【文献】
RAMM-SCHMIDT, L. et al.,Experience of polystyrene and acrylic resins in two-bed decolorization systems,International Sugar Journal,1989年,91(1084),pp. 65-70,Resin decolorization, Column performance, Economic considerations, Summary, Fig. 1
【文献】
FRIES, W.,Cane sugar decolorization by ion exchange resins,International Sugar Journal,1982年,84(1007),pp. 325-328,Introduction, Summary, Table 1, Fig. 4
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、実施形態に基づいて本発明を説明する。なお、以下の実施形態は本発明の一例であって、本発明は下記の実施形態に限定されるものではない。
【0013】
(蔗糖溶液の精製装置)
図1は、本実施形態の蔗糖溶液の精製方法および精製装置を示す模式図である。
図1の精製装置では、第1塔2がアクリル系のOH形強塩基性陰イオン交換樹脂を充填した単床塔、第2塔4がスチレン系のOH形強塩基性陰イオン交換樹脂とH形弱酸性陽イオン交換樹脂とを混合充填した混床塔となっている。そして、この精製装置を用いて蔗糖溶液を精製(脱塩および脱色)する際には、第1塔2、第2塔4の順に蔗糖溶液を通液する。
【0014】
通常、蔗糖溶液中には色素が含まれるが、アクリル系のOH形強塩基性陰イオン交換樹脂は色素との親和性が低く、色素との吸着力が弱いという特性を有する。一方、スチレン系のOH形強塩基性陰イオン交換樹脂は色素との親和性が高く、色素との吸着力が強いという特性を有する。ここで、蔗糖溶液に含まれる色素にはイオン交換樹脂との吸着力が高いものから低いものまで存在する。
【0015】
従って、アクリル系のOH形強塩基性陰イオン交換樹脂には主にイオン交換樹脂との吸着力が高い色素が吸着する。この一方でアクリル系のOH形強塩基性陰イオン交換樹脂は元々、色素との吸着力が弱いため、このイオン交換樹脂に吸着した色素は、再生液によってイオン交換樹脂から容易に脱離させることができる。この結果、アクリル系のOH形強塩基性陰イオン交換樹脂を劣化させることなく、容易に再生させて使用することができる。
【0016】
また、上記のように第1塔2では主にイオン交換樹脂との吸着力が高い色素が吸着するため、第1塔2を通液後の蔗糖溶液中に残留しているのは、主にイオン交換樹脂との吸着力が低い色素となる。このため、第2塔4のスチレン系のOH形強塩基性陰イオン交換樹脂には主にイオン交換樹脂との吸着力が低い色素が吸着する。従って、色素との吸着力が高いスチレン系のOH形強塩基性陰イオン交換樹脂に吸着した色素であっても、再生液によって容易に脱離させることができる。この結果、スチレン系のOH形強塩基性陰イオン交換樹脂を劣化させることなく、容易に再生させて使用することができる。
【0017】
以上のように、第1塔2にはアクリル系のOH形強塩基性陰イオン交換樹脂、第2塔4にはスチレン系のOH形強塩基性陰イオン交換樹脂を充填することにより、これらのイオン交換樹脂(特に、スチレン系のOH形強塩基性陰イオン交換樹脂)を脱色(色素吸着)によって劣化させることなく、高い能力で蔗糖溶液の脱色および脱塩を行うことができる。また、色素のスチレン系のOH形強塩基性陰イオン交換樹脂との吸着力は高くなく、再生液によってスチレン系のOH形強塩基性陰イオン交換樹脂から容易に脱離させることができるため、再生液の使用量を低減することができる。
【0018】
なお、色素はイオン交換樹脂の母体構造と吸着するものと考えられる。そして、スチレン系のOH形強塩基性陰イオン交換樹脂は母体構造中にベンゼン構造を有するため、類似した構造(例えば、芳香族環構造など)を有する色素との親和性が高く、色素との吸着力が強いものと考えられる。この一方で、アクリル系のOH形強塩基性陰イオン交換樹脂は母体構造中に色素と類似した構造を有さないため、色素との親和性が低く、色素との吸着力が弱いものと考えられる。
