(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
窓を配置するための開口を有する金属フレームの車外側に取り付けられる樹脂パネルと、上記樹脂パネルに内蔵されたアンテナと、上記樹脂パネルの縁部に嵌め込まれたウインドガイドであって、上記窓の縁部を把持するウインドガイドと、を備え、
誘電正接が0.67以下である樹脂を上記ウインドガイドの材料とし、
上記アンテナの給電部は、上記樹脂パネルを車外側から平面視したときに、上記ウインドガイドと重なるように配置されている、ことを特徴とする窓フレーム。
上記平面伝送線路の上記給電部側と反対側の端部は、上記樹脂パネルを車外側から平面視したときに、上記金属フレームと共にドアを構成するドアボディと重なる位置に配置されていることを特徴とする請求項2〜4の何れか1項に記載の窓フレーム。
誘電正接が0.67以下である樹脂に代えて、カーボンブラックの含有率が35wt%以下であるEPDM(Ethylene Propylene Diene Monomer)を上記ウインドガイドの材料とする、ことを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の窓フレーム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、車両のルーフ部にシャークフィン型のアンテナ装置を設置した場合、ルーフ面からアンテナ装置が突出してしまうため、自動車のデザインや空力特性に大きな影響を及ぼすこととなる。
【0009】
また、上記特許文献1,2に記載のガラスアンテナは、透明な窓ガラスに配置されており、車内および車外の双方から視認可能であるため、少なからず、車両の外観や、車両からの視認性に影響を及ぼすこととなる。
【0010】
このように、従来、車両の外観への影響を抑制することと、良好なアンテナ特性を得ることとを両立することができるように、車両用のアンテナを設置することは困難であった。
【0011】
本願の発明者らは、車両の外観への影響を抑制しつつ、良好なアンテナ特性を得ることが可能な車両用のアンテナ装置として、樹脂パネルにアンテナが内蔵された窓フレームを発明した。また、本願の出願人は、この発明を特願2013−116430号(2013年5月31日出願)およびこれを基礎とする優先権主張出願である特願2013−255476号(2013年12月10日出願)として出願した。
【0012】
しかしながら、上記の2件の出願に係る発明においては、良好なアンテナ特性を得るために、樹脂パネルに内蔵するアンテナが備える給電部の配置に制約が課される。すなわち、樹脂パネルに内蔵するアンテナの形状又は配置の自由度が制限されるという問題が残されていた。
【0013】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、樹脂パネルにアンテナが内蔵された窓フレームにおいて、大幅な利得の低下を招来することなく、アンテナの形状又は配置の自由度を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するために、本発明に係る窓フレームは、窓を配置するための開口を有する金属フレームの車外側に取り付けられる樹脂パネルと、上記樹脂パネルに内蔵されたアンテナと、上記樹脂パネルの縁部に嵌め込まれたウインドガイドであって、上記窓の縁部を把持するウインドガイドと、を備え、誘電正接が0.67以下である樹脂を上記ウインドガイドの材料とする、ことを特徴とする。
【0015】
上記の構成によれば、上記樹脂パネルに内蔵されたアンテナの給電部が、たとえ上記ウインドガイドと重なる位置に形成されている場合であっても、標準的な車載用アンテナと比べて遜色ない利得を得ることができる。すなわち、樹脂パネルにアンテナが内蔵された窓フレームにおいて、大幅な利得の低下を招来することなく、アンテナの形状又は配置の自由度を高めることができる。
【0016】
また、本発明に係る窓フレームの一形態は、上記の構成に加えて、誘電正接が0.67以下である樹脂に代えて、直流電流に対する導電率が6.2×10
−6S/cm以下である樹脂を上記ウインドガイドの材料とする、ことが好ましい。
【0017】
上記の構成によれば、上記樹脂パネルに内蔵されたアンテナの給電部が、たとえ上記ウインドガイドと重なる位置に形成されている場合であっても、標準的な車載用アンテナと比べて遜色ない利得を得ることができる。すなわち、樹脂パネルにアンテナが内蔵された窓フレームにおいて、大幅な利得の低下を招来することなく、アンテナの形状又は配置の自由度を高めることができる。
【0018】
また、本発明に係る窓フレームの一形態は、上記の構成に加えて、誘電正接が0.67以下である樹脂に代えて、カーボンブラックの含有率が35wt%以下であるEPDM(Ethylene Propylene Diene Monomer)を上記ウインドガイドの材料とする、ことが好ましい。
【0019】
上記の構成によれば、上記樹脂パネルに内蔵されたアンテナの給電部が、たとえ上記ウインドガイドと重なる位置に形成されている場合であっても、標準的な車載用アンテナと比べて遜色ない利得を得ることができる。すなわち、樹脂パネルにアンテナが内蔵された窓フレームにおいて、大幅な利得の低下を招来することなく、アンテナの形状又は配置の自由度を高めることができる。
【0020】
また、本発明に係る窓フレームの一形態は、上記の構成に加えて、上記アンテナの給電部は、上記樹脂パネルを車外側から平面視したときに、上記ウインドガイドと重なる位置に配置されている、ことが好ましい。
【0021】
上記の構成によれば、上記給電部に接続された同軸ケーブルを、折り曲げることなく上記樹脂パネルの縁部に沿って配線することが可能になる。これにより、同軸ケーブルの配線が容易になる。また、折り曲げによって同軸ケーブルの特性が劣化したり耐久性が低下したりすることを未然に防止することができる。
【0022】
また、本発明に係る窓フレームの一形態は、上記の構成に加えて、上記樹脂パネルの材料は、上記ウインドガイドの材料よりも誘電正接が小さい材料である、ことが好ましい。
【0023】
