(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
先ず、ダイヤモンドについて説明する。ダイヤモンドは炭、石墨等、一般にカーボンと同じ炭素の集合体で化学記号は「C」で、元素番号16である。しかし、カーボンとの違いは、ダイヤモンドの結晶格子がグラファイトの結晶格子と比べると元素間距離が半分であることである。外観的には、グラファイト色の真っ黒でなく、燦然と輝く透明結晶である。
【0003】
ダイヤモンド結晶は、以前は、炭素が30,000気圧、3,000℃の環境で熔融され、地殻の急激な変化(減圧)によって、グラファイトや気体となって拡散しない内に凝固し、透明の結晶となったと考えられていた。
【0004】
作り出されている。特定の元素をドーピングすることで導電性ダイヤモンドも開発されている。さらには、ダイヤモンド微粉体を特殊なバインダーにより高温高圧を加えてダイヤモンドの性質を変えることなく、多結晶ダイヤモンド(ポリ・クリスタリン・ダイヤモンド=PCD)の製造も行われている。
【0005】
天然、人造も含め、今日知られているダイヤモンドの主な物理、化学的性質は次の通りである。
【0006】
1)結晶型
ダイヤモンド結晶には、
図1−
図4などに示すような等軸晶形(正方晶形)で、複数の異なる結晶形状や複雑な形状が存在する。
図1に示すヘキサへドロン型(サイコロ状六面体)ダイヤモンド結晶が、天然に希に存在する。
図1(a)は、キューブ状の正ヘキサへドロン型ダイヤモンド結晶1aで、殆ど産出されないが、極希に天然から産出される。面方位は(1.0.0.)である。
図1(b)は、二十二面体のオクタ・オクタヘキサへドロン型ダイヤモンド結晶1bで、(1.0.0.)面が大きく、(1.1.〇.)面と(1.1.1.)面が大小に変化し、キュービック状になったりする。
図1(c)のオクタ・オクタヘキサへドロン型ダイヤモンド結晶1cは、表面が環境変化で燃焼したときの様子を表している。
このように、ヘキサへドロン型ダイヤモンド結晶にも多様な結晶構造が知られている。
図2に示すオクタへドロン(八面体・正三角形の八面、異型もある)型ダイヤモンド結晶は、ダイヤモンド結晶の主たる結晶形状である。
図2(a)は、全ての結晶面が(1.1.1.)面の正オクタへドロン型ダイヤモンド結晶2aである。
図2(b)は、正八面体を(1.1.0.)面方位に延長した異形オクタへドロン型ダイヤモンド結晶2bである。
図2(a)の正オクタへドロン型ダイヤモンド結晶2aの面方位は、(1.1.1.)面で、八面全ての面に平行に剪開性を有する。面研磨及び仕上げは、至難の技とされている。
図3に示すドデカへドロン型(十二面体・菱形十二面、異型もある)ダイヤモンド結晶も、ダイヤモンド結晶の主たる結晶形状である。
図3(a)のドデカへドロン型ダイヤモンド結晶3aは、球状体、扁平な形で、天然から産出される。
図3(b)の異形ドデカへドロン型ダイヤモンド結晶3bは、全ての面が、(1.1.0.)面である。
図3(a)に示すドデカへドロン型ダイヤモンド結晶3aの面方位は(1.1.0.)面で、天然においては、球状体よりも扁平型で産出されることが多い。
図4(a)(b)に示すヘキサ・オクタへドロン型ダイヤモンド結晶4a、4bは、六・八面体で、人造ダイヤモンド結晶の主流である。人造ダイヤモンド結晶でも、最近は、500pce(粒)/カラット(200mg)ぐらいの小粒の人造ダイヤモンドでは、オクタへドロン型の存在も確認されている。ヘキサ・オクタへドロン型ダイヤモンド結晶は、従来型の工具用高圧合成ダイヤモンドの主たる結晶形状である。天然から産出されるダイヤモンド結晶でもヘキサ・オクタへドロン型ダイヤモンド結晶も多い。人造ダイヤモンドでも、近年、触媒や加圧・温度が変えられて、天然とか変わらない品質のダイヤモンドも作製されるようになった。
天然産出の自然結晶では、環境や成分等の多種多様な条件により多面体構造で産出されることもあるが、工業的に目にする多面体は、主に上記構造である。
2)薬品耐性
通常の酸、アルカリに犯されない。
3)燃焼温度
大気中では、好条件で650℃から、一般的には700℃から燃焼が始まる。真空中2000℃において原子間結合の緩みで石墨に移行する。
4)硬度
世界中の物質の中で一番硬い。なお、結晶方位によって多少ムラが有る。
5)伝熱性
世界中の物質の中で一番熱伝達速度が速い。
6)音の伝達速度
世界中の物質の中で一番音の伝達速度が速い。
7)化学的性質
燃焼している物質中、700℃以上の高温で溶融されている化学物質中にダイヤモンドを投入すると、大気中の酸素と反応し、燃焼してしまう。しかし、このような高温条件で燃焼する以外は安定な物質として評価されていた。
【0007】
他方、ダイヤモンドは、装飾品としてだけに留まらず、工業方面にもその用途が拡散されている。超精密工業製品の部品加工から、道路カッターなどの土木作業の工具としての多大の需要がある。
【0008】
天然に産するダイヤモンドは硬度、強度に優れているが、特に医学系(手術用メス、ミクロトーム等)、又は理化学系(ヒートシンク、耐薬品性窓、音響系等)、更には工業用と云っても精密金属切削系(時計部品や超精密部品の表面仕上げ等)においては、装飾宝石用ダイヤモンドよりも性能や品質において高品位の物が要求される場合が多い。
【0009】
しかし、従来ダイヤモンドは金属との完全な接合は不可能と世界的に認知されていた。そのため使用される原石の大きさを小型にして鑞接した形態で使用することが不可能であった。工具製作に当たっては、固定を目的としてカシメや構造的に大型化した押さえ方式を採用しなければならなかった。
【0010】
更に砥粒に至っては固定砥粒型と称しても、固定している金属マトリックスや有機合成接着性マトリックスに完全な結合は成されていないために、工具として加工時の衝撃により、把握力が低下し、作業半ばで脱落廃棄され、作業能力の低下につながり、かつ不経済的な使用の方法が主流であった。
【0011】
上述にように、従来、ダイヤモンドは化学的不活性で有ると評価されていた。またあらゆる金属と反応せず、金属マトリックス中においてダイヤモンドは加工の衝撃により用半ばにして容易に脱落してしまう。
【0012】
したがって、ダイヤモンドを接合した工具類において、大型、小型を問わず、十分な使用強度、耐用時間を可能にする技術開発が待ち望まれていた。
【0013】
そのような要望下において、発明者は、特許文献1で「ダイヤモンド表面に化学的反応により非剥離的に金属を被覆する方法」で非剥離性金属被覆ダイヤモンドを見出した。そして、特許を受けている。特許文献1において、ダイヤモンドと金属が化学反応(共存反応)により化学的結合(共存結合)が起こり、ダイヤモンドに化学的活性があることを示した。
【0014】
一般に、異種元素の結合では、殆ど基の元素の性質を失い、反応する相手が全く異なることになる。例えば、酸化アルミニウム(Al
2O
3)はアルミニウムが酸化されて生成されているが、アルミニウムは金属にしては低融点、すなわち約660℃で溶解し、良好な導電性を示す。一方、アルミニウムに酸素が結合した酸化アルミニウムでは、融点が2050℃と跳ね上がり、導電性は0に等しくなる。このように、反応前の物質と異種間反応生成物では、似ても似つかない性質になる。
【0015】
他方、特許文献1の技術による非剥離性金属被覆ダイヤモンドは、ダイヤモンドと金属被覆の結合面を境に、ダイヤモンド部分はダイヤモンドの性質を維持し、金属被覆部分はその金属本来の性質を維持したままである。そして、金属被覆部分に他の金属との鑞接が可能である。
【0016】
そして、特許文献1の非剥離性金属被覆ダイヤモンドのダイヤモンドと被覆した金属の被覆強度を測定するため、ダイヤモンド平面に垂直に金属棒(φ2mm)を鑞付けし、25kg以上力での引っ張りテスト(5例)を行った。その結果、金属被覆と金属棒の鑞接部、ダイヤモンドと金属被覆の結合面ともに非剥離、分離することがなく、ダイヤモンドが抉れた。5例すべてのテストとも同じ現象であった。結局ダイヤモンドと金属被覆の結合強度を測定することはできなかった。
【0017】
鑞付けは、金属同士を接合するもので、ダイヤモンドに金属は決して鑞付けできない。他方、特許文献1の非剥離性金属被覆ダイヤモンドでは、表面の金属被覆上に他の金属を鑞接することができ、鑞接部分以外の金属被覆を研磨するとダイヤモンドの透明さと堅さが露出し、ダイヤモンドの性質を維持していることが分かる。特許文献1の技術では、ダイヤモンドと金属被覆はお互いの性質を変えることなく強固に結合していると考えられた。
【0018】
特許文献1の非剥離性金属被覆ダイヤモンドでは、ダイヤモンドと金属被覆の性質を変えることなく、結合面で強固に結合していることから、その反応を共存反応と呼び、反応によって生成された結合を共存結合と呼ぶこととした。
【0019】
特許文献1の発明は、レコード針を供給していた、発明者の父小倉嘉右衛門が高価なダイヤモンド針を、必要とされている大きさのダイヤモンドを金属棒の先端に結合することで、需要家に安価にダイヤモンド針を購入して貰うおうと着想されたものである。そして、発明者がダイヤモンドを金属棒に結合させたレコード再生用のダイヤモンド針の具現化に際して、見出され、完成されるに到った発明である。
【0020】
なお、特許文献1の非剥離性金属被覆ダイヤモンドでは、鑞接が失敗する欠点があった。その欠点は、金属被覆がダイヤモンドに強固に結合しているため、ダイヤモンドと鑞接した金属との膨張係数の違いが原因で発現し、加熱鑞接後の冷却時に発生した。それは鑞接する単石が大きくなるに従って頻発した。したがって、ダイヤモンドの膨張係数に近い金属素材を鑞接する金属として選択することが必要であった。
【0021】
特許文献1の発明によって、ダイヤモンドを工業用に用いようとする殆ど全ての製品の考え方を変えるに到った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
