特許第6283326号(P6283326)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6283326
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】塗装排気処理システムの運転方法
(51)【国際特許分類】
   B05B 12/16 20180101AFI20180208BHJP
   B05B 14/00 20180101ALI20180208BHJP
   B05B 15/00 20180101ALI20180208BHJP
   B05B 16/00 20180101ALI20180208BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20180208BHJP
   B01D 46/00 20060101ALI20180208BHJP
   B09B 3/00 20060101ALI20180208BHJP
   B09B 5/00 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
   B05B15/04 104
   B05B15/00
   B05B15/12
   B05C11/10
   B01D46/00 EZAB
   B09B3/00 Z
   B09B3/00 302Z
   B09B3/00 303Z
   B09B3/00 304Z
   B09B5/00 Z
【請求項の数】15
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2015-48313(P2015-48313)
(22)【出願日】2015年3月11日
(65)【公開番号】特開2016-168520(P2016-168520A)
(43)【公開日】2016年9月23日
【審査請求日】2017年3月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000149790
【氏名又は名称】株式会社大気社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】関川 拓哉
【審査官】 安藤 達也
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−544640(JP,A)
【文献】 特開2013−166118(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/121882(WO,A1)
【文献】 特開平9−38484(JP,A)
【文献】 特開平6−47245(JP,A)
【文献】 特表2009−509760(JP,A)
【文献】 特開平5−84420(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/069407(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B1/00〜B05B17/08
B05C1/00〜B05C21/00
B05D1/00〜B05D7/26
B01D45/00〜B01D53/96
B09B3/00〜B09B5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗物をスプレー塗装する塗装室からの排出空気をろ過処理して、その排出空気に含まれるオーバースプレー塗料を捕集するフィルタと、
前記排出空気にフィルタ被覆層形成用の粉剤を分散させて、前記排出空気のフィルタ通過に伴い前記フィルタの表面に粉剤集積層からなるフィルタ被覆層を形成する粉剤分散手段とを備える塗装排気処理システムの運転方法であって、
第1運転では、第1供給タンクからの供給粉剤を前記粉剤分散手段により前記排出空気に分散させて、その排出空気を前記フィルタに通過させる第1排気処理工程を実施するとともに、
中継タンクにおける塗料混じり粉剤を再生処理部で再生処理して、再生処理後の粉剤を第2供給タンクに貯留する第1再生工程と、
この第1再生工程でタンク内の塗料混じり粉剤を前記再生処理部に送った後の前記中継タンクに、前記第1排気処理工程でのフィルタ清掃処理により前記フィルタから除去した塗料混じり粉剤を貯留する第1貯留工程とを実施し、
第2運転では、前記第2供給タンクからの供給粉剤を前記粉剤分散手段により前記排出空気に分散させて、その排出空気を前記フィルタに通過させる第2排気処理工程を実施するとともに、
前記中継タンクにおける塗料混じり粉剤を前記再生処理部で再生処理して、再生処理後の粉剤を前記第1供給タンクに貯留する第2再生工程と、
この第2再生工程でタンク内の塗料混じり粉剤を前記再生処理部に送った後の前記中継タンクに、前記第2排気処理工程でのフィルタ清掃処理により前記フィルタから除去した塗料混じり粉剤を貯留する第2貯留工程とを実施し、
これら第1運転と第2運転との交互の繰り返し実施において、
前記第1運転の繰り返し回数が設定回数に至ったとき、前記第1貯留工程で前記中継タンクに貯留した塗料混じり粉剤を使用限界粉剤として廃棄処理するとともに、前記第1排気処理工程で前記粉剤分散手段に粉剤を供給した後の前記第1供給タンクに新鮮粉剤を供給して、前記第1運転の繰り返し回数をリセットする第1運転更新処理を実施し、
同様に、前記第2運転の繰り返し回数が前記設定回数に至ったとき、前記第2貯留工程で前記中継タンクに貯留した塗料混じり粉剤を使用限界粉剤として廃棄処理するとともに、前記第2排気処理工程で前記粉剤分散手段に粉剤を供給した後の前記第2供給タンクに新鮮粉剤を供給して、前記第2運転の繰り返し回数をリセットする第2運転更新処理を実施する塗装排気処理システムの運転方法。
【請求項2】
繰り返し回数が前記設定回数に至った前記第1運転に続いて実施する前記第2運転において前記第2運転の繰り返し回数が前記設定回数に至る状態に、
又は、繰り返し回数が前記設定回数に至った前記第2運転に続いて実施する前記第1運転において前記第1運転の繰り返し回数が前記設定回数に至る状態にしてある請求項1に記載した塗装排気処理システムの運転方法。
【請求項3】
繰り返し回数が前記設定回数のほぼ半数に至った前記第1運転に続いて実施する前記第2運転において前記第2運転の繰り返し回数が前記設定回数に至る状態に、
又は、繰り返し回数が前記設定回数のほぼ半数に至った前記第2運転に続いて実施する前記第1運転において前記第1運転の繰り返し回数が前記設定回数に至る状態にしてある請求項1に記載した塗装排気処理システムの運転方法。
【請求項4】
被塗物をスプレー塗装する塗装室からの排出空気をろ過処理して、その排出空気に含まれるオーバースプレー塗料を捕集するフィルタと、
前記排出空気にフィルタ被覆層形成用の粉剤を分散させて、前記排出空気のフィルタ通過に伴い前記フィルタの表面に粉剤集積層からなるフィルタ被覆層を形成する粉剤分散手段とを備える塗装排気処理システムの運転方法であって、
供給タンクからの供給粉剤を前記粉剤分散手段により前記排出空気に分散させて、その排出空気を前記フィルタに通過させる排気処理工程と、
前記排気処理工程でのフィルタ清掃処理により前記フィルタから除去した塗料混じり剤を中継タンクに貯留する貯留工程と、
この中継タンクにおける塗料混じり粉剤を予め固定的に設定してある設定分別比で廃棄対象粉剤と再生対象粉剤とに分別する分別工程と、
この分別工程で分別した廃棄対象粉剤を廃棄処理する廃棄工程と、
前記分別工程で分別した再生対象粉剤を再生処理部で再生処理する再生工程と、
この再生工程で再生処理した粉剤を前記供給タンクに戻すとともに、前記廃棄工程で廃棄処理した粉剤と同量の新鮮粉剤を前記供給タンクに供給する粉剤更新工程との夫々を繰り返して実施する塗装排気処理システムの運転方法。
【請求項5】
被塗物をスプレー塗装する塗装室からの排出空気をろ過処理して、その排出空気に含まれるオーバースプレー塗料を捕集するフィルタと、
前記排出空気にフィルタ被覆層形成用の粉剤を分散させて、前記排出空気のフィルタ通過に伴い前記フィルタの表面に粉剤集積層からなるフィルタ被覆層を形成する粉剤分散手段とを備える塗装排気処理システムの運転方法であって、
供給タンクからの供給粉剤を前記粉剤分散手段により前記排出空気に分散させて、その排出空気を前記フィルタに通過させる排気処理工程と、
この排気処理工程でのフィルタ清掃処理により前記フィルタから除去した塗料混じり粉剤を中継タンクに貯留する貯留工程と、
この中継タンクにおける塗料混じり粉剤を廃棄対象とする不適正粉剤と再生対象とする適正粉剤とに選別する選別工程と、
この選別工程で選別した廃棄対象の不適性粉剤を廃棄処理する廃棄工程と、
前記選別工程で選別した再生対象の適正粉剤を再生処理部で再生処理する再生工程と、
この再生工程で再生処理した粉剤を前記供給タンクに戻すとともに、前記廃棄工程で廃棄処理した粉剤と同量の新鮮粉剤を前記供給タンクに供給する粉剤更新工程との夫々を繰り返して実施する塗装排気処理システムの運転方法。
【請求項6】
被塗物をスプレー塗装する塗装室からの排出空気をろ過処理して、その排出空気に含まれるオーバースプレー塗料を捕集するフィルタと、
前記排出空気にフィルタ被覆層形成用の粉剤を分散させて、前記排出空気のフィルタ通過に伴い前記フィルタの表面に粉剤集積層からなるフィルタ被覆層を形成する粉剤分散手段とを備える塗装排気処理システムの運転方法であって、
供給タンクからの供給粉剤を前記粉剤分散手段により前記排出空気に分散させて、その排出空気を前記フィルタに通過させる排気処理工程と、
この排気処理工程でのフィルタ清掃処理により前記フィルタから除去した塗料混じり粉剤を、前記排出空気の発生部位ごとに分別して互いに異なる容器に収容する分別収容工程と、
複数の前記容器のうち特定の容器に収容した塗料混じり粉剤を廃棄対象粉剤として廃棄処理する廃棄工程と、
複数の前記容器のうち他の容器に収容した粉剤を再生対象粉剤として再生処理部で再生処理する再生工程と、
この再生工程で再生処理した粉剤を前記供給タンクに戻すとともに、前記廃棄工程で廃棄処理した粉剤と同量の新鮮粉剤を前記供給タンクに供給する粉剤更新工程との夫々を繰り返して実施する塗装排気処理システムの運転方法。
【請求項7】
前記再生処理部では、前記再生処理として、塗料混じり粉剤を加熱することで、その塗料混じり粉剤における塗料分を架橋反応させて硬化させる加熱処理と、その塗料混じり粉剤を粉砕して塗料混じり粉剤の粒径を小さくする粉砕処理とを実施する請求項1〜6のいずれか1項に記載した塗装排気処理システムの運転方法。
【請求項8】
前記再生処理部では、前記再生処理として、再生室に収容した塗料混じり粉剤を回転刃の回転により粉砕処理するのに伴い、前記再生室の室壁を伝熱壁とする加熱器により加熱処理する請求項7に記載した塗装排気処理システムの運転方法。
【請求項9】
前記再生処理部では、前記再生処理として、再生室に収容した塗料混じり粉剤を回転打撃子と固定衝突子とに対する衝突により粉砕処理するのに伴い、前記再生室に対する熱風供給により加熱処理する請求項7に記載した塗装排気処理システムの運転方法。
【請求項10】
前記再生処理部では、前記再生処理として、塗料混じり粉剤を粉剤成分の熱分解に至らない温度で高温加熱することにより、その塗料混じり粉剤における塗料分を熱分解させる熱分解処理を実施する請求項1〜6のいずれか1項に記載した塗装排気処理システムの運転方法。
【請求項11】
前記再生処理部では、前記再生処理として、塗料混じり粉剤を収容する回転筒の筒壁を伝熱壁とするロータリーキルンにより、その回転筒に収容した塗料混じり粉剤における塗料分を熱分解処理する請求項10に記載した塗装排気処理システムの運転方法。
【請求項12】
前記再生処理部では、前記粉砕処理及び前記加熱処理した塗料混じり粉剤、又は、塗料混じり粉剤中の塗料分を前記熱分解処理した塗料混じり粉剤を、回転軸芯が一致する状態で近接させた2つの羽根車を処理室内で高速回転させる気流式微粉末製造機により微粉砕処理する請求項7〜11のいずれか1項に記載した塗装排気処理システムの運転方法。
【請求項13】
前記再生処理部では、前記粉砕処理及び前記加熱処理を施す前の塗料混じり粉剤、又は、塗料混じり粉剤中の塗料分を前記熱分解処理する前の塗料混じり粉剤を、回転軸芯が一致する状態で近接させた2つの羽根車を処理室内で高速回転させる気流式微粉末製造機により微粉砕処理する請求項7〜11のいずれか1項に記載した塗装排気処理システムの運転方法。
【請求項14】
フィルタ清掃処理により前記フィルタから除去されて落下する粉剤を受け入れる受入ホッパ、及び、この受入ホッパにおける堆積粉剤を開閉弁を通じて収容する粉剤容器を設けるとともに、