上記の構成によれば、上記樹脂パネルの存在によって生じる得る上記アンテナの大幅な利得低下を回避することができる。
【0024】
また、本発明に係る窓フレームの一形態は、上記の構成に加えて、上記樹脂パネルの材料は、アクリル樹脂又はABS樹脂である、ことが好ましい。
【0025】
上記の構成によれば、上記樹脂パネルの存在によって生じる得る上記アンテナの大幅な利得低下を回避することができ、更に、十分な剛性を有する窓フレームを実現することができる。
【0026】
また、本発明に係る窓フレームの一形態は、上記の構成に加えて、上記アンテナの給電部から、上記樹脂パネルの外周縁部まで、上記アンテナの基材上を延伸する平面伝送線路をさらに備えてもよい。
【0027】
上記構成によれば、上記樹脂パネルにおいて、給電のための同軸ケーブルを這わせる必要がないため、上記樹脂パネルの構成を簡素化することができ、したがって、上記樹脂パネルの製造にかかるコストを削減することができる。また、平面伝送線路は、放射を行わないため、上記アンテナのアンテナ特性に影響を及ぼすことなく、上記アンテナに対する給電が可能である。
【0028】
また、本発明に係る窓フレームの一形態は、上記の構成に加えて、上記アンテナと上記平面伝送線路は、一体成型され、上記樹脂パネルに埋設されていてもよい。
【0029】
上記構成によれば、アンテナと平面伝送線路とが一体成型されていることによって、アンテナと平面伝送線路とをはんだ付けする必要がない。仮に、アンテナと平面伝送線路をはんだ付けしたものを樹脂パネルに埋設して窓フレームを構成した場合、はんだによって盛り上がった部分が窓フレームの体裁面に不都合な凹凸やひけを生じさせる虞がある。しかしながら、一体成型している上記の構成によれば、窓フレームの体裁面に悪影響が与えることない。これにより、上記窓フレームを搭載する車両の美観を高めることができる。
【0030】
また、本発明に係る窓フレームの一形態は、上記の構成に加えて、上記平面伝送線路の上記給電部側と反対側の端部は、上記樹脂パネルを車外側から平面視したときに、上記金属フレームと共にドアを構成するドアボディと重なる位置に配置されていてもよい。
【0031】
上記構成によれば、上記平面伝送線路の上記給電部側と反対側の端部に同軸ケーブルをはんだ付けする場合に、盛り上がったはんだにより上記樹脂パネルの体裁面に生じ得る凹凸やひけを、ドアボディにより隠すことができる。これにより、上記窓フレームを搭載する車両の美観を高めることができる。
【0032】
また、本発明に係る窓フレームの一形態は、上記金属フレームは、外周側に位置する第1の平面部分と、内周側に位置して上記第1の平面部分よりも車室側に位置する第2の平面部分とを有し、上記平面伝送線路の上記給電部側と反対側の端部は、上記樹脂パネルを車外側から平面視したときに、上記ウインドガイドおよび上記第1の平面部分のいずれとも重ならない位置に配置されていてもよい。
【0033】
上記構成によれば、上記平面伝送線路に接続される同軸ケーブルを、上記樹脂パネルの裏面から引き出し、上記樹脂パネルと上記金属フレームとの間の隙間に配線することが可能になる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、樹脂パネルにアンテナが内蔵された窓フレームにおいて、大幅な利得の低下を招来することなく、アンテナの形状又は配置の自由度を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。なお、以降の説明では、車両20の前後方向に対応する方向(図中X軸方向)を「前後方向」と称し、車両20の左右方向に対応する方向(図中Y軸方向)を「左右方向」と称し、車両20の上下方向に対応する方向(図中Z軸方向)を「上下方向」と称する。
【0037】
〔窓フレーム10の概要〕
図1は、本発明の一実施形態に係る窓フレーム10および車両20の外観を示す斜視図である。
図1に示す窓フレーム10は、概ね上下方向(図中Z軸方向)に長い長方形状を有する薄板状の部品であり、車両20の後部ドア30のドアフレーム(後部ドア30の窓32の周囲のフレーム部分であって前部ドアの窓との間の部分)に取り付けられる部品である。
【0038】
後部ドア30は、後部窓32を配置するための開口を有する金属製のドアフレーム34(
図3参照)を含んで構成されており、窓フレーム10は、ドアフレーム34におけるBピラー部分を構成する部分の表面(車外側の面)に取り付けられる。このことから、窓フレーム10は、「Bピラーカバー」と呼ばれる場合がある。
【0039】
窓フレーム10は、樹脂パネル100およびフィルムアンテナ200を備えており、樹脂パネル100の内部にフィルムアンテナ200が内蔵された構成を採用している。
【0040】
樹脂パネル100は、樹脂製(非金属製)の部材であり、窓フレーム10の外観を形作るものである。樹脂パネル100は、薄板状であり、且つ、概ね上下方向(図中Z軸方向)に長い長方形状を有しているが、より詳しくは、上記Bピラー部分の形状に応じて、下方(図中Z軸負方向)に向かって幅(図中X軸方向の幅)が徐々に拡大する形状を有している。
【0041】
上述したとおり、樹脂パネル100には、フィルムアンテナ200が内蔵されている。フィルムアンテナ200は、目的の周波数帯域の電波を受信するためのものである。具体的には、樹脂パネル100には、内部空間112(
図2参照)が形成されており、フィルムアンテナ200は、車外に露出して車両の外観を損なうことが無いように、この内部空間112内に配置されている。フィルムアンテナ200の利得低下を避けるために、樹脂パネルの材料としては、アクリル樹脂やABS樹脂などの誘電正接の小さい樹脂(後述するウインドガイド36よりも誘電正接が小さい樹脂)が用いられる。
【0042】
本実施形態において、フィルムアンテナ200は、DAB用のアンテナ、または、3G/LTE用のアンテナであることが好ましい。これに限らず、フィルムアンテナ200は、上記以外のアンテナであってもよい。但し、フィルムアンテナ200は、地平面に対して概ね垂直な姿勢で車両20に設置されるため、受信感度を高めるという観点から、DAB用のアンテナ、3G/LTE用のアンテナ、FM/AM放送用のアンテナ等のように、垂直偏波を受信するためのアンテナであることが好ましい。