しかしながら、特許文献1では、非剥離性金属被覆ダイヤモンドの具体的な応用例を示すことはできなかった。
【0024】
そこで、本発明は、ダイヤモンド表面に化学的反応により非剥離的に金属を被覆する方法で得られた非剥離性金属被覆ダイヤモンドの工具類への具体的応用方法を提供することを目的とするものである。より詳しくは、医学系、理化学用及び工業用ダイヤモンド(天然、人造ダイヤモンド全般)に、非剥離性金属被覆を施すことにより、より高率な作業性、操作性、経済性等が得られる工具類や部品を提供して、社会発展に貢献することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明は、上記の課題を解決するために、
(1)
金属を非剥離的にダイヤモンド
表面に被覆した非剥離性金属被覆ダイヤモンドを、工具類の金属部分に接合したことを特徴とするダイヤモンド接合工具類。
(2)
前記非剥離性金属被覆ダイヤモンドを、ダイヤモンドとCr金属粉と酸化Cr粉の混合粉または単体のCr金属粉のいずれかの金属粉と焼き締まりを防ぐとともに冷却混合物の崩壊性を促進させる崩壊助剤を混ぜて混合物とし、加熱し、前記金属粉とダイヤモンド表面を大気中で化学反応させ、前記混合物を冷却し、金属被覆されたダイヤモンドを分離回収して得る非剥離性金属被覆ダイヤモンドとしたことを特徴とする(1)に記載のダイヤモンド接合工具類。
(3)
前記崩壊助剤を、1150℃から1160℃においてダイヤモンドと共存しても、ダイヤモンドと反応せず、共存するCr金属粉及び/又は酸化Crとダイヤモンドの化学反応を阻害しない崩壊助剤としたことを特徴とする(2)に記載のダイヤモンド接合工具類。
(4)
前記崩壊助剤が、炭化ケイ素、酸化ケイ素、タングステン、炭化タングステン、酸化クロム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、立方晶窒化ホウ素、酸化ジルコニアの内から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする(3)に記載のダイヤモンド接合工具類。
(5)
前記金属粉が、Cr金属粉であって、Cr金属粉と前記崩壊助剤を、1:1〜1:5の重量割合で配合したことを特徴とする(1)乃至(4)に記載のダイヤモンド接合工具類。
(6)
前記ダイヤモンドを、非剥離性金属被覆を必要としない箇所に金属被覆防止剤加工を施したダイヤモンドとしたことを特徴とする(1)乃至(5)に記載のダイヤモンド接合工具類。
(7)
前記金属被覆防止剤を、純水30%と水ガラス70%の溶液に崩壊助剤の粉末を混和した金属被覆防止剤としたことを特徴とする(6)に記載のダイヤモンド接合工具類。
(8)
(1)〜(7)に記載のダイヤモンド接合工具類が、前記工具類の金属部分をスクライバーポイントの台金とし、前記台金の端部に前記非剥離性金属被覆ダイヤモンドの金属被覆部を鑞接してなることを特徴とするスクライバーポイント。
(9)
(1)〜(7)に記載のダイヤモンド接合工具類が、前記工具類の金属部分をピボット軸受けの軸とし、前記軸の端部に前記非剥離性金属被覆ダイヤモンドの金属被覆部を鑞接してなることを特徴とする鑞接型ピボット軸受け。
(10)
(1)〜(7)に記載のダイヤモンド接合工具類が、前記工具類の金属部分をピボットの軸とし、前記軸の端部に、弧状に窪んだピボット軸の受け面を備えた前記非剥離性金属被覆ダイヤモンドの金属被覆部を鑞接してなることを特徴とする鑞接型ピボット軸受け。
(11)
(1)〜(7)に記載のダイヤモンド接合工具類が、前記工具類の金属部分を金属センサの軸とし、前記軸の端部に前記非剥離性金属被覆ダイヤモンドの金属被覆部を鑞接してなることを特徴とする測定端子。
(12)
(1)〜(7)に記載のダイヤモンド接合工具類が、前記工具類の金属部分をフォーミングドレッサーの台金とし、前記台金の端部の溝に前記非剥離性金属被覆ダイヤモンドの金属被覆部を鑞接してなることを特徴とするフォーミングドレッサー。
(13)
(1)〜(7)に記載のダイヤモンド接合工具類が、前記工具類の金属部分を、センサの軸とし、前記軸の端部に、球形の前記非剥離性金属被覆ダイヤモンドを複数個配置するとともに前記金属被覆部で鑞接した金属素材を接合してなることを特徴とする測定端子。
(14)
(1)〜(7)に記載のダイヤモンド接合工具類が、前記工具類の金属部分を、センサの軸とし、前記軸の端部に、板状の前記非剥離性金属被覆ダイヤモンドを複数個敷き詰めるとともに前記金属被覆部で鑞接してなることを特徴とする測定端子。
(15)
(1)〜(7)に記載のダイヤモンド接合工具類が、前記工具類の金属部分を揺動面の台金とし、前記台金の上面の溝に、或いは前記台金に接合される金属素材の溝に、球形の前記非剥離性金属被覆ダイヤモンドを複数個配置するとともに前記金属被覆部で鑞接した上で研磨して平坦面を形成してなることを特徴とするダイヤモンド揺動面。
(16)
(1)〜(7)に記載のダイヤモンド接合工具類が、前記工具類の金属部分を揺動面の台金とし、前記台金の上面に板状の前記非剥離性金属被覆ダイヤモンドを複数個敷き詰めるとともに前記金属被覆部で鑞接した上で研磨して平坦面を形成してなることを特徴とするダイヤモンド揺動面。
(17)
(9)に記載の鑞接型ピボット軸受けの前記非剥離性金属被覆ダイヤモンドの上面に断面V字の溝を設け、前記ピボット軸の先端に円錐形に成型した非剥離性金属被覆ダイヤモンドを鑞接したことを特徴とするV字エンドストーン及びピボット軸受け構造。
(18)
(9)に記載の鑞接型ピボット軸受けの前記非剥離性金属被覆ダイヤモンドの上面に断面U字の溝を設け、前記U字の溝に硬球を載置し、前記ピボット軸の先端に、断面略V字状の溝を設けた非剥離性金属被覆ダイヤモンドを鑞接し、前記前記非剥離性金属被覆ダイヤモンドのV字の溝を前記硬球に接触させたことを特徴とするU字エンドストーン及びピボット軸受け構造。
(19)
穴が穿設されたリングジュエルと、前記穴に挿入され回転保持される回転軸と、前記回転軸の先端と接触し保持する非剥離性金属被覆ダイヤモンドを台金に鑞接したエンドストーンと、前記エンドスートの底面に配置され弾性体と、前記エンドストーン及び弾性体を収納する容器と、からなることを特徴とするリングジュエル及びエンドストーン構造。
(20)
(1)〜(7)に記載のダイヤモンド接合工具類が、前記工具類の金属部分を軸芯測定用軸受け装置の軸受け台とし、前記軸受け台の端部を斜めに切り欠いた面に板状の前記非剥離性金属被覆ダイヤモンドの金属被覆部を軸芯測定用軸受けとして鑞接してなることを特徴とする軸芯の真円度及び偏心度を測定する軸芯測定用軸受け台。
(21)
(20)に記載の軸芯測定用軸受け台を
、2台
、前記斜め
に切り欠いた面を対向させて配置し、V字溝を形成し
て前記V字溝に軸芯を載置し、前記軸芯を回転させて、
前記軸芯の真円度及び偏心度を測定することを特徴とする軸芯測定装置。
(22)
前記V字溝の上部に、前記軸測定用軸受けを配置し、3面で前記軸芯を保持することを特徴とする(21)に記載の軸芯測定装置。
(23)
(1)〜(7)に記載のダイヤモンド接合工具類が、前記工具類の金属部分を回転軸の表面とし、前記回転軸の表面に球状の前記非剥離性金属被覆ダイヤモンドの金属被覆部を鑞接するとともに研磨し、仕上面を形成し、軸受けである筒に挿通して回転させることを特徴とする非剥離性金属被覆ダイヤモンドを備える回転軸。
(24)
(1)〜(7)に記載のダイヤモンド接合工具類が、前記工具類の金属部分を、軸受けの内部空洞の表面とし、前記軸受けの空洞の表面に球状の前記非剥離性金属被覆ダイヤモンドの金属被覆部を鑞接するとともに研磨し、仕上面を形成し、回転軸を挿通して回転保持することを特徴とする非剥離性金属被覆ダイヤモンドを備える軸受け。
(25)
大熱容量金属部と、前記大熱容量金属部に金属被覆部を鑞接した非剥離性金属被覆ダイヤモンドと、前記非剥離性金属被覆ダイヤモンドのダイヤモンド面に載置されるICと、からなることを特徴とするパワーICのヒートシンク。
(26)
感温センサを内蔵したセンサと、前記センサの金属製端部に金属被覆部を鑞接した非剥離性金属被覆ダイヤモンドと、からなることを特徴とする温度測定センサ。
(27)
金属製の感温センサと、前記感温センサの金属部に金属被覆部を鑞接した非剥離性金属被覆ダイヤモンドとからなり、前記非剥離性金属被覆ダイヤモンドを被測定物に直接接触させて、被測定物流体の温度を測定することを特徴とする温度測定センサ。
(28)
レコードの音溝に接する三角錐又は三角柱で底部に非剥離的に被覆された金属被覆を備える針先である非剥離性金属被覆ダイヤモンドと、両端に非剥離的に金属被覆を備えるダイヤモンド製のカンチレバーと、コイルボビンとからなり、前記カンチレバーの一端に前記針先である非剥離性金属被覆ダイヤモンドの前記金属被覆と前記カンチレバーの金属被覆を接合し、他端には前記金属被覆と前記コイルボビンを鑞接して備えることを特徴とするダイヤモンドカンチレバー。
(29)
(1)〜(7)に記載のダイヤモンド接合工具類が、前記工具類の金属部分を、半田ごての金属棒の先端部とし、前記金属棒の先端部に所望の形状に成形した前記非剥離性金属被覆ダイヤモンドの金属被覆部を鑞接したことを特徴とする半田ごて先端。
(30)
半田素材に、非剥離性金属被覆ダイヤモンドを混合したことを特徴とする半田。
(31)
(30)に記載の半田を、ドロップ形状又は棒状に成型したことを特徴とする半田。
(32)
ダイヤモンド表面に導電性金属で回路線を描き、前記ダイヤモンドと前記回路線で非剥離性金属被覆ダイヤモンドを形成し、さらに前記回路線に金を鑞接したことを特徴とする非剥離性金属被覆ダイヤモンド回路。
(33)
