特許第6283252号(P6283252)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6283252
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】穿孔器およびガス排出装置
(51)【国際特許分類】
   F17C 7/00 20060101AFI20180208BHJP
   B60R 21/274 20110101ALI20180208BHJP
   B62J 27/00 20060101ALI20180208BHJP
   A62B 99/00 20090101ALI20180208BHJP
   B63C 9/18 20060101ALI20180208BHJP
   A41D 13/018 20060101ALI20180208BHJP
   A62C 13/74 20060101ALI20180208BHJP
   F41B 11/62 20130101ALI20180208BHJP
【FI】
   F17C7/00 A
   B60R21/274
   B62J27/00 B
   A62B99/00 E
   B63C9/18 A
   A41D13/018
   A62C13/74
   F41B11/62
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-82482(P2014-82482)
(22)【出願日】2014年4月14日
(65)【公開番号】特開2015-202754(P2015-202754A)
(43)【公開日】2015年11月16日
【審査請求日】2017年3月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100098408
【弁理士】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】黒田 隆雄
(72)【発明者】
【氏名】藤原 友秀
(72)【発明者】
【氏名】若槻 彰浩
【審査官】 神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/208290(WO,A1)
【文献】 特開2001−158686(JP,A)
【文献】 特開2003−026065(JP,A)
【文献】 特表2002−513347(JP,A)
【文献】 特開平08−268211(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3068775(JP,U)
【文献】 国際公開第2000/073126(WO,A1)
【文献】 登録実用新案第3069811(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3104482(JP,U)
【文献】 特表2006−502030(JP,A)
【文献】 実開昭58−193952(JP,U)
【文献】 特開2009−024887(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 7/00
B60R 21/274
B62J 27/00
A62B 99/00
B63C 9/18
A41D 13/018
A62C 13/74
F41B 11/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスボトルからのガス出口の閉塞部材を破壊して開口させてガスを流出させるための穿孔器であって、
筒状ハウジング内に点火手段、第1ピストンおよび第2ピストンが収容されており、
前記筒状ハウジングが、
第1端部側の第1開口部、第1端部とは反対側の第2端部側の第2開口部、および周壁部に形成された第3開口部の3つの開口部を有しており、
第1開口部側に点火手段が固定され、第2開口部側がガスボトルと接続できるようになっており、第3開口部がガス排出部になるものであり、
第1ピストンおよび第2ピストンが、前記筒状ハウジングの前記点火手段側から第2開口部側に向かって第1ピストンと第2ピストンの順に配置されているものであり、
点火手段の作動による圧力を受けたとき、第1ピストンが前記筒状ハウジング内を軸方向に移動し、第1ピストンの移動を受けて第2ピストンが前記筒状ハウジング内を第2開口部側に移動できるようになっている、穿孔器。
【請求項2】
前記筒状ハウジングが、第1ピストンが移動できる第1ピストン移動空間と、第2ピストンが移動できる第2ピストン移動空間を有し、前記第1ピストン移動空間長さが、前記第2ピストン移動空間長さよりも短くなっており、
第1ピストンが最大外径(D1)部分を有し、第2ピストンが前記最大外径(D1)部分よりも外径の小さな最大外径(D2)部分を有しているものであり、
第1ピストン移動空間が、第1ピストンの最大外径(D1)部分を衝突させて軸方向への移動を停止させるための第1凸部を有し、
第2ピストン移動空間が、第2ピストンの最大外径(D2)部分を衝突させて軸方向への移動を停止させるための第2凸部を有している、請求項1記載の穿孔器。
【請求項3】
前記筒状ハウジングが、第1ピストンが移動できる第1ピストン移動空間と、第2ピストンが移動できる第2ピストン移動空間を有し、前記第1ピストン移動空間長さが、前記第2ピストン移動空間長さよりも短くなっており、
第2ピストンが、最大外径(D2)部分となる第2ピストンヘッドと、第2ピストンヘッドよりも外径の小さい第2ピストンロッドを有しているものであり、
第1ピストンが、第2ピストンヘッドの最大外径(D2)よりも大きな最大外径(D1)部分を有しているものであり、
第1ピストン移動空間が、第1ピストンの最大外径(D1)部分を衝突させて軸方向への移動を停止させるための第1凸部を有し、
第2ピストン移動空間が、第2ピストンの最大外径(D2)部分となる第2ピストンヘッドを衝突させて軸方向への移動を停止させるための第2凸部を有しており、
第2ピストンが、第2ピストンヘッドの少なくとも一部が第1ピストン移動空間内にあるように配置され、第2ピストンロッドが第2凸部で支持されている、請求項1記載の穿孔器。
【請求項4】
前記第2ピストンヘッドが、作動時に破断可能なストッパ部材で筒状ハウジングの内壁面に対して保持され、第2ピストンヘッドの少なくとも一部が第1ピストン移動空間にあるように配置されている、請求項3記載の穿孔器。
【請求項5】
ガスボトルからのガス出口の閉塞部材を破壊して開口させてガスを流出させるための穿孔器であって、
