特許第6283228号(P6283228)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6283228
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】建築構法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/30 20060101AFI20180208BHJP
   E04B 5/10 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
   E04B1/30 K
   E04B5/10
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-18303(P2014-18303)
(22)【出願日】2014年2月3日
(65)【公開番号】特開2015-145566(P2015-145566A)
(43)【公開日】2015年8月13日
【審査請求日】2016年10月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078695
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 司
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 直幹
(72)【発明者】
【氏名】荻原 行正
(72)【発明者】
【氏名】水谷 亮
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 悦広
【審査官】 星野 聡志
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭58−016410(JP,B2)
【文献】 特開平03−212548(JP,A)
【文献】 特開昭54−107127(JP,A)
【文献】 特開昭61−146946(JP,A)
【文献】 特開昭63−251542(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0230697(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/30
E04B 5/10
E04B 1/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つのプレキャストコンクリート柱に対して、枠材はスパン方向の枠材が鉄骨大梁であり、桁行方向の枠材がプレキャストコンクリート大梁である2つの床ユニットを接続することを特徴とした建築構法。
【請求項2】
床ユニットは、床下の設備、照明、仕上げ、天井の吊り材を内包した請求項1記載の建築構法。
【請求項3】
枠材である鉄骨大梁は、プレキャストコンクリート柱から跳ねだしたプレートにボルト締結する請求項1記載の建築構法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば学校の建て替えに際して、極短期間に解体から新設までを行うための、構造体、設備、仕上げの一体施工を可能にする建築構法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
柱・梁の接合を単純化して施工手間を省くことを目的とした鉄筋コンクリート(RC)柱とダブルビームの接合方法に関するものとしては、下記特許文献のものがある。
【特許文献1】特開昭63−251542号公報
【特許文献2】実開平4−134303号公報
【0003】
前記特許文献1は、梁鉄骨の幅方向に対向して位置している梁材で柱を挟持していることを特徴とするものである。
【0004】
特許文献2は、柱コンクリートの打設が容易で、コンクリートの納まりが良いように、SRC柱またはRC柱と鉄骨梁との接合部を構成するもので、溝型鋼を2本背中合わせにしてダブルビームを構成し、この2本の溝型鋼によりSRC(鉄骨鉄筋コンクリート)柱Bを挟みつける状態で、ダブルビームを柱に接合する。
【0005】
そしてこれら特許文献1や特許文献2の接合方法は、柱にスタットボルトやガセットプレートを埋め込むもの、及び梁に取り付けたスタットボルトを柱に埋め込むものである。いずれも、柱は場所打ちコンクリートを意図しており、現場での施工手間を省くのに有効である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1や特許文献2のように、柱1本に対して梁を2重に接合することで接合部を簡略化することだけでは、大幅な工期の短縮にはならいない。また、特許文献1や特許文献2では柱は場所打ちコンクリートで造成するもので、柱をプレキャストコンクリートとして工程を簡略化する技術は盛り込まれていない。
【0007】