【0019】
第1塔2に充填するアクリル系のOH形強塩基性陰イオン交換樹脂としては、例えばアンバーライト(登録商標、以下、同様) IRA958、IRA458(ダウケミカル社製)、PUROLITE(登録商標、以下、同様) A860、A850(ピュロライト社製)などを挙げることができる。アクリル系のOH形強塩基性陰イオン交換樹脂のうち、特にゲル型樹脂は、イオン交換容量が大きく、処理できる蔗糖溶液の量が多くなることから有利である。ゲル型のアクリル系のOH形強塩基性陰イオン交換樹脂としてはアンバーライト IRA458(ダウケミカル社製)、PUROLITE A850(ピュロライト社製)を挙げることができる。なお、ゲル型のイオン交換樹脂は内部の細孔径が均一であると共に、一般的には透明性を有するビーズの形態となる。これに対して、ポーラス型(マクロポーラス型、ポーラス型)のイオン交換樹脂はその内部に異なる径の細孔が存在し細孔径分布を有すると共に、一般的には光を透過しない不透明なビーズの形態となる。従って、顕微鏡によってイオン交換樹脂内部の細孔径を調べたり、イオン交換樹脂に対する光の透過性を調べることによりゲル型のイオン交換樹脂であるか否か、を確認することができる。
【0020】
第2塔4に充填するスチレン系のOH形強塩基性陰イオン交換樹脂としては、例えば、アンバーライト IRA900、IRA402、IRA402BL(ダウケミカル社製)、PUROLITE A500S(ピュロライト社製)、ダイヤイオン SA10A、PA308(三菱化学社製)などを挙げることができる。
【0021】
また、第2塔4に用いるH形弱酸性陽イオン交換樹脂としては、例えば、アンバーライト IRC76、ダウエックス(登録商標、以下、同様) MAC−3(ダウケミカル社製)、PUROLITE C115E(ピュロライト社製)、ダイヤイオン WK10、WK11(三菱化学社製)などを挙げることができる。また、H形弱酸性陽イオン交換樹脂の母体構造は特に限定されないが、例えば、スチレン系やアクリル系のH形弱酸性陽イオン交換樹脂を用いることができる。
【0022】
また、上記の各イオン交換樹脂は、使用前に、予め再生液を通液することにより、OH形(陰イオン交換樹脂の場合)、およびH形(陽イオン交換樹脂の場合)にしたものを用いることができる。
【0023】
(蔗糖溶液の精製方法)
本実施形態の蔗糖溶液の精製方法では、
図1に示すように、第1塔2、第2塔4の順に蔗糖溶液を通液する。すなわち、蔗糖溶液は、
図1の矢印に示す方向に通液され、最初に第1塔2の頂部から底部に向かって蔗糖溶液が通液され、第1塔2の底部から蔗糖溶液が回収される。回収後の蔗糖溶液は、第2塔4の頂部から底部に向かって通液され、第2塔4の底部から蔗糖溶液が回収される。
【0024】
この際、第1塔2に充填したアクリル系のOH形強塩基性陰イオン交換樹脂では、陰イオン(炭酸イオン(CO
32−)、炭酸水素イオン(HCO
3−)、塩化物イオン(Cl
−)等)および主にイオン交換樹脂との吸着力が高い色素を吸着・除去できる。第1塔2を通液後の蔗糖溶液には、第1塔2で除去しきれなかった陰イオン(炭酸イオン(CO
32−)、炭酸水素イオン(HCO
3−)、塩化物イオン(Cl
−)等)、陽イオン、および主にイオン交換樹脂との吸着力が低い色素が残留している。第1塔2を通液後の蔗糖溶液を第2塔4に通液することにより、第2塔4に充填したスチレン系のOH形強塩基性陰イオン交換樹脂では、陰イオン(炭酸イオン(CO
32−)、炭酸水素イオン(HCO
3−)、塩化物イオン(Cl
−)等)および主にイオン交換樹脂との吸着力が低い色素を吸着・除去できる。また、第2塔4に充填したH形弱酸性陽イオン交換樹脂では、陽イオン(カルシウムイオン(Ca
2+)、ナトリウムイオン(Na
+)等)を吸着・除去できる。
【0025】
ここで、アクリル系のOH形強塩基性陰イオン交換樹脂は元々、色素との吸着力が弱いため、このイオン交換樹脂に吸着した色素は、再生液によってイオン交換樹脂から容易に脱離させることができる。この結果、アクリル系のOH形強塩基性陰イオン交換樹脂を劣化させることなく、容易に再生させて使用することができる。また、第2塔4のスチレン系のOH形強塩基性陰イオン交換樹脂には主にイオン交換樹脂との吸着力が低い色素が吸着するため、色素との吸着力が高いスチレン系のOH形強塩基性陰イオン交換樹脂に吸着した色素であっても、再生液によって容易に脱離させることができる。この結果、スチレン系のOH形強塩基性陰イオン交換樹脂を劣化させることなく、容易に再生させて使用することができる。
