【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1特徴構成は、塗装排気処理システムの運転方法に係り、その特徴は、
被塗物をスプレー塗装する塗装室からの排出空気をろ過処理して、その排出空気に含まれるオーバースプレー塗料を捕集するフィルタと、
前記排出空気にフィルタ被覆層形成用の粉剤を分散させて、前記排出空気のフィルタ通過に伴い前記フィルタの表面に粉剤集積層からなるフィルタ被覆層を形成する粉剤分散手段とを備える塗装排気処理システムの運転方法であって、
第1運転では、第1供給タンクからの供給粉剤を前記粉剤分散手段により前記排出空気に分散させて、その排出空気を前記フィルタに通過させる第1排気処理工程を実施するとともに、
中継タンクにおける塗料混じり粉剤を再生処理部で再生処理して、再生処理後の粉剤を第2供給タンクに貯留する第1再生工程と、
この第1再生工程でタンク内の塗料混じり粉剤を前記再生処理部に送った後の前記中継タンクに、前記第1排気処理工程でのフィルタ清掃処理により前記フィルタから除去した塗料混じり粉剤を貯留する第1貯留工程とを実施し、
第2運転では、前記第2供給タンクからの供給粉剤を前記粉剤分散手段により前記排出空気に分散させて、その排出空気を前記フィルタに通過させる第2排気処理工程を実施するとともに、
前記中継タンクにおける塗料混じり粉剤を前記再生処理部で再生処理して、再生処理後の粉剤を前記第1供給タンクに貯留する第2再生工程と、
この第2再生工程でタンク内の塗料混じり粉剤を前記再生処理部に送った後の前記中継タンクに、前記第2排気処理工程でのフィルタ清掃処理により前記フィルタから除去した塗料混じり粉剤を貯留する第2貯留工程とを実施し、
これら第1運転と第2運転との交互の繰り返し実施において、
前記第1運転の繰り返し回数が設定回数に至ったとき、前記第1貯留工程で前記中継タンクに貯留した塗料混じり粉剤を使用限界粉剤として廃棄処理するとともに、前記第1排気処理工程で前記粉剤分散手段に粉剤を供給した後の前記第1供給タンクに新鮮粉剤を供給して、前記第1運転の繰り返し回数をリセットする第1運転更新処理を実施し、
同様に、前記第2運転の繰り返し回数が前記設定回数に至ったとき、前記第2貯留工程で前記中継タンクに貯留した塗料混じり粉剤を使用限界粉剤として廃棄処理するとともに、前記第2排気処理工程で前記粉剤分散手段に粉剤を供給した後の前記第2供給タンクに新鮮粉剤を供給して、前記第2運転の繰り返し回数をリセットする第2運転更新処理を実施する点にある。
【0009】
この第1特徴構成の運転方法によれば、第1運転における第1排気処理工程では、第1供給タンクからの供給粉剤が粉剤分散手段により塗装室からの排出空気に分散されることから、第1供給タンクの粉剤貯留量は単調減少する。
【0010】
また、第1運転における第1再生工程では、中継タンクにおける塗料混じり粉剤が再生処理部に送られて再生処理され、再生処理後の粉剤(即ち、再生粉剤)が第2供給タンクに貯留されることから、中継タンクの粉剤貯留量は単調減少し、逆に第2供給タンクの粉剤貯留量は単調増加する。
【0011】
さらに、第1運転における第1貯留工程では、第1排気処理工程でのフィルタ清掃処理によりフィルタから除去された塗料混じり粉剤が中継タンクに貯留されることから、中継タンクの粉剤貯留量は単調増加する。
【0012】
一方、第2運転における第2排気処理工程では、第2供給タンクからの供給粉剤が粉剤分散手段により塗装室からの排出空気に分散されることから、第2供給タンクの粉剤貯留量は単調減少する。
【0013】
また、第2運転における第2再生工程では、中継タンクにおける塗料混じり粉剤が再生処理部に送られて再生処理され、再生処理後の粉剤が第1供給タンクに貯留されることから、中継タンクの粉剤貯留量は単調減少し、逆に第1供給タンクの粉剤貯留量は単調増加する。
【0014】
さらに、第2運転における第2貯留工程では、第2排気処理工程でのフィルタ清掃処理によりフィルタから除去された塗料混じり粉剤が中継タンクに貯留されることから、中継タンクの粉剤貯留量は単調増加する。
【0015】
