特許第6283320号(P6283320)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヤンセン アルツハイマー イミュノセラピーの特許一覧

特許6283320ウイルス感染の治療のためのピペリジノ−ピリミジン誘導体
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6283320
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】ウイルス感染の治療のためのピペリジノ−ピリミジン誘導体
(51)【国際特許分類】
   C07D 471/04 20060101AFI20180208BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20180208BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20180208BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
   C07D471/04 117N
   C07D471/04CSP
   A61K31/519
   A61P43/00 111
   A61P31/12
【請求項の数】11
【全頁数】42
(21)【出願番号】特願2014-556041(P2014-556041)
(86)(22)【出願日】2013年2月7日
(65)【公表番号】特表2015-506380(P2015-506380A)
(43)【公表日】2015年3月2日
(86)【国際出願番号】EP2013052372
(87)【国際公開番号】WO2013117615
(87)【国際公開日】20130815
【審査請求日】2015年11月5日
(31)【優先権主張番号】12154474.6
(32)【優先日】2012年2月8日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】510020022
【氏名又は名称】ヤンセン・サイエンシズ・アイルランド・ユーシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147131
【弁理士】
【氏名又は名称】今里 崇之
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】エムシー ゴワン,ダイビッド クレグ
(72)【発明者】
【氏名】ラボイソン,ピエール ジャン−マリー ベルナルド
(72)【発明者】
【氏名】ヨンカーズ,ティム ヒューゴ マリア
(72)【発明者】
【氏名】ダオウビ カムリチ,ムラド
【審査官】 伊佐地 公美
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−504497(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/133885(WO,A1)
【文献】 再公表特許第2000/012487(JP,A1)
【文献】 国際公開第2011/062253(WO,A1)
【文献】 再公表特許第2003/104230(JP,A1)
【文献】 国際公開第2011/014535(WO,A1)
【文献】 特表2012−527443(JP,A)
【文献】 特表2013−500975(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

(式中、
Aが、任意の立体化学配置におけるCH、および、NCORからなる群から選択され、
Bが、任意の立体化学配置におけるCH、および、NCORからなる群から選択され、
ただし、AがNCORである場合、BはNCORではなく、
Xが、任意の立体化学配置におけるCHから選択され、
が、ヒドロキシルで任意に置換されるC4〜8アルキルから選択され、
が、置換または非置換のC1〜6アルキル、C3〜7シクロアルキル、複素環、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキルから選択され、これらのそれぞれが、
ハロゲン、C1〜6アルキル、またはニトリルから独立して選択される1つまたは複数の置換基で任意に置換され、
が、置換または非置換のC1〜7アルキル、アルコキシ−(C1〜4)アルキル、アリールまたはC3〜7シクロアルキルから選択され、これらのそれぞれが、ニトリルで任意に置換され、
ここでアリールは、4つ、5つ、6つまたは7つの環原子を有し、任意に、N、OおよびSから選択される1つまたは2つのヘテロ原子を含む芳香環構造を意味し、
ヘテロアリールは、チアゾールイル、チアジアゾールイル、イミダゾリル、イソオキサゾリル、フリル、オキサゾリル、ピロリル、ピリドニル(pyridonyl)、ピリジル、ピリダジニル、またはピラジニルを含む、N、OおよびSから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含むアリールを意味し、
複素環はテトラヒドロピラン、アゼチジン、モルホリン、ピペリジン、ピペラジン、およびピロリジンを含む)の化合物またはその薬学的に許容できる塩。
【請求項2】
がブチルであり、A、B、およびXが請求項1に規定されるとおりである、請求項1に記載の式(I)の化合物。
【請求項3】
が、ヒドロキシルで置換されるC4〜8アルキルであり、A、B、およびXが請求項1に規定されるとおりである、請求項1に記載の式(I)の化合物。
【請求項4】
前記式(I)においてヒドロキシルで置換されるC4〜8アルキルであるRが、以下のもの
【化2】

のうちの1つである、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
XがCHであり、AおよびBが請求項1に規定されるとおりである、請求項1に記載の式(I)の化合物。
【請求項6】
XがCHであり、AがCHであり、Bが請求項1に規定されるとおりである、請求項1に記載の式(I)の化合物。
【請求項7】
が、C1〜3アルキル、または、ニトリルでさらに置換され得る以下の例:
【化3】

