(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、封止(シール)等にガラスを用いた場合、空気極の活性が低下するおそれがある。即ち、ガラスに含まれる空気極の汚染物質(例えば、B)が、飛散して空気極に到達し、空気極での反応を阻害する可能性がある。
本発明は、封止材料に起因する空気極の被毒の防止を図った、燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の実施形態に係る燃料電池は、
燃料ガスが供給される第1区画と酸化剤ガスが供給される第2区画とを分画するセパレータと、
前記第1区画に配置される燃料極と、前記第2区画に配置される空気極と、前記燃料極と前記空気極とを隔て、前記燃料極と前記空気極との間に配置される固体電解質層と、を有する単セルと、
前記単セルと前記セパレータを接合および封止する封止部と、
を具備する、燃料電池であって、
前記封止部は、前記空気極の活性を低下させる汚染物質を含み、
前記封止部の前記第2区画側の少なくとも一部を被覆する、前記汚染物質を吸着する被覆吸着層をさらに具備する。
【0007】
被覆吸着層が封止部の第2区画側の少なくとも一部を被覆する。このため、封止部に含まれる汚染物質が被覆吸着層に吸着され、空気極への到達が制限され、空気極の活性の維持が図られる。
【0008】
(2)燃料電池が、前記封止部の前記第1区画側に配置され、前記単セルと前記セパレータを接合する、Agを含む接合材で構成される接合部、をさらに具備しても良い。
【0009】
接合部および封止部の組み合わせで、接合および封止が図られた場合でも、封止部に含まれる汚染物質が空気極に到達することが制限され、空気極の活性の維持が図られる。
また、単セルとセパレータとの接合に、Agを含む接合材で構成される接合部とガラスからなる封止部を組み合わせて用いることで、より強固な接合および封止を図ることが可能となる。
【0010】
(3)前記汚染物質は、Cr,S,Bの少なくともいずれかを含む。
Cr,S,Bは空気極の活性を低下する汚染物質となるため、被覆吸着層で吸着することが好ましい。
【0011】
なお、汚染物質は、原料に起因して、封止部の製造当初から含まれる場合だけでなく、熱履歴などによって、後発的に封止部に含まれる場合もある。例えば、セパレータなどからのCrの移動によって封止部にCrが含まれる場合がある。また、封止部(ガラス焼付など)熱履歴によってもCrが封止部に含まれる場合もある。
このように後発的に封止部に含まれた汚染物質についても、被覆吸着層で吸着することができる。
【0012】
(4)前記被覆吸着層が、Laを含むことが好ましい。
Laは、例えば、LaBO
3の反応物をつくるなどして、汚染物質を効果的に吸着・反応することから、被覆吸着層に含まれることが望ましい。
【0013】
(5)前記被覆吸着層が、前記封止部の前記第2区画側の全面を被覆することが好ましい。
被覆吸着層が、前記第1区画側に露出する前記封止部の全面を被覆することで、汚染物質が空気極に到達することをより効果的に防止できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、封止材料に起因する空気極の被毒の防止を図った、燃料電池を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る固体酸化物形燃料電池について図面を用いて説明する。
【0017】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る固体酸化物形燃料電池スタック10を表す斜視図である。固体酸化物形燃料電池スタック10は、燃料ガス(例えば、水素)と酸化剤ガス(例えば、空気(詳しくは空気中の酸素))の供給を受けて発電する。
【0018】
固体酸化物形燃料電池スタック10は、エンドプレート11,12,燃料電池セル40(1)〜40(4)が積層され、ボルト21,22(22a,22b),23(23a,23b)およびナット35で固定される。
【0019】
図2は、固体酸化物形燃料電池スタック10の模式断面図である。固体酸化物形燃料電池スタック10は、燃料電池セル40(1)〜40(4)を積層して構成される燃料電池スタックである。ここでは、判り易さのために、4つの燃料電池セル40(1)〜40(4)を積層しているが、一般には、20〜60個程度の燃料電池セル40を積層することが多い。
【0020】
エンドプレート11,12、燃料電池セル40(1)〜40(4)は、ボルト21,22(22a,22b),23(23a,23b)に対応する貫通孔31,32(32a,32b),33(33a,33b)を有する。
