(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
三相交流のR相、S相、T相のいずれかを使用するn個(nは2以上の整数)の制御ループLi(i=1〜n)を、R相、S相、T相の電力消費のバランスが良くなるように複数のグループにグルーピングしたグルーピング情報を予め記憶するグループ登録手段と、
各制御ループLiの設定値SPiの同時変更を検出する同時変更検出手段と、
各制御ループLiの電力使用量の総和が指定された値を超えないように各制御ループLiの操作量出力上限値OHiを算出し、この操作量出力上限値OHiに基づいて各制御ループLiのアクチュエータに対する操作量MViの上限処理を行う電力総和抑制制御手段と、
前記グループ毎に異なるタイミングで前記設定値SPiの同時変更に応じた操作量出力上限値OHiの上昇が起こるように、前記電力総和抑制制御手段が算出した操作量出力上限値OHiの上昇を抑制する上限値操作手段とを備えることを特徴とする電力総和抑制制御装置。
三相交流のR相、S相、T相のいずれかを使用するn個(nは2以上の整数)の制御ループLi(i=1〜n)の設定値SPiの同時変更を検出する同時変更検出ステップと、
各制御ループLiの電力使用量の総和が指定された値を超えないように各制御ループLiの操作量出力上限値OHiを算出し、この操作量出力上限値OHiに基づいて各制御ループLiのアクチュエータに対する操作量MViの上限処理を行う電力総和抑制制御ステップと、
各制御ループLiをR相、S相、T相の電力消費のバランスが良くなるように複数のグループにグルーピングしたグルーピング情報を予め記憶するグループ登録手段を参照し、前記グループ毎に異なるタイミングで前記設定値SPiの同時変更に応じた操作量出力上限値OHiの上昇が起こるように、前記電力総和抑制制御ステップで算出した操作量出力上限値OHiの上昇を抑制する上限値操作ステップとを含むことを特徴とする電力総和抑制制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[発明の原理]
発明者は、R相、S相、T相の各相間の電力消費格差が特に大きくなる要因として、例えば多数の温度制御系における昇温時の大電力が、R相、S相、T相の区別もなく、無制限に調整対象になることに着眼した。すなわち、大電力状態になれば制御ループ間での格差も大きくなりやすく、かつ多数の温度制御系にR相、S相、T相の区別がなければ、三相の電力使用量の不均衡が偶然にも大きくなる余地が生じることになる。例えば、電力抑制度合の小さい制御系はR相ばかりになり、逆に電力抑制度合の大きい制御系はT相ばかりになるというようなことが発生する。
【0022】
そこで、発明者は、R相、S相、T相の複数の制御系統を、電力消費のバランスが良くなるように複数のグループにグルーピングしておくことに想到した。具体的には、R相の最大消費電力の総和とS相の最大消費電力の総和とT相の最大消費電力の総和とが互いに近くなる制御ループが同一のグループに属するようにグルーピングしておく。そして、グループ毎に操作量出力上限値OHの最大化上昇のタイミングをずらすことにより、同時に電力抑制を受ける制御ループ数を削減できる。したがって、偶然発生し得る各相間の電力消費格差が、大きくなり難い状態を維持できるわけであり、これにより相間バランスを改善できることに想到した。
【0023】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明の第1の実施の形態に係る電力総和抑制制御装置の構成を示すブロック図である。ここでは、特許文献1、特許文献2に開示された電力総和抑制制御を利用する際に、三相間の電力バランスを改善するための発明として説明するが、本実施の形態では、特に特許文献1に開示された電力総和抑制制御を利用する場合について説明する。また、説明を簡単化するため、R相、S相、T相の電気ヒータを2個ずつとし、それぞれが別々の6個のPID制御ループにおけるアクチュエータとして使用されている構成とする。さらに、6個のPID制御ループは同時に設定値SP変更が行なわれて、同時に昇温を開始しようとすることを前提とする。
【0024】
具体的には、R相を使用する電気ヒータのうち、制御ループL1に設けられる電気ヒータH1の最大消費電力を400W、制御ループL2に設けられる電気ヒータH2の最大消費電力を300Wとする。S相を使用する電気ヒータのうち、制御ループL3に設けられる電気ヒータH3の最大消費電力を400W、制御ループL4に設けられる電気ヒータH4の最大消費電力を300Wとする。T相を使用する電気ヒータのうち、制御ループL5に設けられる電気ヒータH5の最大消費電力を400W、制御ループL6に設けられる電気ヒータH6の最大消費電力を300Wとする。
【0025】
