特許第6283354号(P6283354)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヤンセン バイオテツク,インコーポレーテツドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6283354
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】ST2L拮抗物質及び使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20180208BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20180208BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20180208BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20180208BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20180208BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20180208BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20180208BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20180208BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20180208BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20180208BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20180208BHJP
   A61P 11/08 20060101ALI20180208BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20180208BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20180208BHJP
   A61P 17/04 20060101ALI20180208BHJP
   A61P 11/02 20060101ALI20180208BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20180208BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20180208BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20180208BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20180208BHJP
   A61P 13/10 20060101ALI20180208BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20180208BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20180208BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
   C12N15/00 AZNA
   C07K16/28
   C07K16/46
   C12P21/08
   C12N1/15
   C12N1/19
   C12N5/10
   C12N1/21
   A61K39/395 U
   A61P11/06
   A61P11/00
   A61P11/08
   A61P1/04
   A61P17/00
   A61P17/04
   A61P11/02
   A61P17/02
   A61P13/12
   A61P19/02
   A61P29/00 101
   A61P13/10
   A61P37/06
   A61P43/00 105
   A61P37/08
【請求項の数】22
【全頁数】72
(21)【出願番号】特願2015-510362(P2015-510362)
(86)(22)【出願日】2013年4月29日
(65)【公表番号】特表2015-516817(P2015-516817A)
(43)【公表日】2015年6月18日
(86)【国際出願番号】US2013038637
(87)【国際公開番号】WO2013165894
(87)【国際公開日】20131107
【審査請求日】2016年1月7日
(31)【優先権主張番号】61/640,238
(32)【優先日】2012年4月30日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/640,407
(32)【優先日】2012年4月30日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/798,204
(32)【優先日】2013年3月13日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/798,226
(32)【優先日】2013年3月13日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】509087759
【氏名又は名称】ヤンセン バイオテツク,インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149010
【弁理士】
【氏名又は名称】星川 亮
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ダッフィー,カレン
(72)【発明者】
【氏名】ヒーリー,キャサリン
(72)【発明者】
【氏名】ラム,ロベルタ
(72)【発明者】
【氏名】マラヴィア,ラヴィ
(72)【発明者】
【氏名】プラッタ,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ファーソヴ,ナタリー
(72)【発明者】
【氏名】ルオ,ジンクアン
(72)【発明者】
【氏名】ナソ,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】トルネッタ,マーク
(72)【発明者】
【氏名】ウィーラー,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ウー,セン−ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ホール,リーロイ
【審査官】 野村 英雄
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2001/021641(WO,A1)
【文献】 国際公開第1999/034217(WO,A1)
【文献】 特表2005−501514(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/066501(WO,A1)
【文献】 特表2010−527936(JP,A)
【文献】 PALMER, G. et al.,"Inhibition of Interleukin-33 Signaling Attenuates the Severity of Experimental Arthritis.",ARTHRITIS & RHEUMATISM,2009年 3月,Vol.60, No.3,pp.738-749
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
C07K 1/00−19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトST2LのドメインI(配列番号9)に特異的結合する、単離されたヒト若しくはヒト適合性抗体拮抗物質又はそのフラグメントであって、
重鎖相補的決定領域(HCDR)1(HCDR1)、HCDR2(HCDR2)、HCDR3(HCDR3)、軽鎖相補的決定領域(LCDR)1(LCDR1)、LCDR2(LCDR2)、及びLCDR3(LCDR3)を含み、
(a)HCDR1が配列番号97を含み、
(b)HCDR2が配列番号114を含み、
(c)HCDR3が配列番号84を含み、
(d)LCDR1が配列番号130を含み、
(e)LCDR2が配列番号90を含み、並びに
(f)LCDR3が配列番号134を含む、単離された抗体拮抗物質又はそのフラグメント。
【請求項2】
重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、
(a)VHが、ヒトIGHV3−23(配列番号158)フレームワーク配列、IGHV1−24*01(配列番号148)フレームワーク配列又はIGHV1−f*01(配列番号149)フレームワーク配列由来のVHフレームワークを含み、及び
(b)VLが、ヒトIGKV3−11(L6)(配列番号159)フレームワーク配列、IGKV3−15*01(L2)(配列番号150)フレームワーク配列、IGKV1−9*01(L8)(配列番号151)フレームワーク配列、IGKV1−5*01(L12)(配列番号152)フレームワーク配列、IGKV1−12*01(L5)(配列番号153)フレームワーク配列、IGKV1−39*01(O12)(配列番号154)フレームワーク配列、IGKV1−27*01(A20)(配列番号155)フレームワーク配列又はIGKV1−33*01(O18)(配列番号156)フレームワーク配列由来のVLフレームワークを含む、請求項1に記載の単離された抗体拮抗物質又はそのフラグメント
【請求項3】
(a)VHフレームワークがヒトIGHV3−23(配列番号158)フレームワーク配列に由来し、
(b)VLフレームワークがヒトIGKV3−11(L6)(配列番号159)フレームワーク配列に由来する、請求項2に記載の単離された抗体拮抗物質又はそのフラグメント
【請求項4】
(a)VHが、配列番号191を含み、
(b)VLが、配列番号209を含む、請求項2又は3に記載の単離された抗体拮抗物質又はそのフラグメント
【請求項5】
IgG1型、IgG2型、IgG3型又はIgG4型である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の単離された抗体拮抗物質。
【請求項6】
抗体拮抗物質のFc領域内に置換を有する、請求項5に記載の単離された抗体拮抗物質。
【請求項7】
前記置換が、M252Y/S254T/T256E、V234A/G237A/P238S/H268A/V309L/A330S/P331S又はS228P/L234A/L235Aを含み、残基のナンバリングがEUナンバリングに準ずる、請求項6に記載の単離された抗体拮抗物質。
【請求項8】
ヒトST2Lに対する解離定数(KD)5×10-12M〜7×10-10M、ヒトST2Lに対する会合速度定数(Kon)2×106-1-1〜1×108-1-1、又はヒトST2Lに対する解離速度定数(Koff)1×10-6-1〜1×10-2-1を有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の単離された抗体拮抗物質又はそのフラグメント
【請求項9】
カニクイザル(cyno)ST2L(配列番号2)に対する解離定数(KD)3×10-12M〜2×10-9M、cyno ST2Lに対する会合速度定数(Kon)4×106-1-1〜1×108-1-1又はcyno ST2Lに対する解離速度定数(Koff)7×10-5-1〜1×10-1-1を有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の単離された抗体拮抗物質又はそのフラグメント
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の単離された抗体拮抗物質又はそのフラグメントをコードする、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項11】
請求項4に記載のVH及びLをコードする、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の単離されたポリヌクレオチドを含む、ベクター。
【請求項13】
請求項12に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項14】
請求項13に記載の宿主細胞を培養する工程と、前記宿主細胞から抗体拮抗物質又はその機能的フラグメントを回収する工程と、を含む、抗体拮抗物質又はその機能的フラグメントの製造方法。
【請求項15】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の単離された抗体又はそのフラグメントと、製薬上許容された担体と、を含む、医薬組成物。
【請求項16】
ST2L介在状態を治療又は予防するための医薬組成物であって、
請求項1〜9のいずれか1項に記載の単離された抗体拮抗物質又はそのフラグメントを含み、
前記単離された抗体拮抗物質又はそのフラグメントの治療上の有効量を、それを必要とする患者に、ST2L介在状態を治療又は予防するうえで十分な時間にわたって投与する工程を含む方法のために用いられる、医薬組成物。
【請求項17】
前記ST2L介在状態が、喘息、気道過敏症、サルコイドーシス、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、特発性肺線維症(IPF)、肺嚢胞性線維症、炎症性大腸炎(IBD)、好酸球性食道炎、強皮症、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、水泡性類天疱瘡、慢性じん麻疹、糖尿病性腎症、関節リウマチ、間質性膀胱炎又は移植片対宿主病(GVHD)であるか、或いは肺における炎症性細胞動員、杯細胞の肥厚化、粘液分泌又はマスト細胞応答の増加を伴う、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
患者のマスト細胞応答を阻害するための医薬組成物であって、
請求項1〜9のいずれか1項に記載の単離された抗体拮抗物質又はそのフラグメントを含み、