のうちの1つである、請求項1に記載の式(I)の化合物。
【請求項8】
1つまたは複数の薬学的に許容できる賦形剤、希釈剤または担体とともに、請求項1〜7のいずれか一項に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容できる塩、互変異性体、溶媒和物もしくは多形体を含む医薬組成物。
【請求項9】
前記賦形剤が希釈剤である、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
Toll様受容体の調節が関与する疾患の治療に使用するための薬剤の製造における、請求項1〜7のいずれか一項に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容できる塩、または請求項8または9に記載の医薬組成物の使用。
【請求項11】
TLR7および/またはTLR8の調節が関与する疾患の治療に使用するための薬剤の製造における、請求項1〜7のいずれか一項に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容できる塩、または請求項8または9に記載の医薬組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピペリジノ−ピリミジン誘導体、それらの調製のための方法、医薬組成物、およびウイルス感染の治療におけるそれらの使用に関する。
【0002】
本発明は、Toll様受容体(TLR)の調節、または活性化作用(agonism)が関与する、ウイルス感染、免疫疾患または炎症性疾患の治療におけるピペリジノ−ピリミジン誘導体の使用に関する。Toll様受容体は、細胞外ロイシンに富んだ領域および保存領域を含む細胞質拡張を特徴とする主要な膜貫通タンパク質である。自然免疫系は、特定のタイプの免疫細胞の細胞表面上で発現されるこれらのTLRを介して病原体関連分子パターンを認識し得る。外来病原体の認識により、サイトカインの産生および食細胞における共刺激分子の上方制御が活性化される。これにより、T細胞挙動が調節される。
【背景技術】
【0003】
ほとんどの哺乳類種は、10〜15種のToll様受容体を有すると推定されている。(TLR1〜TLR13と命名された)13種のTLRが、ヒトおよびマウスでともに認識されており、これらの多くの同等の形態が、他の哺乳類種において見出された。しかしながら、ヒトに見られる特定のTLRに相当するものが、全ての哺乳動物において存在するわけではない。例えば、ヒトにおけるTLR10と類似したタンパク質をコードする遺伝子が、マウスにおいて存在するが、過去のどこかの時点で、レトロウイルスによって損傷されたようである。一方、マウスは、ヒトにおいては示されないTLR11、12、および13を発現する。他の哺乳動物は、ヒトに見られないTLRを発現し得る。他の非哺乳類種は、トラフグに見られるTLR14によって示されるような、哺乳動物と異なるTLRを有し得る。これにより、ヒト先天性免疫のモデルとして実験動物を使用するプロセスが複雑になり得る。
【0004】
Toll様受容体の詳細な概説については、以下の学術論文、Hoffmann,J.A.,Nature,426,p33−38,2003;Akira,S.,Takeda,K.,and Kaisho,T.,Annual Rev.Immunology,21,p335−376,2003;Ulevitch,R.J.,Nature Reviews:Immunology,4,p512−520,2004を参照されたい。
【0005】
国際公開第2006/117670号パンフレットにおいてプリン誘導体、国際公開第98/01448号パンフレットおよび国際公開第99/28321号パンフレットにおいてアデニン誘導体、および国際公開第2009/067081号パンフレットにおいてピリミジンなどの、Toll様受容体に対する活性を示す化合物が既に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、先行技術の化合物と比較して、好ましい選択性、より高い効力、より高い代謝的安定性、および向上した安全性プロフィール(例えば、低下したCVSリスク)を有する新規なToll様受容体モジュレータに対する強い必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、式(I)
【化1】

(式中、
Aが、任意の立体化学配置におけるCH、NCOR、CHRおよびCRからなる群から選択され、
Bが、任意の立体化学配置におけるCH、NCOR、CHRおよびCRからなる群から選択され、
ただし、AがNCORである場合、BはNCORではなく、AおよびBの両方が、CH、CHRまたはCRから選択されるわけではなく、
Xが、任意の立体化学配置におけるCHまたはCHRから選択され、
が、以下のもの:C1〜6アルキル、C3〜7シクロアルキル、ヒドロキシル、ヒドロキシアルキル、アミノ、ニトリル、アルコキシ、アルコキシ(C1〜4)アルキル、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルバメートまたはスルホンのうちの1つまたは複数で任意に置換されるC1〜8アルキルから選択され、
が、置換または非置換のC1〜6アルキル、C3〜7シクロアルキル、複素環、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキルから選択され、これらのそれぞれが、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、C1〜6アルキル、ジ−(C1〜6)アルキルアミノ、C1〜6アルキルアミノ、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ、C3〜6シクロアルキル、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸アミド、複素環、アリール、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキルまたはニトリルから独立して選択される1つまたは複数の置換基で任意に置換され、
が、水素、置換または非置換のC1〜6アルキル、アルコキシ、アルコキシ−(C1〜4)アルキル、C3〜7シクロアルキル、C4〜7複素環、芳香族、二環式複素環、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキルから選択され、これらのそれぞれが、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、C1〜6アルキル、ジ−(C1〜6)アルキルアミノ、C1〜6アルキルアミノ、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ、C3〜6シクロアルキル、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸アミド、複素環、アリール、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキルまたはニトリルから独立して選択される1つまたは複数の置換基で任意に置換され、
が、置換または非置換のC1〜7アルキル、アルコキシ、アルコキシ−(C1〜4)アルキル、アリールまたはC3〜7シクロアルキルから選択され、これらのそれぞれが、複素環、ニトリル、ヘテロアリールアルキルまたはヘテロアリールで任意に置換され、
が、芳香族、二環式複素環、アリール、ヘテロアリールから選択され、これらのそれぞれが、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、C1〜6アルキル、ジ−(C1〜6)アルキルアミノ、C1〜6アルキルアミノ、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ、C3〜6シクロアルキル、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸アミド、複素環、アリール、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキルまたはニトリルから独立して選択される1つまたは複数の置換基で任意に置換される)
の化合物またはその薬学的に許容できる塩、互変異性体、溶媒和物もしくは多形体が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
第1の実施形態において、本発明は、式(I)(式中、R1がブチルであり、A、B、およびXが上に規定されるとおりである)の化合物を提供する。
【0009】
さらなる実施形態において、本発明は、式(I)(式中、Rが、ヒドロキシルで置換されるC4〜8アルキルであり、A、B、およびXが上に規定されるとおりである)の化合物に関する。
【0010】
別の実施形態は、式I(式中、ヒドロキシルで置換されるC4〜8アルキルであるRが、以下のもの
【化2】