本実施の形態の電力総和抑制制御装置は、R相、S相、T相のいずれかを使用するn個(nは2以上の整数で、本実施の形態ではn=6)の制御ループLiを、R相、S相、T相の電力消費のバランスが良くなるように複数のグループにグルーピングした結果を示すグルーピング情報を予め記憶するグループ登録部1と、各制御ループLiの設定値SPiの同時変更を検出する同時変更検出部2と、グループ毎に異なるタイミングで設定値SPiの同時変更に応じた操作量出力上限値OHiの上昇が起こるように、後述する電力抑制部4が算出する操作量出力上限値OHiの上昇を抑制する上限値操作部3と、各制御ループLiの電力使用量の総和が指定された値を超えないように各制御ループLiの操作量出力上限値OHiを算出する電力抑制部4と、制御ループLi毎に設けられた制御部5−iとから構成される。電力抑制部4と制御部5−iとは、電力総和抑制制御手段を構成している。
【0026】
電力抑制部4は、全ての制御ループLiのアクチュエータの総電力使用量を規定する割当総電力PWの情報を受信する割当総電力入力部40と、各制御ループLiの消費電力値CTiを取得する電力値取得部41と、各制御ループLiの最大出力時消費電力値CTmiを取得する最大出力時電力値取得部42と、最大出力時消費電力値CTmiと消費電力値CTiとから各制御ループLiの電力余裕CTriを算出する電力余裕算出部43と、各制御ループLiの最大出力時消費電力値CTmiの総和である最大総電力BXを算出する最大総電力算出部44と、各制御ループLiの電力余裕CTriの総和である電力余裕総量RWを算出する電力余裕総量算出部45と、削減すべき総電力量である電力削減総量SWを最大総電力BXと割当総電力PWとから算出する電力削減総量算出部46と、各制御ループLiで削減すべき電力量である電力削減割当量CTsiを算出する電力削減割当量算出部47と、電力削減割当量CTsiと最大出力時消費電力値CTmiとから各制御ループLiの操作量出力上限値OHiを算出する出力上限値算出部48とから構成される。
【0027】
電力余裕算出部43と最大総電力算出部44と電力余裕総量算出部45と電力削減総量算出部46と電力削減割当量算出部47と出力上限値算出部48とは、操作量出力上限値操作手段を構成している。
制御部5−iは、設定値SPi入力部50−iと、制御量PVi入力部51−iと、PID制御演算部52−iと、出力上限処理部53−iと、操作量MVi出力部54−iとから構成される。
【0028】
図2は本実施の形態の制御系のブロック線図である。各制御ループLiは、それぞれ制御部5−iと、制御対象Piとから構成される。後述のように、制御部5−iは、設定値SPiと制御量PViとから操作量MViを算出して、この操作量MViを制御対象Piに出力する。
図9の例では、制御対象PiはヒータHiが加熱する加熱処理炉100であるが、操作量MViの実際の出力先は電力調整器102−iであり、操作量MViに応じた電力が電力調整器102−iからヒータHiに供給される。
【0029】
以下、本実施の形態の電力総和抑制制御装置の動作を
図3、
図4を参照して説明する。
図3は電力総和抑制制御装置の動作を示すフローチャート、
図4(A)〜
図4(L)は電力総和抑制制御装置の動作例を示す図である。
図4(A)はグループAの制御ループL1の制御量PV1、設定値SP1を示し、
図4(B)は制御ループL1の操作量MV1、操作量出力上限値OH1を示している。
図4(C)はグループBの制御ループL2の制御量PV2、設定値SP2を示し、
図4(D)は制御ループL2の操作量MV2、操作量出力上限値OH2を示している。
図4(E)はグループAの制御ループL3の制御量PV3、設定値SP3を示し、
図4(F)は制御ループL3の操作量MV3、操作量出力上限値OH3を示している。
図4(G)はグループBの制御ループL4の制御量PV4、設定値SP4を示し、
図4(H)は制御ループL4の操作量MV4、操作量出力上限値OH4を示している。
図4(I)はグループAの制御ループL5の制御量PV5、設定値SP5を示し、
図4(J)は制御ループL5の操作量MV5、操作量出力上限値OH5を示している。
図4(K)はグループBの制御ループL6の制御量PV6、設定値SP6を示し、
図4(L)は制御ループL6の操作量MV6、操作量出力上限値OH6を示している。
【0030】
グループ登録部1は、各制御ループLi(i=1〜6)を、R相、S相、T相の電力消費のバランスが良くなるように複数のグループにグルーピングした結果を示すグルーピング情報を予め記憶している。具体的には、上記のとおり、R相の最大消費電力の総和とS相の最大消費電力の総和とT相の最大消費電力の総和とが互いに近くなる制御ループが同一のグループに属するようにグルーピングしておく。
【0031】
したがって、本実施の形態の場合、R相の制御ループL1(電気ヒータH1の最大消費電力が400W)とS相の制御ループL3(電気ヒータH3の最大消費電力が400W)とT相の制御ループL5(電気ヒータH5の最大消費電力が400W)とがグループAとしてグルーピングされ、R相の制御ループL2(電気ヒータH2の最大消費電力が300W)とS相の制御ループL4(電気ヒータH4の最大消費電力が300W)とT相の制御ループL6(電気ヒータH6の最大消費電力が300W)とがグループBとしてグルーピングされることになる。
【0032】
各制御ループLi(i=1〜6)の設定値SPiは、加熱装置のオペレータ等によって設定され、同時変更検出部2と各制御部5−iの設定値SPi入力部50−iとに入力される。
同時変更検出部2は、各制御ループLiの設定値SPiの同時変更が行なわれたときに(
