(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記識別子設定部は、前記携帯端末がデータの取得後であって前記記憶部のデータが更新された際に、前記データの取得要求を前記通信識別子として設定することを特徴とする請求項1に記載の作業機用アクセスポイント装置。
作業機に構築された車載ネットワークと前記車載ネットワークとは異なる外部ネットワーク上の携帯端末とを無線通信で接続するための作業機用アクセスポイント装置と、携帯端末とを備えた作業機の通信システムであって、
前記作業機用アクセスポイント装置は、作業機のデータを記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶されたデータの取得要求を、前記携帯端末が取得可能であって前記作業機用アクセスポイント装置を識別可能な通信識別子として設定する識別子設定部と、前記識別子設定部で設定されて前記データの要求を含む前記通信識別子をブロードキャスト信号として外部に送信可能で、且つ前記記憶部に記憶されたデータを当該携帯端末に送信可能な通信部と、を備えていることを特徴とする作業機の通信システム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
図1は、作業機の通信システムの全体図を示したものである。
図1に示すように、作業機の通信システム1は、農業機械や建設機械等の作業機2に搭載された作業機用アクセスポイント装置4と、この作業機用アクセスポイント装置4と無線通信を行う携帯端末3とを備えたシステムである。この作業機の通信システム1では、作業機用アクセスポイント装置4に携帯端末3を接続することにより、例えば、携帯端末3は、作業機2に関する情報を作業機用アクセスポイント装置4を介して取得することができる。一方、作業機2は、作業機用アクセスポイント装置4を介して携帯端末3から様々な信号を取得することができる。
【0013】
以下、作業機を農業機械の1つであるトラクタとし、作業機の通信システム及び作業機用アクセスポイント装置について詳しく説明する。説明の便宜上、「作業機用アクセスポイント装置」を「アクセスポイント装置」といい説明を進める。
図9に示すように、トラクタ2は、前後に車輪を有する走行車両(走行車体)10に、エンジン11、変速装置12等が搭載されて構成されている。この走行車両10の後部には、3点リンク機構13などが昇降可能に設けられている。この3点リンク機構13には、耕耘装置、肥料散布装置、農薬散布装置、播種散布装置、収穫装置などの作業装置14が着脱自在となっている。また、エンジン11の後方には、独立搭載型のキャビン15が設けられており、キャビン15内に運転席16が設けられている。運転席16の周囲にはトラクタ2の様々な情報を表示する表示装置18が設けられている。
【0014】
トラクタ2には、複数の電子機器、即ち、電装品が搭載されている。この電子機器は、トラクタ2を作動させるための機器であって、例えば、センサ(アクセルペダルセンサ、レバー検出センサ、クランク位置センサ、燃料センサ、水温センサ等)、スイッチ(イグニッションスイッチ、駐車ブレーキスイッチ、PTOスイッチ等)、表示パネル等で構成された表示装置、トラクタを制御する制御装置、作業装置14を制御する制御装置等である。これら複数の電子機器は通信線に接続されていて、これにより、トラクタ2内には、車載ネットワークN1が構成されている。この車載ネットワークN1は、例えば、CAN(Controller Area Network)、LIN(Local Interconnect Network)、FlexRay等である。
【0015】
この車載ネットワークN1には、センサで検出された検出信号、スイッチの状態を示すスイッチ信号、制御装置の制御によってトラクタ2の稼働する稼働部(例えば、エンジン、電磁弁、ポンプ等)を動作させるための指令信号(制御信号)等が出力される。また、車載ネットワークN1には、警告や故障などを知らせるための報知信号も出力される。
図1は、複数の制御装置と、車載ネットワークと、作業機用アクセスポイント装置とを示した図である。
【0016】
図1に示すように、トラクタ2には、制御装置20として、例えば、エンジン11を制御する第1制御装置20Aと、変速装置12や3点リンク機構13を制御する第2制御装置20Bと、表示装置18を制御する第3制御装置20Cとが備えられている。これら第1制御装置20A、第2制御装置20B、第3制御装置20C等の制御装置20には、センサやスイッチ等が接続されており、センサで検出された検出信号やスイッチの状態を示すスイッチ信号は制御装置20を介して車載ネットワークN1に出力される。
