(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基板と、前記基板に備えられた発光素子と、前記発光素子の発光面から放射された光を被照射面に結像させるロッドレンズアレイと、前記基板と前記ロッドレンズアレイとを支持する支持部材と、を有する露光装置を製造する露光装置の製造方法であって、
前記被照射面と前記ロッドレンズアレイの光軸方向における中心位置との間の第1の距離の基準値を決定するステップと、
前記発光面と前記中心位置との間の第2の距離であって、前記基準値に対する前記第1の距離の変動量に応じて発生する前記被照射面における結像特性の変動量が最小となる前記第2の距離の設定値を求めるステップと、
前記第2の距離を前記設定値に設定して前記基板を前記支持部材に固定するステップと
を有し、
前記第2の距離の設定値を求めるステップにおいて、
前記発光面の任意の第1の位置において第1の解像度を測定し、前記第1の解像度が最大となる前記被照射面の第2の位置を求め、
前記発光面の前記第1の位置とは異なる任意の第3の位置において第2の解像度を測定し、前記第2の解像度が最大となる前記被照射面の第4の位置を求め、
前記ロッドレンズアレイの光軸方向における中心位置から前記被照射面に向かう方向の前記被照射面の位置を示す座標軸を横軸とし、前記ロッドレンズアレイの光軸方向における中心位置から前記発光面に向かう方向の前記発光面の位置を示す座標軸を縦軸とする2次元直交座標系において、前記第1から第4の位置に対応する点を用いて近似関数を求め、
前記近似関数により、前記決定された基準値に対応する前記設定値を求める
ことを特徴とする露光装置の製造方法。
前記第2の位置と第4の位置との差分の絶対値が所定の条件値よりも大きい場合、さらに、前記第4の位置において第5の解像度を測定し、前記第5の解像度が最大となる前記被照射面の第5の位置を求め、
前記第3の位置と前記第5の位置との差分の絶対値が所定の条件値よりも小さい場合、前記第4の位置を前記第2の距離の設定値とする
ことを特徴とする請求項8に記載の露光装置の製造方法。
基板と、前記基板に備えられた発光素子と、前記発光素子の発光面から放射された光を被照射面に結像させるロッドレンズアレイと、前記基板と前記ロッドレンズアレイとを支持する支持部材と、を有する露光装置を製造する露光装置の製造方法であって、
前記被照射面と前記ロッドレンズアレイの光軸方向における中心位置との間の第1の距離の設定値と、前記発光面と前記中心位置との間の第2の距離の設定値と求めるステップと、
前記第1の距離を前記第1の距離の設定値に設定するとともに、前記第2の距離を前記第2の距離の設定値に設定して前記基板と前記ロッドレンズアレイとを前記支持部材に固定するステップと
を有し、
前記第1の距離の設定値と前記第2の距離の設定値とを求める前記ステップにおいて、
前記被照射面の任意の第1の位置と前記発光面の任意の第2の位置との各々の位置を、互いの位置から前記ロッドレンズアレイの光軸方向における中心位置までの距離の和が一定に維持されるように各々の位置を変化させて第1の解像度を測定し、前記第1の解像度が最大となる前記被照射面の第3の位置及び前記発光面の第4の位置を求め、
前記被照射面の前記第3の位置からの位置変化量と前記発光面の前記第4の位置からの位置変化量とが互いに等しくなるように、前記被照射面の位置と前記発光面の位置とをさらに変化させて第2の解像度を測定し、前記第2の解像度が最大となる前記発光面の位置を前記第2の距離の設定値とし、
前記第2の距離の設定値において第3の解像度を測定し、前記第3の解像度が最大となる前記被照射面の位置を前記第1の距離の設定値とする
ことを特徴とする露光装置の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
《本発明の原理の説明》
図1は、本発明の各実施の形態に係るLEDヘッドの基本構成を示す断面図である。
図1において、W軸は、ロッドレンズアレイ中心4aと感光体ドラム表面5aとの間の距離Wを示し、V軸は、ロッドレンズアレイ中心4aとLEDアレイの発光面3aとの間の距離Vを示し、X軸は、W軸及びV軸のそれぞれに直交する軸であって、ロッドレンズアレイ4の長手方向の位置を示し、Y軸は、W軸、V軸、Z軸のそれぞれに直交する軸であって、ロッドレンズアレイ4の短手方向の位置を示す。なお、本明細書においてW軸、V軸、X軸、及びY軸の定義は共通である。
【0010】
LEDヘッド(LEDプリントヘッド)1は、
図1に示されるように、基板2と、基板2に備えられた発光素子としてのLEDを複数配列したLEDアレイ(LEDアレイチップ)3と、LEDアレイ3から放射される光を収束させて被照射面に収束した光を照射するロッドレンズアレイ4とを備える。これらを後述する支持部材により互いに一定の距離に支持した構造を基本構成とし、その他に、遮光部材、防塵部材、又は位置調整機構(例えば、偏心カム)等を追加した構成を用いることもできる。
【0011】
LEDヘッド1は、例えば画像形成装置としてのプリンタに搭載される場合、被照射面としての感光体ドラム5に対向して設置される。基板2に備えられたLEDアレイ3から出射された光がロッドレンズアレイ4により収束され、感光体ドラム5の表面に正立等倍像が結像される構成となっている。ロッドレンズアレイとは、複数のロッドレンズが配列された構造のレンズを示す。例えば、ロッドレンズアレイとして、中心から周辺にかけて放射状の屈折率分布を有するロットレンズを配列した構造のセルフォックレンズアレイなどが用いられている。なお、「セルフォック」は、日本板硝子株式会社の登録商標である。
【0012】
正立等倍像を結像するロッドレンズアレイ4は、被照射面において最も解像度の高い像を形成する固有値である共役長(TC)を有している。ロッドレンズアレイ4を介してLEDアレイの発光面3aと感光体ドラム表面5aとの間の距離(Wtc+Vtc)が共役長と等しくなる位置であって、且つ、ロッドレンズアレイ中心4aと感光体ドラム表面5aとの間の距離(Wtc)、及びロッドレンズアレイ中心4aとLEDアレイの発光面3aとの間の距離(Vtc)が互いに等しくなるように位置決めされると、感光体ドラム表面5aにおける結像の解像度が最も高くなる。
【0013】
本明細書において、ロッドレンズアレイ4を介して共役長と等しい位置に配置された、発光素子及び被照射面の各々の位置を「共役位置」という。すなわち、
図1に示される例では、発光素子としてのLEDアレイの共役位置は、ロッドレンズアレイ中心4aとLEDアレイの発光面3aとの間の距離がVtcとなる位置であり、被照射面としての感光体ドラム表面5aの共役位置は、ロッドレンズアレイ中心4aと感光体ドラム表面5aとの間の位置がWtcとなる位置である。また、
図1に示される例では、ロッドレンズアレイ中心4aとLEDアレイの発光面3aとの間の距離をV1とし、ロッドレンズアレイ中心4aと感光体ドラム表面5aとの間の距離をW1とすると、V1とW1とが等しくなるように、LEDアレイ3を備えたLED基板2と感光体ドラム5とが配置されている。このとき、ロッドレンズアレイ中心4aから感光体ドラム表面5aまでの距離はW1であり、ロッドレンズアレイ中心4aからLEDアレイの発光面3aまでの距離はV1である。さらに、共役長からのずれ量をΔTCとすると、
図1に示される例では、共役長からΔTCだけずれた位置に、LEDアレイの発光面3aと感光体ドラム表面5aが位置するように、ロッドレンズアレイ4を介して、LEDアレイ3を備えたLED基板2と感光体ドラム5とが配置されており、さらに、距離Wtcと距離Vtcとは等しい。
したがって、
W1−Wtc=ΔTC/2 …式1
V1−Vtc=ΔTC/2 …式2
と表すことができる。すなわち、
図1に示される例では、被照射面である感光体ドラム表面5aの位置は、共役位置WtcからΔTC/2だけずれた位置に配置され、LEDアレイの発光面3aは、共役位置VtcからΔTC/2だけずれた位置に配置されている。
【0014】
被照射面に結像した像の解像度を示す指標として、変調伝達関数MTF(Modulation Transfer Function)(以下、「MTF」という)が知られている。ここでのMTFとは、LEDヘッドの解像度を示し、露光像のコントラストを示す。MTFが高い時、露光装置としての解像度が高いことを示す。一般的な光量分布を例にとると、MTFは、光量の最大値をImax、光量の最小値をIminとしたとき、
MTF
={(Imax−Imin)/(Imax+Imin)}×100〔%〕
と表すことができる。
【0015】
図2(a)は、ロッドレンズアレイ中心と感光体ドラム表面との間の距離W、及びロッドレンズアレイ中心とLEDアレイの発光面との距離Vの関係に基づいてMTFの分布を表した図である。
【0016】
図1に示される光学系において、被照射面側の共役位置Wtcからの被照射面の位置のずれ量ΔWと発光面側の共役位置Vtcからの発光面の位置のずれ量ΔVとをともに変化させて被照射面における結像の解像度を計測すると、
図2(a)に示されるような、長軸の半径をa、短軸の半径をbとする楕円比b/aが略一定である互いに相似な複数の楕円に近似できる等高線(以下、「MTF分布」という)により解像度を表せることが一般的に知られている。
図2(a)に示されるように、
図1に示される光学系は、横軸を共役位置Wtcからの被照射面の位置のずれ量ΔWとし、縦軸を共役位置Vtcからの発光素子の発光面の位置のずれ量ΔVとした2次元座標において、傾きθ、楕円比が略一定である互いに相似な複数の楕円に近似できるMTF分布を有する。MTF分布は、等高線の中央に近づくほど(すなわち、W及びVが共役位置に近づくほど)、MTFが高くなる。例えば、ΔW=ΔV=0のとき、すなわち、
図1に示される光学系において、W1=V1であって、且つ、W1とV1との和が共役長に等しいとき、被照射面におけるMTFが最大となる。
【0017】
図2(a)のグラフに示される原点P0は、ΔW=ΔV=0であり、
図1に示されるW1とV1との和が共役長に等しい場合を示し、このとき、被照射面におけるMTFが最大となる。点P1は、ΔW=ΔW1,ΔV=ΔV1の位置であって、直線ΔV=ΔV1の直線と、MTF分布におけるある等高線E1との接点である。すなわち、点P1は、等高線E1において傾きがゼロとなる点であって、f(ΔW,ΔV)を、ΔW及びΔVを独立変数とするMTFの値についての関数(MTF=f(ΔW,ΔV))であるとすると、点P1は、下記の偏微分方程式3を満たす点である。
【数1】
【0018】
点P2は、ΔW=ΔW2,ΔV=ΔV1の位置である。θ=45度のとき、点P2は、直線t1上に位置し、このとき、ΔW2=ΔV1である。点P1と点Pとを比較すると、点P2は、MTF分布における等高線E1よりも外側に位置しているので、等高線E1に位置する点P1の方が点P2よりもMTFが高くなる。
【0019】
図2(b)は、ロッドレンズアレイ中心とLEDアレイの発光面との間の距離Vを所定の距離に一定に維持した状態における、被照射面側の共役位置Wtcからの被照射面の位置のずれ量ΔWとMTFとの関係を示す図である。
図2(b)における点P1’及びP2’は、
図2(a)における点P1及びP2にそれぞれ対応し、
図2(b)の例は、ロッドレンズアレイ中心とLEDアレイの発光面との間の距離が共役位置Vtcから所定の距離(ΔV1)だけずれた位置に一定に維持した状態おける、ロッドレンズアレイ中心と感光体ドラム表面との間の距離の変動とMTFの変動との関係を示している。
図2(b)において、横軸(ΔW)は、原点から正の方向に向かうにつれて共役位置Wtcからの被照射面の位置のずれ量を示し、縦軸(MTF軸)は、原点から正の方向に向かうにつれてMTFが高くなることを示している。
図2(b)に示されるように、任意のV1(すなわち、Vtc+ΔV)における、ロッドレンズアレイ中心と感光体ドラム表面との間の距離W1(すなわち、Wtc+ΔW)の変動に応じて発生するMTFの変動は、
図2(b)に示される曲線(以下、「MTF曲線」という)によって近似されて表される。なお、本明細書において、「被照射面におけるMTFの変動」のことを、「被照射面における結像特性の変動」ともいう。
【0020】
図2(a)に示される点P1のΔWをΔW1とすると、
図2(b)に示されるように、ΔW1は、MTF曲線の極大値をとる。点P1は、等高線E1における極値であり、等高線E1の傾きがゼロとなる位置である。したがって、点P1の近傍では、等高線E1の傾きが緩やかであるので、ΔWがΔW1からわずかに変動した場合であっても、MTFの変動は小さい。よって、MTF曲線の極値に対応するΔWの位置が、MTFの変動を最小にすることができる位置であることがわかる。すなわち、
図1に示されるLEDヘッド1において、感光体ドラム表面5aの位置が、共役位置であるWtcからずれた位置になるように感光体ドラム5及びロッドレンズアレイ4が設置された場合であっても、W1=Wtc+ΔW1となるように、感光体ドラム5及びロッドレンズアレイ4が設置されていれば、V1=Vtc+ΔV1となるように、LEDアレイ3及びロッドレンズアレイ4を設置することにより、MTFの変動を低減でき、安定した解像度を得ることができる。
【0021】
比較のために
図2(a)に示される点P2について検討する。点P2のΔWをΔW2とすると、
図2(b)に示されるように、ΔW2は、MTFの値は、ΔW=ΔW1のときよりも小さくなる。さらに、点2の位置の場合、MTF曲線の傾きが大きいため、ΔW=ΔW2近傍であるとき、ΔWがΔW2から変動すると、被照射面における解像度の変動が急峻となってしまう。したがって、
図2(a)及び(b)に示される例では、点P2の位置よりも点P1の位置の方が、被照射面における解像度が高く、且つ、被照射面における解像度の変動が低減されるといえる。
【0022】
本発明の原理によれば、被照射面、ロッドレンズアレイ、及び発光面の各々の設置位置がロッドレンズアレイ固有の共役長に基づいた位置からずれた位置に設置された場合であっても、上記式3を満たす位置に被照射面、ロッドレンズアレイ、及び発光面を設置することにより、ロッドレンズアレイ中心と被照射面との間の距離W1の変動が生じた場合であっても、被照射面において安定した解像度を得ることができる。また、
図2(a)に示される点P0の位置、すなわち、共役長に等しい位置に、被照射面、ロッドレンズアレイ、及び発光面が設置された場合に、最も解像度が高く、且つ、被照射面において安定した解像度を得ることができるが、共役長は、ロッドレンズアレイによって個体差があるため、必ずしも、共役長と等しい位置に、被照射面、ロッドレンズアレイ、及び発光面の各々を設置できるとは限らない。そのような場合であっても、上記式3を満たす位置に被照射面、ロッドレンズアレイ、及び発光面を設置することにより、ロッドレンズアレイ中心と被照射面との間の距離W1の変動が生じた場合であっても、被照射面において安定した解像度が得られるLEDヘッドを構成することができる。
【0023】
なお、上記の説明は、ΔW>0、且つ、ΔV>0の場合、すなわち、W1−Wtc>0、且つ、V1−Vtc>0の場合を例として説明したが、ΔW<0、且つ、ΔV<0の場合、すなわち、W1−Wtc<0、且つ、V1−Vtc<0の場合においても同様である。例えば、
図2(a)に示される点P3は、ΔW=ΔW3,ΔV=ΔV3の位置であって、直線ΔV=ΔV3の直線と、MTF分布におけるある等高線E2との接点である。すなわち、点P3は、等高線E2において傾きがゼロとなる点であって、上記の偏微分方程式3を満たす点である。したがって、ΔW<0、且つ、ΔV<0の場合、
図2(a)に示される例(ΔV=ΔV3)では、点P3(ΔW=ΔW3)が、MTFの変動を最小にすることができる位置である。
【0024】
また、本発明の各実施の形態において実施されるMTFの測定には、例えば、CCDカメラやフォトセンサなどを有する任意のMTF測定手段を用いることができる。例えば、MTFが最大となるロッドレンズアレイ中心と感光体ドラムの表面との間の距離(W位置)の探索は、所定のV位置(ロッドレンズアレイ中心とLEDアレイの発光面との間の距離)にLEDアレイの発光面を固定した状態で、所定のパターンでLEDアレイを発光させて、MTF測定手段によりMTFを測定し、W位置を動かして再度MTF測定を繰り返し、最もMTFが大きくなるW位置を探索すればよい。また、MTFが最大となるV位置の探索は、所定のW位置に感光体ドラムの表面位置を固定した状態で、所定のパターンでLEDアレイを発光させて、MTF測定手段によりMTFを測定し、V位置を動かして再度MTF測定を繰り返し、最もMTFが大きくなるW位置を探索すればよい。
【0025】