前記粉剤分散手段として、前記粉剤容器における収容粉剤を前記排出空気に噴出する粉剤ノズルを設け、
この構成において、前記第1排気処理工程、又は、前記第2排気処理工程、又は、前記排気処理工程では、
前記第1供給タンク又は前記第2供給タンク又は前記供給タンクから前記粉剤容器に粉剤を供給するのに続き、前記粉剤容器における収容粉剤を前記粉剤分散手段としての前記粉剤ノズルにより前記排出空気に噴出するとともに、フィルタ清掃処理により前記フィルタから除去した粉剤を前記受入ホッパに受け入れ、
その後、前記開閉弁の開き操作により前記受入ホッパにおける堆積粉剤を前記粉剤容器に収容することと、前記粉剤容器における収容粉剤を前記粉剤分散手段としての前記粉剤ノズルにより前記排出空気に噴出することと、フィルタ清掃処理により前記フィルタから除去した粉剤を前記受入ホッパに受け入れることとを繰り返す請求項1〜13のいずれか1項に記載した塗装排気処理システムの運転方法。
【請求項15】
前記受入ホッパが単位時間当たりに受け入れる塗料混じり粉剤における塗料分の量を、前記受入ホッパにおける単位時間当たりの塗料受入量として求め、
前記第1排気処理工程又は前記第2排気処理工程又は前記排気処理工程において、時間計測に伴い前記単位時間当たりの塗料受入量を積算し、
この積算値が設定上限値になったとき、前記受入ホッパにおける堆積粉剤及び前記粉剤容器における収容粉剤を、前記中継タンクに貯留する、又は、前記分別工程に送る、又は、前記選別工程におくる、又は、前記廃棄工程と前記再生工程とのいずれかに送るとともに、前記第1供給タンク又は前記第2供給タンク又は前記供給タンクから前記粉剤容器に粉剤を補給する循環粉剤更新処理を行う請求項14に記載した塗装排気処理システムの運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被塗物をスプレー塗装する塗装室からの排出空気をろ過処理して、その排出空気に含まれるオーバースプレー塗料を捕集するフィルタと、前記排出空気にフィルタ被覆層形成用の粉剤を分散させて、前記排出空気のフィルタ通過に伴い前記フィルタの表面に粉剤集積層からなるフィルタ被覆層を形成する粉剤分散手段とを備える塗装排気処理システムの運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の塗装排気処理システムは、塗装室からの排出空気に含まれるオーバースプレー塗料をフィルタにより捕集するのに、粉剤集積層からなるフィルタ被覆層をフィルタ表面に形成しておくことで、排出空気中のオーバースプレー塗料をフィルタ被覆層により捕捉し、これにより、オーバースプレー塗料が直接にフィルタに粘着するのを防止して、オーバースプレー塗料を捕捉したフィルタ被覆層(換言すれば、フィルタ被覆層としてオーバースプレー塗料を捕捉した塗料混じり粉剤)を適当なフィルタ清掃処理によりフィルタから除去するだけで、そのフィルタを繰り返し使用できるようにしたものである。
【0003】
ところで従来、下記の特許文献1には、フィルタ清掃処理によりフィルタから除去した塗料混じり粉剤を熱処理や粉砕処理により再生処理し、この再生処理で再生した粉剤を再びフィルタ被覆層形成用の粉剤として粉剤分散手段により塗装室からの排出空気に分散させることが提案されている(特に特許文献1の請求項1,2参照)。
【0004】
また、この特許文献1には、フィルタ清掃処理によりフィルタから除去した塗料混じり粉剤における塗料割合を測定装置により測定し、この測定結果に基づき、粉剤分散手段により再び排出空気に分散させる粉剤における塗料混じり粉剤と貯蔵装置からの新鮮粉剤との混合量を調整制御することも提案されている(特に特許文献1の段落[0197]〜段落[0199]及び図4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2013−544640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、この特許文献1に示される塗装排気処理システムでは、システムの稼働状態が適切であるか否かを管理者が認知し難く、その点でシステムの管理が難しい問題があった。
【0007】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、合理的な運転方法を採ることで、システムの管理を容易にする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1特徴構成は、塗装排気処理システムの運転方法に係り、その特徴は、
被塗物をスプレー塗装する塗装室からの排出空気をろ過処理して、その排出空気に含まれるオーバースプレー塗料を捕集するフィルタと、
前記排出空気にフィルタ被覆層形成用の粉剤を分散させて、前記排出空気のフィルタ通過に伴い前記フィルタの表面に粉剤集積層からなるフィルタ被覆層を形成する粉剤分散手段とを備える塗装排気処理システムの運転方法であって、
第1運転では、第1供給タンクからの供給粉剤を前記粉剤分散手段により前記排出空気に分散させて、その排出空気を前記フィルタに通過させる第1排気処理工程を実施するとともに、
中継タンクにおける塗料混じり粉剤を再生処理部で再生処理して、再生処理後の粉剤を第2供給タンクに貯留する第1再生工程と、
この第1再生工程でタンク内の塗料混じり粉剤を前記再生処理部に送った後の前記中継タンクに、前記第1排気処理工程でのフィルタ清掃処理により前記フィルタから除去した塗料混じり粉剤を貯留する第1貯留工程とを実施し、
第2運転では、前記第2供給タンクからの供給粉剤を前記粉剤分散手段により前記排出空気に分散させて、その排出空気を前記フィルタに通過させる第2排気処理工程を実施するとともに、
前記中継タンクにおける塗料混じり粉剤を前記再生処理部で再生処理して、再生処理後の粉剤を前記第1供給タンクに貯留する第2再生工程と、
この第2再生工程でタンク内の塗料混じり粉剤を前記再生処理部に送った後の前記中継タンクに、前記第2排気処理工程でのフィルタ清掃処理により前記フィルタから除去した塗料混じり粉剤を貯留する第2貯留工程とを実施し、
これら第1運転と第2運転との交互の繰り返し実施において、
前記第1運転の繰り返し回数が設定回数に至ったとき、前記第1貯留工程で前記中継タンクに貯留した塗料混じり粉剤を使用限界粉剤として廃棄処理するとともに、前記第1排気処理工程で前記粉剤分散手段に粉剤を供給した後の前記第1供給タンクに新鮮粉剤を供給して、前記第1運転の繰り返し回数をリセットする第1運転更新処理を実施し、
同様に、前記第2運転の繰り返し回数が前記設定回数に至ったとき、前記第2貯留工程で前記中継タンクに貯留した塗料混じり粉剤を使用限界粉剤として廃棄処理するとともに、前記第2排気処理工程で前記粉剤分散手段に粉剤を供給した後の前記第2供給タンクに新鮮粉剤を供給して、前記第2運転の繰り返し回数をリセットする第2運転更新処理を実施する点にある。
【0009】
この第1特徴構成の運転方法によれば、第1運転における第1排気処理工程では、第1供給タンクからの供給粉剤が粉剤分散手段により塗装室からの排出空気に分散されることから、第1供給タンクの粉剤貯留量は単調減少する。
【0010】
また、第1運転における第1再生工程では、中継タンクにおける塗料混じり粉剤が再生処理部に送られて再生処理され、再生処理後の粉剤(即ち、再生粉剤)が第2供給タンクに貯留されることから、中継タンクの粉剤貯留量は単調減少し、逆に第2供給タンクの粉剤貯留量は単調増加する。
【0011】
さらに、第1運転における第1貯留工程では、第1排気処理工程でのフィルタ清掃処理によりフィルタから除去された塗料混じり粉剤が中継タンクに貯留されることから、中継タンクの粉剤貯留量は単調増加する。
【0012】
一方、第2運転における第2排気処理工程では、第2供給タンクからの供給粉剤が粉剤分散手段により塗装室からの排出空気に分散されることから、第2供給タンクの粉剤貯留量は単調減少する。
【0013】
また、第2運転における第2再生工程では、中継タンクにおける塗料混じり粉剤が再生処理部に送られて再生処理され、再生処理後の粉剤が第1供給タンクに貯留されることから、中継タンクの粉剤貯留量は単調減少し、逆に第1供給タンクの粉剤貯留量は単調増加する。
【0014】
さらに、第2運転における第2貯留工程では、第2排気処理工程でのフィルタ清掃処理によりフィルタから除去された塗料混じり粉剤が中継タンクに貯留されることから、中継タンクの粉剤貯留量は単調増加する。
【0015】
つまり、管理者は、これら第1供給タンク,第2供給タンク、中継タンクの夫々における粉剤貯留量の単調減少や単調増加を監視することで、各運転における各工程が順調に推移していることを容易に確認することができ、先ずはこの点でシステムの管理を容易にすることができる。
【0016】
また、第1運転及び第2運転を繰り返すと、再生処理を毎回行うにしても、再生粉剤における可燃物比率が次第に増加したり、再生粉剤の集積により形成するフィルタ被覆層の性状が次第に悪化するなどのことから、第1運転及び第2運転の繰り返しには限度があるが、第1特徴構成の運転方法によれば、実験結果や試運転結果などに基づき上記設定回数として適当な回数を設定しておくことで、再生粉剤における可燃物比率の増加やフィルタ被覆層の性状悪化を一定を許容範囲内で止めることができ、これにより、システムの安全性や性能も良好に保持することができる。
【0017】
そして、中継タンクに貯留した塗料混じり粉剤を使用限界粉剤として廃棄処理するとともに、粉剤分散手段に粉剤を供給した後の第1供給タンクや第2供給タンクに新鮮粉剤を供給して、第1運転や第2運転の繰り返し回数をリセットする第1運転更新処理や第2運転更新処理は、第1運転及び第2運転夫々の繰り返し回数が上記設定回数に達するごとに行うだけでよいから、この点でも、各回の第1運転や各回の第2運転ごとに第1供給タンクや第2供給タンクにおける粉剤の一部を廃棄処理するとともに、その廃棄量に等しい量の新鮮粉剤を第1供給タンクや第2供給タンクにおける貯留粉剤に混合するなどに比べ、システムの管理を容易にすることができる。
【0018】
なお、第1供給タンクや第2供給タンクには、1回の第1運転や1回の第2運転において必要な量だけの粉剤を貯留しておくようにすれば、前述の如き粉剤貯留量の単調減少や単調増加に基づくシステム稼働状態の良否判断も一層正確かつ容易にすることができる。
【0019】
本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成の運転方法を実施するのに好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
繰り返し回数が前記設定回数に至った前記第1運転に続いて実施する前記第2運転において前記第2運転の繰り返し回数が前記設定回数に至る状態に、
又は、繰り返し回数が前記設定回数に至った前記第2運転に続いて実施する前記第1運転において前記第1運転の繰り返し回数が前記設定回数に至る状態にしてある点にある。
【0020】
この第2特徴構成の運転方法によれば、第1運転と第2運転との交互の繰り返し実施において、第1運転更新処理と第2運転更新処理とを常に同時期に行うことができ、この点で、システムの管理を一層容易にすることができる。
【0021】
本発明の第3特徴構成は、第1特徴構成の運転方法を実施するのに好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
繰り返し回数が前記設定回数のほぼ半数に至った前記第1運転に続いて実施する前記第2運転において前記第2運転の繰り返し回数が前記設定回数に至る状態に、
又は、繰り返し回数が前記設定回数のほぼ半数に至った前記第2運転に続いて実施する前記第1運転において前記第1運転の繰り返し回数が前記設定回数に至る状態にしてある点にある。
【0022】
この第3特徴構成の運転方法によれば、第1運転と第2運転との交互の繰り返し実施において、第1運転の繰り返し回数が設定回数に近付いて第1運転で用いる粉剤のそれまでの再生処理回数が許容限度回数に近付いた状態においても、第2運転の繰り返し回数は設定回数の半分程度にしか至っておらず第2運転で用いる粉剤のそれまでの再生処理回数も許容限度回数の半分程度にしか至らない。
【0023】
また同様に、第2運転の繰り返し回数が設定回数に近付いて第2運転で用いる粉剤のそれまでの再生処理回数が許容限度回数に近付いた状態においても、第1運転の繰り返し回数は設定回数の半分程度にしか至っておらず第1運転で用いる粉剤のそれまでの再生処理回数も許容限度回数の半分程度にしか至らない。
【0024】