図3ステップS100においてYES)、この同時変更を検出して上限値操作部3に通知する(
図3ステップS101)。
【0033】
上限値操作部3は、同時変更検出部2から各制御ループLiの設定値SPiの同時変更が行なわれたことを通知されると、グループ登録部1に登録されているグループAの制御ループLi(i=1,3,5)については特に制約は与えず、グループBの制御ループLi(i=2,4,6)については操作量出力上限値OHi(i=2,4,6)を、それぞれ設定値SPi(i=1〜6)の同時変更直前に出力上限処理部53−iから出力されていた当該制御ループLi(i=2,4,6)の操作量MVi(i=2,4,6)の近傍の値に固定するように、出力上限処理部53−iに対して指示を出す(
図3ステップS102)。具体的には、操作量出力上限値OHi(i=2,4,6)を、それぞれ設定値SPiの同時変更直前の対応する操作量MVi(i=2,4,6)の値に固定するように指示を出せばよい。
【0034】
ステップS102の処理により、グループAの制御ループLi(i=1,3,5)のみが一旦昇温対象になる。このグループBの制御ループLi(i=2,4,6)の操作量出力上限値OHi(i=2,4,6)を小さい値に固定する状態を、予め規定された時間TXだけ維持する。時間TXの規定については、後述する。以下では、ステップS102の処理を実施した時点(設定値SPiの同時変更を検出した時点)からの経過時間が時間TXに達していない場合の動作を先に説明する。
【0035】
割当総電力入力部40は、電力を管理する電力デマンド管理システムのコンピュータ(
図9の例では上位PC103)から、電気ヒータの総電力使用量を規定する割当総電力PWの情報を受信する(
図3ステップS106)。
【0036】
電力値取得部41は、各制御ループLi(i=1〜6)の現在の消費電力値CTi(具体的にはヒータHiの消費電力値)を取得する(
図3ステップS107)。電力値取得部41は、消費電力値CTiを測定してもよいし、推定してもよい。消費電力値CTiを推定するには、ヒータHiに流れる電流値と制御量PViとを入力変数として、予め設定された電力推定関数式により消費電力値CTiを求めるようにすればよい。また、操作量MViと制御量PViとを入力変数としてよいし、ヒータHiに流れる電流値と制御量PViと操作量MViとを入力変数としてもよい。消費電力値CTiの具体的な推定方法は、特開2009−229382号公報に開示されているので、詳細な説明は省略する。
【0037】
次に、最大出力時電力値取得部42は、各制御ループLiの最大出力時消費電力値CTmiを取得する(
図3ステップS108)。ここで、最大出力時とは、操作量MViが最大値100%のときのことを言う。最大出力時電力値取得部42は、予め記憶している最大出力時消費電力値CTmiを取り出してもよいし、推定してもよい。最大出力時消費電力値CTmiを推定するには、消費電力値CTiと制御部5−iから出力される操作量MViに基づき、次式により近似的に推定すればよい。
CTmi=CTi(100.0/MVi) ・・・(1)
【0038】
電力余裕算出部43は、各制御ループLiの電力余裕CTriを次式により制御ループLi毎に算出する(
図3ステップS109)。
CTri=CTmi−CTi ・・・(2)
最大総電力算出部44は、各制御ループLiの最大出力時消費電力値CTmiの総和である最大総電力BXを次式により算出する(
図3ステップS110)。
BX=ΣCTmi=CTm1+CTm2+・・・+CTmn ・・・(3)
【0039】
電力余裕総量算出部45は、各制御ループLiの電力余裕CTriの総和である電力余裕総量RWを次式により算出する(
図3ステップS111)。
RW=ΣCTri=CTr1+CTr2+・・・+CTrn ・・・(4)
電力削減総量算出部46は、削減すべき総電力量である電力削減総量SWを、最大総電力BXと割当総電力PWとから次式により算出する(
図3ステップS112)。
SW=BX−PW ・・・(5)
【0040】
電力削減割当量算出部47は、各制御ループLiで削減すべき電力量である電力削減割当量CTsiを次式により制御ループLi毎に算出する(
図3ステップS113)。
CTsi=SW(CTri/RW) ・・・(6)
【0041】
出力上限値算出部48は、電力削減割当量CTsiと最大出力時消費電力値CTmiとから各制御ループLiの操作量出力上限値OHiを次式により制御ループLi毎に算出する(
図3ステップS114)。
OHi={1.0−(CTsi/CTmi)}100.0[%] ・・・(7)
なお、BX<PWになる場合、すなわちSW<0になる場合は、OHiが100%を超えるが、その場合はOHiを100%で上限カットすればよい。
【0042】
次に、制御部5−iは、制御ループLiの操作量MViを以下のとおりに算出する。設定値SPiは、設定値SPi入力部50−iを介してPID制御演算部52−iに入力される(
図3ステップS115)。
制御量PVi(温度)は、温度センサSiによって測定され、制御量PVi入力部51−iを介してPID制御演算部52−iに入力される(
図3ステップS116)。
【0043】