前記単離された抗体拮抗物質又はそのフラグメントの治療上の有効量を、それを必要のある患者に、前記マスト細胞応答を阻害するうえで十分な時間にわたって投与する工程を含む方法のために用いられる、医薬組成物。
【請求項19】
前記マスト細胞応答の阻害が、ヒト臍帯血由来マスト細胞により放出されるGM−CSF、IL−5、IL−8、IL−10又はIL−13の量を50μg/mlの抗体で少なくとも50%阻害することを含む、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
対象におけるIL−33とST2Lとの相互作用を阻害するための医薬組成物であって、
請求項1〜9のいずれか1項に記載の単離された抗体拮抗物質又はそのフラグメントを含み、
前記単離された抗体拮抗物質又はそのフラグメントを、対象に、IL−33とST2Lとの相互作用を阻害するうえで十分な量で投与する工程を含む方法のために用いられる、医薬組成物。
【請求項21】
前記対象がST2L介在状態にある、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記ST2L介在状態が、喘息、気道過敏症、サルコイドーシス、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、特発性肺線維症(IPF)、肺嚢胞性線維症、炎症性大腸炎(IBD)、好酸球性食道炎、強皮症、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、水泡性類天疱瘡、慢性じん麻疹、糖尿病性腎症、関節リウマチ、間質性膀胱炎又は移植片対宿主病(GVHD)であるか、或いは肺における炎症性細胞動員、杯細胞の肥厚化、又は粘液分泌若しくはマスト細胞応答の増加を伴う、請求項21に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2013年3月13日出願の米国出願番号第13/798,204号、2013年3月13日出願の米国出願番号第13/798,226号、2012年4月30日出願の米国仮出願第61/640,407号及び2012年4月30日出願の米国仮出願第61/640,238号の恩典を主張するものであり、前記公報の内容をすべて参照により本明細書に援用する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、ST2L拮抗物質、当該拮抗物質又はそのフラグメントをコードするポリヌクレオチド、並びに前記のものの製造方法及び使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ST2L(IL−1RL1又はIL−33Rα)は、T細胞、NK/NKT細胞、好塩基球、好酸球、マスト細胞、並びに新たに記述された非B/非T2型自然リンパ球細胞であるnuocytes及びナチュラルヘルパー細胞を包含する多種多様な免疫細胞の細胞表面に発現された、Toll/IL−1受容体ファミリーメンバーである。ST2L発現はまた、樹状細胞(DC)、マクロファージ及び好中球上でも生じ得る。ST2Lはまた、Toll様受容体であるTLR2、TLR4及びTLR9の反応性を下方制御し得るだけでなく、そのリガンドIL−33による活性化及び付属タンパク質IL−1RAcPとの会合によって2型サイトカインの放出をも生じさせ得る。IL−33は、その全長型がホメオスタシス中には上皮細胞及び内皮細胞の核内にするが、壊死すると切断されて放出され得るので「アラーミン」と称されてきた。
【0004】
ST2Lシグナル伝達は、付属タンパク質IL−1RAcPを予め形成されたST2L/IL−33複合体と会合させる必要がある。付属タンパク質IL−1RAcPはIL−1α/βシグナル伝達複合体と共有される。ST2L、IL−33及びIL−1RAcPの相互作用モデル並びにIL−1R1とIL−1RAcPの間の相互作用モデルが提案されている(Lingelら著、Cell、第17巻、1398〜1410頁、2009年、Wangら著、Nat Immunol、第11巻、905〜11頁、2010年)。近年、ST2L/IL−33/IL−1RAcPは、マスト細胞上のc−Kit、すなわち幹細胞因子(SCF)の受容体とシグナル伝達複合体を形成することも分かった。IL−33は、初代マスト細胞内ではSCFに依存してサイトカイン産生を引き起こした(Drubeら著、Blood、第115巻、3899〜906頁、2010年)。
【0005】
ST2Lの活性化は、過剰な2型サイトカイン反応(特にIL−5及びIL−13)、マスト細胞及び好酸球の活性化並びに気道過敏症をもたらし、しかもNKT細胞からのIFNγの誘導並びにマスト細胞からのIL−1β及びIL−6の誘導によってTh1及びTh17応答を増幅することも報告されている。ST2L/IL−33経路の調節不全は、喘息、関節リウマチ、炎症性大腸炎、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、鼻ポリープ及び全身性硬化症を包含する様々な免疫介在疾患に関与していた。(Palmer及びGabay著、Nat Rev Rheumatol、第7巻、321〜329頁、2011年及びLloyd著、Curr Opin Immunol、第22巻、800〜806頁、2010年、並びにShimizuら著、Hum Molec Gen第14巻、2919〜27頁、2005年、Kamekuraら著、Clin Exp Allergy、第42巻、218〜228頁、2012年及びManettiら著、Ann Rheum Dis、第69巻、598〜605頁、2010年に概説されている)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そのため、ST2L介在疾患及び障害の治療での使用に適したST2L拮抗物質が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ヒトST2LドメインI(配列番号9)に特異的結合する、単離されたヒト若しくはヒト適合性抗体拮抗物質又はそのフラグメントを提供する。
【0008】
本発明はまた、特定の軽鎖及び重鎖可変領域配列又は特定の重鎖及び軽鎖相補性決定配列を有する、ヒトST2Lに特異的結合する、ヒト適合性抗体拮抗物質も提供する。
【0009】
本発明は更に、定義されたエピトープ領域でヒトST2Lに特異的結合する及び/又は本明細書に記載の特定の特性を有する、ヒト又はヒト適合性抗体拮抗物質も提供する。
【0010】
本発明は更に、本発明の重鎖可変領域(VH)又は軽鎖可変領域(VL)をコードする単離ポリヌクレオチドも提供する。
【0011】
本発明は更に、本発明の単離ポリヌクレオチドを含むベクターも提供する。
【0012】
本発明は更に、本発明のベクターを含む宿主細胞も提供する。
【0013】
本発明は更に、本発明の宿主細胞を培養する工程と、当該細胞から抗体を回収する工程と、を含む、本発明の抗体の製造方法も提供する。
【0014】
本発明は更に、本発明の単離された抗体と、製薬上許容された担体と、を含む、医薬組成物も提供する。
【0015】
本発明は更に、本発明の単離された抗体の治療上の有効量を、それを必要とする患者に、ST2L介在状態を治療又は予防するうえで十分な時間にわたって投与する工程を含む、ST2L介在状態の治療又は予防方法も提供する。
【0016】
本発明は更に、本発明の単離された抗体の治療上の有効量を、その必要のある患者に、マスト細胞応答を阻害するうえで十分な時間にわたって投与する工程を含む、患者のマスト細胞応答を阻害する方法も提供する。
【0017】
本発明は更に、ST2LのドメインIに特異的結合する抗体を、対象に、IL−33とST2Lとの相互作用を阻害するうえで十分な量で投与する工程を含む、対象におけるIL−33とST2Lとの相互作用を阻害する方法も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】アイソタイプ対照CNTO5516と比較したときの、IL−33の鼻腔内投与によって誘発された肺炎症モデルにおけるST2LドメインI結合性mAb CNTO3914による気道過敏症の阻害を示している。ピーク気道抵抗は、メタコリン(MCH)を段階的な用量(mg/ml)で投与した直後に測定した。**CNTO3914/IL−33対CNTO5516/IL−33ではp<0.05、及び***IL−33治療群によるCNTO3914/IL−33対PBSではp<0.001。
図2】アイソタイプ対照CNTO5516と比較したときの、IL−33の鼻腔内投与によって誘発された肺炎症モデルにおけるST2LドメインI結合性mAb CNTO3914による気管支肺胞洗浄(BAL)細胞動員阻害を示している。***P<0.001。
図3】鼻腔内投与されたIL−33によって誘発された肺炎症モデルにおいて、無細胞BAL液中のST2LドメインI結合性mAb CNTO3914による、マウスマスト細胞プロテアーゼ1(MMCP−1)放出の用量依存的阻害を示している。IL−33処理によるCNTO5516(アイソタイプ対照)に対して、**p<0.01、***p<0.001である。
図4】ST2LドメインI結合性mAb CNTO3914による、インビトロでのマウス骨髄由来マスト細胞によるIL−33誘発GM−CSF(図4A)、IL−5(図4B)及びTNFα(図4C)放出の阻害を示している。使用したCNTO3914濃度は括弧内の単位μg/mlで、及びIL−33濃度はng/mlで示す。
図5】ST2LドメインI結合性mAb C2494(STLM62)による、表示されたIL−33濃度及びC2494濃度におけるヒト臍帯血由来マスト細胞によるIL−33誘発プロスタグランジンD2(PGD2)放出の阻害を示している。MOX−PDG2:メトキシルサミン−PGD2
図6】ヒト臍帯血由来マスト細胞(hCBMC)中の表示された濃度(μg/ml)のST2LドメインI結合性mAb C2244及びC2494による、StemPro−34培地+100ng/mlのSCF(幹細胞因子)中1ng/mlのIL−33存在下で、GM−CSF(図6A)、IL−8(図6B)、IL−5(図6C)、IL−13(図6D)及びIL−10(図6E)の放出阻害を示している。
図7】ヒト臍帯血由来マスト細胞において表示された濃度(μg/ml)のST2LドメインIII結合性mAb C2519又はC2521が、StemPro−34培地+100ng/mlのSCF中1ng/mlのIL−33の存在下で及ぼす、GM−CSF(図7A)、IL−8(図7B)、IL−5(図7C)、IL−13(図7D)及びIL−10(図7E)の放出への影響を示している。
図8】ヒト臍帯血由来マスト細胞(hCBMC)においてST2LドメインI結合性mAbであるC2494並びにST2LドメインIII結合性mAbであるST2M48(M48)、ST2M49(M49)、ST2M50(M50)及びST2M51(M51)が、RPMI/10%FCS培地+100ng/mlのSCF中3ng/mlのIL−33の存在下で及ぼす、GM−CSF(図8A)、IL−8(図8B)、IL−5(図8C)、IL−13(図8D)及びIL−10(図8E)の放出への影響を示している。
図9】図示するように試験抗体をそれぞれ50μg/ml又は2μg/mL用いてIL−33及びSCF誘発によるヒト臍帯血由来マスト細胞によるGM−CSF、IL−5、IL−8、IL−10及びIL−13放出に対する、ST2LのドメインI(D1)又はドメインIII(D3)に結合する抗ST2L抗体の平均阻害率(%)を示している。負の値は活性化率(%)を示す。
図10】ファージディスプレイライブラリ由来の及び後続の親和性成熟活動後の、抗ST2L抗体の重鎖可変領域(VH)及び重鎖CDR配列を示している。
図11】ファージディスプレイライブラリ由来の及び後続の親和性成熟活動後の、抗ST2L抗体の、軽鎖可変領域(VL)及び軽鎖CDR配列を示している。
図12】抗ST2L抗体STLM208 VH ST2H257 HCDR3変異体のVH領域及びVL領域並びに重鎖CDR配列を示している。
図13A】ファージディスプレイライブラリ由来の及び後続の親和性成熟活動後の、抗ST2L抗体のVH配列(図13A)及びVL配列(図13B)を示している。
図13B】ファージディスプレイライブラリ由来の及び後続の親和性成熟活動後の、抗ST2L抗体のVH配列(図13A)及びVL配列(図13B)を示している。
図14】ヒトフレームワークへ転移されたC2494 VH及びVL抗原結合部位の略図を表している。(転移後は、HFA、すなわち「ヒトフレームワークへの適合化(human framework adaptation)」と表示)。Kabat CDRには下線を付し、また、Chothia HVには、図示した転移後HFA領域の上に破線を付している。VH残基及びVL残基のナンバリングはChothiaに準じた。VH中、グレーで強調した残基は一部HFA変異体には転移されなかった。C2494のVH:配列番号48、C2494のVH:配列番号52。
図15】C2494由来のヒトフレームワーク適合性(HFA)抗体のCDR配列を示している。
図16図16Aは、抗ST2L抗体CNTO3914の血清中濃度を、図16Bは、気管支肺胞洗浄(BAL)の細胞動員の阻害を、図16Cは、IL−33で刺激された全血細胞によるIL−6分泌の阻害を、図16Dは、IL−33で刺激された全血細胞によるMCP1分泌の阻害をそれぞれ示している。IL−33の鼻腔内投与によって誘発された肺炎症の6時間モデルにおける、CNTO3914を投与後24時間。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、NQ=検出限界未満、@=1データ点が検出限界未満である。
図17】様々な抗ST2L抗体同士の競合。図17A)30nMの標識C2244 Fabを、マイクロウェルにコーティングしたST2L−ECDとの結合において、表示した抗体と競合した。C2244は、C2494と競合したが、C2539とは競合しなかった。図17B)10nMの標識C2494を、マイクロウェルにコーティングしたST2L−ECDとの結合において、表示した抗体と競合した。C2494は、STLM208及びSTLM213と競合したが、C2539とは競合しなかった。
図18】C2244 Fabと複合体を形成したヒトST2−ECD(配列番号119)の、単純化されたH/D交換マップを示している。図示するように、抗体で保護された領域を、異なるグレースケールで表示した。残基18〜31を含むセグメント(破線で囲まれた部分)(配列番号1の全長ST2Lの残基35〜48に相当)はFabで保護された。残基71〜100を含む領域(実線で囲まれた部分)(配列番号1の残基88〜117に相当)は、重度にグリコシル化されたが、ペプチドで覆われてはいなかった。