したがって、粉剤分散手段により塗装室からの排出空気に分散させる粉剤の平均的な再生処理回数の変動幅を小さくすることができて、使用粉剤における平均的な可燃物比率の増加幅を小さくしたり、フィルタ被覆層の平均的な性状の悪化幅を小さくするなどのことができ、これにより、システム性能の安定性を一層高めることができる。
【0025】
なお、繰り返し回数が設定回数のほぼ半数に至った第1運転に続いて実施する第2運転において第2運転の繰り返し回数が設定回数に至る状態に、又は、繰り返し回数が設定回数のほぼ半数に至った第2運転に続いて実施する第1運転において第1運転の繰り返し回数が設定回数に至る状態にするには、第1運転と第2運転との交互の繰り返し実施の初期において、第1運転更新処理の実施タイミングや第2運転更新処理の実施タイミングを意図的に調整すればよい。
【0026】
本発明の第4特徴構成は、塗装排気処理システムの運転方法に係り、その特徴は、
被塗物をスプレー塗装する塗装室からの排出空気をろ過処理して、その排出空気に含まれるオーバースプレー塗料を捕集するフィルタと、
前記排出空気にフィルタ被覆層形成用の粉剤を分散させて、前記排出空気のフィルタ通過に伴い前記フィルタの表面に粉剤集積層からなるフィルタ被覆層を形成する粉剤分散手段とを備える塗装排気処理システムの運転方法であって、
供給タンクからの供給粉剤を前記粉剤分散手段により前記排出空気に分散させて、その排出空気を前記フィルタに通過させる排気処理工程と、
前記排気処理工程でのフィルタ清掃処理により前記フィルタから除去した塗料混じり粉剤を中継タンクに貯留する貯留工程と、
この中継タンクにおける塗料混じり粉剤を予め固定的に設定してある設定分別比で廃棄対象粉剤と再生対象粉剤とに分別する分別工程と、
この分別工程で分別した廃棄対象粉剤を廃棄処理する廃棄工程と、
前記分別工程で分別した再生対象粉剤を再生処理部で再生処理する再生工程と、
この再生工程で再生処理した粉剤を前記供給タンクに戻すとともに、前記廃棄工程で廃棄処理した粉剤と同量の新鮮粉剤を前記供給タンクに供給する粉剤更新工程との夫々を繰り返して実施する点にある。
【0027】
前述の如く再生処理を毎回行うにしても粉剤の繰り返し使用には限度があるが、この第4特徴構成の運転方法では、分別工程で分別した廃棄対象粉剤を廃棄処理し、この廃棄粉剤と同量の新鮮粉剤を粉剤更新工程で再生粉剤に混合して、この混合粉剤を排気処理工程で供給タンクから粉剤分散手段に供給することから、塗料混じり粉剤を廃棄対象粉剤と再生対象粉剤とに分別する分別工程での設定分別比として、実験結果や試運転結果などに基づき適当な値を設定しておけば、塗料混じり粉剤を毎回再生処理して繰り返し使用する形態を採りながらも、排気処理工程で粉剤分散手段に供給する混合粉剤(即ち、再生粉剤と新鮮粉剤とが混合した粉剤)における平均的な可燃物比率や、その混合粉剤の集積により形成するフィルタ被覆層の性状などを一定の許容範囲内に保つことができる。
【0028】
そして、この第4特徴構成の運転方法によれば、分別工程では、上記の如く実験結果や試運転結果などに基づいて予め固定的に設定してある設定分別比で塗料混じり粉剤を廃棄対象粉剤と再生対象粉剤とに分別するから、塗料混じり粉剤における塗料割合を測定装置により測定して、その測定結果に基づき新鮮粉剤と塗料混じり粉剤との混合量を調整制御するのに比べ、廃棄対象粉剤として廃棄工程で廃棄処理する粉剤の量、及び、粉剤更新工程で供給タンクに供給する新鮮粉剤の量が常に一定になり、この点でシステムの管理を容易にすることができる。
【0029】
また、測定装置による塗料割合の測定で生じる測定誤差に原因して、粉剤分散手段により排出空気に分散させる混合粉剤が不良になることも回避することができる。
【0030】
さらに、この第4特徴構成の運転方法によれば、各工程が定常状態にある状況では、粉剤更新工程で再生粉剤が供給タンクに戻されるとともに、廃棄粉剤と同量の新鮮粉剤が供給タンクに供給されるから、各工程の特性の影響などで多少の変動はあるにしても、供給タンクにおける粉剤貯留量はシステム特性上で決まるほぼ一定の定常貯留量に保たれる。
【0031】
したがって、管理者は、供給タンクにおける粉剤貯留量が定常貯留量に保たれているのを監視するだけで、各工程が良好に推移していることを容易に確認することができ、この点でもシステムの管理を容易にすることができる。
【0032】
そしてまた、この第4特徴構成の運転方法では、粉剤更新工程において再生粉剤と新鮮粉剤とを供給タンクで混合して、その混合粉剤を排気処理工程において粉剤分散手段により塗装室からの排出空気に分散させるから、再生処理していない塗料混じり粉剤と新鮮粉剤との混合粉剤を粉剤分散手段により排出空気に分散させるのに比べ、一層良好なフィルタ被覆層をフィルタ表面に形成することができ、この点で、フィルタでの排出空気の浄化効果も一層高く確保することができる。
【0033】
本発明の第5特徴構成は、塗装排気処理システムの運転方法に係り、その特徴は、
被塗物をスプレー塗装する塗装室からの排出空気をろ過処理して、その排出空気に含まれるオーバースプレー塗料を捕集するフィルタと、
前記排出空気にフィルタ被覆層形成用の粉剤を分散させて、前記排出空気のフィルタ通過に伴い前記フィルタの表面に粉剤集積層からなるフィルタ被覆層を形成する粉剤分散手段とを備える塗装排気処理システムの運転方法であって、
供給タンクからの供給粉剤を前記粉剤分散手段により前記排出空気に分散させて、その排出空気を前記フィルタに通過させる排気処理工程と、
この排気処理工程でのフィルタ清掃処理により前記フィルタから除去した塗料混じり粉剤を中継タンクに貯留する貯留工程と、
この中継タンクにおける塗料混じり粉剤を廃棄対象とする不適正粉剤と再生対象とする適正粉剤とに選別する選別工程と、
この選別工程で選別した廃棄対象の不適性粉剤を廃棄処理する廃棄工程と、
前記選別工程で選別した再生対象の適正粉剤を再生処理部で再生処理する再生工程と、
この再生工程で再生処理した粉剤を前記供給タンクに戻すとともに、前記廃棄工程で廃棄処理した粉剤と同量の新鮮粉剤を前記供給タンクに供給する粉剤更新工程との夫々を繰り返して実施する点にある。
【0034】
この第5特徴構成の運転方法では、選別工程で選別した不適正粉剤を廃棄処理し、この廃棄粉剤と同量の新鮮粉剤を粉剤更新工程で再生粉剤に混合して、この混合粉剤を排気処理工程で供給タンクから粉剤分散手段に供給することから、塗料混じり粉剤を廃棄対象の不適正粉剤(即ち、再生処理が難しい塗料混じり粉剤)と再生対象の適正粉剤(即ち、再生処理が比較的容易な塗料混じり粉剤)とに選別する選別工程での選別基準や選別法として適当な選別基準及び選別法を選択しておけば、塗料混じり粉剤を毎回再生処理して繰り返し使用する形態を採りながらも、排気処理工程で粉剤分散手段に供給する混合粉剤(即ち、再生粉剤と新鮮粉剤とが混合した粉剤)における平均的な可燃物比率や、その混合粉剤の集積により形成するフィルタ被覆層の性状などを一層効果的に一定の許容範囲内に保つことができる。
【0035】
また、この第5特徴構成の運転方法によれば、各工程が定常状態にある状況では、粉剤更新工程で再生粉剤が供給タンクに戻されるとともに、廃棄粉剤と同量の新鮮粉剤が供給タンクに供給されるから、各工程の特性の影響などで多少の変動はあるにしても、供給タンクにおける粉剤貯留量はシステム特性上で決まるほぼ一定の定常貯留量に保たれる。
【0036】
したがって、管理者は、供給タンクにおける粉剤貯留量が定常貯留量に保たれているのを監視するだけで、各工程が良好に推移していることを容易に確認することができ、この点でシステムの管理を容易にすることができる。
【0037】
そしてまた、この第5特徴構成の運転方法では、選別工程で選別した適正粉剤のみを再生処理して、その再生粉剤と新鮮粉剤との混合粉剤を排気処理工程で粉剤分散手段により塗装室からの排出空気に分散させるから、再生処理していない塗料混じり粉剤と新鮮粉剤との混合粉剤を粉剤分散手段により排出空気に分散させるのに比べ、また、単に比率的に分別した塗料混じり粉剤の一部を再生処理して、その再生粉剤と新鮮粉剤との混合粉剤を粉剤分散手段により排出空気に分散させるのに比べても、さらに良好なフィルタ被覆層をフィルタ表面に形成することができ、この点で、フィルタでの排出空気の浄化効果もさらに高く確保することができる。
【0038】
本発明の第6特徴構成は、塗装排気処理システムの運転方法に係り、その特徴は、
被塗物をスプレー塗装する塗装室からの排出空気をろ過処理して、その排出空気に含まれるオーバースプレー塗料を捕集するフィルタと、
前記排出空気にフィルタ被覆層形成用の粉剤を分散させて、前記排出空気のフィルタ通過に伴い前記フィルタの表面に粉剤集積層からなるフィルタ被覆層を形成する粉剤分散手段とを備える塗装排気処理システムの運転方法であって、
供給タンクからの供給粉剤を前記粉剤分散手段により前記排出空気に分散させて、その排出空気を前記フィルタに通過させる排気処理工程と、
この排気処理工程でのフィルタ清掃処理により前記フィルタから除去した塗料混じり粉剤を、前記排出空気の発生部位ごとに分別して互いに異なる容器に収容する分別収容工程と、
複数の前記容器のうち特定の容器に収容した塗料混じり粉剤を廃棄対象粉剤として廃棄処理する廃棄工程と、
複数の前記容器のうち他の容器に収容した粉剤を再生対象粉剤として再生処理部で再生処理する再生工程と、
この再生工程で再生処理した粉剤を前記供給タンクに戻すとともに、前記廃棄工程で廃棄処理した粉剤と同量の新鮮粉剤を前記供給タンクに供給する粉剤更新工程との夫々を繰り返して実施する点にある。
【0039】
この第6特徴構成の運転方法では、分別収容工程で排出空気の発生部位ごとに分別して互いに異なる容器に収容した塗料混じり粉剤のうち、特定の容器に収容した塗料混じり粉剤を廃棄対象粉剤として廃棄処理し、この廃棄粉剤と同量の新鮮粉剤を粉剤更新工程で再生粉剤に混合して、この混合粉剤を排気処理工程で供給タンクから粉剤分散手段に供給するから、複数の容器のうち再生処理が難しい塗料混じり粉剤が収容される容器(即ち、再生処理が難しい塗料混じり粉剤を含む排出空気が送出される排出空気発生部位に対応する容器)を特定容器として選択しておけば、塗料混じり粉剤を毎回再生処理して繰り返し使用する形態を採りながらも、排気処理工程で粉剤分散手段に供給する混合粉剤(再生粉剤と新鮮粉剤とが混合した粉剤)における平均的な可燃物比率や、その混合粉剤の集積により形成するフィルタ被覆層の性状などを一層効果的に一定の許容範囲内に保つことができる。
【0040】
そして、この第6特徴構成の運転方法によれば、分別収容工程で特定の容器に収容された塗料混じり粉剤を廃棄対象粉剤として廃棄処理するから、塗料混じり粉剤における塗料割合を測定装置により測定して、その測定結果に基づき新鮮粉剤と塗料混じり粉剤との混合量を調整制御するのに比べ、廃棄対象粉剤として廃棄工程で廃棄処理する粉剤の量、及び、粉剤更新工程で供給タンクに供給する新鮮粉剤の量が常に一定になり、この点でシステムの管理を容易にすることができる。
【0041】
また、測定装置による塗料割合の測定で生じる測定誤差が原因で、粉剤分散手段により排出空気に分散させる混合粉剤が不良になることも回避することができる。
【0042】
さらに、この第6特徴構成の運転方法によれば、各工程が定常状態にある状況では、粉剤更新工程で再生粉剤が供給タンクに戻されるとともに、廃棄粉剤と同量の新鮮粉剤が供給タンクに供給されるから、各工程の特性の影響などで多少の変動はあるにしても、供給タンクにおける粉剤貯留量はシステム特性上で決まるほぼ一定の定常貯留量に保たれる。
【0043】
したがって、管理者は、供給タンクにおける粉剤貯留量が定常貯留量に保たれているのを監視するだけで、各工程が良好に推移していることを容易に確認することができ、この点でもシステムの管理を容易にすることができる。
【0044】
そしてまた、この第6特徴構成の運転方法では、複数の容器のうち他の容器に収容された粉剤(即ち、再生処理が容易な塗料混じり粉剤)のみを再生処理して、その再生粉剤と新鮮粉剤との混合粉剤を排気処理工程で粉剤分散手段により塗装室からの排出空気に分散させるから、再生処理していない塗料混じり粉剤と新鮮粉剤との混合粉剤を粉剤分散手段により排出空気に分散させるのに比べ、また、単に比率的に分別した塗料混じり粉剤の一部を再生処理して、その再生粉剤と新鮮粉剤との混合粉剤を粉剤分散手段により排出空気に分散させるのに比べても、さらに良好なフィルタ被覆層をフィルタ表面に形成することができ、この点で、フィルタでの排出空気の浄化効果もさらに高く確保することができる。
【0045】
本発明の第7特徴構成は、第1〜第6特徴構成のいずれかの運転方法の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記再生処理部では、前記再生処理として、塗料混じり粉剤を加熱することで、その塗料混じり粉剤における塗料分を架橋反応させて硬化させる加熱処理と、その塗料混じり粉剤を粉砕して塗料混じり粉剤の粒径を小さくする粉砕処理とを実施する点にある。