PID制御演算部52−iは、設定値SPiと制御量PViに基づいて、以下の伝達関数式のようなPID制御演算を行って操作量MViを算出する(
図3ステップS117)。
MVi=(100/PBi){1+(1/TIis)+TDis}(SPi−PVi)
・・・(8)
PBiは比例帯、TIiは積分時間、TDiは微分時間、sはラプラス演算子である。
【0044】
出力上限処理部53−iは、PID制御演算部52−iが算出した操作量MViに対して、以下の式のような上限処理を行う(
図3ステップS118)。
IF MVi>OHi THEN MVi=OHi ・・・(9)
すなわち、出力上限処理部53−iは、操作量MViが操作量出力上限値OHiより大きい場合、操作量MVi=OHiとする上限処理を行う。
【0045】
出力上限処理部53−iは、出力上限値算出部48によって算出され設定された操作量出力上限値OHiを用いるが、ステップS102の処理により上限値操作部3から値を固定するように指示された操作量出力上限値OHi(i=2,4,6)については、この固定指示が解除されるまで、出力上限値算出部48によって設定された値ではなく、上限値操作部3から指示された値を操作量出力上限値OHi(i=2,4,6)とする。上記のとおり、このときの操作量出力上限値OHi(i=2,4,6)は、設定値SPi(i=1〜6)の同時変更直前に出力上限処理部53−iから出力されていた操作量MVi(i=2,4,6)の近傍の値である。
【0046】
操作量MVi出力部54−iは、出力上限処理部53−iによって上限処理された操作量MViを制御対象(実際の出力先は例えば電力調整器102−i)に出力する(
図3ステップS119)。制御部5−iは制御ループLi毎に設けられているので、ステップS115〜S119の処理は制御ループLi毎に実施されることになる。
【0047】
グループAの制御ループLi(i=1,3,5)のみを昇温対象としてステップS107〜S119の処理を繰り返し継続することにより、
図4(B)、
図4(F)、
図4(J)に示すように昇温対象の制御ループLi(i=1,3,5)の操作量MVi(i=1,3,5)が上昇し、電力総和が割当総電力PWに到達するまでは、出力上限値OHi(i=1,3,5)も上昇する。
【0048】
また、
図4(D)、
図4(H)、
図4(L)に示すように昇温対象から一旦外れているグループBの制御ループLi(i=2,4,6)の出力上限値OHi(i=2,4,6)は、設定値SPの同時変更が行なわれる直前の操作量MVi(i=2,4,6)の近傍の小さい値に固定される。この状態で安定すれば、偶然発生し得る各相間の電力消費格差(アンバランス)は、グループAの制御ループLi(i=1,3,5)の中だけに留まる。すなわち、電力消費格差の発生範囲が限定されると共に、電力配分はグループAに集中するので、昇温において電力を抑制される制御ループも発生し難くなり、グループA内での電力消費格差も大きくなり難くなる。
【0049】
また、グループBの制御ループLi(i=2,4,6)の出力上限値OHi(i=2,4,6)は、ステップS102の処理の結果として一様に小さい値に固定される。したがって、この時点でグループBの制御ループLi(i=2,4,6)昇温が始まったとしても、グループB内での電力消費格差も大きくなり難くなっている。
【0050】
次に、上限値操作部3は、ステップS102の処理を実施した時点(設定値SPiの同時変更を検出した時点)からの経過時間が時間TXに達したときに(
図3ステップS103,S104においてYES)、グループ登録部1に登録されているグループBの制御ループLi(i=2,4,6)の操作量出力上限値OHi(i=2,4,6)を固定する状態を解除するように、出力上限処理部53−iに対して指示を出す(
図3ステップS105)。この解除により、以後は、グループBの制御ループLi(i=2,4,6)の操作量出力上限値OHi(i=2,4,6)は、出力上限値算出部48によって算出され設定される値となる。
【0051】
なお、時間TXは、ステップS102の処理を実施した時点(設定値SPiの同時変更を検出した時点)から、先行して上昇するグループAの制御ループLi(i=1,3,5)の操作量出力上限値OHi(i=1,3,5)の上昇が最大値100%で安定するまでの時間よりも長い時間に予め設定しておけばよい。これにより、時間TXは、昇温予定時間のような条件依存度の大きい時間とは無関係になり、設定が容易になる。
【0052】
ステップS107〜S119の処理を繰り返し継続することにより、グループAの制御ループLi(i=1,3,5)の昇温が完了するまでは、電力配分はグループAに集中するが、
図4(A)、
図4(E)、
図4(I)に示すように制御量PV1,PV3,PV5が設定値SP1,SP3,SP5に接近して昇温の完了が近づくに伴い、
図4(B)、
図4(F)、
図4(J)に示すように操作量MVi(i=1,3,5)が徐々に下降し、操作量出力上限値OHi(i=1,3,5)も下降する。すなわち、電力配分はグループAに集中した状態が緩和され、実質的にグループBの制御ループLi(i=2,4,6)の昇温に移行し、
図4(D)、
図4(H)、
図4(L)に示すように制御ループLi(i=2,4,6)の操作量MVi(i=2,4,6)が上昇する。