ダイヤモンド表面に金属で絵を描き、前記ダイヤモンドと前記金属で非剥離性金属被覆ダイヤモンドを形成したことを特徴とする非剥離性金属被覆ダイヤモンド描画。
(34)
内部空間を備える金属製の隔壁間に嵌められる非剥離性金属被覆ダイヤモンド窓であって、
前記隔壁に接触する部分に金属被覆部を備え、前記隔壁に前記金属被覆部で鑞接され、前記内部空間を監視可能としたことを特徴とする非剥離性金属被覆ダイヤモンド窓。
(35)
(1)〜(7)に記載のダイヤモンド接合工具類が、前記工具類の金属部分を、回転軸の端面の切り欠き境界とし、前記境界に、角棒状の前記非剥離性金属被覆ダイヤモンドを複数個配置するとともに前記金属被覆部で鑞接してなることを特徴とする非剥離性金属被覆ダイヤモンドキリ。
(36)
(1)〜(7)に記載のダイヤモンド接合工具類が、前記工具類の金属部分を、回転軸の端面とし、前記端面にバランサーを削り残し、前記バランサーとバランスのとれた位置に前記非剥離性金属被覆ダイヤモンドを前記金属被覆部で鑞接してなることを特徴とする非剥離性金属被覆ダイヤモンドドリル。
の構成とした。
【0026】
なお、ダイヤモンドに非剥離的に金属被覆した非剥離性金属ダイヤモンドの作製方法については、特許文献1に詳しく開示されている。
その発明の要点は、
(1)
ダイヤモンドに非剥離性の金属被覆を大気中で施す方法であって、ダイヤモンドとCr金属粉と酸化Cr粉の混合粉または単体のCr金属粉のいずれかの金属粉と崩壊助剤及び加熱装置を準備する第一工程と、前記第一工程で準備した金属粉と崩壊助剤とダイヤモンドを混合し容器に閉じ込める第二工程と、前記第二工程で用意した容器を加熱し、前記金属粉とダイヤモンド表面を化学反応させる第三工程と、前記第三工程で加熱された容器を加熱装置から取りだして冷却し、前記ダイヤモンドと金属粉と崩壊助剤の混合物を冷却する第四工程と、前記冷却混合物から金属被覆されたダイヤモンドを分離回収する第五工程とからなり、前記崩壊助剤の作用により焼き締まりを防ぐとともに冷却混合物の崩壊性を促進させることを特徴とするダイヤモンド表面に化学的反応により非剥離的に金属を被覆する方法(請求項1)、
(2)
前記崩壊助剤を、1150℃から1160℃においてダイヤモンドと共存しても、ダイヤモンドと反応せず、共存するCr金属粉及び/又は酸化Crとダイヤモンドの化学反応を阻害しない崩壊助剤としたことを特徴とする(1)に記載のダイヤモンド表面に化学的反応により非剥離的に金属を被覆する方法、
(3)
前記崩壊助剤が、炭化ケイ素、酸化ケイ素、タングステン、炭化タングステン、酸化クロム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、立方晶窒化ホウ素、酸化ジルコニアの内から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする(2)に記載のダイヤモンド表面に化学的反応により非剥離的に金属を被覆する方法、
(4)
前記金属粉がCr金属粉であって、Cr金属粉と前記崩壊助剤を、1:1〜1:5の重量割合で配合したことを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のダイヤモンド表面に化学的反応により非剥離的に金属を被覆する方法、
(5)
前記第一工程のダイヤモンドを、非剥離性金属被覆を必要としない箇所に金属被覆防止剤加工を施したダイヤモンドとしたことを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のダイヤモンド表面に化学的反応により非剥離的に金属を被覆する方法、
(6)
前記金属被覆防止剤を、純水30%と水ガラス70%の溶液に崩壊助剤の粉末を混和した金属被覆防止剤としたことを特徴とする(5)に記載のダイヤモンドの非剥離性金属被覆方法、
(7)
前記第五工程の後に、ダイヤモンドの非剥離性金属被覆部分に金属を接合する第六工程とからなることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のダイヤモンドと金属の接合方法(請求項7)というものである。
【0027】
非剥離性金属被覆処理の前処理、後処理としては、以下のスキームによる。
(1)非剥離性金属被覆を施す素材を用意する。
(A)単石利用で、目的に応じて形状、表面加工を施し、
a)部分被覆が必要なダイヤモンドか、
b)全面に被覆可能なダイヤモンドか、
(B)砥粒などの使い方で、全面被覆可能なダイヤモンドか、
の条件仕分けによってダイヤモンド素材を用意する。
(2)(1)のa)については必要な箇所に金属被覆を施すために、被覆不要なところにレ ジストを施す。
(3)以上で用意出来たダイヤモンド素材を特許文献1に示す方法によって非剥離性金属被覆処理を行う。
(4)(1)のa)とb)に基づく(3)で得た非剥離性金属ダイヤモンドは、台金や容器に銀鑞又は半田で接合し、工具として更に必要な研磨工程や仕上げ工程に送る。
(5)(1)の(B)に基づく(3)で得た非剥離性金属ダイヤモンドは、汎用工具などの砥粒としての素材とし(メッシュ、ミクロンを含む)工具製造工程に提供する。
【発明の効果】
【0028】
本発明は上記構成であるため、以下の効果を発揮する。特許文献1に開示されているように、ダイヤモンドの高温での化学的活性性の発見、その性質を利用した非剥離性金属の被覆法の発明により、ダイヤモンドの利用方法が大きく変わる。従来のダイヤモンド原石の利用において、カシメや固定のために高価な大型の原石を使用することなく、直接接合可能である非剥離性金属ダイヤモンドを利用して、同品質のダイヤモンドを、より安価で小型化が可能になる。砥粒の場合は、鑞接や半田付けにより、金属と硬く結合することが可能で、作業や経済性が大きく向上する。
【0029】
工具などは、非剥離性金属被覆ダイヤモンドを従来の成分に適量加えるだけで、寿命、被加工物の精度や工具の加工量の大幅改善、長寿命化など、生産性、経済性などを大幅に改善することを期待される。又従来のダイヤモンド砥粒の減量化が可能になる。
【0030】
即ち、ダイヤモンドと金属が、化学反応により非剥離的に強固に結合した非剥離性金属被覆ダイヤモンドを工具に用いることで、脱落、磨耗が少なく、工具類の耐用時間が飛躍的に長くなり、極めて経済的である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、添付の図面を参照し、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0033】
先ず、それら実施例の概要について説明する。
(1)工具
図5―
図15は、非剥離性金属被覆ダイヤモンドを鑞接した本発明の工具、部品の一例である。
図5―
図8は単石工具の例であり、
図9―
図15は複数の非剥離性金属被覆ダイヤモンド粒を整列配置、鑞接した工具、部品の例である。複数個の非剥離性金属被覆ダイヤモンドを配置する場合には、結晶面方位を加味することもあるが、用途によっては結晶方位を考慮しなくてもよい。
【0034】
単石の非剥離性金属被覆ダイヤモンドを鑞接した工具としては、レコード再生針、毛書きペン、篆刻ペン、各種彫刻刀、医療用メス、剣先、バイト、ドレッサー、スクライバ−ポイント(
図5)、ピボット(
図6)、測定端子(
図7)、単石ホーミングドレッサー(
図8)等が例示できる。特許文献1の非剥離性金属被覆ダイヤモンドを本発明のように工具類の金属部分に鑞接することにより、それら工具の小型化が可能なる。そして、工具類を小型することにより、精密部品の小型化も可能になる。
【0035】
従来の単石工具は、ダイヤモンドと金属台金が接合不可だったためにダイヤモンドを大型にして、押さえ金具で固定したり、粉末冶金などで固定をサポートしたりして作製されており、小型化が不可能であった。
【0036】
複数の非剥離性金属被覆ダイヤモンド粒を整列配置、鑞接した例としては、多石フォーミングドレッサー(
図8)、三角四角六角などそれぞれ同一寸法の一辺を持ち、整列又は交差して並べることにより、平面を構成する研磨された面を持つ素材(
図9)などが例示できる。特に、膨張係数の違いで大型化が不可能な場合に使用する。例えば、摺動面(
図10)、エンドストーン(
図11)、二面を60°〜120°のV型として前後に配置して軸芯測定面軸受け(
図14)、三面以上を使い軸の両側に設置して三点支持以上の回転軸受け(
図14)などがある。
【0037】
表面が光沢面で同一寸法に仕上げられた球体の平面、細密充填様に整列させ球径の40〜45%近くまで鏡面研磨することで仕上がる平面、軸や軸受け(
図15)の場合には軸径や内径を考慮し軸の外径表面及び軸受け内面などに、非剥離性金属被覆ダイヤモンドを鑞付けし、研磨する。
【0038】
(2)熱関係、音響関係、電気関係、窓関係
図16−
図20は、熱関係、音響関係、電気関係、窓関係へ非剥離性金属被覆ダイヤモンドの鑞接を応用した例である。
図16、
図17は、温度測定用の感温センサ、
図18は音響用感知レバー、レコード再生針、
図19はパワーIC用ヒートシンク、
図20は半田ごて先端部への応用例である。
【0039】
(A)非剥離性金属被覆ダイヤモンドのIC等のヒートシンク、熱センサ端子としての利用
ダイヤモンドの熱伝達係数が世界一早いことを利用して、非導電性ダイヤモンドの表面に非剥離性金属被覆で線を描き、部分的に非剥離性金属被覆をしておき、パワーIC等のヒートシンク(
図16)的な使い方もできる。この場合に、特筆すべきは、熱伝達の速いダイヤモンドの一面にはパワーICのように発熱源となる物質を直接載置できること、反対面は鑞付け又は半田付けなどにより熱容量の大きい金属に固着できることである。また、金属の接触が否定される熱センサ端子に非剥離性金属被覆ダイヤモンドを蝋付けし、固定することも可能である。
【0040】