【0026】
以上のように、本実施形態の精製方法では、第1塔2に充填したアクリル系のOH形強塩基性陰イオン交換樹脂、および第2塔4に充填したスチレン系のOH形強塩基性陰イオン交換樹脂(これらの中でも特に、スチレン系のOH形強塩基性陰イオン交換樹脂)を脱色(色素吸着)によって劣化させることなく、高い能力で繰り返し蔗糖溶液の精製(脱色および脱塩)を行うことができる。また、色素のスチレン系のOH形強塩基性陰イオン交換樹脂との吸着力は高くなく、再生液によってスチレン系のOH形強塩基性陰イオン交換樹脂から色素を容易に脱離させることができるため、再生液の使用量を低減することができる。
【0027】
本実施形態の方法で、精製する蔗糖溶液は特に限定されないが、例えば、甘蔗糖原料糖を溶解、炭酸飽充、ろ過工程を経て得られるブラウンリカーを挙げることができる。
【0028】
(蔗糖溶液の精製装置の再生方法)
図2A〜2Dは、
図1の精製装置を再生する方法を示す模式図である。蔗糖溶液の精製によって、第1塔2内のアクリル系のOH形強塩基性陰イオン交換樹脂から水酸化物イオン(OH
−)が脱離して、陰イオン(炭酸イオン(CO
32−)、炭酸水素イオン(HCO
3−)、塩化物イオン(Cl
−)等)が吸着すると共に色素が吸着する。また、第2塔4内のH形弱酸性陽イオン交換樹脂およびスチレン系のOH形強塩基性陰イオン交換樹脂から、それぞれ水素イオン(H
+)および水酸化物イオン(OH
−)が脱離して、陽イオン(Caイオン(Ca
2+)、Naイオン(Na
+)等)と、陰イオン(炭酸イオン(CO
32−)、炭酸水素イオン(HCO
3−)、塩化物イオン(Cl
−)等)および色素が吸着する。すなわち、蔗糖溶液の精製後、第1塔2内のOH形強塩基性陰イオン交換樹脂は例えば、Cl
−−強塩基性陰イオン交換樹脂、CO
32−−強塩基性陰イオン交換樹脂、HCO
3−−強塩基性陰イオン交換樹脂、となっている。また、精製後、第2塔4内のH形弱酸性陽イオン交換樹脂は例えば、Ca
2+−弱酸性陽イオン交換樹脂、Na
+−弱酸性陽イオン交換樹脂となり、OH形強塩基性陰イオン交換樹脂は例えば、CO
32−−強塩基性陰イオン交換樹脂、HCO
3−−強塩基性陰イオン交換樹脂、Cl
−−強塩基性陰イオン交換樹脂となっている。そして、第1塔2および第2塔4内のOH形強塩基性陰イオン交換樹脂の母体構造等には、色素が吸着している。
【0029】
本実施形態の再生方法ではまず、
図2Aに示すように、第2塔4内に、その底部から頂部に向かって水(H
2O)を通液する。これにより、第2塔4内の強塩基性陰イオン交換樹脂と弱酸性陽イオン交換樹脂は流動し、これらのイオン交換樹脂の比重の差によって分離される(逆洗分離法)。本実施形態では、分離によって、第2塔4内で上部に強塩基性陰イオン交換樹脂4a、下部に弱酸性陽イオン交換樹脂4bが配される。
【0030】
次に、
図2Bに示すように、第2塔4の頂部から、OH形強塩基性陰イオン交換樹脂用の第1の再生液として水酸化ナトリウム水溶液を、第2塔4内に通液すると共に、第2塔4の底部から水を通液する。この水を第1の再生液と向流とすることで、第1の再生液が第2塔4内の下部に分離された弱酸性陽イオン交換樹脂4bにまで到達するのを防止できる。そして、互いに分離されたスチレン系の強塩基性陰イオン交換樹脂と弱酸性陽イオン交換樹脂の境界部に位置する中間コレクターで、第1の再生液を回収する。このように中間コレクターで、第1の再生液を回収することによって、第1の再生液が第2塔4内の下部に分離された弱酸性陽イオン交換樹脂にまで到達して、弱酸性陽イオン交換樹脂が劣化するのを防止することができる。第2塔4内への第1の再生液の通液により例えば、第2塔4内のスチレン系の強塩基性陰イオン交換樹脂から炭酸イオン(CO
32−)、炭酸水素イオン(HCO
3−)、塩化物イオン(Cl
−)を脱離させ、代わりに水酸化物イオン(OH
−)を吸着させて、スチレン系のOH形強塩基性陰イオン交換樹脂とする。
