(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。
<第1の実施の形態>
【0012】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る車車間通信装置を備えた車車間通信対応車A10と車車間通信対応車B11の振る舞いの概要を示すための例としての、道路上の一局面を表す図である。
通常の車車間通信における基本的な機能として、車車間通信対応車A10と車車間通信対応車B11はお互いの位置等の情報を通知し合う。これにより、車車間通信対応車A10と車車間通信対応車B11はそれぞれお互いの位置を把握するが、それ以外の道路状況(ここでは車車間通信に対応していない従来車12と歩行者13の位置・存在)は把握できない。
この車車間通信システム上の把握・可視範囲を広げるために、車車間通信対応車A10と車車間通信対応車B11はそれぞれが持つセンサで検知した歩行者や車、障害物の情報を車車間通信で通知し合う。この際、歩行者13のように、複数の車車間通信対応車から検知される対象が存在すると、その対象の存在は車車間通信上で重複して通知されてしまう。これには、車車間通信システム上でその対象が2つ存在してしまうという問題と、1つの対象につき二重の通信が発生してしまうという問題がある。
【0013】
この問題を解消するため、車車間通信対応車A10と車車間通信対応車B11は、自車センサが検知した移動体・物体の情報を車車間通信で通知する前に、それら検知した対象が既に車車間通信システム上で通知されていないかを、検知された情報と車車間通信で他局(他の車両や路側機)から通知された情報(位置情報など)を比較することでチェックを行う。重複が検知された場合、他局から通知された情報の精度(ここでは位置の誤差範囲とする)と自車センサが検知した情報の精度を比較する。自車センサの情報の方が精度が高いと判断された場合、その移動体・物体についての情報を通知している局に対して、通知権利を譲渡する要求通知を出し、要求を受諾する通知が返ってきた場合、その局に代わって自局(自車)が通知を行う。
【0014】
この
図1では、車車間通信対応車A10が、自車およびセンサで検知した従来車12、歩行者13の通知をしていたところに、車車間通信対応車B11が現れ、より高い精度で歩行者13の位置を検知し車車間通信対応車A10と交渉を行った結果として、自車および歩行者13の通知を行っているものとする。
【0015】
図2は、本発明の第1実施形態に係る車車間通信対応車A10および車車間通信対応車B11に搭載された車車間通信装置20の構成図である。
車車間通信装置20は、車車間通信モジュール21、アンテナ22、ドライバ23、OS24、通信層スタック25、メッセージ層スタック26、ID制御部27、アプリケーション28、その他、各プログラムを実行するCPU、自車上の他の車載機器と通信するための車載ネットワークインターフェースなどを適宜備える。
【0016】
車車間通信モジュール21はアンテナ22に繋がっており、またOS24上には対応するドライバ23がインストールされている。これら車車間通信モジュール21、アンテナ22、ドライバ23により、データリンク層以下(Wi−Fiと同じ層)の車車間通信は実現される。またその上の通信層スタック25により、トランスポート層とネットワーク層(TCP/IP層)相当の通信が実現される。
【0017】
その上のメッセージ層スタック26は、送受信されるメッセージの内容・フォーマットや送受信タイミング等のプロトコルを実装する。メッセージ層スタック26内の自車情報通知部261は、自車の位置等の情報を自車情報部262から取得し、他の車車間通信局(車、路側機、歩行者の持つ携帯端末など)に通知する。また、他局からの他局位置等に関する通知を受け取り、上位層(ここではアプリケーション28)に通知する。ここでは、これらお互いの局の情報をやり取りするメッセージを位置メッセージと呼ぶものとする。
【0018】
