(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
液体や、固形分を含有する流体(スラリー)などの熱交換対象物を加熱したり、冷却したりする場合に使用される熱交換装置として、従来より種々の熱交換装置が知られている。
【0003】
そのような熱交換装置の一つに、例えば
図7に示すように、熱交換対象物が収容される熱交換容器101を覆うように配設されたジャケット102の内部(熱交換容器101の外表面とジャケット102の間に形成される空間)に熱媒(スチーム)を供給して、熱交換容器101の内側と外側で熱交換を行わせるようにした熱交換装置100がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、上述のように、熱交換容器101を覆うようにジャケット102を配設した構造を有する熱交換装置(以下、「ジャケット付き熱交換装置」ともいう)の場合、通常は、熱交換容器101の本体胴101aの厚みは、ジャケット102側の設計圧力による外圧計算支配の下に決定されている。
そのため、ジャケット付き熱交換装置の場合、材料の使用量が増大し、それに伴って設備コストも増大するという問題点がある。
【0005】
また、近年、加熱や冷却の対象となる流体(熱交換対象物)として、腐食性の強い流体や、コンタミネーションを嫌う流体などを取り扱うことが必要になる機会が増えており、そのような場合には、熱交換容器として、耐食性に優れ、成分の溶出を引き起こしにくいチタン系金属材料からなる熱交換容器を用いることが必要となる。
【0006】
そして、その場合、チタン系金属材料が高価であることから、上述のようなジャケット付き熱交換装置の場合、材料の使用量が増大するため、設備コストも大幅に増大するという問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するものであり、熱交換対象物が収容される熱交換容器として、チタン系金属材料からなる熱交換容器が用いられている熱交換装置において、熱交換性能を低下させることなく、熱交換容器を構成するチタン系金属材料の使用量を低減することが可能で、経済性に優れた熱交換装置
の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の熱交換装置
の製造方法は、
チタン系金属材料からなり、内部に熱交換対象物を収容する熱交換容器と、
金属材料からなり、前記熱交換容器の外周面を周回するように配設された、内部を熱媒が流通する熱媒流通管と
を備え、
前記熱媒流通管は、接合材料としてのアルミ系金属材料を介して前記熱交換容器に接合されている
熱交換装置の製造方法であって、
アルミ系金属材料をろう付け材として用い、不活性ガス中でMIGろう付けを行うことにより、前記熱媒流通管を、接合材料としてのアルミ系金属材料を介して、前記熱交換容器に接合する工程を備えていること
を特徴としている。
【0010】
本発明においては、
複数の前記熱媒流通管が、前記熱交換容器の外周面を周回するように、互いに平行に配設され
た状態となるように前記MIGろう付けを行うか、または、
前記熱媒流通管が前記熱交換容器の外周面を周回するように、螺旋状に複数回巻き回され
た状態となるように前記MIGろう付けを行うこと
が好ましい。
【0011】
また、本発明の熱交換装置
の製造方法においては、前記熱媒流通管
として、本体鋼管の外周面に金属めっき膜が形成されためっき鋼管
を用い、前記本体鋼管
を、前記金属めっき膜と、前記アルミ系金属材料とを介して、前記熱交換容器に接合
することが好ましい。
なお、めっき鋼管をチタン系金属材料からなる熱交換容器に接合するにあたっては、例えば、アルミをろう付け材として用い、不活性ガス中でろう付け(アルミろう付け)を行うMIGろう付けの方法により、効率よく接合することが
できる。
【0012】
また、前記金属めっき膜が、亜鉛めっき膜であることが好ましい。
【0013】
また、本発明の熱交換装置