のうちの1つである)の化合物に関する。
【0011】
さらに、本発明は、式(I)(式中、XがCHであり、A、およびBが上に規定されるとおりである)の化合物も提供する。
【0012】
別の実施形態において、本発明は、式(I)(式中、XがCHであり、AがCHであり、Bが上に規定されるとおりである)の化合物を提供する。
【0013】
さらに、本発明は、式(I)(式中、Rが、C1〜3アルキル、ヒドロキシル、アルコキシ、ニトリル、複素環、カルボン酸エステル、またはカルボン酸アミドでさらに置換され得る以下の例:
【化3】

のうちの1つである)の化合物に関する。
【0014】
好ましい化合物は、それぞれ以下の化学構造を有する化合物番号3および1である:
【化4】
【0015】
本発明に係る他の好ましい化合物は、以下の化学構造を有する化合物である:
【化5】
【0016】
式(I)の化合物およびその薬学的に許容できる塩、互変異性体、溶媒和物もしくは多形体は、医薬品として、特に、Toll様受容体(特に、TLR7および/またはTLR8)活性のモジュレータとしての活性を有する。
【0017】
さらなる態様において、本発明は、1つまたは複数の薬学的に許容できる賦形剤、希釈剤または担体とともに、式(I)の化合物またはその薬学的に許容できる塩、溶媒和物もしくは多形体を含む医薬組成物を提供する。
【0018】
さらに、本発明に係る式(I)の化合物またはその薬学的に許容できる塩、溶媒和物もしくは多形体、または式(I)の前記化合物またはその薬学的に許容できる塩、溶媒和物もしくは多形体を含む医薬組成物は、薬剤として使用され得る。
【0019】
本発明の別の態様は、式(I)の化合物またはその薬学的に許容できる塩、溶媒和物もしくは多形体、または式(I)の前記化合物またはその薬学的に許容できる塩、溶媒和物もしくは多形体を含む前記医薬組成物が、TLR7および/またはTLR8の調節が関与する疾患の治療に相応に使用され得ることである。
【0020】
「アルキル」という用語は、規定数の炭素原子を含有する直鎖状または分枝鎖状飽和脂肪族炭化水素を指す。
【0021】
「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を指す。
【0022】
「アルケニル」という用語は、少なくとも2つの炭素原子および少なくとも1つの炭素−炭素二重結合からなる上に定義されるアルキルを指す。
【0023】
「アルキニル」という用語は、少なくとも2つの炭素原子および少なくとも1つの炭素−炭素三重結合からなる上に定義されるアルキルを指す。
【0024】
「シクロアルキル」という用語は、規定数の炭素原子を含有する炭素環を指す。
【0025】
「ヘテロアリール」という用語は、N、OおよびSから、特に、NおよびOから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む、「アリール」という用語について定義される芳香環構造を意味する。
【0026】
「アリール」という用語は、N、OおよびSから、特に、NおよびOから選択される1つまたは2つのヘテロ原子を任意に含む芳香環構造を意味する。前記芳香環構造は、4つ、5つ、6つまたは7つの環原子を有し得る。特に、前記芳香環構造は、5つまたは6つの環原子を有し得る。
【0027】
「二環式複素環」という用語は、2つの縮合芳香環を含む、「アリール」という用語について定義される芳香環構造を意味する。各環は、N、OおよびSから、特に、NおよびOから選択されるヘテロ原子を任意に含む。
【0028】
「アリールアルキル」という用語は、アルキル基で任意に置換される、「アリール」という用語について定義される芳香環構造を意味する。
【0029】
「ヘテロアリールアルキル」という用語は、アルキル基で任意に置換される、「ヘテロアリール」という用語について定義される芳香環構造を意味する。
【0030】
「アルコキシ」という用語は、例えば、メトキシ基またはエトキシ基のような、酸素に単結合されるアルキル(炭素および水素鎖)基を指す。
【0031】
複素環は、飽和または部分的に飽和した分子を指し、エチルオキシド、テトラヒドロフラン、ジオキサンまたは他の環状エーテルを含む。窒素を含有する複素環としては、例えば、アゼチジン、モルホリン、ピペリジン、ピペラジン、ピロリジンなどが挙げられる。他の複素環としては、例えば、チオモルホリン、ジオキソリニル(dioxolinyl)、および環状スルホンが挙げられる。
【0032】
ヘテロアリール基は、芳香族性の複素環式基である。これらは、単環式、二環式、または多環式であり、N、OまたはSから選択される1つまたは複数のヘテロ原子を含有する。ヘテロアリール基は、例えば、イミダゾリル、イソオキサゾリル、フリル、オキサゾリル、ピロリル、ピリドニル(pyridonyl)、ピリジル、ピリダジニル、またはピラジニルであり得る。
【0033】
式(I)の化合物の薬学的に許容できる塩は、その酸付加塩および塩基塩を含む。好適な酸付加塩は、非毒性塩を形成する酸から形成される。好適な塩基塩は、非毒性塩を形成する塩基から形成される。
