22の第2領域S2の範囲に位置するとき、垂直方向にばね部材4のばね力Fsと荷重Wとが実質的に平衡している。従って、ばね力Fsは、横向きカム面22からの反力Rcによるアシスト力を必要としない。この状態でも、物品A又は載置プレート12を手で押し下げ又は押し上げることによって、その力が荷重W又はばね力Fsに付加されて、前記平衡が崩れるため、該物品を比較的小さい力で簡単に昇降させることができる。
【0055】
図7は、同じく標準モードにおいて、荷重Wの物品Aを載せた載置プレート12が最下位置まで押し下げられた場合を示している。カムフォロア部材7は、横向きカム面22の第3領域S3の下限位置で静止している。
【0056】
図8は、この下限位置においてカムフォロア部材7、固定コラム8、可動コラム11、ばね力伝達部材5及びカムプレート19からなる系に作用する力の平衡状態を模式的に示している。同様に簡単化のため、支持部材3及びばね力伝達部材5の荷重、可動コラム11と固定コラム8及び前記ばね力伝達部材との間の摩擦力は省略して説明する。
【0057】
図8において、カムフォロア部材7と下向きカム面15との接点Paでは、物品Aの荷重Wと、カムフォロア部材7から下向きカム面15の法線方向に作用する反力Raと、固定コラム8から可動コラム11に水平方向に作用する反力Rd1とが平衡している。反力Raの垂直方向成分Ra1の大きさは荷重Wと等しく、水平方向成分Ra2の大きさは固定コラム8の反力Rd1と等しい。カムフォロア部材7に下向きカム面15から作用する力Faは、荷重Wと反力Rd1との合力である。
【0058】
カムフォロア部材7と上向きカム面18との接点Pbでは、ばね部材4のばね力Fsと、上向きカム面18の法線方向にカムフォロア部材7からの反力Rbと、固定コラム8から可動コラム11を介してばね力伝達部材5に水平方向に作用する反力Rd2とが平衡している。反力Rbの垂直方向成分Rb1の大きさはばね力Fsと等しく、水平方向成分Rb2の大きさは固定コラム8の反力Rd2と等しい。上向きカム面18からカムフォロア部材7を押圧する力Fbは、ばね力Fsと反力Rd2との合力である。
【0059】
カムフォロア部材7と横向きカム面22との接点Pcでは、カムフォロア部材7に下向きカム面15及び上向きカム面18から作用する力Fa、Fbと、横向きカム面22から法線方向に作用する反力Rcとが平衡している。カムフォロア部材7は横向きカム面22の第3領域S3内にあるので、反力Rcは下向きの垂直方向成分Rc1を有する。反力Rcの水平方向成分Rc2の大きさは、可動コラム11及びばね力伝達部材5が固定コラム8から受ける反力Rd1と反力Rd2との合計である。
【0060】
図7の場合、ばね部材4の変位が最大で、ばね力Fsが最大であり、その大きさは荷重Wよりも大きい。そこで、横向きカム面22から下向きに作用している反力Rcの垂直方向成分Rc1が、ばね力Fsによる上向きの付勢力即ち押し上げ力を削減する向きに作用することによって、垂直方向に荷重Wとの平衡を実現している。
【0061】
この状態でも、物品A又は載置プレート12を手で押し上げると、その押し上げ力がばね力Fsに付加されて、前記平衡が崩れるため、該物品を比較的小さい力で簡単に上昇させることができる。載置プレート12を上昇させると、カムフォロア部材7は、横向きカム面22、下向きカム面15及び上向きカム面18に沿って左右方向に変位しながら、上方へ移動する。カムフォロア部材7が横向きカム面22の第3領域S3の範囲内にある間、反力Rcの下向きの垂直方向成分Rc1は、ばね部材4のばね力Fsによる押し上げ力を減じて荷重Wと平衡させる向きに作用する。
【0062】
ばね部材4のばね力Fsは、カムフォロア部材7に抗してばね力伝達部材5が上方に移動し、前記圧縮コイルばねの変位が小さくなるのに対応して減少する。これに伴って、カムプレート19からの反力Rcの垂直方向成分Rc1も、小さくて済むようになる。従って、横向きカム面22の接線方向の垂直方向に対する傾きも、上方に行くほど小さくなる。
【0063】
第3領域S3においても、下向きカム面15及び上向きカム面18からの押圧力によってカムフォロア部材7が横向きカム面22を水平方向に押圧する力が大きくなるほど、反力Rcの水平方向成分Rc2が大きくなり、従って反力Rc及びその垂直方向成分Rc1が大きくなる。同様に、反力Rd1及び反力Rd2は、それぞれ下向きカム面15及び上向きカム面18の垂直方向に対する傾きを小さくすれば大きくなり、大きくすれば小さくなる。下向きカム面15及び上向きカム面18の垂直方向に対する傾きを調整することによって、横向きカム面22に対する適当な押圧力が得られる。