の製造方法においては、前記熱媒流通管がチタン系金属材料からなるものであ
ることが好ましい。
【0014】
また、本発明の熱交換装置
の製造方法においては、前記熱媒流通管がアルミ系金属材料からなるものであ
ることが好ましい。
【0015】
また、本発明の熱交換装置
の製造方法においては、前記熱交換容器の外周面に、複数の前記熱媒流通管が平行して巻き回されている場合、または、前記熱媒流通管が螺旋状に複数回巻き回されている場合に
おいて、前記熱交換容器の前記外周面の、互いに隣り合う前記熱媒流通管の間に位置する領域に
前記接合材料である前記アルミ系金属材料が延出するように
前記MIGろう付けを行うことが好ましい。
【0016】
また、本発明の熱交換装置
の製造方法においては、前記熱交換容器の外周面に、前記熱媒流通管が螺旋状に複数回巻き回されている場合、または、複数の前記熱媒流通管が平行して巻き回されている場合に
おいて、前記熱交換容器の前記外周面の、互いに隣り合う前記熱媒流通管の間に位置する領域の全体が、前記接合材料である前記アルミ系金属材料により被覆され
るように前記MIGろう付けを行うことが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の熱交換装置
の製造方法は、熱交換対象物を収容する、チタン系金属材料からなり、内部に熱交換対象物を収容する熱交換容器と、金属材料からなり、熱交換容器の外周面を周回するように配設された、内部を熱媒が流通する熱媒流通管とを備え、熱媒流通管は、接合材料としてのアルミ系金属材料を介して熱交換容器に接合された構造を有する熱交換装置を製造するにあたって、
アルミ系金属材料をろう付け材として用い、不活性ガス中でMIGろう付けを行うことにより、熱媒流通管を、アルミ系金属材料を介して、熱交換容器に接合するようにしているので、熱媒流通管を確実に熱交換容器に接合させることが可能になる。
したがって、上述のジャケット付き熱交換装置のように、熱交換容器がジャケットにより覆われていない構造を
有する熱交換装置を実現することが可能になる。
【0018】
このように、ジャケット構造から、熱交換容器の外周面に熱媒流通管を接合、配設した構造にすることにより、熱交換容器の本体胴の厚みを、熱交換容器側の圧力計算に基づく厚みとすることが可能になる。
そして、この熱交換容器側の設計圧力が、低圧力あるいは真空の場合、熱交換容器の本体胴の板厚を大幅に低減することが可能になる。
【0019】
その結果、
本発明の熱交換装置の製造方法を適用することにより、熱交換対象物が収容される熱交換容器として、チタン系金属材料からなる熱交換容器が用いられている熱交換装置において、高価なチタン系金属材料の使用量を大幅に低減して、経済性に優れた熱交換装置を提供することが可能になる。
なお、本発明において、熱媒とは、熱交換容器の内部の熱交換対象物を加熱するための「加熱媒体」および冷却のための「冷却媒体」の両方を含む概念である。
また、本発明において、チタン系金属材料としては、JIS規格で定められたチタン(例えば、JIS2種チタン)や、耐食チタン合金(例えば、JIS11種,12種,13種チタン合金)などを用いることが可能である。
また、接合材料としてのアルミ系金属材料としては、純アルミや、アルミ合金(例えば、A4043)などを用いることが可能である。
【0020】
本発明の
製造方法により製造される熱交換装置において、熱媒流通管の配設態様は、複数の熱媒流通管が熱交換容器の外周面を周回するように、所定の間隔をおいて互いに平行に巻き回された態様としてもよく、また、1本(または複数本)の熱媒流通管が、熱交換容器の外周面を周回するように、螺旋状に複数回巻き回されているような態様としてもよい。必要な熱交換効率を確保することが可能でありさえすれば、いずれの態様とすることも可能である。
なお、前者の場合、例えば、ヘッダから、複数の熱媒流通管のそれぞれに熱媒が供給されるような構成が採用されることになる。
【0021】
また、本発明の熱交換装置