つまり、管理者は、これら第1供給タンク,第2供給タンク、中継タンクの夫々における粉剤貯留量の単調減少や単調増加を監視することで、各運転における各工程が順調に推移していることを容易に確認することができ、先ずはこの点でシステムの管理を容易にすることができる。
【0016】
また、第1運転及び第2運転を繰り返すと、再生処理を毎回行うにしても、再生粉剤における可燃物比率が次第に増加したり、再生粉剤の集積により形成するフィルタ被覆層の性状が次第に悪化するなどのことから、第1運転及び第2運転の繰り返しには限度があるが、第1特徴構成の運転方法によれば、実験結果や試運転結果などに基づき上記設定回数として適当な回数を設定しておくことで、再生粉剤における可燃物比率の増加やフィルタ被覆層の性状悪化を一定を許容範囲内で止めることができ、これにより、システムの安全性や性能も良好に保持することができる。
【0017】
そして、中継タンクに貯留した塗料混じり粉剤を使用限界粉剤として廃棄処理するとともに、粉剤分散手段に粉剤を供給した後の第1供給タンクや第2供給タンクに新鮮粉剤を供給して、第1運転や第2運転の繰り返し回数をリセットする第1運転更新処理や第2運転更新処理は、第1運転及び第2運転夫々の繰り返し回数が上記設定回数に達するごとに行うだけでよいから、この点でも、各回の第1運転や各回の第2運転ごとに第1供給タンクや第2供給タンクにおける粉剤の一部を廃棄処理するとともに、その廃棄量に等しい量の新鮮粉剤を第1供給タンクや第2供給タンクにおける貯留粉剤に混合するなどに比べ、システムの管理を容易にすることができる。
【0018】
なお、第1供給タンクや第2供給タンクには、1回の第1運転や1回の第2運転において必要な量だけの粉剤を貯留しておくようにすれば、前述の如き粉剤貯留量の単調減少や単調増加に基づくシステム稼働状態の良否判断も一層正確かつ容易にすることができる。
【0019】
本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成の運転方法を実施するのに好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
繰り返し回数が前記設定回数に至った前記第1運転に続いて実施する前記第2運転において前記第2運転の繰り返し回数が前記設定回数に至る状態に、
又は、繰り返し回数が前記設定回数に至った前記第2運転に続いて実施する前記第1運転において前記第1運転の繰り返し回数が前記設定回数に至る状態にしてある点にある。
【0020】
この第2特徴構成の運転方法によれば、第1運転と第2運転との交互の繰り返し実施において、第1運転更新処理と第2運転更新処理とを常に同時期に行うことができ、この点で、システムの管理を一層容易にすることができる。
【0021】
本発明の第3特徴構成は、第1特徴構成の運転方法を実施するのに好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
繰り返し回数が前記設定回数のほぼ半数に至った前記第1運転に続いて実施する前記第2運転において前記第2運転の繰り返し回数が前記設定回数に至る状態に、
又は、繰り返し回数が前記設定回数のほぼ半数に至った前記第2運転に続いて実施する前記第1運転において前記第1運転の繰り返し回数が前記設定回数に至る状態にしてある点にある。
【0022】
この第3特徴構成の運転方法によれば、第1運転と第2運転との交互の繰り返し実施において、第1運転の繰り返し回数が設定回数に近付いて第1運転で用いる粉剤のそれまでの再生処理回数が許容限度回数に近付いた状態においても、第2運転の繰り返し回数は設定回数の半分程度にしか至っておらず第2運転で用いる粉剤のそれまでの再生処理回数も許容限度回数の半分程度にしか至らない。
【0023】
また同様に、第2運転の繰り返し回数が設定回数に近付いて第2運転で用いる粉剤のそれまでの再生処理回数が許容限度回数に近付いた状態においても、第1運転の繰り返し回数は設定回数の半分程度にしか至っておらず第1運転で用いる粉剤のそれまでの再生処理回数も許容限度回数の半分程度にしか至らない。
【0024】
したがって、粉剤分散手段により塗装室からの排出空気に分散させる粉剤の平均的な再生処理回数の変動幅を小さくすることができて、使用粉剤における平均的な可燃物比率の増加幅を小さくしたり、フィルタ被覆層の平均的な性状の悪化幅を小さくするなどのことができ、これにより、システム性能の安定性を一層高めることができる。