【0064】
別言すれば、横向きカム面22の反力Rcは、該横向きカム面に対する水平方向の押圧力が大きいと、前記横向きカム面の垂直方向に対する傾きを小さくしても、同じ大きさの垂直方向成分Rc1、即ち前記押し上げ力を削減する垂直方向下向きの力が得られる。横向きカム面22は、垂直方向に対する傾きが小さくなると、それだけ緩い即ち湾曲の小さい横向き凸形状に設計することができる。
【0065】
逆に、下向きカム面15及び/又は上向きカム面18の垂直方向に対する傾きを大きくしたり、下向きカム面15又は上向きカム面18の一方を省略することによって、横向きカム面22に対する水平方向の押圧力が小さくなると、それだけ横向きカム面22の反力Rcは小さくなる。ここで、同じ大きさの下向き垂直方向成分Rc1を得るためには、横向きカム面22の垂直方向に対する傾きを大きくしなければならず、それだけきつい即ち湾曲の大きい横向き凸形状になる。
【0066】
横向きカム面22全体を見ると、垂直方向に対して傾斜した下向きカム面15と上向きカム面18とによって、カムフォロア部材7が横向きカム面22を水平方向に押圧する力を適当な大きさに設定することにより、必要かつ十分な大きさの垂直方向成分Rc1を確保しつつ、第1〜第3領域S1〜S3を通して緩やかな即ち湾曲の小さい横向き凸形状にすることができる。これによって、第2カム溝21及びカムプレート19の水平方向の寸法を比較的小さくすることができ、物品支持装置1自体の小型化が図られる。また、
図1に示すように、カム部材6を枢支ピン28を中心揺動させたときも、固定コラム8から側方へのはみ出しを少なくできるので、有利である。
【0067】
本実施態様によれば、横向きカム面22の全領域で、カムフォロア部材7、固定コラム8、可動コラム11、ばね力伝達部材5及びカムプレート19からなる系に作用する物品Aの荷重W、ばね部材4のばね力Fs、固定コラム8からの反力、及びカムプレート19からの反力が、カムフォロア部材7の周りで平衡している。それにより、物品Aを載せた載置プレート12をその上下ストロークの範囲において、所望の高さ位置に静止させかつその位置を保持し、また比較的少ない力で簡単に昇降させることができる。
【0068】
また、実際には、載置プレート12を昇降させる際に、上記説明で省略した可動コラム11と固定コラム8及びばね力伝達部材5との間に摩擦等の抵抗が発生する。本実施態様では、固定コラム8の上端に設けたガイドローラー26と、可動コラム11の下端の各角部に設けたガイドローラー27とによって、可動コラム11と固定コラム8間の摩擦による抵抗を少なくし、それが載置プレート12の昇降動作に及ぼす影響を解消又は緩和して、円滑な動作を確保している。
【0069】
図9及び
図10は、軽量モードに設定された物品支持装置1を示している。軽量モードは、カムプレート19を枢支ピン28を中心に図中時計回りに回転させ、位置決めねじ29を目盛り24の数字「1.5」に合わせて締め付けて固定することによって設定される。
図3の標準モードの場合と同様に、横向きカム面22は、カムフォロア部材7との接点における法線方向が水平方向に関して上向きの第1領域S1と、前記接線方向が実質的に垂直方向の第2領域S2と、前記法線方向が水平方向に関して下向きの第3領域S3とに分けられる。
【0070】
図9は、物品Aを載せた載置プレート12が最上位置にある場合を示している。カムフォロア部材7は、横向きカム面22の第1領域S1の上限位置で静止している。この位置において、カムフォロア部材7、固定コラム8、可動コラム11、ばね力伝達部材5及びカムプレート19からなる系には、物品Aの荷重W、ばね部材4のばね力Fs、固定コラム8からの反力、及びカムプレート19からの反力が作用し、カムフォロア部材7の周りで平衡している。
【0071】
第1領域S1では、標準モードについて
図5に関連して説明したように、ばね部材4の変位が小さく、そのばね力Fsは物品Aの荷重Wより小さい。カムフォロア部材7に横向きカム面22から作用する反力Rcは、上向きの垂直方向成分を含んでいる。この反力Rcの上向き垂直方向成分をアシスト力としてばね力Fsに加えることによって、垂直方向に荷重Wとの平衡を実現している。
【0072】
物品Aを載せた載置プレート12を
図9の最上位置から中間位置まで押し下げたとき、カムフォロア部材7は、
図9に想像線で示すように、横向きカム面22の第2領域S2の範囲内に位置する。この中間位置でも、カムフォロア部材7、固定コラム8、可動コラム11、ばね力伝達部材5及びカムプレート19からなる系には、物品Aの荷重W、ばね部材4のばね力Fs、固定コラム8からの反力、及びカムプレート19からの反力が作用し、カムフォロア部材7の周りで平衡している。