の製造方法においては、熱媒流通管として、本体鋼管の外周面に金属めっき膜が形成されためっき鋼管を用い
ることが可能であり、その場合には、熱媒流通管と熱交換容器とを確実に接合(接続)することが可能になるとともに、熱媒流通管と熱交換容器との間の伝熱を、熱伝導率の高いアルミ系金属材料を介して行わせることが可能になる。したがって、熱交換効率が高く、経済性にも優れた熱交換装置を提供することが可能になる。
また、熱媒流通管として、上述のような安価なめっき鋼管を用いた場合、さらなる材料コストの低減を図ることが可能になる。
【0022】
また、めっき鋼管として、外周面に亜鉛めっき膜を備えためっき鋼管を用いることにより、確実に熱媒流通管と熱交換容器とを接合(接続)することが可能になるとともに、熱媒流通管と熱交換容器との間の伝熱を、熱媒流通管と確実に熱的に結合した、熱伝導率の高いアルミ系金属材料を介して行わせることが可能になり、熱交換効率が高く、経済性にも優れた熱交換装置を提供することが可能になる。
【0023】
また、本発明の
製造方法により製造される熱交換装置においては、熱媒流通管としてチタン系金属材料からなる熱媒流通管を用い
ることが可能であり、その場合にも、熱媒流通管と熱交換容器とを確実に接合(接続)することが可能になるとともに、熱媒流通管と熱交換容器との間の伝熱を、熱伝導率の高いアルミ系金属材料を介して行わせることが可能になり、熱交換効率が高く、経済性にも優れた熱交換装置を提供することが可能になる。
【0024】
また、本発明の
製造方法により製造される熱交換装置においては、熱媒流通管としてアルミ系金属材料からなる熱媒流通管を用い
ることが可能であり、その
場合、アルミ系金属材料からなる熱媒流通管と熱交換容器との間の伝熱を、熱伝導率の高いアルミ系金属材料を介して行わせることが可能
になるため、高い熱交換性能を備え、経済性にも優れた熱交換装置を提供することが可能になる。
なお、アルミ系金属材料からなる熱媒流通管としては、例えば、純アルミや、Al−Mg−Si系アルミ合金などからなるものが好ましく用いられる。
【0025】
また、本発明の
製造方法により製造される熱交換装置
においては、熱交換容器の外周面に、複数の熱媒流通管が平行して巻き回されている場合、または、熱媒流通管が螺旋状に複数回巻き回されている場合において、熱交換容器の外周面の、互いに隣り合う熱媒流通管の間に位置する領域に延出するように、接合材料であるアルミ系金属材料の延設部を設けることにより、熱媒流通管と熱交換容器との間の伝熱量を確実に増大させることが可能になり、それだけ熱交換効率の高い熱交換装置を提供することが可能になる。
【0026】
また、本発明の
製造方法により製造される熱交換装置においては、熱交換容器の外周面に、熱媒流通管が螺旋状に複数回巻き回されている場合、または、複数の熱媒流通管が平行して巻き回されている場合において、熱交換容器の外周面の、互いに隣り合う熱媒流通管の間に位置する領域の全体を、接合材料であるアルミ系金属材料により被覆することで、熱媒流通管と熱交換容器との間の伝熱量を最大限にまで増大させることが可能になり、それだけ熱交換効率の高い熱交換装置を提供することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に本発明の実施形態を示して、本発明の特徴とするところをさらに詳しく説明する。
【0029】
[実施形態1]
図1は、本発明の一実施形態(実施形態1)にかかる
熱交換装置の製造方法により製造される熱交換装置の構成を模式的に示す正面断面図である。
また、
図2は、
図1において一点鎖線の円で囲んだ領域(要部)Aを拡大して示す図である。
【0030】
この熱交換装置1は、
図1に示すように、例えば腐食性の強い流体である熱交換対象物2を収容する、耐食性に優れたチタン系金属材料からなる熱交換容器10と、熱交換容器10の外周面に巻き回された、内部を熱媒が流通する複数の熱媒流通管20とを備えている。
そして、この実施形態1では、熱交換容器10を構成するチタン系金属材料として純チタン(JIS2種チタン)が用いられている。
