特許第6283263号(P6283263)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6283263
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】車両用流体フィルタ
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/04 20100101AFI20180208BHJP
   B01D 29/11 20060101ALI20180208BHJP
   B03C 1/00 20060101ALI20180208BHJP
   B03C 1/28 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
   F16H57/04 F
   B01D29/10 501C
   B01D29/10 510D
   B01D29/10 530B
   B03C1/00 A
   B03C1/28
   B03C1/00 B
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-111408(P2014-111408)
(22)【出願日】2014年5月29日
(65)【公開番号】特開2015-224766(P2015-224766A)
(43)【公開日】2015年12月14日
【審査請求日】2017年4月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000124096
【氏名又は名称】株式会社パイオラックス
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】木村 岳
【審査官】 塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−104472(JP,A)
【文献】 実開昭59−070715(JP,U)
【文献】 特開2013−078739(JP,A)
【文献】 特開2010−106983(JP,A)
【文献】 特開平05−23508(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/04
B01D 29/11
B03C 1/00
B03C 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
側面に流体出口を有する筒状部と、
前記筒状部の一端に配され、流体入口を有する第1基部と、
前記筒状部の他端に配される第2基部と、
前記筒状部の内側に設けられる棒状の磁性体と、
前記筒状部の内側で前記磁性体を保持する保持部と、を備え、
前記保持部は、前記第1基部および前記第2基部の少なくとも一方に連結し、前記磁性体の両端面を保持することを特徴とする車両用流体フィルタ。
【請求項2】
前記保持部は、前記磁性体の両端面の中央部分を露出させつつ保持することを特徴とする請求項1に記載の車両用流体フィルタ。
【請求項3】
前記磁性体は、両端面に窪むように形成される窪み部であって、前記保持部から露出するように配置された窪み部を有することを特徴とする請求項1または2に記載の車両用流体フィルタ。
【請求項4】
前記磁性体は、両端面に磁極を有することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の車両用流体フィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異物を吸着可能な磁性体を有する車両用流体フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
車両のトランスミッションにはオイル回路が設けられ、オイル回路内にオイルが流通する。このオイル回路内には、製造時に残ったバリやほこり、使用時に摩擦で生じた鉄粉などの異物が混入している可能性がある。そこで異物を除去するためのフィルタがオイル回路に取り付けられる。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の車両用流体フィルタは、筒状部と、筒状部の一端に形成された環状枠部と、筒状部の他端に形成された円盤状の基部と、筒状部の内側に配される棒状の磁性体と、磁性体を保持する保持部とを備える。保持部は、基部から筒状部内に立設する一対の柱部、一対の柱部を連結する連結部からなる。基部には貫通する磁性体の挿入孔が形成され、挿入孔の内縁から一対の柱部が延出する。磁性体は、挿入孔から挿入されて、連結部に当接するまで押し込まれて、車両用流体フィルタに組み付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−104472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の車両用流体フィルタは、磁性体を挿入孔から保持部内に挿入して保持する構成であるため、搬送中の振動などで磁性体が軸方向に位置ずれする可能性がある。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、磁性体を安定して保持できる車両用流体フィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の車両用流体フィルタは、側面に流体出口を有する筒状部と、筒状部の一端に配され、流体入口を有する第1基部と、筒状部の他端に配される第2基部と、筒状部の内側に設けられる棒状の磁性体と、磁性体を保持する保持部と、を備える。保持部は、第1基部および第2基部の少なくとも一方に設けられ、磁性体の両端面を保持する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、車両用流体フィルタにおいて、磁性体を安定して保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係るオイルフィルタの斜視図である。