なお、被照射面に結像した像の解像度を示す指標として、MTF測定以外の例としては、スポットサイズを指標とする方法を採用することもできる。この場合、スポットサイズが小さくなるほどMTFは高くなり、スポットサイズが大きくなるほどMTFは小さくなることに対応させることができる。
【0026】
以上で説明した本発明の原理を前提として、以下の各実施の形態について説明する。
【0027】
《実施の形態1》
実施の形態1に係るLEDヘッド100の製造方法は、
図3から
図5に示されるロッドレンズアレイ104を含むLEDヘッド100の製造方法である。まず、LEDヘッド100の基本的な構成について説明する。
【0028】
図3は、本発明の実施の形態1に係るLEDヘッド100の基本構成を示す断面図である。
図4は、被照射面としての感光体ドラムの表面108aと対向するように配置されたLEDヘッド100の縦断面図である。
図5は、
図4に示される感光体ドラムの表面108aと対向するように配置されたLEDヘッド100をX方向に見た断面を示す断面図である。
【0029】
露光装置としてのLEDヘッド100は、基板としてのLED基板101と、LED基板101に備えられた発光素子としてのLEDを複数配列したLEDアレイ103と、LEDアレイ103の発光面103aから放射された光を被照射面に結像させるロッドレンズアレイ104と、LED基板101とロッドレンズアレイ104とを支持する支持部材としてのフレーム105とを有する。
【0030】
LED基板101は、ロッドレンズアレイ104の光軸とLEDアレイ103の光軸とが一致し、且つ、ロッドレンズアレイ中心104aとLEDアレイの発光面103aとの間の距離Vの設定値V1が、TC/2+ΔV1となるように配置される。ΔV1は、ゼロである場合、正のずれ量である場合、又は負のずれ量である場合もある。
【0031】
LED基板101は、長尺状のガラスエポキシ製のプリント配線基板102と、LEDアレイ103と、プリント配線基板102の裏面に備えられたケーブルコネクタ102aと、LED駆動素子としてのドライバICとを有する。LEDアレイ103及びドライバICは、プリント配線基板102上に設置され、ドライバICとLED基板101、ドライバICとLEDアレイ103はそれぞれ電気的に接続されている。また、ケーブルコネクタ102aは、LEDヘッド制御回路とプリント配線基板102とを接続し、ドライバICに電源電圧と発光パターンを制御する信号を入力する。
【0032】
ケーブルコネクタ102e及びLED基板101を介し、電源電圧と発光パターンの信号をドライバICに入力すると、発光パターンに応じてLEDアレイ103が発光し、光がロッドレンズアレイ104を通過することにより集光し、感光体ドラム表面108aを照射する。
【0033】
フレーム105は、ロッドレンズアレイ104とLED基板101とを支持する。フレーム105は、コの字状の鋼板からなり、両端上面に感光体ドラムの表面108aとLEDヘッド100の距離を決定するLEDヘッド搭載基準面105a(以下、「搭載面」という)が設定され、搭載面105aと感光体ドラム表面108aとの間の距離W0を決定する。このW0の位置決め方法の一例をあげると、搭載面105aの両端にスペーサ105を設置し、スペーサ105の先端部を感光体ドラム表面108aに接触させ、フレーム105下部からコイルバネ106を押し当てるように構成することができる。なお、W0を決定することにより、W1も決定する。
【0034】
フレーム105にはロッドレンズアレイ104を搭載するための開口部が長手方向に沿って形成されている。ロッドレンズアレイ104は、フレーム105の開口部に挿入され、ロッドレンズアレイ中心104aと被照射面としての感光体ドラムの表面108aとの間の距離W1が、組み付け時に生じるTC/2からのずれΔW1を含むTC/2+ΔW1となるように、ロッドレンズアレイ104の長手方向側面とフレーム105の開口部とが接着剤109等により固定されている。このとき、ロッドレンズアレイ中心104aとフレームの搭載面105aとの間の距離はD1となる。ただし、ΔW1はゼロである場合もある。
【0035】
なお、LED基板101をフレーム105に接着固定する前の段階では、LED基板101はフレーム105と接しておらず、例えば、LED基板101を裏面から吸着して保持し、アクチュエータなどにより位置決めを行い、V方向の位置(設定値V1)を決定することができる。
【0036】
このようなLEDヘッド100において、実施の形態1に係るLEDヘッド100の製造方法は、被照射面としての感光体ドラムの表面108aとロッドレンズアレイ104の光軸方向における中心位置104aとの間の第1の距離Wの基準値W1を決定するステップと、発光面103aと中心位置104aとの間の第2の距離Vであって、基準値W1に対する第1の距離Wの変動量ΔW1に応じて発生する被照射面における結像特性の変動量が最小となる第2の距離Vの設定値V1を求めるステップと、第2の距離Vを設定値V1に設定して基板101を支持部材105に固定するステップとを有する。
【0037】
被照射面としての感光体ドラムの表面108aとロッドレンズアレイ104の光軸方向における中心位置104aとの間の第1の距離Wの基準値W1を決定するステップでは、感光体ドラムの表面108aとロッドレンズアレイ中心104aとの間の距離の基準値W1を決定する。この基準値W1の決定方法について具体的に説明すると、ロッドレンズアレイ104及びフレーム105を治具等に設置し、接着剤などを用いてロッドレンズアレイ104をフレーム105に固定することにより、ロッドレンズアレイ中心104aとフレームの搭載面105aとの間の距離D1が決定される。ここで、搭載面105aと感光体ドラム表面108aとの間の距離W0が予め決定されているので、すでに決定されたD1及びW0から基準値W1が決定される。プリンタ等の画像形成装置にLEDヘッド100を取り付ける際、ロッドレンズアレイ中心104aと、被照射面としての感光体ドラム表面108aとの間の距離W1が、TC/2+ΔW1を維持するように一定に保つ機構(例えば、
図4に示されるコイルバネ106及びスペーサ107)を露光装置、あるいは画像形成装置本体に備えることが望ましい。露光装置としてLEDヘッド100を使用する際、例えば、画像形成動作時に、W1が変動する場合もある。
【0038】
W1として最も望ましい値は、上記《本発明の原理の説明》において説明したように、W1=Wtc(共役位置)である。しかしながら、装置の構造上、W1を共役位置Wtcと一致させる設計は困難である。これは、ロッドレンズアレイの共役長及び光軸方向の幅には個体差があり、同じ設計値でロッドレンズアレイと支持部材との組み付けを行うとWtcからのずれが生じるためである。したがって、LEDヘッド100の設計時において、共役位置からずれることを予め想定して任意の距離W1を決定する。このとき、感光体ドラム表面108aと発光面103aとの間の距離が、共役長TCからΔTCだけずれたTC+ΔTCとなるように、ロッドレンズアレイ104が配置されるものと仮定する。
【0039】
発光面103aと中心位置104aとの間の第2の距離Vであって、基準値W1に対する第1の距離Wの変動量ΔW1に応じて発生する被照射面における結像特性の変動量が最小となる第2の距離Vの設定値V1を求めるステップでは、ロッドレンズアレイ中心104aと発光面103aとの間の距離Vの設定値V1が、TC/2+ΔV1となるように設定する。ここで、ΔW1及びΔV1の関係が、以下の式4〜6を満たすように、設定値V1を設定する。なお、θ,b/aは、上記《本発明の原理の説明》において説明したように、ロッドレンズアレイによって決まる定数である。
ΔV1/ΔW1=s …式4
s={cos(ωV)sinθ−(b/a)×sin(ωV)cosθ}
/{cos(ωV)cosθ−(b/a)×sin(ωV)sinθ}…式5
ωV=arctan{(b/a)×(1/tanθ)} …式6
【0040】
次に、上記式4〜6の導出について説明する。長軸の半径がaであり、短軸の半径がbであり、傾きがθである楕円の式は、偏角ωを用いて以下の式7,8により表すことができる。
ΔV
=f(ω)
=a×cosωsinθ−a×(b/a)×sinωcosθ …式7
ΔW
=g(ω)
=a×cosωcosθ−a×(b/a)×sinωsinθ …式8
ここで、b/aは楕円比であり、ロッドレンズアレイによって決まる既知の定数である。上記《本発明の原理の説明》において説明したように、上記式7,8を満たすある楕円上で、W1の変動(すなわち、ΔWの変動でもある)に対しMTFの変動(変化量)が最小となるのは、楕円に接する傾きが0の直線との接点、すなわち以下の式9を満たす点である。
d(ΔV)/d(ΔW)=0 …式9
【0041】
上記式9の条件を上記式7,8に適用すると以下の式10〜12、すなわち、上記式4〜6が得られる。
ΔV=s×ΔW …式10
s=f(ωV)/g(ωV) …式11
ωV=arctan{(b/a)×(1/tanθ)} …式12
【0042】
ΔW方向のMTFの極値は、ΔV以外の定数によって決まり、(ΔV,ΔW)の関係は直線で近似できることがわかる。つまり、条件を満たすΔV/ΔWは、常にロッドレンズアレイにより決まる上記の定数sである。
【0043】
図6(a)は、
図3〜5に示されるロッドレンズアレイ104を含む光学系における被照射面側の共役位置Wtcからの被照射面の位置のずれ量ΔWと発光面側の共役位置Vtcからの発光面の位置のずれ量ΔVとの関係に基づいたMTF分布を表した図である。
図6(b)は、
図3〜5に示されるLEDヘッド100において構成される光学系における被照射面側の共役位置Wtcからの被照射面の位置のずれ量ΔWとMTFとの関係であるMTF曲線を示す図である。
【0044】
図6(a)において、直線T11は、上記の式10〜12を満たす直線である。すなわち、直線T11は、任意のVにおいてMTFが最大となる点Wの位置を表した近似直線であり、この近似直線T11上では、Wの変動に応じて生じるMTFの変動が最小となる位置であると推定される。なお、一次関数からなるこの近似直線(S10〜S12を満たす直線)は、一次関数で表される近似関数でもある。一点鎖線で示される直線T12は、ΔW=ΔVとなる組み合わせを示す直線である。すなわち、ΔW1=ΔV2である。
【0045】
図6(b)において、点P11’及び点P12’は、
図6(a)に示される点P11及び点P12にそれぞれ対応する。点11は、上記の式10〜12を満たす直線上に位置するので、ΔW=ΔW1のとき極値をとる。したがって、基準値W1を、共役位置WtcからΔW1だけずれた位置になるように決定した場合、設定値V1は、共役位置VtcからΔV1だけずれた位置に設定する。これにより、LEDヘッド100において、基準値W1が変動する場合であっても、結像特性の変動量を最小にすることができるので、安定した解像度の結像を感光体ドラム108上に形成可能なLEDヘッド100を製造することができる。
【0046】
点P12は、比較例として、ΔW=ΔW1,ΔV=ΔV2であって、ΔW1=ΔV2とした場合を示す。比較例のように、点P12の位置に対応するΔW1及びΔV2に基づいて、基準値W1及び設定値V1を求め、LEDヘッド100を製造した場合、
図6(b)に示されるように、W1の変動量に応じて生じるMTFの変動量は急峻になり、基準値W1の変動に応じて生じる結像特性の変動量は比較的大きい。
【0047】
第2の距離Vを設定値V1に設定して基板101を支持部材105に固定するステップでは、設定されたV1の位置にLEDアレイの発光面103aが位置するように、LED基板101をフレーム105の内側において接着剤109等により固定する。以上の方法により、実施の形態1に係るLEDヘッド100を製造することができる。
以上の方法により製造されたLEDヘッド100は、基板101と、基板101に備えられた発光素子103と、発光素子の発光面103aから放射された光を被照射面108aに結像させるロッドレンズアレイ104と、基板101とロッドレンズアレイ104とを支持する支持部材105と、を有し、被照射面108aとロッドレンズアレイ104の光軸方向における中心位置104aとの間の距離を第1の距離とし、第1の距離として設計された値を基準値W1とし、発光面103aと中心位置104aとの間の距離を第2の距離とし、基準値W1に対する第1の距離の変動量に応じて発生する被照射面108aにおける結像特性の変動量が最小となる第2の距離を設定値V1としたときに、第2の距離を設定値V1に設定した状態で基板101が支持部材105に固定されている。ただし、第1の距離の基準値W1と第2の距離の設定値V1との和は、ロッドレンズアレイ104が持つ共役長TCと等しい場合もある。
【0048】
実施の形態1によれば、LEDヘッド100において、基準値W1が変動する場合であっても、基準値W1に対するロッドレンズアレイ中心104aと感光体ドラムの表面108aとの間の距離の変動量に応じて発生する被照射面における結像特性の変動量(MTFの変動量)を最小にすることができるので、安定した解像度の結像を感光体ドラム108上に形成可能なLEDヘッド100を提供することができる。
【0049】
《実施の形態2》
実施の形態2では、共役長からのずれ量(ΔW+ΔV)を一定にした上で、基準値W1及び設定値V1を求めることによりLEDヘッド200を製造する方法について説明する。
【0050】
図7は、実施の形態2に係るLEDヘッド200を感光体ドラムの表面208aと対向させて配置した状態における縦断面図である。
図8は、
図7に示される感光体ドラムの表面208aと対向するように配置されたLEDヘッド200をX方向に見た断面を示す断面図である。
【0051】
露光装置としてのLEDヘッド200は、基板としてのLED基板201と、LED基板201に備えられた発光素子としてのLEDを複数配列したLEDアレイ203と、LEDアレイ203の発光面203aから放射された光を被照射面に結像させるロッドレンズアレイ204と、LED基板201とロッドレンズアレイ204とを支持する支持部材としてのフレーム205とを有する。
【0052】
フレーム205は長尺状のL字型鋼板で、LEDプリンタへの搭載基準面(以下、「搭載面」という)205aが設定されており、例えば搭載面205a両端にスペーサ207を設置し、スペーサ207先端を感光体ドラム208に接触させ、フレーム205下部からコイルバネ206押し当てる等の方法で、感光体ドラム表面208aとの距離をW0に決定している。フレーム205の搭載面205a上にはLED基板201が接着固定されており、LEDアレイ表面203aと感光体ドラム表面208aとの間の距離は、部材精度によるずれΔTCを含むTC+ΔTCとなっている。ケーブルコネクタ202aはフレーム205の下面に配置され、フレーム下部の開口部を通して、LED基板201と電気的に接続されている。
【0053】
フレーム205の内側側面には、ロットレンズアレイ202が、ロッドレンズアレイ204の光軸とLEDアレイの光軸とが一致するように配置される。このとき、ロッドレンズアレイ中心204aとLEDアレイの表面203aとの間の距離V1は、下記式21を満たし、ロッドレンズアレイの中心204aと感光体ドラムの表面208aとの間の距離W1は、下記式23を満たすように接着剤210等で固定することができる。
V1=TC/2+ΔV …式21
ΔV=ΔV1 …式22
W1=TC/2+ΔW …式23
ΔW=ΔW1=ΔTC−ΔV1 …式24
【0054】
LED基板201は、長尺状のガラスエポキシ製のプリント配線基板202と、LEDアレイ203と、プリント配線基板202の裏面に備えられたケーブルコネクタ202aと、LED駆動素子としてのドライバICとを有する。LEDアレイ203及びドライバICは、プリント配線基板202上に設置され、ドライバICとLED基板201、ドライバICとLEDアレイ203はそれぞれ電気的に接続されている。また、ケーブルコネクタ202aは、LEDヘッド制御回路とプリント配線基板202とを接続し、ドライバICに電源電圧と発光パターンを制御する信号を入力する。
【0055】
LEDヘッド200は、電源電圧と発光パターンの信号がケーブルコネクタ201e及びLED基板201を介してドライバICに入力されると、発光パターンに応じてLEDアレイ203が発光し、LEDアレイ203からの光がロッドレンズアレイ204によって収束し、被照射面としての感光体ドラム208の表面208aを照射する。実施の形態2に係るLEDヘッド200は、ロッドレンズアレイ204を接着する前の段階では、ロッドレンズアレイ204がフレーム205に固定されていない。したがって、例えば位置調整用のアクチュエータなどにより位置調整を行い、ΔW1+ΔV1=ΔTCを満たす範囲でΔW1,ΔV1を自由に決定することができる。W1及びV1の位置調整後、位置調整用のアクチュエータは、LEDヘッド200から退避させればよい。