【0031】
また、
この熱交換装置1は、熱交換容器10の内部を減圧にした状態で熱交換操作が行われるように構成されている。
【0032】
熱交換容器10は、さらに、熱交換対象物2を供給するための供給ライン11と、熱交換が行われた後の熱交換対象物2を排出するための排出ライン12を備えているとともに、内部の熱交換対象物2を攪拌して、熱交換を促進するための攪拌機13を備えている。
なお、熱交換容器10の、熱媒流通管20が配設されている領域は、外装板25により被覆されている。外装板25の内側の空間部には、断熱材26が施工されている。
【0033】
また、複数の熱媒流通管20は、熱交換容器10の外周面の周方向に、互いに平行になるように所定の間隔をおいて配設されている。そして、この実施形態1
にかかる熱交換装置1においては、特に図示していないヘッダから各熱媒流通管20に熱媒が供給されるように構成されている。
なお、熱媒流通管20としては、
図2,3に示すように、本体鋼管21の外周面に金属めっき膜(この実施形態1では亜鉛めっき膜)22が形成された亜鉛めっき鋼管(SGPW)が用いられている。
【0034】
そして、複数の熱媒流通管20は、接合材料であるアルミ系金属材料30を介して熱交換容器10に接合されている。なお、アルミ系金属材料30としては金属アルミが用いられている。
【0035】
この実施形態1において、熱交換容器10のアルミ系金属材料30との界面、および、熱媒流通管20のアルミ系金属材料30との界面は、接合の前後において溶融することなく、アルミ系金属材料(接合の工程で溶融した後、凝固したアルミ系金属材料(この実施形態1では金属アルミ)30と接合されている。
【0036】
この熱交換装置1においては、熱媒流通管20と熱交換容器20との間伝熱量を増大させる目的で、熱交換容器10の外周面の、互いに隣り合う熱媒流通管20の間に位置する領域の全体が、接合材料であるアルミ系金属材料(金属アルミ)30により被覆されており、熱媒流通管20の内部を流通する熱媒と、熱交換容器10の内部の熱交換対象物2との間で、アルミ系金属材料(金属アルミ)30を介して、十分な熱交換を行わせることが可能である。
【0037】
次に、
この熱交換装置1を製造する場合の、熱交換容器10への熱媒流通管20の接合方法について説明する。
【0038】
一般に、チタン材料と、チタン以外の材料(異材)との接合は難しく、特に、機械的強度が要求される場合における、チタンとカーボンスチールとの溶接は極めて困難であるとされている。
【0039】
これに対し、
上述の熱交換装置1の場合、チタンからなる熱交換容器10と、鋼管からなる熱媒流通管20とを、熱交換装置として必要とされる熱的結合を実現できるような接合を行うことができればよく、例えば自動車などの構造体を製造する場合のように大きな機械的結合強度は求められることはない。
【0040】
そこで、この実施形態1では、チタンからなる熱交換容器10と、亜鉛めっき鋼管からなる熱媒流通管20を接合するにあたって、チタンとの金属相性のよいアルミをろう付け材として用い、また、鋼管として表面が亜鉛めっきされた亜鉛めっき鋼管(SGPW)を用いることにより、熱的結合の見地からは十分な接合が行われるようにした。以下、説明を行う。
【0041】
(1)まず、
図3に示すように、接合しようとする熱媒流通管(亜鉛めっき鋼管)20の外周面の下側の略半分を覆うように、半割れのアルミ管23をあてがった状態で、チタンからなる熱交換容器10の所定の位置に熱媒流通管20を配置した。
【0042】
それから、熱交換容器10の所定の位置、すなわち、熱媒流通管20の両側の位置にも、熱媒流通管20の軸方向に沿って、アルミからなる板材(あて板)24a,24bを配設した。
【0043】
なお、この実施形態1では、熱媒流通管20として、外径が27.2mmで、厚みが2.8mmの亜鉛めっき鋼管を用いた。
半割りのアルミ管23としては、内径が30mmで、厚みが1mmのアルミ管を半割りにしたものを用いた。
