(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6283197
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】除菌、殺菌又は減菌装置及び除菌、殺菌又は減菌方法
(51)【国際特許分類】
A61L 2/14 20060101AFI20180208BHJP
A61L 2/238 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
A61L2/14
A61L2/238
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-221151(P2013-221151)
(22)【出願日】2013年10月24日
(65)【公開番号】特開2015-80682(P2015-80682A)
(43)【公開日】2015年4月27日
【審査請求日】2016年10月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】504237050
【氏名又は名称】独立行政法人国立高等専門学校機構
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】川崎 仁晴
(72)【発明者】
【氏名】大島 多美子
【審査官】
安孫子 由美
(56)【参考文献】
【文献】
中国特許出願公開第103008293(CN,A)
【文献】
再公表特許第2005/089818(JP,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0212254(US,A1)
【文献】
特開2003−310719(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0198570(US,A1)
【文献】
特開2011−055898(JP,A)
【文献】
特表2010−518257(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0187684(US,A1)
【文献】
特開2012−177158(JP,A)
【文献】
特開2000−061414(JP,A)
【文献】
特開2009−088535(JP,A)
【文献】
特開昭52−156074(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L,B08B
JDreamIII(JST)
Thomson Innovation
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透過窓を有する真空槽と、
該真空槽の内部に配置され、前記透過窓を介して外部から入射されるパルスレーザ光が照射されるターゲットと、
該ターゲットに対向するように配置され、除菌、殺菌又は減菌対象物を載置する載置手段とを備え、
前記ターゲットの表面から発生するプラズマプルームが前記除菌、殺菌又は減菌対象物に照射される
ことを特徴とする除菌、殺菌又は減菌装置。
【請求項2】
前記載置手段は、前記ターゲットと対向する方向において接離自在となるように設けられ、
該載置手段の接離動作により、前記除菌、殺菌又は減菌対象物が前記プラズマプルームのエネルギーの異なる任意の電離層まで移動される
ことを特徴とする請求項1に記載の除菌、殺菌又は減菌装置。
【請求項3】
前記ターゲットは、殺菌効果のある金属で構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の除菌、殺菌又は減菌装置。
【請求項4】
真空槽の透過窓を介して入射される外部からのパルスレーザ光を前記真空槽の内部に配置されたターゲットに照射させる工程と、
該ターゲットに対向するように配置される載置手段に載置された除菌、殺菌又は減菌対象物に前記ターゲットの表面から発生するプラズマプルームを照射させる工程とを有する
ことを特徴とする除菌、殺菌又は減菌方法。
【請求項5】
前記載置手段を前記ターゲットと対向する方向において接離させ、前記除菌、殺菌又は減菌対象物を前記プラズマプルームのエネルギーの異なる任意の電離層まで移動させる工程を有することを特徴とする請求項4に記載の除菌、殺菌又は減菌方法。
【請求項6】
前記ターゲットは、殺菌効果のある金属で構成されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の除菌、殺菌又は減菌方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルスレーザアブレーション(PLA)法を用いて環境浄化を行う
除菌、殺菌又は減菌装置及び
除菌、殺菌又は減菌方法に関する。ここで、本発明では、環境浄化とは除菌、殺菌又は減菌などを行うことを意味するものとする。
【背景技術】
【0002】
近年、プラズマの応用の一つとして環境応用があり、環境浄化(除菌、殺菌