【0043】
なお、本実施形態では、車両20の左側(図中Y軸正側)の後部窓32の窓フレーム10に対し、フィルムアンテナ200を設ける例を説明するが、それ以外の窓フレームに対し、フィルムアンテナ200を設けるようにしてもよい。この場合、フィルムアンテナ200が設けられる窓フレームは、開閉可能な窓の窓フレームであってもよく、開閉不可能な窓の窓フレームであってもよい。例えば、車両20の右側(図中Y軸負側)の後部窓の窓フレームに対し、フィルムアンテナ200を設けるようにしてもよい。また、車両20の左側の前部窓の窓フレームや、車両20の右側の前部窓の窓フレームに対し、フィルムアンテナ200を設けるようにしてもよい。
【0044】
〔窓フレーム10の構成〕
次に、
図2〜4を参照して、窓フレーム10の構成について説明する。
図2は、本発明の一実施形態に係る窓フレーム10の構成を示す三面図である。
図2(a)は、本発明の一実施形態に係る窓フレーム10の側面図である。
図2(b)は、本発明の一実施形態に係る窓フレーム10の平面図である。
図2(c)は、
図2(b)に示す窓フレーム10のA−A断面図である。
【0045】
図2に示すように、窓フレーム10の樹脂パネル100は、主要部110と、主要部110の裏側(車内側)且つ前側に形成されたドアフレーム支持部120と、主要部110の裏側(車内側)且つ後ろ側に形成された保持部130と、を備えて構成されている。なお、保持部130には、主要部110よりも下側に延びる延在部140が形成されている。
【0046】
(主要部110)
主要部110は、樹脂パネル100の表面(車外側の面)を構成する、上下方向(図中Z軸方向)に長い薄板状の部分である。
図2に示すように、主要部110には、内部空間112が形成されており、この内部空間112には、フィルムアンテナ200を収容することが可能となっている。例えば、主要部110は、その厚さ方向(Y軸方向)において、内部空間112を境界として2分割可能に構成されている。この場合、主要部110を2分割し、内部空間112を露出させることにより、当該内部空間112内にフィルムアンテナを配置することができる。このとき、フィルムアンテナ200は、何らかの固定手段(例えば、接着剤、粘着テープ等)によって、内部空間112内に固定されることが好ましい。そして、2分割された主要部110を組み立てることにより、樹脂パネル100は、内部空間112が再び閉塞され、内部空間112内にフィルムアンテナ200が収容された状態となる。このように、フィルムアンテナ200を内部空間112内に配置することにより、当該フィルムアンテナ200は、車外に露出することなく、窓フレーム10と一体となって、車両20への設置が可能となる。
【0047】
(ドアフレーム支持部120)
ドアフレーム支持部120は、ドアフレーム34の縁部を支持するために、主要部110の裏側(図中Y軸負側)において、主要部110の前側(図中X軸正側)の縁部に沿って上下方向(図中Z軸方向)に延在している部分である。ドアフレーム支持部120は、
図2(c)に示すように、主要部110の裏面に対して垂直な第1の壁部120Aと、主要部110の裏面に対して平行な第2の壁部120Bとが、互いにL字状に組み合わされて構成されている。これにより、ドアフレーム支持部120は、主要部110の裏側において、後方に開口した差し込み口を形成する。当該差し込み口には、ドアフレーム34の縁部を差し込むことが可能となっている。
【0048】
(保持部130)
保持部130は、後部窓32の縁部を保持するために、主要部110の裏側(図中Y軸負側)において、主要部110の後ろ側(図中X軸負側)の縁部に沿って上下方向(図中Z軸方向)に延在している部分である。保持部130は、
図2(c)に示すように、主要部110の裏面に対して垂直な第1の壁部130Aと、主要部110の裏面に対して平行な第2の壁部130Bとが、互いにL字状に組み合わされて構成されている。これにより、保持部130は、主要部110の裏側において、後方に開口した差し込み口を形成する。当該差し込み口には、後部窓32の縁部を把持するウインドガイド(グラスランチャンネルとも呼ばれる場合もある)36が嵌めこまれる。
【0049】
(延在部140)
延在部140は、保持部130が、主要部110の下端部(図中Z軸負側の端部)よりも下方(図中Z軸負方向)に向かって延伸する部分である。例えば、延在部140は、窓フレーム10をドアフレーム34に取り付ける際、その取り付け位置の下側に位置する隙間に差し込まれる。これによって、例えば後部窓32が全開状態の場合も、後部窓32の縁部は、延在部140によって保持される。
【0050】
〔後部ドア30の構成〕
次に、
図3および
図4を参照して、
図2に示す窓フレーム10を含む後部ドア30の構成について説明する。
図3は、
図2に示す窓フレーム10が取り付けられた状態の後部ドア30の外観を示す。
図4(a)は、
図3に示す後部ドア30のうち、B−B切断線と、C−C切断線とで切断した部分の拡大図である。
【0051】
図3に示すように、窓フレーム10は、後部窓32を取り囲むドアフレーム34のうち、後部ドア30のBピラーを構成する部分の車外側に取り付けられる。この際、窓フレーム10の延在部140は、上記Bピラー部分の下側に位置する、後部ドア30の隙間に差し込まれる。具体的には、後部ドア30をドアフレーム34と共に構成するドアボディ31に設けられた隙間に挿し込まれる。なお、ドアボディ31は、ドアフレーム34と一体的に構成されているか、もしくは、車室側のドアボディと車外側のドアボディとによって構成されてドアフレーム34の下端部をこれらが挟んで保持するような態様で設けられている。このように窓フレーム10を取り付けることにより、窓フレーム10に内蔵されたフィルムアンテナ200は、地平面に対して概ね垂直な姿勢で、上記Bピラー部分に設置されることとなる。
【0052】
ドアフレーム34のBピラー部分の構成、および、ドアフレーム34のBピラー部分に窓フレーム10が取り付けられている状態は、
図4により詳しく示されている。
図4(a)は、
図3に示す後部ドア30の一部(B−B切断線およびC−C切断線で切断された部分に相当する部分)の拡大図である。