図2図2(a)は、オイルフィルタを流体入口側から見た平面図であり、図2(b)は、図2(a)に示すオイルフィルタの線分A−Aの断面図である。
図3】オイルフィルタの取付状態を説明するための図である。
図4】磁性体について説明する図である。
図5】樹脂部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、実施形態に係るオイルフィルタ10の斜視図である。オイルフィルタ10は、車両のトランスミッションのオイルに含まれる鉄粉やアルミや塵などの異物を除去するために用いられる。オイルフィルタ10はトランスミッションのオイル回路内に取り付けられる。
【0011】
オイルフィルタ10は、筒状部12と、筒状部12の一端に配される第1基部14と、筒状部12の他端に配される第2基部16と、筒状部12内に収容される磁性体24と、筒状部12内にて磁性体24を保持する保持部26とを備える。
【0012】
オイルフィルタ10は、樹脂部11と、異物を濾す金属製の網状部18と、異物を吸着する棒状の磁性体24とからなる。オイルフィルタ10は、インサート成形により磁性体24と網状部18と樹脂部11とを一体にするよう形成されてよい。図1の矢印に示すように、オイルなどの流体は下端側の第1基部14から入り、網状部18から出る。オイルフィルタ10について、さらに図面を用いて詳細に説明する。
【0013】
図2(a)は、オイルフィルタ10を流体入口側から見た平面図であり、図2(b)は、図2(a)に示すオイルフィルタ10の線分A−Aの断面図である。また、図3は、オイルフィルタ10の取付状態を説明するための図である。図3に示すオイルフィルタ10は、図2(a)に示すオイルフィルタ10の線分B−Bの断面である。ここで各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。
【0014】
図3に示すように、第1基部14は第1取付部42の第1取付孔42aに固定され、第2基部16は第2取付部40の第2取付孔40aに隙間なく固定される。第1取付孔42aは貫通孔であり、第2取付孔40aは凹みである。第1取付部42および第2取付部40はトランスミッションのオイル回路内の部材である。
【0015】
オイルは、入口側流路44から第1基部14に形成された開口部15を流体入口として筒状部12内に流入し、網状部18を流体出口として出口側流路46に移動する。このオイルは、筒状部12内にて磁性体24に異物を吸着され、網状部18に濾過される。
【0016】
筒状部12は、網状部18、第1支持部20および第2支持部22を有する。筒状部12は、第1支持部20と第2支持部22とを周方向に連結する網状部18により円筒状に形成される。第1支持部20と第1支持部20に対向して配される第2支持部22は、第1基部14および第2基部16を連結し、網状部18を支持し、オイルフィルタ10の剛性を高める。なお、図2(b)では支持部は2つである態様を説明するが、網状部18の剛性に応じて1つであってもよく、3つ以上であってもよい。
【0017】
第1基部14および第2基部16は互いに対向するよう筒状部12の両端に配置される。第1基部14は環状に形成され、中央に開口部15を有する。第2基部16は、円盤形状に形成され、中央に第2貫通孔32を有する。また、図2(b)に示すように、第2基部16の裏面に磁性体24の一端が嵌合される環状突部28を有する。
【0018】
磁性体24は、保持部26に保持される。この磁性体24および保持部26について別途に図面を参照して詳細に説明する。図4は、磁性体24について説明する図である。図4(a)は磁性体24の斜視図であり、図4(b)は磁性体24の軸方向の断面図である。磁性体24は円柱であり、両端面の中央部分が窪むように形成された窪み部24aを有する。磁性体24の両端面は同じ形状であるため、成形時に磁性体24の両端位置をどちらにしてもオイルフィルタ10を成形することができ、作業が容易である。保持部26は、柱部36および端部38に加えて、環状突部28および第2基部16の裏面を含んで構成されてよい。
【0019】
図5は、樹脂部11の斜視図である。樹脂製の樹脂部11の内側に保持部26が設けられる。保持部26は、第2基部16から立設する一対の柱部36と、柱部36の先端を連結する端部38とを有する。端部38は、円盤形状に形成され、中央に第1貫通孔30を有する。
【0020】