ハウジング内に点火手段、第1ピストンおよび第2ピストンが収容されており、
前記ハウジングが、
第1筒状ハウジングと第2筒状ハウジングの組み合わせからなるものであり、
一端が開口され、他端が閉塞された第1筒状ハウジングの周壁面を貫通して、両端が開口された第2筒状ハウジングが接続されたものであり、
第1筒状ハウジングに形成された第1開口部と、第2筒状ハウジングの第1筒状ハウジングとの接続部と軸方向の反対側に形成された第2開口部、第2筒状ハウジングの周壁面に形成された第3開口部の3つの開口部を有しているものであり、
第1開口部側に点火手段が固定され、第2開口部側がガスボトルと接続できるようになっており、第3開口部がガス排出部になるものであり、
第1ピストンが、第1ピストンヘッドと第1ピストンヘッドから延ばされた第1ピストンロッドからなり、第1ピストンロッドの先端面が第1傾斜面を有しているものであり、
第2ピストンが、第2ピストンヘッドと第2ピストンヘッドから延ばされた第2ピストンロッドからなり、第2ピストンヘッドの底面が第1傾斜面と当接できる形状の第2傾斜面を有しているものであり、
前記ハウジング内において、
第1ピストンが、第1ピストンヘッドが前記点火手段側になるように第1筒状ハウジング内に配置され、
第2ピストンが、第2ピストンヘッドが第1筒状ハウジング内に位置し、第2ピストンロッドが第2筒状ハウジング内に位置するように配置され、
さらに第1ピストンの第1傾斜面と第2ピストンの第2傾斜面が対向するように配置されているものであり、
点火手段の作動による圧力を受けたとき、第1ピストンが第1筒状ハウジング内を軸方向に移動して、第1ピストンの第1傾斜面が第2ピストンの第2傾斜面に衝突することで、第2ピストンが第2筒状ハウジング内を軸方向に移動できるようになっている、穿孔器。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の穿孔器とガスボトルが組み合わされたガス排出装置であって、
前記穿孔器のハウジングの第2開口部側に前記ガスボトルが接続されている、ガス排出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスボトルからのガス出口の閉塞部分を破壊して開口させてガスを流出させるための穿孔器、それを使用したガス排出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気式点火器とピストンを組み合わせた装置であり、電気式点火器(または電気式点火器と火薬成分の組み合わせ)が作動して発生する燃焼生成物による圧力を受けて、前記ピストンを所定方向に移動させる装置が知られている。
【0003】
特許文献1には、装填火薬の遅延装置の発明が記載されている。
図1は、電気式点火器、2つのピストン、油圧油がハウジング内に収容された装置であり、図2は、電気式点火器、バネ、1つのピストンがハウジング内に収容された装置である。
図1の装置は、次のように動作することが記載されている。
電気式点火器1が作動すると装薬2が発火してガスを発生すると、その圧力を受けて、第1のピストン5が第1のシリンダ4内を軸方向に移動する。第1ピストン5の移動により油圧油10が押され、流路6に圧入される。
流路6は第2のシリンダ8に繋がっているため、流路6に圧入された油圧油により第2のピストン9が第2のシリンダ8内を軸方向に移動する。
第2のピストン9は第1のピストン5より大きな断面積を有しているため、第2のピストン9の移動速度は第1のピストン5よりも遅くなる。
特許文献1の装填火薬の遅延装置は、上記のような遅延動作を利用して、自動車の座席に設けられた頸部サポートの傾きを変えるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】EP 0965483 A2 明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、電気式点火器とピストンを組み合わせた装置であり、ガスボトルからのガス出口の閉塞部分を破壊して開口させてガスを流出させるための穿孔器を提供することを課題とする。
本発明は、前記穿孔器を使用したガス排出装置を提供することを他の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、課題の解決手段として、
ガスボトルからのガス出口の閉塞部材を破壊して開口させてガスを流出させるための穿孔器であって、
筒状ハウジング内に点火手段、第1ピストンおよび第2ピストンが収容されており、
前記筒状ハウジングが、
第1端部側の第1開口部、第1端部とは反対側の第2端部側の第2開口部、および周壁部に形成された第3開口部の3つの開口部を有しており、
第1開口部側に点火手段が固定され、第2開口部側がガスボトルと接続できるようになっており、第3開口部がガス排出部になるものであり、
第1ピストンおよび第2ピストンが、前記筒状ハウジングの前記点火手段側から第2開口部側に第1ピストンと第2ピストンの順に配置されているものであり、
点火手段の作動による圧力を受けたとき、第1ピストンが前記筒状ハウジング内を軸方向に移動し、第1ピストンの移動を受けて第2ピストンが前記筒状ハウジング内を第2開口部側に移動できるようになっている、穿孔器を提供する。
【0007】
本発明の穿孔器は、ガスボトルからのガス出口の閉塞部材を破壊して、充填された高圧ガスを流出させるためのものである。
ガスボトルは用途に応じて適宜選択できるものであり、二酸化炭素、アルゴン、ヘリウム、窒素などのガスが高圧で充填されているものである。
【0008】
筒状ハウジングは、鉄、ステンレスなどの金属からなるものである。
点火手段は、公知のエアバッグ用ガス発生器などで使用されている電気式点火器、または電気式点火器と伝火薬もしくはガス発生剤の組み合わせからなるものである。
【0009】
第1ピストンと第2ピストンは、それぞれ同一外径のものもよいし、部分的に外径が異なるものでもよい。
第1ピストンと第2ピストンは、軽量化の観点から中空のものでもよい。
第1ピストンと第2ピストンは、鉄、ステンレス、アルミニウムなどの金属からなるものが使用できるが、セラミックスでもよく、耐熱や強度が満足できれば樹脂であってもよい。また互いに同一材質のものでもよいし、異なる材質のものでもよいが、第2ピストンは、ガスボトル出口の閉塞部分を破壊できる程度の硬さを有しているものである。