本発明の目的は前記従来例の不都合を解消し、1つの柱に対して梁を2重に接合することで接合部を簡略化できることに加えて、柱をプレキャストコンクリート柱とし、また、床は梁とする床ユニットとして構成し、この床ユニットを柱に合理的に接合することで、極短期間に解体から新設までを行うための構造体、設備、仕上げの一体施工を可能して、構造安全性の確保と工期の短縮を両立させることができるようにした建築構法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、請求項1記載の本発明は1つのプレキャストコンクリート柱に対して、枠材はスパン方向の枠材が鉄骨大梁であり、桁行方向の枠材がプレキャストコンクリート大梁である2つの床ユニットを接続することを要旨とするものである。
【0009】
請求項1記載の本発明によれば、スパン方向の大梁と桁行方向の大梁を枠状に床ユニットとして組み上げて、この床ユニットを現地に設置されたプレキャストコンクリート柱の上に掛けるもので、床ユニットは、柱4本にまたがって設置されるため安定している。
【0010】
また、柱スパン3.0mであれば、床ユニットは幅2.4mとなり、トラックで平積みして運搬できる。
【0011】
施工において、場所打ちコンクリートはスラブトップコンのみであり、現場取付けは柱梁接合部のボルト締めのみであり、天候に左右されないですむ。また、煩雑な配筋なしで、スラブ以外がプレハブ工場、鉄骨ハブで製造可能で、品質の確保が容易である。
【0012】
また、スパン方向の鉄骨大梁である枠材と桁方向の鉄筋コンクリートプレキャスト梁(PCa梁)である枠材を一体とした床ユニットを、プレキャストの柱間に配置したもので、スパン方向の梁の応力は、桁行方向のPCa梁のねじれ抵抗、及びPCa梁と柱の摩擦抵抗を用いて柱に伝達される。
【0013】
プレキャストの柱と床ユニットとの接合は、プレキャスト部材同士の接合、例えば、PC鋼線などにより一体化した接合構法が可能となる。プレキャストコンクリート柱は、複数層製作して設置が可能であり、桁行方向がPCa梁のため、仕上げ部材としても兼用でき耐火被覆も不要である。
【0014】
請求項2記載の本発明は、床ユニットは、床下の設備、照明、仕上げ、天井の吊り材を内包したことを要旨とするものである。
【0015】
請求項2記載の本発明によれば、床ユニットは、床下の設備、照明、仕上げ、天井の吊り材を予め設置し、この床ユニットを現地に設置されたプレキャストコンクリート柱の上に掛けるので、迅速化に寄与する。
【0016】
請求項記載の本発明は,枠材である鉄骨大梁は、プレキャストコンクリート柱から跳ねだしたプレートにボルト締結することを要旨とするものである。
【0017】
請求項記載の本発明によれば、スパン方法の鉄骨大梁と桁行方法の鉄骨大梁を枠上にユニットとして組み上げて、その上にデッキプレート、ユニット内に設備・照明、下に天井を予め設置し、この床ユニットを現地に設置されたプレキャストコンクリート柱に予め埋め込まれて跳ねだしている補強プレートにハイテンションボルトで接合する。スパン方向の梁の応力は、跳ねだしている鉛直・水平補強プレートで構成されたボックスのねじれ抵抗で柱に伝達する。プレキャストコンクリート柱は複数層分製作して設置が可能である。
【発明の効果】
【0018】
以上述べたように本発明の建築構法は、設備・仕上げ・床材を内包した床ユニットを柱に合理的に接合することで、極短期間に解体から新設までを行うための構造体、設備、仕上げの一体施工を可能して、構造安全性の確保と工期の短縮を両立させることができるものである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面について本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明の建築構法の第1実施形態を示す縦断側面図、図2は同上床伏図、図3は同上縦断正面図で、図中1はプレキャストコンクリート柱、2は床ユニットを示す。
【0020】
本発明は1つのプレキャストコンクリート柱1に対して、枠材が梁である2つの床ユニット2を接続するもので、本実施形態では、床ユニット2を構成する枠材としては、スパン方向の枠材が鉄骨大梁3、桁行方向の枠材がプレキャストコンクリート大梁20であるとした。
【0021】
前記床ユニット2は、このように枠組まれた梁架構に天井仕上用の吊り材4を組み込み、さらに、配管等の設備5、照明6、場合によっては仕上げとしての天井7を内包して一体化したものである。矢印αはデッキプレート敷き込み方向を示す。
【0022】
例えば、柱スパン3.0mであれば、前記床ユニット2は幅(桁行方向)が2.4mとなり、トラックで平積みして運搬できるので、このように一体化した状態で工場から現地までの運搬を可能とする。これにより極力現場作業を削減し、現場では揚重設置のみの作業となる。(床ユニット幅2.5m以下)
【0023】
床ユニット2の設置後は、プレキャストコンクリート柱1間に間仕切り壁26を設置し(図1参照)、床材としてのデッキプレート8を敷設し、スラブ配筋を敷き込み、場所打ちコンクリートとしてスラブトップコンを打設してデッキプレートスラブ13を構築する。
【0024】
仕上として、サッシ21を取り付け、外装22を施す。