【0073】
第2領域S2では、標準モードについて
図6に関連して説明したように、横向きカム面22からの反力Rcは実質的に水平方向成分だけであり、垂直方向成分を有していない。垂直方向には、ばね部材4のばね力Fsと荷重Wとが実質的に平衡している。
【0074】
図10は、物品Aを載せた載置プレート12が最下位置にある場合を示している。カムフォロア部材7は、横向きカム面22の第3領域S3の下限位置で静止している。この位置でも、カムフォロア部材7、固定コラム8、可動コラム11、ばね力伝達部材5及びカムプレート19からなる系には、物品Aの荷重W、ばね部材4のばね力Fs、固定コラム8からの反力、及びカムプレート19からの反力が作用し、カムフォロア部材7の周りで平衡している。
【0075】
第3領域S3では、標準モードについて
図8に関連して説明したように、ばね部材4の変位が大きく、そのばね力Fsは物品Aの荷重Wより大きい。カムフォロア部材7に横向きカム面22から作用する反力Rcは、下向きの垂直方向成分を含んでいる。この反力Rcの下向き垂直方向成分が、ばね力Fsによる押し上げ力を削減する向きに作用することによって、垂直方向に荷重Wとの平衡を実現している。
【0076】
図11及び
図12は、重量モードに設定された物品支持装置1を示している。重量モードは、カムプレート19を枢支ピン28を中心に図中反時計回りに回転させ、位置決めねじ29を目盛り24の数字「2.5」に合わせて締め付けて固定することにより設定される。
図3の標準モードの場合と同様に、横向きカム面22は、カムフォロア部材7との接点における法線方向が水平方向に関して上向きの第1領域S1と、前記接線方向が実質的に垂直方向の第2領域S2と、前記法線方向が水平方向に関して下向きの第3領域S3とに分けられる。
【0077】
図11は、物品Aを載せた載置プレート12が最上位置にある場合を示している。カムフォロア部材7は、横向きカム面22の第1領域S1の上限位置で静止している。この位置において、カムフォロア部材7、固定コラム8、可動コラム11、ばね力伝達部材5及びカムプレート19からなる系には、物品Aの荷重W、ばね部材4のばね力Fs、固定コラム8からの反力、及びカムプレート19からの反力が作用し、カムフォロア部材7の周りで平衡している。
【0078】
第1領域S1では、標準モード及び軽量モードについて上述したように、ばね部材4の変位が小さく、そのばね力Fsは物品Aの荷重Wより小さい。カムフォロア部材7に横向きカム面22から作用する反力Rcは、上向きの垂直方向成分を含んでいる。この反力Rcの上向き垂直方向成分をアシスト力としてばね力Fsに加えることによって、垂直方向に荷重Wとの平衡を実現している。
【0079】
物品Aを載せた載置プレート12を
図11の最上位置から中間位置まで押し下げたとき、カムフォロア部材7は、
図11に想像線で示すように、横向きカム面22の第2領域S2の範囲内に位置する。この中間位置でも、カムフォロア部材7、固定コラム8、可動コラム11、ばね力伝達部材5及びカムプレート19からなる系には、物品Aの荷重W、ばね部材4のばね力Fs、固定コラム8からの反力、及びカムプレート19からの反力が作用し、カムフォロア部材7の周りで平衡している。
【0080】
第2領域S2では、標準モード及び軽量モードについて上述したように、横向きカム面22からの反力Rcは実質的に水平方向成分だけであり、垂直方向成分を有していない。垂直方向には、ばね部材4のばね力Fsと荷重Wとが実質的に平衡している。
【0081】
図12は、物品Aを載せた載置プレート12が最下位置にある場合を示している。カムフォロア部材7は、横向きカム面22の第3領域S3の下限位置で静止している。この位置において、カムフォロア部材7、固定コラム8、可動コラム11、ばね力伝達部材5及びカムプレート19からなる系には、物品Aの荷重W、ばね部材4のばね力Fs、固定コラム8からの反力、及びカムプレート19からの反力が作用し、カムフォロア部材7の周りで平衡している。
【0082】
第3領域S3では、標準モード及び軽量モードについて上述したように、ばね部材4の変位が大きく、そのばね力Fsは物品Aの荷重Wより大きい。カムフォロア部材7に横向きカム面22から作用する反力Rcは、下向きの垂直方向成分を含んでいる。この反力Rcの下向き垂直方向成分が、ばね力Fsによる押し上げ力を削減する向きに作用することによって、垂直方向に荷重Wとの平衡を実現している。