(B)非剥離性金属被覆ダイヤモンドの半田用金属発熱体への応用
丸棒や角材ロッド形状のダイヤモンドの一端を非剥離性金属被覆し、鑞付け部分が劣化しない低温の半田付け用発熱体に鑞付けする。半田付け用発熱体金属が半田に混入するのを避ける必要がある場合に有力な工具となる。また、半田付けのとき、発熱体金属が半田に少しずつ溶融し、変形してしまうことを避けることができる。
【0041】
熱圧着端子(
図17、
図18)としての用途もある、圧着端子として用いる場合には、単結晶原石(天然に産出される工業用原石、人工的に生産される静圧型合成及びマイクロ波プラズマCVDダイヤモンド)の場合には、結晶方位による力学的な膨張係数を考察し、考慮することが要求される。一方、多結晶ダイヤモンドを用いる場合には、結晶方位は均等に分散されているために考慮に入れる必要はなく、温度伝達方位の早遅も均質性があるために考慮に入れる必要はない。
【0042】
(C)音響分野への応用
ダイヤモンドが持つ特徴の一つとして、音響伝達速度の速さがある。しかし、従来ダイヤモンドが化学的に不活性とされていたために金属的結合が成されず、ダイヤモンドを固定するために「かしめ」法や強度を持つ接着剤を利用して固定していた。そのため、ダイヤモンド本来の音響伝達速度を音響部品(
図19)では発揮されていなかった。
【0043】
この場合、ダイヤモンドにヒビが入ったり折れたりしないような力で押さえ込んだり、強力接着剤を多少多めに盛って密着強度を増していたが、感知レバーの両端の要所に両端に非剥離性金属被覆ダイヤモンドとすることにより、僅かな鑞材で金属に強力に鑞接ができ、接着剤を用いたときのように強度を増すために必要以上の大きさの体積にならない。
【0044】
(D)導電性ダイヤモンドとしての利用
導電性ダイヤモンド利用できる。導電性ダイヤモンドは、天然にも僅か産出される。一方、人工的にはホウ素を、ダイヤモンド合成時に添加物を一定量ドーピングすることにより得られる。導電性ダイヤモンドの一端に非剥離性金属被覆を形成し、センサ先端に鑞接することにより接合金属と完全接地していることから、接地抵抗は考慮に入れずに済み、他端を必要形状に加工すればよい。これは金属端子でないために、接地時に懸念される従来の金属端子の接触による金属微粉やこすれで残る接触金属の汚れがなく電気伝導度を測定することができる。この場合、ダイヤモンドの抵抗値を測定補正装置付き測定器で測定する必要がある。
【0045】
一方、非剥離性金属被覆ダイヤモンドを作製する技術を発展させ、非導電性ダイヤモンド表面に導電性ラインを描き、ダイヤモンド上に配線(回路)を形成する。保全を確実にするためにその配線の上に金メッキを施すことも可能である。ダイヤモンド上に鑞付けされた配線は、ダイヤモンドが破損するまで安定であることは、上述の金属の被覆強度テストに記述の通りである。
【0046】
(D)ダイヤモンドの表面に非剥離性金属による線描、文字及び絵画を描く方法
この技術は、特許文献1に開示の技術を基に発明されたものである。世界最速の熱伝達速度を持つダイヤモンドの表面にパワーIC等効率的な熱除去が要求される物に最適として考案された。
【0047】
従来から、ダイヤモンドは硬さの特徴を生かし、科学、工業方面に利用されてきた。しかしながら、ダイヤモンドが化学的に不活性であるということによりダイヤモンド表面化学が停滞していたことは確かである。そこで特許文献1を応用し、ダイヤモンド表面に非剥離性金属被覆で、線描し、その上に導電性に富む金メッキなどを施すなどをして、従来よりも効率の良い熱除去機器(ヒートシンク)、部品を完成させた。
【0048】
1)材料(ダイヤモンド)
a.天然ダイヤモンドの地肌表面
b.天然ダイヤモンドをカットし、研磨された表面
c.人造ダイヤモンドの地肌表面
d.人造ダイヤモンドをカットし、研磨された表面
e.気相合成されたダイヤモンドの表面
f.気相合成されたダイヤモンドをカットし、研磨された表面
g.無機質材料を触媒とし合成された絶縁性ポリ・クリスタリン・ダイヤモンドの地肌表面
h.無機質材料を触媒とし合成された絶縁性ポリ・クリスタリン・ダイヤモンドをカットし、研磨された表面
i.その他天然ダイヤモンドと同質に合成された人造ダイヤモンドとその加工品
2)線描用金属素材
A群.金属粉
a.Cr金属サブミクロン粉
b.Ni金属サブミクロン粉
c.Ni−Cr合金金属サブミクロン粉
d.Ni−Cr−Feステンレス・サブミクロン粉
B群.金属細線
e.Ni−Cr合金細線
f.Ni−CrFe合金細線
以上、粉体はそのままかCr及びNi粉を適量混合し、油剤に懸濁して用いる。
3)油剤
油剤中にサブミクロン純金属や合金粉体を混合して粘着被覆し、ダイヤモンド表面上に金属導電性線や画像を描く材料となる素材で、すべて親ダイヤモンド性が有る物質及び油であることを要する。
a.真空時、昇温乾燥性油
b.グリース状油で昇温時溶出しダイヤモンド面に流出しない粘性を持つ
c.PEGの低鎖状と高鎖状物質を混合適切な柔軟性を持たせた物
d.高級グリースと低級グリースを混合して、適度な粘性を持たせた物
e.ナフタリン等の昇華性物質
4)無機質材料
水ガラスなどの無機質粘稠度のある薬品中にサブミクロンのSiO
2、Al
2O
3(シリカ)、MgO(マグネシア) 等を水ガラスの粘度と混合量を調節し、ダイヤモンド表面に描線又は描画する。
5)描画法
a.筆書
油剤中に金属粉を懸濁して線描するか油剤を予め描線し金属粉を飛散させ散布する。
b.印刷
油剤中に金属粉を懸濁グリース状として、スタンプ形式で刻印する。
c.圧着
左記の方法に適合するシート上に均質に金属粉をコートして転写する常温転写シート。
d.熱圧着
上記c.の転写時熱を利用して転写する形式(50〜170°)である。
e.置線
極薄く油剤をダイヤモンド上にコートし、正確に折り曲げた金属細線を静置する。
f.圧出
極細穴針から金属粉を油剤中に懸濁したグリース状として線描を行うか、又は油剤グリースを線描し金属粉をグリース上に飛散固定する。
g.高温蒸着
ダイヤモンド表面上に非剥離性金属の線描が可能な状態で耐熱性レジストを塗布して有る場合には、特許文献1の方法を用いて線描を行うか、表面研磨したアルミナ、セラミックスかシリカ、ガラス上に反転描写の凹みのある線を描き、凹み部分にダイヤモンド表面上に線描する線描用金属粉末を詰め込み、描画した表面とダイヤモンドの表面を位置合わせする。
h.レーザー光
ダイヤモンド上に油剤を塗布し、金属材料粉を均質に塗布し、その上からレーザー光を照射し描画する。
i.紫外線
紫外線硬化型樹脂中に金属材料を混入し均質に塗布する。
などを用いてダイヤモンド表面に必要な線や文字及び画像を描写する。
6)焼付法機材
発熱源が最高1,500℃で、かつ1,200℃の常用においいて長時間の使用に耐えることを要する。
a.一般の電気炉及びガス炉
b.真空炉(水素、炭酸ガスなどのガス置換を含む)
c.誘電炉(真空、水素炭酸ガスなどのガス置換を含む)
以上1)−6)項目を組み合わせることで持ち合わせの機材を使用してダイヤモンド表面に非剥離性金属を描画することが可能になる。
(例1)
1)の全てと、2)のA群全てを、4)の如くレジストを施したダイヤモンド表面には、5)のgの高温蒸着を行うことが最適であり、6)の機材はaを利用すれば線描や描画が可能である。
(例2)
1)の全て、2)B群全てを用いて、5)のeの置き線法を用い、6)のb又はcの機材を使用して線描、描画を行うことが可能である。
以上、6項目の作業群を駆使し、ダイヤモンド表面に線描描画を行うことができる。
【0049】
(E)窓
最近多くの測定器が小型化、高性能になってきている。各種センサ等も小型化高性能に移行しつつある。センサ等に外気遮断が必要な場合であって、内部監視を必要とする場合には、非剥離性金属被覆ダイヤモンド窓を備えればよい(
図21、
図22参照)。
【0050】
(F)キリ、ドリル
ドリル(ミーリングカッター)に供する回転軸の中心点を正確に位置決めし、鑞接するダイヤモンドと約同等の重さの軸の端面の1/4を削り残し(バランサー)、端面を仕上げ、バランサーと点対称の位置から45度回転方向に非剥離性金属被覆を施したダイヤモンドを鑞付けし、精密ミーリングカッター及び精密刻字ドリルとする。ダイヤモンドが鑞接可能な状態であるので、ダイヤモンドをカシメ法や押さえて固定する事なく回転軸に固定できる(
図23、
図24参照)。
【0051】
(3)研削工具の添加材として非剥離性金属被覆ダイヤモンドの利用
研削工具とは、砥石形状の刃具を静置のままで使用する物、ハンド工具のような刃具をヤスリとして用いる物、回転体として電動ドリルやリーマーを利用して刃具をグラインダーとして用いる物、数値制御による超精密加工機械に設置して用いる物、数cmから1メートル以上の半径を要する切断盤(ロードカッターを含む)、フォーミングドレッサーなど、殆どの重研削加工工具はダイヤモンドをメタルボンドで固定する技術で製造されている。
【0052】
しかし、用いられるダイヤモンド砥粒は、表面は非剥離性金属被覆が形成されていないために、工具中におけるダイヤモンドを把握する強度は、ボンドの強度に委ねられている。ダイヤモンド砥粒が被研削材を削っている途中にボンドの緩みで脱落してしまうことが起る。金属同士は高温における融着現象で強固に固まるが、ダイヤモンドと金属では融着現象がないからである。
【0053】
しかし今までの生産過程で利用者側の被加工素材に対して、金属ボンドやダイヤモンドの配合量(コンセントレーション)は定められているケースが多い。ダイヤモンドを含有している工具は、市販品を除いては、納入先での加工作業や加工条件において、被研削材の種類や加工機材及び冷却液などの各会社の特徴に合わせて、工具メーカは混合している粉末金属の主材、副資材、工具メーカの特徴である製造過程、ダイヤモンドの購入先によるダイヤモンドの性能や特徴を把握してダイヤモンドの使用量を決定している。