【0053】
この場合、偶然発生し得る各相間の電力消費格差(アンバランス)は、グループBの制御ループLi(i=2,4,6)の中だけに留まる。すなわち、電力消費格差の発生範囲が限定されると共に、電力配分はグループBに集中するので、昇温において電力を抑制される制御ループも発生し難くなり、グループB内での電力消費格差も大きくなり難くなる。
【0054】
電力総和抑制制御装置は、以上のようなステップS100〜S119の処理を例えばオペレータの指示によって制御が終了するまで(
図3ステップS120においてYES)、一定時間毎に行なう。
【0055】
本実施の形態のように、電力使用量の総和が割当総電力PWを超えないように操作量出力上限値OHiを操作する電力総和抑制制御を行ないつつ、制御量PViを設定値変更に追従させる場合に、R相、S相、T相の複数の制御ループを、電力消費のバランスが良くなるように予めグルーピングしておき、グループ毎に異なるタイミングで操作量出力上限値OHiを上昇させることにより、三相間の電力バランスを改善することができる。
【0056】
例えば、本実施の形態の場合、最大電力消費状態2100Wでは下記のように格差は生じない。上記のとおり、R相の制御ループL1に設けられる電気ヒータH1の最大消費電力は400W、制御ループL2に設けられる電気ヒータH2の最大消費電力は300Wであり、合計の最大消費電力は700Wである。同様に、S相の制御ループL3に設けられる電気ヒータH3の最大消費電力は400W、制御ループL4に設けられる電気ヒータH4の最大消費電力は300Wであり、合計の最大消費電力は700Wである。また、T相の制御ループL5に設けられる電気ヒータH5の最大消費電力は400W、制御ループL6に設けられる電気ヒータH6の最大消費電力は300Wであり、合計の最大消費電力は700Wである。
【0057】
この6個のPID制御ループを初期状態0Wから昇温する場合に、割当総電力PWが最大電力の55%である1155Wであったとする。電力総和抑制制御を行なう際に、特許文献1に開示された従来技術と同様にグルーピングを考慮しない場合、R相の制御ループL1の消費電力が例えば110W、制御ループL2の消費電力が例えば82Wとなり、合計の消費電力は192Wとなる。また、S相の制御ループL3の消費電力が例えば220W、制御ループL4の消費電力が例えば165Wとなり、合計の消費電力は385Wとなる。また、T相の制御ループL5の消費電力が例えば330W、制御ループL6の消費電力が例えば248Wとなり、合計の消費電力は578Wとなる。この場合、三相間の消費電力の最大差の比率は578W/192W=3.0で、3倍の格差となり、三相間の電力バランスが不適切な状態に陥る。
【0058】
一方、本実施の形態では、グループAの操作量出力上限値OHi(i=1,3,5)を先行して上昇させることにより、R相の制御ループL1の消費電力が355W、制御ループL2の消費電力が0Wとなり、合計の消費電力は355Wとなる。また、S相の制御ループL3の消費電力が400W、制御ループL4の消費電力が0Wとなり、合計の消費電力は400Wとなる。また、T相の制御ループL5の消費電力が400W、制御ループL6の消費電力が0Wとなり、合計の消費電力は400Wとなる。この場合、三相間の消費電力の最大差の比率は400W/355W=1.13であり、グループ内における理論上の最大格差の電力消費状態を超えることはない。
【0059】
そして、本実施の形態では、グループAの制御ループLi(i=1,3,5)の昇温が完了し、実質的にグループBの制御ループLi(i=2,4,6)の昇温に移行すると、R相の制御ループL1の消費電力が50W、制御ループL2の消費電力が300Wとなり、合計の消費電力は350Wとなる。また、S相の制御ループL3の消費電力が50W、制御ループL4の消費電力が300Wとなり、合計の消費電力は350Wとなる。また、T相の制御ループL5の消費電力が50W、制御ループL6の消費電力が300Wとなり、合計の消費電力は350Wとなる。この場合、三相間の消費電力の最大差の比率は350W/350W=1.0に落ち着くことになり、特許文献1に開示された従来技術と比較して三相間の電力バランスが改善されることが分かる。
【0060】
なお、以上の数値例では、本実施の形態の動作や効果を理解しやすくするために架空の数値を設定して説明したが、実際にはヒータの数や何らかの設計の事情によりグルーピングの制約が生じることもあり、三相間の電力バランスを改善できる程度はケースバイケースで異なる。しかし、どのようなケースにおいても、R相、S相、T相のヒータが複数ずつあるのであれば、本実施の形態を適用しない場合に比べれば、本実施の形態を適用する場合の方が三相間の電力バランスを改善することができる。
【0061】
また、本実施の形態の電力総和抑制制御装置における処理の順序は
図3に示したとおりでなくてもよいことは言うまでもない。また、
図3の例では、割当総電力PWの情報を毎回受信するようになっているが、上位PC103は必要に応じて情報を送信し、これにより割当総電力PWの値が随時更新されるようになっていてもよい。