又は減菌などを行うこと)のための方法が開発されている。そして、医療機関などにおいてはすでに利用されつつある。
【0003】
ところが、環境浄化(除菌、殺菌
又は減菌などを行うこと)の過程は十分には調べられておらず、これらの効果が十分であるとは言い難い。さらに、最近では、熱や薬物などでは駆除することができない狂牛病原や悪性のタンパク質の殺傷も望まれているが、十分な成果は現れていない。
【0004】
これは、これまでの環境浄化(除菌、殺菌
又は減菌などを行うこと)において安全性を求める余り、弱電離大気圧グロー放電プラズマが利用されてきたことに起因し、十分な除菌、殺菌
又は減菌ができなかった可能性があるためである。
【0005】
そこで、環境浄化(除菌、殺菌
又は減菌などを行うこと)を行う方法として、特許文献1に示されているパルスレーザアブレーション(PLA)法を利用することが考えられる。これは、ケイ素やタングステンなどの材料の活性層がコートされる基材にパルスレーザービームを照射し、そのエネルギーで射出したプラズマプルームを構成する材料粒子をたとえば基板上に輸送することにより、その基板上に薄膜を堆積させるようにしたものである。つまり、そのパルスレーザービームを照射することで発生するプラズマプルームのエネルギーを利用することにより、環境浄化(除菌、殺菌
又は減菌などを行うこと)を行うことができるものと考えられる。
【0006】
なお、環境浄化(除菌、殺菌
又は減菌などを行うこと)を行うものとして、特許文献2に示されている梱包用消毒方法が知られている。これは、高輝度光源を持つ最大出力のパルス放射装置を用い、包装を通じてその中に含まれる固体、液体、気体又はそれらの組み合わせたものを処理するようにしたものである。
【0007】
また、特許文献3に示されている、滅菌放射線を用いる治療的流体の病原体の不活性化のためのデバイスも知られている。これは、ベルトチャンバにより連続しかつ薄い流体流路を形成し、その流体流路を通過する流体にプレートを通過する滅菌放射線が照射されるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2008−513781号公報(特願2007−532463)
【特許文献2】特表2004−513034号公報(特願2002−540997)
【特許文献3】特表2003−520643号公報(特願2001−554722)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、上述した特許文献1のパルスレーザアブレーション(PLA)法を利用する方法では、基本的にたとえば基板上に薄膜を堆積させることを示したものであり、環境浄化(除菌、殺菌
又は減菌などを行うこと)を行うための手段が備わっていない。
【0010】
また、特許文献2の梱包用消毒方法では、包装を通じてその中に含まれる固体、液体、気体又はそれらの組み合わせたものにレーザそのものを照射して処理するものであることから、そのレーザの特性にマッチした環境浄化(除菌、殺菌
又は減菌などを行うこと)は可能であるものと考えられる。しかしながら、そのレーザの特性にマッチしないものについては環境浄化(除菌、殺菌
又は減菌などを行うこと)が確実に行われないおそれがあるという問題があった。
【0011】
また、特許文献3の滅菌放射線を用いる方法では、流体流路を通過する流体にプレートを通過する滅菌放射線を照射するものであることから、滅菌放射線の特性にマッチした環境浄化(除菌、殺菌
又は減菌などを行うこと)は可能であるものと考えられるが、その滅菌放射線の特性にマッチしないものについては環境浄化(除菌、殺菌
又は減菌などを行うこと)が確実に行われないおそれがあるという問題があった。
【0012】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、環境浄化(除菌、殺菌及び減菌などを行うこと)を確実に行うことができる
除菌、殺菌又は減菌装置及び
除菌、殺菌又は減菌方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の
除菌、殺菌又は減菌装置は、透過窓を有する真空槽と、該真空槽の内部に配置され、前記透過窓を介して外部から入射されるパルスレーザ光が照射されるターゲットと、該ターゲットに対向するように配置され、除菌、殺菌又は減菌対象物を載置する載置手段とを備え、前記ターゲットの表面から発生するプラズマプルームが前記除菌、殺菌又は減菌対象物に照射されることを特徴とする。
また、前記載置手段は、前記載置手段は、前記ターゲットと対向する方向において接離自在となるように設けられ、該載置手段の接離動作により、前記除菌、殺菌又は減菌対象物が前記プラズマプルームのエネルギーの異なる任意の電離層まで移動されることを特徴とする。
また、前記ターゲットは、殺菌効果のある金属で構成されていることを特徴とする。
本発明の
除菌、殺菌又は減菌方法は、真空槽の透過窓を介して入射される外部からのパルスレーザ光を前記真空槽の内部に配置されたターゲットに照射させる工程と、該ターゲットに対向するように配置される載置手段に載置された除菌、殺菌又は減菌対象物に前記ターゲットの表面から発生するプラズマプルームを照射させる工程とを有することを特徴とする。