【0054】
今後は被研削材に対する生産性、精密度の向上が図られ、商品のコストダウンを計画するとき、非剥離性金属被覆ダイヤモンドを適度に混入することで、その望みを叶える可能性が期待できる。
【0055】
そのため、非剥離性金属被覆をいきなり全ての量のダイヤモンド砥粒にとって代われないかもしれないが、工具製造会社の金属ボンド中に銀鑞の成分である金属が用いられている場合にはより密着度の高い強度を示すことになる。しかし、無闇みに混合量を増やすと、工具に非剥離性金属被覆非剥離性金属被覆ダイヤモンドの緻密な平面が発生し、耐磨耗性面を作りだしてしまい、研削加工効率が低下することになる。
【0056】
更に、加工工具そのものが耐磨耗性部品になってしまうことが懸念される。そのため、加工機と被加工材にマッチした従来からの工具組成に非剥離性金属被覆ダイヤモンドを徐々に添加し、混入量のマッチングポイントを探るべきである。
【0057】
(4)非剥離性金属被覆ダイヤモンド含有銀鑞、半田 非剥離性金属被覆ダイヤモンド含有銀鑞、半田の形状は、扁平球状(ドロップ)又はそのまま易使用性を考慮した丸棒や角棒型(棒材=バー)とし、変幻自在に形状を変化させて用いる。
天然ダイヤモンドの完全な単結晶等は、産出されるときには全て他の物質と合体で採取されることがないが、母岩となる岩石などとは容易に分別採取される。それはダイヤモンドが持つ大いなる長所でも有り欠点でもある。
【0058】
特に世界一堅い物質である、ダイヤモンドを粉砕し、砥粒として用いる場合、他の物との密着が完全でない場合、削ろうとする材料の強度がダイヤモンド砥粒をグリップしている材料の強度を上回って居る場合には、強固な歯が、緩み歯茎から抜け落ちてしまうが如き現象が起き、ダイヤモンド砥粒を固定して居る金属が緩み、用も足さずにダイヤモンドが脱落して仕舞うことになる。
【0059】
そのため、誰でもが考えることは、ダイヤモンドをグリップする更に強度のある物質を探し出すことである。しかし、数度の繰り返しの作業をしている内に、グリップとダイヤモンドとの間に隙間ができて、砥粒が脱落して仕舞う羽目に至る。
【0060】
そこで、被覆強度を測定試験において、鑞付けした表面が非剥離せずダイヤモンドが破損してしまう程の結合性能を持つ非剥離性金属被覆ダイヤモンドを、鑞材やリードレス半田内に混入させ、鉄板の必要な寸法や形状、任意の金属材料や使い古しのヤスリなどの表面に塗布して加工工具を作製、試作品加工に最適な工具を自身で作成することができる。
【0061】
(A)非剥離性金属被覆ダイヤモンド単末をドロップやバーに添加する場合
砥粒のサイズによって効果の差はあるが、ダイヤモンド粒が大きくなるつれ、砥粒を密集させないように考慮することが重要である。ダイヤモンドと云えども、力やショックにより破砕されてしまい、砥粒の下半分は台金に固着されているので上半分が平面と成り、あたかもダイヤモンドの平面が作られたように成り、被加工物の加工速度が低下、或いは加工不能になる。
【0062】
メッシュサイズが大きいほど大型の平面が形成される場合が多い。使い古しのヤスリの表面をよく洗浄し、すり減ってなくなったヤスリの削り刃後の穴などに適当な大きさの非剥離性金属被覆ダイヤモンドを蝋付けして、再生することできる。また、円盤外周に、必要な寸法で切込みを設け、要求される大きさの非剥離性金属被覆ダイヤモンドのドロップなりバー及びチップ等を用いて、円盤の切り込みを埋めて鑞付けして、切断盤として用いることができる。
【0063】
この様に、鑞材や半田中にダイヤモンド砥粒を包含させて、それらを好みの形状に柔軟に対応させて、工具を製造することが可能になることは、必要な形状や寸法を要求される加工業者にとって長く要望されていたことである。
【0064】
(B)非剥離性金属被覆ダイヤモンドを適度に分散させてダイヤモンドの切れ刃の効果を求める場合
鑞材や半田中に非剥離性金属被覆ダイヤモンド砥粒単末を混入したとき、一定間隔で被塗材に固定することが困難である場合が多い。そうした場合には、ダイヤモンドと同メッシュか、やや小さめのメッシュの鑞剤や半田等に溶融混合しない硬質金属(例えば、タングステン等の金属)や他の砥粒(SiC、Al
2O
3、GC等耐熱性を持つ素材、それ等の表面にCu、Ni、Ag等を無電解又は電解鍍金した分散剤)を用意して、要求されるダイヤモンドの表面分散値に成るように混合してドロップ又はバーを作成し、目的の形状をした工具や任意の形状をした工具上に塗布することにより、好分散の非剥離性金属被覆ダイヤモンドを接合した最適な工具を自身で作成することができる。
【0065】
非剥離性金属被覆ダイヤモンドを適度に分散させた丸棒や角棒はその精度を利用してそのままヤスリや、穴広げ等工具としても良いし、容易に熱変形できるのでペレットや要求される形状に仕上げてフォーミングヤスリとすることも可能である。
【0066】
(C)ペレットとして用いる場合
従来ペレットとは、金属マトリックス内に前言の通りダイヤモンドを処理せずに混入し、台座に固定して、摺動なり回転なり必要な動きで、被研削材を平面、曲面、凹凸面などの必要な表面に整形するものである。
【0067】
本発明では、従来のペレット中に使用されているダイヤの一部を非剥離性金属被覆ダイヤモンドに置き換えるか、今までのペレットに裸のダイヤモンドを混入している中に更に非剥離性金属被覆ダイヤモンドを加えることにより、工具の磨耗早さを改良し被加工材の仕上がり精度を改善することができる。
【0068】
(D)非剥離性金属被覆ダイヤモンド含有銀鑞、半田を、波形状、凹みなどの必要形状とした台座に塗布し、バランスを整え、歯科用、セラミック、ガラス、プラスティックの文字や描画などのリューターのグラインダー工具等に用いるドリルや研削刃具として用いることも可能である。
【0069】
上述のように、非剥離性金属被覆ダイヤモンドが持つ特徴を利用して従来の工具や新規な工具が開発できる。
【0070】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について、より具体的に説明する。
【実施例1】
【0071】
図5は、本発明の実施形態の一例である棒状の金属台座に非剥離性金属被覆ダイヤモンドを鑞接した棒状工具であるスクライバーポイントの説明図である。
図5(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線‘断面図である。
【0072】
スクライバーポイント10(ウエハー切断カッター)は、棒状の金属製の台座12の平坦な端部に、非剥離性金属被覆ダイヤモンド11のダイヤモンド11aの半球底面を非剥離的に結合した金属被覆11bによる接合でなる。それらの接合面が鑞接面13となる。
【0073】
本実施例では、非剥離性の金属被覆11dを金属棒の台座12の端部に鑞接し、不要な金属被覆を除去してダイヤモンド11aを磨きだせばよい、或いは予め部分的に金属被覆を行わなければよいので、ダイヤモンド11aの粒径の大小にかかわらず、端部にダイヤモンド11aを備えるスクライバーポイント10の製造が簡易にできる。スクライバーポイント10の小型化も容易である。また、従来のスクライバーポイント14に比べ、飛躍的に耐用時間も長くなる。
【0074】
図5(c)は、端部にダイヤモンドを備える従来のスクライバーポイントの平面図、(d)は(c)のB−B‘線断面図である。従来のスクライバーポイント14は、先端部の凹部15aを有するホルダー15と、凹部15aに位置するダイヤモンド11aと、ダイヤモンド11aをホルダー15に固定化する粉末冶金16とからなる。このような構造であるため、従来のスクライバーポイント14では、製造作業性がよくない上、小型化が極めて困難であった。また、粉末冶金16を用いてダイヤモンド11aを固定化するため、ダイヤモンド11aが磨耗して使用できなくなる前に、ダイヤモンド11aがホルダー15から脱落してしまい、耐用時間が短いものであった。
【実施例2】
【0075】
図6は、本発明の実施形態の一例である棒状の金属軸に非剥離性金属被覆ダイヤモンドを鑞接した鑞接型ピボット(a)(b)、鑞接型ピボット受け(c)、カシメ方式(d)の説明図である。
【0076】
図6(a)は、鑞接型ピボット17(旋回軸)で、上段が正面図、下段がその縦断面図である。鑞接型ピボット17は、非剥離的に半球底面に金属被覆18bされたダイヤモンド18aである非剥離性金属被覆ダイヤモンド18の金属被覆18bと軸19の平坦な端部を接合してなる。それらの接合面が鑞接面20となる。ダイヤモンド18aの大小に関係なく、製造することができる(次段落も同じ)。
【0077】
図6(b)は、
図6(a)とダイヤモンド22aの形状が異なるだけの鑞接型ピボット21である。
図6(a)のダイヤモンド18aは略半円、
図6(b)の非剥離性金属被覆ダイヤモンド22のダイヤモンド22aは、円柱の先が弧状になっている。
【実施例3】
【0078】
図6(c)は、鑞接型ピボット軸受け23で、上段が斜視図、左右下がA−A‘線縦断面(受け面24c、24dの大きさが異なる。)ある。鑞接型ピボット軸受け23、23aは、非剥離的に底面に金属被覆24bされ、窪んだ受け面24c、24dを備える受け石ダイヤモンド24aである非剥離性金属被覆ダイヤモンド24の金属被覆24bと軸25の端部を接合してなる。それらの接合面が鑞接面26となる。中央が窪んだ受け面24c、24dとなるために、小穴のR加工が難しいものの、外枠を必要としないため、ピボット軸受けの小型化が可能になる。
【0079】
図6(d)は、従来のカシメ式ピボット27、27aで、上端が斜視図、
中段がB−B‘線断面図、下段が他の形態の