図19】図示したST2L変異体に関するST2LドメインI結合抗体の速度定数及び親和性定数を表している。
図20】抗ST2L抗体STLM208による初代ヒト肺マスト細胞からのGM−CSF(図20A)、IL−5(図20B)、IL−8(図20C)及びIL−13(図20D)分泌の阻害を表している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
特許及び特許出願を含むがこれらに限定されない、本明細書で引用する全ての刊行物は、参照により本明細書に、完全に説明されているかのごとく援用される。
【0020】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を記載する目的でのみ使用され、限定を意図するものではないと理解すべきである。特に断らないかぎり、本明細書において使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されているものと同じ意味を有する。
【0021】
本明細書に記載されているものと同様又は同等の任意の方法及び材料を、本発明の試験を実施するために使用できるが、例示となる材料及び方法を本明細書に記載する。本発明を説明及び特許請求するうえで以下の用語が用いられる。
【0022】
本明細書で使用されるとき、「拮抗物質」という用語は、ST2Lの生物学的活性を任意の機序によって部分的に又は完全に阻害する分子を意味する。典型的な拮抗物質は、抗体、融合タンパク質、ペプチド、ペプチド模倣薬、核酸、オリゴヌクレオチド及び小分子である。拮抗物質は、以降に記載のST2L生物学的活性用のアッセイを用いて確認することができる。ST2L拮抗物質は、測定されるST2L生物学的活性を20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%阻害する可能性がある。
【0023】
用語「ST2L」又は「huST2L」若しくは「ヒトST2L」とは、GenBankの登録番号NP_057316で示されるアミノ酸配列を有するヒトST2Lポリペプチドを指す。配列番号1は、全長ヒトST2Lのアミノ酸配列を表す。本明細書で使用されるとき、「ST2L細胞外ドメイン」、「ST2L−ECD」又は「huST2L−ECD」は、配列番号1のアミノ酸19〜328を有するポリペプチドを表す。huST2L−ECDは、配列番号1の残基19〜122(ドメインI、配列番号9)、残基123〜202(ドメインII、配列番号10)及び残基209〜324(ドメインIII、配列番号11)に及ぶ3種のIg様C2型ドメインを有する。「ドメインI」又は「ST2LドメインI」又は「huST2LドメインI」又は「D1」とは、配列番号9で表される配列を有する、ヒトST2Lにおける第1の免疫グロブリン様ドメインを指す。「ドメインIII」又は「ST2LドメインIII」とは、配列番号11で示される配列を有する、ヒトST2Lにおける第3の免疫グロブリン様ドメインを指す。
【0024】
本明細書で使用されるとき、用語「IL−33」は、全長IL−33(GenBankの登録番号NP_254274、配列番号3)、並びにその変異体及び活性体を包含する。IL−33変異体としては、GenBankの登録番号NP_001186569及び同登録番号NP_001186570で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質が挙げられる。IL−33活性体としては、配列番号3の残基112〜270を有する「成熟IL−33」が挙げられる。別の活性体としては、配列番号3の残基11〜270、115〜270、95〜270、99〜270又は109〜270を有するIL−33フラグメント(LeFrancaisら著、Proc Natl Acad Sci(USA)、第109巻、1673〜1678頁、2012年)、又はIL−33を内因性発現する細胞から単離された任意の形態若しくは形態の組み合わせが挙げられる。「IL−33活性体」は、ST2L生物学的活性を誘発する配列番号3のIL−33のフラグメント又は変異体である。
【0025】
本明細書で使用されるとき、「抗体」という用語は、広義で意図され、ポリクローナル抗体、マウス、ヒト、ヒト適合性、ヒト化及びキメラモノクローナル抗体を含むモノクローナル抗体、抗体フラグメント、少なくとも2つの無傷の抗体若しくは抗体フラグメント又は二量体の、四量体の若しくは多量体の抗体から形成される二重特異性抗体又は多重特異性抗体、並びに一本鎖抗体を含む、免疫グロブリン分子を含む。
【0026】
免疫グロブリンは、重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じてIgA、IgD、IgE、IgG及びIgMの5つの大きなクラスに分類することができる。IgA及びIgGは、アイソタイプのIgA1、IgA2、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4へと更に細分類される。あらゆる脊椎動物種の抗体の軽鎖は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて2つの明確に異なるタイプ、すなわちカッパ(κ)及びラムダ(λ)のうちの1つに分類することができる。
【0027】
用語「抗体フラグメント」とは、重鎖及び/又は軽鎖抗原結合部位、例えば、重鎖相補性決定領域(HCDR)1、2及び3、軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、2及び3、重鎖可変領域(VH)、又は軽鎖可変領域(VL)を保有する免疫グロブリン分子の一部を指す。抗体フラグメントとしては、周知のFab、F(ab’)2、Fd及びFvフラグメント、並びに1つのVHドメインからなるドメイン抗体(dAb)が挙げられる。VHドメイン及びVLドメインは、互いに合成リンカーを介して結合することで様々なタイプの一本鎖抗体設計を形成する可能性があり、VHドメイン及びVLドメインが別々の一本鎖抗体構築物で発現される場合は、VH/VLドメインが分子内又は分子間で対を成して、一本鎖Fv(scFv)又はダイアボディなどの一価の抗原結合部位を形成する。これらは、例えば国際特許出願公開第WO98/44001号、同第WO88/01649号、同第WO94/13804号、同第WO92/01047号に記載されている。
【0028】
抗体可変領域は、3つの「抗原結合部位」で遮られた「フレームワーク」領域からなる。抗原結合部位は、種々の用語を使用して定義される。(i)3つがVHに(HCDR1、HCDR2、HCDR3)及び3つがVLに(LCDR1、LCDR2、LCDR3)ある、相補性決定領域(CDR)は、配列可変性に基づく(Wu及びKabat著、J.Exp.Med.、第132巻、211〜250頁、1970年、Kabatら著、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、Md.、1991年)。(ii)3つがVHに(H1、H2、H3)及び3つがVLに(L1、L2、L3)ある、「超可変領域」、「HVR」又は「HV」は、Chothia及びLesk(Chothia及びLesk著、Mol.Biol.第196巻、17〜917頁、1987年)によって記載されるように、構造において超可変である抗体可変ドメインの領域を指す。他の用語には、「IMGT−CDR」(Lefrancら著、Dev.Comparat.Immunol.第27巻、55〜77頁、2003年)及び「特異性決定残基使用」(SDRU)(Almagro著、Mol.Recognit.、第17巻、132〜143頁、2004年)が含まれる。International ImMunoGeneTics(IMGT)データベース(http://www_imgt_org)は、抗原結合部位の標準化ナンバリング及び定義を規定する。各CDR、HV及びIMGTの表記の間の対応についてはLefrancら著、Dev.Comparat.Immunol.第27巻、55〜77頁、2003年に述べられている。
【0029】
本明細書で使用されるとき、「Chothia残基」は、Al−Lazikani(Al−Lazikaniら著、J.Mol.Biol.、第273巻、927〜948頁、1997年)に従ってナンバリングされた抗体VL残基及びVH残基である。
【0030】
「フレームワーク」又は「フレームワーク配列」は、抗原結合部位として定義されたものを除く、可変領域の残りの配列である。抗原結合部位は上記に述べたような様々な用語によって定義され得るため、フレームワークの正確なアミノ酸配列は抗原結合部位がどのように定義されるかによって決まる。
【0031】
「ヒト抗体」又は「完全ヒト抗体」とは、ヒト免疫グロブリン配列に由来する可変領域の配列と定常領域の配列とを含む抗体を指す。本発明のヒト抗体は置換を包含する可能性があるので、当該ヒト抗体は、発現した免疫グロブリン又は生殖細胞系列遺伝子配列の正確な複製物でない場合がある。ただし、抗原結合部位がヒト以外の種から得られる抗体は、「ヒト抗体」の定義には包含されない。
【0032】
「ヒト適合性」抗体又は「ヒトフレームワーク適合性(HFA)」抗体とは、米国特許出願公開第2009/0118127号に記載の方法に従って適合化された抗体を指し、また更には、ヒト以外の種に由来する抗原結合部位配列がヒトフレームワーク上に移植された抗体も指す。
【0033】
「ヒト化抗体」とは、抗原結合部位がヒト以外の種に由来しかつ可変領域フレームワークがヒト免疫グロブリン配列に由来する、抗体を指す。ヒト化抗体はフレームワーク領域内に置換を含む可能性があることから、当該フレームワークは、発現したヒト免疫グロブリン又は生殖細胞系列遺伝子配列の完全な複製物でなくてもよい。
【0034】
「実質的に同一の」という表現は、本明細書で使用されるとき、比較される2つの抗体可変領域のアミノ酸配列が同一であるか又は「ごく僅かな差異」があるということを意味する。ごく僅かな差異とは、抗体特性に悪影響を及ぼさない、抗体又は抗体可変領域の配列における1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個又は11個のアミノ酸の置換である。本明細書に開示される可変領域の配列と実質上同一のアミノ酸配列は、本出願の範囲に属する。一部の実施形態では、配列の同一性は、約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれよりも高い可能性がある。同一性(%)は、例えば、Vector NTI v.9.0.0(Invitrogen、Carlsbad、CA)のAlignXモジュールの初期設定を使用するペアワイズアライメントによって決定することができる。本発明のタンパク質配列を問い合わせ配列として使用することで、例えば、近縁配列を確認するために公開データベース又は特許データベースでの検索を実行することができる。かかる検索を実行するために使用されるプログラム例は、初期設定を使用する、XBLAST若しくはBLASTPプログラム(http_//www_ncbi_nlm/nih_gov)、又はGenomeQuest(商標)(GenomeQuest、Westborough、MA)スイートである。
【0035】
用語「エピトープ」とは、本明細書で使用されるとき、抗体が特異的結合する抗原の一部を意味する。エピトープは通常、アミノ酸又は多糖類側鎖のような部位の化学的に活性な(極性、非極性又は疎水性など)表面基からなり、特定の3次元構造特性及び特定の電荷特性を有しうる。エピトープは、立体配座空間単位を形成する連続した及び/又は連続していないアミノ酸から成り得る。連続していないエピトープについて、抗原の直鎖配列の異なる部分からのアミノ酸は、タンパク質分子の折り畳みを通じて、3次元空間において近接する。典型的なエピトープは、配列番号9で示されるhuST2LのドメインIである。
【0036】
本明細書で使用されるとき、「パラトープ」という用語は、抗原が特異的結合する抗体の一部分を意味する。パラトープは元来線状であっても又は不連続であってもよく、一つながりの線状のアミノ酸よりも、抗体の隣接していないアミノ酸同士の空間関係によって形成されてよい。「軽鎖パラトープ」及び「重鎖パラトープ」又は「軽鎖パラトープのアミノ酸残基」及び「重鎖パラトープのアミノ酸残基」はそれぞれ、抗原と接触する抗体の軽鎖残基及び重鎖残基を指す。
【0037】
用語「特異的結合」又は「特異的結合する」とは、本明細書で使用されるとき、抗体が所定の抗原と、他の抗原又はタンパク質とよりも高い親和性で結合することを指す。典型的に、抗体は、所定の抗原と、解離定数(KD)1×10-7M以下、例えば1×10-8M以下、1x10-9M以下、1×10-10M以下、1×10-11M以下、又は1×10-12M以下、典型的には、非特異的抗原(例えば、BSA、カゼイン、又はその他任意の他の特定ポリペプチド)と結合するKDよりも少なくとも10倍低いKDで結合する。解離定数は標準的手法を用いて測定することができる。しかし、所定の抗原と特異的結合する抗体は、他の関連抗原、例えばヒト又はサル、例えばカニクイザル(cynomolgus)などの他の種から得た同様の所定の抗原(ホモログ)と交差反応性を示す可能性もある。
【0038】
本明細書で使用されるとき、「二重特異性」とは、2種の異なる抗原と結合する抗体、又は抗原内の2種の異なるエピトープと結合する抗体を指す。
【0039】
本明細書で使用されるとき、「単一特異性」とは、1つの抗原又は1つのエピトープと結合する抗体を指す。
【0040】
用語「〜と組み合わせて」は、本明細書で使用されるとき、記述の対象である薬剤が、混合物として一緒に、又はそれぞれ単独薬剤として同時に、又はそれぞれ単独薬剤として順次に任意の順序で、動物に投与され得ることを意味する。
【0041】
本明細書で使用されるとき、用語「炎症性状態」とは、部分的には、サイトカイン、ケモカイン、又は炎症細胞(例えば、好中球、単球、リンパ球、マクロファージ)の活性によって媒介される、有害な刺激(例えば、病原体、損傷した細胞、身体的傷害、若しくは刺激物質)に対する急性又は慢性の局部的反応又は全身性反応を指し、大抵の場合、疼痛、潮紅、膨張、及び組織機能の障害を特徴とする。
【0042】
本明細書で使用されるとき、用語「ST2L介在炎症性状態」とは、ST2Lシグナル伝達経路の不適切な活性化に少なくとも部分的に由来する炎症性状態を指す。ST2L介在炎症性状態の例は、喘息及びアレルギーである。
【0043】
本明細書で使用されるとき、「ST2L介在状態」という用語は、ST2Lが疾患若しくは状態の因果関係、発症、進行、持続又は経路を含む疾患及び病状に直接又は間接によらず影響を及ぼす、全ての疾患及び病状を包含する。