また、前記載置手段を前記ターゲットと対向する方向において接離させ、前記除菌、殺菌又は減菌対象物を前記プラズマプルームのエネルギーの異なる任意の電離層まで移動させる工程を有することを特徴とする。
また、前記ターゲットは、殺菌効果のある金属で構成されていることを特徴とする。
本発明の
除菌、殺菌又は減菌装置及び
除菌、殺菌又は減菌方法では、真空槽の透過窓を介して入射される外部からのパルスレーザ光を真空槽の内部に配置されたターゲットに照射させると、そのターゲットの表面からプラズマプルームが発生する。そして、ターゲットに対向するように配置される載置手段に載置された除菌、殺菌又は減菌対象物にターゲットの表面から発生したプラズマプルームが照射される。
ここで、パルスレーザ光が照射された直後において、ターゲットの極近傍で発生するプラズマプルームは完全電離状態になっていると考えられ、高いエネルギーを持っていることが知られている。
また、ターゲットの表面から離れるに従い、エネルギーが低くなり、電子やイオンの密度が低くなることも知られている。また、ほとんどがラジカル粒子のみの部分も存在していることも知られている。
そこで、これまでほとんど殺菌できなかったような長寿命であったり、強固であったりする除菌対象菌に対しては、高いエネルギーを有する電離層を利用することで、環境浄化(除菌、殺菌又は減菌などを行うこと)を確実に行うことができる。
また、中間又は低いエネルギーを有する電離層を利用することで、下地となるもの(殺菌してはならないもの)をあまり壊さないようにしつつ、環境浄化(除菌、殺菌又は減菌などを行うこと)を確実に行うことができる。
また、プラズマプルームからはUV(ultraviolet)、VUV(vacuum ltraviolet)も発生するため、これらのUV、VUVが
除菌、殺菌又は減菌対象物に照射されることで、そのUV、VUVによる環境浄化(除菌、殺菌又は減菌などを行うこと)も可能となる。
さらには、上述したように、プラズマプルームにはほとんどがラジカル粒子のみの部分も存在しているため、そのラジカル粒子のみの部分を利用することでの環境浄化(除菌、殺菌又は減菌などを行うこと)を確実に行うことも可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の
除菌、殺菌又は減菌装置及び
除菌、殺菌又は減菌方法によれば、高エネルギーから低エネルギーまでの各種電離層を有するプラズマプルームを除菌、殺菌又は減菌対象物に照射させるようにしているため、環境浄化(除菌、殺菌又は減菌などを行うこと)を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の
除菌、殺菌又は減菌装置の一実施形態を示す図である。
【
図2】
図1の
除菌、殺菌又は減菌装置の
除菌、殺菌又は減菌方法を説明するための図である。
【
図3】
図1の
除菌、殺菌又は減菌装置の
除菌、殺菌又は減菌方法を説明するための図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の
除菌、殺菌又は減菌装置の一実施形態を、
図1〜
図3を参照しながら説明する。まず、
図1に示すように、
除菌、殺菌又は減菌装置10は真空槽11を備えている。なお、図示の例では、真空槽11が円形状をなしているが、この形状に限るものではなく、楕円形状や多角形状であってもよい。
【0017】
真空槽11には、透過窓12、13が設けられている。透過窓12からは、図示しないNd−YAGレーザの集光レンズ21を介して出力されるパルスレーザ光20が真空槽11の内部に照射されるようになっている。
【0018】
なお、Nd−YAGレーザは、波長が1064nmの組織深達性の高いレーザ光を出力するものであって、医療機関などにおいて利用されている。また、パルスレーザ光20は、そのレーザ光の第2高波長の532nmが利用されるようになっている。
【0019】
透過窓13からは、たとえば菌の状態(除菌、殺菌
又は減菌が行われたかどうか)を検出するための赤外光22が真空槽11の内部に照射されるようになっている。なお、菌の状態を検出することについては後述する。
【0020】
また、真空槽11には、ターゲット14を支持する支持アーム15が外部から内部にかけて貫通させて配置されている。ここで、ターゲット14とは、上述したパルスレーザ光20が照射されるものであって、殺菌効果のあるAg、銅などの遷移金属で構成されている。なお、ターゲット14としては、これらの遷移金属に限らず、亜鉛などの他の金属を用いてもよい。
【0021】
このように、ターゲット14を殺菌効果のあるAg、銅などの遷移金属で構成することで、パルスレーザ光20の照射による電離によって発生する殺菌効果のあるイオンが菌などに対して有効に作用することになる。
【0022】