【0034】
本発明の化合物はまた、非溶媒和および溶媒和形態で存在してもよい。「溶媒和物」という用語は、本発明の化合物および1つまたは複数の薬学的に許容できる溶媒分子、例えば、エタノールを含む分子錯体を表すために、本明細書において使用される。
【0035】
「多形体」という用語は、本発明の化合物が2つ以上の形態または結晶構造で存在する能力を指す。
【0036】
本発明の化合物は、結晶性または非晶質製品として投与され得る。それらは、沈殿、結晶化、凍結乾燥、噴霧乾燥、または蒸発乾燥などの方法によって、例えば、固体プラグ、粉末、またはフィルムとして得られる。それらは、単独でまたは本発明の1つまたは複数の他の化合物と組み合わせて、または1つまたは複数の他の薬剤と組み合わせて投与され得る。一般に、それらは、1つまたは複数の薬学的に許容できる賦形剤とともに製剤として投与されるであろう。「賦形剤」という用語は、本発明の化合物以外の任意の成分を表すために、本明細書において使用される。賦形剤の選択は、具体的な投与形態、溶解性および安定性に対する賦形剤の影響、および剤形の性質などの要因に大きく左右される。
【0037】
本発明の化合物またはその任意のサブグループは、投与のために様々な医薬品形態へと製剤化され得る。適切な組成物として、薬剤を全身投与するのに通常用いられる全ての組成物が挙げられ得る。本発明の医薬組成物を調製するために、活性成分として、任意に付加塩形態の、有効量の特定の化合物が、薬学的に許容できる担体と緊密に混合して組み合わされ、その担体は、投与のために必要な製剤の形態に応じて様々な形態を取り得る。これらの医薬組成物は、例えば、経口、直腸、または経皮投与に好適な単一の剤形であるのが望ましい。例えば、経口剤形の組成物を調製する際、例えば、懸濁剤、シロップ、エリキシル剤、乳剤、および液剤(solution)などの経口液体製剤の場合、水、グリコール、油、アルコールなど;または粉剤、丸薬、カプセル剤、および錠剤の場合、でんぷん、糖、カオリン、希釈剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤などの固体担体などの通常の医薬品媒体のいずれも用いられ得る。投与しやすさのため、錠剤およびカプセル剤が、最も有利な経口投薬単位形態であり、その場合、固体医薬担体が明らかに用いられる。使用の直前に、液体形態に変換され得る固体形態製剤も含まれる。経皮投与に好適な組成物において、担体は、皮膚に大きな有害作用を与えない、少ない割合の任意の性質の好適な添加剤と任意に組み合わされた、浸透促進剤および/または好適な湿潤剤を任意に含む。前記添加剤は、皮膚への投与を容易にすることができ、および/または所望の組成物を調製するのに役立ち得る。これらの組成物は、様々な方法で、例えば、経皮パッチとして、スポットオン剤(spot−on)として、軟膏として投与され得る。本発明の化合物はまた、この方法による投与のための当該技術分野において用いられる方法および製剤によって、吸入または注入(insufflation)によって投与され得る。したがって、一般に、本発明の化合物は、液剤、懸濁剤または乾燥粉末の形態で肺に投与され得る。
【0038】
投与しやすさおよび投与量の均一性のために、単位剤形で上記の医薬組成物を製剤化するのが特に有利である。本明細書において使用される際の単位剤形は、単一の投薬として好適な物理的に別個の単位を指し、各単位は、所要の医薬担体とともに所望の治療効果を生じるように計算された所定の量の活性成分を含有する。このような単位剤形の例は、錠剤(分割錠またはコーティング錠を含む)、カプセル剤、丸薬、粉末パケット、カシェ剤(wafer)、坐剤、注射用液剤または懸濁剤など、およびそれらの分割された複数のもの(segregated multiple)である。
【0039】
感染症の治療の当業者は、以下に示される試験結果から有効量を決定することができるであろう。一般に、有効な一日当たりの量は、0.01mg/kg〜50mg/kg体重、より好ましくは0.1mg/kg〜10mg/kg体重であろうと考えられる。1日を通して適切な間隔で、2回、3回、4回またはそれ以上の分割用量(sub−dose)として必要な用量を投与するのが適切なことがある。前記分割用量は、例えば、単位剤形当たり1〜1000mg、特に、5〜200mgの活性成分を含有する単位剤形として製剤化され得る。
【0040】
正確な投薬量および投与の頻度は、当業者に周知のように、使用される式(I)の特定の化合物、治療される特定の病態、治療される病態の重症度、特定の患者の年齢、体重および全身的な身体状態ならびに個体が摂取している可能性のある他の薬剤に応じて決まる。さらに、有効量が、治療される被験体の応答に応じて、および/または本発明の化合物を処方する医師の評価に応じて、減少または増加され得ることが明らかである。したがって、上記の有効量の範囲は、指針に過ぎず、本発明の範囲または使用を、いかなる程度であれ限定することは意図されていない。
【0041】
一般的な合成方法
スキーム1
【化6】