【0062】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
図5は本発明の第2の実施の形態に係る電力総和抑制制御装置の構成を示すブロック図であり、
図1と同一の構成には同一の符号を付してある。本実施の形態の電力総和抑制制御装置は、第1の実施の形態の電力総和抑制制御装置において、上限値操作部3の代わりに上限値操作部3aを設け、制御部5−iの代わりに、制御ループLi(i=1〜6)毎に設けられた制御部5a−iを設けたものである。制御部5a−iは、第1の実施の形態の制御部5−iにおいて、出力上限処理部53−iの代わりに、出力上下限処理部55−iを設けたものである。
【0063】
本実施の形態においても電力総和抑制制御装置の処理の流れは第1の実施の形態と同様であるので、
図3の符号を用いて本実施の形態の動作を説明する。
上限値操作部3aは、同時変更検出部2から各制御ループLi(i=1〜6)の設定値SPiの同時変更が行なわれたことを通知されると(
図3ステップS101)、グループ登録部1に登録されているグループBの制御ループLi(i=2,4,6)の操作量出力上限値OHi(i=2,4,6)を、それぞれ対応するグループBの制御ループLi(i=2,4,6)の操作量出力下限値OLi(i=2,4,6)に固定するように、出力上限処理部53−iに対して指示を出す(
図3ステップS102)。
【0064】
各制御部5a−iの出力上下限処理部55−iは、PID制御演算部52−iが算出した操作量MViに対して、出力上限処理部53−iと同様に式(9)のような上限処理を行うと同時に、以下の式のような操作量MViの下限処理を行う(
図3ステップS118)。
IF MVi<OLi THEN MVi=OLi ・・・(10)
すなわち、出力上下限処理部55−iは、操作量MViが予め設定された操作量出力下限値OLiより小さい場合、操作量MVi=OLiとする下限処理を行う。
【0065】
出力上下限処理部55−iは、操作量MViの上限処理のための操作量出力上限値OHiとして、出力上限値算出部48によって算出され設定された操作量出力上限値OHiを用いるが、ステップS102の処理により上限値操作部3aから値を固定するように指示された操作量出力上限値OHi(i=2,4,6)については、この固定指示が解除されるまで、出力上限値算出部48によって設定された値ではなく、上限値操作部3aから指示された値、すなわち操作量出力下限値OLi(i=2,4,6)を操作量出力上限値OHi(i=2,4,6)とする。その他の処理は第1の実施の形態で説明したとおりである。
【0066】
第1の実施の形態では、グループBの制御ループLi(i=2,4,6)の操作量出力上限値OHi(i=2,4,6)を、設定値SPi(i=1〜6)の同時変更直前の操作量MVi(i=2,4,6)の近傍の値に固定するようにしていた。この第1の実施の形態のような方法の場合、一時的な外乱や制御量PViの計測ノイズの都合で、操作量MViが過渡的に高くなっているケースもあるので、電力配分設計に近づけるための誤差要因も発生し得ることになる。
【0067】
このような誤差要因が発生する懸念がある場合は、本実施の形態のように、無条件に最小値(操作量出力下限値OLi)に固定するようにするのが好ましい。すなわち、先行して昇温するグループAの制御ループLi(i=1,3,5)に電力を集中させることになるので、グループ化による相間の電力配分設計に近づく確率を高くすることができる。操作量出力上限値OHiが最小値(操作量出力下限値OLi)に固定される制御ループは、一時的に制御量PVi(温度)が下降することも考えられるが、もともと昇温を保留されている制御ループであり、設定値SPiへの追従が一時的に損なわれることが想定されているのであるから、大きな問題にはならない。
【0068】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。
図6は本発明の第3の実施の形態に係る電力総和抑制制御装置の構成を示すブロック図であり、
図1と同一の構成には同一の符号を付してある。本実施の形態は、特許文献2に開示された電力総和抑制制御を利用する際に、三相間の電力バランスを改善するものである。制御ループについては、第1の実施の形態と同じ6個のPID制御ループを用いるものとする。
【0069】
本実施の形態の電力総和抑制制御装置は、グループ登録部1と、同時変更検出部2と、上限値操作部3と、電力抑制部4aと、制御部5−iとから構成される。電力抑制部4aと制御部5−iとは、電力総和抑制制御手段を構成している。
【0070】
電力抑制部4aは、割当総電力入力部40と、各制御ループLi(i=1〜6)の操作量MViを現在値から最大値100.0%にした場合の各制御ループLiの昇温時間TLiのうちの最大値TLを推定する昇温時間推定部61と、各制御ループLiの制御量PViを昇温時間TLの間に設定値SPiの変更に応じた量だけ変化させるのに必要な操作量である必要出力MUiを推定する必要出力推定部65と、各制御ループLiの必要出力MUiから各ヒータHiの使用電力の総和である使用電力総量TWを算出する使用電力合計算出部66と、使用電力総量TWが割当総電力PWを超えない必要出力MUiの組み合わせを探索し、最終的に得られた必要出力MUiを各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして設定する探索処理部67とから構成される。