第1ピストンと第2ピストンは、作動前においては互いに軸方向に接触していてもよいし、第1ピストンが第2ピストンに衝突して、第2ピストンが軸方向に移動できるのであれば離れていてもよい。
【0010】
ガス排出部は、ガスボトルからのガス出口の閉塞部分が破壊されてガスが流出したとき、ガス排出部から外部にガスを排出するためのものであるから、点火手段の取り付け部やガスボトルの接続部などを除いた残部に形成されている。
ガス排出部は、筒状ハウジングに形成された開口部でもよいし、筒状ハウジングの周壁を貫通して取り付けられた筒部材からなるものでもよい。
【0011】
本発明の穿孔器をガスボトル出口と接続した場合には、点火手段の作動によって第1ピストンが移動し、第1ピストンによって衝突され押された第2ピストンが第1ピストンと同軸上を第2開口部側に移動する。
その後、第2ピストンが閉塞部材に衝突して破壊することで、ガス出口からガスが流出する。
流出したガスは筒状ハウジング内に流入した後、第3開口部(ガス排出部)から排出される。
【0012】
上記発明の穿孔器は、
前記筒状ハウジングが、第1ピストンが移動できる第1ピストン移動空間と、第2ピストンが移動できる第2ピストン移動空間を有し、前記第1ピストン移動空間長さが、前記第2ピストン移動空間長さよりも短くなっており、
第1ピストンが最大外径(D1)部分を有し、第2ピストンが前記最大外径(D1)部分よりも外径の小さな最大外径(D2)部分を有しているものであり、
第1ピストン移動空間が、第1ピストンの最大外径(D1)部分を衝突させて軸方向への移動を停止させるための第1凸部を有し、
第2ピストン移動空間が、第2ピストンの最大外径(D2)部分を衝突させて軸方向への移動を停止させるための第2凸部を有しているものにすることができる。
【0013】
筒状ハウジング内の点火手段が取り付けられた部分を除いた残部空間が、2つのピストンの移動空間となる。
第1ピストン移動空間長さは、前記第2ピストン移動空間長さよりも短くなっている。
点火器が作動したとき、第1ピストンはその移動が途中で止まるものの、第2ピストンは第1ピストンから離れ、そのまま移動し続け閉塞部材を破壊する。
移動距離とは、作動前に各々のピストンの初期位置から、点火器作動後に各々のピストンが軸方向に最大に移動した位置間の距離をいう。
【0014】
第1ピストンと第2ピストンは、第1ピストンの最大外径(D1)部分と第2ピストンの最大外径(D2)部分は、D1>D2の関係を有している。
第1ピストンが第1ピストン移動空間を移動するとき、第1凸部に最大外径(D1)部分が当たることで移動が停止される。
第1凸部は、第1ピストンの移動を停止できるものであればよく、例えば、第1ピストン移動空間と第2ピストン移動空間の内径を変えることで形成された環状段差面、第1移動空間を形成している筒状ハウジングの内壁面から突き出された突起などを使用することができる。
第1凸部の内径(第1凸部が円周方向に形成された複数の突起の場合、第1凸部の内側先端部を結んで得られる仮想円の直径)を第1ピストンの最大外径(D1)よりも小さくすることで、第1ピストンの軸方向への移動を停止させることができる。
【0015】
第2ピストンが第2ピストン移動空間を移動するとき、第2凸部に最大外径(D2)部分が当たることで移動が停止される。
第2凸部は、第2ピストンの移動を停止できるものであればよく、例えば、第2移動空間を形成している筒状ハウジングの内壁面から突き出された突起でよい。
前記突起は、第2ピストンの移動を確実に停止させるため、周方向に均等間隔で形成された複数の突起(例えば、3〜6個)、または環状の突起が好ましい。
第2凸部となる複数の対向する突起間の間隔(第2凸部の内側先端部を結んで得られる仮想円の直径)、または環状の突起の内径を第2ピストンの最大外径(D2)よりも小さくすることで、第2ピストンの軸方向への移動を停止させることができる。
第1ピストンは第2ピストン移動空間内を移動することはないが、作動前には第2ピストンの一部(最大外径部分を含む)が第1ピストン移動空間に位置するようにしてもよい。
【0016】
点火器の作動後、第2ピストンが閉塞部材を破壊した時点で、第1ピストンと第2ピストンは離れており、加圧ガスの排出による圧力を受けて第2ピストンが第1ピストン側へ後退する。よって、加圧ガスが排出されるときに第2ピストンが邪魔にならず、瞬時に多量のガスを排出することができる。
【0017】
上記発明の穿孔器は、
前記筒状ハウジングが、第1ピストンが移動できる第1ピストン移動空間と、第2ピストンが移動できる第2ピストン移動空間を有し、前記第1ピストン移動空間長さが、前記第2ピストン移動空間長さよりも短くなっており、
第2ピストンが、最大外径(D2)部分となる第2ピストンヘッドと、第2ピストンヘッドよりも外径の小さい第2ピストンロッドを有しているものであり、
第1ピストンが、第2ピストンヘッドの最大外径(D2)よりも大きな最大外径(D1)部分を有しているものであり、
第1ピストン移動空間が、第1ピストンの最大外径(D1)部分を衝突させて軸方向への移動を停止させるための第1凸部を有し、
第2ピストン移動空間が、第2ピストンの最大外径(D2)部分となる第2ピストンヘッドを衝突させて軸方向への移動を停止させるための第2凸部を有しており、
第2ピストンが、第2ピストンヘッドの少なくとも一部が第1ピストン移動空間内にあるように配置され、第2ピストンロッドが第2凸部で支持されているものにすることができる。
【0018】
第2ピストンは、第2ピストンヘッドと、第2ピストンヘッドから延ばされた第2ピストンロッドを有しているものであり、第2ピストンヘッドが最大外径(D2)部分となり、第2ピストンロッドの外径はD2よりも小さくなっている。
第1ピストンは最大外径(D1)部分を有しており、D1>D2である。
【0019】
第1ピストンが第1ピストン移動空間を移動するとき、第1凸部に最大外径(D1)部分が当たることで移動が停止される。
第1凸部間隔を第1ピストンの最大外径(D1)よりも小さくすることで、第1ピストンの軸方向への移動を停止させることができる。
【0020】
第2ピストンが第2ピストン移動空間を移動するとき、第2凸部に最大外径(D2)部分が当たることで移動が停止される。
第2凸部の間隔を第2ピストンの最大外径(D2)よりも小さくすることで、第2ピストンの軸方向への移動を停止させることができる。
作動時において、第2ピストンは第1ピストンの移動を受けて(第1ピストンによって衝突され)軸方向に移動するものであるから、第2ピストンヘッドの最大外径部分(D2)は、第1凸部の間隔よりも小さくなっている。