【0056】
このようなLEDヘッド200において、実施の形態2に係るLEDヘッド200の製造方法は、被照射面208aとロッドレンズアレイ204の光軸方向における中心位置との間の第1の距離(W)の設定値W1と、発光面203aと中心位置204aとの間の第2の距離(V)の設定値V1と求めるステップと、第1の距離を第1の距離の設定値W1に設定するとともに、第2の距離を第2の距離の設定値V1に設定して基板201とロッドレンズアレイ204とを支持部材205に固定するステップとを有し、第1の距離の設定値W1と第2の距離の設定値V1とを求めるステップにおいて、第1の距離の設定値W1に対する第1の距離の変動量に応じて発生する被照射面208aにおける結像特性の変動量が最小となる第1の距離の設定値W1と第2の距離の設定値V1とを求めることにより行う。
【0057】
被照射面とロッドレンズアレイの光軸方向における中心位置との間の第1の距離の設定値W1と、発光面と中心位置との間の第2の距離の設定値V1と求めるステップでは、ΔW1+ΔV1=ΔTCを満たす範囲でMTF(解像度)の測定を行い、最適なW1及びV1の位置を求める。このW1及びV1を求める方法を下記において説明する。
【0058】
図9(a)は、
図7及び
図8に示されるロッドレンズアレイ204を含む光学系における被照射面側の共役位置Wtcからの被照射面の位置のずれ量ΔWと発光面側の共役位置Vtcからの発光面の位置のずれ量ΔVとの関係に基づいたMTF分布を表した図である。
図9(b)は、
図7及び
図8に示されるLEDヘッド200において構成される光学系における被照射面側の共役位置Wtcからの被照射面の位置のずれ量ΔWとMTFとの関係であるMTF曲線を示す図である。
【0059】
図9(a)において、直線T21は、実施の形態1で説明した上記の式10〜12を満たす直線である。すなわち、直線T21は、任意のVにおいてMTFが最大となる点Wの位置を表した近似直線であり、この近似直線T21上では、Wの変動に応じて生じるMTFの変動が最小となる位置であると推定される。一点鎖線で示される直線T22は、ΔW=ΔVとなる組み合わせを示す直線である。すなわち、ΔW2=ΔV2である。
【0060】
図9(b)において、点P21′及び点P22′は、
図9(a)に示される点P21及び点P22にそれぞれ対応する。点21は、上記の式10〜12を満たす直線上に位置するので、ΔW=ΔW1のとき極値をとる。したがって、設定値W1を、共役位置WtcからΔW1だけずれた位置になるように決定した場合、設定値V1は、共役位置VtcからΔV1だけずれた位置に設定する。すなわち、第1の距離の設定値W1に対する第1の距離Wの変動量に応じて発生する被照射面における結像特性の変動量が最小となる第1の距離の設定値W1と第2の距離の設定値V1とを、それぞれW1=Wtc+ΔW1,V1=Vtc+ΔV1として設定する。これにより、LEDヘッド100において、設定値W1が変動する場合であっても、結像特性の変動量を最小にすることができるので、安定した解像度の結像を感光体ドラム208上に形成可能なLEDヘッド200を製造することができる。
【0061】
第1の距離(W)を第1の距離の設定値W1に設定するとともに、第2の距離(V)を第2の距離の設定値V1に設定して基板とロッドレンズアレイとを支持部材に固定するステップでは、設定されたW1の位置に感光体ドラムの表面208aが位置するように、スペーサ207の長さを調整し、設定されたV1の位置にLEDアレイの表面203aが位置するように、LED基板201をフレーム205の内側において接着剤210等により固定する。以上の方法により、実施の形態2に係るLEDヘッド200を製造することができる。
【0062】
ΔW=ΔV=ΔTC/2となる位置(点P22)に位置決めした場合、
図9(b)に示されるように、ΔV=ΔV2におけるMTF曲線上において点P22’の位置に対応することがわかり、ΔWの変動に応じて生じるMTFの変動は急峻であるので、W1の変動が生じた場合に安定した解像度が得られない。一方、直線T21上の点P21の位置では、
図9(b)に示されるように、ΔV=ΔV1におけるMTF曲線上の極値である点P21’に対応するため、ΔWの変動に応じて生じるMTFの変動は安定していることがわかる。したがって、実施の形態2に係るLEDヘッド200の製造方法によれば、設定値W1の変動が生じた場合であっても安定した解像度の結像を感光体ドラム208上に形成可能なLEDヘッド200を製造することができる。さらに、実施の形態1の場合と比較すると、MTFの減少も小さくすることができる。
【0063】
《実施の形態3》
実施の形態1,2の場合、W1の変動に応じて生じるMTFの変動とMTF値は、トレードオフの関係にあったが、実施の形態3に係るLEDヘッド300の製造方法では、設定値V1(TC/2+ΔV1)を予め決定した方法を採用することにより、実施の形態1,2の場合に比べてMTF値を向上させる。
【0064】
図10は、実施の形態3に係るLEDヘッド300を感光体ドラムの表面308aと対向させて配置した状態における縦断面図である。
図11は、
図10に示される感光体ドラムの表面308aと対向するように配置されたLEDヘッド300をX方向に見た断面を示す断面図である。実施の形態3に係る露光装置としてのLEDヘッド300は、ロッドレンズアレイ304と、LED基板301と、これらを支持するフレーム(ホルダ)304からなる。なお、LEDヘッド300における構成要素の機能、材料、及び各構成要素間の関係は、実施の形態1で説明したLEDヘッド100と基本的に同様である。
【0065】
露光装置としてのLEDヘッド300は、基板としてのLED基板301、LED基板301に備えられた発光素子としてのLEDを複数配列したLEDアレイ303と、LEDアレイ303の発光面303aから放射された光を被照射面に結像させるロッドレンズアレイ304と、LED基板301とロッドレンズアレイ304とを支持する支持部材としてのフレーム305とを有する。
【0066】
フレーム305は、アルミニウム等の材料を型に流し込んで製造されたダイカスト法により製造され、内部にはLED基板301を配置するための段差部305bを有する。フレーム305は、ロッドレンズアレイ304の側面を支持するため、フレーム305の上部に開口部が長手方向(X方向)に沿って形成されている。ロッドレンズアレイ304は、フレーム305の開口部に挿入され、接着剤309等により固定されている。LED基板301は、ロッドレンズアレイ304の光軸方向とLEDアレイ303の光軸方向とが一致するようにLEDアレイ303を支持している。LED基板301は、ロッドレンズアレイ中心304aとLEDアレイ表面303aとの間の距離が、V1=TC/2+ΔV1となるように配置される。なお、ΔV1は、共役位置Vtcからのずれ量である。
【0067】
フレーム305の上面には、LEDヘッド300の基準面を決める調整機構としての偏心カム310が備えられており、偏心カム310の上面310a上に、例えばスペーサ307を設置し、スペーサ307の先端を感光体ドラム308に接触させ、LED基板301下部からコイルバネ306押し当てることにより、LEDヘッド300と感光体ドラム表面308aとの距離をW0に維持し、ロッドレンズアレイ中心304aと感光体ドラムの表面308aのとの間の距雕を基準値W1に決定している。ロッドレンズアレイ中心304aと感光体ドラムの表面308aのとの間の距雕がW1=TC/2+ΔW1になる位置で、偏心カム310は固定される。このとき、ロッドレンズアレイ中心104aと偏心カム310の上面310aとの間の距離はD1となる。
【0068】
LEDヘッド300は、電源電圧と発光パターンの信号がケーブルコネクタ302a及びLED基板301を介してドライバICに入力されると、発光パターンに応じてLEDアレイ303が発光し、LEDアレイ303からの光がロッドレンズアレイ304によって収束し、感光体ドラム308の表面308aを照射する。
【0069】
このようなLEDヘッド300において、実施の形態3に係るLEDヘッド300の製造方法は、支持部材305にロッドレンズアレイ304を固定するステップと、発光面303aとロッドレンズアレイ304の光軸方向における中心位置304aとの間の第1の距離(V)の設定値V1を決定するステップと、第1の距離(V)を設定値V1に設定して基板301を支持部材305に固定するステップと、発光面303aと中心位置304aとの間の第1の距離において、被照射面308aとロッドレンズアレイ304の光軸方向における中心位置304aとの間の第2の距離(W)の基準値W1に対する第2の距離の変動量に応じて発生する被照射面308aにおける結像特性の変動量が最小となる第2の距離の基準値W1を求めるステップとを有する。
【0070】
発光面303aとロッドレンズアレイ304の光軸方向における中心位置304aとの間の第1の距離(V)の設定値V1を決定するステップでは、発光面303aとロッドレンズアレイ中心304aとの間の距離の設定値V1を予め決定する。V1として最も望ましい値は、上記《本発明の原理の説明》において説明したように、V1=Vtc(共役位置)である。しかしながら、装置の構造上、V1を共役位置Vtcと一致させる設計は困難である。これは、ロッドレンズアレイの共役長や光軸方向の幅には個体差があり、同じ設計値でロッドレンズアレイと基板とを支持部材に組み付けると、Vtcからのずれが生じるためである。したがって、LEDヘッド300の設計時において、共役位置からずれることを予め想定して任意の距離V1を決定する。第1の距離(V)を設定値V1に設定して、基板301を支持部材305に固定するステップでは、ロッドレンズアレイ304及びフレーム305を治具等に設置し、接着剤などを用いてロッドレンズアレイ304をフレーム305に固定し、さらに、設定されたV1の位置にLEDアレイの表面303aが位置するように、LED基板301をフレーム305の内側において接着剤等により固定する。これにより、LEDアレイの表面303aが設定値V1の位置に固定される。
【0071】
発光面303aと中心位置304aとの間の第1の距離において、被照射面308aとロッドレンズアレイ304の光軸方向における中心位置304aとの間の第2の距離の基準値W1に対する第2の距離の変動量に応じて発生する被照射面308aにおける結像特性の変動量が最小となる第2の距離の基準値W1を求めるステップでは、予め決定したV1(ΔV1+Vtc)において、MTF(解像度)の測定を行い、最適な基準値W1(ΔW1+Wtc)の位置を求める。この基準値W1(ΔW1+Wtc)を求める方法を下記において説明する。
【0072】
図12(a)は、
図10及び
図11に示されるロッドレンズアレイ304を含む光学系における被照射面側の共役位置Wtcからの被照射面の位置のずれ量ΔWと発光面側の共役位置Vtcからの発光面の位置のずれ量ΔVとの関係に基づいたMTF分布を表した図である。
図12(b)は、
図10及び
図11に示されるLEDヘッド300において構成される光学系における被照射面側の共役位置Wtcからの被照射面の位置のずれ量ΔWとMTFとの関係であるMTF曲線を示す図である。
【0073】
図12(a)において、直線T31は、上記の式10〜12を満たす直線である。すなわち、直線T31は、任意のVにおいてMTFが最大となる点Wの位置を表した近似直線であり、この近似直線T31上では、Wの変動に応じて生じるMTFの変動が最小となる位置であると推定される。一点鎖線で示される直線T32は、ΔW=ΔVとなる組み合わせを示す直線である。
【0074】
図12(b)において、点P31′及び点P32′は、
図12(a)に示される点P31及び点P32にそれぞれ対応する。点31は、上記の式10〜12を満たす直線上に位置するので、ΔW=ΔW1のとき極値をとる。したがって、基準値W1を、共役位置WtcからΔW1だけずれた位置になるように決定した場合、設定値V1は、共役位置VtcからΔV1だけずれた位置に設定する。すなわち、発光面303aと中心位置304aとの間の第1の距離において、被照射面308aとロッドレンズアレイ304の光軸方向における中心位置304aとの間の第2の距離の基準値W1に対する第2の距離の変動量に応じて発生する被照射面308aにおける結像特性の変動量が最小となる第2の距離の基準値W1を、W1=Wtc+ΔW1として設定する。被照射面308aの位置が求めた基準値W1の位置になるように、例えば、上記で説明した偏心カム310で位置を調整すればよい。基準値W1の調整後、偏心カム310を固定する。これにより、LEDヘッド300において、基準値W1が変動する場合であっても、結像特性の変動量を最小にすることができるので、安定した解像度の結像を感光体ドラム308上に形成可能なLEDヘッド300を製造することができる。
【0075】
以上の方法により、実施の形態3に係るLEDヘッド300を製造することができる。
【0076】
ΔW=ΔV=ΔTC/2=ΔV1となる位置(点P32)に位置決めした場合、
図12(b)に示されるように、ΔV=ΔV1におけるMTF曲線上において点P32’の位置に対応することがわかり、ΔWの変動に応じて生じるMTFの変動は急峻であるので、W1の変動が生じた場合に安定した解像度が得られない。一方、直線T31上の点P31の位置では、
図12(b)に示されるように、ΔV=ΔV1におけるMTF曲線上の極値である点P31’に対応するため、ΔWの変動に応じて生じるMTFの変動は安定していることがわかる。したがって、実施の形態3に係るLEDヘッド300の製造方法によれば、基準値W1の変動が生じた場合であっても安定した解像度の結像を感光体ドラム308上に形成可能なLEDヘッド300を製造することができる。さらに、実施の形態1,2の場合と比較すると、MTFの減少も小さくすることができる。
【0077】
《実施の形態4》
実施の形態4に係るLEDヘッド400の製造方法は、
図13及び
図14に示されるロッドレンズアレイ404を含むLEDヘッド400の製造方法である。まず、LEDヘッド400の基本的な構成について説明する。
【0078】
図13は、実施の形態4に係るLEDヘッド400を感光体ドラム408の表面408aと対向させて配置した状態における縦断面図である。露光装置としてのLEDヘッド400は、基板としてのLED基板401と、LED基板401に備えられた発光素子としてのLEDを複数配列したLEDアレイ403と、LEDアレイ403の発光面403aから放射された光を被照射面に結像させるロッドレンズアレイ404と、LED基板401とロッドレンズアレイ404とを支持する支持部材としてのフレーム405とを有する。ロッドレンズアレイ404の光軸方向の長さをDとすると、ロッドレンズアレイ中心404aからロッドレンズアレイ404の上面及び下面までの長さはそれぞれD/2であるが、ロッドレンズアレイの特性によって異なる場合もある。
【0079】
フレーム405は、ロッドレンズアレイ404とLED基板401とを支持する。フレーム405は、両端上面に感光体ドラムの表面408aとLEDヘッド400の距離を決定する搭載面405aを有し、搭載面405aと感光体ドラム表面408aとの間の距離W0を決定する。このW0の位置決め方法の一例をあげると、搭載面405aの両端にスペーサ407を設置し、スペーサ407の先端部を感光体ドラム表面408aに接触させ、フレーム405の下部からコイルバネ406を押し当てるように構成することができる。なお、LEDヘッド400における構成要素の機能、材料、及び各構成要素間の関係は、実施の形態1で説明したLEDヘッド100と基本的に同様である。
【0080】
図14は、LEDヘッド400の製造工程において設定値V1を求めるための位置決め装置450の構成を示す図である。
図13に示される構成と同一の構成を示すものは、同一の符号を付す。
図14のLEDヘッド400において、
図13に示されるLEDヘッド400と異なる点は、LEDアレイの発光面403aの位置を移動させながら設定値V1を求めるため、LED基板401とフレーム405との接着固定がされていない点である。
【0081】
基板可動アクチュエータ451は、LED基板401の位置をV軸上で可動させる手段であり、LED基板401を真空吸着や磁力などにより支持している。また、制御部455と電気的に接続されている。MTF測定手段452は、CCDカメラやフォトセンサなどを有し、ロッドレンズアレイ404により収束されたLEDアレイ403から放射された光を測定することができ、制御部455と接続されている。これにより、MTFを測定する。