【0046】
つまり、フィルタ清掃処理によりフィルタから除去される塗料混じり粉剤(即ち、フィルタ被覆層により捕捉したオーバースプレー塗料が含まれる粉剤と塗料との混合物)は、塗料を含むことで粘性を帯び、また、塗料の付着により粉剤個々の見掛け上の粒径が新鮮粉剤より大きくなっている。
【0047】
したがって、この塗料混じり粉剤を上記の如く加熱処理して塗料分を架橋反応により硬化させるとともに、粉砕処理により粒径を調整すれば、新鮮粉剤に近いものにすることができ、フィルタ被覆層形成用粉剤としての再使用が可能になる。
【0048】
このことから、上記第7特徴構成の運転方法によれば、粉剤を繰り返し使用する形態を採りながらも、塗装排気処理システムとして十分な性能を確保することができる。
【0049】
なお、第7特徴構成の運転方法を実施するのに、上記の加熱処理や粉砕処理を減圧空間において実施するようにすれば、塗料に含まれる液分を一層効率よく塗料分から離脱させることができ、これにより、再生処理の処理効率を高めるとともに、再生粉剤のフィルタ被覆層形成用粉剤としての品質も一層高めることができる。
【0050】
本発明の第8特徴構成は、第7特徴構成の運転方法の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記再生処理部では、前記再生処理として、再生室に収容した塗料混じり粉剤を回転刃の回転により粉砕処理するのに伴い、前記再生室の室壁を伝熱壁とする加熱器により加熱処理する点にある。
【0051】
この第8特徴構成の運転方法によれば、粉砕処理と加熱処理とを同時に行うから、塗料混じり粉剤の再生処理において一層高い処理効率を得ることができる。
【0052】
また、再生室の室壁を伝熱壁とする加熱器により加熱処理を行うから、再生室を気密化し易く、このことから、再生室を減圧して、粉砕処理や加熱処理を前述の如く減圧空間において行うようにすることも容易に実現することができる。
【0053】
本発明の第9特徴構成は、第7特徴構成の運転方法の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記再生処理部では、前記再生処理として、再生室に収容した塗料混じり粉剤を回転打撃子と固定衝突子とに対する衝突により粉砕処理するのに伴い、前記再生室に対する熱風供給により加熱処理する点にある。
【0054】
この第9特徴構成の運転方法によれば、第8特徴構成の運転方法と同様、粉砕処理と加熱処理とを同時に行うから、塗料混じり粉剤の再生処理において一層高い処理効率を得ることができる。
【0055】
また、この第9特徴構成の運転方法では、再生室に対する熱風供給により加熱処理を行うから、塗料に含まれる液分を塗料分から離脱させる乾燥処理も同時に効率良く行うことができ、この点からも再生処理の処理効率を高めることができ、また、再生粉剤のフィルタ被覆層形成用粉剤としての品質も高めることができる。
【0056】
本発明の第10特徴構成は、第1〜第6特徴構成のいずれかの運転方法の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記再生処理部では、前記再生処理として、塗料混じり粉剤を粉剤成分の熱分解に至らない温度で高温加熱することにより、その塗料混じり粉剤における塗料分を熱分解させる熱分解処理を実施する点にある。
【0057】
前述の如く、フィルタ清掃処理によりフィルタから除去される塗料混じり粉剤(即ち、フィルタ被覆層により捕捉したオーバースプレー塗料が含まれる粉剤と塗料との混合物)は、塗料を含むことで粘性を帯び、また、塗料の付着により粉剤個々の見掛け上の粒径が新鮮粉剤より大きくなっている。
【0058】
したがって、この塗料混じり粉剤を上記の如く高温加熱して塗料分を熱分解させてしまえば、新鮮粉剤に近いものにすることができ、フィルタ被覆層形成用粉剤としての再使用が可能になる。
【0059】
このことから、上記第10特徴構成の運転方法によれば、粉剤を繰り返し使用する形態を採りながらも、塗装排気処理システムとして十分な性能を確保することができる。
【0060】
本発明の第11特徴構成は、第10特徴構成の運転方法の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記再生処理部では、前記再生処理として、塗料混じり粉剤を収容する回転筒の筒壁を伝熱壁とするロータリーキルンにより、その回転筒に収容した塗料混じり粉剤における塗料分を熱分解処理する点にある。
【0061】
この第11特徴構成の運転方法であれば、筒壁を伝熱壁とする回転筒の回転により、その回転筒に収容した塗料混じり粉剤における塗料分を均一に効率良く熱分解処理することができ、塗料混じり粉剤の再生処理において一層高い処理効率を得ることができる。
【0062】
本発明の第12特徴構成は、第7〜第11特徴構成のいずれかの運転方法の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記再生処理部では、前記粉砕処理及び前記加熱処理した塗料混じり粉剤、又は、塗料混じり粉剤中の塗料分を前記熱分解処理した塗料混じり粉剤を、回転軸芯が一致する状態で近接させた2つの羽根車を処理室内で高速回転させる気流式微粉末製造機により微粉砕処理する点にある。
【0063】
この第12特徴構成によれば、粉砕処理及び加熱処理した塗料混じり粉剤、又は、塗料混じり粉剤中の塗料分を熱分解処理した塗料混じり粉剤を、上記気流式微粉末製造機により微粉剤処理することで、その塗料混じり粉剤の平均粒径をフィルタ被覆層形成用の粉剤として一層好適な粒径に調整することができ、これにより、再生粉剤のフィルタ被覆層形成用粉剤としての品質を一層高めることができる。
【0064】
本発明の第13特徴構成は、第7〜第11特徴構成のいずれかの運転方法の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記再生処理部では、前記粉砕処理及び前記加熱処理を施す前の塗料混じり粉剤、又は、塗料混じり粉剤中の塗料分を前記熱分解処理する前の塗料混じり粉剤を、回転軸芯が一致する状態で近接させた2つの羽根車を処理室内で高速回転させる気流式微粉末製造機により微粉砕処理する点にある。
【0065】
この第13特徴構成の運転方法によれば、粉砕処理及び加熱処理する前の塗料混じり粉剤、又は、塗料混じり粉剤中の塗料分を熱分解処理する前の塗料混じり粉剤を、上記気流式微粉末製造機により微粉砕処理することで、その塗料混じり粉剤の平均粒径を小さくして上記加熱処理や上記熱分解処理を一層効率良く行えるとともに、塗料分から液分を離脱させる乾燥処理も一層効率良く行うことができる。
【0066】
また、その塗料混じり粉剤の平均粒径もフィルタ被覆層形成用の粉剤として一層好適な粒径に調整することができ、これにより、再生処理の処理効率を一層高めるとともに、再生粉剤のフィルタ被覆層形成用粉剤としての品質も一層高めることができる。
【0067】
本発明の第14特徴構成は、第1〜第13特徴構成のいずれかの運転方法の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
フィルタ清掃処理により前記フィルタから除去されて落下する粉剤を受け入れる受入ホッパ、及び、この受入ホッパにおける堆積粉剤を開閉弁を通じて収容する粉剤容器を設けるとともに、
前記粉剤分散手段として、前記粉剤容器における収容粉剤を前記排出空気に噴出する粉剤ノズルを設け、
この構成において、前記第1排気処理工程、又は、前記第2排気処理工程、又は、前記排気処理工程では、
前記第1供給タンク又は前記第2供給タンク又は前記供給タンクから前記粉剤容器に粉剤を供給するのに続き、前記粉剤容器における収容粉剤を前記粉剤分散手段としての前記粉剤ノズルにより前記排出空気に噴出するとともに、フィルタ清掃処理により前記フィルタから除去した粉剤を前記受入ホッパに受け入れ、
その後、前記開閉弁の開き操作により前記受入ホッパにおける堆積粉剤を前記粉剤容器に収容することと、前記粉剤容器における収容粉剤を前記粉剤分散手段としての前記粉剤ノズルにより前記排出空気に噴出することと、フィルタ清掃処理により前記フィルタから除去した粉剤を前記受入ホッパに受け入れることとを繰り返す点にある。
【0068】
つまり、この第14特徴構成の運転方法では、第1供給タンク又は第2供給タンク又は供給タンクから粉剤容器に供給した粉剤を、先ずは前記第1排気処理工程又は前記第2排気処理工程又は前記排気処理工程における1回目の使用として、粉剤ノズルにより塗装室からの排出空気に噴出し、これにより、粉剤集積層からなるフィルタ被覆層をフィルタに形成して排出空気中のオーバースプレー塗料を捕集し、これに続き、フィルタ清掃処理によりフィルタから除去した粉剤を受入ホッパに受け入れる。
【0069】
その後は、上記の如く、開閉弁の開き操作により受入ホッパにおける堆積粉剤を粉剤容器に収容することと、粉剤容器における収容粉剤を粉剤分散手段としての粉剤ノズルにより塗装室からの排出空気に噴出することと、フィルタ清掃処理によりフィルタから除去した粉剤を受入ホッパに受け入れこととを繰り返すことにより、その粉剤を粉剤容器‐粉剤ノズル‐フィルタ‐受入ホッパの順に循環させる形態で、同じ第1排気処理工程又は同じ第2排気処理工程又は同じ排気処理工程における2回目〜n回目の使用として、再生処理に至るまでの間に複数回にわたり繰り返し使用する。
【0070】
換言すれば、フィルタ被覆層形成用の粉剤を、前記第1排気処理工程又は前記第2排気処理工程又は前記排気処理工程と再生工程との間で繰り返し工程間移送するのとは別に、1回の前記第1排気処理工程又は1回の前記第2排気処理工程又は1回の前記排気処理工程において粉剤容器‐粉剤ノズル‐フィルタ‐受入ホッパの順に循環させる形態で繰り返し使用する。
【0071】
即ち、この第14特徴構成の運転方法によれば、各回の前記第1排気処理工程又は各回の前記第2排気処理工程又は各回の前記排気処理工程において、粉剤を粉剤容器‐粉剤ノズル‐フィルタ‐受入ホッパの順に循環させて繰り返し使用した上で初めて再生処理部に送って再生処理するから、再生処理部における単位時間当たりの粉剤処理量を低減することができて、再生処理部を小型化することができ、これによりシステムの製造コストや運転コストを安価にすることができる。
【0072】
本発明の第15特徴構成は、第14特徴構成の運転方法の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記受入ホッパが単位時間当たりに受け入れる塗料混じり粉剤における塗料分の量を、前記受入ホッパにおける単位時間当たりの塗料受入量として求め、
前記第1排気処理工程又は前記第2排気処理工程又は前記排気処理工程において、時間計測に伴い前記単位時間当たりの塗料受入量を積算し、
この積算値が設定上限値になったとき、前記受入ホッパにおける堆積粉剤及び前記粉剤容器における収容粉剤を、前記第1貯留工程に送る、又は、前記第2貯留工程に送る、又は、前記分別工程に送る、又は、前記選別工程に送る、又は、前記廃棄工程と前記再生工程とのいずれかに送るとともに、前記第1供給タンク又は前記第2供給タンク又は前記供給タンクから前記粉剤容器に粉剤を補給する循環粉剤更新処理を行う点にある。
【0073】
つまり、粉剤を前述の如く粉剤容器‐粉剤ノズル‐フィルタ‐受入ホッパの順に循環させる形態で繰り返し使用することにおいて、上記の循環粉剤更新処理が遅れて循環粉剤における塗料分が過大になると、循環粉剤により形成するフィルタ被覆層が不良になって、排気処理性能が低下したり排出空気の搬送に支障を来すなどの問題が生じ、また逆に、循環粉剤における塗料分が未だ過小の状態で上記の循環粉剤更新処理を行うと、再生処理部における単位時間当たりの粉剤処理量が大きくなって粉剤の再生処理に支障を来す問題が生じる。
【0074】
これに対し、上記第15特徴構成の運転方法によれば、受入ホッパにおける単位時間当たり塗料受入量の積算値が設定上限値になったときに、上記の循環粉剤更新処理を行うから、上記の如き問題を確実に回避することができ、これにより、システムを良好な状態で安定的に運転することができる。
【0075】
また、受入ホッパにおける単位時間当たりの塗料受入量を求め、この単位時間当たりの塗料受入量を単に時間計測に伴い積算するだけですむから、受入ホッパに受け入れた塗料混じり粉剤の性状や物理量を逐次測定して、その測定結果に基づき循環粉剤更新処理の必要時点を判断するのに比べ、システムを簡素にすることができ、また、循環粉剤更新処理の必要時点も一層正確かつ安定的に判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