【0083】
図9及び
図10を
図3及び
図7と対比すると、軽量モードでは、第1〜第3領域S1〜S3が全体として、標準モードの場合よりも上方にシフトしている。そのため、標準モードよりも第1領域S1は狭く、第3領域S3は広くなっている。
【0084】
図11及び
図12を
図3及び
図7と対比すると、重量モードでは、第1〜第3領域S1〜S3が全体として、標準モードの場合よりも下方にシフトしている。そのため、標準モードよりも第1領域S1は広く、第3領域S3は狭くなっている。
【0085】
軽量モードでは、標準モードよりも物品Aの荷重Wが小さいのに、標準モードと同じばね部材4を使用しているので、相対的に物品Aを押し上げる力が大きくなっている。そのため、横向きカム面22において、ばね部材4の変位が小さい上方の領域で、垂直方向に荷重Wと平衡させるためにばね力Fに必要なアシスト力が、標準モードの場合よりも小さくてよい。更に、標準モードの場合よりも上方の位置から、アシスト力無しで垂直方向にばね力Fsと荷重Wとを平衡させることができる。逆に、ばね部材4の変位が大きい下方の領域では、前記押し上げ力を削減するために、下向きの力を標準モードの場合よりも上方の位置から作用させる必要がある。
【0086】
これに対し、重量モードでは、標準モードよりも物品Aの荷重Wが大きいのに、標準モードと同じばね部材4を使用しているので、相対的に物品Aを押し上げる力が小さくなっている。そのため、横向きカム面22において、ばね部材4の変位が小さい上方の領域では、垂直方向に荷重Wと平衡させるためにばね力Fsに必要なアシスト力が、標準モードの場合よりも大きい。更に、標準モードの場合よりも下方の位置で、アシスト力無しで垂直方向にばね力Fsを荷重Wと平衡させることができる。逆に、ばね部材4の変位が大きい下方の領域で、前記押し上げ力を削減する下向きの力は、標準モードの場合よりも小さくてよい。
【0087】
本実施態様では、上述したようにカムプレート19を回転させて、カムフォロア部材7に対する横向きカム面22全体の向きを変更することによって、前記カムプレート即ちカム部材6を取り替えることなく、軽量モード又は重量モードに対応して、第1〜第3領域S1〜S3を
図9又は
図11に示すように上方又は下方へシフトすることを実現している。しかも、横向きカム面22のカムプロフィールは、第1〜第3領域S1〜S3をシフトさせても、その全領域で物品を載せた載置プレート12を所望の高さで静止させ得るように設計され形成されている。
【0088】
上記説明は、本実施態様において物品の荷重Wが1.5kg、2kg、2.5kgの場合についてなされたものであるが、本実施態様は、当然ながら、物品支持装置1に載置可能な物品の荷重範囲で同様に適用することができる。横向きカム面22は、支持する荷重に合わせてカムプレート19を所定の位置に固定したとき、その全領域で物品を載せた載置プレート12を所望の高さで静止させ得るカムプロフィールに設計され形成されている。
【0089】
また、別の実施態様では、可動コラム11の下向きカム面15又はばね力伝達部材5の上向きカム面18のいずれか一方を省略することができる。その場合、カム面を省略した可動コラム11又はばね力伝達部材5の、カムフォロア部材7が当接する部分は、荷重W又はばね力Fsの方向即ち垂直方向の力のみを受ければよいから、カムフォロア部材7が水平方向に自由に変位し得るように、水平方向に或る長さを有する平坦な面で形成することができる。また、残した下向きカム面15又は上向きカム面18は、その垂直方向に関する傾きを本実施態様の場合より大きくすることによって、横向きカム面22に本実施態様と同程度の押圧力を作用させることができる。
【0090】
以上、本発明の好適な実施態様について説明したが、本発明は、上記実施態様に限定されるものでなく、その技術的範囲内において様々な変形又は変更を加えて実施することができる。例えば、可動コラムの下向きカム面及びカムプレートの横向きカム面は、上述したカム溝の内周縁以外に、公知の様々な形態により形成することができる。また、物品支持装置1の使用可能な荷重範囲は様々に設定することができ、それに対応して、前記可動コラムの下向きカム面、前記ばね力伝達部材の上向きカム面、及び前記カムプレートの横向きカム面は、様々なカムプロフィールに設計することができる。更に、ばね部材は、上述した圧縮コイルばね以外に、板ばね、渦巻きばね等の異なる形状のものや、空気ばね等の流体ばね、ゴム等の弾性材料や他の非金属材料からなるもの等、公知の様々なばねを適用することができる。