【0017】
第1制御装置20Aは、例えば、アクセルペダルを操作したときのアクセルペダルの操作量を検出するアクセルペダルセンサ、変速用のシフトレバーを操作したときのシフトレバー位置を検出するレバー検出センサ、クランク位置を検出するクランク位置センサ等の信号に基づいてエンジンの回転数等を制御する。第2制御装置20Bは、3点リンク機構13を操作する操作部材(操作レバー)の操作量を検出するポジションレバーセンサ等に基づいて3点リンク機構13の昇降を制御する。また、第3制御装置20Cは、センサ、スイッチ等の信号に基づいて表示装置18を制御するものであって、例えば、表示装置18に設けられた指針計の動き、LEDのオン/オフ、液晶表示部の表示等を制御する。第1制御装置20A、第2制御装置20B、第3制御装置20Cの制御は上述したものに限定されない。
【0018】
図1に示すように、アクセスポイント装置4は、トラクタ2の車載ネットワークN1と、トラクタ2の外部のネットワーク(外部ネットワーク)とを接続する装置である。このアクセスポイント装置4は、携帯端末3との無線通信を行う第1通信部(通信モジュール)30と、第1通信部30の制御を行う制御部31と、第1記憶部32と、計時部36とを備えている。
【0019】
第1通信部30は、通信規格であるIEEE802.11シリーズに準拠したWi−Fi(登録商標)による無線通信を行う。詳しくは、第1通信部30は、外部から受信したデータ(信号)をアクセスポイント装置4の通信方式に変換して制御部31に出力したり、制御部31から送信されたデータ(信号)をIEEE802.11シリーズの通信方式に変更して外部に出力する。つまり、第1通信部30は、外部から受信したデータ(信号)を制御部31に出力したり、制御部31から出力されたデータ(信号)を外部に送信する。
【0020】
制御部31は、車載ネットワークN1から受信したデータをアクセスポイント装置4の通信方式に変換して、車載ネットワークN1から受信したデータを第1通信部30に送信する。なお、制御部31の動作は上述したものに限定されない。
計時部36は、例えば、トラクタ2が稼働した累積稼働時間(アワメータ)を計測するタイマである。この実施形態では、計時部36は、累積稼働時間を計測するタイマして説明を進めるが、時刻を計測するタイマであってもよいし、その他、所定の時間を計測するタイマであってもよい。
【0021】
第1記憶部32は、不揮発性のメモリ等から構成されている。この第1記憶部32は、無線通信の接続等に関する通信設定情報と、トラクタ1から取得した様々な稼働情報とを記憶している。詳しくは、第1記憶部32は、ネットワーク上において設定された固有のMACアドレス、アクセスポイント装置4を識別するための識別子(例えば、サービスセット識別子、即ち、SSID)、暗号化キー(ネットワークキー)等を通信設定情報として記憶している。
【0022】
また、第1記憶部32は、検出信号、スイッチ信号、指令信号等の稼働情報を記憶する。第1記憶部32は、
図2に示すように、例えば、検出信号から得られたエンジン回転数、水温、油温等の稼働情報を、計時部36で計時した累積稼働時間と対応付けて記憶する。
携帯端末3は、例えば、比較的演算能力の高いスマートフォン(多機能携帯電話)やタブレットPC等で構成されている。
図1に示すように、携帯端末3は、第2通信部(通信手段)40と、第2記憶部41とを備えている。
【0023】
第2通信部40は、少なくともアクセスポイント装置4と無線通信を行う通信装置で構成されている。第2通信部40は、例えば、通信規格であるIEEE802.11シリーズのWi-Fi(Wireless Fidelity、登録商標)などによって、アクセスポイント装置4と近距離の無線通信を行う。
なお、第2通信部40は、近距離無線通信に加えて、データ通信網や携帯電話通信網などによりサーバ5等と無線通信を行うものであってもよい。また、携帯端末3は、測位衛星(例えば、GPS衛星)から送信された信号(GPS衛星の位置、送信時刻、補正情報等)を受信し、受信した信号に基づいて自分の位置(例えば、緯度、経度)を検出する位置検出部42を有していてもよい。位置検出部42を設けた場合は、農作業者が農作業時に携帯端末3を所持することにより、農作業時の農作業者の位置(作業者位置)を検出することができる。