ここで、ターゲット14からは、パルスレーザ光20が照射されることで、図示のようにプラズマプルーム23が発生する(パルスレーザアブレーション(PLA)法)。また、プラズマプルーム23は、ターゲット14から離れる方向に向けて順に高電離層23a、中電離層23b、低電離層23cとなっている。
【0023】
すなわち、パルスレーザ光20が照射された直後において、ターゲット14の極近傍で発生するプラズマプルーム23は完全電離状態になっていると考えられ、高いエネルギーを持っていることが知られている。
【0024】
また、ターゲット14の表面から離れるに従い、エネルギーが低くなり、電子やイオンの密度が低くなることも知られている。また、ほとんどがラジカル粒子のみの部分も存在していることも知られている。
【0025】
そこで、本実施形態では、説明の便宜上、プラズマプルーム23をターゲット14から離れる方向に向けて順に高電離層23a、中電離層23b、低電離層23cとして示している。そして、これらの高電離層23a、中電離層23b、低電離層23cを適宜利用することで、環境浄化(除菌、殺菌
又は減菌)が確実に行われるようになっているが、その詳細については後述する。
【0026】
また、ターゲット14を支持する支持アーム15は、真空槽11に対して回転自在となるように配置されている。なお、支持アーム15は、回転自在となるように配置されていなくてもよい。
【0027】
また、真空槽11の内部には、矢印方向に移動自在とされた可動アーム16が配置されている。なお、可動アーム16の移動方向は、上述した支持アーム15と対向する方向となっている。また、可動アーム16には、除菌、殺菌及び減菌などが行われる環境浄化
(除菌、殺菌又は減菌)対象物24が載置される載置台17が取り付けられている。
【0028】
そして、可動アーム16の移動により、載置台17はターゲット14と対向する方向においてターゲット14に対し接離するようになっている。このような載置台17の移動により、環境浄化
(除菌、殺菌又は減菌)対象物24がプラズマプルーム23の高電離層23a、中電離層23b、低電離層23cのいずれかに位置するようになっている。
【0029】
なお、載置台17の移動量に際しては、プラズマプルーム23の高電離層23a、中電離層23b、低電離層23cのそれぞれの厚みを予め測定しておき、その測定結果に基づいて設定しておけばよい。
【0030】
次に、上述した
除菌、殺菌又は減菌装置10による
除菌、殺菌又は減菌方法について説明する。まず、
図2に示すように、
除菌、殺菌又は減菌装置10の近傍には、モニター31を有するパソコン30に接続されたMCT検出器40が配置されている。
【0031】
ここで、MCT検出器40は、HgCdTe(水銀カドミウムテルル)を組成にした量子型の半導体検出器であり、略称でMCT(Mercury Cadmium Telluride)検出器と呼ばれている。また、このMCT検出器40は、液体窒素などで低温にされて熱励起による自由キャリアの生成を抑えている。
【0032】
また、MCT検出器40は、環境浄化
(除菌、殺菌又は減菌)対象物24からの赤外光(反射X線を含む)を反射させる反射鏡41と、この反射鏡41からの赤外光(反射X線を含む)を集光する凹面の反射鏡42、43と、これらの反射鏡42、43で集光された赤外光(反射X線を含む)を検出する微小面積の受光面44とを備えている。
【0033】
そして、環境浄化が行われるとき、上述した真空槽11の内部に配置されているターゲット14に向けてパルスレーザ光20が照射される。このとき、ターゲット14の表面が気化(昇華)することで、プラズマプルーム23が発生する(パルスレーザアブレーション(PLA)法)。
【0034】
ここで、プラズマプルーム23は、たとえば
図3に示すような様子として観測される。すなわち、同図は、ICCD(Intensified CCD)カメラ50によってプラズマプルーム23の全体を撮像したものを示すものである。
【0035】
なお、同図に示すt1、t2、t3は、パルスレーザ光20をターゲット14に照射してからの経過時間(たとえば0.1秒後、1秒後、10秒後など)を示している。また、側面とは、照射されるパルスレーザ光20を横から見たものであり、パルスレーザ光20が右から左、又は左から右に向かって動くように見える。
【0036】
また、正面とは、パルスレーザ光20が照射される方向から見たものであり、パルスレーザ光20が点に見える。
【0037】
ここで、プラズマプルーム23は、上述したように、ターゲット14から離れる方向に向けて順に高電離層23a、中電離層23b、低電離層23cとなっている。このとき、上述した可動アーム16の移動により、載置台17がターゲット14と対向する方向に接離すると、環境浄化
(除菌、殺菌又は減菌)対象物24がプラズマプルーム23の高電離層23a、中電離層23b、低電離層23cのいずれかに位置する。
【0038】
そして、いずれかの高電離層23a、中電離層23b、低電離層23cのプラズマプルーム23が環境浄化
(除菌、殺菌又は減菌)対象物24に照射されることになる。このように、環境浄化