【0025】
なお、繰り返し回数が設定回数のほぼ半数に至った第1運転に続いて実施する第2運転において第2運転の繰り返し回数が設定回数に至る状態に、又は、繰り返し回数が設定回数のほぼ半数に至った第2運転に続いて実施する第1運転において第1運転の繰り返し回数が設定回数に至る状態にするには、第1運転と第2運転との交互の繰り返し実施の初期において、第1運転更新処理の実施タイミングや第2運転更新処理の実施タイミングを意図的に調整すればよい。
【0026】
本発明の第4特徴構成は、塗装排気処理システムの運転方法に係り、その特徴は、
被塗物をスプレー塗装する塗装室からの排出空気をろ過処理して、その排出空気に含まれるオーバースプレー塗料を捕集するフィルタと、
前記排出空気にフィルタ被覆層形成用の粉剤を分散させて、前記排出空気のフィルタ通過に伴い前記フィルタの表面に粉剤集積層からなるフィルタ被覆層を形成する粉剤分散手段とを備える塗装排気処理システムの運転方法であって、
供給タンクからの供給粉剤を前記粉剤分散手段により前記排出空気に分散させて、その排出空気を前記フィルタに通過させる排気処理工程と、
前記排気処理工程でのフィルタ清掃処理により前記フィルタから除去した塗料混じり粉剤を中継タンクに貯留する貯留工程と、
この中継タンクにおける塗料混じり粉剤を予め固定的に設定してある設定分別比で廃棄対象粉剤と再生対象粉剤とに分別する分別工程と、
この分別工程で分別した廃棄対象粉剤を廃棄処理する廃棄工程と、
前記分別工程で分別した再生対象粉剤を再生処理部で再生処理する再生工程と、
この再生工程で再生処理した粉剤を前記供給タンクに戻すとともに、前記廃棄工程で廃棄処理した粉剤と同量の新鮮粉剤を前記供給タンクに供給する粉剤更新工程との夫々を繰り返して実施する点にある。
【0027】
前述の如く再生処理を毎回行うにしても粉剤の繰り返し使用には限度があるが、この第4特徴構成の運転方法では、分別工程で分別した廃棄対象粉剤を廃棄処理し、この廃棄粉剤と同量の新鮮粉剤を粉剤更新工程で再生粉剤に混合して、この混合粉剤を排気処理工程で供給タンクから粉剤分散手段に供給することから、塗料混じり粉剤を廃棄対象粉剤と再生対象粉剤とに分別する分別工程での設定分別比として、実験結果や試運転結果などに基づき適当な値を設定しておけば、塗料混じり粉剤を毎回再生処理して繰り返し使用する形態を採りながらも、排気処理工程で粉剤分散手段に供給する混合粉剤(即ち、再生粉剤と新鮮粉剤とが混合した粉剤)における平均的な可燃物比率や、その混合粉剤の集積により形成するフィルタ被覆層の性状などを一定の許容範囲内に保つことができる。
【0028】
そして、この第4特徴構成の運転方法によれば、分別工程では、上記の如く実験結果や試運転結果などに基づいて予め固定的に設定してある設定分別比で塗料混じり粉剤を廃棄対象粉剤と再生対象粉剤とに分別するから、塗料混じり粉剤における塗料割合を測定装置により測定して、その測定結果に基づき新鮮粉剤と塗料混じり粉剤との混合量を調整制御するのに比べ、廃棄対象粉剤として廃棄工程で廃棄処理する粉剤の量、及び、粉剤更新工程で供給タンクに供給する新鮮粉剤の量が常に一定になり、この点でシステムの管理を容易にすることができる。
【0029】
また、測定装置による塗料割合の測定で生じる測定誤差に原因して、粉剤分散手段により排出空気に分散させる混合粉剤が不良になることも回避することができる。
【0030】
さらに、この第4特徴構成の運転方法によれば、各工程が定常状態にある状況では、粉剤更新工程で再生粉剤が供給タンクに戻されるとともに、廃棄粉剤と同量の新鮮粉剤が供給タンクに供給されるから、各工程の特性の影響などで多少の変動はあるにしても、供給タンクにおける粉剤貯留量はシステム特性上で決まるほぼ一定の定常貯留量に保たれる。
【0031】
したがって、管理者は、供給タンクにおける粉剤貯留量が定常貯留量に保たれているのを監視するだけで、各工程が良好に推移していることを容易に確認することができ、この点でもシステムの管理を容易にすることができる。
【0032】