図4(b)は、
図4(a)に示す後部ドア30の一部(D−D切断線で切断された部分)の断面図である。D−D切断線は、X軸方向と平行であり、後述する給電部230を通る直線である。
【0053】
〔ドアフレーム34の構成〕
図4(b)に示すように、ドアフレーム34(Bピラー部分)は、前側(図中X軸正側)に位置する第1の平面部分34Aと、後ろ側(図中X軸負側)に位置する第2の平面部分34Bとを有する。第2の平面部分34Bは、第1の平面部分34Aよりも車室側(図中Y軸負側)に位置する。すなわち、上記第1の平面部分34Aと上記第2の平面部分34Bとの間には、高低差が生じている。その理由は、後部窓32をドアフレーム34内に収容するために、後部窓32の縁部と重なる部分である上記第2の平面部分34Bが、上記第1の平面部分34Aに対して、車内側(図中Y軸負側)に凹まされているからである。ドアフレーム34において、第1の平面部分34Aと第2の平面部分34Bとは、これらの間に設けられた傾斜面34Cによって、互いに繋がりあっている。
【0054】
〔窓フレーム10の取り付け〕
図4(b)に示すように、窓フレーム10が備えるドアフレーム支持部120の差し込み口には、ドアフレーム34の第1の平面部分34Aの縁部が差し込まれる。また、窓フレーム10が備える保持部130の差し込み口には、後部窓32の縁部を把持する樹脂製のウインドガイド36が嵌め込まれる。これにより、窓フレーム10は、ドアフレーム34のBピラー部に取り付けられ、後部窓32を上下方向にスライド可能に保持した状態となる。窓フレーム10は、さらなる他の固定手段(例えば、接着テープ、接着剤、ネジ、リベット、ピン等)によって、ドアフレーム34に対してより強固に固定されてもよい。
【0055】
ウインドガイド36の材料として誘電正接が大きい樹脂を用いた場合、フィルムアンテナ200の給電部230をウインドガイド36と重なるように配置すると、ウインドガイド36の影響によってフィルムアンテナ200の大幅な利得低下が生じ得る。そこで、本実施形態においては、ウインドガイド36の材料として、誘電正接が小さい樹脂、具体的には、誘電正接が0.67以下の樹脂を用いる。これにより、フィルムアンテナ200の大幅な利得低下を生じることなく、フィルムアンテナ200の給電部230をウインドガイド36と重なるように配置することが可能になる。なお、ウインドガイド36に好適な、誘電正接が0.67以下の樹脂材料としては、TPE(Thermoplastic Elastomers)やカーボンブラックの含有率が十分に少ないEPDM(Ethylene Propylene Diene Monomer)などが挙げられる。
【0056】
〔フィルムアンテナ200の構成〕
図4に示すように、窓フレーム10の樹脂パネル100に形成された内部空間112内には、フィルムアンテナ200が配置される。フィルムアンテナ200は、フレキシブル基板202と、上記フレキシブル基板202の表面に形成されたアンテナパターン(導電パターン)とを備えて構成されている。フレキシブル基板202は、柔軟性を有する薄板状の部材であり、例えば、フレキシブル基板202の素材には、誘電体フィルム(例えば、ポリイミドフィルム)が用いられる。アンテナパターンは、目的の周波数帯域の電波を受信するための形状を有しており、例えば、地板、放射素子、給電部、短絡部等を含んで構成されている。フィルムアンテナ200は、アンテナパターンにより、ループアンテナ、モノポールアンテナ、逆F型アンテナ等に分類される。アンテナパターンの素材には、薄板状の導体箔(例えば、銅箔)が用いられる。
【0057】
図4(a)に示すように、本実施形態のフィルムアンテナ200は、フレキシブル基板202と、第1の放射素子として機能する第1の導体膜210(導電パターン)と、第2の放射素子として機能する第2の導体膜220(導電パターン)と、給電部230と、を備えて構成されているダイポールアンテナである。
図4(a)では、フィルムアンテナ200の配置および構成を解りやすくするため、フィルムアンテナ200を実線で示している。実際には、フィルムアンテナ200は、樹脂パネル100の内部空間112内に配置されていることは、
図4(b)等から明らかである。
【0058】
(第1の導体膜210、第2の導体膜220)
図4(a)に示す例では、第1の導体膜210および第2の導体膜220は、給電部230を間に挟んで互いに対向するように、上下方向(図中Z軸方向)に並んで配置されている。具体的に説明すると、第1の導体膜210は、上下方向に長い長方形状を有する。また、第2の導体膜220は、上下方向に長い長方形状を有する主部と、当該主部の左上角部から上方向(Z軸正側の方向)に向かって突出した突出部と、を有して構成されている。そして、第1の導体膜210の下側(Z軸負側)の辺と、第2の導体膜220の主部の上側(Z軸正側)の辺とは、給電部230を間に挟んで互いに対向している。
【0059】
(給電部230)
給電部230は、互いに対向する第1の導体膜210と第2の導体膜220の主部との間に設けられている。給電部230においては、図示を省略する同軸ケーブルの先端部が接続される。具体的に説明すると、例えば、給電部230は、第1の導体膜210上に設けられた第1の給電部と、第2の導体膜220の主部上に設けられた第2の給電部とを備えている。そして、上記第1の給電部には、同軸ケーブルの先端部の内側導体が接続され、上記第2の給電部には、同軸ケーブルの先端部の外側導体が接続される。同軸ケーブルの当該先端部とは逆側の末端部は、フィルムアンテナ200が電波を受信することによって生成した電気信号の供給先(例えば、増幅回路、各種通信機器等)に接続される。
【0060】
(給電部230の配置)
ここで、樹脂パネル100の主要部110において、当該主要部110を車外側(図中Y軸正側)から平面視したときに、ウインドガイド36が設けられている領域、換言すればウインドガイド36との重畳領域を、「重畳領域110A」と定義する(
図4(a)および(b)参照)。本実施形態の窓フレーム10において、注目すべきは、フィルムアンテナ200の給電部230が、