式(I)(式中、BがNCORである)の化合物を、スキーム1にしたがって調製した。IIIの調製において、炭酸グアニジンが、エタノールなどのアルコール溶媒中で、塩基(例えばナトリウムエトキシド)とともにまたはそれを伴わずに使用され得ることが分かった。クロロピリミドIVを得るためのヒドロキシピリミジン環(III)の塩素化は、1つの溶媒としてのPOClなどの塩素化剤を用いて、他の溶媒(すなわちジクロロメタン)とともに、または塩基、例えばN,N−ジメチルアニリンと組み合わせてのいずれかで行われ得る。中間体Vを得るための塩素の置換は、塩基(例えばDIPEA)とともにまたはそれを伴わずに、過剰のアミン(NH−R)を用いて、極性溶媒(例えば、アセトニトリルまたはDMF)中で、高温で行われ得る。中間体VIを得るためのVのBoc保護は、ジクロロメタンまたはTHFなどの非極性溶媒中で、触媒N,N−ジメチルアミノピリジン(DMAP)を用いて行われ得る。N−ベンジル(Bn)基の除去は、接触水素化を介して行われ得る。式Iのアミド生成物の形成は、VIIを、過剰の塩基(例えばトリエチルアミン)と組み合わせて酸塩化物と;カップリング剤(例えばHBTU)および塩基(例えばトリエチルアミン)と組み合わせてカルボン酸と反応させることによって行われ得る。
【実施例】
【0042】
式Iの化合物の調製
スキーム2.
【化7】
【0043】
Bの調製
【化8】

エタノール(170mL)中のA(19.5g、68.7mmol)および炭酸グアニジン(19.5g、41.23mmol)の懸濁液を、120℃で16時間加熱した。溶媒を減圧下で除去し、アセトニトリル中で再構成し(reconstitute)、ここで、粗生成物が沈殿し、それをろ過によって単離した。固体を、さらに精製せずに、次の工程にそのまま使用した。
1H NMR(300MHz、DMSO−d)δ ppm 2.35〜2.46(m,2H)、2.57〜2.65(m,2H)、3.04(s,2H)、3.60(s,2H)、6.28(br.s.,2H)、7.27(dt,J=8.7、4.5Hz、1H)、7.31〜7.36(m,4H)、10.74(br.s.,1H)
MS m/z:257[M+H
【0044】
Cの調製
【化9】

オキシ塩化ホスホリル(POCl)(90mL)中のB(8.2g、32mmol)の溶液を、100℃で16時間加熱した。冷ました後、溶媒を減圧下で除去し、残渣を、酢酸エチル(150mL)に溶解させ、飽和NaHCO水溶液(3×100mL)で洗浄した。有機層を組み合わせて、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、固体をろ過によって除去し、ろ液の溶媒を減圧下で除去した。固体を、さらに精製せずに、次の工程に使用した。
MS m/z:275[M+H
【0045】
Dの調製
【化10】

ジオキサン(25mL)およびn−ブチルアミン(1.5mL、15.2mmol)中のC(2.78g、10.12mmol)の溶液を、120℃で16時間加熱した。室温に冷ました後、溶媒を減圧下で除去し、ジクロロメタンからジクロロメタン中5%のメタノールの勾配を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって、粗生成物を精製した。
H NMR(300MHz、クロロホルム−d)δ ppm 0.90〜1.01(m,3H)、1.28〜1.46(m,2H)、1.49〜1.64(m,2H)、2.70〜2.81(m,4H)、3.21(s,2H)、3.44(td,J=7.1、5.7Hz、2H)、3.74(s,2H)、4.47(br.s.,1H)、5.21〜5.46(m,2H)、7.30〜7.40(m,5H)
MS m/z:312[M+H
【0046】
Eの調製
【化11】

THF(60mL)中のD(3g、9.63mmol)、二炭酸ジ−tert−ブチル(12.6g、57.8mmol)および4−N,N−ジメチルアミノピリジン(0.118g、0.1mmol)の溶液を、4時間にわたって80℃まで加熱した。反応物を室温に冷まし、溶媒を減圧下で除去した。ヘプタンから酢酸エチルの勾配を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって、粗生成物を精製した。
MS m/z:612[M+H
【0047】
Fの調製
【化12】

E(0.711g、1.16mmol)エタノール(6mL)の溶液に、0.2w/w当量のPd/C(10%、湿潤)(71mg)を加えた。フラスコを密閉し;大気を真空によって除去した。フラスコに、水素ガスで満たしたバルーンを取り付けた。混合物を、室温で16時間撹拌する。混合物を充填セライト上でろ過し、ろ液の溶媒を減圧下で除去した。ジクロロメタンからジクロロメタン中5%のメタノールの勾配を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって、粗生成物を精製した。
H NMR(300MHz、クロロホルム−d)δ ppm 0.90(t,J=7.4Hz、3H)、1.19〜1.36(m,2H)、1.41〜1.50(m,27H)、1.51〜1.58(m,2H)、1.64(s,2H)、2.91〜3.02(m,2H)、3.26(t,J=6.1Hz、2H)、3.71〜3.82(m,2H)、3.86(s,1H)
MS m/z:523[M+H
【0048】
化合物1の調製
【化13】