【0044】
用語「ST2L生物学的活性」とは、本明細書で使用されるとき、ST2LのリガンドであるIL−33とST2Lとが結合した結果生ずる任意の活性を指す。典型的なST2L生物学的活性は、IL−33に応じてNF−κBを活性化させる。NF−κBの活性化は、IL−33によってST2Lを誘発した直後にレポーター遺伝子法を用いて評価することができる(Fursovら著、Hybridoma、第30巻、153〜162頁、2011年)。他の典型的なST2L生物学的活性は、Th2細胞の増殖、又はIL−5、GM−CSF、IL−8、IL−10若しくはIL−13などの炎症性サイトカイン及びケモカインの分泌をもたらす。細胞若しくは組織からの又は循環におけるサイトカイン及びケモカインの放出は、ELISAイムノアッセイなどの周知のイムノアッセイによって測定することができる。
【0045】
用語「ベクター」は、生体系内で複製されることができる、又はこうした系の間で移動可能である、ポリヌクレオチドを意味する。ベクターポリヌクレオチドは典型的に、生体系においてこれらのポリヌクレオチドの複製又は維持を促進するように機能する複製起点、ポリアデニル化信号又は選択マーカーのような要素を含有する。このような生体系の例としては、細胞、ウイルス、動物及び植物、並びにベクターを複製することのできる生物学的構成成分を利用して再構成された生体系を挙げることができる。ベクターを構成するポリヌクレオチドは、DNA若しくはRNA分子又はこれらのハイブリッド分子であってもよい。
【0046】
「発現ベクター」という用語は、生体系又は再構成された生体系において、その発現ベクター中に存在するポリヌクレオチド配列によってコードされたポリペプチドの翻訳を指示するために使用することができるベクターを意味する。
【0047】
用語「ポリヌクレオチド」は、糖−リン酸骨格又は他の等価な共有結合様式により共有結合しているヌクレオチド鎖からなる分子を意味する。二本鎖及び一本鎖のDNA及びRNAが、ポリヌクレオチドの典型的な例である。
【0048】
「ポリペプチド」又は「タンパク質」という用語は、ペプチド結合により連結されてポリペプチドを生成する少なくとも2つのアミノ酸残基を含む分子を意味する。50個のアミノ酸未満の小さなポリペプチドは「ペプチド」と呼ばれる場合がある。
【0049】
本明細書では、以下の通りの一般的なアミノ酸1文字表記及び3文字表記を用いる。
【0050】
【表1】
【0051】
物質の組成
本発明は、ST2Lに特異的結合してST2Lの生物学的活性を阻害する抗体、及びかかる抗体の使用を提供する。本発明者らは驚くことに、ヒトST2LのドメインI(配列番号9)に結合する抗体が、IL−33/ST2L相互作用を阻止してIL−33誘発マスト細胞応答を含むST2Lの一連の生物学的活性を阻害するのに対し、ヒトST2LのドメインIII(配列番号11)に結合する抗体は、一連のST2L生物学的活性を阻害するがIL−33/ST2L相互作用を阻止しないことを見出した。しかし、ドメインIIIに結合する抗体は、IL−33誘発マスト細胞応答に対する阻害効果が低いか又は全くないか、或いはIL−33誘発マスト細胞応答を刺激することもあった。
【0052】
本明細書に記載の一部の実施形態では、IL−33/ST2L相互作用を阻止してIL−33誘発マスト細胞応答を含む一連のST2L生物学的活性を阻害する抗体は、ヒトST2LドメインI(rcprqgkpsytvdW、配列番号210)において及び場合により、ST2Lアミノ酸残基T93及びF94(残基のナンバリングは配列番号1に準拠する)においてもエピトープと結合する。
【0053】
用語「マスト細胞応答」又は「マスト細胞活性」とは、IL−33によって誘発される、GM−CSF、IL−8、IL−5、IL−13及びIL−10などのサイトカイン並びにプロスタグランジンD2などのアレルギー性介在物質のマスト細胞からの放出を指す。
【0054】
本発明は、本明細書に記載のヒトST2LのドメインIに結合する新規の抗原結合部位を提供する。抗原結合部位を保有する構造は、典型的には抗体VH又はVLである。
【0055】
本明細書に記載の本発明の抗体は、ヒトST2LのドメインI(配列番号9)に特異的結合する、単離されたヒト若しくはヒト適合性抗体拮抗物質又はそのフラグメントであり得る。ヒトST2LのドメインI(配列番号9)に結合する典型的な抗体は、それぞれ配列番号23、27及び31のHCDR1配列、HCDR2配列及びHCDR3配列並びにそれぞれ配列番号35、39及び43のLCDR1配列、LCDR2配列及びLCDR3配列を含む抗体STLM15(C2244)、又はそれぞれ配列番号24、28及び32のHCDR1配列、HCDR2配列及びHCDR3配列並びに配列番号36、40及び44それぞれのLCDR1配列、LCDR2配列及びLCDR3配列を含む抗体C2494(STLM62)である(表3)。ヒトST2LのドメインIに結合する別の典型的な抗体は、表16及び図13に示す抗体であって、例えば、抗体STLM103、STLM107、STLM108、STLM123、STLM124、STLM208、STLM209、STLM210、STLM211、STLM212及びSTLM213である。ヒト抗体拮抗物質の例を図12及び図13に示す。ヒト適合性拮抗物質の例を表14に示す。
【0056】
本明細書に記載の一部の実施形態では、ヒトST2LのドメインI(配列番号9)に特異的結合する、単離されたヒト若しくはヒト適合性抗体拮抗物質又はそのフラグメントは、IL−33/ST2L相互作用を阻止する。
【0057】
抗体の、IL−33/ST2L相互作用阻止能については、標準的なELISA法で試験することができる。例えば、プレートを、ヒトST2Lの細胞外ドメイン(huST2L−ECD)でコーティングして、抗体と共にインキュベートした後、プレートへのビオチン化されたIL−33の結合を測定する。「IL−33/ST2L相互作用を阻止する」又は「IL−33/ST2L相互作用を阻害する」抗体は、ELISA法においてhuST2L−ECD被覆プレートを用いて、プレートに結合したビオチン化IL−33から生じる信号を、抗体濃度50μg/mlにおいて、抗体を含まない場合のIL−33の結合と比べると少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%軽減する抗体である。
【0058】
抗体のマスト細胞応答阻害については、ヒト臍帯血由来マスト細胞又は初代ヒト肺マスト細胞による、例えばGM−CSF、IL−5、IL−10又はIL−13の放出に対する阻害活性を標準的な方法及び以下に例示する方法を用いて評価することによって試験することができる。「マスト細胞応答を阻害する」又は「マスト細胞の活性を阻害する」本明細書に記載の抗体は、1〜3ng/mlのIL−33で誘発されたGM−CSF、IL−5、IL−13又はIL−10の分泌を、濃度10μg/mlにおいて、抗体で処理されていないマスト細胞と比べると少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%軽減する抗体である。典型的には、マスト細胞は、ヒト臍帯血又は肺柔組織、及び末梢気道CD34+前駆細胞から周知の方法により及び以下に例示するように得てもよい。マスト細胞の培養条件は、抗体の阻害率(%)測定値に影響を及ぼす可能性があり、したがって、試験条件は、例えばStemPro−34培地を用いて6〜10週間の長い分化手順の間、標準に維持され得る。サイトカイン放出アッセイを行う前の4日間、マスト細胞を毎日10ng/mlのIL−4と10ng/mlのIL−6と100ng/mlのSCFとで刺激する。サイトカイン放出アッセイでは、マスト細胞を、新たに調製したStemPro−34培地、又は抗生物質を含まず100ng/mlのSCFを含む10% FCS含有RPMIに再懸濁することも可能である。アッセイに好適なプレーティング密度は、ウェル1個当たり細胞65,000〜75,000個/0.16mlである。本明細書に記載の、マスト細胞応答を阻害する本発明の典型的な抗体は、抗体STLM15、STLM62及びSTLM208である。抗体CNTO3914は、ヒトST2Lとの交差反応性を伴わずにマウスST2LのドメインIに結合して、マウス細胞のマスト細胞応答を阻害する。
【0059】
マスト細胞応答には、IL−1及びIL−32並びにCCL1、CCL4、CCL5、CCL18及びCCL23などのケモカインの放出だけでなく、システイニルロイコトリエン、ヒスタミンなどのアレルギー介在物質の放出、更にはトリプターゼ、キマーゼ、カルボキシペプチターゼ及びカテプシンGを含む様々なマスト細胞プロテアーゼの放出も含むことが当業者には分かるであろう。本明細書に記載の本発明の抗体の、これらの更なるマスト細胞応答阻害能については、標準的な方法を用いて試験することができる。ST2LのドメインIに結合し、しかもIL−33/ST2L相互作用を阻止する、本明細書に記載の本発明の抗体は、前記条件下において最少濃度10μg/mlで試験した場合、その更なるマスト細胞応答を少なくとも40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上阻害すると見込まれる。
【0060】
本明細書に記載の本発明の抗体は、解離定数(KD)約5×10-12M〜約7×10-10M、ヒトST2Lに対する会合速度定数(Kon)約2×106-1-1〜約1×108-1-1、又はヒトST2Lに対する解離速度定数(Koff)約1×10-6-1〜約1×10-2-1でヒトST2Lに結合する。例えば、本明細書に記載の本発明の抗体は、KD約7×10-10M未満、約1×10-10M未満、約5×10-11M未満、約1×10-11M未満又は約5×10-12M未満でヒトST2Lに結合する。
【0061】
本明細書に記載の本発明の抗体は、カニクイザル(cyno)ST2L(配列番号2)と交差反応して、解離定数(KD)約3×10-12M〜約2×10-9M、cyno ST2Lに対する会合速度定数(Kon)約4×106-1-1〜約1×108-1-1、又はcyno ST2Lに対する解離速度定数(Koff)約7×10-5-1〜約1×10-1-1でcyno ST2Lに結合する可能性がある。例えば、本明細書に記載の本発明の抗体は、KD約2×10-9M未満、約1×10-9M未満、約1×10-10M未満、約1×10-11M未満、又は約3×10-12M未満でcyno ST2Lに結合する。
【0062】
抗体のST2Lに対する親和性は、任意の好適な方法を使用して実験により測定することができる。かかる方法は、ProteOn XPR36、Biacore 3000又はKinExA装置、ELISA法又は当業者に既知の競合結合アッセイを利用することができる。特定の抗体/ST2L相互作用に関する親和性測定値は、様々な条件(例えば、容量オスモル濃度、pH)下で測定する場合、異なっていてよい。したがって、親和性及びその他の結合パラメータ(例えば、KD、Kon、Koff)の測定は、好ましくは標準的な条件及び例えば本明細書に記載の緩衝液などの標準化緩衝液を用いて行われる。例えばBiacore 3000又はProteOnを用いた親和性測定での内部エラー(標準偏差(SD)として測定されるもの)は典型的に、典型的な検出範囲内で測定した場合、5〜33%の範囲内であり得ることが当業者には分かるであろう。したがって、用語「約」は、アッセイにおける典型的な標準偏差を表す。例えば、KDが1×10-9Mの場合の典型的なSDは、±0.33×10-9M以下である。
【0063】
所望の親和性でヒトST2Lに結合し、そして場合によりcyno ST2Lと交差反応を有する抗体は、変異体又はフラグメントのライブラリからヒト及び/又はcyno ST2Lを用いてパニングすることによって、そして場合により更なる抗体親和性成熟によって、選抜することができる。抗体は、任意の適当な方法を用い、そのST2Lの生物学的活性の阻害に基づいて確認することができる。かかる方法では、周知の方法を使用し、本願に記載されるように、レポーター遺伝子アッセイ又はサイトカイン産生を測定するアッセイを利用し得る。
【0064】
本発明の一実施形態は、ヒトST2Lに特異的結合する、単離された抗体拮抗物質であって、
配列番号160の重鎖相補性決定領域(HCDR)1(HCDR1)(X123MX4)であって、式中、
1はS、F、D、I、G又はVであり、
2はY又はDであり、
3はA、D又はSであり、そして
4はS、F又はIであるものと、
配列番号161のHCDR2(HCDR2)(X5IX6GX7GGX8TX9YADSVKG)であって、式中、
5はA、S、T、Y又はDであり、
6はS、R、E、K、G又はAであり、
7はS、E又はNであり、
8はS、R、E、G、T、D又はAであり、そして
9はY、D、N、A又はSであるものと、
配列番号162のHCDR3(HCDR3)(X1011WSTEGSFFVLDY)であって、式中、
10はD、A、R、N、Q、P、E、I、H、S、T又はYであり、そして
11はP、A、H、Y、E、Q、L、S、N、T、V又はIであるものと、を含む、ヒトST2Lに特異的結合する、単離された抗体拮抗物質である。
【0065】
本発明の別の実施形態は、ヒトST2Lに特異的結合する、単離された抗体拮抗物質であって、
配列番号163の重鎖相補性決定領域(LCDR)1(LCDR1)(RASQSVDDX12LA)であって、式中、
12はA又はDであるものと、
配列番号90のLCDR2(LCDR2)
(DASNRAT)と、
配列番号164のLCDR3(LCDR3)(QQX131415161718T)であって、式中、
13はF又はYであり、
14はY、I又はNであり、
15はN、G、D又はTであり、
16はW又はAであり、
17はPであるか又は欠失しており、そして
18はL又はIであるものと、を含む、ヒトST2Lに特異的結合する、単離された抗体拮抗物質である。
【0066】
それぞれ配列番号160、161、162、163、90及び164のHCDR1配列、HCDR2配列、HCDR3配列、LCDR1配列、LCDR2配列及びLCDR3配列を含む本発明の抗体は、周知の変異誘発法により、テンプレートとして例えばそれぞれ配列番号78、81、84、87、90及び92のHCDR1配列、HCDR2配列、HCDR3配列、LCDR1配列、LCDR2配列及びLCDR3配列を用いて作製することができる。それぞれ配列番号160、161、162、163、90及び164の重鎖CDR及び軽鎖CDRは、以下に記載するフレームワークなどのヒトフレームワークに移植することができる。抗体は、ST2Lとの結合、及び抗体のIL−33/ST2L相互作用阻害能、並びにヒトST2L及び/又はcyno ST2Lに対する親和性、マスト細胞応答阻害などの他の特性について、本明細書に記載の方法を用いて評価することができる。