図4(a)に示すように、この重畳領域110A内に配置されている点である。言い換えれば、フィルムアンテナ200の給電部230は、樹脂パネル100を車外側から平面視したときにウインドガイド36と重なるように配置されている点である。本実施形態においては、ウインドガイド36の材料として誘電正接が0.67以下の樹脂を用いているので、このような配置を採用してもフィルムアンテナ200の大幅な利得低下が生じることはない。
【0061】
フィルムアンテナ200の給電部230を重畳領域110Aに配置することによって、給電部230に接続された同軸ケーブルを、折り曲げることなく延在部140(
図1参照)に引き込むことが可能になる。これにより、同軸ケーブルの配線が容易になる。また、折り曲げによって同軸ケーブルの特性が劣化したり耐久性が低下したりすることを未然に防止することができる。
【0062】
なお、
図4では、フィルムアンテナ200の給電部230が、
図4(a)に示すように、この重畳領域110A内に配置されている態様を示しているが、本発明の本質は、フィルムアンテナ200の給電部230の配設位置が制約されない点にある。すなわち、本発明は、フィルムアンテナの給電部が、樹脂パネルの主要部を車外側から平面視したときに、ウインドガイドと重畳するように配置される構成に限定されるものではない。後述する変形例では、フィルムアンテナの給電部が、樹脂パネルの主要部を車外側から平面視したときに、ウインドガイドと重畳しない態様について説明する。
【0063】
〔ウインドガイド36の材料〕
以下、フィルムアンテナ200の給電部230をウインドガイド36と重なるように配置した場合でも、十分な利得を得ることが可能なウインドガイド36の材料について検討する。具体的には、フィルムアンテナ200の給電部230をウインドガイド36と重なるように配置した場合でも、最大利得が−2.7dBi以上となるウインドガイド36の材料について検討する。なお、ここで設定した閾値−2.7dBiは、車両のルーフ部に配置された高さ6cmのシャークフィン型のアンテナ装置に内蔵された3Gアンテナの800MHz帯における典型的な受信利得であり、車載用アンテナの標準的な利得の目安となる値である。
【0064】
ウインドガイド36を構成する樹脂の800MHz帯における誘電正接(tanδ)を、0以上、1.9以下の範囲内で変化させ、フィルムアンテナ200の最大利得を測定した結果を、
図5に示す。
図5の実線は、測定した最大利得を最小二乗法によってフィッティングすることによって得られたものである(R
2=0.888)。
【0065】
フィッティングによって得られた一次式より、tanδが0.67であるとき、最大利得が−2.7dBiとなることが分かった。すなわち、ウインドガイド36の材料として、tanδ≦0.67を満たす樹脂を用いることによって、フィルムアンテナ200の給電部230をウインドガイド36と重なるように配置してもなお十分な利得が得られることが確かめられた。
【0066】
なお、樹脂材料においては、その誘電正接tanδとその直流導電率σDCとが正の相関をもっている。したがって、ウインドガイド36の材料として好適な樹脂は、その誘電正接tanδによって規定することもできるし、その直流導電率σDCによって規定することもできる。
【0067】
各種樹脂材料における誘電正接tanδと直流導電率σDCとの相関関係を
図6に示す。
図6の実線は、測定したσDCを最小二乗法によってフィッティングすることによって得られたものである(R
2=0.954)。
【0068】
フィッティングによって得られた関数より、直流導電率σDCが6.2×10
−6S/cmであるとき、誘電正接tanδが0.67となることが分かった。したがって、直流導電率σDCがσDC≦6.2×10
−6S/cmを満たす樹脂は、誘電正接tanδがtanδ≦0.67を満たす。すなわち、ウインドガイド36の材料として、直流導電率σDCがσDC≦6.2×10
−6S/cmを満たす樹脂を用いることによっても、フィルムアンテナ200の給電部230をウインドガイド36と重なるように配置してもなお十分な利得が得られることが確かめられた。
【0069】
また、ウインドガイド36の材料として、EPDMを用いる場合、その誘電正接tanδは、カーボンブラックの含有率C[wt%]と相関をもつ。したがって、ウインドガイド36の材料として好適な樹脂は、その誘電正接tanδによって規定することもできるし、カーボンブラックの含有率Cによって規定することもできる。
【0070】
各種EPDMにおける誘電正接tanδとカーボンブラックの含有率Cとの相関関係を
図7に示す。
図7の実線は、測定したCを最小二乗法によってフィッティングすることによって得られたものである(R
2=0.887)。
【0071】
フィッティングによって得られた関数より、カーボンブラックの含有率Cが35wt%であるとき、誘電正接tanδが0.67となることが分かった。したがって、カーボンブラックの含有率CがC≦35wt%を満たすEPDMは、誘電正接tanδがtanδ≦0.67を満たす。すなわち、ウインドガイド36の材料として、カーボンブラックの含有率CがC≦35wt%を満たすEPDMを用いることによっても、フィルムアンテナ200の給電部230をウインドガイド36と重なるように配置してもなお十分な利得が得られることが確かめられた。
【0072】
なお、誘電正接tanδおよび直流導電率σDCは、以下の測定方法によって測定した。すなわち、まず、縦15mm以下、横15mm以下、厚さ2mm以下の板状の試料材料を準備した。そして、誘電正接tanδおよび直流導電率σDCを、当該板状の試料材料の厚さ方向に測定した。なお、誘電正接tanδの測定には、測定器としてE4991A RF Impedance / Material Analyzerを用い、プローブとしてE4991A Test Head 16453A Dielectric Material Test Fixtureを用いた。
図5〜
図7に示すグラフにおいて、0.2以上の誘電正接tanδは、試料材料に4.5Vの電圧を印加して測定したものであり、0.2より小さい誘電正接tanδは、4.5Vよりも大きい電圧を印加して測定したものである。
【0073】
〔窓フレームの第1変形例〜第3変形例〕
以下、
図8〜