図1】塗装ブースの横断面図
図2図1におけるII−II線断面図
図3】排気処理部の拡大図
図4】単位時間当たり塗料受入量の算出形態を説明する説明図
図5】塗装排気処理システムの第1,第2実施形態を示すシステム構成図
図6】第1実施形態の運転パターンを示す表
図7】第2実施形態の運転パターンを示す表
図8】塗装排気処理システムの第3実施形態を示すシステム構成図
図9】第3実施形態の運転パターンを示すフローチャート
図10】塗装排気処理システムの第4実施形態を示すシステム構成図
図11】第4実施形態の運転パターンを示すフローチャート
図12】塗装排気処理システムの第5実施形態を示すシステム構成図
図13】第5実施形態の運転パターン示すフローチャート
図14】再生処理部の第1例を示す装置構成図
図15】気流式微粉末製造機の内部構造示す概略図
図16】再生処理部の第2例を示す装置構成図
図17】再生処理部の第3例を示す装置構成図
図18】再生処理部の第4例を示す装置構成図
【発明を実施するための形態】
【0077】
〔第1実施形態〕
図1は塗装ブースを示し、この塗装ブース1における塗装室2では、搬送装置3により室内に順次搬入する被塗物W(本例では自動車ボディ)を塗装ロボットR又は作業員がスプレー塗装する。
【0078】
被塗物Wの搬送方向(図1における奥行き方向)に延びるトンネル状の塗装室2には、その天井部2aの全面から温湿度調整された換気用空気SAが下向きに吹き出され、それに伴い、オーバースプレー塗料を含む塗装室2の室内空気EAが格子床2bを通じて塗装室下方の排気室4に排出される。
【0079】
図1及び図2に示すように、排気室4の両横側には、フィルタ装置5を塗装ブース1に沿わせて被塗物搬送方向である塗装ブース長手方向に延設してあり、このフィルタ装置5により塗装室2からの排出空気EAに含まれるオーバースプレー塗料を捕集することで排出空気EAを浄化する。
【0080】
フィルタ装置5により浄化した排出空気EAは、フィルタ装置5に接続した排気ダクト6を通じて排気ファン7により外部へ排出(又は空調機により再び温湿度調整した上で換気用空気SAとして塗装室2に還送)する。
【0081】
図1図3に示すように、フィルタ装置5の内部には、排出空気EAからオーバースプレー塗料を捕集する複数の筒状フィルタ8を横向き姿勢で並列配置してあり、フィルタ装置5の装置壁を兼ねる排気室4の側壁4aには、塗装室2からの排出空気EAを排気室4からフィルタ装置5に導入する横長長方形状の流入口10を塗装ブース長手方向に一列状に並べて形成し、各流入口10には、それら流入口10を通じてフィルタ装置5に導入する排出空気EAに対してフィルタ被覆層形成用の粉剤Pを分散させる粉剤分散手段としての粉剤ノズル11を配置してある。
【0082】
換言すれば、このフィルタ装置5には、流入口10からフィルタ8に至る排気処理風路fs(即ち、粉剤ノズル11とそれに続くフィルタ8とを備える排気処理風路fs)を、塗装ブース長手方向に並べた並列配置で複数形成してある。
【0083】
即ち、この粉剤ノズル11からの噴出により粉剤Pを排出空気EAに分散させることで、排出空気EAのフィルタ通過に伴い粉剤集積層からなるフィルタ被覆層をフィルタ8の表面に形成し、このフィルタ被覆層により排出空気EA中のオーバースプレー塗料を捕捉することで、フィルタ8によるオーバースプレー塗料の捕集においてオーバースプレー塗料がフィルタ8の濾材に対して直接に粘着するのを防止する。
【0084】
フィルタ装置5の各流入口10における上壁部には、下向きに開口する横断面形状の滞留用凹部12を、流入口10の横幅方向(即ち、ブース長手方向)に連続させた状態で各流入口10の全幅にわたって形成し、粉剤ノズル11は、各流入口10の横幅方向における中央箇所から滞留用凹部12の奥部内面に向けて粉剤Pをキャリア空気a4とともに噴出する状態に配置してある。
【0085】
つまり、流入口10における排出空気EAの流れが滞留用凹部12の下向き開口の近傍を通過する状況下において、上記の如く粉剤ノズル11により滞留用凹部12の奥部内面に向けて粉剤Pをキャリア空気a4とともに噴出することにより、粉剤Pを伴う空気流の適当時間にわたる渦流的な滞留を滞留用凹部12において生じさせる。
【0086】
そして、この渦流的な滞留による粉剤Pの撹拌を伴いながら粉剤Pを滞留用凹部12において流入口10の横幅方向に拡散させて、その拡散した粉剤Pを滞留用凹部12の下向き開口を通じて流入口10における排出空気EAの通過流に徐々に取り込ませることで、粉剤Pを流入口10の横幅方向において均一に分散させた状態で排出空気EAに含ませるようにしてある。
【0087】
なお、11aは粉剤ノズル11に取り付けた三角板状の拡散補助具であり、この拡散補助具11aを設けることで、流入口10を通過する排出空気EA、及び、滞留用凹部12において粉剤Pを伴う状態で渦流的に滞留する空気を、流入口10の横幅方向における一方側と他方側とへの向き変化を伴う状態で分流し、この分流に伴う排出空気EA及び渦流的滞留空気の向き変化により、滞留用凹部12での粉剤Pの流入口横幅方向への拡散を一層促進し、また、粉剤Pを滞留用凹部12から排出空気EAの通過流に取り込ませる過程での粉剤Pの拡散も促進する。
【0088】
フィルタ装置5の内部においてフィルタ8の下方で流入口10より低い底部には、逆錐形状の受入ホッパ14を各排気処理風路fsのフィルタ8に対し各別に対応させてブース長手方向に隙間なく並べて配置してあり、これら受入ホッパ14夫々の底部には粉剤排出口14aを形成してある。
【0089】
また、フィルタ装置5には、フィルタ8に対して排出空気EAの通過方向とは逆向きの逆洗状態で圧縮空気をパルス的に作用させるフィルタ清掃装置15を装備してあり、このフィルタ清掃装置15を適時作動させることで、オーバースプレー塗料の捕捉や粉剤Pの過度な堆積で通気抵抗が大きくなったフィルタ被覆層を各フィルタ8から脱落させて各フィルタ8を再生する。
【0090】
そして、このフィルタ清掃処理でフィルタ8から落下するフィルタ被覆層(即ち、捕捉したオーバースプレー塗料を含む塗料混じり粉剤P)をフィルタ下方の受入ホッパ14に受け入れる。
【0091】
各受入ホッパ14の下方には、受入ホッパ14に受け入れた塗料混じり粉剤Pを受入ホッパ底部の粉剤排出口14aを通じてタンク内に落下させる循環用粉剤容器としての粉剤タンク16を連設してあり、また、受入ホッパ14と粉剤タンク16との間には、粉剤排出口14aを開閉する開閉弁としての水平姿勢の仕切扉17を設けてある。
【0092】
即ち、この仕切扉17の開き操作により、受入ホッパ14に受け入れた塗料混じり粉剤Pを粉剤タンク16の内部に落下させてタンク内に収容し、この仕切扉17の閉じ操作により粉剤収容状態の粉剤タンク16を密閉化する。
【0093】
粉剤タンク16の底部には、周密な微細気孔の存在より加圧空気の透過を許す通気性材により形成した散気板18を平面視で粉剤タンク16の全体にわたらせて配置し、この散気板18により粉剤タンク16の内部は、空気路を通じ撹拌用空気a1が加圧供給される下側の加圧空気室16aと、仕切扉17の開き操作により粉剤排出口14aを通じて受入ホッパ14に連通する上側の粉剤収容室16bとに仕切ってある。
【0094】
また、粉剤タンク16の内部には、加圧空気室16aの上側で粉剤収容室16bに隣接する粉剤送出室16cを形成してあり、粉剤収容室16bと粉剤送出室16cとを仕切る仕切壁19の下端部には、粉剤収容室16bと粉剤送出室16cとを連通させる連通口として、粉剤収容室16aから粉剤送出室16cへ空気とともに流入する粉剤Pの流入量を通気抵抗により制限する絞り開口19aを形成してある。
【0095】
そして、粉剤収容室16b及び粉剤送出室16cの夫々には、空気路を通じ供給される撹拌用空気a2,a3を各室内に噴出する撹拌用ノズル20a,20bを装備してある。
【0096】
つまり、粉剤タンク16の粉剤収容室16bでは、加圧空気室16aから散気板18を透過して粉剤収容室16bに対し上向きに噴出する撹拌用空気a1により粉剤収容室16bにおける収容粉剤Pを分散状態で上昇させて室内浮遊させ、また、撹拌用ノズル20aから噴出する撹拌用空気a2により室内空気を対流的に撹拌する状態にして粉剤収容室16bにおける浮遊粉剤Pを対流的に撹拌し、これにより、仕切扉17が閉じられて密閉化された粉剤タンク16において、粉剤収容室16bにおける粉剤Pを単に解して流動化するのに止まらず均一な浮遊分散状態(即ち、粉剤収容室16bにおける空気中の粉剤濃度を均一化した状態)に保つ。
【0097】
粉剤収容室16bにおいて浮遊分散状態にした粉剤Pは仕切壁19の絞り開口19a及び粉剤送出室16cを通じてタンク外に送出するが、この際、絞り開口19aの通気抵抗により、粉剤収容室16bにおける粉剤Pの均一な浮遊分散状態を安定的に保つとともに、浮遊分散状態にある粉剤Pを粉剤収容室16bから粉剤送出室16cへ安定的に流入させる。
【0098】
また、粉剤送出室16cにおいても散気板18から上向きに噴出する撹拌用空気a1及び撹拌用ノズル20bから噴出する撹拌用空気a3により粉剤送出室16cにおける粉剤Pを均一な浮遊分散状態に保つ。
【0099】
各粉剤タンク16の粉剤送出室16cには、対応する粉剤ノズル11に粉剤Pを送給する粉剤供給路21を接続してあり、各粉剤タンク16の粉剤収容室16bに収容した塗料混じり粉剤Pを粉剤送出室16c及び粉剤供給路21を通じて対応の粉剤ノズル11から噴出させることで、フィルタ装置5における並列の排気処理風路fsごとに、粉剤Pを粉剤ノズル11→フィルタ8→受入ホッパ14→粉剤タンク16→粉剤供給路21の順に循環させる形態で、それら排気処理風路fsにおいて粉剤Pを繰り返し使用する。
【0100】
各粉剤ノズル11に対する粉剤供給路21には、空気路を通じ供給される圧縮空気a4の通過に伴い形成される負圧により粉剤タンク16の粉剤収容室16bにおける粉剤Pを粉剤送出室16cを通じ吸入し、そして、負圧形成後の圧縮空気a4をキャリア空気として吸入粉剤Pをキャリア空気a4とともに粉剤供給路21を通じて粉剤ノズル11に送給する噴出用空気搬送手段としてのエゼクタ22を介装してあり、各粉剤ノズル11は、このエゼクタ22により供給される粉剤Pをキャリア空気a4とともに流入口10において撹拌用凹部12の奥部に向けて噴出する。
【0101】
つまり、各粉剤ノズル11に粉剤Pを供給するのに、上記の如く粉剤タンク16において粉剤Pを均一な浮遊分散状態にし、その浮遊分散状態の粉剤Pをエゼクタ22によりキャリア空気a4とともに粉剤供給路21を通じて粉剤ノズル11に供給することで、粉剤供給路21でのキャリア空気中における粉剤Pの浮遊分散状態(換言すれば、キャリア空気中における粉剤濃度)を効果的に均一化し、これにより、各粉剤ノズル11から均一な分散状態の粉剤Pを噴出させる。
【0102】
そして、粉剤タンク16における粉剤Pの残量がある程度まで減少すると、仕切扉17を開いて、仕切扉17が閉じ状態にあった間のフィルタ清掃処理により受入ホッパ14内に堆積した塗料混じり粉剤Pを粉剤タンク16の粉剤収容室16bに落下させて収容し、その後、仕切扉17を再び閉じて粉剤タンク16を密閉化した状態で粉剤収容室16bにおける粉剤Pを均一な浮遊分散状態にして、その浮遊分散状態の粉剤Pを粉剤供給路21を通じ粉剤ノズル11に供給する。
【0103】
各粉剤タンク16の粉剤送出室16cには、上記の如く対応する粉剤ノズル11への粉剤供給路21を接続するとともに、粉剤タンク16の粉剤収容室16bにおける塗料混じり粉剤Pをキャリア空気a5とともに中継タンク23に導く粉剤排出路24を接続してあり、この粉剤排出路24には粉剤排出用の開閉弁24aを介装してある。
【0104】
なお、粉剤排出路24は、粉剤送出室16cへの接続に代え、粉剤収容室16bに対して直接的に接続してもよい。
【0105】
一方、各粉剤タンク16の粉剤収容室16bには、供給タンク25A,25Bから粉剤Pをキャリア空気a6とともに粉剤収容室16bに導く粉剤供給路26を接続してあり、この粉剤供給路26には、粉剤供給用の開閉弁26aを介装してある。
【0106】
つまり、これら開閉弁24a,26bの開閉操作により、フィルタ装置5における並列の排気処理風路fsごとに、粉剤ノズル11→フィルタ8→受入ホッパ14→粉剤タンク16→粉剤供給路21の順に循環させる粉剤Pを更新する循環粉剤更新処理を行う。
【0107】
具体的には、フィルタ清掃処理により受入ホッパ14が単位時間当たりに受け入れる塗料混じり粉剤Pにおける塗料分の量を、受入ホッパ14における単位時間当たりの塗料受入量mとして受入ホッパ14ごと(即ち、排気処理風路fsごと)に求めておく。