また、アルミからなる板材(あて板)24a,24bとしては、厚みが1mmで、幅が20mmのアルミ板を用いた。
【0044】
なお、半割れのアルミ管23と、アルミからなる板材(あて板)24a,24bを用いるようにしたのは、熱交換容器10および熱媒流通管20の表面が損傷しないようにして、良好な接合を行うことができるようにするためである。
【0045】
すなわち、チタンは高温で酸化しやすい材質であり、チタンのアルミろう付けは、通常、真空炉内もしくはアルゴン雰囲気で実施することが必要とされる。そこで、この実施形態1では、一般にアルミの溶接に広く用いられている、アルゴンガスを使用したMIG溶接の技術を応用して、チタンと亜鉛めっき鋼管との接合を行うことにした。しかし、アークを直接に亜鉛めっき鋼管20に当てると亜鉛が高温で溶融し、母材のカーボンスチールが露出した状態となり、接合することができなくなる。
また、アークを直接にチタンからなる熱交換容器10に当てると、熱交換容器10の表面でチタンが酸化されてしまい、接合することができなくなる。
【0046】
そこで、この実施形態1では、上記課題を解決するため、熱媒流通管(亜鉛めっき鋼管)20の表面にアルミの薄板(半割れのアルミ管23)を配置するとともに、チタンからなる熱交換容器10の表面にもアルミの薄板(アルミからなる板材(あて板)24a,24b)を配置し、アークをこのアルミの薄板に当てることにより、熱交換容器10および熱媒流通管(亜鉛めっき鋼管)20の過度の温度上昇を抑制して、良好な接合を行うことができるようにしている。なお、上記のようにした場合に、熱交換容器10および熱媒流通管(亜鉛めっき鋼管)20の過度の温度上昇が抑制されるのは、MIGアークの熱エネルギーがアルミの薄板の溶融熱として奪われることによる。
【0047】
(2)それから、アルミろう付け材を用いたMIGろう付けの方法で、熱媒流通管20を熱交換容器10に接合した。
MIGろう付けは、ダイヘン製直流パルスMIG溶接機の硬質アルミモードを用いて行った。
また、アルミろう付け材としてのアルミワイヤーには、高温割れが起きにくいアルミ製ソリッドワイヤー(A4043)を使用した。
【0048】
なお、熱媒流通管(亜鉛めっき鋼管)20をチタンからなる熱交換容器10にアルミろう付けするにあたっては、両者の機械的な結合の見地から、十分な接合強度を得られるように、また、伝熱の見地から、高い伝熱性が得られるように、以下に説明する方法で、熱媒流通管20を熱交換容器10にアルミろう付け接合した。
【0049】
(2−1)
まず、上述のアルミろう付け材を用いたMIGろう付けの方法で、熱媒流通管20を熱交換容器10に接合する。
この接合工程で、アルミろう付け材と、上述の半割れのアルミ管23と、アルミからなる板材24a,24bが溶融して、
図4に示すように、複数の熱媒流通管20が、接合材料としてのアルミ系金属材料(一次形成層)30(30a)を介して熱交換容器10に接合された接合構造が得られる。
【0050】
なお、上記の半割れのアルミ管23は、MIGろう付けの際のアークの熱が熱媒流通管(亜鉛めっき鋼管)20に直接作用して、熱媒流通管の表面が損傷することを防止する機能を果たし、また、上記のアルミからなる板材(あて板)24a,24bは、MIGろう付けの際のアークの熱がチタンからなる熱交換容器10に直接作用して、熱交換容器10の表面が損傷することを防止する機能を果たすため、熱交換容器10と熱媒流通管20とは、その表面などが損傷することなく、本来の健全な表面状態のまま、接合材料であるアルミ系金属材料(金属アルミ)(一次形成層)30(30a)を介して確実に接合される。
【0051】
(2−2)
ただし、この段階では、接合材料であって、伝熱媒体としても機能するアルミ系金属材料30(30a)の量がまだ不十分であるため、2度目のMIGろう付けを行って、
図5に示すように、アルミ系金属材料(一次形成層)30(30a)の外側にアルミニウム系金属材料(金属アルミ)からなる延設部(二次形成層)30(30b)を形成して(隅肉2層として)、接合部のアルミ系金属材料30の量を増加させるとともに、熱交換容器10、熱媒流通管(亜鉛めっき鋼管)20との接合面積を増大させた。