図11を参照して、本実施形態の窓フレーム10の第1変形例〜第3変形例について説明する。本発明に係る窓フレームの特徴的な構成は、ウインドガイドの材料であり、樹脂パネル100の構造や、アンテナの種類およびパターン形状を問わず、アンテナとして一定の効果が得られる。したがって、本実施形態の窓フレーム10において、樹脂パネル100の構造や、フィルムアンテナ200の種類またはパターン形状等を
図4(a)に示した態様とは異ならせたとしても、上述の実施形態と同様の効果が得られる。なお、
図8〜
図11に示す窓フレーム10は、あくまでも例示的なものであり、本発明の窓フレームを限定するものではない。なお、
図8〜
図11の各図において、(a)は、窓フレーム10の平面図であり、(b)は、(a)に示す窓フレーム10のA−A断面図である。
【0074】
第1変形例〜第3変形例の窓フレーム10においては、
図8〜
図10の(b)に示すように、フィルムアンテナ200が樹脂製の樹脂パネル100に埋設されている。このため、フィルムアンテナ200の表面(特に車外側の表面)に同軸ケーブルをはんだ付けすると、盛り上がったはんだが樹脂パネル100の体裁面(車外側の表面)に凹凸やひけを生じさせる虞がある。
【0075】
そこで、第1変形例〜第3変形例の窓フレーム10においては、
図8〜
図10の(a)に示すように、フィルムアンテナ200の給電部230から樹脂パネル100の外周縁部に至る平面伝送線路260を設け、樹脂パネル100の外周縁部において平面伝送線路260と同軸ケーブルとを接続する構成を採用している。これにより、樹脂パネル100の体裁面に生じ得る凹凸やひけを、後部ドア30のドアボディ31(
図3参照)に隠すことができる。その結果、窓フレーム10を搭載する車両20の美観を保つことが可能になる。
【0076】
以下、第1変形例の窓フレーム10が備えるフィルムアンテナ200について、
図8を参照して説明する。
【0077】
図8の(a)に示すように、第1変形例の窓フレーム10が備えるフィルムアンテナ200は、(1)フレキシブル基板202と、(2)第1の放射素子として機能する第1の導体膜210、第2の放射素子として機能する第2の導体膜220、および給電部230により構成されたダイポールアンテナと、(3)給電部230から樹脂パネル100の下端部まで延伸する平面伝送線路260と、を備えている。第1の導体膜210、第2の導体膜220、給電部230、および、平面伝送線路260は、いずれも、フレキシブル基板202の表面上に設けられている。
【0078】
第1の導体膜210および第2の導体膜220は、いずれも矩形状であり、給電部230を間に挟んで互いに対向するように、上下方向(図中Z軸方向)に並んで配置されている。給電部230は、第1の導体膜210の下端部に設けられた給電点P1と、第2の導体膜220の上端部に設けられた給電点P2とを含んでいる。
【0079】
平面伝送線路260は、薄膜状の導体であって、フィルムアンテナ200のための給電線として機能する。平面伝送線路260は、フィルムアンテナ200への給電のため、一方の端部が、給電部230を介してフィルムアンテナ200(に含まれるダイポールアンテナ)に接続されており、他方の端部には、同軸ケーブルが接続される。
【0080】
本変形例において、平面伝送線路260は、中心導体262および接地導体264により構成されたコプレーナ線路である。中心導体262は、給電点P1から、窓フレーム10の主要部110の下端部まで延伸する、帯状かつ薄膜状の導体である。接地導体264は、中心導体262に沿って、給電点P2から樹脂パネル100の下端部まで延伸する、帯状かつ薄膜状の導体である。
【0081】
中心導体262の終端部には、接続点P1'が設けられている。接続点P1'には、同軸ケーブルの先端部の内側導体がはんだ付けされる。接地導体264の終端部には、接続点P2'が設けられている。接続点P2'には、同軸ケーブルの先端部の外側導体がはんだ付けされる。これにより、同軸ケーブルおよび平面伝送線路260を介して、第1の導体膜210および第2の導体膜220への給電が可能となる。
【0082】
接続点P1'および接続点P2'が設けられている箇所、すなわち、平面伝送線路260と同軸ケーブルとのはんだ付けが行われる箇所は、後部ドア30のドアボディ31(
図3参照)に覆い隠される、樹脂パネル100の下端部である。したがって、上述したとおり、樹脂パネル100の体裁面に生じ得る凹凸やひけは、ドアボディ31に隠すことが可能になる。
【0083】
なお、平面伝送線路260は、ダイポールアンテナと一体成形されており、ダイポールアンテナとの接続にはんだ付けを要さない。したがって、給電点P1および給電点P2が設けられている箇所、すなわち、ダイポールアンテナと平面伝送線路260とが接続される箇所において、樹脂パネル100の体裁面に凹凸やひけが生じる虞はない。
【0084】
なお、接続点P1’および接続点P2’には、はんだ付け等によって、同軸ケーブルが直接的に接続されてもよく、コネクタ等によって、同軸ケーブルが間接的に接続されてもよい。また、接続点P1’および接続点P2’には、同軸ケーブル以外の被接続体(例えば、アンテナ回路の一部等)が接続されてもよい。
【0085】
平面伝送線路260は、一般的な同軸ケーブルのインピーダンス(例えば、50Ω)と整合するように、各部の形状および寸法(例えば、中心導体262の長さ、幅、接地導体264の長さ、幅、中心導体262と接地導体264との間隔、等)が規定されている。これにより、平面伝送線路260は、フィルムアンテナ200における給電線として機能する一方、フィルムアンテナ200の放射素子の一部としては機能せず、したがって、フィルムアンテナ200のアンテナ特性に影響を及ぼすことなく、フィルムアンテナ200における給電が可能となっている。
【0086】
また、平面伝送線路260は、上述のように、ダイポールアンテナと、同一のフレキシブル基板202上に形成されており、すなわち、フレキシブル基板202に一体化されているため、フレキシブル基板202を所定の位置に貼り付けるだけで、平面伝送線路260を確実な位置に配線することができる。この結果、給電線の撓み等が生じ難くなり、フィルムアンテナ200は、良好なアンテナ特性を安定的に得ることができる。