【0024】
第2記憶部41は、不揮発性のメモリ等から構成され、アクセスポイント装置4から送信された稼働情報等のデータを記憶する。或いは、第2記憶部41は、サーバ5から送信されたデータを記憶する。
図3は、アクセスポイント装置から稼働情報を取得するまでのフローチャートを示している。
【0025】
稼働情報を取得するためには、まず、
図3に示すS1〜S7までの処理を行って、アクセスポイント装置4と携帯端末3との無線通信を確立する。
詳しくは、
図3に示すように、アクセスポイント装置4が起動している状態では、第1通信部30は第1記憶部32の通信設定情報を参照し、サービスセット識別子(SSID)を外部に出力する(S1)。携帯端末3は、第1通信部30から外部に送信されたSSIDを受信すると(S2)、SSIDを液晶パネル等で構成された表示部43に表示する(S3)と共に、表示部43にネットワークキーの入力画面を表示する(S4)。この入力画面にネットワークキーが入力されると、当該携帯端末3はネットワークキーをアクセスポイント装置4に送信する(S5)。携帯端末3から送信されたネットワークキーがアクセスポイント装置4に入力されると、制御部31は、携帯端末3から送信されたネットワークキーと、第1記憶部32に記憶されたネットワークキーとの照合(認証)を行う(S6)。ここで、ネットワークの照合(認証)が成立すると、制御部31は、相互間でのデータ通信を許可する(S7)。このように、稼働情報(データ)を取得するためには、アクセスポイント装置4と携帯端末3との無線通信を確立する。
【0026】
携帯端末3からのネットワークキーと、第1記憶部32に記憶されたネットワークキーとの照合が不成立になった場合は、制御部31は、携帯端末3との無線通信の確立をせず、データ通信は許可しない。なお、第1通信部30と携帯端末3との無線通信の確立する処理は上述したものに限定されず、ネットワークキーを入力画面に表示する処理等は省略してもよい。
【0027】
次に、携帯端末3を操作して、当該携帯端末3からアクセスポイント装置4に稼働情報の送信を要求する(S8)。例えば、携帯端末3の表示部43に稼働情報の収集を指令する収集ボタンを表示し、作業者等によって収集ボタンが選択された際に、携帯端末3からアクセスポイント装置4に稼働情報の送信を要求する。なお、携帯端末3からアクセスポイント装置4への稼働情報の送信要求は、上述したものに限定されない。
【0028】
そして、携帯端末3からの稼働情報の送信要求を、アクセスポイント装置4が受信すると、当該アクセスポイント装置4は第1記憶部32に記憶された稼働情報を携帯端末3に送信する(S9)。
このように、アクセスポイント装置4と携帯端末3との無線通信を確立することによって、アクセスポイント装置4の第1記憶部32に記憶された稼働情報を第1通信部30を介して、携帯端末3に送信することができる。携帯端末3が取得した稼働情報は、第2記憶部41に記憶される。また、携帯端末3のデータを、第1通信部30、制御部31、制御装置20等の電子機器に送信することができる。
【0029】
なお、携帯端末3の第2通信部40により、第2記憶部41に記憶した稼働情報を、携帯電話通信網或いはデータ通信網によって、サーバ5に送信することも可能である。サーバ5では、携帯端末3から送信された稼働情報を稼働情報データベース6に記憶する。そして、サーバ5は、稼働情報データベース6に記憶した稼働情報を用いて、稼働情報の整理や分析を行うことが可能である。
【0030】
さて、同一の携帯端末3からアクセスポイント装置4への稼働情報の送信要求が短期間にあった場合、同一の携帯端末3に、前回と同じ稼働情報が当該携帯端末3に送信されることになる。また、1の携帯端末3に稼働情報の送信直後に、1の携帯端末3とは別の携帯端末3から送信要求があった場合は、別の携帯端末3にも、1の携帯端末3に格納された稼働情報と同一の稼働情報が送信されることになる。つまり、第1記憶部32の稼働情報の更新前に、同一或いは異なる携帯端末3から稼働情報の送信要求があった場合には、重複して稼働情報が携帯端末3に保存されてしまうことになる。
【0031】
そこで、作業機の通信システム1では、アクセスポイント装置4から送信される稼働情報が出来る限り重複しない対策をとっている。
以下、稼働情報の送信について、さらに、詳しく説明する。