【0025】
本実施形態では積層構法および各階柱分割であり、このようにして完成した建物は、一般耐震構造(免震なし)のもので、場所打ちコンクリートはスラブトップコンのみ、現場取付けは柱梁接合部のボルト締めのみで、天候に左右されない施工が可能で、煩雑な配筋なく、スラブ以外がプレハブ工場、鉄骨ハブで製造可能で品質確保が確実である。
【0026】
床材としてのデッキプレート8に関しては、前記のように現場でこれを敷き込む場合の他に、床ユニット2を工場製作する時に予め組み込むこともできる。
【0027】
その場合、デッキプレート8のみを敷設し、現場に搬入した後でスラブ配筋およびスラブコンクリートを打設すること、もしくはPCスラブとしてコンクリートを打設した後の床材を工場製作する時に予め組み込むこと、もしくはその折衷としてハーフPC床板を組み込んでおき、現場で完成させることなど種々選択できる。
【0028】
また、プレキャストコンクリート柱1は複数階(1〜3階)分の長さのものであり、柱先行設置が可能である。
【0029】
他の実施例として図7図9に示すように、プレキャストコンクリート柱1には柱梁接合部14を設け、この柱梁接合部14から水平補強プレート15、鉛直補強プレート16によるプレートを跳ねださせてもよい
【0030】
前記床ユニット2はかかるプレキャストコンクリート柱1から跳ねだしたプレートにハイテンションボルト(HTB)10でボルト締めして接合する。必要に応じて切り板組み立て材18を加え、補強プレート17を付加してもよい。切り板組み立て材18は通常のH型鋼では断面性能が不足する場合に、厚板を用いて溶接加工で当該部分を補強したもの、補強プレート17は桁行方向の梁の応力を柱にスムーズに伝えるものである。
【0031】
水平プレートはプレキャストコンクリート柱1へのコンクリートへの定着を行い、垂直プレートはさらにねじれ抵抗を増加させる役割を担う。
【0032】
その他の工程、(1)柱設置、(2)床ユニット設置、(3)間仕切り壁設置、(4)デッキプレート敷設、(5)スラブ筋敷き込み、(6)床トップコン打設を行う。
【0033】
のようにして完成した建物は、一般耐震構造(免震なし)のもので、場所打ちコンクリートはスラブトップコンのみ、現場取付けは柱梁接合部のボルト締めのみで、天候に左右されない施工が可能で、煩雑な配筋なく、スラブ以外がプレハブ工場、鉄骨ハブで製造可能で品質確保が確実である。
【0034】
図4図6は柱梁接合部の詳細を示すもので、床ユニット2を構成する枠材としての鉄骨大梁3は、プレキャストコンクリート大梁20の端部の鉄筋23中に差し入れるようにし、桁行方向のプレキャストコンクリート大梁20同士はプレキャストコンクリート柱1端上を横切るPC鋼線24で圧着する。
【0035】
図中25はプレキャストコンクリート柱1とプレキャストコンクリート大梁20の接合を行う高強度モルタルである。
【0036】
施工は、(1)プレキャストコンクリート柱1(1〜3階分)を設置し、(2)床ユニット2を設置する。
【0037】
(3)PCグラウト・圧着を行い、その後の(4)間仕切り壁設置、(5)デッキプレート敷設、(6)スラブ筋敷き込み、(7)床トップコン打設を行う。
【0038】
このように本実施形態では完成した建物は、一般耐震構造(免震なし)のもので、柱先行設置可能(1〜3階分)分の長さのもので、柱先行設置(1〜3階分)が可能で、現場では桁方向梁をPC圧着し、直交梁(PC圧着梁)のねじりでS梁の応力を柱に伝達(圧着面の摩擦力で伝達)する。
【0039】
場所打ちコンクリートはスラブトップコンのみ、スラブ以外はプレハブ工場、鉄骨ハブで製造可能で品質確保が確実である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明の建築構法の実施形態を示す縦断側面図である。
図2】本発明の建築構法の実施形態を示す床伏図である。
図3】本発明の建築構法の実施形態を示す縦断正面図である。
図4】本発明の建築構法の柱梁接合部の詳細を示す平面図である。
図5】本発明の建築構法の柱梁接合部の詳細を示す側面図である。
図6】本発明の建築構法の柱梁接合部の詳細を示す正面図である。
図7】本発明の建築構法の他の実施形態を示す縦断側面図である。
図8】本発明の建築構法の他の実施形態を示す床伏図である。
図9】本発明の建築構法の他の実施形態を示す縦断正面図である。
【符号の説明】
【0041】
1…プレキャストコンクリート柱 2…床ユニット
3…鉄骨大梁 4…吊り材
5…設備 6…照明
7…天井 8…デッキプレート
9…接続部ブロック 10…ハイテンションボルト
11…ネジ鉄筋 12…ガセットプレート
13…デッキプレートスラブ
14…柱梁接合部 15…水平補強プレート
16…鉛直補強プレート 17…補強プレート
18…切り板組み立て材
20…プレキャストコンクリート大梁 21…サッシ
22…外装 23…鉄筋
24…PC鋼線 25…高強度モルタル
26…間仕切り壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9