そしてまた、この第4特徴構成の運転方法では、粉剤更新工程において再生粉剤と新鮮粉剤とを供給タンクで混合して、その混合粉剤を排気処理工程において粉剤分散手段により塗装室からの排出空気に分散させるから、再生処理していない塗料混じり粉剤と新鮮粉剤との混合粉剤を粉剤分散手段により排出空気に分散させるのに比べ、一層良好なフィルタ被覆層をフィルタ表面に形成することができ、この点で、フィルタでの排出空気の浄化効果も一層高く確保することができる。
【0033】
本発明の第5特徴構成は、塗装排気処理システムの運転方法に係り、その特徴は、
被塗物をスプレー塗装する塗装室からの排出空気をろ過処理して、その排出空気に含まれるオーバースプレー塗料を捕集するフィルタと、
前記排出空気にフィルタ被覆層形成用の粉剤を分散させて、前記排出空気のフィルタ通過に伴い前記フィルタの表面に粉剤集積層からなるフィルタ被覆層を形成する粉剤分散手段とを備える塗装排気処理システムの運転方法であって、
供給タンクからの供給粉剤を前記粉剤分散手段により前記排出空気に分散させて、その排出空気を前記フィルタに通過させる排気処理工程と、
この排気処理工程でのフィルタ清掃処理により前記フィルタから除去した塗料混じり粉剤を中継タンクに貯留する貯留工程と、
この中継タンクにおける塗料混じり粉剤を廃棄対象とする不適正粉剤と再生対象とする適正粉剤とに選別する選別工程と、
この選別工程で選別した廃棄対象の不適性粉剤を廃棄処理する廃棄工程と、
前記選別工程で選別した再生対象の適正粉剤を再生処理部で再生処理する再生工程と、
この再生工程で再生処理した粉剤を前記供給タンクに戻すとともに、前記廃棄工程で廃棄処理した粉剤と同量の新鮮粉剤を前記供給タンクに供給する粉剤更新工程との夫々を繰り返して実施する点にある。
【0034】
この第5特徴構成の運転方法では、選別工程で選別した不適正粉剤を廃棄処理し、この廃棄粉剤と同量の新鮮粉剤を粉剤更新工程で再生粉剤に混合して、この混合粉剤を排気処理工程で供給タンクから粉剤分散手段に供給することから、塗料混じり粉剤を廃棄対象の不適正粉剤(即ち、再生処理が難しい塗料混じり粉剤)と再生対象の適正粉剤(即ち、再生処理が比較的容易な塗料混じり粉剤)とに選別する選別工程での選別基準や選別法として適当な選別基準及び選別法を選択しておけば、塗料混じり粉剤を毎回再生処理して繰り返し使用する形態を採りながらも、排気処理工程で粉剤分散手段に供給する混合粉剤(即ち、再生粉剤と新鮮粉剤とが混合した粉剤)における平均的な可燃物比率や、その混合粉剤の集積により形成するフィルタ被覆層の性状などを一層効果的に一定の許容範囲内に保つことができる。
【0035】
また、この第5特徴構成の運転方法によれば、各工程が定常状態にある状況では、粉剤更新工程で再生粉剤が供給タンクに戻されるとともに、廃棄粉剤と同量の新鮮粉剤が供給タンクに供給されるから、各工程の特性の影響などで多少の変動はあるにしても、供給タンクにおける粉剤貯留量はシステム特性上で決まるほぼ一定の定常貯留量に保たれる。
【0036】
したがって、管理者は、供給タンクにおける粉剤貯留量が定常貯留量に保たれているのを監視するだけで、各工程が良好に推移していることを容易に確認することができ、この点でシステムの管理を容易にすることができる。
【0037】
そしてまた、この第5特徴構成の運転方法では、選別工程で選別した適正粉剤のみを再生処理して、その再生粉剤と新鮮粉剤との混合粉剤を排気処理工程で粉剤分散手段により塗装室からの排出空気に分散させるから、再生処理していない塗料混じり粉剤と新鮮粉剤との混合粉剤を粉剤分散手段により排出空気に分散させるのに比べ、また、単に比率的に分別した塗料混じり粉剤の一部を再生処理して、その再生粉剤と新鮮粉剤との混合粉剤を粉剤分散手段により排出空気に分散させるのに比べても、さらに良好なフィルタ被覆層をフィルタ表面に形成することができ、この点で、フィルタでの排出空気の浄化効果もさらに高く確保することができる。
【0038】
本発明の第6特徴構成は、塗装排気処理システムの運転方法に係り、その特徴は、
被塗物をスプレー塗装する塗装室からの排出空気をろ過処理して、その排出空気に含まれるオーバースプレー塗料を捕集するフィルタと、
前記排出空気にフィルタ被覆層形成用の粉剤を分散させて、前記排出空気のフィルタ通過に伴い前記フィルタの表面に粉剤集積層からなるフィルタ被覆層を形成する粉剤分散手段とを備える塗装排気処理システムの運転方法であって、