ジクロロメタン(2mL)中の、F(100mg、0.191mmol)と、DMAP(2mg、0.0.19mmol)と、EtN(0.081mL、0.576mmol)との混合物に、0℃でシクロブタンカルボニルクロリド(25mg、0.21mmol)を加えた。混合物を室温に達するまで放置し、16時間撹拌した。HCl(1N、1mL)を加え、反応物をさらに30分間撹拌し、次に、NaHCO(飽和水溶液、10mL)を加えた。混合物を、酢酸エチル(3×10mL)で抽出し、組み合わされた有機層をMgSO上で乾燥させ、固体をろ過によって除去し、ろ液の溶媒を減圧下で除去した。ヘプタンから酢酸エチルの勾配を用いたシリカカラムクロマトグラフィーによって、粗生成物を精製した。最良の画分を合わせ、溶媒を、減圧下で除去したところ、化合物1が得られた。
MS m/z:304[M+H
【0049】
実施例
式(I)(式中、AがNCORである)の化合物を、スキーム3にしたがって調製した。
スキーム3.
【化14】
【0050】
Hの調製
【化15】

エタノール(5mL)中のG(0.5g、1.76mmol)および炭酸グアニジン(190mg、1.06mmol)の懸濁液を、16時間にわたって加熱還流させた。溶媒を減圧下で除去し、粗生成物がアセトニトリル中に沈殿し、それをろ過によって単離した。固体を、さらに精製せずに、次の工程にそのまま使用した。
MS m/z:257[M+H
【0051】
Iの調製
【化16】

オキシ塩化ホスホリル(POCl)(65mL)中のH(6g、23.4mmol)の溶液を、100℃で3時間加熱した。冷ました後、溶媒を減圧下で除去し、残渣を、酢酸エチル(150mL)に溶解させ、飽和NaHCO水溶液(3×100mL)で洗浄した。有機層を組み合わせて、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、固体をろ過によって除去し、ろ液の溶媒を減圧下で除去した。5%のメタノール中のジクロロメタンの勾配を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって、粗固体を精製した。
MS m/z:275[M+H
【0052】
Jの調製
【化17】

DMA(25mL)およびn−ブチルアミン(1.5mL、15.2mmol)中のI(2.78g、10.12mmol)の溶液を、120℃で16時間加熱した。室温に冷ました後、溶媒を減圧下で除去し、ジクロロメタンからジクロロメタン中3%のメタノールの勾配を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって、粗生成物を精製した。
H NMR(300MHz、クロロホルム−d)δ ppm 0.76〜0.87(m,3H)、1.16〜1.35(m,2H)、1.38〜1.71(m,2H)、2.00(quin,J=6.9Hz、2H)、2.64(td,J=7.4、2.4Hz、2H)、3.46(dd,J=11.4、2.6Hz、1H)、3.52(dd,J=5.1、2.2Hz、1H)、3.72(s,2H)、3.84(td,J=6.3、1.8Hz、1H)、4.06(d,J=2.7Hz、1H)、4.48(br.s.,2H)、4.89(d,J=8.7Hz、1H)、6.72〜6.80(m,2H)、7.02(d,J=8.7Hz、2H)、7.25(s,1H)
MS m/z:312[M+H
【0053】
Kの調製
【化18】

THF(50mL)中のJ(3g、9.63mmol)、二炭酸ジ−tert−ブチル(12.6g、57.8mmol)および4−N,N−ジメチルアミノピリジン(0.118g、0.1mmol)の溶液を、4時間にわたって80℃まで加熱した。反応物を室温に冷まし、溶媒を減圧下で除去した。ヘプタンから酢酸エチルの勾配を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって、粗生成物を精製した。
MS m/z:612[M+H
【0054】
Lの調製
【化19】

K(0.711g.1.16mmol)エタノール(6mL)の溶液に、0.2w/w当量のPd/C(10%、湿潤)(0.071g)を加え、水素(バルーン)の雰囲気下で16時間撹拌した。混合物を充填セライト上でろ過し、ろ液の溶媒を減圧下で除去した。ヘプタンから酢酸エチルの勾配を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって、粗生成物を精製した。
MS m/z:523[M+H
【0055】
化合物2の調製
【化20】

L(100mg、0.191mmol)の溶液に、ジクロロメタン(3mL)中のEtN(58mg、0.58mmol)塩化ベンゾイル(30mg、0.211mmol)、およびDMAP(2mg、0.019mmol)を加え、次に、室温で16時間撹拌した。これに、NaHCO(飽和水溶液、10mL)を加え、混合物を、酢酸エチル(3×10mL)で抽出した。有機層を組み合わせて、MgSO上で乾燥させ、固体をろ過によって除去し、ろ液の溶媒を減圧下で除去した。ジクロロメタンからジクロロメタン中5%のメタノールの勾配を用いたシリカカラムクロマトグラフィーによって、粗生成物を精製した。精製されたboc保護された生成物を、イソプロパノール中のHClの添加によって脱保護した。
【0056】
化合物3の調製
【化21】

DMF(3mL)中のL(90mg、0.173mmol)の溶液に、DIPEA(33mg、0.26mmol)、HBTU(72mg、0.19mmol)および1−メチル−2−ピロールカルボン酸(23mg、0.18mmol)を加え、室温で16時間撹拌した。これに、NaHCO(飽和水溶液、10mL)を加え、混合物を、酢酸エチル(3×10mL)で抽出した。有機層を組み合わせて、乾燥させ(MgSO)、固体をろ過によって除去し、ろ液の溶媒を減圧下で除去した。ジクロロメタンからジクロロメタン中3%のメタノールの勾配を用いたシリカカラムクロマトグラフィーによって、粗生成物を精製した。精製されたboc保護された生成物を、イソプロパノール中のHClの添加によって脱保護した。
【0057】
化合物4の調製
【化22】