(除菌、殺菌又は減菌)対象物24をプラズマプルーム23の高電離層23a、中電離層23b、低電離層23cのいずれかに位置させることで、それぞれの高電離層23a、中電離層23b、低電離層23cを選択的に利用することが可能となる。
【0039】
この場合、これまでほとんど殺菌できなかったような長寿命であったり、強固であったりする除菌対象菌に対しては、高電離層23aを利用することで、環境浄化(除菌、殺菌
又は減菌などを行うこと)が確実に行われることになる。
【0040】
また、中電離層23b又は低電離層23cを利用することで、下地となるもの(殺菌してはならないもの)をあまり壊さないようにしつつ、環境浄化(除菌、殺菌
又は減菌などを行うこと)を確実に行うことが可能となる。
【0041】
また、プラズマプルーム23から発生するUV(ultraviolet)、VUV(vacuum ltraviolet)も環境浄化対象物24に照射されるため、そのUV、VUVによる環境浄化(除菌、殺菌
又は減菌などを行うこと)が可能となる。さらには、上述したように、プラズマプルーム23にはほとんどがラジカル粒子のみの部分も存在しているため、そのラジカル粒子のみの部分を利用することでの環境浄化(除菌、殺菌
又は減菌などを行うこと)も可能となる。
【0042】
また、上述したように、ターゲット14が殺菌効果のあるAg、銅などの遷移金属で構成されているため、パルスレーザ光20の照射による電離によって発生する殺菌効果のあるイオンが菌などに対して有効に作用する。
【0043】
また、赤外光22が透過窓13を介し真空槽11の内部の環境浄化
(除菌、殺菌又は減菌)対象物24に向けて照射されると、環境浄化
(除菌、殺菌又は減菌)対象物24から赤外光(反射X線を含む)が反射される。その反射された赤外光(反射X線を含む)は、反射鏡41を介し凹面の反射鏡42、43で集光されて微小面積の受光面44で検出される。
【0044】
そして、このMCT検出器40からの出力信号がパソコン30に取り込まれると、フーリエ変換された赤外スペクトルがモニター31に表示される。この赤外スペクトルを確認することで、環境浄化
(除菌、殺菌又は減菌)対象物24の除菌、殺菌及び減菌が行われたかどうかの確認が可能となる。
【0045】
このように、本実施形態では、真空槽11の透過窓12を介して入射される外部からのパルスレーザ光20を真空槽11の内部に配置されたターゲット14に照射させてその表面からプラズマプルーム23を発生させ、ターゲット14に対向するように配置される載置手段である載置台17に載置された環境浄化
(除菌、殺菌又は減菌)対象物24にそのプラズマプルーム23が照射されるようにした。
【0046】
ここで、上述したように、プラズマプルーム23は高エネルギーから低エネルギーまでの各種電離層(高電離層23a、中電離層23b、低電離層23c)を有することが知られている。また、ほとんどがラジカル粒子のみの部分も存在していることも知られている。
【0047】
そこで、高電離層23aを利用することで、これまでほとんど殺菌できなかったような長寿命であったり、強固であったりする除菌対象菌に対しての環境浄化(除菌、殺菌
又は減菌などを行うこと)を確実に行うことができる。
【0048】
また、中電離層23b又は低電離層23cを利用することで、下地となるもの(殺菌してはならないもの)をあまり壊さないようにしつつ、環境浄化(除菌、殺菌
又は減菌などを行うこと)を確実に行うことができる。
【0049】
また、プラズマプルーム23から発生する上述したUV(ultraviolet)、VUV(vacuum ltraviolet)による環境浄化(除菌、殺菌
又は減菌などを行うこと)も可能となる。
【0050】
さらには、上述したプラズマプルーム23のラジカル粒子のみの部分を利用することでの環境浄化(除菌、殺菌
又は減菌などを行うこと)も確実に行うことができる。
【0051】
また、本実施形態では、載置手段である載置台17を、ターゲット14と対向する方向において接離自在となるように設けているため、載置台17の接離動作により、環境浄化
(除菌、殺菌又は減菌)対象物24をプラズマプルーム23のエネルギーの異なる任意の電離層(高電離層23a、中電離層23b、低電離層23c)まで移動させることができ、それぞれの高電離層23a、中電離層23b、低電離層23cを選択的に利用することが可能となる。
【0052】
また、本実施形態では、ターゲット14を、殺菌効果のあるAg、銅などの遷移金属で構成しているため、パルスレーザ光20の照射による電離によって発生する殺菌効果のあるイオンを菌などに対して有効に作用させることができる。
【符号の説明】
【0053】
10
除菌、殺菌又は減菌装置
11 真空槽
12、13 透過窓
14 ターゲット
15 支持アーム
16 可動アーム
17 載置台
20 パルスレーザ光
21 集光レンズ
22 赤外光
23 プラズマプルーム
23a 高電離層
23b 中電離層
23c 低電離層
24 環境浄化
(除菌、殺菌又は減菌)対象物
30 パソコン
31 モニター
40 MCT検出器
41〜43 反射鏡