供給タンクからの供給粉剤を前記粉剤分散手段により前記排出空気に分散させて、その排出空気を前記フィルタに通過させる排気処理工程と、
この排気処理工程でのフィルタ清掃処理により前記フィルタから除去した塗料混じり粉剤を、前記排出空気の発生部位ごとに分別して互いに異なる容器に収容する分別収容工程と、
複数の前記容器のうち特定の容器に収容した塗料混じり粉剤を廃棄対象粉剤として廃棄処理する廃棄工程と、
複数の前記容器のうち他の容器に収容した粉剤を再生対象粉剤として再生処理部で再生処理する再生工程と、
この再生工程で再生処理した粉剤を前記供給タンクに戻すとともに、前記廃棄工程で廃棄処理した粉剤と同量の新鮮粉剤を前記供給タンクに供給する粉剤更新工程との夫々を繰り返して実施する点にある。
【0039】
この第6特徴構成の運転方法では、分別収容工程で排出空気の発生部位ごとに分別して互いに異なる容器に収容した塗料混じり粉剤のうち、特定の容器に収容した塗料混じり粉剤を廃棄対象粉剤として廃棄処理し、この廃棄粉剤と同量の新鮮粉剤を粉剤更新工程で再生粉剤に混合して、この混合粉剤を排気処理工程で供給タンクから粉剤分散手段に供給するから、複数の容器のうち再生処理が難しい塗料混じり粉剤が収容される容器(即ち、再生処理が難しい塗料混じり粉剤を含む排出空気が送出される排出空気発生部位に対応する容器)を特定容器として選択しておけば、塗料混じり粉剤を毎回再生処理して繰り返し使用する形態を採りながらも、排気処理工程で粉剤分散手段に供給する混合粉剤(再生粉剤と新鮮粉剤とが混合した粉剤)における平均的な可燃物比率や、その混合粉剤の集積により形成するフィルタ被覆層の性状などを一層効果的に一定の許容範囲内に保つことができる。
【0040】
そして、この第6特徴構成の運転方法によれば、分別収容工程で特定の容器に収容された塗料混じり粉剤を廃棄対象粉剤として廃棄処理するから、塗料混じり粉剤における塗料割合を測定装置により測定して、その測定結果に基づき新鮮粉剤と塗料混じり粉剤との混合量を調整制御するのに比べ、廃棄対象粉剤として廃棄工程で廃棄処理する粉剤の量、及び、粉剤更新工程で供給タンクに供給する新鮮粉剤の量が常に一定になり、この点でシステムの管理を容易にすることができる。
【0041】
また、測定装置による塗料割合の測定で生じる測定誤差が原因で、粉剤分散手段により排出空気に分散させる混合粉剤が不良になることも回避することができる。
【0042】
さらに、この第6特徴構成の運転方法によれば、各工程が定常状態にある状況では、粉剤更新工程で再生粉剤が供給タンクに戻されるとともに、廃棄粉剤と同量の新鮮粉剤が供給タンクに供給されるから、各工程の特性の影響などで多少の変動はあるにしても、供給タンクにおける粉剤貯留量はシステム特性上で決まるほぼ一定の定常貯留量に保たれる。
【0043】
したがって、管理者は、供給タンクにおける粉剤貯留量が定常貯留量に保たれているのを監視するだけで、各工程が良好に推移していることを容易に確認することができ、この点でもシステムの管理を容易にすることができる。
【0044】
そしてまた、この第6特徴構成の運転方法では、複数の容器のうち他の容器に収容された粉剤(即ち、再生処理が容易な塗料混じり粉剤)のみを再生処理して、その再生粉剤と新鮮粉剤との混合粉剤を排気処理工程で粉剤分散手段により塗装室からの排出空気に分散させるから、再生処理していない塗料混じり粉剤と新鮮粉剤との混合粉剤を粉剤分散手段により排出空気に分散させるのに比べ、また、単に比率的に分別した塗料混じり粉剤の一部を再生処理して、その再生粉剤と新鮮粉剤との混合粉剤を粉剤分散手段により排出空気に分散させるのに比べても、さらに良好なフィルタ被覆層をフィルタ表面に形成することができ、この点で、フィルタでの排出空気の浄化効果もさらに高く確保することができる。
【0045】
本発明の第7特徴構成は、第1〜第6特徴構成のいずれかの運転方法の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記再生処理部では、前記再生処理として、塗料混じり粉剤を加熱することで、その塗料混じり粉剤における塗料分を架橋反応させて硬化させる加熱処理と、その塗料混じり粉剤を粉砕して塗料混じり粉剤の粒径を小さくする粉砕処理とを実施する点にある。