【0021】
作動前には、第2ピストンロッドは第2凸部で支持されている。
ここで、第2ピストンロッドが第2凸部で支持されているということは、第2ピストンロッドの外周面の一部または全部が第2凸部に対してスライド可能に接触している状態を意味するものである。
このような状態に保持することで、作動前において第2ピストンを支持することができ、作動前後において第2ピストンロッドの中心軸が半径方向にずれることもなくなる。
【0022】
上記発明の穿孔器は、
前記第第2ピストンヘッドが、作動時に破断可能なストッパ部材で筒状ハウジングの内壁面に対して保持され、第2ピストンヘッドの少なくとも一部が第1ピストン移動空間にあるように配置されているものにすることができる。
【0023】
このようなストッパ部材により第2ピストンヘッドを保持することで、作動前において第2ピストンが第2開口部側に移動することを完全に防止することができる。
ストッパ部材は、第2ピストンヘッドから突き出された複数の樹脂製突起の組み合わせ、または第1ピストン移動空間を形成する筒状ハウジングの内壁面から突き出された複数の樹脂製突起の組み合わせなどを使用することができる。
ストッパ部材は、作動前には第2ピストンの移動を阻止し、作動時には容易に折れ曲がったり、破断したりして、第2ピストンを移動させるものである。
【0024】
本発明は、課題の他の解決手段として、
ガスボトルからのガス出口の閉塞部材を破壊して開口させてガスを流出させるための穿孔器であって、
ハウジング内に点火手段、第1ピストンおよび第2ピストンが収容されており、
前記ハウジングが、
第1筒状ハウジングと第2筒状ハウジングの組み合わせからなるものであり、
一端が開口され、他端が閉塞された第1筒状ハウジングの周壁面を貫通して、両端が開口された第2筒状ハウジングが接続されたものであり、
第1筒状ハウジングに形成された第1開口部と、第2筒状ハウジングの第1筒状ハウジングとの接続部と軸方向の反対側に形成された第2開口部、第2筒状ハウジングの周壁面に形成された第3開口部の3つの開口部を有しているものであり、
第1開口部側に点火手段が固定され、第2開口部側がガスボトルと接続できるようになっており、第3開口部がガス排出部になるものであり、
第1ピストンが、第1ピストンヘッドと第1ピストンヘッドから延ばされた第1ピストンロッドからなり、第1ピストンロッドの先端面が第1傾斜面を有しているものであり、
第2ピストンが、第2ピストンヘッドと第2ピストンヘッドから延ばされた第2ピストンロッドからなり、第2ピストンヘッドの底面が第1傾斜面と当接できる形状の第2傾斜面を有しているものであり、
前記ハウジング内において、
第1ピストンが、第1ピストンヘッドが前記点火手段側になるように第1筒状ハウジング内に配置され、
第2ピストンが、第2ピストンヘッドが第1筒状ハウジング内に位置し、第2ピストンロッドが第2筒状ハウジング内に位置するように配置され、
さらに第1ピストンの第1傾斜面と第2ピストンの第2傾斜面が間隔をおいて軸方向に対向するように配置されているものであり、
点火手段の作動による圧力を受けたとき、第1ピストンが第1筒状ハウジング内を軸方向に移動して、第1ピストンの第1傾斜面が第2ピストンの第2傾斜面に衝突することで、第2ピストンが第2筒状ハウジング内を軸方向に移動できるようになっている、穿孔器を提供する。
【0025】
ハウジングは、第1筒状ハウジングと第2筒状ハウジングが平面形状で「T字型」に組み合わされたものであり、第1筒状ハウジングと第2筒状ハウジングは、互いの中心軸が直交するように組み合わされているのが好ましい。ただし、2つのハウジングの軸同士が約45°から約135°の間で傾斜していてもよい。
第1筒状ハウジングと第2筒状ハウジングは同一材質からなり、鉄、ステンレスなどの金属からなるものである。第1筒状ハウジングと第2筒状ハウジングは、一体に形成されたものでも、別部材を溶接などで組み合わせたものでもよい。
【0026】
第1ピストンは第1筒状ハウジング内に配置されており、第2ピストンは、少なくとも第2ピストンロッドが第2筒状ハウジング内に配置されているものであることから、第1ピストン(第1ピストンロッド)の中心軸と第2ピストン(第2ピストンロッド)の中心軸がなす角度は、各々のハウジング軸の交差角と同じである。
第1ピストンは、第1筒状ハウジング内を移動するものであるため、第1筒状ハウジング内が第1ピストン移動空間となる。
第2ピストンは、第2筒状ハウジング内を移動するものであるため、第2筒状ハウジング内が第2ピストン移動空間となる。
【0027】
第1ピストンロッドの先端面は第1傾斜面であり、第2ピストンヘッドの底面は第2傾斜面であり、互いに当接できる形状になっている。
第1ピストン(第1筒状ハウジング)の中心軸と第2ピストン(第2筒状ハウジング)の中心軸が直交しているとき、第1傾斜面と第2傾斜面は、いずれも軸方向に対して45度(1/2×90度)程度の角度からなる斜面であることが好ましい。
なお、第1ピストン(第1筒状ハウジング)の中心軸と第2ピストン(第2筒状ハウジング)の中心軸がなす角度が角度αであるとき、第1傾斜面と第2傾斜面は、いずれも軸方向に対して1/2×α度程度の角度からなる斜面であることが好ましい。
第1ピストンの第1傾斜面と第2ピストンの第2傾斜面は、間隔をおいて、あるいは当接した状態で対向するように配置されている。
このため、作動時に第1ピストン(第1ピストンロッド)が移動したとき、第1傾斜面が第2ピストン(第2ピストンヘッドの底面)である第2傾斜面に当たると、第2ピストンは、第1ピストンの移動方向とは異なる方向(第2筒状ハウジングの軸方向)に移動する。
【0028】
本発明の穿孔器をガスボトルと接続した場合には、点火手段の作動によって第1ピストンが第1筒状ハウジング内を移動し、第1ピストンに押された第2ピストンが第2筒状ハウジング内を移動する。
その後、第2ピストンがガスボトルのガス出口の閉塞部材に衝突して破壊することで、ガスボトル出口からガスが流出する。
流出したガスは第2筒状ハウジング内に流入した後、第3開口部であるガス排出部から排出される。
【0029】
上記した各発明の穿孔器は、使用するガスボトルによって、第2開口部が開放状態であるもの、または第2開口部が閉塞状態であるものを使用することができる。
ガスが高圧充填されたガスボトル(ガスボトルのガス出口が閉塞部材で閉塞されているもの)を使用するときには、第2開口部が開放状態のものを使用する。