エンドプレート11,12は、積層される燃料電池セル40(1)〜40(4)を押圧、保持する保持板であり、かつ燃料電池セル40(1)〜40(4)からの電流の出力端子でもある。
【0021】
図3および
図4はそれぞれ、燃料電池セル40の断面図および一部斜視図である。なお、
図4では、インターコネクタ41,45、集電体42、空気極フレーム51、絶縁フレーム52、燃料極フレーム54を取り除いた状態の燃料電池セル40を表している。
【0022】
図3に示すように、燃料電池セル40は、いわゆる燃料極支持膜形タイプの燃料電池セル40であり、単セル44、インターコネクタ41,45、集電体42、49、枠部43を備える。
【0023】
単セル44は、固体電解質層56を空気極(カソード、空気極層ともいう)55、および、燃料極(アノード、燃料極層ともいう)57で挟んで構成される。固体電解質層56の酸化剤ガス流路47側、燃料ガス流路48側それぞれに、空気極55、燃料極57が配置される。
【0024】
空気極55としては、ペロブスカイト系酸化物(例えば、LSCF(ランタンストロンチウムコバルト鉄酸化物)、LSM(ランタンストロンチウムマンガン酸化物)等が使用できる。
【0025】
固体電解質層56としては、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、ScSZ(スカンジア安定化ジルコニア)、SDC(サマリウムドープセリア)、GDC(ガドリニウムドープセリア)、ペロブスカイト系酸化物等の材料が使用できる。
【0026】
燃料極57としては、金属が好ましく、Ni及びNiとセラミックとのサーメットやNi基合金が使用できる。
【0027】
インターコネクタ41,45は、単セル44間の導通を確保し、かつ単セル44間でのガスの混合を防止し得る、導電性(例えば、ステンレス鋼等の金属)を有する板状の部材である。
【0028】
なお、単セル44間には、1個のインターコネクタ(41若しくは45)のみが配置される(直列に接続される二つの単セル44の間に一つのインターコネクタを共有しているため)。また、最上層および最下層の単セル44それぞれでは、インターコネクタ41,45に替えて、導電性を有するエンドプレート11,12が配置される。
【0029】
集電体42は、単セル44(空気極55)とインターコネクタ41との間の導通を確保するためのものであり、例えば,インターコネクタ41に形成された凸部である。
【0030】
集電部49は,燃料ガス流路48の内部に配置され,単セル44の燃料極57とインターコネクタ45との間の導通を確保するためのものであり,導電性部材491,スペーサ492を有する。
【0031】
導電性部材491は、U字形状をなし、インターコネクタ62(インターコネクタ本体621)および単セル44の燃料極57に当接する。
【0032】
スペーサ492は,導電性部材491の間に配置される。スペーサ492の材料として,マイカ,アルミナ,バーミキュライト,カーボン繊維,炭化珪素繊維,シリカの何れか自体,或は少なくとも何れか1種を主成分とするものを利用できる。
【0033】
なお,集電部49は,導電性部材491,スペーサ492に替えて,例えばNi製の多孔質金属又は金網又はワイヤーで形成するようにしてもよい。また,集電部49は,Niの他,Ni合金やステンレス鋼など酸化に強い金属で形成してもよい。
【0034】
枠部43は、酸化剤ガス、燃料ガスが流れる開口46を有する。この開口46は、気密に保持され、かつ酸化剤ガスが流れる酸化剤ガス流路47、燃料ガスが流れる燃料ガス流路48に区分される。また、本実施形態の枠部43は、空気極フレーム51、絶縁フレーム52、金属製セパレータ53、燃料極フレーム54で構成される。
【0035】
空気極フレーム51は、空気極55側に配置される金属製の枠体で、中央部には開口46を有する。該開口46によって、酸化剤ガス流路47を区画する。
【0036】
絶縁フレーム52は、インターコネクタ41,45の間と、インターコネクタ41と金属製セパレータ53との間を電気的に絶縁する枠体で、例えば、Al
2O
3などのセラミックスやマイカ、バーミキュライトなどが使用でき、中央部には開口46を有する。該開口46によって、酸化剤ガス流路47を区画する。具体的には、絶縁フレーム52は、インターコネクタ41,45の間において、一方の面が空気極フレーム51に、他方の面が金属製セパレータ53に接触して配置されている。この結果、絶縁フレーム52により、インターコネクタ41,45の間とインターコネクタ41と金属製セパレータ53との間が電気的に絶縁されている。
【0037】