【0046】
つまり、フィルタ清掃処理によりフィルタから除去される塗料混じり粉剤(即ち、フィルタ被覆層により捕捉したオーバースプレー塗料が含まれる粉剤と塗料との混合物)は、塗料を含むことで粘性を帯び、また、塗料の付着により粉剤個々の見掛け上の粒径が新鮮粉剤より大きくなっている。
【0047】
したがって、この塗料混じり粉剤を上記の如く加熱処理して塗料分を架橋反応により硬化させるとともに、粉砕処理により粒径を調整すれば、新鮮粉剤に近いものにすることができ、フィルタ被覆層形成用粉剤としての再使用が可能になる。
【0048】
このことから、上記第7特徴構成の運転方法によれば、粉剤を繰り返し使用する形態を採りながらも、塗装排気処理システムとして十分な性能を確保することができる。
【0049】
なお、第7特徴構成の運転方法を実施するのに、上記の加熱処理や粉砕処理を減圧空間において実施するようにすれば、塗料に含まれる液分を一層効率よく塗料分から離脱させることができ、これにより、再生処理の処理効率を高めるとともに、再生粉剤のフィルタ被覆層形成用粉剤としての品質も一層高めることができる。
【0050】
本発明の第8特徴構成は、第7特徴構成の運転方法の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記再生処理部では、前記再生処理として、再生室に収容した塗料混じり粉剤を回転刃の回転により粉砕処理するのに伴い、前記再生室の室壁を伝熱壁とする加熱器により加熱処理する点にある。
【0051】
この第8特徴構成の運転方法によれば、粉砕処理と加熱処理とを同時に行うから、塗料混じり粉剤の再生処理において一層高い処理効率を得ることができる。
【0052】
また、再生室の室壁を伝熱壁とする加熱器により加熱処理を行うから、再生室を気密化し易く、このことから、再生室を減圧して、粉砕処理や加熱処理を前述の如く減圧空間において行うようにすることも容易に実現することができる。
【0053】
本発明の第9特徴構成は、第7特徴構成の運転方法の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記再生処理部では、前記再生処理として、再生室に収容した塗料混じり粉剤を回転打撃子と固定衝突子とに対する衝突により粉砕処理するのに伴い、前記再生室に対する熱風供給により加熱処理する点にある。
【0054】
この第9特徴構成の運転方法によれば、第8特徴構成の運転方法と同様、粉砕処理と加熱処理とを同時に行うから、塗料混じり粉剤の再生処理において一層高い処理効率を得ることができる。
【0055】
また、この第9特徴構成の運転方法では、再生室に対する熱風供給により加熱処理を行うから、塗料に含まれる液分を塗料分から離脱させる乾燥処理も同時に効率良く行うことができ、この点からも再生処理の処理効率を高めることができ、また、再生粉剤のフィルタ被覆層形成用粉剤としての品質も高めることができる。
【0056】
本発明の第10特徴構成は、第1〜第6特徴構成のいずれかの運転方法の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記再生処理部では、前記再生処理として、塗料混じり粉剤を粉剤成分の熱分解に至らない温度で高温加熱することにより、その塗料混じり粉剤における塗料分を熱分解させる熱分解処理を実施する点にある。
【0057】
前述の如く、フィルタ清掃処理によりフィルタから除去される塗料混じり粉剤(即ち、フィルタ被覆層により捕捉したオーバースプレー塗料が含まれる粉剤と塗料との混合物)は、塗料を含むことで粘性を帯び、また、塗料の付着により粉剤個々の見掛け上の粒径が新鮮粉剤より大きくなっている。
【0058】
したがって、この塗料混じり粉剤を上記の如く高温加熱して塗料分を熱分解させてしまえば、新鮮粉剤に近いものにすることができ、フィルタ被覆層形成用粉剤としての再使用が可能になる。
【0059】
このことから、上記第10特徴構成の運転方法によれば、粉剤を繰り返し使用する形態を採りながらも、塗装排気処理システムとして十分な性能を確保することができる。
【0060】