ガスが充填されていないが、ガス出口が閉塞されているガスボトルを使用するときには、第2開口部が開放状態のものを使用する。
ガスが充填されておらず、ガス出口も閉塞されていないガスボトルを使用するときは、ガスボトルのガス出口を閉塞する代わりに、第2開口部を閉塞部材で閉塞する。
ガスが充填されていないガスボトルは、穿孔器に取り付けた後、ガスを充填する。
【0030】
本発明は、他の課題の解決手段として、
上記穿孔器とガスボトルが組み合わされたガス排出装置であって、
前記穿孔器のハウジングの第2開口部側に前記ガスボトルが接続されている、ガス排出装置を提供する。
【0031】
ガスボトルは、予め内部にガスが高圧充填されたものでもよいし、穿孔器とガスボトルを接続した後でガスボトル内にガスを充填するものでもよい。
ガスボトル内にガスを充填する方法としては、例えば、ガスボトルに形成されたガス注入孔に閉塞ピンを浅く差し込んだ状態で、ガス注入孔と閉塞ピンの隙間からガス注入器(例えば、注射針状のガス注入手段を備えているもの)を差し込んでガスを注入し、注入後はガス注入器を抜き、閉塞ピンを深く差し込んだ後、閉塞ピンとガスボトルを溶接一体化する方法を適用できる。
【0032】
筒状ハウジング(または第2筒状ハウジング)の第2開口部とガスボトルのガス出口を接続するときの接続方法は特に制限されるものではない。
例えば、第2開口部の内周壁に形成されたネジ部とガス出口の外周壁に形成されたネジ部をネジ合わせる方法、第2開口部の内側にガス出口を嵌め込んだ後、溶接する方法などを適用することができる。
【0033】
ガス排出装置は、エアバッグのような膨張可能なものの内部にガスを注入して膨張させる用途、膨張しないものの内部にガスを注入する用途、ガスの圧力を駆動源とする用途、ガスを吹き付ける用途などに使用することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明の穿孔器をガスボトルと組み合わせることによって、瞬時に大量のガスを排出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の穿孔器の使用形態を説明するための図である。穿孔器は軸方向の断面図であり、ガスボトルは平面図(ガス出口部分は一部断面図)である。
図2図1の穿孔器の組み立て前の軸方向断面図。
図3図1の穿孔器の拡大図。
図4図3の穿孔器における第2ピストンと第2凸部との位置関係を説明するための半径方向断面図。
図5図4の穿孔器の動作を説明するための軸方向断面図。
図6】他の実施形態の穿孔器の軸方向断面図。
図7】他の実施形態の穿孔器の軸方向断面図。
図8】他の実施形態の穿孔器であり、ハウジングは断面図、内部の部品は平面図(ハウジングの一面側を取り除いた状態)で示している。
図9】(a)は本発明ガス排出装置の作動前の軸方向断面図であり、ガスボトルはガス出口側の一部のみが断面図であり、他は平面図で示している。(b)は、(a)の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
(1)図1図5の穿孔器
図1に示すように、穿孔器1は、ガスが高圧充填された、鉄製のガスボトル70と組み合わせて使用するためのものである。
ガスボトル70のガス出口71は、鉄製の閉塞部材(円板状の鉄材)73で閉塞されている。
【0037】
図2に示すように、筒状ハウジング10は、第1端部10a側の第1開口部15、第1端部10aとは反対側の第2端部10b側の第2開口部16、および周壁11(内周壁面11aから外周壁面11bまで)を貫通して形成された第3開口部17の3つの開口部を有している。
【0038】
筒状ハウジング10の第1開口部15側には、点火手段として電気式点火器20が固定されている。
電気式点火器20は、筒状ハウジング10の第1端部10a側の内周壁面11aと、筒状ハウジング10の第1端部10a側の外周壁面11bに固定された点火器ホルダー25により保持されている。
電気式点火器20は、着火部22が筒状ハウジング10の内部に位置し、導電ピン23が筒状ハウジング10の外部に位置している。
【0039】
点火器ホルダー25は、アルミニウム、ステンレス、鉄などの金属からなる弾力性のあるものである。
点火器ホルダー25は、略筒状の本体部26、一端開口部側に形成された内向きの環状突起部27、長さ方向の中間付近において内側に突き出された環状の点火器保持部28を有している。
略筒状の本体部26は、薄肉部26aと厚肉部26bからなるものである。。
内向きの環状突起部27は、薄肉部26aに形成されているものであり、弾力性が大きな部分である。
環状の点火器保持部28は、厚肉部26bに形成されている。
【0040】
図3に示すように、点火器ホルダー25は、筒状ハウジング10の第1開口部15(第1端部10a)側から圧入されている。環状溝13内に内向きの環状突起部27が入り込み(引っ掛かり)、さらに内向きの環状突起部27を含む薄肉部26aが筒状ハウジング10の外周壁面11bに対して半径方向内側に押すような力を加えるように、薄肉部26aの内径と筒状ハウジング10の第1開口部15(第1端部10a)側の外径が調整されている。
このように調整されていることで、点火器ホルダー25が軸方向に脱落することはなく、電気式点火器20も脱落することなく保持されている。なお、点火器ホルダー25の筒状ハウジング10に対する固定は、ネジや溶接などの公知の方法で行ってもよい。
【0041】
筒状ハウジング10の第2開口部16側は、ガスボトル70のガス出口71に接続できるようになっている。
筒状ハウジング10の第2開口部16側とガスボトルのガス出口71の接続方法は特に制限されるものではない。
図1〜3では、第2開口部16側の内周壁面11aに形成されたネジ部12に対して、ガスボトルのガス出口71側に形成されたネジ部72をねじ込んで接続するようになっている。
【0042】
筒状ハウジング10の第3開口部17は、ガス排出部として機能するものである。
第3開口部17には、アルミニウム、ステンレス、鉄などの金属からなる弾力性のある筒状のガス排出部材30が取り付けられている。
筒状のガス排出部材30は、大径周壁部31、小径周壁部32、小径周壁部32側の開口部35に形成された短いフランジ部33を有しており、大径周壁部31側の開口部36の近傍には、環状溝34が形成されている。
小径周壁部32の外径は、筒状ハウジング10の第3開口部17の内径よりも僅かに大きくなるように調整されている。