図2(b)に示すように、端部38の外径は、磁性体24の外径と同じであり、これにより磁性体24の端部をバランスよく保持できる。図3に示すように磁性体24の外径と、一対の柱部36の対向間隔は同じである。つまり、保持部26は磁性体24に隙間なく密着して保持する。端部38は、第1基部14と同じ軸方向位置の端面を有する。磁性体24の両端面を、保持部26の端部38と、第2基部16の裏面とで挟み込むように保持することで磁性体24の保持状態を安定させることができる。
【0021】
インサート成形時に磁性体24の両端を把持して樹脂を射出してオイルフィルタ10を成形する。磁性体24の両端面の中央に第1貫通孔30および第2貫通孔32を形成することで、磁性体24を把持しやすくできる。また、窪み部24aによりガタなく安定して磁性体24を把持できる。
【0022】
磁性体24をオイルフィルタ10の内部で保持することで、オイルの流路中の鉄粉を吸着して、鉄粉が外部に流出することを抑えることができる。また、磁性体24をオイルフィルタ10から外部に突出させることなくオイルフィルタ10内に収容することで、輸送時などに磁性体24に付着した鉄粉を、トランスミッション内に落とすことを抑えることができる。
【0023】
図3に示すように、磁性体24と網状部18の下端位置、つまり第1基部14側の末端の位置が同じとなるように設けられている。磁性体24の下端位置は、軸方向において、第1基部14の軸方向幅内に収まるように配置されてよい。磁性体24の第1基部14側の端面は第1基部14の開口部15内に位置する。磁性体24を流体入口側に延在させることで磁性体24の吸着力をいっそう流体入口側で発揮できる。
【0024】
図2(b)および図3に示すように、第2基部16の裏面には磁性体24を支持する環状突部28より凹んだ環状の凹部34が設けられる。凹部34は、第2基部16の外周側内面16aより凹む。第2基部16に凹部34を設けることで、凹部34に鉄粉を溜めることができる。
【0025】
磁性体24は、着磁装置により着磁され、両端面にそれぞれ磁極が設けられる。磁性体24の両端が磁力が強くなり、鉄粉の吸着力が高くなる。凹部34は、流路の行き止まりであり、そこでオイルが停滞することがある。また、経時的な使用の結果、流体圧により流体入口から奥側の網状部18が目詰まりを生じ、凹部34でオイルが停滞することがある。その凹部34の周りに磁力の強い磁性体24の端部が位置するため、鉄粉を効率よく吸い寄せ、凹部34に鉄粉を溜めることができる。凹部34と磁性体24の端面の軸方向の位置はほぼ同じ位置に設けられる。
【0026】
図3に示すように、保持部26に第1貫通孔30が形成され、第1貫通孔30から露出する磁性体24の端面に窪み部24aが形成される。磁性体24において磁力の強い部分に、窪み部24aを設けることで、窪み部24aに鉄粉を吸着して溜めることができる。
【0027】
図2(a)および図5(b)に示すように、一対の柱部36と、第1支持部20および第2支持部22とは径方向に重ならないように周方向にずらして配される。第1支持部20および第2支持部22が、一対の柱部36を結ぶ直線上に重ならないように配される。一対の柱部36とを結ぶ直線は、第1支持部20と第2支持部22とを結ぶ直線と略直交する。
【0028】
たとえば柱部36と第1支持部20が径方向に重なると、重ならない場合と比べて柱部36と第1支持部20の空隙が非常に狭くなる。そのためオイルフィルタ10内を通過する流体の圧力損失が大きくなり、オイルフィルタ10を通過しづらくなる。一方、柱部36と第1支持部20とを径方向に重ならないようにすると、筒状部12内での流体の通り道を確保できる。
【0029】
本発明は上述の各実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を各実施例に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施例も本発明の範囲に含まれうる。
【0030】
実施形態では磁性体24の断面が円形である態様を示したが、それに限られない。たとえば、磁性体24の断面を略正方形にしてもよく、長方形にしてもよい。磁性体24が円柱であれば、オイルフィルタ10の成形時に径方向位置を問題とせず、作業が容易である。角柱の磁性体24は平板を切断すれば成形できるため、成形コストを抑えることができる。
【0031】
実施形態では、保持部26の端部38が第1基部14と離間して設けられるが、端部38が第1基部14に連結されてよい。第1基部14と端部38との連結部分により、流体入口が狭められるが、剛性を高めることができる。例えば、端部38は、円盤状の外周と第1支持部20および第2支持部22の下端とを連結し、第1基部14に連結される。
【0032】
実施形態では、保持部26の端部38が円盤状に形成される態様を示したが、この態様に限られない。保持部26の端部は、一対の柱部36を直線的に連結する棒状であってよい。この場合、保持部26の端部が磁性体24の端面の中央を塞ぐため、窪み部24aが磁性体24の端面の中央を避けて角部付近に形成される。
【符号の説明】
【0033】
10 オイルフィルタ、 11 樹脂部、 12 筒状部、 14 第1基部、 15 開口部、 16 第2基部、 18 網状部、 20 第1支持部、 22 第2支持部、 24 磁性体、 24a 窪み部、 26 保持部、 28 環状突部、 30 第1貫通孔、 32 第2貫通孔、 34 凹部、 36 柱部、 38 端部、 44 入口側流路、 46 出口側流路。
図1
図2
図3
図4
図5