図1に示すように、アクセスポイント装置4の制御部31は、識別子設定部34を備えている。
【0032】
識別子設定部34は、第1記憶部32に記憶された稼働情報の取得要求を、携帯端末3が取得可能な通信識別子として設定する。即ち、アクセスポイント装置4が携帯端末3に対して取得要求を行いたいとき、識別子設定部34は、この取得要求をサービスセット識別子(SSID)として設定する。例えば、識別子設定部34は、第1記憶部32の稼働情報を監視しておき、当該稼働情報が更新された際に、稼働情報を取得してほしいという取得要求を英数字、例えば、「TRACTOR−DATAUP」で示し、当該「TRACTOR−DATAUP」をサービスセット識別子である通信識別子として設定する。詳しくは、識別子設定部34は、通信識別子を設定するに際し、当該通信識別子の前部(ハイフンの前)の文字(TRACTOR)を、アクセスポイント装置4やトラクタ2を特定することができる識別情報として設定し、この識別情報(TRACTOR)に続く後部に、取得要求を示す「DATAUP」を加えている。これにより、通信識別子の前部に示された文字によって、通信識別子が、どのアクセスポイント装置4、或いは、トラクタ2から送信されているかを把握することが可能である。なお、取得要求を示す通信識別子の設定は、上述したものに限定されない。
【0033】
そして、通信識別子の設定後、第1通信部30は、通信識別子を送信する。また、通信識別子の送信後に当該通信識別子に示された要求に応じて、携帯端末3が稼働情報を取得した際には、第1通信部32は、「TRACTOR−DATAUP」で示された通信識別子の送信を停止する。
上述した取得要求について、
図4を用いて、さらに詳しく説明する。
【0034】
図4に示すように、時点P1〜時点P2の区間では、携帯端末3とアクセスポイント装置4との無線通信を確立し、アクセスポイント装置4から携帯端末3に向けて稼働情報を送信したとする。稼働情報の送信完了後は、
図2に示すように、第1記憶部32には、稼働情報と、送信完了済みを示すフラグFとが関連付けられて記憶される。
詳しくは、時点P2において、携帯端末3における稼働情報の受信が完了した場合、携帯端末3は、稼働情報の受信完了をアクセスポイント装置4に返答する。アクセスポイント装置4の制御部31は、携帯端末3からの返答を受けて、携帯端末3に送信した稼働情報に対して、
図2に示すように、送信済みのフラグFを関連付け、当該関連付けたフラグFを第1記憶部32に記憶する。
【0035】
図5は、稼働情報送信後に更新された稼働情報を示している。
図5に示すように、稼働情報送信後、所定時間が経過すると、第1記憶部32には、新に取得した稼働情報が累積稼働時間と共に記憶される。例えば、
図4に示す時点P3で、稼働情報が更新されたとすると、識別子設定部34は、取得要求を示す通信識別子(TRACTOR−DATAUP)を設定する。そして、第1通信部30は、「TRACTOR−DATAUP」で示される通信識別子を出力する。
【0036】
ここで、「TRACTOR−DATAUP」で示される通信識別子を時点P4において、携帯端末3が受信後し、当該携帯端末3がアクセスポイント装置4に接続し、送信要求を行ったとする。そうすると、アクセスポイント装置4の制御部31は、
図5に示すように、送信済みではない稼働情報及び累積稼働時間(未送信の稼働情報及び稼働累積時間)Q1を第1記憶部32から読み出し、読み出した稼働情報及び累積稼働時間Q1を第1通信部30から携帯端末3に送信する。
【0037】
その後、時点P5において、携帯端末3が稼働情報の受信を完了すると、当該携帯端末3は、稼働情報を受信完了したことを示す完了情報をアクセスポイント装置4に向けて送信する。携帯端末3から送信された完了情報をアクセスポイント装置4が受信すると、第1通信部30は、通信識別子である「TRACTOR−DATAUP」の送信を停止する。
【0038】
以上、アクセスポイント装置4は、第1記憶部32と、識別子設定部34と、第1通信部30を備えているため、第1記憶部32の稼働情報が更新された際に、稼働情報の取得要求を通信識別子として携帯端末に送信することができる。言い換えれば、稼働情報の取得要求をブロードキャスト信号として送信することができる。それゆえ、携帯端末3側では、通信識別子を受信するだけで、稼働情報が更新されたことを把握し、更新された稼働情報を更新後に取得することができる。つまり、携帯端末3が、更新前の同一の稼働情報を重複して取得することを防止することができる。