本発明の第11特徴構成は、第10特徴構成の運転方法の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記再生処理部では、前記再生処理として、塗料混じり粉剤を収容する回転筒の筒壁を伝熱壁とするロータリーキルンにより、その回転筒に収容した塗料混じり粉剤における塗料分を熱分解処理する点にある。
【0061】
この第11特徴構成の運転方法であれば、筒壁を伝熱壁とする回転筒の回転により、その回転筒に収容した塗料混じり粉剤における塗料分を均一に効率良く熱分解処理することができ、塗料混じり粉剤の再生処理において一層高い処理効率を得ることができる。
【0062】
本発明の第12特徴構成は、第7〜第11特徴構成のいずれかの運転方法の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記再生処理部では、前記粉砕処理及び前記加熱処理した塗料混じり粉剤、又は、塗料混じり粉剤中の塗料分を前記熱分解処理した塗料混じり粉剤を、回転軸芯が一致する状態で近接させた2つの羽根車を処理室内で高速回転させる気流式微粉末製造機により微粉砕処理する点にある。
【0063】
この第12特徴構成によれば、粉砕処理及び加熱処理した塗料混じり粉剤、又は、塗料混じり粉剤中の塗料分を熱分解処理した塗料混じり粉剤を、上記気流式微粉末製造機により微粉剤処理することで、その塗料混じり粉剤の平均粒径をフィルタ被覆層形成用の粉剤として一層好適な粒径に調整することができ、これにより、再生粉剤のフィルタ被覆層形成用粉剤としての品質を一層高めることができる。
【0064】
本発明の第13特徴構成は、第7〜第11特徴構成のいずれかの運転方法の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記再生処理部では、前記粉砕処理及び前記加熱処理を施す前の塗料混じり粉剤、又は、塗料混じり粉剤中の塗料分を前記熱分解処理する前の塗料混じり粉剤を、回転軸芯が一致する状態で近接させた2つの羽根車を処理室内で高速回転させる気流式微粉末製造機により微粉砕処理する点にある。
【0065】
この第13特徴構成の運転方法によれば、粉砕処理及び加熱処理する前の塗料混じり粉剤、又は、塗料混じり粉剤中の塗料分を熱分解処理する前の塗料混じり粉剤を、上記気流式微粉末製造機により微粉砕処理することで、その塗料混じり粉剤の平均粒径を小さくして上記加熱処理や上記熱分解処理を一層効率良く行えるとともに、塗料分から液分を離脱させる乾燥処理も一層効率良く行うことができる。
【0066】
また、その塗料混じり粉剤の平均粒径もフィルタ被覆層形成用の粉剤として一層好適な粒径に調整することができ、これにより、再生処理の処理効率を一層高めるとともに、再生粉剤のフィルタ被覆層形成用粉剤としての品質も一層高めることができる。
【0067】
本発明の第14特徴構成は、第1〜第13特徴構成のいずれかの運転方法の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
フィルタ清掃処理により前記フィルタから除去されて落下する粉剤を受け入れる受入ホッパ、及び、この受入ホッパにおける堆積粉剤を開閉弁を通じて収容する粉剤容器を設けるとともに、
前記粉剤分散手段として、前記粉剤容器における収容粉剤を前記排出空気に噴出する粉剤ノズルを設け、
この構成において、前記第1排気処理工程、又は、前記第2排気処理工程、又は、前記排気処理工程では、
前記第1供給タンク又は前記第2供給タンク又は前記供給タンクから前記粉剤容器に粉剤を供給するのに続き、前記粉剤容器における収容粉剤を前記粉剤分散手段としての前記粉剤ノズルにより前記排出空気に噴出するとともに、フィルタ清掃処理により前記フィルタから除去した粉剤を前記受入ホッパに受け入れ、
その後、前記開閉弁の開き操作により前記受入ホッパにおける堆積粉剤を前記粉剤容器に収容することと、前記粉剤容器における収容粉剤を前記粉剤分散手段としての前記粉剤ノズルにより前記排出空気に噴出することと、フィルタ清掃処理により前記フィルタから除去した粉剤を前記受入ホッパに受け入れることとを繰り返す点にある。
【0068】