ID制御部27は、それぞれの車車間通信対応局を識別するためのIDを提供する。このIDは、車車間通信のメッセージに付加され、それぞれの局を識別するのに使用される。このIDは、自局の通信範囲内で一意であればそれで良く、全ての車車間通信対応局間で一意である必要はない。ここではIDは十分広い範囲の乱数から生成されるものとする。
車車間通信の標準・プロトコルは国や地域によって異なるが、
図2についてここまでに挙げたコンポーネントは、車同士が相互の存在・位置を通知し合うという車車間通信の基本的な機能を実現するために必要な要素であり、実現の形の違いはあるとしても、どの標準にも含まれることが期待される。
【0019】
本発明では、これら標準の機能に加え、メッセージ層スタック26内に、他車情報通知部264、センサ情報部263を追加し、それによって、自車センサから取得した車車間通信非対応の移動体・物体の情報を車車間通信で通知する機能を実現する。
【0020】
図3は、位置メッセージの項目及び値の例を示す図である。
位置メッセージは、メッセージ種類を表すメッセージタイプ、自局を通信範囲内で一意に識別する局ID、タイプ(車、路側機、歩行者など)、大きさ、位置、位置精度、速度、進行方向、またそれらの情報の取得時を表すタイムスタンプを有する。
【0021】
図4は、自車情報通知部261の機能ブロック図である。
自車情報通知部261は、車車間通信の基本機能である自車位置情報通知と、他局からの位置情報取得の機能を実現する。
位置メッセージ送信部2611は、自車の位置や速度などの情報を自車情報部262から取得し、また自車通信範囲内で一意なIDである局IDをID制御部27から取得し、それらの情報から自車の位置メッセージを生成し、通信層スタック25に渡すことで、自車の位置メッセージを車車間通信で周辺他局に通知する。
位置メッセージ受信部2612は、他局から車車間通信で届いた位置メッセージを、通信層スタック25から受け取り、プログラム上扱いやすい構造体に入れ直してアプリケーション28に渡す。アプリケーション28は、ここで渡された情報から他局の位置などを知り、必要に応じて運転者への警告などの機能を実現する。
【0022】
図5は、他車情報通知部264の機能ブロック図である。
他車情報通知部264は、センサ情報部263と併せて、自車センサから取得した車車間通信非対応の移動体・物体の情報を車車間通信で通知する機能を実現する。
センサ情報部263は、ミリ波レーダやステレオカメラ等のセンサで検知された移動体・物体の位置や大きさなど、位置メッセージを構成するのに必要な情報を重複排除部
2641に提供する。このセンサ情報部263は、動線追跡の機能を持ち、それによって、例えば検出された移動体Aと、移動体Aの100ミリ秒後の移動した姿である移動体A'は同じ移動体であると認識され、一意のIDが付与されるものとする。このIDを物体IDと呼び、物体IDの付与された移動体・物体の情報を検知物体情報と呼ぶものとする。
【0023】
位置メッセージ受信部2642は、自車情報通知部261の位置メッセージ受信部2612と同じく、他局から車車間通信で届いた位置メッセージを通信層スタックから受け取り、プログラム上扱いやすい構造体に入れなおして重複排除部
2641に提供する。
重複排除部
2641は、センサ情報部263から受け取った検知物体情報から、既にその移動体・物体自体が車車間通信対応しているもの、もしくはその移動体・物体の情報が他局によって車車間通信上で通知されているものを排除する。それらの移動体・物体の情報は既に車車間通信上で共有されており、他車情報通知部264が通知を行う必要がないためである。ただし、この際、検知物体情報の精度が他局から受け取った情報の精度より高いと判断できるものについては、交渉メッセージ送受信部2645を使用して他局と交渉を行い、成功した、つまりその移動体・物体に対する情報通知の権利を取得した場合は、その検知物体情報の排除は行わない。
【0024】
位置メッセージ送信部
2643は、自車情報通知部261の位置メッセージ送信部2611と同じく、局IDをID制御部27から、また位置メッセージを構成する情報を他のコンポーネント、ここでは送信制御部2644から受け取り、位置メッセージを生成して通信層スタック25に送信する。この位置メッセージ送信部2641は1つの移動体・物体の位置メッセージを送信するコンポーネントであるため、重複排除部