筒状のガス排出部材30は、必要に応じてプラスチックやゴムなどからなる可撓性チューブを接続することができる。このとき、可撓性チューブを筒状のガス排出部材30に外側から嵌め込んだ後、環状溝34において締め付け材(ゴム、紐、金属ワイヤなど)により締め付けて固定することができる。
【0043】
筒状のガス排出部材30は、第3開口部17の壁面に形成された環状溝14に対して、短いフランジ部33が圧入されることで取り付けられている。
筒状のガス排出部材30は、環状溝14内に短いフランジ部33が入り込んでおり(引っ掛かっており)、さらに短いフランジ部33を含む小径周壁部32が第3開口部17の壁面に対して半径方向外側に押すような力を加えていることから、軸方向に脱落することはない。
【0044】
図2図3に示すように、筒状ハウジング10の内部には、電気式点火器20に近い位置から、第1ピストン40と第2ピストン50の順に収容されている。
第1ピストン40と第2ピストン50は、鉄、ステンレスなどの金属からなるものである。
【0045】
第1ピストン40は、両端側の2つの大径部41a、41bと、2つの大径部41の間にある小径部42からなるものである。
大径部41aと大径部41bは、同じ大きさのものであり、それらが第1ピストン40の最大外径(D1)部分となっている。
【0046】
第1ピストン40は、筒状ハウジング10内の第1ピストン移動空間45内に配置されている。
第1ピストン移動空間45は、点火器20の着火部22の頂面から、第1凸部46までの長さ部分(M1)(図3参照)である。
第1ピストン40は、大径部41a、41bが筒状ハウジングの内周壁面11aに当接されることで支持されており、小径部42は前記内周壁面11aには当接されていない。このように大径部41a、41bのみが前記内周壁面11aに当接されるようにすることで(即ち、第1ピストン40と前記内周壁面11aとの接触面積を小さくすることで)、第1ピストン40の軸方向への移動が容易になる。
第1ピストン40は、第1大径部41aが点火器20の着火部22に当接された状態になっているが、当接されていない状態でもよい。
【0047】
第2ピストン50は、第2ピストンヘッド51と、第2ピストンヘッド51から延ばされた第2ピストンロッド52を有している。
第2ピストンヘッド51が第2ピストン50の最大外径(D2)部分となっている。ここで、D1>D2である。
第2ピストンヘッド51は、図1図4では厚さ方向の両側が傾斜形状となり、中間部分が最大外径となっているが、均一径の円板形状のものでもよい。
第2ピストンロッド52は、先端部53が矢尻形状のものである。
第2ピストン50は、第2ピストンヘッド51が第1ピストン40の大径部41bに当接された状態になっているが、当接されていない状態でもよい。
【0048】
第2ピストン50は、第2ピストンヘッド51は第1ピストン移動空間45に配置されているが、第2ピストンロッド52は第2ピストン移動空間55内に配置されている。
第2ピストン移動空間55は、第1凸部46から第2凸部56までの長さ部分(M2)(図5参照)であり、M2>M1となっている。
第2ピストン移動空間55の内径は、第2ピストンヘッド51の最大外径(D2)よりも大きくなっている。
【0049】
第1凸部46は、第1ピストン移動空間45と第2ピストン移動空間55の間の内径が小さくなった環状の段差面からなるものである。
第1凸部(環状の段差面)46の内径は、第1ピストンの小径部42の外径と同程度であるため、第1ピストン40が軸方向に移動したとき、第1ピストンの大径部41aは第1凸部(環状の段差面)46に衝突することになる。
【0050】
第2凸部56は、図4に示すとおり、第2ピストン移動空間55を形成している筒状ハウジング10の内周壁面11aから突き出された4つの突起である。4つの第2凸部56は、周方向に等間隔に形成されている。第2凸部56の数は、3〜6程度にすることができる。
半径方向に対向する第2凸部56の間隔(図4のd1)は、第2ピストンロッド52の外径と同程度で、作動前の第2ピストンロッド52の支持と、作動時には第2ピストンロッド52が摺動可能なように調整されてある。
このため、第2ピストンロッド52は4つの第2凸部56により支持されており、第2ピストン50が軸方向に移動したとき、第2ピストンヘッド51は第2凸部56に衝突する。
なお、作動前後において、第2ピストンロッド52は第2凸部56で支持されている。
【0051】
次に、図3図5により穿孔器1の動作を説明する。
なお、穿孔器1は、実用時にはガスボトル70と接続し、さらにはエアバッグのようなガス導入容器と接続して使用するものであるが、以下においては穿孔器1のみの動作として説明する。
作動前は図3に示す状態である。
第1ピストン40は、大径部41aが点火器の着火部22に当接され、大径部41a、41bが筒状ハウジングの内周壁面11aに当接された状態である。
第2ピストン50は、第2ピストンヘッド51が第1ピストン40の大径部41bに当接され、第2ピストンロッド52は第2凸部56で支持された状態である。
なお、穿孔器1の実施形態は様々であることが考えられる。例えば、第1ピストン40と第2ピストン50が横方向になるように使用されている実施形態、第1ピストン40と第2ピストン50が点火器20を下にした斜め方向になるように使用されている実施形態、第1ピストン40と第2ピストン50が点火器20を下にした縦方向になるように使用されている実施形態が考えられる。このため、作動前には穿孔器1内において第1ピストン40と第2ピストン50は、互いに当接されていたり、離れていたりすることが考えられる。
【0052】
作動後は、図5に示す状態である。
点火器20が作動すると着火部22から燃焼生成物が生じるため、その圧力を受けて第1ピストン40が第1ピストン移動空間45内を軸方向に移動して、第1凸部(環状の段差面)46に衝突して、それ以上の移動が停止される。
第1ピストン40の軸方向への移動を受けて(第1ピストン40が第2ピストン50に衝突して)、第2ピストン50も第2移動空間55内を第1ピストン40と同軸方向に移動し、第2凸部56に衝突して停止する。このとき、第2ピストンロッド52は第2凸部56で支持された状態で移動するため、第2凸部56のガイド機能により第2ピストンロッド52の中心軸がぶれることがない。
ガスボトル70が穿孔器1に取り付けられている場合、第2ピストンロッドの矢尻状先端部53は、ガス流入空間58を通過して、ガスボトル70の閉塞部材73(図1参照)を通過した後、第2ピストンヘッド51が第2凸部56に衝突して(図5参照)、それ以上の移動が停止される。