【0082】
測定手段可動アクチュエータ453は、MTF測定手段452の位置をW軸上で可動させる手段であり、MTF測定手段452に固定されている。さらに、制御部455と電気的に接続されている。
【0083】
LED制御回路454は、LEDアレイ403の発光パターンを制御する回路であり、LED基板401及び制御部455に電気的に接続されている。制御部455は、全体の制御や必要な演算処理を行う。
【0084】
図15(a)は、実施の形態4に係るLEDヘッド400の製造工程において用いられるロッドレンズアレイ404を含む光学系におけるMTF分布の一例を示す図である。
図15(b)は、
図15(a)のMTF分布に対応するMTF曲線を示す図である。
【0085】
図15(a)は、上記の《本発明の原理の説明》の
図2(a)を用いて説明したMTF分布を示す図であり、
図13及び
図14に示されるLEDヘッド400において構成される光学系に対応するMTF分布である。
図15(a)に示されるMTF分布は、座標系の原点をロッドレンズアレイ中心404aの位置に対応させており、さらに、横軸Wがロッドレンズアレイ中心404aから被照射面の方向に向かう距離を示し、縦軸Vがロッドレンズアレイ中心404aから発光面403aの方向に向かう距離を示している点が、
図2(a)に示されるMTF分布と異なるが、その他は
図2(a)に示されるMTF分布と同様である。したがって、
図15(a)に示されるMTF分布における等高線の中心は点P0であり、点P0に対応する位置が共役位置(Wtc,Vtc)である。
図13及び
図14に示されるロッドレンズアレイ404を含む光学系の基本的な原理は、上記の《本発明の原理の説明》において説明した原理と共通である。
【0086】
図15(a)の直線T41は、上記《本発明の原理の説明》で説明した式3において(ΔW,ΔV)を(W,V)に置き換えて求めて算出される直線に等しい。すなわち、直線T41は、任意のVにおいてMTFが最大となる点Wの位置を表した近似直線であり、この近似直線T41上では、Wの変動に応じて生じるMTFの変動が最小となる位置であると推定される。直線T42は、W=Vを満たす直線である。ただし、必ずしもMTF分布における等高線の長軸の傾きθは45度に一致するとは限らない。
【0087】
図15(a)に示されるように、W=V=(TC+ΔTC)/2を満たす位置は、等高線の中心である点P0を除く直線T42上の位置である。したがって、W1を固定位置とすると、点(W1,Vc)がV=W=(TC+ΔTC)/2を満たす位置となる。ここで、VをVcに固定してWを変化させた場合の直線T42との交点をW1とすると、
図15(b)に示されるように、W1はMTF曲線における極値をとらない。一方、V=Vcにおいて、MTF曲線の極値をとるWの値は、直線T41上に位置するW=Wcの位置である。ただし、ロッドレンズアレイの製造精度のばらつきなどにより、必ずしもW側の共役位置であるWtcと、V側の共役位置であるVtcとが等しくなるとは限らない。したがって、ロッドレンズアレイ中心404aと感光体ドラムの表面408aとの間の距離W1と、ロッドレンズアレイ中心404aとLEDアレイの発光面403aとの間の距離V1とを互いに等しくなるように、LEDヘッド400を製造した場合であっても、共役位置及びMTF曲線の極値からずれた位置に基づいてLEDヘッド400が製造されることがあり、この場合、W1の変動に応じて生じるMTFの変動が急峻になり、印字品質が低減する場合がある。
【0088】
このようなLEDヘッド400において、実施の形態4に係るLEDヘッド400の製造方法は、被照射面408aとロッドレンズアレイ404の光軸方向における中心位置404aとの間の第1の距離(W)の基準値W1を決定するステップと、発光面403aと中心位置404aとの間の第2の距離(V)であって、基準値W1に対する第1の距離の変動量に応じて発生する被照射面408aにおける結像特性の変動量が最小となる第2の距離の設定値V1を求めるステップと、第2の距離を設定値V1に設定して基板401を支持部材405に固定するステップとを有する。
【0089】
第2の距離の設定値V1を求めるステップでは、発光面403aの任意の第1の位置(Vt1)において第1の解像度(MTF)を測定し、第1の解像度が最大となる被照射面408aの第2の位置(Wt1)を求め、発光面403aの第1の位置とは異なる任意の第3の位置(Vt2)において第2の解像度を測定し、第2の解像度が最大となる被照射面408aの第4の位置(Wt2)を求め、ロッドレンズアレイ404の光軸方向における中心位置404aから被照射面408aに向かう方向の被照射面408aの位置を示す座標軸を横軸(W軸)とし、ロッドレンズアレイ404の光軸方向における中心位置404aから発光面403aに向かう方向の発光面403aの位置を示す座標軸を縦軸(V軸)とする2次元直交座標系において、第1から第4の位置に対応する点を用いて近似関数を求め、近似関数により、決定された基準値W1に対応する設定値V1を求める。
【0090】
図16は、
図14に示される位置決め装置450を含むLEDヘッド400の断面におけるW軸を横軸とし、V軸を縦軸としたWV空間において、MTF曲線が極値をとるW及びVの関係を示す図である。ただし、
図16では、MTF分布である等高線は示されていない。
図17は、実施の形態4に係るLEDヘッド400の製造工程を示すフローチャートである。
【0091】
実施の形態4に係るLEDヘッド400の製造工程をさらに
図16及び
図17を用いて具体的に説明する。
【0092】
ステップS400(準備)では、ロッドレンズアレイ404をフレーム405に固定することにより、フレームの上面405aとロッドレンズアレイ中心404aとの間の距離D1が固定される。
図13に示されるように、フレームの上面405aと感光体ドラムの表面408aとの間の距離W0は固定されるので、W1は、W0とD1との差(W0−D1)により決定する。実施の形態4では、W1が共役位置WtcからW軸の負の方向に向かってずれた場合(すなわち、ΔW=W1−Wtc<0)について説明する。
【0093】
ステップS410では、近似直線を求めるための2つの点を探索する。具体的には、S410についてのサブルーチンにより実施される。なお、S410についてのサブルーチンにおいて、任意の2点を求める方法を、本明細書において「任意2点法」という。
【0094】
ステップS411で、
図16に示されるように、任意のV=Vt1においてMTFが最大となるW位置の探索を行い、得られた位置をWt1とする。MTFが最大となるW位置の探索は、例えば、所定のパターンでLEDアレイ403を発光させて、
図14に示されるMTF測定手段452によりMTFを測定し、W位置を動かして再度MTF測定を繰り返し、最もMTFが大きくなるW位置を探索すればよい。
【0095】
ステップS412では、
図16に示されるように、任意のV=Vt2においてMTFが最大となるW位置の探素を行い、得られた位置をWt2とする。Vt1及びVt2は、互いに異なる値であれば任意に決めることができる。
【0096】
ステップS420(固定位置決定)では、LED基板の接着固定位置、すなわち、LEDアレイの表面403aの位置である設定値V1を算出する。具体的には、S420についてのサブルーチンにより実施する。
【0097】
ステップS421では、ステップS411及びS412において求めた点(Wt1,Vt1)及び、点(Wt2、Vt2)を用いて、
図16に示される近似直線T43を求める。なお、近似直線T43は、上記《本発明の原理の説明》で説明した式3において(ΔW,ΔV)を(W,V)に置き換えて求めて算出される直線に等しい。すなわち、直線T43は、任意のVにおいてMTFが最大となる点Wの位置を表した近似直線であり、この近似直線T43上では、Wの変動に応じて生じるMTFの変動が最小となる位置であると推定される。
【0098】
ステップS422では、この近似直線T43に、ステップS400で決定したW1を代入して演算V1(設定値V1)を算出する。
【0099】
ステップS423では、得られた点(W1、演算V1)を接着固定位置(W1,V1)として決定し、LEDアレイの表面403aがV1の位置になるようにLEDアレイ403が備えられたLED基板401を移動させる。
【0100】
ステップS430(固定)では、ステップS420で決定した設定値V1位置において、LED基板401をフレーム405に接着固定する。
【0101】
実施の形態4によれば、共役位置Wtcからずれた位置に、基準値W1が決定された場合であっても、基準値W1において結像特性の変動を最小にすることができる設定値V1を求めて、V1の位置にLEDアレイの表面403aを固定させることができる。また、実施の形態4によれば、予めロッドレンズアレイ404の共役長TCを把握していない場合であっても、適切な設定値V1を求めることができる。したがって、共役長TC、共役位置Wtc,Vtc、及びMTF分布における等高線の長軸の傾きθなどのロッドレンズアレイの結像特性を決めるパラメータを意識することなく、基準値W1において結像特性の変動を最小にすることができる設定値V1への位置決めを行うことができる。また、実施の形態4によれば、ロッドレンズアレイ404の組み付け時に治具の精度及び作業精度に起因する、LEDヘッド400ごとの感光体ドラム表面408aの位置W1のバラつきが生じた場合であっても、LEDヘッド400ごとの感光体ドラム表面408aの位置W1に対する適切な設定値V1を求めることができる。
【0102】
《実施の形態5》
実施の形態5に係るLEDヘッド(
図13における、構成400に対応)の製造方法は、
図13及び
図14に基づいて説明する。したがって、実施の形態5に係るLEDヘッドの構成は、実施の形態4で説明したLEDヘッド400の構成と同様である。また、実施の形態5に係るLEDヘッドの製造工程において用いる位置決め装置は、
図14に示される位置決め装置450の構成と同様である。
【0103】
このような実施の形態5に係るLEDヘッドにおいて、露光装置としてのLEDヘッドの製造方法は、被照射面408aとロッドレンズアレイ404の光軸方向における中心位置404aとの間の第1の距離(W)の基準値W1を決定するステップと、発光面403aと中心位置404aとの間の第2の距離(V)であって、基準値W1に対する第1の距離の変動量に応じて発生する被照射面408aにおける結像特性の変動量が最小となる第2の距離の設定値V1を求めるステップと、第2の距離を設定値V1に設定して基板401を支持部材405に固定するステップとを有する。
【0104】
第2の距離の設定値V1を求めるステップでは、決定された基準値W1において第1の解像度(MTF)を測定し、第1の解像度が最大となる発光面403aの第1の位置(V2)を求め、第1の位置(V2)において第2の解像度を測定し、第2の解像度が最大となる被照射面408aの第2の位置(W2)を求め、ロッドレンズアレイ404の光軸方向における中心位置404aから被照射面408aに向かう方向の被照射面408aの位置を示す座標軸を横軸(W軸)とし、ロッドレンズアレイ404の光軸方向における中心位置404aから発光面403aに向かう方向の発光面403aの位置を示す座標軸を縦軸(V軸)とする2次元直交座標系において、第2の位置と基準値に対応する位置との差分(W2−W1)に所定の係数を乗じて得られる値を発光面403aの第3の位置(V3)とし第3の位置において第3の解像度を測定し、第3の解像度が最大となる被照射面の第4の位置(W3)を求め、第1から第4の位置に対応する2次元直交座標系における点を用いて近似関数を求め、近似関数により、決定された基準値W1に対応する設定値V1を求める。
【0105】
図18は、
図14に示される位置決め装置450を含むLEDヘッド400の断面におけるW軸を横軸とし、V軸を縦軸としたWV空間において、MTF曲線が極値をとるW及びVの関係を示す図である。ただし、
図18では、MTF分布である等高線は示されていない。
図19は、実施の形態5に係るLEDヘッドの製造工程を示すフローチャートである。
【0106】
実施の形態5に係るLEDヘッドの製造工程をさらに
図18及び
図19を用いて具体的に説明する。
【0107】
ステップS500(準備)では、ロッドレンズアレイ404をフレーム405に固定することにより、フレームの上面とロッドレンズアレイ中心404aとの間の距離D1が固定される。
図13に示されるように、フレームの上面405aと感光体ドラムの表面408aとの間の距離W0は固定されるので、W1は、W0とD1との差(W0−D1)により決定する。実施の形態5では、W1が共役位置WtcからW軸の負の方向に向かってずれた場合(すなわち、ΔW=W1−Wtc<0)について説明する。
【0108】
ステップS510では、近似直線を求めるための3つの点を探索する。具体的には、S510についてのサブルーチンにより実施される。なお、S510についてのサブルーチンにおいて、3点を求める方法を、本明細書において「3点発散探索法」という。
【0109】
ステップS511で、
図18に示されるように、ステップS500で決定したW1においてMTFが最大となるV位置の探索を行い、得られた位置をV2とする。なお、直線T52は、点(W1,V2)及び共役位置に対応する点(Wtc,Vtc)を通る直線であり、任意のW位置において、最もMTFが高いV位置を示す近似直線である。
【0110】
ステップS512では、ステップS511で得られたV2においてMTFが最大となるW位置の探索を行い、得られた位置をW2とする。
【0111】
ステップS513では、これまでのステップで得られたW1,W2,V2を用いた下記の式51により、新たなV位置であるV3を算出する。
V3=V2−(W2−W1)×Q …式51
ここで、Qは、
図18に示される直線T51の傾きよりも大きな値に設定することが望ましいが、任意の値に設定できる。
【0112】
ステップS514では、ステップ513で算出されたV3においてMTFが最大となるW位置の探索を行い、得られた位置をW3とする。
【0113】
S520(固定位置決定)では、LEDアレイの発光面403aの設定値V1となる演算V1を算出する。具体的には、S520についてのサブルーチンにより実施する。
【0114】
ステップS521では、ステップS512〜S514で求められた点(W2,V2)、及び点(W3,V3)を用いて、
図18に示される近似直線T51を求める。なお、近似直線T51は、上記《本発明の原理の説明》で説明した式3において(ΔW,ΔV)を(W,V)に置き換えて求めて算出される直線に等しい。すなわち、直線T51は、任意のVにおいてMTFが最大となる点Wの位置を表した近似直線であり、この近似直線T51上では、Wの変動に応じて生じるMTFの変動が最小となる位置であると推定される。
【0115】
ステップS522では、この近似直線T51に、ステップS500で決定したW1を代入して演算V1(設定値V1)を算出する。
【0116】
ステップS523では、点(W1、演算V1)を固定位置(W1,V1)として決定し、LEDアレイの表面403aがV1の位置になるようにLEDアレイ403が備えられたLED基板401を移動させる。
【0117】
ステップS530(固定)では、S520で決定した設定値V1において、LED基板401をフレーム405に接着固定する。
【0118】
実施の形態5によれば、実施の形態4に係るLEDヘッド400の製造方法と同様の効果を得ることができる。さらに、実施の形態5によれば、上位式51において、Qの値を適切に設定することにより、W1がW2とW3との間に位置するように設定することができ、近似直線T51によって演算V1を算出するための近似の精度を安定させ、且つ、向上させることができる。
【0119】
《実施の形態6》
実施の形態4〜5では、探索場所を指定して、探索ステップを行う必要がある。実施の形態6に係るLEDヘッド(
図13における、構成400に対応)の製造方法は、探索場所が自動的に決定される方法である。
【0120】
実施の形態6に係るLEDヘッドの製造方法は、
図13及び
図14に基づいて説明する。したがって、実施の形態6に係るLEDヘッドの構成は、実施の形態4で説明したLEDヘッド400の構成と同様である。また、実施の形態6に係るLEDヘッドの製造工程において用いる位置決め装置は、
図14に示される位置決め装置450の構成と同様である。
【0121】