【0067】
一実施形態では、本明細書に記載のヒトST2Lに特異的結合する、単離された抗体拮抗物質は、
配列番号78又は95〜108のHCDR1、
配列番号81、109〜118又は120〜129のHCDR2、
配列番号84又は165〜185のHCDR3、
配列番号87又は130のLCDR1、
配列番号90のLCDR2、及び
配列番号92又は131〜134のLCDR3、を含む。
【0068】
別の実施形態では、ヒトST2Lに特異的結合する、単離された抗体拮抗物質は、図10図11及び図12に示されかつ本明細書に記載されているようなHCDR1配列、HCDR2配列、HCDR3配列、LCDR1配列、LCDR2配列及びLCDR3配列を含む。
【0069】
別の実施形態では、本明細書に記載の、ヒトST2Lに特異的結合する、単離された抗体拮抗物質は、
配列番号23又は24のHCDR1、
配列番号27又は28のHCDR2、
配列番号31又は32のHCDR3、
配列番号35又は36のLCDR1、
配列番号39又は40のLCDR2、及び
配列番号43又は44のLCDR3、を含む。
【0070】
別の実施形態では、本明細書に記載の、ヒトST2Lに特異的結合する、単離された抗体拮抗物質は、HCDR1配列、HCDR2配列、HCDR3配列、LCDR1配列、LCDR2配列及びLCDR3配列が、
それぞれ配列番号23、27、31、35、39及び43からなる、
それぞれ配列番号24、28、32、36、40及び44(HFA CDR)からなる、
それぞれ配列番号24、28、146、36、40及び147からなる、又は
それぞれ配列番号24、28、146、36、40及び44からなるものを含む。
【0071】
本発明の別の実施形態は、ヒトIGHV3−23(配列番号158)フレームワーク配列、IGHV1−24*01(配列番号148)フレームワーク配列又はIGHV1−f*01(配列番号149)フレームワーク配列由来のVHフレームワークを含む重鎖可変領域(VH)と、ヒトIGKV3−11(L6)(配列番号159)フレームワーク配列、IGKV3−15*01(L2)(配列番号150)フレームワーク配列、IGKV1−9*01(L8)(配列番号151)フレームワーク配列、IGKV1−5*01(L12)(配列番号152)フレームワーク配列、IGKV1−12*01(L5)(配列番号153)フレームワーク配列、IGKV1−39*01(O12)(配列番号154)フレームワーク配列、IGKV1−27*01(A20)(配列番号155)フレームワーク配列又はIGKV1−33*01(O18)(配列番号156)フレームワーク配列由来のVLフレームワークを含む軽鎖可変領域(VL)と、を含む、本明細書に記載のヒトST2L(配列番号1)に特異的結合する、単離されたヒト若しくはヒト適合性抗体拮抗物質又はそのフラグメントである。
【0072】
別の実施形態では、本明細書に記載のヒトST2LのドメインIに特異的結合する、単離された抗体は、ヒトVH 3−23フレームワーク配列(配列番号158)由来のVHフレームワークを含むVHと、ヒトVκ L6フレームワーク配列(配列番号159)由来のVLフレームワークを含む軽鎖可変領域(VL)と、を含む。ヒトフレームワーク配列は周知であり、そして典型的には連結(J)配列に連結されたヒト免疫グロブリン生殖細胞系列の可変領域配列を包含する。Shiら著、J Mol Biol、第397巻、385〜396頁、2010年、国際特許出願公開第WO2009/085462号及び米国特許出願公開第2010/0021477号に記載されているように、配列番号158で表されるヒトVH3−23フレームワークアミノ酸配列には、IGHJ4に連結されたヒト生殖細胞系列VH3−23配列が包含され、また、配列番号159で表されるヒトVkL6フレームワークアミノ酸配列には、IGKJ1に連結されたヒトVκ L6生殖細胞系列配列が包含される。ヒトVH3−23由来のVH配列とヒトVκ L6由来のVL配列とを有する典型的な抗体は、図12及び図13に示すものである。
【0073】
特定のフレームワーク又は生殖細胞系列配列「に由来する」重鎖可変領域又は軽鎖可変領域を含むヒト又はヒト適合性抗体とは、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子を用いた系から、例えば以下に述べるようなトランスジェニックマウス又はファージディスプレイライブラリから得られる抗体を指す。特定のフレームワーク又は生殖細胞系列配列「に由来する」抗体は、その起源となる配列と比べると、例えば自然発生の体細胞変異又は意図的な置換が原因のアミノ酸の相違を含む可能性がある。
【0074】
別の実施形態では、本明細書に記載のヒトST2LのドメインI(配列番号9)に特異的結合する、単離されたヒト若しくはヒト適合性抗体拮抗物質又はそのフラグメントは、配列番号47の重鎖可変領域(VH)及び配列番号51の軽鎖可変領域(VL)を含む単離された抗体(抗体C2244)と、ヒトST2L(配列番号1)との結合に関して競合する。
【0075】
別の実施形態では、本明細書に記載の本発明の単離された抗体は、ヒトST2Lに、配列番号1のアミノ酸残基35〜48(RCPRQGKPSYTVDW、配列番号210)で結合する。本明細書の抗体は更に、配列番号1のアミノ酸残基T93及びF94においてもヒトST2Lと結合する。
【0076】
本明細書に記載のHCDR1、HCDR2及びHCDR3アミノ酸配列並びにLCDR1、LCDR2及びLCDR3アミノ酸配列を含むか又は特定のVH配列及びVL配列を含む本発明の抗体のヒトST2LとヒトST2Lと特異的結合間の競合は、周知の方法を用いてインビトロで評価することができる。例えば、非標識抗体の存在下での、MSD Sulfoタグ(商標)NHS−エステル標識抗体とヒトST2Lとの結合はELISA法によって評価することができ、さもなければBiacore分析法若しくはフローサイトメトリーを用いて本発明の抗体との競合を実証することも可能である。試験抗体のC2244とヒトST2Lとの結合阻害能は、当該試験抗体が、ヒトST2L結合について抗体と競合し得ることを示す。かかる典型的な抗体は、表3及び図13に示すC2494、STLM208及びSTLM213である。
【0077】
本明細書に記載のST2LのドメインI結合についてC2244と競合する抗体は、IL−33/ST2L相互作用を阻止して、IL−33誘発マスト細胞応答を包含する一連のST2L生物学的活性を阻害する。非中和の(すなわち、非阻害の)エピトープもまた、ST2LドメインIに第二の抗体競合群(ST2LのドメインIに結合するが、C2244と競合せず、しかもST2Lシグナル伝達を阻害しない抗体C2240で代表される)として存在する。
【0078】
特異的なST2Lドメイン又はエピトープに結合する本明細書に記載の本発明の抗体は、ヒト免疫グロブリン座を発現するマウス(Lonbergら著、Nature、第368巻、856〜859頁、1994年、Fishwildら著、Nature Biotechnology、第14巻、845〜851頁、1996年、Mendezら著、Nature Genetics、第15巻、146〜156頁、1997年、米国特許第5,770,429号、同第7,041,870号及び同第5,939,598号)、或いはBalb/cマウスを、エピトープをコードするペプチド、例えばヒトST2LのドメインIのアミノ酸配列KFSKQSWGLENEALIVRCPRQGKPSYTVDWYYSQTNKSIPTQERNRVFASGQLLKFLPAAVADSGIYTCIVRSPTFNRTGYANVTIYKKQSDCNVPDYLMYSTV(配列番号9)を有するペプチド又はアミノ酸配列RCPRQGKPSYTVDW(配列番号210)を有するペプチドによって免疫化し、そしてKohlerら著、Nature、第256巻、495〜497頁、1975年に記載のハイブリドーマ法を用いることによって作製することができる。こうして得られた抗体の、エピトープとの結合については、標準的な方法を用いて試験する。例えば、両方の個別の構成成分の構造が知られている場合、インシリコでタンパク質−タンパク質ドッキングを行って、適合する相互作用部位を特定することができる。抗原抗体複合体において水素−重水素(H/D)交換を行うことによって抗体が結合しうる抗原の領域をマッピングすることができる。抗原のセグメント及び点突然変異誘発を用いることにより、抗体の結合に重要なアミノ酸の位置を特定することができる。特定されたmAbは更に、Queenら著、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)、第86巻、10029〜32頁、1989年及びHodgsonら著、Bio/Technology,9:421、1991で開示されている技術等の技術によって、変化したフレームワーク支持残基を組み込むことによって結合親和性を保存するように修飾することができる。
【0079】
本明細書に記載の本発明の抗体は、ヒト型であっても又はヒト適合性であってもよい。本明細書に記載の本発明の抗体は、IgA型、IgD型、IgE型、IgG型又はIgM型であってもよい。
【0080】
抗原結合部位アミノ酸配列が図10図11図12図13図15、表3、表9及び表12に示されたものと実質上同一である抗体は、本発明の範疇に含まれる。典型的に、これは、類似した電荷又は疎水性若しくは立体化学的性質を有するアミノ酸との、1つ以上のアミノ酸置換を伴い、抗体特性、例えば、安定性又は親和性を改善するようにされる。例えば、保存的置換は、その位置のアミノ酸残基の極性又は電荷にほとんどあるいは全く影響しないように、天然アミノ酸残基の非天然残基との置換を伴ってもよい。更に、アラニン・スキャニング変異導入法についてこれまでに述べられているように(MacLennanら、Acta Physiol.Scand.Suppl.第643巻、55〜67頁、1998年;Sasakiら、Adv.Biophys.第35巻、1〜24頁、1998年)、ポリペプチド内の任意の天然残基をアラニンで置換することもできる。当業者であれば、所望のアミノ酸置換(保存的又は非保存的であるかによらず)を、かかる置換が望まれるときには決定することができる。例えば、アミノ酸置換を使用して、親和性に影響を及ぼす残基、又は凝集等の望ましくない特性を付与する残基のように、抗体の機能に重要な残基を特定することができる。例示のアミノ酸置換を、図12及び図13に示す。
【0081】
抗原結合部位とは対照的に、フレームワーク領域における置換は、それらが抗体の特性に悪影響を及ぼさないのであれば、行なってもよい。フレームワークの置換は、例えばバーニアゾーン残基で行う(米国特許第6,649,055号)ことで抗体の親和性又は安定性を改善することができる。置換はまた、潜在的な免疫原性を低減するために、相同のヒト生殖細胞系列遺伝子配列と比較したときに配列が異なる抗体中のフレームワーク位置でも行うことができる。これらの改変は、例えば、pIXライブラリ等の、de novo抗体ライブラリに由来する抗体に対して行うことができる。
【0082】
保存的アミノ酸置換はまた、生体系における合成によってよりはむしろ、化学的ペプチド合成によって典型的に組み込まれる、非天然起源アミノ酸残基も包含する。アミノ酸置換は、例えばPCRによる変異導入(米国特許第4,683,195号)によって行うことができる。変異体のライブラリは、周知の方法を用いて、例えば、ランダムコドン(NNK)又は非ランダムコドン、例えば11個のアミノ酸(ACDEGKNRSYW)をコードするDVKコドンを用い、そして所望の特性を有するライブラリ又は変異体をスクリーニングすることで作製することができる。
【0083】
実施例に例証される実施形態は、1つは重鎖から及び1つは軽鎖からの、可変領域の対、全長抗体鎖の対、又はCDR1領域、CDR2領域及びCDR3領域の対を含むが、代替的な実施形態が、単一の重鎖可変領域若しくは単一の軽鎖可変領域、単一の全長抗体鎖、又は重鎖若しくは軽鎖のいずれかの1つの抗体鎖からのCDR1領域、CDR2領域及びCDR3領域を含んでもよいことが当業者には分かるであろう。単一の可変領域、全長抗体鎖、又は1つの鎖のCDR1領域、CDR2領域及びCDR3領域を使用して、別の鎖中の対応するドメインをスクリーニングすることができ、これらの2つの鎖は、ST2Lに特異的結合する抗体を形成することができる。スクリーニングは、例えば、PCT公開第WO1992/01047号で開示されている階層的二重組み合わせアプローチを使用する、ファージディスプレイスクリーニング法によって達成することができる。このアプローチでは、H鎖又はL鎖のいずれかのクローンを含む個別のコロニーを用いて、他方の鎖(L又はH)をコードするクローンの完全なライブラリに感染させ、得られた2鎖特異的抗原結合ドメインを上記に述べたようなファージディスプレイ法に基づいて選択する。
【0084】
本発明は、本明細書に記載の本発明の抗体の単離されたVH及びVLドメイン、そして特定のVH及びVLドメインを含む抗体を提供する。本明細書に記載の本発明の特定の抗体におけるVH及びVL可変領域を図13及び表12に示す。
【0085】
本発明の一実施形態は、配列番号191のVHと少なくとも90%同一のVHを含むヒトST2LのドメインI(配列番号9)に特異的結合する、単離されたヒト若しくはヒト適合性抗体拮抗物質又はそのフラグメントである。
【0086】
本発明の別の実施形態は、配列番号209のVLと少なくとも94%同一のVLを含むヒトST2LのドメインI(配列番号9)に特異的結合する、単離されたヒト若しくはヒト適合性抗体拮抗物質又はそのフラグメントである。
【0087】
本明細書に記載の一部の実施形態では、本発明は、配列番号143、144、145、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204又は205のVHを含む抗体を提供する。
【0088】
本明細書に記載の一部の実施形態では、本発明は、配列番号135、136、137、138、139、140、141、142、206、207、208又は209のVLを含む抗体を提供する。
【0089】
本明細書に記載の一部の実施形態では、本発明は、抗体であって、
配列番号186、187、197、198、199、200、201、202、203、204若しくは205のVH及び配列番号206のVL、
配列番号195若しくは196のVH及び配列番号207のVL、
配列番号188、189若しくは190のVH及び配列番号208のVL、又は