2641から送られてくる、センサによって検知された複数の移動体・物体の情報には対応できない。そのため、送信制御部2644を設け、この送信制御部2644が、重複排除部
2641から渡された検知物体情報の数に合わせて複数の位置メッセージ送信部を生成・制御することで、複数の移動体・物体の位置メッセージを送信することが可能となる。この際、1つの検知物体情報(物体ID)に対応して1つの位置メッセージ送信部が生成され対応付けされるので、同じ物体IDの検知物体情報は同じ局IDの位置メッセージとして送信されることになる。
【0025】
図6は、交渉メッセージの項目および値の例を表す図である。
Requestメッセージは、自車のセンサから取得した検知物体情報の精度が他局から受け取った位置メッセージの精度よりも高いと判断される場合に、他局に対してその移動体・物体についての通知(位置メッセージの生成と発信)の権利を譲るようリクエストするメッセージである。このRequestメッセージは重複排除部
2641からの要求を受けた交渉メッセージ送受信部2645が生成・発信する。
OKメッセージは、Requestメッセージを受け取った局が、該当位置メッセージの通知権を譲渡することに合意した場合に返信する。この際、自局による該当位置メッセージの通知停止予定時刻もOKメッセージに含めて送信する。譲渡に合意しない場合は返信を行わない。
【0026】
図7は、検知物体情報の項目および値の例を表す図である。センサ情報部263によって通知される検知物体情報は、車車間通信装置20内で一意である物体ID、タイプ(車、路側機、歩行者など)、大きさ、位置、位置精度、速度、進行方向、またそれらの情報の取得時を表すタイムスタンプを有する。メッセージタイプがないのと局IDが物体IDと入れ替わっている点以外は、
図3の位置メッセージと同じ構成である。
【0027】
図8は、重複排除部2641の機能ブロック図である。
位置メッセージテーブル26413は、位置メッセージ受信部2642から受け取った位置メッセージ、つまりは車車間通信によって通知された他局の情報を保持する。既にテーブル上に存在する局ID、つまり同じ移動体・物体の位置メッセージを受け取った場合は、新しい値で上書きする。
【0028】
重複検知部26411は、センサ情報部263から受け取った検知物体情報と、位置メッセージテーブル26413内の位置メッセージとを照らし合わせ、重複を検知し、その結果によって送信制御部2644を通じた検知物体情報の通知や、
交渉メッセージ送受信部2645を通じた他局との通知権取得の交渉などを行う。この重複排除部2641の動作各ステップについては
図10、
図11に後述する。
【0029】
図9は、位置メッセージテーブル26413の構成例を表す図である。位置メッセージテーブル26413は
図3に示した位置メッセージの内容と、どの局がその移動体・物体の位置メッセージを通知するのかを示す通知権フラグを持つ。この通知権フラグは、交渉メッセージ送受信部2645の交渉メッセージのやり取りがされていない状態ではNone、交渉メッセージをやり取りした結果元々その位置メッセージを送っていた局(他局)が通知を続ける(通知権を持つ)ことになった場合はTrue、その他局に代わって自車が通知を行うことになった場合はFalseが入る。
この例は、
図1の車車間通信対応車B11上の位置メッセージテーブル26413を表しており、車車間通信対応車A10から受け取った、車車間通信対応車A10自身および車車間通信対応車A10がセンサで検知した従来車12と歩行者13の情報が入っている。
【0030】
図10は、重複検知部26411の動作フロー図である。以下
図10の各ステップについて説明する。
<ステップS1000>
センサ情報部263から、検知物体情報の通知を受領する。なお、センサ情報部263は1秒間に1回から数回以上の頻度で情報の更新を行い通知を出しているものとする。移動体の事故防止にはその程度の頻度・即応性が必要なためである。
<ステップS1001>