このような実施の形態6に係るLEDヘッドにおいて、露光装置としてのLEDヘッドの製造方法は、被照射面408aとロッドレンズアレイ404の光軸方向における中心位置404aとの間の第1の距離(W)の基準値W1を決定するステップと、発光面403aと中心位置404aとの間の第2の距離(V)であって、基準値W1に対する第1の距離の変動量に応じて発生する被照射面408aにおける結像特性の変動量が最小となる第2の距離の設定値V1を求めるステップと、第2の距離を設定値V1に設定して基板401を支持部材405に固定するステップとを有する。
【0122】
第2の距離の設定値V1を求めるステップでは、決定された基準値W1において第1の解像度(MTF)を測定し、第1の解像度が最大となる発光面403aの第1の位置(V2)を求め、第1の位置(V2)において第2の解像度を測定し、第2の解像度が最大となる被照射面408aの第2の位置(W2)を求め、第2の位置(W2)において第3の解像度を測定し、第3の解像度が最大となる発光面403aの第3の位置(V3)を求め、第3の位置(V3)において第4の解像度を測定し、第4の解像度が最大となる被照射面408aの第4の位置(W3)を求め、ロッドレンズアレイ404の光軸方向における中心位置404aから被照射面408aに向かう方向の被照射面408aの位置を示す座標軸を横軸(W軸)とし、ロッドレンズアレイ404の光軸方向における中心位置404aから発光面403aに向かう方向の発光面403aの位置を示す座標軸を縦軸(V軸)とする2次元直交座標系において、第1から第4の位置に対応する2次元直交座標系における点を用いて2次元直交座標系における近似関数を求め、近似関数により、決定された基準値W1に対応する設定値V1を求める。
【0123】
図20は、
図14に示される位置決め装置450を含むLEDヘッド400の断面におけるW軸を横軸とし、V軸を縦軸としたWV空間において、MTF曲線が極値をとるW及びVの関係を示す図である。ただし、
図20では、MTF分布である等高線は示されていない。
図21は、実施の形態6に係るLEDヘッドの製造工程を示すフローチャートである。
【0124】
実施の形態6に係るLEDヘッドの製造工程をさらに
図20及び
図21を用いて具体的に説明する。
【0125】
ステップS600(準備)では、ロッドレンズアレイ404をフレーム405に固定することにより、フレームの上面とロッドレンズアレイ中心404aとの間の距離D1が固定される。
図13に示されるように、フレームの上面405aと感光体ドラムの表面408aとの間の距離W0は固定されるので、W1は、W0とD1との差(W0−D1)により決定する。実施の形態6では、W1が共役位置WtcからW軸の負の方向に向かってずれた場合(すなわち、ΔW=W1−Wtc<0)について説明する。
【0126】
ステップS610では、近似直線を求めるための4つの点を探索する。具体的には、S610についてのサブルーチンにより実施される。なお、S610についてのサブルーチンにおいて、4点を求める方法を、本明細書において「4点収束探索法」という。
【0127】
ステップS611で、
図20に示されるように、ステップS600で決定したW1においてMTFが最大となるV位置の探索を行い、得られた位置をV2とする。なお、直線T62は、点(W1,V2)及び共役位置に対応する点(Wtc,Vtc)を通る直線であり、任意のW位置において、最もMTFが高いV位置を示す近似直線である。
【0128】
ステップS612では、ステップS611で得られたV2においてMTFが最大となるW位置の探索を行い、得られた位置をW2とする。
【0129】
ステップS613では、W2においてMTFが最大となるV位置の探索を行い、得られた位置をV3とする。
【0130】
ステップS614では、V3においてMTFを最大とするW位置の探索を行い、得られたW位置をW3とする。
【0131】
ステップS620(固定位置決定)では、LEDアレイの発光面403aの設定値V1となる演算V1を算出する。具体的には、S620についてのサブルーチンにより実施する。
【0132】
ステップS621では、ステップS613〜S614で得られた点(W2,V2)、及び点(W3,V3)を用いて、近似直線T61を求める。近似直線T61は、上記《本発明の原理の説明》で説明した式3において(ΔW,ΔV)を(W,V)に置き換えて求めて算出される直線に等しい。すなわち、直線T61は、任意のVにおいてMTFが最大となる点Wの位置を表した近似直線であり、この近似直線T61上では、Wの変動に応じて生じるMTFの変動が最小となる位置であると推定される。
【0133】
ステップS622では、この近似直線T61に、ステップS600で決定したW1を代入して演算V1(設定値V1)を算出する。
【0134】
ステップS623では、得られた点(W1、演算V1)を固定位置(W1,V1)として決定し、LEDアレイの表面403aがV1の位置になるようにLEDアレイ403が備えられたLED基板401を移動させる。
【0135】
ステップS630(固定)では、S620で決定した設定値V1位置において、LED基板401をフレーム405に接着固定する。
【0136】
実施の形態6によれば、実施の形態4に係るLEDヘッド400の製造方法と同様の効果を得ることができる。さらに、実施の形態6によれば、近似直線T61を求めるための点が自動的に決定されるため、あらかじめロッドレンズアレイの特性を把握していない場合であっても、ロッドレンズアレイ中心と感光体ドラムの表面との間の距離、及びロッドレンズアレイと発光面との間の距離を適切に位置決めしたLEDヘッドを製造することができる。
【0137】
《実施の形態7》
実施の形態7に係るLEDヘッド(
図13における、構成400に対応)の製造方法は、
図13及び
図14に基づいて説明する。したがって、実施の形態7に係るLEDヘッドの構成は、実施の形態4で説明したLEDヘッド400の構成と同様である。また、実施の形態7に係るLEDヘッドの製造工程において用いる位置決め装置は、
図14に示される位置決め装置450の構成と同様である。
【0138】
このような実施の形態7に係るLEDヘッドにおいて、露光装置としてのLEDヘッドの製造方法は、被照射面408aとロッドレンズアレイ404の光軸方向における中心位置404aとの間の第1の距離(W)の基準値W1を決定するステップと、発光面403aと中心位置404aとの間の第2の距離(V)であって、基準値W1に対する第1の距離の変動量に応じて発生する被照射面408aにおける結像特性の変動量が最小となる第2の距離の設定値V1を求めるステップと、第2の距離を設定値V1に設定して基板401を支持部材405に固定するステップとを有する。
【0139】
第2の距離の設定値V1を求めるステップでは、発光面403aの任意の第1の位置(Vt1)において第1の解像度(MTF)を測定し、第1の解像度が最大となる被照射面の408a第2の位置(Wt1)を求め、発光面403aの第1の位置とは異なる任意の第3の位置(Vt2)において第2の解像度を測定し、第2の解像度が最大となる被照射面408aの第4の位置(Wt2)を求め、被照射面408aの任意の第5の位置(Ws1)において第3の解像度を測定し、第3の解像度が最大となる発光面403aの第6の位置(Vs1)を求め、被照射面408aの第6の位置とは異なる任意の第7の位置(Ws2)において第4の解像度を測定し、第4の解像度が最大となる発光面403aの第8の位置(Vs2)を求め、ロッドレンズアレイ404の光軸方向における中心位置404aから被照射面408aに向かう方向の被照射面408aの位置を示す座標軸を横軸(W軸)とし、ロッドレンズアレイ404の光軸方向における中心位置404aから発光面403aに向かう方向の発光面403aの位置を示す座標軸を縦軸(V軸)とする2次元直交座標系において、第1から第4の位置に対応する2次元直交座標系における点を用いて第1の近似関数(T71)を求め、第1の近似関数により、決定された基準値W1に対応する発光面403aの位置である演算値(演算V1)を求め、第5から第8の位置に対応する2次元直交座標系における点を用いて第2の近似関数(T72)を求め、第2の近似関数により、演算値(演算V1)に対応する被照射面408aの第9の位置(W1’)を求め、第9の位置において第5の解像度を測定し、第5の解像度が最大となる発光面403aの位置(実測V1)を設定値V1とする。
【0140】
図22は、
図14に示される位置決め装置450を含むLEDヘッド400の断面におけるW軸を横軸とし、V軸を縦軸としたWV空間において、MTF曲線が極値をとるW及びVの関係を示す図である。ただし、
図22では、MTF分布である等高線は示されていない。
図23は、実施の形態7に係るLEDヘッドの製造工程を示すフローチャートである。
【0141】
実施の形態7に係るLEDヘッドの製造工程をさらに
図22及び
図23を用いて具体的に説明する。
【0142】
ステップS700(準備)では、ロッドレンズアレイ404をフレーム405に固定することにより、フレームの上面とロッドレンズアレイ中心404aとの間の距離D1が固定される。
図13に示されるように、フレームの上面405aと感光体ドラムの表面408aとの間の距離W0は固定されるので、W1は、W0とD1との差(W0−D1)により決定する。実施の形態7では、W1が共役位置WtcからW軸の負の方向に向かってずれた場合(すなわち、ΔW=W1−Wtc<0)について説明する。
【0143】
ステップS710では、2つの近似直線を求めるための4つの点を探索する。具体的には、S710についてのサブルーチンにより実施される。なお、S710についてのサブルーチンにおいて、4点を求める方法を、本明細書において「任意4点法」という。
【0144】
ステップS711で、任意のVt1においてMTFが最大となるW位置の探索を行い、得られた位置をWt1とする。
【0145】
ステップS712では、任意のVt2においてMTFが最大となるW位置の探索を行い、得られた位置をWt2とする。
【0146】
ステップS713では、任意のWs1においてMTFが最大となるV位置の探索を行い、得られた位置をVs1とする。
【0147】
ステップS714では、任意のWs2においてMTFが最大となるV位置の探索を行い、得られた位置をVs2とする。ここで、Vt1及びVt2並びにWs1及びWs2は、Vt1≠Vt2且つWs1≠Ws2であり、適切な値であれば任意に決めることができる。
【0148】
ステップS720(固定位置決定)で接着固定位置(実測V1)を算出する。具体的には、S720についてのサブルーチンにより実施される。
【0149】
ステップS721〜S722は、
図17に示されるステップS421〜S422と同様の処理を行い、近似直線T71及び演算V1を算出する。
【0150】
ステップS723では、ステップS713〜S714で得られた点(Ws1、Vs1)、及び点(Ws2、Vs2)を用いて、近似直線T72を求める。
【0151】
ステップS724では、演算V1と近似直線T72を用いて、W1'を算出する。
【0152】
ステップS725では、得られたW1’においてMTFが最大となるV位置の探索を行い、この結果得られたV位置を実測V1とする。すなわち、演算V1は、近似直線T71から算出される近似値であるが、演算V1と近似直線T72を用いて求められたW1'においてさらに、V位置(実測V1)を探索することにより、より精度の高い設定値V1を求めることができる。
【0153】
ステップS726では、点(W1,実測V1)を固定位置(W1,V1)として決定し、LEDアレイの表面403aがV1の位置になるようにLEDアレイ403が備えられたLED基板401を移動させる。
【0154】
ステップS730(固定)では、S720で決定した設定値V1位置において、LED基板401をフレーム405に接着固定する。
【0155】
なお、近似直線を求めるための点の探索及び近似直線の算出は、任意の順序で行うことができ、上記の例に限られない。
【0156】
実施の形態7によれば、実施の形態4に係るLEDヘッド400の製造方法と同様の効果を得ることができる。さらに、実施の形態7によれば、演算V1を求めた後、さらに演算V1に対応するW1’においてV位置の探索を行い、実測V1を求めるので、演算誤差を低減し、基準値W1からの変動に応じて生じる結像特性の変動をより小さくすることができる。
【0157】
《実施の形態8》
実施の形態8に係るLEDヘッド(
図13における、構成400に対応)の製造方法は、
図13及び
図14に基づいて説明する。したがって、実施の形態8に係るLEDヘッドの構成は、実施の形態4で説明したLEDヘッド400の構成と同様である。また、実施の形態8に係るLEDヘッドの製造工程において用いる位置決め装置は、
図14に示される位置決め装置450の構成と同様である。
【0158】
このような実施の形態8に係るLEDヘッドにおいて、露光装置としてのLEDヘッドの製造方法は、被照射面408aとロッドレンズアレイ404の光軸方向における中心位置404aとの間の第1の距離(W)の基準値W1を決定するステップと、発光面403aと中心位置404aとの間の第2の距離(V)であって、基準値W1に対する第1の距離の変動量に応じて発生する被照射面408aにおける結像特性の変動量が最小となる第2の距離の設定値V1を求めるステップと、第2の距離を設定値V1に設定して基板401を支持部材405に固定するステップとを有する。
【0159】
第2の距離の設定値V1を求めるステップでは、決定された基準値W1において第1の解像度(MTF)を測定し、第1の解像度が最大となる発光面403aの第1の位置(V2)を求め、第1の位置(V2)において第2の解像度を測定し、第2の解像度が最大となる被照射面408aの第2の位置(W2)を求め、第2の位置と基準値W1に対応する位置との差分(W2−W1)に所定の係数を乗じて得られる値を被照射面408aの第3の位置(W3)とし、第3の位置において第3の解像度を測定し、第3の解像度が最大となる発光面の第4の位置(V3)を求め、第4の位置において第4の解像度を測定し、第4の解像度が最大となる被照射面408aの第5の位置(W4)を求め、ロッドレンズアレイ404の光軸方向における中心位置404aから被照射面408aに向かう方向の被照射面408aの位置を示す座標軸を横軸(W軸)とし、ロッドレンズアレイ404の光軸方向における中心位置404aから発光面403aに向かう方向の発光面403aの位置を示す座標軸を縦軸(V軸)とする2次元直交座標系において、第1,2,4,及び5の位置に対応する2次元直交座標系における点を用いて第1の近似関数(T81)を求め、第1の近似関数により、決定された基準値W1に対応する発光面403aの位置である演算値(演算V1)を求め、基準値W1と第1,3,及び4の位置とに対応する2次元直交座標系における点を用いて第2の近似関数(T82)を求め、第2の近似関数により、演算値(演算V1)に対応する被照射面408aの位置である第6の位置(W1’)を求め、第6の位置(W1’)において第5の解像度を測定し、第5の解像度が最大となる発光面403aの位置(実測V1)を設定値V1とする。
【0160】
図24は、
図14に示される位置決め装置450を含むLEDヘッド400の断面におけるW軸を横軸とし、V軸を縦軸としたWV空間において、MTF曲線が極値をとるW及びVの関係を示す図である。ただし、
図24では、MTF分布である等高線は示されていない。
図25は、実施の形態8に係るLEDヘッドの製造工程を示すフローチャートである。
【0161】
実施の形態8に係るLEDヘッドの製造工程をさらに
図24及び
図25を用いて説明する。
【0162】
ステップS800(準備)では、ロッドレンズアレイ404をフレーム405に固定することにより、フレームの上面とロッドレンズアレイ中心404aとの間の距離D1が固定される。
図13に示されるように、フレームの上面405aと感光体ドラムの表面408aとの間の距離W0は固定されるので、W1は、W0とD1との差(W0−D1)により決定する。実施の形態8では、W1が共役位置WtcからW軸の負の方向に向かってずれた場合(すなわち、ΔW=W1−Wtc<0)について説明する。
【0163】
ステップS810では、近似直線を求めるための4つの点を探索する。具体的には、S810についてのサブルーチンにより実施される。なお、S810についてのサブルーチンにおいて、4点を求める方法を、本明細書において「4点発散探索法」という。
【0164】
ステップS811で、
図24に示されるように、ステップS800で決定したW1においてMTFが最大となるV位置の探索を行い、得られた位置をV2とする。なお、直線T82は、点(W1,V2)及び共役位置に対応する点(Wtc,Vtc)を通る直線であり、任意のW位置において、最もMTFが高いV位置を示す近似直線である。
【0165】