【0071】
なお、本実施の形態では、操作量MViを現在値から最大値100.0%にした場合の昇温時間TLiを推定しているが、このような推定は小型の調節計に特に好ましいものである。原理的には、特定の出力値は最大値100.0%に限られるものではなく、適度に大きな値であれば十分に実用できる。
【0072】
昇温時間推定部61は、制御量PVi変更量算出部62と、制御量PVi変化レート算出部63と、昇温時間算出部64とから構成される。この昇温時間推定部61は、制御量変化時間推定手段を構成している。
探索処理部67は、昇温時間設定部68と、割当総電力判定部69とから構成される。必要出力推定部65と使用電力合計算出部66と探索処理部67とは、操作量出力上限値操作手段を構成している。
【0073】
以下、本実施の形態の電力総和抑制制御装置の動作を
図7を参照して説明する。
図7のステップS200,S201,S202,S203,S204,S205,S206は、それぞれ
図3のステップS100,S101,S102,S103,S104,S105,S106と同じであるので、説明は省略する。
【0074】
探索処理部67の昇温時間設定部68は、各制御ループLi(i=1〜6)の設定値SPiのうち少なくとも1つが変更されたとき(
図7ステップS207においてYES)、操作量MViを現在値から最大値100.0%にした場合の各制御ループLiの昇温時間TLiのうちの最大値TLを求める処理を、以下のように行なわせる。
【0075】
まず、昇温時間推定部61の制御量PVi変更量算出部62は、各制御ループLiの変更後の設定値SPiと設定値変更前の制御量PViとを取得して、各制御ループLiの制御量PViの変更量ΔPViを次式により制御ループLi毎に算出する(
図7ステップS208)。
ΔPVi=SPi−PVi ・・・(11)
【0076】
制御量PVi(温度)は、温度センサSiによって測定され、制御部5−iに入力される。なお、設定値SPiと制御量PViとに応じた制御はステップS208よりも後ろのステップで行われるので、制御部5−iに入力される制御量PViをステップS208の時点で取得すれば、この制御量PViは設定値変更前の制御量となる。
【0077】
続いて、昇温時間推定部61の制御量PVi変化レート算出部63は、各制御ループLiの制御部5−iから設定値変更前の操作量MViを取得し、設定値SPiの変更に伴う制御量PViの変化のレート(速度)THiを次式により制御ループLi毎に算出する(
図7ステップS209)。
THi=THoi{100.0/(100.0−MVi)} ・・・(12)
【0078】
設定値SPiと制御量PViとに応じた制御はステップS209よりも後ろのステップで行われるので、制御部5−iから出力されている操作量MViをステップS209の時点で取得すれば、この操作量MViは設定値変更前の操作量となる。式(12)において、THoiは制御ループLi毎に予め記憶されている値であり、操作量MVi=0.0%の状態から最大出力MVi=100.0%にしたとき(すなわち操作量上昇幅が100.0%のとき)の制御量PViの変化レート値である。つまり、式(12)は、変化レート値THoiを操作量上昇幅(100.0−MVi)で換算する数式である。本実施の形態では加熱装置の例で説明しているので、制御量PViの変化レートTHiは昇温レート[sec./℃]である。
【0079】
次に、昇温時間推定部61の昇温時間算出部64は、各制御ループLiの制御量PViをΔPViだけ変化させるのに必要な制御量変化時間である昇温時間TLiを、制御量PViの変化レートTHiと変更量ΔPViとから次式により制御ループLi毎に推定する(
図7ステップS210)。
TLi=THiΔPVi ・・・(13)
【0080】
そして、昇温時間算出部64は、各制御ループLiの昇温時間TLiのうちの最大値TLを選出する(
図7ステップS211)。
TL=max(TLi) ・・・(14)
式(14)において、max( )は最大値選出演算関数である。以上のステップS208〜S211の処理により、昇温時間TLを推定することができる。
【0081】
次に、探索処理部67の割当総電力判定部69は、制御量PViを昇温時間TLの間に変更量ΔPVi分だけ変化させる場合の全ヒータの使用電力TWを求める処理を、以下のように行なわせる。
【0082】
まず、必要出力推定部65は、各制御ループLiの設定値変更前の操作量MViを取得し、各制御ループLiの制御量PViを昇温時間TLの間に変更量ΔPVi分だけ変化させるのに必要な操作量である必要出力MUiを次式により制御ループLi毎に算出する(
図7ステップS212)。
MUi={100.0THoi/(TL/ΔPVi)}+MVi ・・・(15)
式(15)は、式(12)において、分母の100.0をMUiに置換し、THiをTL/ΔPViに置換して、MUiについて解くことにより得られる数式である。
【0083】