【0039】
特に、通信識別子に示された要求に応じて携帯端末3が稼働情報を取得した際には、第1通信部30は、通信識別子の送信を停止する。それゆえ、複数の携帯端末3が同時に通信識別子を受信した場合にあっては、複数の携帯端末3のうち、1台の携帯端末3が取得要求に応じて稼働情報を取得したことを、他の携帯端末3が把握することができ、この点からも、更新前の同一の稼働情報を重複して取得することを防止することができる。
【0040】
上述した実施形態では、送信済みの稼働情報に対応するフラグFを第1記憶部32に記憶することによって、更新前の稼働情報と更新後の稼働情報とを区別していたが、これに代え、送信済みの稼働情報に対応する累積稼働時間を、送信完了時間として第1記憶部32に記憶し、この送信完了時間に基づいて、更新前の稼働情報と更新後の稼働情報とを区別してもよい。
【0041】
次に、送信完了時間を第1記憶部32に記憶した場合の変形例について説明する。
図6に示すように、第1記憶部32には、稼働情報の項目毎に送信済みの累積稼働時間(送信完了時間)が示された送信テーブルが記憶されている。詳しくは、累積稼働時間が「116.1h」〜「116.7h」までのエンジン回転数を携帯端末3が受信した場合、当該携帯端末3は、受信した複数のエンジン回数数のうち、最新の累積稼働時間である「116.7h」を送信完了時間として、アクセスポイント装置4に返信する。アクセスポイント装置4の制御部31は、携帯端末3からの返答を受けて、
図6に示すように、送信テーブルに示されたエンジン回転数に対応する項目に、送信完了時間である「116.7h」を記憶する。
【0042】
送信テーブルにおける最新の累積稼働時間(送信完了時間)を設定後、識別子設定部34は、第1記憶部32に記憶されるエンジン回転数の累積稼働時間、即ち、更新記憶時間を監視する。そして、送信テーブルに示されたエンジン回転数の送信完了時間(116.7h)よりも、エンジン回転数の更新記憶時間が大きくなった時点で、識別子設定部34は、取得要求を示す通信識別子を設定し、第1通信部30は、通信識別子を出力する。
【0043】
上述した変形例では、各項目(エンジン回転数、水温、油温)の送信完了時間のうち、所定の送信完了時間(エンジン回転数の送信完了時間)と、所定の更新記憶時間(エンジン回転数の送信完了時間)とを比較し、所定の送信完了時間よりも所定の更新記憶時間が大きくなった時点で取得要求を行っていた。これに代え、
図7に示すように、項目毎に送信完了時間と更新記憶時間との比較を実施し、全ての項目の送信完了時間がそれぞれ更新記憶時間を上回った場合に取得要求を行ってもよい。このようにすれば、第1記憶部32に記憶している全ての項目が更新された時点で、携帯端末3に対して取得要求を行うことができ、稼働情報の重複取得を防止することができる。
[第2実施形態]
第2実施形態は、農業機械にアクセスポイント装置4を搭載して、農業機械のデータを収集する場合の実施形態を示している。第1実施形態と異なる構成について説明する。
【0044】
図8に示すように、アクセスポイント装置4は、車載ネットワークに出力された稼働情報(作業機の状態)のうち、農業に関する情報(農作業データという)を収集する情報収集部39を備えている。この情報収集部39は制御部31に格納されたプログラム等から構成されている。
情報収集部39には、予め収集する項目が設定されており、農業機械が稼働すると、予め設定された項目に基づいて、自動的に様々な農作業データを自動的に収集する。例えば、トラクタ2の後部に作業装置14として耕耘装置が連結されてトラクタ2が動作したときは、ロータリーの回転数、ロータリーの負荷、エンジン回転数、車速、耕深などのデータが車載ネットワークに出力される。情報収集部39は、ロータリーの回転数、ロータリーの負荷、エンジン回転数、車速、耕深などのデータを農作業データとして取得する。なお、ロータリーの回転数、ロータリーの負荷、エンジン回転数、車速、耕深等は、トラクタ2や耕耘装置に装着されたセンサ等の電子機器により検出される。
【0045】