金属製セパレータ53は、開口部58を有する枠状の金属製の薄板(例えば、厚さ:0.1mm)であり、単セル44の固体電解質層56に接合部61又は封止部62もしくはその両方を介して接合、封止され、かつ酸化剤ガスと燃料ガスとの混合を防止する金属製の枠体である。金属製セパレータ53によって、枠部43の開口46内の間隙が、酸化剤ガス流路47と燃料ガス流路48に区切られ、酸化剤ガスと燃料ガスとの混合が防止される。
【0038】
燃料ガス流路48および酸化剤ガス流路47はそれぞれ、燃料ガスが供給される第1区画および酸化剤ガスが供給される第2区画に対応する。
【0039】
金属製セパレータ53には、金属製セパレータ53の上面と下面の間を貫通する貫通孔によって開口部58が形成され、この開口部58内に、単セル44の空気極55が配置される。また、この開口部58に単セル44が接合、封止される。金属製セパレータ53は、燃料ガスが供給される第1区画と酸化剤ガスが供給される第2区画とを分画するセパレータに対応する。
【0040】
燃料極フレーム54は、燃料極57側に配置されるフレームであり、例えば,Al
2O
3などのセラミックスやマイカ,バーミキュライトなどの絶縁材料や金属板などが使用でき,燃料極57側に配置される絶縁フレームであり、中央部には開口46を有する。該開口46によって、燃料ガス流路48を区画する。
【0041】
空気極フレーム51、絶縁フレーム52、金属製セパレータ53、燃料極フレーム54は、ボルト21,22(22a,22b),23(23a,23b)が挿入されるか、もしくは酸化剤ガスか燃料ガスが流通する貫通孔31,32(32a,32b),33(33a,33b)をそれぞれの周辺部に有する。
【0042】
(燃料電池セル40の詳細)
本実施形態に係る燃料電池セル40は、接合部61、封止部62、被覆吸着層63を有する。
【0043】
接合部61は、Agを含むロウ材から構成され、単セル44と金属製セパレータ53とを接合する。接合部61は、単セル44と金属製セパレータ53間、封止部62の燃料ガス流路48(第1区画)側に、開口部58の全周にわたって配置される。接合部61(Agロウ)は、例えば、2〜6mmの幅、10〜80μmの厚さを有する。
【0044】
接合部61の材質として、Agを主成分とする各種のロウ材を採用できる。例えば、ロウ材として、Agと酸化物の混合体、例えば、Ag−Al
2O
3(AgとAl
2O
3(アルミナ)の混合体)を利用できる。Agと酸化物の混合体としては、Ag−CuO,Ag−TiO
2,Ag−Cr
2O
3,Ag−SiO
2も挙げることができる。また、ロウ材として、Agと他の金属の合金(例えば、Ag−Ge−Cr,Ag−Ti,Ag−Al)も利用できる。
【0045】
Agを含むロウ材(Agロウ)は、大気雰囲気でもロウ付け温度で酸化し難い。このため、Agロウを用いて、単セル44と金属製セパレータ53とを大気雰囲気で接合でき、工程の効率上、好ましい。
【0046】
封止部62は、接合部を封止するものであり、封止部621、拘束部622、連結部623に区分できる。
【0047】
封止部621は、開口部58に沿って、全周にわたって、接合部61よりも開口部58側(内周側)に配置され、金属製セパレータ53の開口部58内にある酸化剤ガスと開口部58外にある燃料ガスとの混合を防ぐために単セル44と金属製セパレータ53間を封止する。
【0048】
封止部621が接合部61よりも開口部58側(内周側)に配置されることから、接合部61が酸化剤ガスに接触することが無くなり、酸化剤ガス流路47側から接合部61への酸素の移動が阻止される。この結果、水素と酸素の反応によって接合部61にボイドが発生して、ガスリークすることを防止できる。
封止部621は、例えば、0.2〜4mmの幅、10〜80μmの厚さを有する。
【0049】
拘束部622は、金属製セパレータ53を挟んで、封止部62と対向する位置における、金属製セパレータ53の上面上に、開口部58の全周にわたって、配置される。
拘束部622は、封止部62と同じ材料(熱膨張係数も同じ)で構成され、封止部62と共に、金属製セパレータ53を挟む。この結果、固体酸化物形燃料電池スタック10の稼動時での金属製セパレータ53の変形が抑制される。拘束部622は薄いと拘束効果が小さいので、封止部62と同等以上の厚さがあることが好ましい。
【0050】
連結部623は、封止部621と拘束部622を連結し、一体化する。封止部621と拘束部622とが一体となることで、金属製セパレータ53の変形(撓み)のさらなる抑制が可能となる。
【0051】
また、封止部621と拘束部622との一体化は、封止部62の幅、いわゆるシールパスの実質的増大に寄与し、封止部62による封止性が向上する。封止部621と拘束部622とが一体化することで、酸化剤ガス流路47から接合部61に至る経路上での、封止部62の長さ(シールパス)が長くなる。この結果、封止部62による封止性がより向上する。