つまり、この第14特徴構成の運転方法では、第1供給タンク又は第2供給タンク又は供給タンクから粉剤容器に供給した粉剤を、先ずは前記第1排気処理工程又は前記第2排気処理工程又は前記排気処理工程における1回目の使用として、粉剤ノズルにより塗装室からの排出空気に噴出し、これにより、粉剤集積層からなるフィルタ被覆層をフィルタに形成して排出空気中のオーバースプレー塗料を捕集し、これに続き、フィルタ清掃処理によりフィルタから除去した粉剤を受入ホッパに受け入れる。
【0069】
その後は、上記の如く、開閉弁の開き操作により受入ホッパにおける堆積粉剤を粉剤容器に収容することと、粉剤容器における収容粉剤を粉剤分散手段としての粉剤ノズルにより塗装室からの排出空気に噴出することと、フィルタ清掃処理によりフィルタから除去した粉剤を受入ホッパに受け入れこととを繰り返すことにより、その粉剤を粉剤容器‐粉剤ノズル‐フィルタ‐受入ホッパの順に循環させる形態で、同じ第1排気処理工程又は同じ第2排気処理工程又は同じ排気処理工程における2回目〜n回目の使用として、再生処理に至るまでの間に複数回にわたり繰り返し使用する。
【0070】
換言すれば、フィルタ被覆層形成用の粉剤を、前記第1排気処理工程又は前記第2排気処理工程又は前記排気処理工程と再生工程との間で繰り返し工程間移送するのとは別に、1回の前記第1排気処理工程又は1回の前記第2排気処理工程又は1回の前記排気処理工程において粉剤容器‐粉剤ノズル‐フィルタ‐受入ホッパの順に循環させる形態で繰り返し使用する。
【0071】
即ち、この第14特徴構成の運転方法によれば、各回の前記第1排気処理工程又は各回の前記第2排気処理工程又は各回の前記排気処理工程において、粉剤を粉剤容器‐粉剤ノズル‐フィルタ‐受入ホッパの順に循環させて繰り返し使用した上で初めて再生処理部に送って再生処理するから、再生処理部における単位時間当たりの粉剤処理量を低減することができて、再生処理部を小型化することができ、これによりシステムの製造コストや運転コストを安価にすることができる。
【0072】
本発明の第15特徴構成は、第14特徴構成の運転方法の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記受入ホッパが単位時間当たりに受け入れる塗料混じり粉剤における塗料分の量を、前記受入ホッパにおける単位時間当たりの塗料受入量として求め、
前記第1排気処理工程又は前記第2排気処理工程又は前記排気処理工程において、時間計測に伴い前記単位時間当たりの塗料受入量を積算し、
この積算値が設定上限値になったとき、前記受入ホッパにおける堆積粉剤及び前記粉剤容器における収容粉剤を、前記第1貯留工程に送る、又は、前記第2貯留工程に送る、又は、前記分別工程に送る、又は、前記選別工程に送る、又は、前記廃棄工程と前記再生工程とのいずれかに送るとともに、前記第1供給タンク又は前記第2供給タンク又は前記供給タンクから前記粉剤容器に粉剤を補給する循環粉剤更新処理を行う点にある。
【0073】
つまり、粉剤を前述の如く粉剤容器‐粉剤ノズル‐フィルタ‐受入ホッパの順に循環させる形態で繰り返し使用することにおいて、上記の循環粉剤更新処理が遅れて循環粉剤における塗料分が過大になると、循環粉剤により形成するフィルタ被覆層が不良になって、排気処理性能が低下したり排出空気の搬送に支障を来すなどの問題が生じ、また逆に、循環粉剤における塗料分が未だ過小の状態で上記の循環粉剤更新処理を行うと、再生処理部における単位時間当たりの粉剤処理量が大きくなって粉剤の再生処理に支障を来す問題が生じる。
【0074】
これに対し、上記第15特徴構成の運転方法によれば、受入ホッパにおける単位時間当たり塗料受入量の積算値が設定上限値になったときに、上記の循環粉剤更新処理を行うから、上記の如き問題を確実に回避することができ、これにより、システムを良好な状態で安定的に運転することができる。
【0075】
また、受入ホッパにおける単位時間当たりの塗料受入量を求め、この単位時間当たりの塗料受入量を単に時間計測に伴い積算するだけですむから、受入ホッパに受け入れた塗料混じり粉剤の性状や物理量を逐次測定して、その測定結果に基づき循環粉剤更新処理の必要時点を判断するのに比べ、システムを簡素にすることができ、また、循環粉剤更新処理の必要時点も一層正確かつ安定的に判断することができる。