【0031】
次に、第2塔4内を通液後の第1の再生液および追加の第1の再生液(水酸化ナトリウム水溶液)を、第1塔2の頂部から底部に向かって通液する。第2塔4内を通液後の第1の再生液および追加の第1の再生液を、第1塔2内に通液する順序は特に限定されないが、第2塔4内を通液後の第1の再生液を第1塔2内に通液した後、追加の第1の再生液を第1塔2内に通液するのが好ましい。また、場合によっては、第1塔2内に、追加の第1の再生液を通液しなくても良い。これにより、第1塔2内のアクリル系の強塩基性陰イオン交換樹脂が再生される。すなわち、例えば、アクリル系の強塩基性陰イオン交換樹脂から炭酸イオン(CO
32−)、炭酸水素イオン(HCO
3−)、塩化物イオン(Cl
−)を脱離させ、代わりに水酸化物イオン(OH
−)を吸着させて、アクリル系のOH形強塩基性陰イオン交換樹脂とする。
【0032】
また、上記の再生前に、第1塔2のアクリル系の強塩基性陰イオン交換樹脂には主にイオン交換樹脂との吸着力が高い色素、第2塔4のスチレン系の強塩基性陰イオン交換樹脂には主にイオン交換樹脂との吸着力が低い色素が吸着している。アクリル系の強塩基性陰イオン交換樹脂は元々、色素との吸着力が弱いため、このイオン交換樹脂に吸着した色素は、
図2Bの工程で、第1の再生液によって容易に脱離させることができる。この結果、アクリル系の強塩基性陰イオン交換樹脂を劣化させることなく、容易に再生させることができる。また、スチレン系の強塩基性陰イオン交換樹脂に吸着しているのはイオン交換樹脂との吸着力が低い色素であるため、
図2Bの工程で、第1の再生液によって容易に脱離させることができる。このため、
図2Bの工程で使用する第1の再生液の使用量を低減することができる。
【0033】
本実施形態では、第1の再生液として水酸化ナトリウム水溶液を使用したが、第1の再生液はアルカリ溶液であれば特に限定されず、好ましくは水酸化ナトリウム水溶液または水酸化カリウム水溶液であるのが良く、より好ましくは水酸化ナトリウム水溶液であるのが良い。水酸化ナトリウム水溶液中の水酸化ナトリウム濃度はイオン交換樹脂を劣化させないものであれば特に限定されないが、0.05〜3.0規定が好ましく、0.5〜2.0規定がより好ましい。
【0034】
次に、
図2Cに示すように、第2塔4の底部からH形弱酸性陽イオン交換樹脂用の第2の再生液として塩化水素水溶液を第2塔4内に通液し、第2塔4の頂部から水を第2塔4内に通液する。そして、廃液(第2の再生液および水)を中間コレクターから回収する。このように中間コレクターで、第2の再生液を回収することによって、第2の再生液が第2塔4内の上部に分離されたスチレン系のOH形強塩基性陰イオン交換樹脂にまで到達し、スチレン系のOH形強塩基性陰イオン交換樹脂から水酸化物イオン(OH
−)が脱離して、塩化物イオン(Cl
−)が吸着し、Cl
−−強塩基性陰イオン交換樹脂となるのを防止できる。第2の再生液によって、第2塔4内の弱酸性陽イオン交換樹脂から陽イオン(Caイオン(Ca
2+)、Naイオン(Na
+)等)が脱離して再生され、H形弱酸性陽イオン交換樹脂となる。
【0035】
本実施形態では、第2の再生液として塩化水素水溶液を使用したが、第2の再生液は酸溶液であれば特に限定されない。塩化水素水溶液を使用する場合、溶液中の塩化水素濃度はイオン交換樹脂を劣化させないものであれば特に限定されないが、0.05〜2.0規定が好ましく、0.1〜1.0規定がより好ましい。
【0036】
次に、
図2Dに示すように、第2塔4の底部から第2塔4内に圧縮空気を流し、第2塔4内で分離配置されたスチレン系のOH形強塩基性陰イオン交換樹脂とH形弱酸性陽イオン交換樹脂を流動させて混合させる。これにより、圧縮空気の流入を終了後の第2塔4内ではOH形強塩基性陰イオン交換樹脂とH形弱酸性陽イオン交換樹脂が混合充填され、第2塔4は混床となる。
【0037】
各塔への各再生液の通液後、各塔へ水を通液して、各塔に残留している再生液を押し出して塔外へ排出させる。また、
図2Dの工程の後に、各塔へ水を通液して、塔内のイオン交換樹脂を洗浄しても良い。
【実施例】
【0038】
(実施例1)