【0087】
なお、第1変形例の平面伝送線路260(中心導体262および接地導体264)において、上下方向(図中Z軸方向)に直線状に延伸する部分は、主要部110の底板(樹脂製且つ薄板状)を間に挟んで、ドアフレーム34の一部である第1の平面部分34A(金属製)と、互いに積層された状態となっていてもよい。これにより、第1の平面部分34Aをフレキシブル基板202の裏側の導体層として用いることが可能となり、したがって、フレキシブル基板202の両面に導体層が形成された平面伝送線路(コプレーナ線路)を実現することができる。フィルムアンテナ200においては、フレキシブル基板202の片面にのみ導体層を形成すればよいため、その製造にかかるコストを削減することができる。
【0088】
なお、第1の平面部分34Aをコプレーナ線路の構成に含める場合、平面伝送線路260は、第1の平面部分34Aを含めて良好なインピーダンス特性が得られるように、各部が設計されることが好ましい。また、主要部110の底板の厚みは、平面伝送線路260において良好なインピーダンス特性が得られるように、適切なサイズに調整されることが好ましい。
【0089】
第1変形例では、フィルムアンテナ200の給電部230は、先述した重畳領域110A(
図4)内ではなく、重畳領域110A外に配置されている。具体的には、樹脂パネル100の主要部110を車外側(図中Y軸正側)から平面視したときにウインドガイド36および第1の平面部分34Aのいずれとも重ならない領域を「非重畳領域110B」(
図8(a)および(b)参照)と定義すると、第1変形例のフィルムアンテナ200の給電部230は、この非重畳領域110B内に配置されている。また、第1変形例のフィルムアンテナ200では、先述した非重畳領域110B内に接続点P1’および接続点P2’も配置されている。第1変形例のフィルムアンテナ200であっても、上述した実施形態のフィルムアンテナ200と同様に、良好な放射特性が得られる。
【0090】
なお、平面伝送線路(コプレーナ線路)は、上述の実施形態のアンテナ200のように給電部230がウインドガイド36と重なるように配置されている態様にも採用することができる。すなわち、平面伝送線路(コプレーナ線路)を採用した態様において、上述した給電部の給電点がウインドガイド36と重なるように配置されていてもよい。
【0091】
次に、第2変形例の窓フレーム10が備えるフィルムアンテナ200について、
図9を参照して説明する。
【0092】
図9の(a)に示すように、第2変形例の窓フレーム10が備えるフィルムアンテナ200は、(1)フレキシブル基板202と、(2)放射素子として機能する環状導体膜250、および、環状導体膜250の起点と終点との間に設けられた給電部230により構成されるループアンテナと、(3)給電部230から樹脂パネル100の下端部まで延伸する平面伝送線路260と、を備えている。第1の導体膜210、第2の導体膜220、給電部230、および、平面伝送線路260は、いずれも、フレキシブル基板202の表面上に設けられている。
【0093】
平面伝送線路260は、上記第1の変形例と同じく、第1の導体膜210に設けられた給電点P1から、樹脂パネル100の下端部まで延伸する中心導体262と、第2の導体膜220に設けられた給電点P2から、中心導体262に沿って、樹脂パネル100の下端部まで延伸する接地導体264とを備え、コプレーナ線路を構成する。
【0094】
平面伝送線路260と同軸ケーブルとのはんだ付けが行われる接続点P1'および接続点P2'が樹脂パネル100の下端部に配置されており、樹脂パネル100の体裁面に生じ得る凹凸やひけがドアボディ31に隠れることは、第1変形例と同様である。また、平面伝送線路260がダイポールアンテナの放射素子と一体成形されている点も、第1変形例と同様である。
【0095】
次に、第3変形例の窓フレーム10が備えるフィルムアンテナ200について、
図10を参照して説明する。
【0096】
図10の(a)に示すように、第3変形例の窓フレーム10が備えるフィルムアンテナ200は、(1)フレキシブル基板202と、(2)第1の放射素子として機能する第1の導体膜210、第2の放射素子として機能する第2の導体膜220A、220B、および給電部230により構成されたアンテナと、(3)給電部230から樹脂パネル100の下端部まで延伸する平面伝送線路260と、を備えている。第1の導体膜210、第2の導体膜220A、220B、給電部230、および、平面伝送線路260は、いずれも、上下に長手方向を有するフレキシブル基板202の表面上に設けられている。
【0097】
平面伝送線路260は、第1の導体膜210に設けられた給電点P1から、樹脂パネル100の下端部まで延伸する中心導体262と、一方の第2の導体膜220Aに設けられた給電点P2Aから、中心導体262の左側に沿って、樹脂パネル100の下端部まで延伸した後、樹脂パネル100の下端部から、中心導体262の右側に沿って、他方の第2の導体膜220Bに設けられた給電点P2Bまで延伸する接地導体264とを備え、コプレーナ線路を構成する。
【0098】
平面伝送線路260と同軸ケーブルとのはんだ付けが行われる接続点P1'および接続点P2'が樹脂パネル100の下端部に配置されており、樹脂パネル100の体裁面に生じ得る凹凸やひけがドアボディ31に隠れる点は、第1変形例と同様である。また、平面伝送線路260がアンテナの放射素子と一体成形されている点も、第1変形例と同様である。
【0099】
〔窓フレームの第4変形例〕
図11を参照して、本実施形態に係る窓フレーム10の第4変形例について説明する。
図11において、(a)は、第4変形例の窓フレーム10の平面図であり、(b)は、(a)に示す窓フレーム10のA−A断面図である。
【0100】
第4変形例の窓フレーム10が備えるフィルムアンテナ200は、
図8に示したフィルムアンテナ200と同様に構成されている。ただし、第4変形例に係る窓フレーム10は、フィルムアンテナ200の下端部が樹脂パネル100か延出している(はみ出している)点で、
図8に示した窓フレーム10と相違する。
【0101】
フィルムアンテナ200が備える平面伝送線路260は、