配列番号187、191、192、193若しくは194のVH及び配列番号209のVL、を含む、抗体を提供する。
【0090】
本発明の別の実施形態は、ヒトST2LのドメインI(配列番号9)に特異的結合する、単離されたヒト若しくはヒト適合性抗体拮抗物質又はそのフラグメントであって、
配列番号97のHCDR1、
配列番号114のHCDR2、
配列番号84のHCDR3、
配列番号130のLCDR1、
配列番号90のLCDR2、
配列番号134のLCDR3、又は
配列番号191のVH及び配列番号209のVL、を含む、抗体拮抗物質又はそのフラグメント。
【0091】
ヒト以外の配列を全く含まないヒトmAbは、例えば、Knappikら著、J Mol Biolm、第296巻、57〜86頁、2000年、及びKrebsら著、J Immunol Meth、第254巻、67〜84頁、2001年に参照された技法により、ファージディスプレイライブラリから調製及び最適化することができる。典型的な方法では、本発明の抗体は、抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を、バクテリオファージpIXコートタンパク質との融合タンパク質として発現させるライブラリから単離される。抗体ライブラリをヒトST2L−ECDの結合についてスクリーニングして、得られた陽性クローンの特性評価を更に行い、Fabはクローンライセートから単離して、全長IgGとして発現する。典型的な抗体ライブラリ及びスクリーニング方法については、Shiら著、J Mol Biol、第397巻、385〜96頁、2010年、国際特許出願公開第WO2009/085462号、及び米国特許出願番号12/546850号、並びに米国特許第5,223,409号、同第5,969,108号及び同第5,885,793号)に記載されている。
【0092】
結果として得られたmAbは、それらのフレームワーク領域において、特定のフレームワーク残基をマッチングするヒト生殖細胞系列に存在する残基へと変更するように更に改変することができる。
【0093】
本発明の抗体の免疫エフェクター特性は、当業者には周知の技術により、Fc改変によって強化又はサイレンシングすることも可能である。例えば、C1q結合、補体依存性細胞傷害(CDC)、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、貧食、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体(BCR))のダウンレギュレーション等のFcエフェクター機能は、これら活性に関与するFcの残基を改変することによって提供及び/又は制御することができる。また、薬物動態特性は、抗体の半減期を延長するFcドメインの残基を変異させることによって強化することができる(Strohl Curr Opin Biotechnol、第20巻、685〜91頁、2009年)。典型的なFc改変は、IgG4 S228P/L234A/L235A、IgG2 M252Y/S254T/T256E(Dall’Acquaら著、J Biol Chem、第281巻、23514〜23524頁、2006年、又はIgG2 V234A/G237A/P238S、V234A/G237A/H268Q、H268A/V309L/A330S/P331又はIgG2上のV234A/G237A/P238S/H268A/V309L/A330S/P331S(国際特許出願公開第WO2011/066501号)である(EUのナンバリングに準拠したナンバリング)。
【0094】
更に、本明細書に記載の本発明の抗体は、グリコシル化、異性化、又は脱グリコシル化等の反応によって、或いはポリエチレングリコール部分の付加(ペグ化)及び脂質化等の自然界では生じない共有結合修飾等の反応によって翻訳後修飾してもよい。このような修飾は、インビボ又はインビトロで行われてもよい。例えば、本明細書に記載の本発明の抗体は、ポリエチレングリコールと結合(ペグ化)させることによって薬物動態的なプロファイルを改善することができる。結合は、当業者に既知の方法によって行うことができる。治療用抗体とPEGとの結合は、機能に干渉することなく薬力学を強化することが示されている(Knightら著、Platelets、第15巻、409〜18頁、2004年、Leongら著、Cytokine、第16巻、106〜19頁、2001年、Yangら著、Protein Eng、第16巻、761〜70頁、2003年)。
【0095】
安定性、選択性、交差反応性、親和性、免疫原性、又は他の望ましい生物学的特性若しくは生物物理学的特性を改善するように改変される、本明細書に記載の本発明の抗体又はそのフラグメントは、本発明の範囲に属する。抗体の安定性は、分子内力及び分子間力の中でも特に(1)固有の安定性に影響を及ぼす個々のドメインのコアパッキング、(2)HCとLCとのペアリングに影響するタンパク質/タンパク質の界面相互作用、(3)極性及び荷電残基の埋め込み、(4)極性及び荷電残基の水素(H)結合ネットワーク、及び(5)表面電荷及び極性残基の分布、などの多くの因子によって影響される(Wornら著、J Mol Biol、第305巻、989〜1010頁、2001年)。構造を不安定化させる可能性のある残基は、抗体の結晶構造に基づいて、あるいは場合によっては分子モデリングによって特定することが可能であり、また、抗体の安定性に対するこれらの残基の影響は、特定された残基に変異を含む変異体を生成及び評価することにより試験することができる。抗体の安定性を高める方法の1つは、示差走査熱量測定法(DSC)で測定する場合、熱転移中点温度(Tm)を高くすることである。一般に、タンパク質のTmは、その安定性と相関性を示すが、溶液中でのそのアンフォールディングし易さ及び変性し易さ、並びにそのタンパク質のアンフォールディングし易さに応じた分解プロセスとは負の相関性を示す(Remmeleら、Biopharm.,13:36〜46,2000)。幾つかの研究からは、DSCにより熱安定性として測定される製剤の物理的安定性の順位と他の方法によって測定される物理的安定性との間に相関性が見つかった(Guptaら著、AAPS PharmSci.5E8、2003年、Zhangら著、J.Pharm.Sci.、第93巻、3076〜3089頁、2004年、Maaら著、Int.J.Pharm.、第140巻、155〜168頁、1996年、Bedu−Addoら著、Pharm.Res.、第21巻、1353〜1361頁、2004年、Remmeleら著、Pharm Res.、第15巻、200〜208頁、1997年)。製剤研究は、FabのTmが対応するmAbの長期の物理的安定性と密接な関係があることを示唆している。フレームワーク又はCDR内のアミノ酸の差異は、Fabドメインの熱安定性に有意な影響を及ぼし得る(Yasuiら著、FEBS Lett.、第353巻、143〜146頁、1994年)。
【0096】
本明細書に記載の、ヒトST2LのドメインIに特異的結合する本発明の抗体は、本発明の範疇にも含まれる二重特異性抗体へと改変することができる。本発明の抗体のVL領域及び/又はVH領域は、公表された方法を用いてTandAb(登録商標)様式(国際公開第WO1999/57150号、米国特許出願公開第2011/0206672号)などの構造体として一本鎖二重特異性抗体へと改変してもよく、又は米国特許第5869620号、国際特許出願公開第WO1995/15388A号、同第WO1997/14719号又は同第WO2011/036460号に記載されているような構造体として二重特異性scFVへと変更してもよい。
【0097】
本明細書に記載の本発明の抗体のVL領域及び/又はVH領域は、二重特異性全長抗体へと改変することも可能であり、当該抗体の結合手はそれぞれ特徴的な抗原又はエピトープに結合する。かかる二重特異性抗体は典型的に、米国特許第7695936号、国際特許出願公開第WO04/111233号、米国特許出願公開第2010/0015133号、同第2007/0287170号、国際特許出願公開第WO2008/119353号、米国特許出願公開第2009/0182127号、米国特許出願公開第2010/0286374号、同第2011/0123532号、国際特許出願公開第WO2011/131746号、同第WO2011/143545号、又は米国特許出願公開第2012/0149876号に記載されているような技法を用いて、二重特異性抗体を形成するように2つの抗体の重鎖間のCH3相互作用を調節することにより作製される。本発明の抗体のVL領域及び/又はVH領域を組み込むことができる更なる二重特異性構造体は、例えば、二重可変ドメイン免疫グロブリン(国際特許出願公開第WO2009/134776号)、又は異なる特異性を有する2つの抗体の結合手をつなげるように様々な二量体化ドメイン、例えばロイシン・ジッパードメイン又はコラーゲン二量化ドメイン(国際特許出願公開第WO2012/022811号、米国特許第5932448号、同第6833441号)を包含する構造体である。
【0098】
本発明の別の態様は、本発明の抗体重鎖可変領域若しくは抗体軽鎖可変領域又はそれらのフラグメント或いはそれらの相補体のいずれかをコードする単離されたポリヌクレオチドである。ある種のポリヌクレオチドの例が本明細書に開示されるが、所定の発現系における遺伝コードの縮重又はコドンの選択性を考慮すると、本発明の抗体拮抗物質をコードする他のポリヌクレオチドも本発明の範囲内に含まれる。本発明の典型的なポリヌクレオチドは、配列番号211、212、213及び214で示されるものである。
【0099】
本発明の別の実施形態は、本発明のポリヌクレオチドを含むベクターである。こうしたベクターは、プラスミドベクター、ウイルスベクター、バキュロウイルス発現ベクター、トランスポゾンに基づいたベクター、又は任意の手段によって特定の生物又は遺伝子的バックグラウンドに本発明のポリヌクレオチドを導入するのに適した他の任意のベクターであってよい。
【0100】
本発明の別の実施形態は、本発明のベクターを含む宿主細胞である。このような宿主細胞は、真核細胞、細菌細胞、植物細胞又は古細菌細胞であってもよい。真核細胞の例としては、哺乳動物、昆虫、鳥類又は他の動物由来のものが挙げられる。哺乳動物の真核細胞としては、ハイブリドーマ細胞株又は骨髄腫細胞株などの不死化細胞株、例えばSP2/0(ATCC(American Type Culture Collection)、Manassa、VA、CRL−1581)、NS0(ECACC(European Collection of Cell Cultures)、Salisbury、Wiltshire、UK、ECACC番号85110503)、FO(ATCC CRL−1646)及びAg653(ATCC CRL−1580)マウス細胞株が挙げられる。ヒト骨髄腫細胞株の一例は、U266(ATTC CRL−TIB−196)である。他の有用な細胞株としては、CHO−K1SV(Lonza Biologics、Walkersville、MD)、CHO−K1(ATCCCRL−61)、又はDG44などの、チャイニーズハムスターの卵巣(CHO)細胞に由来するものが挙げられる。
【0101】
本発明の別の実施形態は、本発明の宿主細胞を培養する工程と、宿主細胞によって産生された抗体を回収する工程と、を含む、ST2LのドメインIに特異的結合する抗体の製造方法である。抗体を製造して精製する方法は、当該技術分野で周知である。
【0102】
本発明の別の実施形態である、ST2LのドメインIに特異的結合する抗体を、対象に、IL−33及びST2Lの相互作用を阻害するうえで十分な量で投与する工程を含む、対象におけるST2LとIL−33との相互作用を阻害する方法。
【0103】
治療方法
本明細書に記載の本発明のST2L拮抗物質、例えば、IL−33/ST2L相互作用を阻止しかつST2LのドメインIに結合するST2L抗体拮抗物質、ヒトST2L(配列番号1)への結合を、配列番号47の重鎖可変領域と配列番号51の軽鎖可変領域とを含む単離された抗体と競合する抗体、又はヒトST2Lに配列番号1のアミノ酸残基35〜48(RCPRQGKPSYTVDW、配列番号210)で結合する抗体は、免疫系を調節するのに用いてもよい。本明細書に記載の本発明の抗体は、本発明の抗体がIL−33誘発マスト細胞応答をより効率良く軽減できるので、ST2Lの他のドメイン及び/又は領域に結合する抗体と比べるとST2L生物学的活性を拮抗する際により有効であり得る。本発明のどの抗体も、本発明の方法に使用可能である。本発明の方法に使用可能な典型的な抗体は、抗体STLM62、STLM15、STLM103、STLM107、STLM108、STLM123、STLM124、STLM206、STLM207、STLM208、STLM209、STLM210、STLM211、STLM212、STLM213である。理論に束縛されるものではないが、ドメインIに結合しかつIL−33/ST2L相互作用を阻止する抗体拮抗物質は、IL−1RAcP/IL−33/ST2L/cKit複合体の形成又はマスト細胞上での下流のシグナル伝達を阻害する可能性があるのに対し、ドメインIIIに結合する抗体は、IL−1RAcPのST2L/IL−33複合体への動員を阻害できるが、マスト細胞上に特異的に見られる更に大きなIL−1RAcP/IL−33/ST2L/cKit複合体の形成を妨害できない可能性があると考えられる。実施されたマイクロアレイ解析によれば、抗ST2LドメインI結合抗体はIL−33によるマスト細胞シグナル伝達経路の大部分を抑制するが、抗ST2LドメインIII結合抗体はシグナル伝達経路のほんの一部のみを阻害できたことから、この示唆を裏付けている。IL−33は付属タンパク質IL−1RAcPとの会合前にST2Lと結合するので、ドメインI結合抗体によりIL−33とST2Lとの結合を阻止することで、cKit又は未だ確認されていない補助受容体を包含する他の付属タンパク質の会合を防ぐことは実現可能である。ドメインIII結合抗体は、ST2Lに結合するIL−33と干渉せず、IL−1RAcP会合を理論上阻止し得るが、未だ確認されていない補助受容体などの他の補助受容体の会合を阻止しないことが可能である。IL−1RAcPがIL−1/IL−1R又はST2L/IL−33複合体とどのように相互作用するかについて複数のモデルが提案されている(Lingelら著、Structure、第17巻、1398〜1410頁、2009年、また、Thomasら著、Nat Struct & Molec Biol、第19巻、455〜457頁、2012年に概説されている)。これらのモデルは、IL−1RAcPが複合体の片面に結合することを示しているが、その面は確証的に示されていない。したがって、複合体の「他の面」又は「自由面」は代替の補助受容体との会合に利用でき、ドメインIII抗体で阻止されず、しかも別の補助受容体の動員が増加し、結果としてシグナル伝達が向上するというようなオフターゲット効果が生じる可能性がある。