ジクロロメタン(2mL)中のL(110mg、0.2mmol)の撹拌溶液に、トリエチルアミン(60mg、0.6mmol)、DMAP(6mg、0.05mmol)およびシクロプロパンカルボニルクロリド(24mg、0.23mmol)を加え、混合物を室温で16時間撹拌した。これに、NaHCO(飽和水溶液、50mL)を加え、混合物を、酢酸エチル(3×10mL)で抽出した。有機層を組み合わせて、乾燥させ(MgSO)、固体をろ過によって除去し、ろ液の溶媒を減圧下で除去した。ヘプタンから酢酸エチルの勾配を用いたシリカカラムクロマトグラフィーによって、粗生成物を精製した。精製されたboc保護された生成物を、イソプロパノール中のHClの添加によって脱保護した。
【0058】
表1:式(I)の化合物
生成物を、上述した方法のうちの1つによって調製した。表I Aは、A=NCORである化合物を表し、表I Bは、B=NCORである化合物を表し、表I Cは、それぞれ両方の位置異性体化合物を含む。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
【表3】
【0062】
【表4】
【0063】
【表5】
【0064】
【表6】
【0065】
【表7】
【0066】
【表8】
【0067】
【表9】
【0068】
【表10】
【0069】
【表11】
【0070】
【表12】
【0071】
【表13】
【0072】
【表14】
【0073】
【表15】
【0074】
分析方法
全ての化合物を、LC−MSによって特性評価した。以下のLC−MS方法を使用した:
【0075】
全ての分析を、デガッサを備えたバイナリポンプ、オートサンプラ、サーモスタットカラムコンパートメントおよびダイオードアレイ検出器からなるAgilent 1100シリーズの液体クロマトグラフィー(LC)システムに連結されたAgilent 1100シリーズのLC/MSD四重極を用いて行った。質量分析計(MS)を、正イオンモードでの大気圧エレクトロスプレーイオン化(API−ES)源を用いて操作した。キャピラリ電圧を3000Vに設定し、フラグメンタ電圧を70Vに設定し、四重極温度を100℃に維持した。乾燥ガス流量および温度値はそれぞれ、12.0L/分および350℃であった。35psigの圧力で、窒素を噴霧器ガスとして使用した。データ収集を、Agilent Chemstationソフトウェアを用いて行った。
【0076】
2.6mL/分の流量で、35℃でYMC pack ODS−AQ C18カラム(50mmの長さ×4.6mmの内径;3μmの粒子)において分析を行った。勾配溶離を、95%(水+0.1%のギ酸)/5%のアセトニトリルから5%(水+0.1%のギ酸)/95%のアセトニトリルへと4.80分間で行い、次に、最終的な移動相組成物を、さらに1.00分間保持した。標準的な注入量は2μLであった。収集範囲を、UV−PDA検出器では190〜400nmおよびMS検出器では100〜1400m/zに設定した。
【0077】
300MHzのUltrashield磁石を備えたBRUKER Avance III Spectrometerを用いて行われるNMR分析。
【0078】
生物学的アッセイの説明
TLR7およびTLR8活性の評価
化合物がヒトTLR7および/またはTLR8を活性化する能力を、TLR7またはTLR8発現ベクターおよびNFκB−lucレポーター構築物で一過的にトランスフェクトされたHEK293細胞を用いた細胞レポーターアッセイで評価した。一例として、TLR発現構築物は、それぞれの野生型配列またはTLRの2番目のロイシンリッチリピートの欠失を含む変異配列を発現する。このような変異TLRタンパク質は、アゴニスト活性化の影響をより受けやすいことが既に示されている(米国特許第7498409号明細書)。
【0079】
簡潔に述べると、HEK293細胞を、培養培地(10%のFCSおよび2mMのグルタミンが補充されたDMEM)中で成長させた。10cmの皿における細胞のトランスフェクションのために、細胞をトリプシン−EDTAで剥がし、CMV−TLR7またはTLR8プラスミド(750ng)と、NFκB−lucプラスミド(375ng)と、トランスフェクション試薬との混合物でトランスフェクトし、加湿した5%のCO2雰囲気中37℃で、一晩インキュベートした。次に、トランスフェクトされた細胞をトリプシン−EDTAで剥がし、PBS中で洗浄し、1.67×10個の細胞/mLの密度で培地に再懸濁させた。次に、30マイクロリットルの細胞を、4%のDMSO中の10μLの化合物が既に存在する、384ウェルプレートにおける各ウェル中に計量分配した。37℃、5%のCO2で6時間のインキュベーションの後、15μlのSteady Lite Plus基質(Perkin Elmer)を各ウェルに加えることによって、ルシフェラーゼ活性を測定し、ViewLux ultraHTSマイクロプレートイメージャー(Perkin Elmer)において読み取りを行った。4通りに行った測定から用量反応曲線を作成した。アッセイの標準偏差より少なくとも2倍高い効果を誘発する濃度として定義される最低有効濃度(LEC)値を、各化合物について求めた。
【0080】
384ウェルプレートにおいて、CMV−TLR7構築物のみ(1.67×10個の細胞/mL)でトランスフェクトされた、ウェル当たり30μLの細胞とともに同様の希釈系列の化合物を用いて、化合物の毒性を、並行して決定した。ウェル当たり15μLのATP lite(Perkin Elmer)を加え、ViewLux ultraHTSマイクロプレートイメージャー(Perkin Elmer)において読み取ることによって、37℃、5%のCO2で6時間のインキュベーションの後の細胞生存率を測定した。データをCC50として報告した。
【0081】
式(I)の化合物の生物学的活性。全ての化合物は、上述したHEK 293 TOXアッセイにおいて、24uMを超えるCC50を示した。
【0082】
表2.式(I)の化合物の生物学的活性
表II Aは、A=NCORである化合物を表す一方、表II Bは、B=NCORである化合物を表し、表II Cは、それぞれ両方の位置異性体化合物を含む。
【0083】
【表16】
【0084】
【表17】
【0085】
【表18】
【0086】
【表19】
【0087】
【表20】
【0088】
【表21】
【0089】
【表22】