【0052】
封止部62には、ガラスを含む封止材、具体的には、ガラス、ガラスセラミックス(結晶化ガラス)、ガラスとセラミックスの複合物を利用できる。一例として、SCHOTT社製ガラス:G018−311が使用できる。
ここで、封止部62の封止材料(ガラス等)には、Si、B、S、アルカリ金属といった汚染物質が含まれることが多く、空気極55の活性の低下を招く恐れがある。
【0053】
封止部62中の汚染物質は、酸化剤ガス中の汚染物質より対応が困難である。即ち、酸化剤ガス(例えば、大気)中にSi、B、Sといった汚染物質が含まれることがあるが、活性炭のような吸着材料(フィルタ)を酸化剤ガスの上流に設けることで汚染物質をトラップ(吸着)し、空気極55に到達することを抑制できる。一方、封止部62から飛散する汚染物質は、フィルタにより効果的にトラップすることは困難である。封止部62は、空気極55近傍であり、封止部62から飛散する汚染物質が問題となる。封止部62は、空気極55よりも酸化剤ガスの上流側で露出した状態にあり、汚染物質による空気極55の汚染が懸念される。
【0054】
被覆吸着層63を用いることで、封止部62中の汚染物質による空気極55の汚染を低減し、空気極55の活性を維持できる。被覆吸着層63は、封止部62からの汚染物質を吸着し、汚染物質の酸化剤ガス流路47中への飛散を防止する。被覆吸着層63は、封止部62と接して、封止部62から移動してきた汚染物質を吸着する。即ち、被覆吸着層63は、封止部62から酸化剤ガス流路47中に飛散した汚染物質を吸着するのではなく、酸化剤ガス流路47中への飛散の前に汚染物質を吸着する。
【0055】
ここでは、被覆吸着層63は、封止部62の酸化剤ガス流路47(第2区画)側の表面全体を被覆している。被覆吸着層63は、封止部62の表面全体を被覆することで、封止部62中の汚染物質による空気極55の汚染を確実に防止できる。但し、被覆吸着層63は、封止部62の酸化剤ガス流路47(第2区画)側表面の一部のみを被覆することでも封止部62中の汚染物質による空気極55の被毒を低減できる。
【0056】
被覆吸着層63には、次のように、Laを含む材料、具体的には、LSCF、LSM、LSC、LSF、LNF、LCなどの空気極55と同一または類似の材料(ペロブスカイト系材料)を利用できる。
LSCF: (La,Sr)(Co,Fe)O
3
LSM: (La,Sr)MnO
3
LSC: (La,Sr)CoO
3
LSF: (La,Sr)FeO
3
LNF: La(Ni,Fe)O
3
LC: LaCrO
3
【0057】
被覆吸着層63に含まれるLaはBと反応してLaBO
3を形成する。このため、封止部62の封止材料(ガラス)中のBが封止材料から蒸散したときに、これと化学的に反応してトラップする。
【0058】
被覆吸着層63は、封止部62へのスクリーン印刷、ディスペンス塗布やスプレー塗布などで形成できる。
なお、図示はしないが、上述した燃料電池スタック10をその他の機材類と共に筐体に収納し、燃料電池が構成される。
【0059】
本実施形態では、被覆吸着層63で封止部62を被覆することで、空気極55の被毒を防ぎ、長期に亘って、その劣化を抑制し、長期信頼性を向上できる。
【0060】
(第1の実施形態の変形例1)
図5および
図6はそれぞれ、本発明の第1の実施形態の変形例1に係る固体酸化物形燃料電池スタックの燃料電池セル40aの断面図および一部斜視図である。なお、第1の実施形態と同様の部分は説明を省略する。
【0061】
燃料電池セル40aは、燃料電池セル40と異なり、拘束部622、連結部623を有しない。被覆吸着層63aは、封止部621の酸化剤ガス流路47側に露出する表面の一部または全部を被覆し、封止部621からの汚染物質を吸着し、汚染物質が酸化剤ガス流路47中に飛散することを防止する。
【0062】
(第1の実施形態の変形例2)
図7は、本発明の第1の実施形態の変形例2に係る固体酸化物形燃料電池スタックの燃料電池セル40bの断面図である。なお、第1の実施形態と同様の部分は説明を省略する。
【0063】
燃料電池セル40bは、燃料電池セル40aと異なり、接合部61を有しない。封止部621bは、接合部61に代わって、金属製セパレータ53と単セル44間を接合する。即ち、封止部621bは、金属製セパレータ53と単セル44間の接合および封止を一括して行っている。
【0064】
この場合でも、被覆吸着層63aで封止部621bの酸化剤ガス流路47(第2区画)側表面の一部または全部を被覆することで、空気極55の被毒を防ぎ、長期に亘って、その劣化を抑制し、長期信頼性を向上できる。