【0104】
本発明の方法では、ヒトST2LのドメインIに特異的結合する抗体拮抗物質、IL−33/ST2L相互作用を阻止しかつヒトST2LのドメインIに結合する抗体拮抗物質、ヒトST2L(配列番号1)の結合に関して配列番号47の重鎖可変領域及び配列番号51の軽鎖可変領域とを含む単離された抗体と競合する抗体、又は配列番号1のアミノ酸残基35〜48(RCPRQGKPSYTVDW、配列番号210)においてヒトST2Lに結合する抗体を使用することができる。かかる抗体の更なる特徴としては、抗体のIL−33/ST2L相互作用阻止能及びヒトマスト細胞応答阻害能が挙げられる。
【0105】
したがって、本発明の抗体は、一連のST2L介在状態、ST2L介在炎症性状態及びマスト細胞応答を阻害することが望まれる状態を治療するのに適している。
【0106】
本発明の方法を用いて任意の分類に属する動物患者を治療することができる。かかる動物の例としては、ヒト、齧歯類、イヌ、ネコ、及び家畜等の哺乳動物が挙げられる。例えば、本発明の抗体は、ST2L介在状態、例えば喘息、気道過敏症、サルコイドーシス、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、特発性肺線維症(IPF)、肺嚢胞性線維症、炎症性大腸炎(IBD)、関節リウマチ、好酸球性食道炎、強皮症、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、水泡性類天疱瘡、慢性じん麻疹、糖尿病性腎症、間質性膀胱炎又は移植片対宿主病(GVHD)を包含する炎症性疾患の予防及び治療に有用である。本発明の抗体は、少なくとも部分的にマスト細胞によってもたらされる免疫疾患、例えば喘息、湿疹、掻痒、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、並びに関節リウマチ、水泡性類天疱瘡及び多発性硬化症などの自己免疫疾患の予防及び治療に有用である。
【0107】
本発明の抗体はまた、かかる治療のための薬剤の調製においても有用であり、薬剤は、本明細書に定められる投薬量で投与するために調製される。
【0108】
マスト細胞は、その様々な介在物質の放出によってアレルギー性炎症及び喘息において中心的な役割を果たす(Amin著、Respir Med、第106巻、9〜14頁、2012年に概説されている)。ST2Lはマスト細胞上に高発現し、そしてその活性化は、多くの炎症性サイトカイン及び他の介在物質の発現につながる。ST2L活性の阻害は、マスト細胞介在炎症細胞動員を妨げて慢性炎症を調整すると考えられている。
【0109】
マスト細胞は、アレルゲン、冷気、病原体などの刺激に対して迅速に反応するものであり、これら刺激による上皮組織の損傷はIL−33の放出をもたらす可能性がある(Zhao及びHu著、Cell & Molec Immunol、第7巻、260〜2頁、2012年に概説されている)。マスト細胞は、ロイコトリエン、ヒスタミン、プロスタグランジン及びサイトカインを放出することで血管透過性及び気管支収縮を向上させて、その部位に好中球、好酸球及びTリンパ球などの他の免疫細胞を動員する(Hendersonら著、JEM、第184巻、1483〜94頁、1996年、Whiteら著、JACI、第86巻、599〜605頁、1990年)。さらに、マスト細胞は、内皮細胞上で接着分子の上方調節を誘発することによって免疫反応を増強させて、免疫細胞の移動を向上させる(Mengら著、J Cell Physiol、第165巻、40〜53頁、1995年)。マスト細胞は気道のリモデリングにおいて重要な役割を果たす。すなわち、喘息患者の場合、マスト細胞数の増加は気道平滑筋(ASM)細胞層内で認められ、介在物質を分泌することでASMの増殖を促進する(Okayamaら著、Curr Opin Immunol、第19巻、687〜93頁、2007年に概説されている)。
【0110】
炎症状態の別の一例は炎症性肺疾患である。炎症性肺疾患の例としては、ウイルス、細菌、真菌、寄生虫又はプリオンによる感染にともなうものなどの感染により誘発される肺疾患、アレルゲンにより誘発される肺疾患、石綿症、珪肺症、又はベリリウム肺症などの汚染物質により誘発される肺疾患、胃吸引により誘発される肺疾患、多発性内分泌障害腸症候群、肺嚢胞性線維症などの遺伝的素因をともなう炎症性状態、及び人工呼吸器による傷害などの物理的外傷により誘発される肺疾患が挙げられる。これらの炎症性状態には更に、喘息、肺気腫、気管支炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、サルコイドーシス、ヒスチオサイトーシス、リンパ管筋腫症、急性肺傷害、急性呼吸窮迫症候群、慢性肺疾患、気管支肺異形成症、市中肺炎、院内肺炎、人工呼吸器関連肺炎、敗血症、ウイルス性肺炎、インフルエンザ感染、パラインフルエンザ感染、ロタウイルス感染、ヒト・メタニューモウイルス感染、RSウイルス感染、及びアスペルギルス感染又は他の真菌感染も含まれる。感染にともなう炎症性疾患の例としては、重症肺炎、肺嚢胞性線維症、気管支炎、気道の増悪、及び急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を含むウイルス又は細菌性肺炎が挙げられる。こうした感染にともなう状態は、一次ウイルス感染及び二次細菌感染のように複数の感染をともなう場合がある。ST2Lシグナル伝達の調節不全は、喘息及び慢性閉塞性肺疾患(COPD)等の肺疾患の病理に関与する可能性がある(Alcornら著、Annu.Rev.Physiol.、第72巻、495〜516頁、2010年に概説されている)。喘息及び気道の炎症に対する一般的に用いられる動物モデルとしては、オボアルブミン負荷モデル、メタコリン感作モデル及びアスペルギルス・フミガーツスによる感作が挙げられる(Hesselら著、Eur.J.Pharmacol.、第293巻、401〜412頁、1995年)。培養したヒト気管支上皮細胞、気管支線維芽細胞又は気道平滑筋細胞からのサイトカイン及びケモカインの産生の阻害をインビトロモデルとして用いることもできる。本発明の拮抗物質をこれらのモデルのいずれかに投与することを用いて、喘息、気道の炎症、COPDなどの症状を改善して経過に変化を与えるためのこれらの拮抗物質の使用を評価することができる。
【0111】
喘息は、気道過敏症(「AHR」)、気管支収縮作用、喘鳴、好酸球性炎症又は好中球性炎症、粘液分泌過多、上皮下線維症、及び高いIgE値を特徴とする肺の炎症性疾患である。喘息の患者は、最も一般的には気道の微生物感染(例えばライノウイルス、インフルエンザウイルス、インフルエンザ菌など)により症状の悪化である「増悪」を経験する。喘息の発作は、環境因子(例えば、回虫、昆虫、動物(例えばネコ、イヌ、ウサギ、マウス、ラット、ハムスター、モルモット及び鳥)、真菌、空気汚染物質(例えば煙草の煙)、刺激性ガス、煙霧、蒸気、エアゾール、化学物質、花粉、運動、又は冷気によって誘発される可能性がある。喘息とは別に、肺を侵すいくつかの慢性炎症性疾患は、例えば、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、細菌性肺炎及び肺嚢胞性線維症などの、気道への好中球浸潤を特徴とするものであり(Lindenら著、Eur.Respir.J.、第15巻、973〜977頁、2000年、Rahmanら著、Clin.Immunol.、第115巻、268〜276頁、2005年)、また、COPD、アレルギー性鼻炎及び肺嚢胞性線維症などの疾患は、気道過敏症を特徴とする(Fahy及びO’Byrne著、Am.J.Respir.Crit.Care Med.、第163巻、822〜823頁、2001年)。喘息及び気道の炎症に対する一般的に用いられる動物モデルとしては、オボアルブミン感作後及びオボアルブミン負荷後のメタコリン負荷モデル(Hesselら著、Eur.J.Pharmacol.、第293巻、401〜412頁、1995年)が挙げられる。培養したヒト気管支上皮細胞、気管支線維芽細胞又は気道平滑筋細胞からのサイトカイン及びケモカインの産生の阻害をインビトロモデルとして用いることもできる。本発明の抗体拮抗物質をこれらのモデルのいずれかに投与することを用いて、喘息、気道の炎症、COPDなどの症状を改善して経過に変化を与えるための当該拮抗物質の使用を評価することができる。
【0112】
TH2細胞、好塩基球、マスト細胞及び新たに報告された自然リンパ球2型細胞上でのST2L受容体からのIL−33シグナル伝達により、IL−5及びIL−13(2型サイトカイン)の分泌が生じる(ILCはSpitsら著、Nature Reviews Immunology、第13巻、145〜149、2013年に概説されている)。IL−5又はIL−13を喘息において標的とする治療薬の効能は、その経路の関連性を裏付けている。IL−5は好酸球を活性化するが、喀痰中の好酸球の増加を伴う重症喘息患者のサブグループを、IL−5を中和モノクローナル抗体によって治療すると、悪化が減ずる(Nairら著、N Engl J Med.、2009年、第360巻(第10号)、985〜993頁)。IL−13は、IgE合成、粘液の分泌、及び線維症に寄与すると報告されている。抗IL−13モノクローナル抗体による重症喘息患者の治療は肺機能を改善し、かなりの改善を示したサブグループもあった(Correnら著、N.Engl.J.Med.、第365巻、1088〜1098頁、2011年)。各免疫学的経路の他の介在物質も、喘息の発症に関与しており、ST2Lの他に、これら介在物質を阻止することで、更なる治療的有効性が示される可能性もある。多数の2型サイトカイン、又は2型サイトカイン産生の上流の経路を標的とする治療法が重症疾患に有効な可能性もある。
【0113】
本発明のST2L抗体のVHドメイン及びVLドメインは、二重特異性抗体及び本明細書に記載の分子に組み込んでもよく、この場合、二重特異性抗体がST2LのドメインIおよびTSLP(胸腺間質リンパ球造成)、IL−25、IL−17RB又はTSLPRなどの第二の抗原に特異的結合する。
【0114】
IL−25及びTSLP、例えばIL−33は、個々のシグナル伝達複合体によって2型サイトカインの放出を誘発する。すなわち、IL−25(IL−17E)は、IL−17ファミリーの一員であって、IL−17RA/IL−17RBを介してシグナル伝達を行い、また、TSLPは、IL−7ファミリーの一員であって、TSLPR/IL−7Rαヘテロ二量体を介してシグナル伝達を行う(Koyasuら著、Immunol、第132巻、475〜481頁、2011年に概説されている)。IL−33、ST2L、IL−25、IL−17RB、TSLP又はTSLPRが欠損している動物は、多種多様な喘息マウスモデルのうち少なくとも一種ではそれほど重度の気道の炎症を示さないが、これら動物モデルの大部分では気道の炎症への保護不足が認められる場合もあり、様々なアレルゲン又は病原体に上皮が晒され、それに付随してIL−33、IL−25及びTSLPの放出が誘発される可能性がある。Hammadらは、ハウスダストであるダニを投与すると、気道にIL−25、TSLP及びIL−33(並びにIL−33の下流ではIL−5及びIL−13)の放出が生じることを報告している(Hammadら著mNat Med、第15巻、210〜216頁、2009年)。このことは、ST2L及びTSLP並びに/又はIL−25の阻止が、とりわけ重度の気道疾患に有益な効果をもたらす可能性があることを示唆している。
【0115】
本発明の別の実施形態では、ST2LのドメインIに特異的結合する抗体拮抗物質は、ST2LとTSLP、ST2LとIL−25、ST2LとTSLPR、ST2LとIL−17RA、又はST2LとIL−17RBに結合する二重特異性分子を産生するのに用いることができる。
【0116】
本発明の他の実施形態では、ST2LのドメインIに特異的結合する抗体拮抗物質は、更にSLP、IL−25、TSLPR、IL−17RA又はIL−17RBに結合する二重特異性抗体である。
【0117】
TSLP、IL−25、TSLPR、IL−17RA及びIL−17RB結合抗体は、本明細書に記載の方法を用いて、例えばヒト免疫グロブリン座位を発現するマウス(Lonbergら著、Nature、第368巻、856〜859頁、1994年、Fishwildら著、Nature Biotechnology第14巻、845〜851頁、1996年、Mendezら著、Nature Genetics、第15巻、146〜156頁、1997年、並びに米国特許第5,770,429号、同第7,041,870号及び同第5,939,598号)又はBalb/cマウスを対応するタンパク質若しくはタンパク質の細胞外ドメインによって免疫化することで、或いは本明細書に記載のファージディスプレイライブラリを用いて作製することができる。あるいは、TSLP、IL−25、TSLPR、IL−17RA、及びIL−17RBに対する抗体を用いて二重特異性分子を産生することも可能である。使用可能な典型的なIL−25抗体は、例えば国際特許出願公開第WO2011/123507号に記載されているものである。
【0118】
変形性関節症、関節リウマチ、傷害の結果として関節炎にかかった関節等を含む関節炎が、一般的な炎症性状態であり、それらは本発明の拮抗物質等の抗炎症性タンパク質の治療的使用から利益を受けるであろう。ST2Lシグナル伝達の活性化によって、炎症を起こした関節の炎症及び更なる組織傷害が持続しうる。関節リウマチのための複数の動物モデルが既知である。例えばコラーゲン誘発関節炎(CIA)モデルでは、ヒト関節リウマチとよく似た慢性炎症性関節炎をマウスに発症させる。このモデルのST2L欠損(ST2KO)マウスは、弱い疾患に罹ったが、このモデルの病態は、マスト細胞によるST2L発現に依存していた(Xuら著、PNAS、第105巻、10913〜10918頁、2008年)。このモデルでは、単核細胞及び多形核細胞の浸潤が軽減され、また、ST2KOマウスの関節における滑膜の過形成が軽減された。コラーゲン(CII)で培養したST2KOマウスの所属LNは、IL−17、IFNγ、及びTNFαの産生がかなり低下することが分かった。骨髄油体マスト細胞(BMMC)が養子移入されたST2L欠損マウスは、CIAを誘発する前に、ST2KOのBMMCを生着したマウスよりも重度のCIAを発症した。そのため、マスト細胞によるST2Lシグナル伝達は、ヒト関節リウマチに似たマウスモデルでは関節炎の発症に重要な役割を果たした。CIAモデルマウスへの本発明のST2L抗体の投与は、マスト細胞応答を阻害するものであって、症状を改善して病気の経過を変化させるための拮抗物質の使用を評価するのに使用することができる。