【0053】
ガス出口71を塞いだ閉塞部材73が破壊されて、ガスボトル70内のガスがガス流入空間58に流入する。
このとき、ガス流入空間58に流入するガス圧により第2ピストン50は、第2ピストン移動空間55内に逆戻りして、ガス排出流入空間58からガス排出部材30へのガス排出経路が大きく開放される。
ガス流入空間58内に流入したガスは、小径周壁部32側の開口部35からガス流出部材30内を通って大径周壁部31側の開口部36から排出される。
【0054】
点火器が作動した後は、着火部22からの燃焼生成物(ガス)が第1ピストン移動空間45に含まれており、第ピストン40は大径部41bが第1凸部46に当接した状態で固定される。
しかし、閉塞部材73が開裂した時点では、第1ピストン40と第2ピストン50が離れ、それらの間に介在するものがなく、第2ピストン50の動きは第1ピストン40によって影響を受けにくい。
そのため、作動後は、ガス流入空間58と第2ピストン移動空間55との間を第2ピストン50が自由に摺動可能である。
なお、第1ピストン40と第2ピストン50が作動前に離れている場合、第1ピストン40が第1凸部46に当接するまでに、第2ピストンヘッド51に衝突する必要があるため、第2ピストンヘッド51の少なくとも一部は、第1ピストンヘッド移動空間45内に存在する必要がある。
またガス出口71が閉塞部材で73で閉塞されないガスボトル70の場合は、第2開口部16とガス流入空間58との間を閉塞部材で閉塞することができる。
【0055】
(2)図6に示す穿孔器
図6に示す穿孔器100は、第2ピストン150の第2ピストンロッド152の形状が異なるほかは、図1図5の穿孔器1と同じである。
第2ピストン150は、第2ピストンヘッド151と第2ピストンロッド152からなるものである。
第2ピストンロッド152は、第2ピストンヘッド151から延ばされたロッド本体部152aと、ロッド本体部152aから延ばされたロッド先端部152bからなるものである。
ロッド先端部152bの先端面153は矢尻形状になっている。
ロッド先端部152bの外径は、ロッド本端部152aの外径よりも大きくなっている。
ロッド先端部152bと第2凸部56の関係は、図4に示す第2ピストンロッド52と第2凸部56の関係と同じである。
第2ピストンロッド152は、図3の第2ピストンロッド52と比べると、ロッド本体部152aの外径が小さい分だけ軽量化されているが、ロッド先端部152bの外径は第2ピストンロッド52の外径と同じであることから、閉塞部材に対する破壊圧力は維持される。
【0056】
(3)図7に示す穿孔器
図7に示す穿孔器1は、第2ピストン50の第2ピストンヘッド51に対して、樹脂製のストッパ部材60が取り付けられているほかは、図1図5の穿孔器1と同じである。
ストッパ部材60は、環状本体部61と、環状本体部61の外表面から突き出された突出部62が、樹脂で一体に成形されたものである。
環状本体部61は帯状のものであり、突出部62は板状または棒状のものであり、周方向に等間隔に4枚が形成されている。
ストッパ部材60は、環状本体部61が第2ピストンヘッド51の外周面に嵌め込まれた状態で固定されている。固定方法は制限されず、接着剤などを使用したり、圧入したり、締め付けたり、第2ピストンヘッドに一体成形する方法を適用することができる。
【0057】
第2ピストンヘッド50にストッパ部材60が取り付けられていると、ストッパ部材60の4つの突出部62が筒状ハウジング10(第1ピストン移動空間45)の内周壁面11aに当接された状態になっている。
このため、作動前には、第2ピストン50が軸方向に移動することが完全に防止される。
そして、作動時において第2ピストン50が軸方向に移動するとき、ストッパ部材60の突出部62は第1凸部(環状の段差面)46に衝突することで容易に折れ曲がったり、破断したりするため、第2ピストン50の軸方向への移動が阻害されることはない。
【0058】
なお、実用時における穿孔器1の取り付け状態は様々であり、ストッパ部材60が不要になる場合も多いと考えられる。
例えば、穿孔器1を点火器20が必ず下方向になるように設置するようなときには、金属製の第2ピストン50が重力に抗して軸方向に移動することは難しいため、ストッパ部材60は不要となる。あるいは第2ピストン50が第2凸部56と第1ピストン40とで挟まれた状態で、振動などで第2ピストン50が移動しない状態であれば、ストッパ部材60は不要である。
【0059】
(4)図8の穿孔器
穿孔器200は、図1の穿孔器1と同様に、ガスが高圧充填されたガスボトル70と組み合わせて使用するためのものである。
【0060】
ハウジング201は、第1筒状ハウジング210の中心軸と第2筒状ハウジング220の中心軸が直交するようにして、平面形状が略T字になるように一体に組み合わされたものである。
なお、穿孔器の取り付け場所に応じて、第1筒状ハウジング210の中心軸と第2筒状ハウジング220の中心軸がなす角度は、45〜135度の範囲で選択することができる。
第1筒状ハウジング210は、第1端部211側が開口した第1開口部215となっており、第2端部212側は閉塞面216となっている。閉塞面216は、第1筒状ハウジング210とは別の部材によって閉塞されていても良い。
第2筒状ハウジング220の第1筒状ハウジング210との接続部と反対側には第2開口部217が形成され、第2筒状ハウジング220の周面には第3開口部218が形成されている。
第2筒状ハウジング220内は、第2筒状ハウジング内周壁面220aから延ばされた、中心部に貫通孔231を有している隔壁230によって、第1筒状ハウジング210と一体の空間を形成している第1室225と、第2開口部217および第3開口部218と連通している第2室226に分離されている。
【0061】
第1筒状ハウジング210の第1開口部215には電気式点火器260が固定されている。
第2筒状ハウジング220の第2開口部217は、図1に示すガスボトル70と接続できるようになっている。
第2筒状ハウジング220の第3開口部218はガス排出部になるものであり、図2に示すガス排出部材30を接続することもできる。
【0062】
第1ピストン240は、第1筒状ハウジング210内に配置されている。
第1ピストン240は、第1ピストンヘッド241と第1ピストンヘッド241から延ばされた第1ピストンロッド242からなるものである。