ステップS812では、V2においてMTFが最大となるW位置の探索を行い、得られた位置をW2とする。
【0166】
ステップS813では、これまでのステップで得られたW1,W2を用いた下記の式81により、新たなV位置であるW3を算出する。
W3=W1−(W2−W1)×P …式81
ここで、Pは実数であり、
図24に示される〔直線T81の傾き÷直線T82の傾き〕よりも大きな値に設定することが望ましいが、任意の値に設定できる。
【0167】
ステップS814では、W3においてMTFが最大となるV位置の探索を行い、得られた位置をV3とする。
【0168】
ステップS815では、V3においてMTFを最大とするW位置の探索を行い、得られたW位置をW4とする。
【0169】
ステップS820(固定位置決定)では、LEDアレイの発光面403aの設定値V1となる演算V1を算出する。具体的には、S820についてのサブルーチンにより実施する。
【0170】
ステップS821では、これまでのステップで求められた点(W2,V2)、及び点(W4,V3)を用いて、近似直線T81を求める。なお、近似直線T91は、上記《本発明の原理の説明》で説明した式3において(ΔW,ΔV)を(W,V)に置き換えて求めて算出される直線に等しい。すなわち、直線T81は、任意のVにおいてMTFが最大となる点Wの位置を表した近似直線であり、この近似直線T81上では、Wの変動に応じて生じるMTFの変動が最小となる位置であると推定される。
【0171】
ステップS822では、この近似直線T81に、ステップS500で決定したW1を代入して演算V1を算出する。
【0172】
ステップS823では、これまでのステップで求められた点(W1,V2)、及び点(W3,V3)を用いて、近似直線T82を求める。
【0173】
ステップS824では、演算V1と近似直線T82を用いて、W1'を算出する。
【0174】
ステップS825で、W1'においてMTFが最大となるV位置の探索を行い、この結果得られたV位置を実測V1(設定値V1)とする。
【0175】
ステップS826では、点(W1,実測V1)を固定位置として決定し、LEDアレイの表面403aがV1の位置になるようにLEDアレイ403が備えられたLED基板401を移動させる。
【0176】
ステップS830では、実測V1(設定値V1)において、LED基板401をフレーム405に接着固定する。
【0177】
実施の形態8によれば、実施の形態7に係るLEDヘッドの製造方法と同様の効果が得られる。さらに、実施の形態8によれば、上位式81において、Pの値を適切に設定することにより、W1が探索された点の間(例えば、W2とW4との間)に位置するように設定することができ、近似直線T81によって演算V1を算出するための近似の精度を安定させ、且つ、向上させることができる。
【0178】
《実施の形態9》
実施の形態7,8では、探索場所を指定して、探索ステップを行う必要がある。実施の形態9におけるLEDヘッドの製造方法は、探索場所が自動的に決定される方法である。実施の形態9に係るLEDヘッド(
図13における、構成400に対応)の製造方法は、
図13及び
図14に基づいて説明する。したがって、実施の形態9に係るLEDヘッドの構成は、実施の形態4で説明したLEDヘッド400の構成と同様である。また、実施の形態9に係るLEDヘッドの製造工程において用いる位置決め装置は、
図14に示される位置決め装置450の構成と同様である。
【0179】
このような実施の形態9に係るLEDヘッドにおいて、露光装置としてのLEDヘッドの製造方法は、被照射面408aとロッドレンズアレイ404の光軸方向における中心位置404aとの間の第1の距離(W)の基準値W1を決定するステップと、発光面403aと中心位置404aとの間の第2の距離(V)であって、基準値W1に対する第1の距離の変動量に応じて発生する被照射面408aにおける結像特性の変動量が最小となる第2の距離の設定値V1を求めるステップと、第2の距離を設定値V1に設定して基板401を支持部材405に固定するステップとを有する。
【0180】
第2の距離の設定値V1を求めるステップでは、決定された基準値W1において第1の解像度(MTF)を測定し、第1の解像度が最大となる発光面403aの第1の位置(V2)を求め、第1の位置(V2)において第2の解像度を測定し、第2の解像度が最大となる被照射面408aの第2の位置(W2)を求め、第2の位置(W2)において第3の解像度を測定し、第3の解像度が最大となる発光面403aの第3の位置(V3)を求め、第3の位置(V3)において第4の解像度を測定し、第4の解像度が最大となる被照射面408aの第4の位置(W3)を求め、ロッドレンズアレイ404の光軸方向における中心位置404aから被照射面408aに向かう方向の被照射面408aの位置を示す座標軸を横軸(W軸)とし、ロッドレンズアレイ404の光軸方向における中心位置404aから発光面403aに向かう方向の発光面403aの位置を示す座標軸を縦軸(V軸)とする2次元直交座標系において、第1から第4の位置に対応する2次元直交座標系における点を用いて第1の近似関数(T91)を求め、第1の近似関数により、決定された基準値W1に対応する発光面の位置である演算値(演算V1)を求め、基準値W1と第1,2,及び3の位置とに対応する2次元直交座標系における点を用いて第2の近似関数(T92)を求め、第2の近似関数により、演算値(演算V1)に対応する被照射面408aの位置である第5の位置(W1’)を求め、第5の位置(W1’)において第5の解像度を測定し、第5の解像度が最大となる発光面403aの位置(実測V1)を設定値V1とする。
【0181】
図26は、
図14に示される位置決め装置450を含むLEDヘッド400の断面におけるW軸を横軸とし、V軸を縦軸としたWV空間において、MTF曲線が極値をとるW及びVの関係を示す図である。ただし、
図26では、MTF分布である等高線は示されていない。
図27は、実施の形態9に係るLEDヘッドの製造工程を示すフローチャートである。
【0182】
実施の形態9に係るLEDヘッドの製造工程をさらに
図26及び
図27を用いて具体的に説明する。
【0183】
ステップS900は、実施の形態6におけるステップS600(
図21)と同様である。
【0184】
ステップS910は、実施の形態6におけるステップS610(
図21)と同様である。なお、S910についてのサブルーチンにおいて、4点を求める方法を、本明細書において「4点収束探索法」という。
【0185】
ステップS920(固定位置決定)では、LEDアレイの発光面403aの設定値V1となる実測V1を算出する。具体的には、S920についてのサブルーチンにより実施する。
【0186】
ステップS921では、
図21に示されるステップS621と同様の処理を行い、近似直線T91を求める。なお、近似直線T91は、上記《本発明の原理の説明》で説明した式3において(ΔW,ΔV)を(W,V)に置き換えて求めて算出される直線に等しい。すなわち、直線T91は、任意のVにおいてMTFが最大となる点Wの位置を表した近似直線であり、この近似直線T91上では、Wの変動に応じて生じるMTFの変動が最小となる位置であると推定される。
【0187】
ステップS922は、
図21に示されるステップS622と同様の処理を行い、演算V1を算出する。
【0188】
ステップS923では、これまでのステップで得られた点(W1,V2)、及び点(W2,V3)を用いて、近似直線T92を求める。なお、直線T92は、共役位置に対応する点(Wtc,Vtc)を通る直線であり、任意のW位置において、最もMTFが高いV位置を示す近似直線である。
【0189】
ステップS924では、演算V1と近似直線T92を用いて、W1'を算出する。
【0190】
ステップS925で、W1'においてMTFが最大となるV位置の探索を行い、この結果得られたV位置を実測V1とする。
【0191】
ステップS926では、点(W1,実測V1)を固定位置(W1,V1)として決定し、LEDアレイの表面403aがV1の位置になるようにLEDアレイ403が備えられたLED基板401を移動させる。
【0192】
ステップS930(固定)では、ステップS920で決定したV1位置において、LED基板401をフレーム405に接着固定する。
【0193】
実施の形態9によれば、実施の形態4に係るLEDヘッド400の製造方法と同様の効果を得ることができる。さらに、実施の形態9によれば、演算V1を求めた後、さらに演算V1に対応するW1’においてV位置の探索を行い、実測V1を求めるので、演算誤差を低減し、基準値W1からの変動に応じて生じる結像特性の変動をより小さくすることができる。
【0194】
《実施の形態10》
被照射面の位置(W位置)と発光面の位置(V位置)とを調整する際にMTFの最大値となるW位置及びV位置を探索する方法として、W軸と並行な方向に走査することにより、MTFの最大値を探索する方法がある。この方法は、V位置を固定した状態において、当該V位置においてMTFが最大となるW位置(すなわち、上記の《本発明の原理の説明》における式3を満たす位置)を探索する方法である。したがって、予め固定されたV位置が、MTF分布における楕円状の等高線の中心位置、すなわち、V=Vtc=TC/2の位置に正確に配置されているならば、理論上は、W=Wtc=TC/2がMTF最大値として探索され、VとWとの関係も、V=Wとなるが、予め固定されたV位置が等高線の中心位置から外れた場合はW≠Vとなる。例えば、予め固定されたV位置がV=Vc≠Vtcとすると、W=Wc≠Wtcの位置がMTF最大値として探索される。このとき、(Wc,Vc)位置は、共役位置である(Wtc,Vtc)位置と比較すると、MTFが低くなる。しかしながら、ロッドレンズアレイ表面、LEDアレイ、及びLED基板の加工精度等により、正確にV=Vtcの位置に予め発光面の位置を固定することは比較的困難である。そこで、実施の形態10〜12に係るLEDヘッドの製造方法では、予めV位置を固定せずに、適切なW位置(設定値W1)及びV位置(設定値V1)に調整してLEDヘッドを製造する方法について説明する。
【0195】
実施の形態10に係るLEDヘッド1000の製造方法は、
図28及び
図29に示されるロッドレンズアレイ1040を含むLEDヘッド1000の製造方法である。まず、LEDヘッド1000の基本的な構成について説明する。
【0196】
図28は、実施の形態10に係るLEDヘッド1000を感光体ドラムの表面1080aと対向させて配置した状態における縦断面図である。
図29は、
図28に示される感光体ドラムの表面1080aと対向するように配置されたLEDヘッド1000をX方向に見た断面を示す断面図である。
【0197】
露光装置としてのLEDヘッド1000は、基板としてのLED基板1010と、LED基板1010に備えられた発光素子としてのLEDを複数配列したLEDアレイ1030と、LEDアレイ1030の発光面1030aから放射された光を被照射面に結像させるロッドレンズアレイ1040と、LED基板1010とロッドレンズアレイ1040とを支持する支持部材としてのフレーム1050とを有する。
【0198】
LEDアレイ1030は、複数のLED素子と発光制御を行うためのドライバICによって構成されている。LED基板1010は、ガラスエポキシのプリント配線基板1020を有し、LEDアレイ1030がダイスボンドによりプリント配線基板1020に固定されている。また、プリント配線基板1020とLEDアレイ1030とは、プリント配線基板1020上に形成された電極パッドとLEDアレイ1030上に形成された電極パッドとが互いにワイヤボンディングされて電気的に接続されている。
【0199】
ロッドレンズアレイ1040は、LEDアレイ1030から放射された光を収束させて収束した光を被照射面に照射するレンズである。ロッドレンズアレイ1040は、複数のロッドレンズが配列された構造のレンズであり、各ロッドレンズは、中心から周辺にかけて放射状の屈折率分布を有する。フレーム1050は、鋼板などからなり、フレーム1050の搭載面1050aには、調整機構1100が備えられている。LED基板1010及びロッドレンズアレイ1040は、例えば、紫外線硬化型接着剤1090によってフレーム1050の所定の位置に接着固定される。フレーム1050とLED基板1010との間の隙間を封止材などにより封止してもよい。
【0200】
フレーム1050は、ロッドレンズアレイ1040とLED基板1010とを支持する。フレーム1050は、両端上面に感光体ドラムの表面1080aとLEDヘッド400の距離を決定する搭載面1050aを有し、搭載面1050aと感光体ドラム表面1080aとの間の距離W0を決定する。このW0の位置決め方法の一例をあげると、搭載面1050aの両端にスペーサ1070を設置し、スペーサ1070の先端部を感光体ドラム表面1080aに接触させ、フレーム1050の下部からコイルバネ1060を押し当てるように構成することができる。なお、LEDヘッド1000における構成要素の機能、材料、及び各構成要素間の関係は、実施の形態1で説明したLEDヘッド100と基本的に同様であるが、感光体ドラムの表面1080aとロッドレンズアレイ中心1040aとの間の距離W1を調整する調整機構1100を有する点が実施の形態1で説明したLEDヘッド100と異なる。調整機構1100は、例えば、偏心カムであり、フレーム1100とスペーサ1070との間に配置される。偏心カム以外の調整機構として、例えば、ねじ構造を持つ機構を採用してもよい。
【0201】
フレーム1050両端部には、付勢部材として、コイルバネ1060が配置されている。コイルバネ1060が、LEDヘッド1000を感光体ドラム1080の方向に向けて付勢し、スペーサ1070の当接面をフレーム1050上に配設された調整機構1100の上面1100aに押し当てることで、フレーム上の搭載面1050aと感光体ドラムの表面1080aまでの距離W0と、ロッドレンズアレイ中心1040aと感光体ドラムの表面1080aとの間の距離W1(設定値W1)を略一定に保つようにしている。
【0202】
図30は、LEDヘッド1000の製造工程において設定値V1を求めるための位置決め装置1500の構成を示す図である。
図28及び
図29に示される構成と同一の構成を示すものは、同一の符号を付す。
図30に示されるLEDヘッド1000は、LED基板1010の位置決めを行うため、LED基板1010とフレーム1050とが接着固定されていない点で、
図28及び
図29に示されるLEDヘッド1000と異なる。また、
図30では、ロッドレンズアレイ中心1040aを原点として、図中上方向をW軸、図中下方向をV軸とする。
【0203】
基板可動アクチュエータ1510は、LED基板1010の位置をV軸上で可動させる手段であり、LED基板1010を真空吸着や磁力などにより支持している。また、制御部1550と電気的に接続されている。MTF測定手段1520は、CCDカメラやフォトセンサなどを有し、ロッドレンズアレイ1040により収束されたLEDアレイ1030からの光を測定することができ、制御部1550と接続されている。これにより、MTFを測定する。
【0204】
測定手段可動アクチュエータ1530は、MTF測定手段1520の位置をW軸上で可動させる手段であり、MTF測定手段1520に固定されている。さらに、制御部1550と電気的に接続されている。
【0205】
LED制御回路1540は、LEDアレイ1030の発光パターンを制御する回路であり、LED基板1010及び制御部1550と電気的に接続されている。制御部1550は、全体の制御や必要な演算処理を行う。
【0206】
図31は、実施の形態10に係るLEDヘッド1000の製造工程において用いられるロッドレンズアレイ1040を含む光学系におけるMTF分布の一例を示す図である。
図31は、上記の《本発明の原理の説明》の
図2(a)を用いて説明したMTF分布を示す図であり、
図28〜30に示されるLEDヘッド1000において構成される光学系に対応するMTF分布である。
図31に示されるMTF分布は、座標系の原点をロッドレンズアレイ中心1040aの位置に対応させており、さらに、横軸Wがロッドレンズアレイ中心1040aから被照射面の方向に向かう距離を示し、縦軸Vがロッドレンズアレイ中心1040aから発光面1030aの方向に向かう距離を示している点が、
図2(a)に示されるMTF分布と異なるが、その他は
図2(a)に示されるMTF分布と同様である。したがって、
図31に示されるMTF分布における等高線の中心は点P0であり、点P0に対応する位置が共役位置(Wtc,Vtc)である。
図28〜30に示されるロッドレンズアレイ1040を含む光学系の基本的な原理は、上記の《本発明の原理の説明》において説明した原理と共通である。