中段に相当する縦断面図である。従来のカシメ式ピボット27は、軸29の溝29aに受け石ダイヤモンド28を配置して、溝29a周辺の軸29部を受け石ダイヤモンド28側に締め付けて、受け石ダイヤモンド28を軸29に固定する。従来のカシメ式ピボット27aは、カシメ式ピボット27と形状が異なる。即ち、受け石ダイヤモンド28がダイヤモンド28aで、軸29が軸29bで、溝29aが溝29cとなる。固定強度の問題から、大型化が避けられない(次段落も同じ)。
【0080】
図6(e)は、従来のカシメ式ピボット受け30で、上
段が斜視図、
中段がC−C‘線断面図、下段が他の形態の
中段に相当する縦断面図である。従来のカシメ式ピボット受け30は、軸32の溝32aに受け面31aを備える受け石ダイヤモンド31を配置して、溝32a周辺の軸32部を受け石ダイヤモンド31側に締め付けて、受け石ダイヤモンド31を軸32に固定する。
【0081】
従来のカシメ式ピボット受け30aは、カシメ式ピボット受け30と形状が異なる。即ち、窪んだ受け面31aを備える受け石ダイヤモンド31が、受け面31cを備える受け石ダイヤモンド31bで、軸32が軸32cで、溝32aが溝32dとなる。
【実施例4】
【0082】
図7は、先端にダイヤモンドを備える測定端子の説明図である。測定端子33は、金属センサの軸35と、軸35の端部に鑞接された非剥離性金属被覆ダイヤモンド34からなる。非剥離性金属被覆ダイヤモンド34は、ダイヤモンド34aと、ダイヤモンド34aの底部に非剥離的に被覆された金属被覆34bとからなる。金属被覆34bと軸35が鑞接面36で接合する。
【0083】
測定端子33としは、例えば、表面粗さ測定端子が例示できる。表面粗さ測定端子は、物質の表面上を走査するので、耐磨耗性と研磨精度が要求される。レコード針再生針の先端をより尖らせて高精度に仕上げた先端を軸35に鑞接して使用するとよい。ダイヤモンド34aが対象物に点で接触、面で接触する場合でも、平面のR精度が要求される。ダイヤモンド34aの形状、大きさは、測定する対象物の形状、大きさにより選定される。
【実施例5】
【0084】
図8は、単石、多石非剥離性金属被覆ダイヤモンドを用いたフォーミングドレッサーの説明図である。
図8(a)が単石フォーミングドレッサーで、
図8(b)が多石フォーミングドレッサーで、上段が正面図、下段が縦断面図である。右列が、従来のフォーミングドレッサーである。
【0085】
フォーミングドレッサーとは、一般に、砥石を目的の形状に整形し、その砥石で被研削物を研削し、砥石が磨耗、変形したら、砥石を削り、再使用可能にするものである。
【0086】
図8(a)左列に示すように、非剥離性金属被覆ダイヤモンド単石フォーミングドレッサー37は、棒状の端部に三角錐状の溝39aを有す台金39と、台金39の溝39aに鑞接面40で蝋接した非剥離性金属被覆ダイヤモンド38とからなる。非剥離性金属被覆ダイヤモンド38は、2つの三角錐の底面を合わせた形状のダイヤモンド38aの底部三角錐の表面に非剥離的に被覆された金属被覆38bからなる。金属被覆38bが台金39と鑞接面40で接合する。
【0087】
非剥離性金属被覆ダイヤモンド38を台金39に鑞接することで、従来の粉末冶金の焼結固定のような、知識、経験を要せず、作製、再研磨、調整作業が簡易になる。鑞接面40を三角錐とすることで、強度が増す。実施例6においても同じ。
【0088】
他方、
図8(a)右列に示すように、従来のダイヤモンド単石フォーミングドレッサー41は、棒状の端部に溝43aを備える台金43と、台金43の溝43aに位置し粉末冶金を焼結した焼結固定部44で固定されたダイヤモンド42とからなる。ダイヤモンド42を焼結固定すること、目的の形状に加工することには、高度の知識と長い経験を要する。また、使用中の脱落頻度も高い。実施例6の従来の多石フォーミングドレッサーにおいても同じ。
【実施例6】
【0089】
図8(b)左列に示すように、非剥離性金属被覆ダイヤモンド多石フォーミングドレッサー45は、棒状の端部に三角錐状の複数の溝47aを有す台金47と、台金47の溝47aに鑞接面48で蝋接した非剥離性金属被覆ダイヤモンド46とからなる。非剥離性金属被覆ダイヤモンド46は、2つの三角錐の底面を合わせた形状のダイヤモンド46aの底部三角錐の表面に非剥離的に被覆された金属被覆46bからなる。
【0090】
他方、
図8(b)右列に示すように、従来のダイヤモンド多石フォーミングドレッサー49は、棒状の端部に複数の溝51aを備える台金51と、台金51の溝51aに位置し粉末冶金を焼結した焼結固定部52で固定されたダイヤモンド50とからなる。従来は安定固定を図るため、高価なロングダイヤモンドを埋没して、コスト高であった。
【実施例7】
【0091】
図9は、小粒ダイヤモンドを用いて、広いダイヤモンド平面を形成した工具類、例えば大型測定端子の説明図である。
図9(a)は球体のダイヤモンドを配列した例(左側が平面図、右側はA−A‘線断面図)、
図9(b)は三角形の板状のダイヤモンドを密に敷きつめ配列した例(左側が平面図、右側が正面図)、
図9(c)はせ六角形の板状のダイヤモンドを密に敷きつめ配列した例(左側が平面図、右側が正面図)である。
【0092】
小形のダイヤモンドを球形に成形して、工具先端部に敷きつめ広いダイヤモンド平面を形成し、工具類の大型化を図ることができる。膨張係数の違いによって鑞接がうまく行かない場合に有効である。また、小粒のダイヤモンドを使用するため、廉価である。
【0093】
図9(a)に示すように、大型測定端子53は、金属製の軸55と、金属製の軸55の端部に金属素材56とともに密に配置、鑞接した複数の小径の球体の非剥離性金属被覆ダイヤモンド54とからなり、広いダイヤモンド平面59を形成する。
【0094】
非剥離性金属被覆ダイヤモンド54は、球体のダイヤモンド54aと、ダイヤモンド54aに非剥離的に被覆された金属被覆54bとからなる。金属素材56は、銀鑞、半田などであり、金属製の軸55と熔融するとともに、非剥離性金属被覆ダイヤモンド54と鑞接する。また、予め金属製の軸55に形成した穴に、球体の非剥離性金属被覆ダイヤモンド54を配置した上で、金属被覆57bと金属製の軸55を鑞接してもよい。
【0095】
図9(B)に示すように、大型測定端子53aは、金属製の軸55と、金属製の軸55の端部に配置、鑞接した複数の三角形の板状の非剥離性金属被覆ダイヤモンド57とからなり、広いダイヤモンド平面59aを形成する。
【0096】
非剥離性金属被覆ダイヤモンド57は、三角形の板状のダイヤモンド57aと、ダイヤモンド57aに非剥離的に被覆された金属被覆57bとからなる。金属被覆57bと金属製の軸55が鑞接面60で接合する。
【0097】
図9(c)に示すように、大型測定端子53bは、金属製の軸55と、金属製の軸55の端部に配置、鑞接した複数の六角形の板状の非剥離性金属被覆ダイヤモンド558とからなり、広いダイヤモンド平面59bを形成する。
【0098】
非剥離性金属被覆ダイヤモンド58は、六角形の板状のダイヤモンド58aと、ダイヤモンド58aに非剥離的に被覆された金属被覆58bとからなる。金属被覆58bと金属製の軸55が鑞接面60で接合する。
【実施例8】
【0099】
図10は、台金の面上にダイヤモンドを配置した摺動面の説明図である。滑りやすく、低摩擦を要する部品に利用できる。
図10(a)は球体のダイヤモンド62aを台金63に配列した例(上段が斜視図、下段が断面模式図)、
図10(b)は板状のダイヤモンド62dを台金63dに配列した例(斜視図)、
図10(c)は球状のダイヤモンドを配列した上で、研磨して、平坦面65cを有するダイヤモンド65aを形成した例、
図10(d)は板状のダイヤモンドを台金69の上面に配列した上で、研磨して、平坦面70cを有するダイヤモンド70aを形成した例である。ダイヤモンドは摩擦磨耗に対して、耐性が高いので、長時間部品の使用が可能になり、経済的である。ダイヤモンド同士の摺動は、磨耗するため、好ましくない。
【0100】
ダイヤモンド摺動面61は、V字溝63a、63b或いはU字溝63cを備える金属製の板状の台金63と、前記溝に配置、固定された非剥離性金属被覆ダイヤモンド62とからなる。非剥離性金属被覆ダイヤモンド62は、球状のダイヤモンド62aと、その表面の少なくとも、鑞接面64で台金63と接合する部分にコーティングされた非剥離性の金属被覆62bとからなる。鑞接後、表面を研磨仕上げしてもよい。
【0101】
ダイヤモンド摺動面61aは、金属製の板状の台金63dと、台金63dの上面に配置、固定された非剥離性金属被覆ダイヤモンド62cとからなる。非剥離性金属被覆ダイヤモンド62cは、板状のダイヤモンド62dと、少なくとも、その底面に鑞接面64で台金63と接合するための非剥離性の金属被覆62bとからなる。摺動距離を同じくするため、板状のダイヤモンド62dは、同形の正方形、長方形が望ましい。
【0102】
ダイヤモンド摺動面61bは、金属製の板状の台金64と、台金64の上面に金属素材66に配置(整列又は不規則)、固定された非剥離性金属被覆ダイヤモンド65とからなる。非剥離性金属被覆ダイヤモンド65は、球状のダイヤモンド65aと、金属素材66と鑞接面67で接合するための非剥離性の金属被覆とからなる。金属素材66は、銀鑞、半田などであり、台金64と熔融面67で接合するとともに、非剥離性金属被覆ダイヤモンド54と鑞接する。台金64の上面にダイヤモンドを鑞接してから、ダイヤモンドの頂面を研磨して、平坦面65cを形成する。平坦面65cが摺動面となる。
【0103】
ダイヤモンド摺動面61cは、金属製の板状の台金69と、台金69の上面に配置、固定された非剥離性金属被覆ダイヤモンド70とからなる。非剥離性金属被覆ダイヤモンド70は、板状の複数のダイヤモンド70a(周囲にR面をつけ、整列)と、その底面に鑞接面71で台金69と接合するための非剥離性の金属被覆70bとからなる。台金69の上面にダイヤモンドを鑞接してから、上面を研磨して、平坦面70cを形成する。平坦面65cが摺動面となる。