本願は以下の発明に関するものである。
(1) 式(I)
【化23】

(式中、
Aが、任意の立体化学配置におけるCH、NCOR、CHRおよびCRからなる群から選択され、
Bが、任意の立体化学配置におけるCH、NCOR、CHRおよびCRからなる群から選択され、
ただし、AがNCORである場合、BはNCORではなく、AおよびBの両方が、CH、CHRまたはCRから選択されるわけではなく、
Xが、任意の立体化学配置におけるCHまたはCHRから選択され、
が、以下のもの:C1〜6アルキル、C3〜7シクロアルキル、ヒドロキシル、ヒドロキシアルキル、アミノ、ニトリル、アルコキシ、アルコキシ−(C1〜4)アルキル、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルバメートまたはスルホンのうちの1つまたは複数で任意に置換されるC1〜8アルキルから選択され、
が、置換または非置換のC1〜6アルキル、C3〜7シクロアルキル、複素環、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキルから選択され、これらのそれぞれが、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、C1〜6アルキル、ジ−(C1〜6)アルキルアミノ、C1〜6アルキルアミノ、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ、C3〜6シクロアルキル、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸アミド、複素環、アリール、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキルまたはニトリルから独立して選択される1つまたは複数の置換基で任意に置換され、 Rが、水素、置換または非置換のC1〜6アルキル、アルコキシ、アルコキシ−(C1〜4)アルキル、C3〜7シクロアルキル、C4〜7複素環、芳香族、二環式複素環、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキルから選択され、これらのそれぞれが、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、C1〜6アルキル、ジ−(C1〜6)アルキルアミノ、C1〜6アルキルアミノ、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ、C3〜6シクロアルキル、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸アミド、複素環、アリール、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキルまたはニトリルから独立して選択される1つまたは複数の置換基で任意に置換され、
が、置換または非置換のC1〜7アルキル、アルコキシ、アルコキシ−(C1〜4)アルキル、アリールまたはC3〜7シクロアルキルから選択され、これらのそれぞれが、複素環、ニトリル、ヘテロアリールアルキルまたはヘテロアリールで任意に置換され、 Rが、芳香族、二環式複素環、アリール、ヘテロアリールから選択され、これらのそれぞれが、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、C1〜6アルキル、ジ−(C1〜6)アルキルアミノ、C1〜6アルキルアミノ、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ、C3〜6シクロアルキル、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸アミド、複素環、アリール、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキルまたはニトリルから独立して選択される1つまたは複数の置換基で任意に置換される)
の化合物またはその薬学的に許容できる塩、互変異性体、溶媒和物もしくは多形体。
(2) Rがブチルであり、A、B、およびXが上に規定されるとおりである、上記(1)に記載の式(I)の化合物。
(3) Rが、ヒドロキシルで置換されるC4〜8アルキルであり、A、B、およびXが上に規定されるとおりである、上記(1)に記載の式(I)の化合物。
(4) ヒドロキシルで置換されるC4〜8アルキルであるRが、以下のもの
【化24】

のうちの1つである、上記(3)に記載の式(I)の化合物。
(5) XがCHであり、AおよびBが上に規定されるとおりである、上記(1)に記載の式(I)の化合物。
(6) XがCHであり、AがCHであり、Bが上に規定されるとおりである、上記(1)に記載の式(I)の化合物。
(7) Rが、C1〜3アルキル、ヒドロキシル、アルコキシ、ニトリル、複素環、カルボン酸エステル、またはカルボン酸アミドでさらに置換され得る以下の例:
【化25】

のうちの1つである、上記(1)に記載の式(I)の化合物。
(8) 1つまたは複数の薬学的に許容できる賦形剤、希釈剤または担体とともに、上記(1)〜(7)のいずれか一項に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容できる塩、互変異性体、溶媒和物もしくは多形体を含む医薬組成物。
(9) 薬剤として使用するための、上記(1)〜(7)のいずれか一項に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容できる塩、互変異性体、溶媒和物もしくは多形体、または上記(8)に記載の医薬組成物。
(10) TLR7および/またはTLR8の調節が関与する疾患の治療に使用するための、上記(1)〜(7)のいずれか一項に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容できる塩、互変異性体、溶媒和物もしくは多形体、または上記(8)に記載の医薬組成物。