【0108】
そして、塗装室2からの排出空気EAに対し粉剤ノズル11からの噴出粉剤Pを分散させる排気処理工程において、時間計測に伴い上記単位時間当たりの塗料受入量mを受入ホッパ14ごとに積算し、いずれかの受入ホッパ14について、その積算値Σmが設定上限値Mになったとき(Σm=M)、その受入ホッパ14におけるその時点での堆積粉剤Pを仕切弁17の開き操作により対応の粉剤タンク16に収容して再び仕切弁17を閉じた上で、その粉剤タンク16に対する粉剤排出用の開閉弁24aを開いて、その粉剤タンク16における収容粉剤P(換言すれば、その排気処理風路fsにおける循環粉剤P)を粉剤排出路24を通じて中継タンク23に回収する。
【0109】
また、その回収後、その粉剤タンク16に対する粉剤供給用の開閉弁26aを開くことで、その粉剤タンク16に対し供給タンク25A,25Bから粉剤供給路26を通じて所定量の粉剤P(即ち、その後、粉剤ノズル11→フィルタ8→受入ホッパ14→粉剤タンク16→粉剤供給路21の順に循環させる粉剤P)を供給する。
【0110】
粉剤タンク16に対する供給タンク25A,25Bからの粉剤供給を完了すると、その粉剤タンク16に対応する受入ホッパ14についての上記積算値Σmをリセット(Σm→0)した上で、その粉剤タンク16における収容粉剤Pを対応の粉剤ノズル11から噴出させて排出空気EAに分散させる排気処理工程に復帰するとともに、対応の受入ホッパ14について上記単位時間当たり塗料受入量mの積算を再び開始する。
【0111】
この循環粉剤更新処理について更に説明すると、例えば、図4に示すように塗装室2において停止位置No.1の被塗物W1に対してスプレー塗料量G1(g/min)のスプレー塗装を施すとともに、停止位置No.2の被塗物W2に対してスプレー塗料量G2(g/min)のスプレー塗装を施した場合、停止位置No.1の被塗物W1における塗着効率がα(%)で、停止位置No.2の被塗物W2における塗着効率がβ(%)であったとする。
【0112】
また、停止位置No.1は、被塗物W1に対する上記スプレー塗装で生じたオーバースプレー塗料のうちa%のオーバースプレー塗料が塗装室2からの排出空気EAとともに第1の流入口10Aを通過し、(100−a)%のオーバースプレー塗料が塗装室2からの排出空気EAとともに第2の流入口10Bを通過する位置であったとする。
【0113】
同様に、停止位置No.2は、被塗物W2に対する上記スプレー塗装で生じたオーバースプレー塗料のうちb%のオーバースプレー塗料が塗装室2からの排出空気EAとともに第3の流入口10Cを通過し、(100−b)%のオーバースプレー塗料が塗装室2からの排出空気EAとともに第4の流入口10Dを通過する位置であったとする。
【0114】
この場合、第1〜第4の受入ホッパ14A〜14Dの夫々における単位時間当たりの塗料受入量m1〜m4は次の通りになる。
m1=G1×(100−α)/100×a/100
m2=G1×(100−α)/100×(100−a)/100
m3=G2×(100−β)/100×b/100
m4=G2×(100−β)/100×(100−b)/100
【0115】
したがって、設定上限値Mが設定されている状況において、第1〜第4の受入ホッパ14A〜14Dの夫々に対応する第1〜第4の粉剤タンク16A〜16Dにおける循環粉剤更新処理の実施周期M/m1〜M/m4(min)は夫々、次のようになる。
M/m1=M/(G1×(100−α)/100×a/100)
M/m2=M/(G1×(100−α)/100×(100−a)/100
M/m3=M/(G2×(100−β)/100×b/100)
M/m4=M/(G2×(100−β)/100×(100−b)/100)
【0116】
ところで、循環粉剤更新処理は制御装置Cが自動的に実施するが、受入ホッパ14ごとの単位時間当たりの塗料受入量mは、各被塗物Wに対する塗装条件が変化して、塗装室2における被塗物停止位置、スプレー塗料量、塗着効率などが変化すると異なる値になる。
【0117】
このことから、受入ホッパ14ごとの単位時間当たりの塗料受入量mは、採用される塗装条件ごとに実験等により予め求めた上で制御装置Cに記憶させてあり、制御装置Cは、塗装条件の変更があった場合、それに応じ受入ホッパ14ごとの単位時間当たり塗料受入量mを変更して、単位時間当たり塗料受入量mの積算を継続するものにしてある。
【0118】
また、受入ホッパ14ごとの単位時間当たりの塗料受入量mを予め算出して制御装置Cに記憶させておくのに代え、採用される塗装条件に応じた受入ホッパ14ごとの単位時間当たりの塗料受入量mを制御装置Cに演算させるようにしてもよい。
【0119】
図5は、第1実施形態における塗装排気処理システムの全体構成を示し、5A,5Bは塗装ブースにおける2つの塗装工程部分に装備されたフィルタ装置5であり、これら2つのフィルタ装置5A,5Bは夫々、前述した並列の排気処理風路fsを備え、これら排気処理風路fsごとに、粉剤ノズル11→フィルタ8→受入ホッパ14→粉剤タンク16→粉剤供給路21の順に粉剤Pを循環させる形態で、塗装室2からの排出空気EAに含まれるオーバースプレー塗料を捕集する。
【0120】
25A,25Bは、上記2つのフィルタ装置5A,5Bにおける複数の粉剤タンク16に対し粉剤供給路26を通じ粉剤Pを供給する第1及び第2の供給タンクであり、23は、上記2つのフィルタ装置5A,5Bにおける複数の粉剤タンク16から粉剤排出路24を通じ塗料混じり粉剤Pを回収する中継タンクである。
【0121】
27は新鮮粉剤Pを貯留する新剤タンク、28は使用済みの廃棄対象粉剤Pを貯留する廃棄タンクであり、輸送車両29aにより持ち込まれた新鮮粉剤Pは新剤タンク27に貯留され、一方、廃棄タンク28に貯留された使用済粉剤Pは輸送車両29bにより持ち出されて廃棄処理される。
【0122】
30は再生処理部であり、この再生処理部30では、中継タンク23に回収された塗料混じり粉剤Pを再生処理する。
【0123】
この塗装排気処理システムでは第1運転と第2運転とを1稼働日ずつ交互に実施し、第1運転では次のa1,b1,c1の各工程を実施し、第2運転では次のa2,b2,c2の各工程を実施する。
【0124】
・第1運転
(a1)第1排気処理工程
この第1排気処理工程では、第1供給タンク25Aからの供給粉剤P(即ち、第1供給タンク25Aから各フィルタ装置5A、5Bにおける粉剤タンク16に供給された粉剤P)を、各フィルタ装置5A,5Bにおける並列の排気処理風路fsごとに、粉剤分散手段としての粉剤ノズル11により塗装室2からの排出空気EAに分散させて、その排出空気EAを各フィルタ装置5A,5Bにおけるフィルタ8に通過させる。
【0125】
この第1排気処理工程において、各フィルタ装置5A,5Bにおけるいずれかの受入ホッパ14で単位時間当たり塗料受入量mの積算値Σmが設定上限値Mになると、その受入ホッパ14におけるその時点の堆積粉剤P及び対応する粉剤タンク16における収容粉剤Pを中継タンク23に回収するとともに、第1供給タンク25Aにおける貯留粉剤Pを粉剤回収後の粉剤タンク16に補給する前述の循環粉剤更新処理が実行される。
【0126】
(b1)第1再生工程
この第1再生工程では、先の第2運転で中継タンク23に貯留された塗料混じり粉剤Pを再生処理部30で再生処理して、再生処理後の粉剤Pを第2供給タンク25Bに貯留する。
【0127】
(c1)第1貯留工程
この第1貯留工程では、第1再生工程でタンク内の塗料混じり粉剤Pを再生処理部30に送った後の中継タンク23に、第1排気処理工程でのフィルタ清掃処理によりフィルタ8から除去した塗料混じり粉剤P(即ち、第1排気処理工程で各フィルタ装置5A,5Bにおいて実施される循環粉剤更新処理により各粉剤タンク16から回収される塗料混じり粉剤P)を貯留する。
【0128】
・第2運転
(a2)第2排気処理工程
この第2排気処理工程では、第2供給タンク25Bからの供給粉剤P(即ち、第2供給タンク25Bから各フィルタ装置5A、5Bにおける粉剤タンク16に供給された粉剤P)を、各フィルタ装置5A,5Bにおける並列の排気処理風路fsごとに、粉剤分散手段としての粉剤ノズル11により塗装室2からの排出空気EAに分散させて、その排出空気EAを各フィルタ装置5A,5Bにおけるフィルタ8に通過させる。
【0129】
第1排気処理運転と同様、この第2排気処理工程において、各フィルタ装置5A,5Bにおけるいずれかの受入ホッパ14において単位時間当たり塗料受入量mの積算値Σmが設定上限値Mになると、その受入ホッパ14におけるその時点の堆積粉剤P及び対応する粉剤タンク16における収容粉剤Pを中継タンク23に回収するとともに、第2供給タンク25Bにおける貯留粉剤Pを粉剤回収後の粉剤タンク16に補給する前述の循環粉剤更新処理が実行される。
【0130】
(b2)第2再生工程
この第2再生運転では、先の第1運転で中継タンク23に貯留された塗料混じり粉剤Pを再生処理部30で再生処理して、再生処理後の粉剤Pを第1供給タンク25Aに貯留する。
【0131】
(c2)第2貯留工程
この第2貯留工程では、第2再生工程でタンク内の塗料混じり粉剤Pを再生処理部30に送った後の中継タンク23に、第2排気処理工程でのフィルタ清掃処理によりフィルタ8から除去した塗料混じり粉剤P(即ち、第2排気処理工程で各フィルタ装置5A,5Bにおいて実施される循環粉剤更新処理により各粉剤タンク16から回収される塗料混じり粉剤P)を貯留する。
【0132】
そして、これら第1運転と第2運転との交互の繰り返し実施において、第1運転の繰り返し回数n1が設定回数ns(本例ではns=6)に至ったとき、第1貯留工程で中継タンク23に貯留した塗料混じり粉剤Pを使用限界粉剤として再生処理することなく廃棄タンク28に移送(≒廃棄処理)するとともに、第1排気処理工程で各フィルタ装置5A、5Bにおける粉剤タンク16に粉剤Pを供給した後の第1供給タンク25Aに新剤タンク27から新鮮粉剤Pを供給し、その上で第1運転の繰り返し回数n1をリセット(n1→0)する第1運転更新処理を実施する。
【0133】
また同様に、第2運転の繰り返し回数n2が上記設定回数ns(本例ではns=6)に至ったとき、第2貯留工程で中継タンク23に貯留した塗料混じり粉剤Pを使用限界粉剤として再生処理することなく廃棄タンク28に移送(≒廃棄処理)するとともに、第2排気処理工程で各フィルタ装置5A、5Bにおける粉剤タンク16に粉剤Pを供給した後の第2供給タンク25Bに新剤タンク27から新鮮粉剤Pを供給し、その上で第2運転の繰り返し回数n2をリセット(n2→0)する第2運転更新処理を実施する。
【0134】
図6は、第1実施形態の塗装排気処理システムにおける第1運転及び第2運転の運転パターンをダイヤグラム的に示したものであり、第1運転を実線の矢印で示し、第2運転を破線の矢印で示してある。
【0135】
図6に示すように、この第1実施形態の塗装排気処理システムでは、繰り返し回数n1が設定回数nsに至った第1運転(本例では11日目の第1運転)に続いて実施する第2運転(本例では12日目の第2運転)において第2運転の繰り返し回数n2が設定回数nsに至る状態にしてあり、これにより、第1運転更新処理と第2運転更新処理とを常に同時期に集中させるようにしてある。
【0136】
なお、第1運転と第2運転との交互実施並びに第1及び第2運転更新処理は、各フィルタ装置5A、5Bにおける循環粉剤更新処理とともに制御装置Cにが自動的に実施する。
【0137】
〔第2実施形態〕
第2実施形態の排気処理システムは、第1実施形態の排気処理システムと同じシステム構成(図5に示すシステム構成)を備えるものであり、第1運転及び第2運転の運転パターンのみを異ならせてある。
【0138】
図7は、第2実施形態の塗装排気処理システムにおける第1運転及び第2運転の運転パターンをダイヤグラム的に示したものであり、第1運転を実線の矢印で示し、第2運転を破線の矢印で示してある。
【0139】
図7に示すように、この第2実施形態の塗装排気処理システムでは、繰り返し回数n1が設定回数nsのほぼ半数に至った第1運転(本例では5日目の第1運転)に続いて実施する第2運転(本例では6日目の第2運転)において第2運転の繰り返し回数n2が設定回数nsに至る状態に、また、繰り返し回数n2が設定回数nsのほぼ半数に至った第2運転(本例では10日目の第2運転)に続いて実施する第1運転において第1運転の繰り返し回数n1が設定回数nsに至る状態にしてある。
【0140】
即ち、このようにすることで、各フィルタ装置5A,5Bにおいて粉剤ノズル11により塗装室2からの排出空気EAに分散させる粉剤Pにおける平均的な再生処理回数の変動幅を小さくして、システム性能の安定性を高めるようにしてある。