【0052】
なお、
図5では、接合部の構成を理解しやすくするために、アルミ系金属材料の一次形成層30(30a)と二次形成層30(30b)に異なるハッチングを付して、領域を分けて示しているが、実際にはMIGろう付けの際に、一次形成層と二次形成層の境界は溶融し、一次形成層30(30a)と二次形成層30(30b)とは一体化している。
【0053】
(3)この
図5に示す状態においては、アルミ系金属材料30(30a)の延設部(二次形成層)30(30b)が形成され、伝熱媒体としてのアルミ系金属材料30の量も増大しているが、実施形態1では、さらにMIGろう付けを行って、
図6に示すように、隣り合うアルミ系金属材料(二次形成層)30(30b)の間を埋めるようにアルミ系金属材料(三次形成層)30(30c)を形成した。これにより、熱交換容器10の外周面の、互いに隣り合う熱媒流通管20の間に位置する領域の全体が、接合材料であるアルミ系金属材料30(30a,30b,30c)により被覆された状態となる。
【0054】
なお、
図6でも、接続部の構成を理解しやすくするために、アルミ系金属材料の一次形成層30(30a)、二次形成層30(30b)、および三次形成層30(30c)を異なるハッチングを付して示しているが、実際には各形成層の境界は溶融して一体化している。
【0055】
これにより、
図1および2に示すような構造を
有する熱交換装置1が得られる。
【0056】
この熱交換装置1の場合、チタンとの金属相性が良好で、かつ、熱伝導率の高いアルミ系金属材料30(30a,30b,30c)を介して熱媒流通管20が熱交換容器10に接合されており、熱媒流通管20と熱交換容器10とが熱的に結合されているとともに、良好な熱伝導が行われるように接続されていることから、熱交換効率の良好な熱交換装置を得ることができる。
【0057】
また、この熱交換装置1は、熱交換対象物2を収容する熱交換容器10の外周面を周回するように熱媒流通管20が配設され、熱媒流通管20はアルミ系金属材料を介して熱交換容器10に接合された構造を備えており、従来のジャケット付き熱交換装置のように、熱交換容器がジャケットにより覆われていないため、熱交換容器10の本体胴の厚みは、熱交換容器10側の圧力計算に基づく厚みとされるため、本体胴の厚みを相当に薄くすることが可能になる。
【0058】
さらに、熱交換容器10は、減圧下で操作されるように構成されているため、高価なチタンを用いた熱交換容器10の本体胴の厚みを、ジャケット付き熱交換装置の場合に比べて大幅に低減することが可能になる。
その結果、熱交換容器を構成する、チタンの使用量を低減して、大幅なコストダウンを図ることが可能になる。
【0059】
また、この実施形態1
にかかる熱交換装置1においては、熱媒流通管として、安価な亜鉛亜鉛めっき鋼管を用いるようにしているので、この点でも、材料コストを低減することが可能になり、経済性に優れた熱交換装置を提供することが可能になる。
【0060】
すなわち、本体鋼管が、上記金属めっき膜と、アルミ系金属材料を介して、熱交換容器に接合されている構造とした場合にも、熱媒流通管と熱交換容器とを確実に接合(接続)することが可能になるとともに、熱媒流通管と熱交換容器との間の伝熱を、熱伝導率の高いアルミ系金属材料を介して行わせることが可能になり、熱交換効率が高く、経済性にも優れた熱交換装置を提供することが可能になる。
【0061】
なお、上記実施形態1では熱媒流通管として亜鉛めっき鋼管を用いているが、表面に亜鉛合金がめっきされた鋼管や、表面にアルミがめっきされためっき鋼管を用いることも可能である。
【0062】