また、作業装置14が肥料散布装置、農薬散布装置、播種散布装置である場合は、車速、エンジン回転数、散布量(肥料散布量、農薬散布量、播種散布量)などのデータが車載ネットワーク上に出力され、情報収集部39は、車速、エンジン回転数、肥料散布量、農薬散布量、播種散布量を農作業データとして取得する。なお、肥料散布量、農薬散布量、播種散布量等もトラクタ2や肥料散布装置、農薬散布装置、播種散布装置に装着された電子機器等により検出される。或いは、作業装置14が収穫装置である場合は、車速、エンジン回転数、収穫量などのデータが車載ネットワーク上に出力され、情報収集部39は、車速、エンジン回転数、収穫量を農作業データとして取得する。収穫量もトラクタや収穫装置に装着された電子機器により検出される。
【0046】
情報収集部39によって収集された農作業データは、第1記憶部32に一時的に記憶される。第1記憶部32には、トラクタ2の作動時に農作業データが逐次、蓄積される。情報収集部39は、収集した農作業データを通信用のデータに演算する。車載ネットワークの農作業データは、数ms間隔で流れており、農作業データとしてはデータ量が膨大となることがある。そのため、情報収集部39では、収集した農作業データを統計処理等によって演算して、例えば、数十秒の単位のデータへと変換し、変換したデータを第1記憶部32に記憶する。
【0047】
さて、農作業を行うにあたっては、複数の農作業者(例えば、作業者A、作業者B、作業者C)で農作業を行うことがある。この場合、農業機械2で農作業を行ったときの農作業データは、作業者A、作業者B、作業者Cのそれぞれが所持する携帯端末3で取得することが可能である。従来の技術では、アクセスポイント装置4から取得要求が無いため、農作業データが何時の時点で更新されたかを把握することができず、各作業者の携帯端末3のそれぞれが複数回に亘って農作業データを一斉に取得してしまう可能性がある。
【0048】
一方、本発明では、農作業データの更新後に、アクセスポイント装置4から取得要求を行うため、作業者A、作業者B、作業者Cは、携帯端末3の表示部43に表示された通信識別子を見ることにより、農作業データが更新されたことを把握することができる。また、作業者A、作業者B、作業者Cのうち、農作業データが更新されていることに気づいた作業者が表示部43に表示した収集ボタンを選択して、携帯端末3で農作業データを取得することにより、更新の農作業データを取得することができる。更新の農作業データの取得後は、アクセスポイント装置4から外部に送信される取得要求が停止するため、この取得要求の停止によって、表示部43に通信識別子が表示されなくなり、これにより、他の作業者は、誰かが更新された農作業データを取得したことが分かる。また、携帯端末3から農作業データをサーバ5に送信する場合にあっては、サーバ5に農作業データが重複して保存されてしまうことを防止することができる。
【0049】
上述した実施形態では、取得要求をサービスセット識別子である通信識別子で表し、その通信識別子を送信することにより、携帯端末3に取得要求を行っているが、取得要求用の通信識別子(第1識別子)と、データ通信用の通信識別子(第2識別子)とを分けて、アクセスポイント装置4から送信するようにしてもよい。即ち、アクセスポイント装置4は、データ通信用の第2識別子を記憶しており、起動すると、接続有無に関わらず第2識別子を必ず送信する。そして、第2識別子を用いて、
図3に示した手順で、携帯端末3とアクセスポイント装置4との無線通信を確立する。一方、アクセスポイント装置4は、取得要求を行う時点で、第1識別子を送信する。これによれば、アクセスポイント装置4に携帯端末3を接続した状況下において、当該アクセスポイント装置4と携帯端末3との接続を遮断することなく、第1識別子を携帯端末3に向けて送信することができる。言い換えれば、サービスセット識別子である通信識別子を変化させた場合、通信識別子を変化させた時点で一旦通信が切れることがあるが、この場合は、2つの識別子を有し、一方をデータ通信用としているため、アクセスポイント装置4と携帯端末3との接続を継続することができる。
【0050】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
上述した実施形態では、表示部43に表示した収集ボタンを選択することによって、稼働情報を収集していたが、これに代え、携帯端末3がデータの取得要求を示す通信識別子を受信した際に、当該携帯端末3が通信識別子を送信してきたアクセスポイント装置4に接続し、自動的に稼働情報を取得してもよい。この場合、アクセスポイント装置4は、通信識別子を送信後、最も早くログインできた携帯端末3のみに稼働情報を送信することが望ましい。