【0207】
図31の直線T101は、上記《本発明の原理の説明》で説明した式3において(ΔW,ΔV)を(W,V)に置き換えて求めて算出される直線に等しい。すなわち、直線T101は、任意のVにおいてMTFが最大となる点Wの位置を表した近似直線であり、この近似直線T101上では、Wの変動に応じて生じるMTFの変動が最小となる位置であると推定される。直線T102は、点(W1,V2)及び共役位置に対応する点(Wtc,Vtc)を通る直線であり、任意のW位置において、最もMTFが高いV位置を示す近似直線である。直線T103は、W=Vを満たす直線である。なお、本実施の形態に係る発明は、MTF分布における等高線の長軸の傾きθが45度ではないロッドレンズアレイを用いた場合にも適用できる。
【0208】
図31に示されるように、W1の位置をW=Wcとして予め決定した場合、MTF曲線の極値をとるVの値は、直線T101上に位置するV=Vcの位置である。したがって、点(Wc,Vc)の位置では、W1の変動に応じて生じる結像特性の変動を最小することができる。しかしながら、点(Wc,Vc)の位置は、共役位置(Wtc,Vtc)からずれているため、共役位置(Wtc,Vtc)に調整された場合に比べてMTFが低いという問題がある。
【0209】
このようなLEDヘッド1000において、実施の形態10に係る露光装置としてのLEDヘッド1000の製造方法は、被照射面1080aとロッドレンズアレイ1040の光軸方向における中心位置1040aとの間の第1の距離(W)の設定値W1と、発光面1030aと中心位置1040aとの間の第2の距離(V)の設定値V1と求めるステップと、第1の距離(W)を第1の距離の設定値W1に設定するとともに、第2の距離(V)を第2の距離の設定値V1に設定して基板とロッドレンズアレイ1040とを支持部材1050に固定するステップとを有する。
【0210】
第1の距離の設定値W1と第2の距離の設定値V1とを求めるステップでは、第1の距離の設定値W1に対する第1の距離の変動量に応じて発生する被照射面1080aにおける結像特性の変動量が最小となる第1の距離の設定値W1と第2の距離の設定値V1とを求める。
【0211】
より具体的には、第1の距離の設定値W1と第2の距離の設定値V1とを求めるステップでは、被照射面1080aの任意の第1の位置(W
n−1)において第1の解像度(MTF)を測定し、第1の解像度が最大となる発光面の第2の位置(V
n−1)を求め、第2の位置(V
n−1)において第2の解像度を測定し、第2の解像度が最大となる被照射面の第3の位置(Wn)を求め、第3の位置(Wn)において第3の解像度を測定し、第3の解像度が最大となる発光面1030aの第4の位置(Vn)を求め、第2の位置(Vn-1)と第4の位置(Vn)との差分の絶対値が所定の条件値(Rv)以下である場合、第4の位置を第2の距離の設定値V1とし、第2の距離の設定値V1において第4の解像度を測定し、第4の解像度が最大となる被照射面1080aの位置(Wb)を第1の距離の設定値W1とする。
【0212】
一方、第2の位置(V
n−1)と第4の位置(Vn)との差分の絶対値が所定の条件値(Rv)よりも大きい場合、さらに、第4の位置(Vn)において第5の解像度を測定し、第5の解像度が最大となる被照射面1080aの第5の位置(W
n+1)を求め、第3の位置(Wn)と第5の位置(W
n+1)との差分の絶対値が所定の条件値(Rw)よりも小さい場合、第4の位置を第2の距離の設定値V1とする。
【0213】
図32は、
図30に示される位置決め装置1500を含むLEDヘッド1000の断面におけるW軸を横軸とし、V軸を縦軸としたWV空間において、MTF曲線が極値をとるW及びVの関係を示す図である。ただし、
図30では、MTF分布である等高線は示されていない。
図33は、実施の形態10に係るLEDヘッド1000の製造工程を示すフローチャートである。
【0214】
実施の形態10に係るLEDヘッド1000の製造工程をさらに
図32及び
図33を用いて具体的に説明する。
【0215】
ステップS1000(準備)では、ロッドレンズアレイ1040とフレーム1050とを紫外線硬化型接着剤1090を用いて接着固定する。
【0216】
ステップS1100では、S1100についてのサブルーチンによりV=Vbを探索する。以下では、S1100についてのサブルーチンを説明する。なお、S1100についてのサブルーチンにおける探索方法を、本明細書において「収束探索法」という。
【0217】
ステップS1110では、初期条件及び収束判定の条件を設定する。初期条件は、n=1,W0=0,V0=0,W1=Wa>>1とする。ここで、測定により得られるWn及びVnは、Wn>>1且つVn>>1であるとする。収束条件は、Rv及びRwを設定すればよい。
【0218】
ステップS1120で、WnにおいてMTFが最大となるV位置の探索を行い、得られた位置をVnとする。
【0219】
ステップS1130では、下記の式101の判定を行い、真であればステップS1140に進む。偽であればステップS1160に進みサブルーチンを終了する。
|V
n−V
n−1|>Rv …式101
【0220】
ステップS1140では、ステップS1120で得られたVnにおいてMTFが最大となるW位置の探索を行い、得られたW位置をW
n+1とする。
【0221】
ステップS1150では、下記の式102の判定を行い、真であればステップS1160に進みサブルーチンを終了する。偽であれば、ステップS1155に進む。
|W
n−W
n−1|<Rw …式102
【0222】
ステップS1155では、変数nに1を加算してステップS1120からのステップを繰り返す。MTF分布は楕円状の等高線であるため、収束判定条件を満たすまでは、本サブルーチンにより探索点(W,V)が等高線の中心へ自動的に導かれる。したがって、探索を繰り返すごとに、探索点(W,V)が共役位置(Wtc,Vtc)に近づく。なお、収束判定を探索回数を収束判定条件とする方法を採用することもできる。
【0223】
ステップS1200(Vb固定)で、ステップS1100により求められたVb位置を設定値V1として、LED基板1010とフレーム1050とを紫外線硬化型接着剤1090により接着固定する。以上によりV軸側のべストフォーカス位置を確定する。
【0224】
ステップS1300(調整機構によるWb探索)では、搭載面1050aと感光体ドラムの表面1080aとの間の距離W0を固定した状態で調整機構1100を変化させる。これにより、搭載面1050aを基準にLEDヘッド1000全体の位置が変化するため、W1のみを変化させることになる。この調整動作によりMTFを最大とするW位置の探索を行い、得られたW位置をWb(設定値W1)とする。
【0225】
ステップS1400(Wb固定)では、ステップS1300により求められたWb位置に感光体ドラムの表面1080aが位置するように調整して、調整機構1100を固定することによりWb位置(設定値W1)を固定する。以上により、ロッドレンズアレイ中心1040aと感光体ドラムの表面1080aとの間の距離W1、及びロッドレンズアレイ中心1040aとLEDアレイの発光面1030aとの間の距離V1を適切な固定位置に位置決めされたLEDヘッド1000を製造することができる。
以上の方法により製造されたLEDヘッド1000は、基板1010と、基板1010に備えられた発光素子1030と、発光素子の発光面1030aから放射された光を被照射面1080aに結像させるロッドレンズアレイ1040と、基板1010とロッドレンズアレイ1040とを支持する支持部材1050と、被照射面1080aとロッドレンズアレイ1040の光軸方向における中心位置1040aとの間の距離を調整する調整機構1100とを有し、被照射面1080aと中心位置1040aとの間の距離を第1の距離とし、第1の距離として設計された値を基準値W1(設定値W1)とし、発光面1030aと中心位置1040aとの間の距離を第2の距離とし、基準値W1(設定値W1)に対する第1の距離の変動量に応じて発生する被照射面1080aにおける結像特性の変動量が最小となる第2の距離を設定値V1としたときに、第2の距離を設定値V1に設定した状態で基板1010が支持部材1050に固定されている。ただし、第1の距離の基準値W1(設定値W1)と第2の距離の設定値V1との和は、ロッドレンズアレイ1040が持つ共役長TCと等しい場合もある。
【0226】
本実施の形態において実施したVb位置の探索における収束性についての効果を、
図32を用いて説明する。
図32に示される近似直線T101傾きをSw、近似直線T102の傾きをSvとすると、傾き比rは、r=Sv/Swで表される。また、MTF分布における等高線の中心点となる点P0との距離を
ΔWn−|Wn−Wb| …式103
とすると、n回目と(n−1)回目の距離の関係は、
Wn=r×ΔW
n−1 …式104
で表される。よって、収束回数は、
【数2】
これは、Log関数であるため、初期値が遠いほど収束性能が高い。例えば、傾き比r=0.67(Sw=1.2,Sv=0.8)として、収束判定条件をΔWn=5[μm]とする。W
1=1000[μm]とすると、本収束判定条件を満たす収束回数は、14.1回となり、W
1=1000[μm]とした場合、8.39回である。よって、初期位置における中心との距離の差は10倍であるが、回数は1.68倍にとどまる。
【0227】
実施の形態10によれば、LEDヘッド1000において、設定値W1が変動する場合であっても、設定値W1に対するロッドレンズアレイ中心1040aと感光体ドラムの表面1080aとの間の距離の変動量に応じて発生する被照射面における結像特性の変動量を最小にすることができるので、安定した解像度の結像を感光体ドラム1080上に形成可能なLEDヘッド1000を提供することができる。
また、実施の形態10によれば、LEDヘッド1000の製造工程において、被照射面1080aの位置(W位置)及び発光面1030aの位置(V位置)の両方の位置を自在に変化させることができる。このため、W位置及びV位置の各々において調整を行い、ペストフォーカス位置に位置決めすることが可能である。
また、実施の形態10によれば、位置決めが部材精度に依存しないため、正確な位置決めが可能である。
また、実施の形態10によれば、予め決定した初期条件と収束条件に基づいて、探索工程が進むにつれてW位置及びV位置をベストフォーカス位置へ導くことができる。
また、実施の形態10によれば、探索の途中においてMTF測定の誤差が生じた場合であっても、繰り返される探索工程において誤差を修正することができる。
また、実施の形態10によれば、共役長TC、共役位置(Wtc,Vtc)、及びMTF分布の傾きθなどのロッドレンズアレイの結像特性を決めるパラメータを事前に把握していない状態においても適切な位置決めを行うことができる。
【0228】
《実施の形態11》
実施の形態11に係るLEDヘッド(
図28における、構成1000に対応)の製造方法は、
図28〜30に基づいて説明する。したがって、実施の形態11に係るLEDヘッドの構成は、実施の形態10で説明したLEDヘッド1000の構成と同様である。また、実施の形態11に係るLEDヘッドの製造工程において用いる位置決め装置は、
図30に示される位置決め装置1500の構成と同様である。
【0229】
このような実施の形態11に係るLEDヘッドにおいて、露光装置としてのLEDヘッドの製造方法は、被照射面1080aとロッドレンズアレイ1040の光軸方向における中心位置1040aとの間の第1の距離(W)の設定値W1と、発光面1030aと中心位置1040aとの間の第2の距離(V)の設定値V1と求めるステップと、第1の距離(W)を第1の距離の設定値W1に設定するとともに、第2の距離(V)を第2の距離の設定値V1に設定して基板とロッドレンズアレイ1040とを支持部材1050に固定するステップとを有する。
【0230】
第1の距離の設定値W1と第2の距離の設定値V1とを求めるステップでは、第1の距離の設定値W1に対する第1の距離の変動量に応じて発生する被照射面1080aにおける結像特性の変動量が最小となる第1の距離の設定値W1と第2の距離の設定値V1とを求める。
【0231】
第1の距離の設定値W1と第2の距離の設定値V1とを求めるステップでは、発光面1030aの任意の第1の位置(Vt1)において第1の解像度(MTF)を測定し、第1の解像度が最大となる被照射面1080aの第2の位置(Wt1)を求め、発光面1030aの第1の位置とは異なる任意の第3の位置(Vt2)において第2の解像度を測定し、第2の解像度が最大となる被照射面1080aの第4の位置(Wt2)を求め、被照射面1080aの任意の第5の位置(Ws1)において第3の解像度を測定し、第3の解像度が最大となる発光面1030aの第6の位置(Vs1)を求め、被照射面1080aの第5の位置とは異なる任意の第7の位置(Ws2)において第4の解像度を測定し、第4の解像度が最大となる発光面1030aの第8の位置(Vs2)を求め、ロッドレンズアレイ1040の光軸方向における中心位置1040aから被照射面1080aに向かう方向の被照射面1080aの位置を示す座標軸を横軸(W軸)とし、ロッドレンズアレイ1040の光軸方向における中心位置1040aから発光面1030aに向かう方向の発光面1030aの位置を示す座標軸を縦軸(V軸)とする2次元直交座標系において、第1から第4の位置に対応する2次元直交座標系における点を用いて第1の近似関数(T111)を求め、第5から第8の位置に対応する2次元直交座標系における点を用いて第2の近似関数(T112)を求め、第1の近似関数(T111)と第2の近似関数(T112)との交点から求められる発光面1030aの位置(Vb)を第2の距離の設定値(V1)とし、第2の距離の設定値(V1)において第5の解像度を測定し、第5の解像度が最大となる被照射面1080aの位置(Wb)を第1の距離の設定値(W1)とする。
【0232】
図34は、
図30に示される位置決め装置1500を含むLEDヘッド1000の断面におけるW軸を横軸とし、V軸を縦軸としたWV空間において、MTF曲線が極値をとるW及びVの関係を示す図である。ただし、
図34では、MTF分布である等高線は示されていない。
図35は、実施の形態11に係るLEDヘッドの製造工程を示すフローチャートである。
【0233】
実施の形態11に係るLEDヘッドの製造工程をさらに
図34及び
図35を用いて具体的に説明する。
【0234】
ステップS2000(準備)では、ロッドレンズアレイ1040とフレーム1050とを紫外線硬化型接着剤1090を用いて接着固定する。
【0235】
ステップS2100では、2つの近似直線を求めるための4つの点を探索するステップと、その4点から第1の近似直線及び第2の近似直線を導出し、2つの近似直線の交点をVbとして決定するステップとを有する。具体的には、S2100についてのサブルーチンにより実施される。なお、S2100についてのサブルーチンにおいて、4点を求める方法を、本明細書において「4点探索法」という。
【0236】
ステップS2110では、Vt1においてMTFが最大となるW位置の探索を行い、得られた位置をWt1とする。
【0237】
ステップS2120では、Vt2においてMTFが最大となるW位置の探索を行い、得られた位置をWt2とする。
【0238】
ステップS2130では、Ws1においてMTFが最大となるV位置の探索を行い、得られた位置をVs1とする。
【0239】
ステップS2140では、Ws2においてMTFが最大となるV位置の探索を行い、得られた位置をVs2とする。なお、Vt1,Vt2,Ws1,及びWs2は、Vt1≠Vt2且つWs1≠Ws2であり、適切な値であれば任意に決めることができる。
【0240】
ステップS2150では、ステップS2110〜S2120で得られた点(Wt1,Vt1)、及び点(Wt2、Vt2)を用いて、近似直線T111を求め、ステップS2120〜S2140で得られた(Ws1,Vs1)、及び点(Ws2,Vs2)を用いて、近似直線T112求める。さらに、この2つの直線T111とT112との交点を演算により求め、Vbを導出する。なお、直線T111は、上記《本発明の原理の説明》で説明した式3において(ΔW,ΔV)を(W,V)に置き換えて算出される直線に等しい。すなわち、直線T111は、任意のVにおいてMTFが最大となる点Wの位置を表した近似直線であり、この近似直線T111上では、Wの変動に応じて生じるMTFの変動が最小となる位置であると推定される。直線T112は、任意のW位置において、最もMTFが高いV位置を示す近似直線である。
【0241】