図1に示した精製装置に、蔗糖溶液として、3.6Lのブラウンリカー(ブリックス糖度55%、導電率248μS/cm(25℃)、pH7.2、色価450 ICUMSA)を、通液条件:300mL/h、45℃で、
図1の矢印に示す向きに通液した。そして、第2塔4の底部から蔗糖溶液の全量を回収し、導電率、pHおよび色価を測定した。
図1の精製装置で使用したイオン交換樹脂を表1に示す。
【0039】
蔗糖溶液の通液終了後、第1塔2および第2塔4内に純水を通液することにより、これらの塔から蔗糖溶液を洗い流した。次いで、第2塔4の底部から頂部に向かって純水(溶液)を通液し、第2塔4内の強塩基性陰イオン交換樹脂と弱酸性陽イオン交換樹脂を流動させて、強塩基性陰イオン交換樹脂および弱酸性陽イオン交換樹脂がそれぞれ、上部および下部に配されるように分離した。次に、第2塔4の頂部から1規定の水酸化ナトリウム水溶液(第1の再生液)200mLを通液し、第2塔4の底部から純水を通液して第1の再生液および純水を、強塩基性陰イオン交換樹脂および弱酸性陽イオン交換樹脂の境界に位置する中間コレクターより排出させた。
【0040】
この後、第2塔4を通液後の水酸化ナトリウム水溶液を、第1塔2内の頂部から底部に向かって通液した。次いで、第1塔2の頂部から底部に向かって1規定の水酸化ナトリウム水溶液100mLを通液した。この後、第1塔2および第2塔4のOH形強塩基性陰イオン交換樹脂をそれぞれ、十分な量の純水で洗浄した。
【0041】
次に、第2塔4の底部から1規定の塩化水素水溶液(第2の再生液)を200mL、通液し、第2塔4の頂部から純水を通液して第2の再生液および純水を中間コレクターから排出させた。さらに、第2塔4の頂部から純水を通液することで、第2塔4内のH形弱酸性陽イオン交換樹脂を十分に水洗し、塔内に残る塩化水素を洗い流した。
【0042】
次に、第2塔4の底部から空気を導入して、塔内のスチレン系のOH形強塩基性陰イオン交換樹脂とH形弱酸性陽イオン交換樹脂を混合し、次のサイクルの蔗糖溶液の精製を行った。
【0043】
上記の蔗糖溶液の通液と、精製装置の再生を40回(サイクル)、繰り返し、1、10、20、30、40サイクル目の第2塔4に通液後の蔗糖溶液の導電率 (μS/cm)、pH、および色価 (ICUMSA)を測定した。これらの結果を表2に示す。また、40サイクル後の各イオン交換樹脂の分析結果を表3に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
【表3】
【0047】
(比較例1)
第1塔2に充填する陰イオン交換樹脂をスチレン系のOH形強塩基性陰イオン交換樹脂とした以外は、実施例1と同じ方法で蔗糖溶液の精製を行った。本比較例で使用したイオン交換樹脂を上記表1に示す。
【0048】
また、精製装置の再生工程では、実施例1の
図2Bの工程において、中間コレクターから回収した水酸化ナトリウム水溶液(第1の再生液)を第1塔2に通液せず、第1塔2の頂部から底部に向かって新たに通液する1規定の水酸化ナトリウム水溶液の量を200mLとした。これ以外は、実施例1と同様にして精製装置の再生を行った。
【0049】
上記の蔗糖溶液の通液と、精製装置の再生を40回(サイクル)、繰り返し、実施例1と同様にして、導電率 (μS/cm)、pH、および色価 (ICUMSA)を測定した。これらの結果を表4に示す。また、40サイクル後の各イオン交換樹脂の分析結果を表5に示す。
【0050】
【表4】
【0051】
【表5】
【0052】
表2、4の結果より、実施例1では、40サイクル終了後も導電率、pHおよび色価が低い値を維持していることが分かる。また、40サイクル後において、実施例1は、比較例1よりも導電率、pHおよび色価が低い値となっていることが分かる。
【0053】
また、表3、5の結果より、実施例1の第1塔のアクリル系の陰イオン交換樹脂(アンバーライトIRA958)は色素等に汚染されにくいため、比較例1における第1塔のスチレン系の陰イオン交換樹脂(アンバーライトIRA900)と比べて使用後の総交換容量の低下を大幅に抑制できることが分かる。さらに、第2塔のスチレン系の陰イオン交換樹脂(アンバーライト IRA900)についても、第1塔にアクリル系の陰イオン交換樹脂を用いた実施例1が、第1塔にスチレン系の陰イオン交換樹脂を用いた比較例1と比べて使用後の総交換容量の低下を抑制できることが分かる。