続いて、使用電力合計算出部66は、各制御ループLiの必要出力MUiから各ヒータHiの使用電力の総和である使用電力総量TWを次式により算出する(
図7ステップS213)。
【0085】
式(16)において、CTmiは制御ループLi毎に予め記憶されている値であり、操作量MViが最大値100.0%の場合のヒータHiの使用電力値である。
探索処理部67の割当総電力判定部69は、TW≦PW、すなわち使用電力総量TWが割当総電力PWを超えない場合は(
図7ステップS214においてYES)、各制御ループLiの必要出力MUiをそれぞれ各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして設定する(
図7ステップS215)。
【0086】
また、割当総電力判定部69は、TW>PW、すなわち使用電力総量TWが割当総電力PWを超える場合は、昇温時間設定部68に指示して、昇温時間TLを現在の値の例えば1.05倍に延長させて(
図7ステップS216)、ステップS212に戻る。こうして、使用電力総量TWが割当総電力PW以内になるまで、ステップS212〜S214,S216の処理が繰り返される。
【0087】
図7のステップS217,S218,S219,S220,S221は、それぞれ
図3のステップS115,S116,S117,S118,S119と同じであるので、説明は省略する。
【0088】
電力総和抑制制御装置は、以上のようなステップS200〜S221の処理を例えばオペレータの指示によって制御が終了するまで(
図7ステップS222においてYES)、一定時間毎に行なう。
こうして、本実施の形態では、特許文献2に開示された電力総和抑制制御を行ないつつ、制御量PViを設定値変更に追従させる場合に、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0089】
[第4の実施の形態]
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。
図8は本発明の第4の実施の形態に係る電力総和抑制制御装置の構成を示すブロック図であり、
図1、
図6と同一の構成には同一の符号を付してある。本実施の形態の電力総和抑制制御装置は、第3の実施の形態の電力総和抑制制御装置において、上限値操作部3の代わりに上限値操作部3aを設け、制御部5−iの代わりに、制御ループLi(i=1〜6)毎に設けられた制御部5a−iを設けたものである。
【0090】
本実施の形態においても電力総和抑制制御装置の処理の流れは第3の実施の形態と同様である。つまり、本実施の形態は、第3の実施の形態の電力総和抑制制御装置に第2の実施の形態を適用したものなので、上限値操作部3aと各制御部5a−iの出力上下限処理部55−iとが第2の実施の形態で説明した処理を行う。こうして、本実施の形態では、第2の実施の形態で説明したとおり、グループ化による相間の電力配分設計に近づく確率を高くすることができる。
【0091】
なお、第1〜第4の実施の形態では、まずグループAの昇温を開始し、続いてグループBの昇温を開始するという順序になっているが、これに限るものではなく、グループAとグループBの順序は任意でよい。
また、第1〜第4の実施の形態では、R相、S相、T相の各相の制御ループの数を同一としているが、これに限るものではなく、各相で制御ループの数が異なっていてもよい。R相、S相、T相の各相の制御ループは各々が1ループ以上であればよい。
【0092】
また、第1〜第4の実施の形態では、各制御ループLiを、先行して操作量出力上限値OHiが上昇するグループAと遅れて操作量出力上限値OHiが上昇するグループBの2つにグルーピングした場合を例として説明したが、これに限るものではなく、各制御ループLiを3つ以上のグループにグルーピングしてもよい。
【0093】
この場合、時間TXはグループによって異なる。例えば各制御ループLiを3つのグループA,B,Cにグルーピングした場合、グループBに属する制御ループの操作量出力上限値OHiを固定する状態を時間TXBだけ維持し、グループCに属する制御ループの操作量出力上限値OHiを固定する状態を時間TXCだけ維持することになる。グループBに対応する時間TXBは、1番目のグループA以外の残りのグループB,Cの操作量出力上限値OHiの固定を開始した時点(設定値SPiの同時変更を検出した時点)から、当該グループBの1つ前で先行して上昇するグループAの操作量出力上限値OHiの上昇が最大値100%で安定するまでの時間よりも長い時間に予め設定しておけばよい。グループCに対応する時間TXCは、1番目のグループA以外の残りのグループB,Cの操作量出力上限値OHiの固定を開始した時点から、当該グループCの1つ前で先行して上昇するグループBの操作量出力上限値OHiの上昇が最大値100%で安定するまでの時間よりも長い時間に予め設定しておけばよい。
【0094】
第1〜第4の実施の形態で説明した電力総和抑制制御装置は、CPU(Central Processing Unit)、記憶装置及びインタフェースを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。CPUは、記憶装置に格納されたプログラムに従って第1〜第4の実施の形態で説明した処理を実行する。