ステップS2200(Vb固定)では、ステップS2100で求められたVb位置を設定値V1として、LED基板1010をフレーム1050に接着固定する。以上により、V軸側のべストフォーカス位置を確定する。
【0242】
ステップS2300(調整機構によるWb探索)では、搭載面1050aと感光体ドラムの表面1080aとの間の距離W0を固定した状態で調整機構1100を変化させる。これにより、搭載面1050aを基準にLEDヘッド1000全体の位置が変化するため、W1のみを変化させることになる。この調整動作によりMTFを最大とするW位置の探索を行い、得られたW位置をWb(設定値W1)とする。
【0243】
ステップS2400(Wb固定)では、ステップS2300により求められたWb位置に感光体ドラムの表面1080aが位置するように調整して、調整機構1100を固定することによりWb位置(設定値W1)を固定する。以上により、ロッドレンズアレイ中心1040aと感光体ドラムの表面1080aとの間の距離W1、及びロッドレンズアレイ中心1040aとLEDアレイの発光面1030aとの間の距離V1を適切な固定位置に位置決めすることができる。
【0244】
なお、本実施の形態においては、任意の4点により2つの近似直線を導出したが、実施の形態10で説明した工程と組み合わせて4つの点を探索することにより、2つの近似直線を導出してもよい。
【0245】
実施の形態11によれば、Vb位置(設定値V1)を求めるまでの探索回数が4回に抑えられるため、探索速度が安定し、探索速度が向上する。
【0246】
《実施の形態12》
実施の形態12に係るLEDヘッド(
図28における、構成1000に対応)の製造方法は、
図28〜30に基づいて説明する。したがって、実施の形態12に係るLEDヘッドの構成は、実施の形態10で説明したLEDヘッド1000の構成と同様である。また、実施の形態12に係るLEDヘッドの製造工程において用いる位置決め装置は、
図30に示される位置決め装置1500の構成と同様である。
【0247】
このような実施の形態12に係るLEDヘッドにおいて、露光装置としてのLEDヘッドの製造方法は、被照射面1080aとロッドレンズアレイ1040の光軸方向における中心位置1040aとの間の第1の距離(W)の設定値W1と、発光面1030aと中心位置1040aとの間の第2の距離(V)の設定値V1と求めるステップと、第1の距離(W)を第1の距離の設定値W1に設定するとともに、第2の距離(V)を第2の距離の設定値V1に設定して基板とロッドレンズアレイ1040とを支持部材1050に固定するステップとを有する。
【0248】
第1の距離の設定値W1と第2の距離の設定値V1とを求めるステップでは、第1の距離の設定値W1に対する第1の距離の変動量に応じて発生する被照射面1080aにおける結像特性の変動量が最小となる第1の距離の設定値W1と第2の距離の設定値V1とを求める。
【0249】
より具体的には、第1の距離の設定値W1と第2の距離の設定値V1とを求めるステップでは、被照射面1080aの任意の第1の位置(P101)と発光面1030aの任意の第2の位置(P101)との各々の位置を、互いの位置からロッドレンズアレイ1040の光軸方向における中心位置1040aまでの距離の和が一定に維持されるように各々の位置を変化させて第1の解像度(MTF)を測定し、第1の解像度が最大となる被照射面1080aの第3の位置(P102)及び発光面1030aの第4の位置(P102)を求め、被照射面1080aの第3の位置からの位置変化量と発光面の第4の位置からの位置変化量とが互いに等しくなるように、被照射面1080aの位置と発光面1030aの位置とをさらに変化させて第2の解像度を測定し、第2の解像度が最大となる発光面1030aの位置(Vb)を第2の距離の設定値V1とし、第2の距離の設定値V1において第3の解像度を測定し、第3の解像度が最大となる被照射面1080aの位置(Wb)を第1の距離の設定値W1とする。
【0250】
図36は、
図30に示される位置決め装置1500を含むLEDヘッド1000の断面におけるW軸を横軸とし、V軸を縦軸としたWV空間において、MTF曲線が極値をとるW及びVの関係を示す図である。
図34では、
図28〜30に示されるロッドレンズアレイ1040を含むLEDヘッド1000における光学系に基づくMTF分布が楕円状の等高線により示されている。また、
図36に示される直線T123は、WとVとを変化させてMTFを測定する場合において、WとVとを異符号同期動作させながらMTFを測定する場合の軌跡である。直線T124は、WとVとを変化させてMTFを測定する場合において、WとVとを同符号同期動作させながらMTFを測定する場合の軌跡である。
図37は、実施の形態12に係るLEDヘッド1200の製造工程を示すフローチャートである。
【0251】
実施の形態12に係るLEDヘッド1200の製造工程をさらに
図36及び
図37を用いて説明する。
【0252】
ステップS3000(準備)では、ロッドレンズアレイ1040とフレーム1050とを紫外線硬化型接着剤1090を用いて接着固定する。
【0253】
ステップS3100では、2回のWV同期動作によりMTF探索を行うことで、Vbを探索する。具体的には、S3100についてのサブルーチンにより実施する。なお、S3100についてのサブルーチンにおける探索方法を、本明細書において「2回探索法」という。
【0254】
ステップS3110では、
図30に示されるW及びVの距離を、それぞれW軸及びV軸に沿った異符号同期動作により変化させながらMTFを測定する。異符号同期動作は、直線T123上の位置(W,V)に沿ってMTF測定手段1520及び基板可動アクチュエータ1510を動作させることにより、MTF測定時のW及びVの距離の各々を変化させる。例えば、VをV軸のプラス方向に動作させる場合、WをW軸のマイナス方向に動作させる。一方、VをV軸のマイナス方向に動作させる場合、WをW軸のプラス方向に動作させる。すなわち、被照射面1080aの任意の第1の位置(P101)と発光面1030aの任意の第2の位置(P101)との各々の位置を、互いの位置からロッドレンズアレイ1040の光軸方向における中心位置1040までの距離の和が一定に維持されるように各々の位置を変化させる。このW及びVの動作は、同期運転であるので、MTF測定手段1520及び基板可動アクチュエータ1510を同時に走査し、方向は異なるが速度は同じである。任意の点P101から異符号同期動作を開始してMTF測定を行うことにより、直線T123上においてMTFが最大となる中間点P102が得られる。
【0255】
ステップS3120では、
図30に示されるW及びVの距離を、それぞれW軸及びV軸に沿った同符号同期動作により変化させながらMTFを測定する。同符号同期動作は、直線T124上の位置(W,V)に沿ってMTF測定手段1520及び基板可動アクチュエータ1510を動作させることにより、MTF測定時のW及びVの距離の各々を変化させる。例えば、VをV軸のプラス方向に動作させる場合、WもW軸のプラス方向に動作させる。一方、VをV軸のマイナス方向に動作させる場合、WもW軸のマイナス方向に動作させる。すなわち、被照射面1080aの第3の位置(P102)からの位置変化量と発光面の第4の位置(P102)からの位置変化量とが互いに等しくなるように、被照射面1080aの位置と発光面1030aの位置とを同時に変化させる。このW及びVの動作は、同期運転であるので、MTF測定手段1520及び基板可動アクチュエータ1510を同時に走査し、方向も速度も同じである。ステップS3110で得られた中間点P102から同符号同期動作を開始してMTF測定を行うことにより、直線T124上においてMTFが最大となるV位置であるV=Vbが得られる。
【0256】
ステップS3130では、ステップS3120で得られた最終点P103におけるV位置をVb(設定値V1)とする。
【0257】
ステップS3200(Vb固定)で、ステップS3100により求められたVb位置を設定値V1として、LED基板1010とフレーム1050とを紫外線硬化型接着剤1090により接着固定する。以上によりV軸側のべストフォーカス位置を確定する。
【0258】
ステップS3300(調整機構によるWb探索)では、搭載面1050aと感光体ドラムの表面1080aとの間の距離W0を固定した状態で調整機構1100を変化させる。これにより、搭載面1050aを基準にLEDヘッド1000全体の位置が変化するため、W1のみを変化させることになる。この調整動作によりMTFを最大とするW位置の探索を行い、得られたW位置をWb(設定値W1)とする。
【0259】
ステップS3400(Wb固定)では、ステップS3300により求められたWb位置に感光体ドラムの表面1080aが位置するように調整して、調整機構1100を固定することによりWb位置(設定値W1)を固定する。以上により、ロッドレンズアレイ中心1040aと感光体ドラムの表面1080aとの間の距離W1、及びロッドレンズアレイ中心1040aとLEDアレイの発光面1030aとの間の距離V1を適切な固定位置に位置決めすることができる。
【0260】
なお、本実施の形態においては、異符号同期動作を行った後に同符号同期動作を行う例を示したが、先に同符号同期動作を行った後に異符号同期動作を行うようにしても同様の結果が得られる。
【0261】
実施の形態12によれば、2回の同期動作によるMTFが最大となる位置の探索を行うことで、2回目に探索された探索点がVbとしている。例えば、1回のみの同期動作の場合、同期動作の軌跡が楕円状の等高線の中心からずれる場合があるが、本実施の形態のように2回の同期動作を行い、MTFが最大となる位置の探索を行うことで、2回目に探索された点が等高線の中心に理論上一致する。したがって、1回のみの同期動作を行う方法に比べて精度を高くすることができる。また、実施の形態12によれば、探索の回数が2回であり、高速なLEDヘッドの組立が可能である。さらに、探索の途中の探索点(例えば
図36の点P102)が自動的に決定されるため、あらかじめ、ロッドレンズアレイの特性を知ることなく、LEDヘッドの組み立てを行うことができる。
【0262】
なお、上記の各実施の形態に係る製造方法を用いて製造されたLEDヘッドは、必ずしも基準値W1(又は設定値W1)と設定値V1とが異なる例に限られず、基準値W1(又は設定値W1)と設定値V1との和が、ロッドレンズアレイが持つ共役長と等しくなる場合もある。
【0263】
≪実施の形態13≫
実施の形態13においては、本発明が適用された露光装置を静電潜像形成用の露光用光源装置として備えた画像形成装置を説明する。
図38は、実施の形態13に係る画像形成装置1300の縦断面形状を示す概略構成図である。画像形成装置1300は、例えば、電子写真方式を採用するカラープリンタである。
図38に示されるように、画像形成装置1300は、主要な構成として、用紙などの記録媒体P上に現像剤像(トナー像)を形成する画像形成部1310K,1310Y,1310M,1310Cと、記録媒体Pを供給する媒体供給部(給紙部)1330と、記録媒体Pを搬送する媒体搬送部1340と、転写ローラ(転写装置)1350と、トナー像を記録媒体P上に定着させる定着器1360と、記録媒体Pを画像形成装置1300の外部に排出する媒体排出部(排紙部)1370とを有する。なお、画像形成部の数は、3以下又は5以上であってもよい。また、画像形成装置1300は、露光装置を有する装置であれば、複写機、ファクシミリ装置、多機能周辺装置(MFP)などのような装置にも適用可能である。
【0264】
媒体供給部1330は、媒体カセット(用紙カセット)1331と、媒体カセット1331内に積載された記録媒体Pを1枚ずつ繰り出す給紙ローラ(ホッピングローラ)1332と、媒体カセット1331から繰り出された記録媒体Pを搬送するローラ1333とローラ対1334を有する。画像形成部1310K,1310Y,1310M,1310Cは、記録媒体P上にブラック(K)色のトナー像、イエロー(Y)色のトナー像、マゼンタ(M)色のトナー像、及びシアン(C)色のトナー像をそれぞれ形成する。画像形成部1310K,1310Y,1310M,1310Cは、媒体搬送路に沿って媒体搬送方向の上流側から下流側に向けて並んで配置されている。画像形成部1310K,1310Y,1310M,1310Cは、着脱自在に形成された各色用の画像形成ユニット1312K,1312Y,1312M,1312Cをそれぞれ有している。画像形成ユニット1312K,1312Y,1312M,1312Cは、トナーの色が異なる点以外は、互いに基本的に同一の構造を有する。また、画像形成部1310K,1310Y,1310M,1310Cは、各色用の露光装置1311K,1311Y,1311M,1311Cをそれぞれ有している。露光装置1311K,1311Y,1311M,1311Cは、上記実施の形態1から5のいずれかで説明した露光装置である。露光装置1311K,1311Y,1311M,1311Cには、各色の画像データに基づく駆動信号がそれぞれ入力され、入力された駆動信号に応じた露光用の光を感光体ドラム1313に照射する。
【0265】
画像形成ユニット1312K,1312Y,1312M,1312Cの各々は、回転可能に支持された像担持体としての感光体ドラム1313と、感光体ドラム1313の表面を一様に帯電させる帯電部材としての帯電ローラ1314と、露光装置1311K,1311Y,1311M,1311Cによる露光によって感光体ドラム1313の表面に静電潜像を形成した後に、感光体ドラム1313の表面にトナーを供給する現像装置1315と、クリーニングブレード1316とを有する。現像装置1315は、トナー収容部1351と、現像ローラ1354と、現像ローラ1354にトナーを供給する供給ローラ1355と、現像ローラ1354の表面のトナー層の厚さを規制するトナー規制部材としての現像ブレード1356と、トナー収容部1351内に収容されているトナーの量(すなわち、トナーの残量)に対応する信号を現像剤量検出部1357とを有する。なお、現像装置1315に新しいトナーを補充するトナーカートリッジをさらに搭載することもできる。
【0266】
媒体搬送部1340は、記録媒体Pを静電吸着して搬送する搬送ベルト(転写ベルト)1343と、駆動部により回転されて搬送ベルト1343を駆動するドライブローラ(駆動ローラ)1341と、ドライブローラ1341と対を成して搬送ベルト1343を張架するテンションローラ(従動ローラ)1342と、搬送ベルト1343上に残留したトナーを掻き取ってクリーニングする転写ベルトクリーニングブレード1344と、転写ベルトクリーニングブレード1344により掻き取られることで回収されたトナーを収容する廃棄トナータンク1345とを有する。転写ローラ1350は、搬送ベルト1343を挟んで画像形成ユニット1312K,1312Y,1312M,1312Cの各々の感光体ドラム1313に対向して配置されている。転写ローラ1350によって、画像形成ユニット1312K,1312Y,1312M,1312Cの各々の感光体ドラム1313の表面に形成されたトナー像は、媒体搬送路に沿って矢印方向に搬送される記録媒体Pの上面に順に転写されて、複数のトナー像が重ねられたカラー画像が形成される。定着器1360は、互いに圧接し合う一対のローラ1361,1362を有する。ローラ1361は、加熱ヒータを内蔵するヒートローラであり、ローラ1362はローラ1361に向けて押し付けられる加圧ローラである。転写ローラ1350によって未定着のトナー像を有する記録媒体Pは、定着器1360の一対のローラ1361,1362間を通過し、トナー像は加熱及び加圧されて記録媒体P上に定着される。媒体排出部1370は、互いに圧接し合って対向する一対のローラから成る搬送ローラ対1371を有する。
【0267】
実施の形態13に係る画像形成装置1300の露光装置は、実施の形態1から12のいずれかの露光装置であるので、画像形成装置1300によって記録媒体に画像を形成する際の印刷品質を高めることができる。
【0268】
なお、上記の各実施の形態においては、上記の《本発明の原理の説明》に基づいて、発光素子を有するLEDヘッド及びLEDヘッドの製造方法について説明したが、発光素子を受光素子とし、被照射面を読み取り面とすれば、フラット型のイメージスキャナヘッドにも適用可能である。フラット型のイメージスキャナヘッドに適用した場合には、ロッドレンズアレイと読み取り面との間の距離が変化した場合であっても、受光素子に安定した像を形成することができる。また、上記の各実施の形態に係るLEDヘッドのLED基板、フレーム、及び調整機構等は、上記で説明した例に限定されない。さらに、上記で説明した適切な被照射面、ロッドレンズアレイ、及び発光面の位置に調整できれば、LEDヘッドの組み立て方法は上記で説明した例に限定されない。