【実施例9】
【0104】
図11(a)はオクタへドロン(1.1.1.)面を3分割したエンドストーン72、
図11(b)はその3分割のエンドストーン72aの最上面と最下面の図、
図11(c)は
図11(b)の3分割の中間部分を示し、その面は上下とも疑似六角形をしている。3分割した頂面と底面は、反転させると
図11(b)の形状となる。
図11(c)のエンドストーン72bでは、3分割の中央部分の形で、一見しただけではオクタへドロンを分割したとは思えない形状となる。ここでは3分割を例にしたが石の大きさにより、より多分割をする事もある。
【0105】
ダイヤモンドの耐磨耗性を有する面は、(1.1.1.)面であり、その面の直角方向に受け石として用いることが行われてきたが、ダイヤモンドを小径化して、(1.1.1.)面も小さくしたとしても、非剥離性金属被覆ダイヤモンドを鑞接すれば、計測器機の軸受け部分が小型、軽量化される。
【0106】
図12、
図13は、エンドストーンについての説明図である。エンドストーンとは、宝石(サファイア及びダイヤモンド)を利用して回転体(軸)を支える軸受けであり、概ね
図12と
図13に示す二種類の形状に分類される。
【0107】
図12の(A)列はV字エンドストーン、(B)列はU字エンドストーンである。(a)段は透視斜視図、(b)段は縦断面図、(c)段は回転体とともに使用されているときの縦断面図である。
【0108】
図12に示すように、比較的軽量の回転体72eである軸(一般的な携帯用指針型ボルト、アンペアメーター等)には、円柱型のサファイアをV字型に内面を研磨して溝72dを形成し、尖った回転体72を受けるV字エンドストーン72cが使用される。場合によっては、エンドストーンの下にスプリングや、ゴム・ダンパを用いて、ショック軽減を図る。
【0109】
家庭用積算電力計では、やや平らな円筒形のサファイアをU字型に内面研磨し、内面のU字のR溝72gに適合した小さめの硬球72kを使用して、やや重量のある端部に溝72iを備える回転体72hである軸を受けるエンドストーン72fが使用される。
【0110】
以上、従来は、サファイア単石によるエンドストーンを用いていたが、それを非剥離性金属被覆ダイヤモンドに置換することができる。硬球72kは、U字エンドストーン72fと回転体72hとの設置面積を十分確保するために用いられる。
【0111】
図13の(A)列は軽荷重用、(B)列は中荷重用、(C)列は重荷重用のリングジュエルとエンドストーンの組み合わせの説明図である。(a)段はジュエルリングの断面図、(b)段はピボットの先端部の模式図、(c)段はダイヤモンド鑞接型エンドストーンの断面図、(d)段はジュエルリングとピボット軸の組み合わせ部分断面模式図である。
【0112】
図13に示すように、より重加重の回転軸72o(配電所、大型ビルの配電盤には、電力の容量が大きいために大型で容量の大きい計測器が使用されている)の精密な測定器には、回転軸72oの回転を支える穴72nを穿設したリング型軸受け(リングジュエル72m)と、重量を支えピボット軸72oを支持し、上下振動を抑える為のストッパ役のエンドストーン72p(一般呼称で、超仕上げ平面)が使用される。
【0113】
この場合エンドストーン72pを固定せず、回転軸72oの刺激を和らげる目的で、エンドストーン72pの回転軸720と接触する面の反対側の面に弾性体72u(ラバーダンパー(耐震ゴムなど)や調節されたスプリング、ショックアブソーバーなど)を、エンドストーン72pとともに容器72tに収納する場合がある。エンドストーン72pと弾性体72uは、一対で用いられ、回転軸72oの上下に配置される場合も、左右に配置される場合もある。リングジュエルは、サファイアでもよいが、小型化が可能なことから、ダイヤモンドを使用することも可能である。エンドストーンに、非剥離性金属被覆ダイヤモンドを用いることで、サファイア軸受けよりも長時間、安定的に、回転動作を得ることができる。
【実施例10】
【0114】
図14は、板状のダイヤモンドを軸芯測定用軸受けとして用いた例の説明図である。
図14(a)は、軸芯測定用軸受け73の斜視図、及び側面図である。
図14(b)は軸芯の真円度及び偏心度を測定する軸芯測定装置75の説明図である。
図14(c)は軸受け台の異なる形態の説明図である。
【0115】
図14(a)に示すように、軸芯測定用軸受け73は、板状ダイヤモンド73aと、その底面に被覆した非剥離性の金属被覆73bとからなる非剥離性金属被覆ダイヤモンドである。頂面73cは平坦で、側面角はR面73dとしている。
【0116】
図14(b)に示すように、軸芯測定装置75は、A面75aを備える金属製の第一軸受け台75dと、B面75bを備える金属製の第二軸受け台75eを、A面とB面を対向させてV字に配置され、V字溝を形成した軸受け台で、A面75a、B面75bに、それぞれに軸芯測定用軸受け73の金属被覆73bが接合し、板状ダイヤモンド73aを軸受け台に鑞接面74で鑞接する。軸芯76はA面75a及びB面75bで形成された軸受け台のV字溝75fに載置され、真円度、偏心度などが測定される。
【0117】
図14(c)で、軸受け台のV字の異なる形態について例示する。
図14(c)の
中段は、
図14(b)に対応する。
図14(c)の上段の軸芯測定装置77は、A面77a、B面77b及びC面77cの三面によって軸芯77dを軸芯測定用軸受け73を鑞接した軸受け台で保持する形態である。特に軸芯77dが細い場合に効果的である。
【0118】
図14の下段の軸芯測定装置78は、軸芯測定用軸受け73を鑞接したA面78a及びB面78b面によって形成された軸受け台の開口角を中段より広げた形態である。軸芯78cが太い場合に効果的である。
【実施例11】
【0119】
図15は、A列は軸にダイヤモンドを鑞接し筒内で回転する回転軸80への応用例であり、B列は筒内にダイヤモンドを鑞接し筒内で回転軸を回転させる軸受けへの応用例84である。
【0120】
筒内で回転する軸への応用例79では、
図15(a)に示すように、回転軸80に非剥離性金属被覆ダイヤモンド81を密に鑞接する。非剥離性金属被覆ダイヤモンド81は、球状のダイヤモンド81aと非剥離的に被覆した金属被覆81bとからなる。金属被覆81bの鑞接部82を介してダイヤモンド81aを軸に鑞接する。
【0121】
次に、
図15(b)に示すように、鑞接した非剥離性金属被覆ダイヤモンド81の表面を仕上面81cとする。仕上面81cは、球体のダイヤモンド81aの径の外側1/3を上限として研磨し、磨く。仕上面81cは、超仕上げが望ましい。B列においても同じ。
【0122】
次に、目的の径に仕上げた、ダイヤモンド81aを備える回転軸80を筒83に挿入し、回転使用する。
【0123】
筒内で回転軸を回転する軸受けへの応用例84では、
図15(d)に示すように、内部空洞88aの軸受け88の内側に非剥離性金属被覆ダイヤモンド86を密に鑞接する。非剥離性金属被覆ダイヤモンド86は、球状のダイヤモンド86aと非剥離的に被覆した金属被覆86bとからなる。金属被覆81bの鑞接部87を介してダイヤモンド86aを軸受け88に鑞接する。
【0124】
次に、
図15(e)に示すように、鑞接した非剥離性金属被覆ダイヤモンド81の内側の表面を仕上面88bとする。仕上面88bは、球体のダイヤモンド86aの径の外側1/3を上限として研磨し、磨く。
【0125】
次に、目的の内径に仕上げた、ダイヤモンド81aを備える軸受け88に回転軸85を挿入し、回転使用する。なお、回転軸及び軸受けともに、非剥離性金属被覆ダイヤモンドを備える回転軸及び軸受けとしてもよい。
【実施例12】
【0126】
図16は、非剥離性金属被覆ダイヤモンドのICの発熱を除去するパワーICのヒートシンク89への応用例についての説明図である。IC93は、熱吸収する熱大容量金属部90に非剥離性金属被覆ダイヤモンド91を介在して配置される。
【0127】
非剥離性金属被覆ダイヤモンド91は、板状のダイヤモンド91aと、ダイヤモンド91aの底面に非剥離的に被覆された金属被覆91bとからなる。金属被覆91bの鑞接部92でダイヤモンド91aは熱大容量金属部90に接合する。ダイヤモンド91aは、熱伝達性が高く、効果的にICでの発熱を熱大容量金属部90へ移動させることができる。
【実施例13】
【0128】
図17は、非剥離性金属被覆ダイヤモンドの温度測定センサへの応用例についての説明図である。
図17(a)と(b)は、センサ端部の構造が異なる実施形態である。温度測定センサの端部にダイヤモンドを配置することで、高感度に、温度測定ができる。また、金属を接触できない場所、部品等の測定に極めて有効である。
【0129】
図17(a)の部分透視斜視図に示すように、温度測定センサ94は、既存の感温センサ95aを内部に備えるセンサの金属製端部95に、非剥離性金属被覆ダイヤモンド96を鑞接してなる。非剥離性金属被覆ダイヤモンド96は、円盤形のダイヤモンド96aと、ダイヤモンド96aの底部に非剥離的に被覆された金属被覆96bからなる。金属被覆96bの鑞接面97でダイヤモンド96aはセンサの金属製端部95の先端に接合する。この場合、センサと外側金属が接しない様に金属を部分被覆する。
【0130】
図17(b)の断面図に示すように、温度測定センサ98は、既存の感温センサ99aを内部に備えるセンサの金属製端部99の先端に、非剥離性金属被覆ダイヤモンド100を鑞接してなる。非剥離性金属被覆ダイヤモンド100は、円盤形で角がRに加工されたダイヤモンド100aと、ダイヤモンド100aの底部に非剥離的に被覆された金属被覆100bからなる。金属被覆100bの鑞接面101でダイヤモンド100aはセンサの金属製端部99の先端に接合する。
【実施例14】
【0131】
図18は、非剥離性金属被覆ダイヤモンドの流体用温度測定センサへの応用例についての説明図である。