検知物体情報と、位置メッセージテーブル26413内の各位置メッセージを比較し、一致する、つまり同じ移動体・物体を表しているものがあるかチェックする。この際、各位置メッセージについて、タイムスタンプが現時点で1秒より古いものはこのチェックの対象外として削除する。移動体に対する1秒より前の情報は古すぎて用を成さないと考えられるためである。
なお、この一致の判断については、検知物体情報と位置メッセージのタイムスタンプの差を考慮し、位置メッセージの位置情報を推定修正した上で比較を行う。具体的には、例えば位置メッセージのタイムスタンプの方が検知物体情報のタイムスタンプより100ミリ秒古かった場合、位置メッセージの位置、速度、進行方向から100ミリ秒後の位置を計算し比較に使用する。比較では、この推定修正された位置、速度、進行方向、タイプ、大きさそれぞれの差分に重みを付けて足し合わせた値が予め設定した閾値内に収まるかで一致を判断する。
【0031】
<ステップS1002>
一致する位置メッセージが存在しない場合S1003に、存在する場合S1004の処理に移る。
<ステップS1003>
検知物体情報を、送信制御部2644に通知する。これにより、検出物体情報は車車間通信メッセージとして他局に通知される。
<ステップS1008>
この検知物体情報についての処理を終了する。
【0032】
<ステップS1004>
一致した位置メッセージの通知権フラグをチェックする。通知権フラグがNoneの場合、つまりその移動体・物体の通知権が確定していない場合、S1005に移る。通知権フラグがTrueの場合、つまり他局が通知権を持つ場合S1008に移る。通知権フラグがFalseの場合、つまり自局(自車)が通知権を持つ場合、S1003に移る。
<ステップS1005>
検知物体情報と一致した位置メッセージの精度、具体的には位置精度を比較し、検知物体情報の方が精度が高い場合はS1006に、一致した位置メッセージの方が精度が高い場合はS1007に移る。
【0033】
<ステップS1006>
一致した位置メッセージの通知権フラグをTrueにして、発信元局に対して交渉メッセージ(
図6のRequestメッセージ)を発信する。
この交渉メッセージに対して、通知権を譲渡する旨の返信(
図6のOKメッセージ)が返ってきた場合は、
図11の動作フローによりその位置メッセージの通知権フラグがFalseに書き換えられる。その結果、次のセンサ情報部263からの通知に対しては、S1004でFalseのフローに移る。返信が返ってこない場合は、Trueのフローに流れる。
<ステップS1008>
この検知物体情報についての処理を終了する。
<ステップS1007>
一致した位置メッセージの通知権フラグをTrueにする。
【0034】
なお、この動作フローでは、1秒間に何度も届く検知物体情報の全てについてS1001の比較を行っているが、実システム上では、同じ物体IDの検知物体情報については比較の結果を保存しておき、以降は何回かに一度だけ再比較を行う、といった計算機資源の節約ロジックが考えられる。ここでは単に動作フローの簡単のため、また本発明の本筋と関係しないため導入していない。
【0035】
図11は、重複検知部26411の動作フロー図その2である。以下
図11の各ステップについて説明する。
<ステップS1100>
交渉メッセージ送受信部2645から、他局から届いた交渉メッセージであるメッセージOK(
図6)の通知を受領する。
<ステップS1101>
位置メッセージテーブル26413内の、交渉メッセージOKと同じ局IDの要素の、通知権フラグをFalseにする 。
<ステップS1102>
この交渉メッセージについての処理を終了する。
【0036】
<第2の実施の形態>
前記第1の実施形態では、車両に搭載された車車間通信装置20を対象としているが、この構成はほぼそのまま路側機に使用可能である。相違点は自車情報部262のみであり、この自車情報部262を、路側機の位置情報などを提供する路側機情報部に差し替えることで路側機用の構成となる。この場合、路側機は停止している車両と同様とみなすことができ、第1の
実施形態で示した、センサからの取得した移動体・物体の情報を車車間通信上で共有する仕組みは問題なく機能する。