【0065】
(第2の実施形態)
図8および
図9はそれぞれ、本発明の第2の実施形態に係る固体酸化物形燃料電池スタック10cの斜視図および断面図である。
【0066】
固体酸化物形燃料電池スタック10cは、単セル44c、マニホールド70、接合部61c、封止部62c、被覆吸着層63cを有する。
【0067】
単セル44cは、中空平板型であり、楕円柱形状(扁平筒形状)を有する。単セル44cは、電極支持体410,燃料極420,固体電解質層430,空気極440を有する。
【0068】
電極支持体410は、楕円柱形状(扁平筒形状)であり、ガス透過性および導電性を有する。電極支持体410は、複数の燃料ガス通過孔411を有する。マニホールド70から燃料ガス通過孔411に入った燃料ガスが、電極支持体410を透過して、燃料極420に到達する。
【0069】
燃料極420は、電極支持体410の外周に配置される。固体電解質層430は、燃料極420の外周に配置される。空気極440は、固体電解質層430の外周に配置される。
【0070】
ここでは、単セル44cおよび電極支持体410は、楕円柱形状(扁平筒形状)であるが、単セル44cおよび電極支持体410を円柱形状としても良い。例えば、電極支持体410に配置される燃料ガス通過孔411を単一とし、電極支持体410を燃料ガス通過孔411と同軸の円柱形状とする。
【0071】
マニホールド70は、内部空間71,開口部72、燃料注入口73を有する。燃料ガスは、燃料注入口73から内部空間71に注入され、開口部72、燃料ガス通過孔411を通り、電極支持体410を透過して、燃料極420に到達する。反応済みの燃料ガスは、燃料ガス通過孔411から外部に放出される。
【0072】
内部空間71、燃料ガス通過孔411、および電極支持体410は、燃料ガスが供給される第1区画に対応する。電極支持体410はガス透過性を有することから、燃料ガスを透過し、燃料ガスが供給される第1区画に対応することになる。
【0073】
一方、酸化剤ガス(大気)は、マニホールド70および単セル44bの外部に存在する。即ち、マニホールド70および単セル44bの外部は、酸化剤ガスが供給される第2区画に対応する。
マニホールド70は、燃料ガスが供給される第1区画と酸化剤ガスが供給される第2区画とを分画するセパレータに対応する。
【0074】
接合部61cは、複数の単セル44cを開口部72内に接合、固定する。接合部61cの材質として、接合部61と同様、Agを主成分とする各種のロウ材を採用できる。
【0075】
封止部62cは、接合部61cを封止する。封止部62cには、封止部62と同様、ガラスを含む封止材、具体的には、ガラス、ガラスセラミックス(結晶化ガラス)、ガラスとセラミックスの複合物を利用できる。
【0076】
被覆吸着層63cは、封止部62の表面全体を被覆する。被覆吸着層63cは、封止部62cからの汚染物質を吸着し、汚染物質の空気極440への到達を防止する。被覆吸着層63cには、被覆吸着層63と同様、ペロブスカイト系材料(LSCF、LSM、LSC、LSF、LNF、LCなど)を利用できる。
なお、図示はしないが、上述した燃料電池スタックをその他の機材類と共に筐体に収納し、燃料電池が構成される。
【0077】
(第2の実施形態の変形例)
図10は、本発明の第2の実施形態の変形例に係る固体酸化物形燃料電池スタック10dの断面図である。
固体酸化物形燃料電池スタック10cでは、接合部61cが複数の単セル44cを一括して開口部72内に接合、固定している。これに対して、固体酸化物形燃料電池スタック10dでは、複数の接合部61dが複数の単セル44cを個別に複数の開口部72d内に接合、固定している。
【0078】
これ以外の点では、固体酸化物形燃料電池スタック10dは固体酸化物形燃料電池スタック10cと実質的に相違する訳ではないので、詳細な説明を省略する。
【0079】
第2の実施形態およびその変形例では、ロウ材からなる接合部61dが、ガラスを含む封止材からなる封止部62dにより封止されている。即ち、接合部61d、封止部62dがそれぞれ、接合、封止を分担している。
これに対して、第1の実施形態の変形例2に示したように、ガラスを含む材料からなる封止部を用いて、接合、封止を一括して行うことも可能である。この場合、被覆吸着層63dで封止部を被覆することで、空気極440の被毒を防ぎ、長期に亘って、その劣化を抑制し、長期信頼性を向上できる。
【0080】
(その他の実施形態)
本発明の実施形態は上記の実施形態に限られず拡張、変更可能であり、拡張、変更した実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。