図11の(a)に示すように、給電部230からフィルムアンテナ200の下端部まで延伸しており、同軸ケーブルの内側導体および外側導体がはんだ付けされる接続点P1’および接続点P2’は、樹脂パネル100の外部に設けられる。したがって、
図11の(b)に示すように、フィルムアンテナ200を樹脂パネル100に埋設する場合でも、はんだによって樹脂パネル100の表面に凹凸やひけが生じる懸念がない。また、同軸ケーブルを樹脂パネル100の内部に引き込む必要がないため、窓フレーム10の車両への実装を容易にすることができる。
【0102】
〔窓フレームの第5変形例〕
図12を参照して、本実施形態に係る窓フレーム10の第5変形例について説明する。
図12において、(a)は、窓フレーム10の平面図であり、(b)は、(a)に示す窓フレーム10のA−A断面図である。
【0103】
第5変形例の窓フレーム10においては、
図12の(a)に示すように、フィルムアンテナ200の給電部230が、重畳領域110Cに配置されている。ここで、重畳領域110Cとは、樹脂パネル100を車外側から平面視したときにドアフレーム34の第1の平面部分34Aと重なる領域のことを指す。重畳領域110Cにおいては、
図12の(b)に示すように、樹脂パネル100とドアフレーム34との間に隙間がない。このため、給電部230においてフィルムアンテナ200に接続された同軸ケーブルを、樹脂パネル100の裏面から引き出し、樹脂パネル100とドアフレーム34との間の隙間に配線することができない。
【0104】
そこで、第5変形例の窓フレーム10においては、
図12の(a)に示すように、フィルムアンテナ200の給電部230からウインドガイド36および第1の平面部分34Aのいずれとも重ならない非重畳領域110Bまで延伸する平面伝送線路260を設け、非重畳領域110Bにおいて平面伝送線路260と同軸ケーブルとを接続する構成を採用している。これにより、接続点P1,P2において平面伝送線路260に接続された同軸ケーブルを、樹脂パネル100の車内側に配線することが可能になる。
【0105】
以下、第5変形例の窓フレーム10が備えるフィルムアンテナ200について、
図12の(a)を参照してより具体的に説明する。
【0106】
図12の(a)に示すように、第5変形例の窓フレーム10が備えるフィルムアンテナ200は、(1)フレキシブル基板202と、(2)第1の放射素子として機能する第1の導体膜210、第2の放射素子として機能する第2の導体膜220、および給電部230を備えて構成されたダイポールアンテナと、(3)給電部230から延伸する平面伝送線路260と、を備えている。第1の導体膜210、第2の導体膜220、給電部230、および、平面伝送線路260は、いずれも、フレキシブル基板202の表面上に設けられている。
【0107】
第1の導体膜210および第2の導体膜220は、給電部230を間に挟んで互いに対向するように、上下方向(図中Z軸方向)に並んで配置されている。第1の導体膜210は、縦長の長方形状を有する主部と、当該主部の下部左端部から左方向(図中X軸正方向)に向かって突出した突出部と、を有して構成されている。また、第2の導体膜220は、横長の長方形状を有する第1主部と、縦長の長方形状を有する第2主部と、上下方向に並んで配置された第1主部および第2主部とを連結する帯状部を有して構成されている。帯状部は、第1主部の下部右端と第2主部の上部右端とを繋ぐように設けられている。
【0108】
第1の導体膜210の突出部の左端に設けられた給電点P1には、平面伝送線路260の中心導体262が接続される。第2の導体膜220の第1主部の上部左端に設けられた給電点P2には、平面伝送線路260の接地導体264が接続される。給電点P1および給電点P2は、何れも重畳領域110Bに配置される。
【0109】
平面伝送線路260は、コプレーナ線路を構成する中心導体262および接地導体264を備えている。中心導体262は、(1)給電点P1から左方向(図中X軸正方向)に直線状に延伸し、(2)下方向(図中Z軸負方向)に直角に折れ曲がり、第2の導体膜220の第1主部の左辺に沿って延伸し、(3)右方向(図中X軸負方向)に直角に折れ曲がり、第2の導体膜220の第1主部の下辺に沿って延伸する。一方、接地導体264は、(1)給電部230の給電点P2から左方向(図中X軸正方向)に直線状に延伸し、(2)下方向(図中Z軸負方向)に直角に折れ曲がり、中心導体262の右側を、第2の導体膜220の第1主部の左辺に沿って延伸し、(3)右方向(図中X軸負方向)に直角に折れ曲がり、中心導体262の上側を、第2の導体膜220の第1主部の下辺に沿って延伸し、(4)中心導体262の終端部を囲むように、下方向(図中Z軸負方向)に直角に折れ曲がった後、左方向(図中X軸正方向)に直角に折れ曲っている。
【0110】
中心導体262の終端部に設けられた接続点P1’には、同軸ケーブルの内側導体が接続される。接地導体264の終端部に設けられた接続点P2’には、同軸ケーブルの外側導体が接続される。接続点P1’および接続点P2’は、何れも非重畳領域110A’の内部に配置される。
【0111】
本変形例において、平面伝送線路260の終端部(給電部230側と反対側の端部)は、
図12の(b)に示すように、非重畳領域110Bのなかでも、樹脂パネル100を車外側から平面視したときに、ドアフレーム34の第1の平面部分34A及び保持部130の何れとも重ならない領域に配置される。この領域においては、
図12の(b)に示すように、樹脂パネル100とドアフレーム34との間に隙間があるため、接続点P1’,P2’において平面伝送線路260に接続された同軸ケーブルを、その隙間に配線することができる。
【0112】
ただし、平面伝送路260の終端部の位置は、ウインドガイド36と重ならない領域にあればよく、保持部130と重ならない領域にあることを要さない。ウインドウガイド36の終端部の位置が保持部130と重なる領域にある場合、同軸ケーブルは、保持部130に埋設されることになる。
【0113】
〔付記事項〕
本発明は上述した実施形態および変形例に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。