図18に示すように、流体用温度測定センサ102は、流体103aを流す通路103の中に挿通され、気体や液体などの流体(被測定物)の温度を測定する。特に、流体が強アルカリ、腐食ガスなどである場合、ダイヤモンド104aは耐腐食性があるため効果的である。その他、物質の中で金属の導電性や金属イオンの混入を嫌う被測定物の温度センサとしても有効である。
【0132】
流体用温度測定センサ102は、非剥離性金属被覆ダイヤモンド104と、非剥離性金属被覆ダイヤモンド104に接合した感温センサ103bとからなる。非剥離性金属被覆ダイヤモンド104は、通路103の内部に挿入される略円柱状ダイヤモンド104aと、ダイヤモンド104aの底部に非剥離的に被覆された金属被覆104bとからなる。金属被覆104bの鑞接面105で非剥離性金属被覆ダイヤモンド104は、感温センサ103bの金属部に接合する。ダイヤモンド104aと通路103とは気密的に嵌められている。
【実施例15】
【0133】
図19は、非剥離性金属被覆ダイヤモンドのダイヤモンドカンチレバーへの応用例についての説明図である。カンチレバーとは、レコードプレーヤーの、レコードの音溝を電気信号に変換するカートリッジに用いられる例がある。レコードプレーヤーのカンチレバーは、先端部に音溝に接する針先を備える。根元に永久磁石あるいはコイルなどを取り付けて、カンチレバーの振動を電気信号に換える。
【0134】
ダイヤモンドカンチレバー106は、レコードの音溝に接する非剥離性金属被覆ダイヤモンド108と、非剥離性金属被覆ダイヤモンド108を先端に備えるカンチレバー109と、カンチレバー109の端部に接合するコイルボビン107とからなる。
【0135】
非剥離性金属被覆ダイヤモンド108は、先端がレコードの音溝に接する三角錐或いは三角柱のダイヤモンド108aと、底部に非剥離的に被覆された金属被覆108bとからなる。金属被覆108bの鑞接面108cで非剥離性金属被覆ダイヤモンド108は、カンチレバー109の先端部に接合する。
【0136】
カンチレバー109は、ダイヤモンドで底部に非剥離的に金属被覆109aで被覆されており、振動をコイルボビン107に伝達する。カンチレバー109とコイルボビン107は、金属被覆109aの鑞接面109bで接合している。
【実施例16】
【0137】
図20は、半田ごての先端に、非剥離性金属被覆ダイヤモンドを接合した応用例についての説明である。(a)〜(C)は先端のダイヤモンド113aの形状が異なるだけである。半田先端の形状は、使用対象により、適宜選択することができる。金属棒112が半田内に溶け込むと不都合な場合に有効である。ただし、ダイヤモンドが燃焼する温度以下の低融点が必要である。例えば、樹脂シートの圧着などが例示できる。
【0138】
半田ごて先端111、111a、111b、111cは、発熱する金属棒112と、金属棒112の先端に接合した非剥離性金属被覆ダイヤモンド113とからなる。非剥離性金属被覆ダイヤモンド113は、先端を所望の形状に加工さいたダイヤモンド113aと、ダイヤモンド113aの底部に非剥離的に被覆された金属被覆113bとからなる。金属被覆113bの鑞接面114でダイヤモンド113aは、金属棒112の先端に接合する。この場合用いられる半田の溶融点は銀鑞の溶融点を200℃以上の差を持つ低融点の半田である事が望ましい。
【実施例17】
【0139】
図21、
図22に非剥離性金属被覆ダイヤモンド窓120の複数の異なる実施形態を示した。
図21(
a)段は、非剥離性金属被覆ダイヤモンド窓120(a〜l)の側面図である。ダイヤモンド120a部は、側面視、長方形、楕円、六角形など種々の形状で白抜きとして表されている。金属被覆部12bは、上下に黒塗りエリアとして表されている。
図21(
b)段は、内部120d空間を備える隔壁120cに非剥離性金属被覆ダイヤモンド窓120嵌め込んだときの断面模式図である。非剥離性金属被覆ダイヤモンド窓120の右側がチャンバーなどの内部120dであり、左側が外側12eである。
【0140】
非剥離性金属被覆ダイヤモンド窓120は、ダイヤモンド120aと、隔壁120cに接触するダイヤモンド120a部分に非剥離的に被覆された金属被覆部120bと、からなり、内部120d空間を備える金属製の隔壁120c、120c間に金属被覆部120bで鑞接(鑞接面120i)され、隔壁120cに嵌められ、内部120d空間を監視可能とする。
【0141】
図21に示すように、(
a)段の非剥離性金属被覆ダイヤモンド窓120と隔壁120cとを、内部120dの状況に合わせて、組み合わせる。(
b)段のAタイプの隔壁120cには、(
a)段のa、b、d、g、hなどの非剥離性金属被覆ダイヤモンド窓120を好適に組み合わすことができる。最も、加工が容易な形状の組み合わせである。ダイヤモンド120と隔壁120cの接合部に金属リングを鑞接することで、鑞接面120iの強度が一層高まる。
【0142】
図21(
b)段のBタイプの隔壁120cには、(
a)段のa、b、c、d、e、f、g、h、iなどの非剥離性金属被覆ダイヤモンド窓120を好適に組み合わせることができる。Bタイプより右側の隔壁120cには、外側120e(監視側)にストッパ120fが設けられ、内部120dが高圧になっても破損を防止することができる(防爆型)。
【0143】
図21(
b)段のCタイプの隔壁120cには(
a)段のg、h、iなどが、Dタイプの隔壁120cには(
a)段のg、h、j、kなどが、Eタイプの隔壁120cには(
a)段のg、h、iなどが、Fタイプの隔壁120cには(
a)段のLなどの非剥離性金属被覆ダイヤモンド窓120を好適に組み合わせることができる。
【0144】
なお、E、Fタイプには、非剥離性金属被覆ダイヤモンド窓120を強固に隔壁120cに固定するリング120g、120hを備える。内部120dが急激に陰圧になった場合にも、破損を防止することができる。
【0145】
図22にも他の形態の非剥離性金属被覆ダイヤモンド窓120を示した。(A)〜(B)に示すように、非剥離性金属被覆ダイヤモンド窓130、140、150は、隔壁に非剥離性金属被覆ダイヤモンドの金属被覆部を鑞接面、鑞接部で接続してなる。(A)においては、ダイヤモンド130aは断面視において凸状で、ストッパ130gに係止され、内部が高圧になっても一層脱落し難くい。
【0146】
このように、非剥離性金属被覆ダイヤモンド窓120を容器の隔壁に、鑞接することで、工具、装置の小型化をすることができる。小さなダイヤモンドも利用できる。ダイヤモンドが燃焼する温度でない限り、化学的に安定なことから、応用範囲は極めて広い。また、従来、嵌着部にパッキンが使用されていたが、金属被覆ダイヤモンドを隔壁間に鑞接することで、内部に腐食性物質を入れたチャンバーであっても、窓が腐蝕することなく、安定して内部観察が可能になる。
【実施例18】
【0147】
図23に示した、他の工具の一例である、非剥離性金属被覆ダイヤモンドキリ160(ドリル)は、回転軸170と、角棒状の非剥離性金属被覆ダイヤモンド180とからなる。
【0148】
回転軸170は、2つの金属製の第一回転軸部171、171と、それぞれの間に配置される2つの金属製の第二回転軸部172、172とからなる。これらがまとまって、1本の回転軸170を形成する。
【0149】
第一回転軸部171は、円柱を長手方向に略1/4に切断した形状で、端面171aは円錐の一部を形成し、端面以外の部分は端面より低い切り欠き171bとなっている。端面171aと切り欠き171bとの境界には、中心から外周に向け溝171cが形成されている。溝171cに非剥離性金属被覆ダイヤモンド180が鑞接されている。
【0150】
また、第一回転軸部171の一側面に磁石171eが埋設され第二回転軸172の一側面に埋設された異極の磁石と協力にくっつき、第一回転軸部171の同側面には突条171dが突出し、第二回転軸172の同側面に穿設された溝部に嵌合し、位置固定される。
【0151】
金属被覆ダイヤモンド180は、角棒状のダイヤモンド180aと、溝171cに嵌る2側面には、非剥離的に金属被覆部180bが施されている。金属被覆部180bと溝171cとが鑞接面160aとなる。角棒状のダイヤモンド180aの回転方向に向かった角部180cが研削部となり、中心部180dが切り込み部となる。このように、回転軸170を分割し、連結することで、中心点180dを容易に位置決めすることができる。
【実施例19】
【0152】
図24に、他の工具の一例である、非剥離性金属被覆ダイヤモンドドリル190を示した。
図24(A)は、平面図(a)に対する正面図(b)、背面図(c)、左側面図(d)、右側面(e)である。(B)は斜視図、
図24(C)は、異なる形態の非剥離性金属被覆ダイヤモンドドリルの正面図である。
【0153】
非剥離性金属被覆ダイヤモンドドリル190は、回転軸200と、端面200aのストッパ200b及びバランサー200cと、非剥離性金属被覆ダイヤモンド210とからなる。
【0154】
回転軸200の端面200aには、ストッパ200bとバランサー200cを削り残し、バランサー200cと重量バランスのとれた位置に非剥離性金属被覆ダイヤモンド210の金属被覆部210bを鑞接する。ストッパ200bは、バランサー200cと略点対称の位置となる。
【0155】
非剥離性金属被覆ダイヤモンド200は、三角形で、回転中心部が頂点となり、回転方向に向かってテーパーである刃部210cを備えるダイヤモンド210aと。ダイヤモンド210aの底面及び背面に非剥離的に金属被覆部210bを備え、金属被覆部210bで、回転軸200のストッパ200b及び端面200aに鑞接する。
【0156】
図24(C)に示すように、非剥離性金属被覆ダイヤモンド210と、バランサー200cは、対象により種々の形状とすることができる。