また、この実施形態1では、隣り合うアルミ系金属材料30(30a)の延設部(二次形成層)30(30b)の間を埋めるようにアルミ系金属材料(三次形成層)30(30c)を形成し、熱交換容器10の外周面の、互いに隣り合う熱媒流通管20の間に位置する領域の全体が、接合材料であるアルミ系金属材料30(30a,30b,30c)により被覆された状態となるようにしているが、必要な伝熱量を確保することができる場合には、延設部(二次形成層)30(30b)の間を埋める三次形成層30cを備えていない構成とすることも可能である。
【0063】
[実施形態2]
上記実施形態1では、熱媒流通管として、亜鉛めっき鋼管を用いて熱交換装置1を構成したが、この実施形態2では、熱媒流通管としてチタン系金属材料(例えば、JIS2種チタン)からなる熱媒流通管(チタン管)を用い、熱媒流通管をアルミ系金属材料を介して熱交換容器に接合することにより、
図1に示した熱交換装置1と同様の構成を有する熱交換装置を作製した。
すなわち、この実施形態2
にかかる熱交換装置は、
図1および
図2における熱媒流通管20がチタン管であることを除いて、
図1および
図2に示した実施形態1
にかかる熱交換装置1と同じ構成を有する熱交換装置である。
【0064】
この実施形態2
にかかる熱交換装置の場合も、上記実施形態1の熱交換装置1を製造する場合の製造方法に準じる方法で製造することが可能であり、上記実施形態1の熱交換装置1において得られる効果に準じる効果を得ることができる。
【0065】
さらに、この実施形態2
にかかる熱交換装置の場合、熱交換容器と熱媒流通管とが同じチタン材料から形成されているので、運転中に熱交換容器と熱媒流通管との間に発生する熱応力が小さく、特に、熱交換容器内の熱交換対象物と、熱媒流通管を流通する熱媒の温度差が大きな系ではメリットを期待することができる。
【0066】
[実施形態3]
上記実施形態1では、熱媒流通管として亜鉛めっき鋼管を用い、また、上記実施形態2では、熱媒流通管としてチタン管を用いて熱交換装置を構成したが、この実施形態3では、熱媒流通管としてアルミ系金属材料からなる熱媒流通管(例えばAl−Mg−Si系アルミ管)を用い、熱媒流通管をアルミ系金属材料を介して熱交換容器に接合することにより、
図1に示した熱交換装置1と同様の構成を有する熱交換装置を得た。すなわち、この実施形態3
にかかる熱交換装置は、
図1および
図2における熱媒流通管20がAl−Mg−Si系アルミ管であることを除いて、
図1および
図2に示された熱交換装置1と同じ構成を有する熱交換装置である。
【0067】
ただし、熱媒流通管を熱交換容器に接合するための、アルミワイヤーをアルミろう付け材として用いたMIGろう付けの工程で、Al−Mg−Si系材料からなる熱媒流通管はその一部が溶融し、同じく溶融したアルミ系金属材料(この実施形態3では金属アルミ)からなる接合材料と溶接の態様で結合される。
ただし、チタンからなる熱交換容器10は溶融せず、溶融後に凝固した、アルミからなる接合材料を介して熱媒流通管(Al−Mg−Si系アルミ管)と接合した状態となる。
【0068】
この実施形態3
にかかる熱交換装置も、上記実施形態1
にかかる熱交換装置1の場合に準じる効果が得ることができる。
【0069】
なお、アルミ系金属材料からなる熱媒流通管に用いる場合、熱媒流通管の材質としては、溶接時の高温割れを避けるため、例えば、上述のようなAl−Mg−Si系(A6000系)を用いることが好ましい。
【0070】
なお、上記の各実施形態では、熱交換容器10が、本体胴の上下両面側に鏡板を備えた真空容器に広く用いられる形状のものである場合を例にとって説明したが、本発明において、熱交換容器の形状はこれに限定されるものではなく、種々の形状とすることができる。
【0071】
また、上記実施形態では、複数の熱媒流通管20を、熱交換容器10の外周面の周方向に、互いに平行になるように所定の間隔をおいて配設するようにしているが、一本の熱媒流通管を螺旋状に巻き回すように構成することも可能である。
【0072】
本発明は、さらにその他の点においても、上記実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲内において、種々の応用、変形を加えることが可能である。