【0141】
なお、このように第1運転更新処理の実施時期と第2運転更新処理の実施時期とをズラせるには、第1運転と第2運転との交互の繰り返し実施の初期において、第1運転更新処理の実施タイミングや第2運転更新処理の実施タイミングを意図的に調整すればよい。
【0142】
その他の点は第1実施形態の排気処理システムと同じである。
【0143】
〔第3実施形態〕
図8は、第3実施形態における塗装排気処理システムの全体構成を示し、第1及び第2実施形態と同様、5A,5Bは塗装ブースにおける2つの塗装工程部分に装備されたフィルタ装置5であり、これら2つのフィルタ装置5A,5Bは夫々、前述した並列の排気処理風路fsを備え、これら排気処理風路fsごとに、粉剤ノズル11→フィルタ8→受入ホッパ14→粉剤タンク16→粉剤供給路21の順に粉剤Pを循環させる形態で、塗装室2からの排出空気EAに含まれるオーバースプレー塗料を捕集する。
【0144】
25は、これら2つのフィルタ装置5A,5Bにおける複数の粉剤タンク16に対し粉剤供給路26を通じ粉剤Pを供給する供給タンクであり、23は、上記2つのフィルタ装置5A,5Bにおける複数の粉剤タンク16から粉剤排出路24を通じ塗料混じり粉剤Pを回収する中継タンクである。
【0145】
27は新鮮粉剤Pを貯留する新剤タンク、28は使用済の廃棄対象粉剤Pを貯留する廃棄タンクであり、輸送車両29aにより持ち込まれた新鮮粉剤Pは新剤タンク27に貯留され、一方、廃棄タンク28に貯留された使用済粉剤Pは輸送車両29bにより持ち出されて廃棄処理される。
【0146】
31は中継タンク23における塗料混じり粉剤Pを廃棄対象粉剤と再生対象粉剤とに分別する分別部であり、この分別部31で分別した廃棄対象の塗料混じり粉剤Pは廃棄タンク28に移送して廃棄処理し、一方、この分別部31で分別した再生対象の塗料混じり粉剤Pは再生処理部30に送って再生処理する。
【0147】
この第3実施形態の塗装排気処理システムでは、図9に示すように、次のa〜fの各工程の夫々を繰り返して実施する。
【0148】
(a)排気処理工程
この排気処理工程では、供給タンク25からの供給粉剤P(即ち、供給タンク25から各フィルタ装置5A、5Bにおける粉剤タンク16に供給された粉剤P)を、各フィルタ装置5A,5Bにおける並列の排気処理風路fsごとに、粉剤分散手段としての粉剤ノズル11により塗装室2からの排出空気EAに分散させて、その排出空気EAを各フィルタ装置5A,5Bにおけるフィルタ8に通過させる。
【0149】
(b)貯留工程
この貯留工程では、排気処理工程でのフィルタ清掃処理により各フィルタ装置5A,5Bにおけるフィルタ8から除去した塗料混じり剤Pを中継タンク23に貯留する。
【0150】
具体的には、上記の排気処理工程において、各フィルタ装置5A,5Bにおけるいずれかの受入ホッパ14で単位時間当たり塗料受入量mの積算値Σmが設定上限値Mになると、その受入ホッパ14におけるその時点の堆積粉剤P及び対応する粉剤タンク16における収容粉剤Pを中継タンク23に回収するとともに、供給タンク25における貯留粉剤Pを粉剤回収後の粉剤タンク16に補給する前述の循環粉剤更新処理が実行される。
【0151】
(c)分別工程
この分別工程では、中継タンク23における塗料混じり粉剤Pを分別部31において、予め固定的に設定してある設定分別比K1:K2(例えば10%:90%)で廃棄対象粉剤と再生対象粉剤とに分別する。
【0152】
なお、設定分別比K1:K2としては、重量比又は体積比あるいは中継タンク23における嵩高比を採用する。
【0153】
(d)廃棄工程
この廃棄工程では、上記分別工程で分別した廃棄対象粉剤P(即ち、中継タンク23における塗料混じり粉剤PのうちのK1%の塗料混じり粉剤P)を廃棄タンク28に移送する。
【0154】
(e)再生工程
この再生工程では、上記分別工程で分別した再生対象粉剤P(即ち、中継タンク23における塗料混じり粉剤PのうちのK2%の塗料混じり粉剤P)を再生処理部30で再生処理する。
【0155】
(f)粉剤更新工程
この粉剤更新工程では、各フィルタ装置5A,5Bにおける並列の排気処理風路fsごとに行う前述の循環粉剤更新処理とは別に、上記再生工程で再生処理した粉剤Pを供給タンク25に戻すとともに、廃棄工程で廃棄処理した粉剤P(即ち、K1%の塗料混じり粉剤P)と同量の新鮮粉剤Pを新剤タンク27から供給タンク25に補給する。
【0156】
なお、分別工程での粉剤Pの分別処理や粉剤更新工程での新鮮粉剤Pの補給処理など、各工程a〜fでの必要処理は制御装置Cが自動的に実施する。
【0157】
〔第4実施形態〕
図10は、第4実施形態における塗装排気処理システムの全体構成を示し、第1〜第3実施形態と同様、5A,5Bは塗装ブースにおける2つの塗装工程部分に装備されたフィルタ装置5であり、これら2つのフィルタ装置5A,5Bは夫々、前述した並列の排気処理風路fsを備え、これら排気処理風路fsごとに、粉剤ノズル11→フィルタ8→受入ホッパ14→粉剤タンク16→粉剤供給路21の順に粉剤Pを循環させる形態で、塗装室2からの排出空気EAに含まれるオーバースプレー塗料を捕集する。
【0158】
25は、これら2つのフィルタ装置5A,5Bにおける複数の粉剤タンク16に対し粉剤供給路26を通じ粉剤Pを供給する供給タンクであり、23は、上記2つのフィルタ装置5A,5Bにおける複数の粉剤タンク16から粉剤排出路24を通じ塗料混じり粉剤Pを回収する中継タンクである。
【0159】
27は新鮮粉剤Pを貯留する新剤タンク、28は使用済の廃棄対象粉剤Pを貯留する廃棄タンクであり、輸送車両29aにより持ち込まれた新鮮粉剤Pは新剤タンク27に貯留され、一方、廃棄タンク28に貯留された使用済粉剤Pは輸送車両29bにより持ち出されて廃棄処理される。
【0160】
32は中継タンク23における塗料混じり粉剤Pを廃棄対象の不適正粉剤と再生対象の適正粉剤とに選別する選別部であり、この選別部32で選別した不適性な塗料混じり粉剤P(即ち、再生処理が難しい塗料混じり粉剤)は廃棄タンク28に移送して廃棄処理し、一方、この選別部32で選別した適正な塗料混じり粉剤P(即ち、再生処理が比較的容易な塗料混じり粉剤)は再生処理部30に送って再生処理する。
【0161】
具体的には、この選別部32では、中継タンク23における塗料混じり粉剤Pを、塗料分が多くて粒径が設定粒径ds以上となった大粒粉剤Pと塗料分が少なくて粒径が設定粒径ds未満のままの小粒粉剤Pとに選別する篩処理を実施し、この篩処理で選別した大粒粉剤Pを不適正粉剤として廃棄タンク28に送り、一方、この篩処理で選別した小粒粉剤Pを適正粉剤として再生処理部30に送る。
【0162】
この第4実施形態の塗装排気処理システムでは、図11に示すように、次のa〜fの各工程の夫々を繰り返して実施する。
【0163】
(a)排気処理工程
この排気処理工程では、供給タンク25からの供給粉剤P(即ち、供給タンク25から各フィルタ装置5A、5Bにおける粉剤タンク16に供給された粉剤P)を、各フィルタ装置5A,5Bにおける並列の排気処理風路fsごとに、粉剤分散手段としての粉剤ノズル11により塗装室2からの排出空気EAに分散させて、その排出空気EAを各フィルタ装置5A,5Bにおけるフィルタ8に通過させる。
【0164】
(b)貯留工程
この貯留工程では、排気処理工程でのフィルタ清掃処理により各フィルタ装置5A,5Bにおけるフィルタ8から除去した塗料混じり剤Pを中継タンク23に貯留する。
【0165】
具体的には、上記の排気処理工程において、各フィルタ装置5A,5Bにおけるいずれかの受入ホッパ14で単位時間当たり塗料受入量mの積算値Σmが設定上限値Mになると、その受入ホッパ14におけるその時点の堆積粉剤P及び対応する粉剤タンク16における収容粉剤Pを中継タンク23に回収するとともに、供給タンク25における貯留粉剤Pを粉剤回収後の粉剤タンク16に補給する前述の循環粉剤更新処理が実行される。
【0166】
(c)選別工程
この選別工程では、中継タンク23における塗料混じり粉剤Pを選別部32において上記篩処理により廃棄対象の大粒粉剤と再生対象の小粒粉剤とに選別する。
【0167】
(d)廃棄工程
この廃棄工程では、上記選別工程で選別した廃棄対象の大粒粉剤P(即ち、粒径が設定粒径ds以上の塗料混じり粉剤P)を廃棄タンク28に移送する。
【0168】
(e)再生工程
この再生工程では、上記選別工程で選別した再生対象の小粒粉剤P(即ち、粒径が設定粒径ds未満の塗料混じり粉剤P)を再生処理部30で再生処理する。
【0169】
(f)粉剤更新工程
この粉剤更新工程では、各フィルタ装置5A,5Bにおける並列の排気処理風路fsごとに行う前述の循環粉剤更新処理とは別に、上記再生工程で再生処理した粉剤Pを供給タンク25に戻すとともに、廃棄工程で廃棄処理した粉剤Pと同量の新鮮粉剤Pを新剤タンク27から供給タンク25に補給する。
【0170】
なお、選別工程での粉剤Pの選別処理や粉剤更新工程での新鮮粉剤Pの補給処理など、各工程a〜fでの必要処理は制御装置Cが自動的に実施する。
また、選別部32では、篩処理に代えて、中継タンク23における塗料混じり粉剤Pを風力選別などにより、塗料分が多くて比表面積が設定値未満となった廃棄対象の不適正粉剤と、塗料分が少なくて比表面積が設定値以上のままの再生対象の適正粉剤とに選別するようにしてもよく、また、この風力選別と前述の篩選別とを組み合わせて実施するようにしてもよく、選別部32で採用する選別法や選別基準は実験結果などに基づいて適宜に選択すればよい。
【0171】
〔第5実施形態〕
図12は、第5実施形態における塗装排気処理システムの全体構成を示し、第1〜第4実施形態と同様、5A,5Bは塗装ブースにおける2つの塗装工程部分に装備されたフィルタ装置5であり、これら2つのフィルタ装置5A,5Bは夫々、前述した並列の排気処理風路fsを備え、これら排気処理風路fsごとに、粉剤ノズル11→フィルタ8→受入ホッパ14→粉剤タンク16→粉剤供給路21の順に粉剤Pを循環させる形態で、塗装室2からの排出空気EAに含まれるオーバースプレー塗料を捕集する。
【0172】
25は、これら2つのフィルタ装置5A,5Bにおける複数の粉剤タンク16に対し粉剤供給路26を通じ粉剤Pを供給する供給タンク、27は新鮮粉剤Pを貯留する新剤タンク、28は使用済の廃棄対象粉剤Pを貯留する廃棄タンクであり、輸送車両29aにより持ち込まれた新鮮粉剤Pは新剤タンク27に貯留され、一方、廃棄タンク28に貯留された使用済粉剤Pは輸送車両29bにより持ち出されて廃棄処理される。
【0173】
また、この第5実施形態の塗装排気処理システムでは、上記2つのフィルタ装置5A,5Bにおける複数の粉剤タンク16から粉剤排出路24を通じ塗料混じり粉剤Pを回収する中継タンクとして、再生用中継タンク23Aと廃棄用中継タンク23Bとを設けてある。
【0174】
つまり、2つのフィルタ装置5A,5Bにおける複数の粉剤タンク16は、フィルタ清掃処理によりフィルタ8から除去される塗料混じり粉剤Pを並列の排気処理風路fsごと(換言すれば、排出空気EAの発生箇所ごと)に分別して収容する容器であることから、収容する塗料混じり粉剤Pにおける塗料分比率は粉剤タンク16ごとに異なる。
【0175】
このことに対し、これら粉剤タンク16のうち塗料分比率が高い塗料混じり粉剤Pが定常的に収容される特定の粉剤タンク16Aについては、それら特定の粉剤タンク16Aに収容される塗料分比率の高い塗料混じり粉剤Pを粉剤排出路24を通じて廃棄用中継タンク23Bに回収し、一方、他の粉剤タンク16に収容される塗料分比率が比較的小さい塗料混じり粉剤Pは粉剤排出路24を通じて再生用中継タンク23Aに回収するようにしてある。
【0176】
この第5実施形態の塗装排気処理システムでは、図13に示すように、次のa〜eの各工程の夫々を繰り返して実施する。
【0177】
(a)排気処理工程
この排気処理工程では、供給タンク25からの供給粉剤P(即ち、供給タンク25から各フィルタ装置5A、5Bにおける粉剤タンク16に供給された粉剤P)を、各フィルタ装置5A,5Bにおける並列の排気処理風路fsごとに、粉剤分散手段としての粉剤ノズル11により塗装室2からの排出空気EAに分散させて、その排出空気EAを各フィルタ装置5A,5Bにおけるフィルタ8に通過させる。
【0178】
(b)分別収容工程
この分別収容工程では、排気処理工程でのフィルタ清掃処理によりフィルタ装置5A,5Bにおけるフィルタ8から除去した塗料混じり粉剤Pを、排出空気EAの発生部位ごとに分別する状態で互いに異なる粉剤タンク16に収容する。
【0179】
(c)廃棄工程
この廃棄工程では、分別収容工程で特定の粉剤タンク16Aに収容された塗料分比率の高い塗料混じり粉剤Pを廃棄用中継タンク23Bに回収する。
【0180】