第1ピストンロッド242の先端面は第1傾斜面243を有している。第1傾斜面243は、第1ピストンロッド242の中心軸とのなす角度が45度になる傾斜面である。
第1ピストンヘッド241の外周面は、第1筒状ハウジング210の内周壁面210aに当接されている。
【0063】
第2ピストン250は、第2ピストンヘッド251と、第2ピストンヘッド251から延ばされた第2ピストンロッド252からなるものである。
第2ピストンロッド252の外径は、第2ピストンヘッド251の外径よりも小さいため、第2ピストンヘッド251と第2ピストンロッド252の間には環状段差面255が形成されている。
第2ピストンヘッド251は底面が第2傾斜面253を有しており、第2ピストンロッド252は先端面が矢尻面254になっている。
第2傾斜面253は、第2ピストンロッド252の中心軸とのなす角度が45度になる傾斜面であり、第1ピストン240の第1傾斜面243と当接できる形状になっている。
【0064】
第2ピストン250は、第2ピストンヘッド251が第1筒状ハウジング210内に位置し、第2ピストンロッド252は隔壁230の貫通孔231に通された状態で、第2ピストンロッド252の一部は第1室225内に位置し、第2ピストンロッド252の矢尻面254側は第2室226に位置するようにして配置されている。
このように第2ピストンロッド252が隔壁230の貫通孔231に通されることで支持されているため、第2ピストンロッド252の中心軸が作動前後において半径方向にずれることがない。
第2ピストンロッド252の第1室225内に位置している部分は、コイルバネ265に通されている。
コイルバネ265は、第1室225側の隔壁面220bと第2ピストンヘッド251の環状段差面255の間の全部または一部に配置されている。
【0065】
第1ピストン240と第2ピストン250は、第1ピストン240の第1傾斜面243と第2ピストン250の第2傾斜面253が間隔をおいて軸方向に対向するように、かつ第1ピストン240と第2ピストン250の中心軸同士が直交するようにして配置されている。なお第1傾斜面243と第2傾斜面253が作動前に当接していてもよい。また図8では第1ピストン240の第1ピストンヘッド241が点火器260の着火部261から離れた状態を示しているが、当接していてもよい。
【0066】
次に、図8により穿孔器200の動作を説明する。
なお、穿孔器200は、実用時にはガスボトル70と接続し、さらにはエアバッグのようなガス導入容器と接続して使用するものであるが、以下においては穿孔器200のみの動作として説明する。
【0067】
点火器260が作動すると着火部261から燃焼生成物が生じるため、その圧力を受けて第1ピストン240が第1筒状ハウジング210内を軸方向に移動して、第1ピストンロッド242の先端にある第1傾斜面243が、第2ピストンヘッド251の第2傾斜面253に衝突する。
第1傾斜面243と第2傾斜面253の衝突を受けて(第1傾斜面243が第2傾斜面253に衝突して)、第2ピストン250は第1ピストン240の移動方向と直交する方向に向かって、コイルバネ265を押し縮めながら移動する。
第2ピストンロッドの矢尻面254は、ガス流入空間となる第2室226内を移動して、ガスボトル70を取り付けたときには閉塞部材73がある位置を通過する(閉塞部材73を破る)。
その後、第2ピストン250は、押し縮められたコイルバネ265の作用、およびガスボトル70からのガスによって、図8の状態に戻る。
なお、第1ピストン240は、軸方向に移動して閉塞面216まで到達する。その場合第2ピストン250が図8の位置に戻るので、第1ピストン240が点火器260側に戻ることがない。またこのとき、閉塞面216に衝突した勢いで第1ピストン240が点火器260側に戻って、第2ピストン250がコイルバネ265の作用により図8の状態に戻ることを妨げることがないよう、閉塞面216に第1ピストンの緩衝材としてクッション材を配置することもできる。
【0068】
穿孔器200をガスボトル70に接続しているときは、ガス出口71を塞いだ閉塞部材73(図1参照)が破壊されて、ガスボトル70内のガスが流入する。
このとき、第2ピストン250は図8の状態に戻っており、ガス流入空間となる第2室226から第3開口部218へのガス排出経路が大きく開放されているため、ガスの排出は良好になる。
【0069】
(5)図9のガス排出装置
図9(a)、(b)により穿孔器1(図3)とガスボトル70を組み合わせたガス排出装置を説明する。
図3の穿孔器1の第2開口部16のネジ部12に対して、ガスボトル70のネジ部72をねじ込むことで、穿孔器1とガスボトル70を組み合わせたガス排出装置を組み立てる。
作動前は、図9(a)に示す状態であり、ガスボトル70のガス出口71を閉塞する閉塞部材73により第2開口部16は閉塞されている。
ガス排出部材30には、外側からプラスチック製のチューブ80が嵌め込まれている。このとき、必要に応じて環状溝34の位置において締め付け材で締め付けることもできる。
チューブ80の反対側の開口部は、ガスを排出させるエアバッグなどと接続する。
【0070】
穿孔器1の点火器20が作動して、第1ピストン40が軸方向に移動し、それにより第2ピストン50が同軸方向に移動して、ガス出口71を閉塞する閉塞部材73を破壊する(図9(b))。
その後、第2ピストン50は第2ピストン移動空間55内に戻るため、開口されたガス出口71からガス流入空間58内にガスが流入し、ガス流入空間58内に流入したガスはガス排出部材30内を通った後、さらにチューブ80内を通って排出される。
【0071】
本発明のガス注入装置は、人が着用するエアバッグを内蔵し、前記エアバッグにガスを排出して膨張させることで、人が転倒した時などの衝撃を緩和するためや海難救助用、および雪崩発生時の保護着などに組み込んで使用することができる。
また本発明のガス注入装置は、二酸化炭素ガスなどを排出させるか、二酸化炭素ガスなどのガスと共に消火剤を排出させることによる消化装置や、着色ペイントを噴出させて紙幣や窃盗犯人に目印をつけるマーカー装置に組み込まれる穿孔器としても使用することができる。
【符号の説明】
【0072】
1 穿孔器
10 筒状ハウジング
20 点火器
25 点火器ホルダー
30 ガス排出部材
40 第1ピストン
50 第2ピストン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9