具体的には、上記の排気処理工程において、各フィルタ装置5A,5Bにおける複数の受入ホッパ16のうち、特定粉剤タンク16Aに対応する特定受入ホッパ14Aにおいて単位時間当たり塗料受入量mの積算値Σmが設定上限値Mになると、その特定受入ホッパ14Aにおけるその時点の堆積粉剤P及び対応する特定粉剤タンク16Aにおける収容粉剤Pを廃棄中継タンク23Bに回収するとともに、供給タンク25における貯留粉剤Pを粉剤回収後の特定粉剤タンク16Aに補給する前述の循環粉剤更新処理が実行される。
【0181】
そして、この廃棄工程では、その後、廃棄用中継タンク23Bにおける塗料混じり粉剤Pを廃棄タンク28に移送して廃棄処理する。
【0182】
(d)再生工程
この再生工程では、分別収容工程で特定粉剤タンク16A以外の粉剤タンク16に収容された塗料分比率の低い塗料混じり粉剤Pを再生用中継タンク23Aに回収する。
【0183】
具体的には、上記の排気処理工程において、各フィルタ装置5A,5Bにおける複数の受入ホッパ16のうち、特定粉剤タンク16A以外の粉剤タンク16に対応する受入ホッパ14において単位時間当たり塗料受入量mの積算値Σmが設定上限値Mになると、その受入ホッパ14におけるその時点の堆積粉剤P及び対応する粉剤タンク16における収容粉剤Pを再生用中継タンク23Aに回収するとともに、供給タンク25における貯留粉剤Pを粉剤回収後の粉剤タンク16に補給する前述の循環粉剤更新処理が実行される。
【0184】
そして、この再生工程では、その後、再生用中継タンク23Aにおける塗料混じり粉剤Pを再生処理部30に送って再生処理する。
【0185】
(e)粉剤更新工程
この粉剤更新工程では、再生工程で再生処理した粉剤Pを供給タンク25に戻すとともに、廃棄工程で廃棄処理した粉剤Pと同量の新鮮粉剤Pを新剤タンク27から供給タンク25に補給する。
【0186】
なお、廃棄工程や再生工程での粉剤処理、及び、粉剤更新工程での新鮮粉剤Pの補給処理など、各工程a〜eでの必要処理は制御装置Cが自動的に実施する。
【0187】
第1〜第5実施形態の塗装排気処理システムは以上の通りであり、続いて、再生処理部30の第1例〜第4例を説明するが、第1〜第5実施形態の塗装排気処理システムでは、これら第1例〜第4例の再生処理部30のいずれを採用してもよい。
図14は再生処理部30の第1例を示し、この第1例の再生処理部30では、前述した中継タンク23又は分別部31又は選別部32又は再生用中継タンク23Aからキャリア空気とともに搬送された再生対象の塗料混じり粉剤Pを第1バグフィルタ装置40により受け取り、受け取った塗料混じり粉剤Pをロータリバルブなどの弁装置41により所定量ずつ再生器42における再生室42aに投入する。
【0188】
再生室42aには、再生室42aに収容した塗料混じり粉剤Pを低速回転(例えば80〜200rpm)により撹拌する撹拌用回転刃43a、及び、その収容粉剤Pを高速回転により細断する細断用回転刃43b装備してあり、再生室42aを密閉化した状態で、これら回転刃43a,43bを回転させることで再生室42aにおける塗料混じり粉剤Pを粉砕処理する。
【0189】
また、再生器42の周壁部には、蒸気路44を通じて加熱器内部に蒸気sを供給することで、再生室42aの室壁を伝熱壁として再生室42aにおける塗料混じり粉剤Pを加熱する蒸気加熱器45を装備してある。
【0190】
つまり、この再生器42では、回転刃43a,43bによる塗料混じり粉剤Pの粉砕処理に併行して、蒸気加熱器45による加熱により、再生室42aにおける塗料混じり粉剤Pの塗料分を架橋反応させて硬化させる加熱処理を施す。
【0191】
さらに、この粉砕処理及び加熱処理では、真空ポンプ46により再生室42aを減圧することで、塗料に含まれる溶剤などの液分を塗料混じり粉剤Pにおける塗料分から離脱させる乾燥処理も併行する。
【0192】
47aは、真空ポンプ46による再生室42aからの吸引空気中に含まれる粉砕滓を捕集するバグフィルタであり、47bは真空ポンプ46による再生室42aからの吸引空気中に含まれる溶剤等の蒸気(即ち、塗料分からの離脱液分)を凝縮させて回収するコンデンサである。
なお、このコンデンサ47bは省略して、バグフィルタ47aを真空ポンプ46に対し直接に接続してもよい。
【0193】
この再生器42により粉砕処理及び加熱処理にした粉剤P(即ち、粉剤と硬化塗料との粉砕混合物)はサブタンク48に受け入れ、その後、このサブタンク48からフィーダ49により気流式微粉末製造機50に投入して微粉砕処理する。
【0194】
この気流式微粉末製造機50は、図15に示すように、回転軸芯qが一致する状態で近接させた2つの羽根車51a,51bを処理室52内で同じ向きにないし互いに逆向きに高速回転させることで、粉剤と硬化塗料との粉砕混合物を羽根車51a,51bに衝突させるとともに、それら羽根車51a,51bの高速回転により生じる高速旋回気流r中で粉剤と硬化塗料との粉砕混合物どうしを衝突させ、これら衝突により粉剤と硬化塗料との粉砕混合物を微粉砕処理するものであり、この気流式微粉末製造機50による微粉砕処理により再生粉剤P(粉剤と硬化塗料との粉砕混合物)の平均粒径を新鮮粉剤Pの平均粒径(10μm)程度に調整して塗料混じり粉剤Pの再生処理を完了する。
【0195】
そして、この気流式微粉末製造機50により微粉砕処理した再生粉剤Pは、キャリア空気とともに第2バグフィルタ装置53に取り出し、この第2バグフィルタ装置53からロータリーバルブなどの弁装置54を経て所定の供給先に送る。
【0196】
なお、再生器42での粉砕処理及び加熱処理だけで新鮮粉剤Pにある程度近い再生粉剤が得られる場合には、気流式微粉末製造機50による微粉砕処理を省略してもよい。
【0197】
図16は再生処理部30の第2例を示し、この第2例の再生処理部30では、前述した中継タンク23又は分別部31又は選別部32又は再生用中継タンク23Aからキャリア空気とともに搬送された再生対象の塗料混じり粉剤Pを第1バグフィルタ装置60により受け取り、受け取った塗料混じり粉剤Pをフィーダ61により一定流量で再生器62における再生室62aに連続投入する。
【0198】
再生室62aには、回転打撃子63aと固定衝突子63bとを装備してあり、回転打撃子63aを高速回転させることで、再生室62aに投入した塗料混じり粉剤Pを回転打撃子63aに衝突させるとともに固定衝突子63bに衝突させ、これら衝突により再生室62aにおける塗料混じり粉剤Pを粉砕処理する。
【0199】
また、この粉砕処理に併行して、再生室62aに熱風hを吹き込むことで、塗料混じり粉剤Pの塗料分を架橋反応させて硬化させる加熱処理、及び、塗料に含まれる溶剤等の液分を塗料混じり粉剤Pの塗料分から離脱させる乾燥処理を再生室62aにおける塗料混じり粉剤Pに施す。
【0200】
さらに、この再生器62には分級機64を装備してあり、この分級機64により、再生室62aで粉砕処理及び加熱処理した粉剤P(粉剤と硬化塗料との粉砕混合物)のうち粒径が新鮮粉剤Pの平均粒径程度になったものだけを再生粉剤Pとして再生室62aから送出する。
【0201】
そして、再生器62から送出される再生粉剤Pは、キャリア空気とともに第2バグフィルタ装置65に取り出し、この第2バグフィルタ装置65からロータリバルブなどの弁装置66を経て所定の供給先に送る。
【0202】
図17は再生処理部30の第3例を示し、この第3例の再生処理部30では、前述した中継タンク23又は分別部31又は選別部32又は再生用中継タンク23Aからキャリア空気とともに搬送された再生対象の塗料混じり粉剤Pを第1バグフィルタ装置70により受け取り、受け取った塗料混じり粉剤Pをフィーダ71及びスクリューコンベア72により一定流量でロータリーキルン73の炉体である回転筒74の入口端74aに投入する。
【0203】
投入した塗料混じり粉剤Pは回転筒74の回転に伴い撹拌されながら回転筒74の出口端74bに向って回転筒74内を移動するのに対し、回転筒74の周部には、回転筒74の筒壁を伝熱壁とする状態で電気やガスあるいは重油を用いて回転筒74内の塗料混じり粉剤Pを加熱する加熱器75を装備してあり、この加熱器75により回転筒74内の塗料混じり粉剤Pを、粉剤成分(例えば炭酸カルシウム)の熱分解には至らない温度(例えば400℃〜500℃)で加熱することで、回転筒74内の塗料混じり粉剤Pにおける塗料分を熱分解させる熱分解処理を回転筒74内の塗料混じり粉剤Pに施す。
【0204】
回転筒74の出口端74bから送出される熱分解処理後の塗料混じり粉剤P(即ち、塗料分が熱分解した粉剤P)は、第1例の再生処理部と同様、サブタンク48に受け入れ、その後、このサブタンク48からフィーダ49により前述の如き気流式微粉末製造機50(図15参照)に投入して微粉砕処理する。
【0205】
そして、この気流式微粉末製造機50による微粉砕処理により平均粒径を新鮮粉剤Pの平均粒径(10μm)程度に調整した再生粉剤Pは、キャリア空気とともに第2バグフィルタ装置53に取り出し、この第2バグフィルタ装置53からロータリバルブなどの弁装置54を経て所定の供給先に送る。
【0206】
なお、ロータリーキルン73での熱分解処理だけで新鮮粉剤Pにある程度近い再生粉剤が得られる場合には、気流式微粉末製造機50による微粉砕処理を省略してもよい。
【0207】
図18は再生処理部30の第4例を示し、この第4例の再生処理部30では、前述した中継タンク23又は分別部31又は選別部32又は再生用中継タンク23Aからキャリア空気とともに搬送された再生対象の塗料混じり粉剤Pを第1サブタンク80により受け取り、受け取った塗料混じり粉剤Pをフィーダ81により一定流量で前述の如き気流式微粉末製造機50(図15参照)に投入して微粉砕処理する。
【0208】
この気流式微粉末製造機50による微粉砕処理で平均粒径を新鮮粉剤Pの平均粒径(10μm)程度に調整した塗料混じり粉剤Pは第1バグフィルタ装置82に受け入れ、この第1バグフィルタ装置82からロータリーバルブなどの弁装置83により所定量ずつ再生器42の再生室42aに投入する。
【0209】
この再生器42は、図14に示したものと同じものであり、再生室42aに投入した微粉砕処理後の塗料混じり粉剤Pを、撹拌用回転刃43a及び細断用回転刃43bの回転により粉砕処理(ここでは実質的に撹拌処理)しながら、再生器42の周壁部に設けた蒸気加熱器45による加熱により、微粉砕後の塗料混じり粉剤Pにおける塗料分を架橋反応させて硬化させる加熱処理を行う。
【0210】
また、この加熱処理では、真空ポンプ46により再生室42aを減圧することで、塗料に含まれる溶剤などの液分を微粉砕後の塗料混じり粉剤Pにおける塗料分から離脱させる乾燥処理も併行する。
【0211】
この再生器42で加熱処理した再生粉剤P(即ち、粉剤と硬化塗料との微粉砕混合物)は第2サブタンク84に受け入れ、この第2サブタンク84からロータリーバルブなどの弁装置85を経て所定の供給先に送る。
【0212】
なお、気流式微粉末製造機50での微粉砕処理だけで新鮮粉剤Pにある程度近い再生粉剤が得られる場合には、再生器42での加熱処理及び乾燥処理を省略してもよい。
また、この例においても、コンデンサ47bは省略して、バグフィルタ47aを真空ポンプ46に対し直接に接続してもよい。
【0213】
以上、ここでは自動車ボディをスプレー塗装する塗装ブース1における塗装室2からの排出空気EAを処理対象とする塗装排気処理システムを示したが、本発明による塗装排気処理システムの運転方法は、自動車ボディに限らず種々の被塗物Wをスプレー塗装する塗装室からの排出空気を処理対象とする塗装排気処理システムに適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0214】
本発明による塗装排気処理システムの運転方法は、各種分野における種々の塗装設備において利用することができる。
【符号の説明】
【0215】
W 被塗物
2 塗装室
EA 排出空気
8 フィルタ
P 粉剤
11 粉剤分散手段,粉剤ノズル
25A 第1供給タンク
23 中継タンク
30 再生処理部
25B 第2供給タンク
n1 第1運転繰り返し回数
ns 設定回数
n2 第2運転繰り返し回数
25 供給タンク
K1:K2 設定分別比
16 容器,粉剤容器
16A 特定容器
42a 再生室
43a,43b 回転刃
45 加熱器
62a 再生室
63a 回転打撃子
63b 固定衝突子
h 熱風
74 回転筒
73 ロータリーキルン
q 回転軸芯
51a,51b 羽根車
52 処理室
50 気流式微粉末製造機
14 受入ホッパ
17 開閉弁
m 単位時間当たり塗料受入量
M 設定上限値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18