【0119】
典型的な消化管炎症性状態は、炎症性大腸炎(IBD)、潰瘍性大腸炎(UC)、及びクローン病(CD)、外界からの刺激によって誘発される大腸炎(例えば、化学療法、放射線療法等の投与等の治療レジメンによって引き起こされるかあるいはこれにともなう(例えば、副作用として)消化管炎症(例えば、大腸炎)、感染性大腸炎、虚血性大腸炎、コラーゲン大腸炎又はリンパ球性大腸炎、壊死性腸炎、そして慢性肉芽腫症若しくはセリアック病などの状態の大腸炎、食品アレルギー、胃炎、感染性胃炎若しくは感染性腸炎(例えばヘリコバクター・ピロリの感染による慢性活動性胃炎)、並びに感染性病原体によって引き起こされる消化管炎症の他の形態である。消化管炎症性状態のための複数の動物モデルが存在する。最も広く用いられているモデルは、結腸に慢性炎症及び潰瘍を誘発する2,4,6−トリニトロベンゼンスルホン酸/エタノール(TNBS)誘発大腸炎モデル又はオキサゾロンモデルである(Neurathら著、Intern.Rev.Immunol、第19巻、51〜62頁、2000年)。別のモデルでは、血性下痢、体重減少、結腸の短縮、及び好中球浸潤をともなう粘膜の潰瘍形成が現われる急性大腸炎を誘発する、硫酸デキストランナトリウム(DSS)を使用する。別のモデルは、ナイーブなCD45RBhigh CD4 T細胞をRAG又はSCIDマウスに養子移入する。このモデルでは、ドナーのナイーブT細胞がレシピエントの腸を攻撃することにより、ヒトの炎症性大腸炎に似た慢性腸炎及びその症状を引き起こす(Read及びPowrie著、Curr.Protoc.Immunol.Chapter、第15巻、ユニット15.13、2001年)。これらのモデルのいずれかにおいて本発明の拮抗物質の投与を用いることによって、炎症性大腸炎等の腸内の炎症に伴う症状を改善して疾患の経過を変化させるこれらの拮抗物質の潜在的な有効性を評価することができる。
【0120】
腎線維症は、移植片の虚血/再灌流などの急性傷害(Freeseら著、Nephrol Dial Transplant、第16巻、2401〜2406頁、2001年)又は糖尿病などの慢性状態(Ritzら著、Nephrol Dial Transplant、第11巻、追補9、38〜44頁、1996年)によって発生する可能性がある。これらの発症は典型的に、初期炎症反応に続いて、糸球体ろ過装置及び尿細管間質の持続性線維成長を特徴とする(Liu著、Kidney Int、第69巻、213〜217頁、2006年)。尿細管間質線維症は、末期の腎不全に至る腎損傷の発症において重要な役割を果たしていることが示されており、近位尿細管細胞が中心的媒介物であることが明らかにされている(Phillips及びSteadman著、Histol.Histopathol.、第17巻、247〜252頁、2002年、Phillips著、Chang Gung、Med.J.、第30巻、2〜6頁、2007年)。尿細管間質区画における線維化は、部分的に、常在線維芽細胞の活性化により媒介され、この常在線維芽細胞は、炎症促進性のサイトカインを分泌し、これが近位尿細管上皮を刺激して、局所炎症性及び線維形成性媒介物質を分泌する。更に、走化性サイトカインが線維芽細胞及び上皮細胞によって分泌され、単球/マクロファージ及びT細胞を尿細管間質へと浸潤させるよう導く方向の勾配をもたらす。炎症性湿潤により、更なる線維形成性及び炎症性のサイトカインが産生され、それらは更に線維芽細胞及び上皮サイトカインの放出を活性化し、同時に上皮も刺激して表現型移行を起こし、これにより細胞が過剰の細胞外マトリックス成分を蓄積させる(Simonson著、Kidney Int.、第71巻、846〜854頁、2007年)。
【0121】
維症状態の他の例としては、肝線維症(アルコール性肝硬変、ウイルス性肝硬変、自己免疫性肝炎を含むがこれらに限定されない):肺線維症(強皮症、特発性肺線維症を含むがこれらに限定されない);腎臓線維症(強皮症、糖尿病性腎症、糸球体腎炎、ループス腎炎を含むがこれらに限定されない);真皮線維症(強皮症、肥厚性及びケロイド瘢痕、火傷を含むが、これらに限定されない);骨髄線維症;神経線維腫症;線維腫;腸線維症;及び外科手術による線維性癒着などが挙げられる。線維症は、臓器特異的な線維症又は全身性線維症であり得る。臓器特異的な線維症は、肺線維症、肝線維症、腎臓線維症、心臓線維症、血管線維症、皮膚線維症、眼線維症、又は骨髄線維症に関連し得る。肺線維症は、特発性肺線維症、薬剤誘起性肺線維症、喘息、サルコイドーシス、又は慢性閉塞性肺疾患に関連し得る。肝線維症は、肝硬変、住血吸虫症、又は胆管炎に関連し得る。肝硬変は、アルコール性肝硬変、C型肝炎後肝硬変、原発性胆汁性肝硬変の中から選択され得る。胆管炎は硬化性胆管炎であり得る。腎臓線維症は、糖尿病性腎症又はループス糸球体硬化症に関連し得る。心臓線維症は、心筋梗塞に関連し得る。血管線維症は、血管形成術後の動脈再狭窄、又はアテローム性動脈硬化に関連し得る。皮膚線維症は、火傷瘢痕、肥厚性瘢痕、ケロイド、又は腎性線維化性皮膚症に関連し得る。眼線維症は、後眼窩線維症、白内障手術後の硝子体網膜症又は増殖性硝子体網膜症に関連し得る。骨髄線維症は、特発性骨髄線維症又は薬剤誘発性骨髄線維症に関連し得る。全身性線維症は、全身性硬化症及び移植片対宿主病から選択され得る。
【0122】
本発明の方法によって予防又は治療し得る他の炎症性状態及び神経障害は、自己免疫疾患によって引き起こされるものである。これらの状態及び神経障害としては、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、並びにアルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、双極性傷害、及び筋萎縮性側索硬化症(ALS)を含む神経変性及び中枢神経系(CNS)疾患;原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、非アルコール性脂肪性肝疾患/脂肪性肝炎、線維症、C型肝炎ウイルス(HCV)及びB型肝炎ウイルス(HBV)等の肝疾患;糖尿病及びインスリン抵抗性;アテローム性動脈硬化症、脳出血、脳卒中、及び心筋梗塞等の心血管疾患;関節炎、関節リウマチ、乾癬性関節炎及び若年性関節リウマチ(JRA)、骨粗鬆症、変形性関節症、膵炎、線維症、脳炎、乾癬、巨細胞動脈炎、強直性脊椎炎、自己免疫性肝炎、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、炎症性皮膚状態、移植、癌、アレルギー、内分泌疾患、創傷治癒、他の自己免疫性疾患、気道過敏症、並びに細胞、ウイルス又はプリオンによって介在される感染症又は疾患が挙げられる。
【0123】
本発明の一実施形態は、単離されたヒト若しくはヒト適合性抗体拮抗物質の治療上の有効量を、それを必要とする患者に、ST2L介在状態を治療又は予防するうえで十分な時間にわたって投与する工程を含む、ST2L介在状態の治療又は予防方法であって、単離されたヒト若しくはヒト適合性抗体拮抗物質が、ヒトST2LのドメインI(配列番号9)に特異的結合し、IL−33/ST2L相互作用を阻止し、ヒトST2L(配列番号1)との結合に関して配列番号47の重鎖可変領域(VH)及び配列番号51の軽鎖可変領域(VL)を含む単離された抗体と競合し、並びに/又は配列番号1のアミノ酸残基35〜48(RCPRQGKPSYTVDW、すなわち配列番号210)においてヒトST2Lに結合するものである、方法である。
【0124】
本発明の他の実施形態は、単離されたヒト若しくはヒト適合性抗体拮抗物質の治療上の有効量を、その必要のある患者に、マスト細胞応答を阻害するうえで十分な時間にわたって投与する工程を含む、患者のマスト細胞応答を阻害する方法であって、単離されたヒト若しくはヒト適合性抗体拮抗物質が、ヒトST2LのドメインI(配列番号9)に特異的結合し、IL−33/ST2L相互作用を阻止し、ヒトST2L(配列番号1)との結合に関して配列番号47の重鎖可変領域(VH)及び配列番号51の軽鎖可変領域(VL)を含む単離された抗体と競合し、並びに/又は配列番号1のアミノ酸残基35〜48(RCPRQGKPSYTVDW、すなわち配列番号210)においてヒトST2Lに結合するものである、方法である。
【0125】
本発明の別の実施形態は、単離されたヒト若しくはヒト適合性抗体拮抗物質を、対象に、IL−33とST2Lとの相互作用を阻害するうえで十分な量で投与する工程を含む、対象のIL−33とST2Lとの相互作用を阻害する方法であって、単離されたヒト若しくはヒト適合性抗体拮抗物質が、ヒトST2LのドメインI(配列番号9)に特異的結合し、IL−33/ST2L相互作用を阻止し、ヒトST2L(配列番号1)との結合に関して配列番号47の重鎖可変領域(VH)及び配列番号51の軽鎖可変領域(VL)を含む単離された抗体と競合し、並びに/又は配列番号1のアミノ酸残基35〜48(RCPRQGKPSYTVDW、すなわち配列番号210)においてヒトST2Lに結合するものである、方法である。
【0126】
別の実施形態では、ST2L介在状態は、喘息、気道過敏症、サルコイドーシス、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、特発性肺線維症(IPF)、肺嚢胞性線維症、炎症性大腸炎(IBD)、好酸球性食道炎、強皮症、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、水泡性類天疱瘡、慢性じん麻疹、糖尿病性腎症、関節リウマチ、間質性膀胱炎又は移植片対宿主病(GVHD)である。
【0127】
別の実施形態では、ST2L介在状態は、肺における炎症性細胞動員、杯細胞の肥厚化、又は粘液分泌の増加を伴う。
【0128】
別の実施形態では、ST2L介在状態はマスト細胞応答を伴う。
【0129】
別の実施形態では、マスト細胞応答の阻害は、ヒト臍帯血由来マスト細胞により放出されるGM−CSF、IL−5、IL−8、IL−10又はIL−13の量を50μg/mlの抗体で少なくとも50%阻害することを含む。
【0130】
別の実施形態では、それを必要とする患者に投与される抗体拮抗物質は、ヒトST2LのドメインI(配列番号9)に特異的結合し、IL−33/ST2L相互作用を阻止し、ヒトST2L(配列番号1)との結合に関して配列番号47の重鎖可変領域(VH)及び配列番号51の軽鎖可変領域(VL)を含む単離された抗体と競合し、並びに/又は配列番号1のアミノ酸残基35〜48(RCPRQGKPSYTVDW、すなわち配列番号210)においてヒトST2Lに結合し、そして更に、TSLP、IL−25、TSLPR、IL−17RA又はIL−17RBにも結合する、二重特異性抗体である。
【0131】
投与/医薬組成物
ST2L生物学的活性を調整することが望ましい状態の治療において有効な抗ST2L抗体の「治療上の有効量」は、標準的な研究技術によって決定することができる。例えば、喘息又は関節リウマチ等の炎症性状態の治療において有効となる抗ST2L抗体の用量は、本明細書に記載のモデル等の、関連する動物モデルに抗ST2L抗体を投与することによって決定することができる。
【0132】
加えて、インビトロアッセイを、至適用量の範囲を同定する一助として所望により選択することもできる。特定の有効用量の選択は、当業者であれば幾つかの要因の考慮に基づいて(例えば、臨床試験によって)決定することができる。こうした要因には、治療又は予防しようとする疾患、疾患症状、患者の体重、患者の免疫状態、及び当業者には既知の他の要因が含まれる。製剤に用いられる正確な用量は、投与経路、及び疾患の重篤度にも依存し、医師の判断及び各患者の状況に基づいて決定されなければならない。有効用量は、インビトロ又は動物モデル試験系から導出される用量反応曲線から外挿することができる。
【0133】
本発明の抗体の治療上の使用のための投与方法は、薬剤を宿主に送達する任意の好適な経路であってよい。これらの抗体の医薬組成物は、例えば、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、又は鼻腔内等の非経口投与に特に有用である。
【0134】
本発明の抗体は、有効量の薬剤を製薬上許容される担体中の有効成分として含有する医薬組成物として調製することができる。「担体」という用語は、活性化合物と共に投与する希釈剤、補助剤、賦形剤又は溶媒のことを指す。こうした薬剤用ビヒクルは、落花生油、大豆油、鉱物油、ゴマ油等の、石油、動物油、植物油又は合成油由来のものを含む、水及び油などの液体であり得る。例えば、0.4%生理食塩水及び0.3%グリシンを用いることができる。これらの溶液は滅菌液であり、一般的に、粒子状物質を含まない。これらは、従来周知の滅菌技術(例えば、濾過)によって滅菌することができる。この組成物は、生理学的条件に近づけるために必要とされる製薬上許容される補助物質、例えばpH調整剤及び緩衝剤、安定化剤、増粘剤、潤滑剤及び着色剤等を含むことができる。かかる医薬製剤中の本発明の抗体の濃度は幅広く変化してよく、すなわち約0.5重量%未満、通常は約1重量%又は少なくとも約1重量%か、最大で15又は20重量%までであってよく、また、選択される特定の投与方法にしたがって、主として必要とされる用量、液体の体積、粘度等に基づいて選択される。
【0135】
したがって、筋肉内注射用の本発明の医薬組成物は、1mLの滅菌済み緩衝水、及び約1ng〜約100mg、例えば約50ng〜約30mg、又はより好ましくは約5mg〜約25mgの本発明の抗ST2L抗体を含むように調製することができる。同様に、静脈内注射用の本発明の医薬組成物は、250mLの滅菌リンゲル溶液、及び約1mg〜約30mg、好ましくは5mg〜約25mgの本発明の拮抗物質を含むように調製することができる。非経口投与可能な組成物を調製する実際の方法は周知であり、例えば「Remington’s Pharmaceutical Science」、第15版、Mack Publishing Company(Easton、PA)に、より詳細に記載されている。
【0136】
本発明の抗体は、保存のために凍結乾燥させ、使用前に好適な担体に溶解させることができる。この手法は、これまでに、従来の免疫グロブリン及びタンパク製剤に有効であることが分かっており、当該技術分野において既知の凍結乾燥法及び再構成法を用いることができる。
【0137】
ここで、以下の具体的な非限定例を参照して、本発明を説明する。
【0138】
材料及び方法(概要)
ヒト及びカニクイザル(Macaca fascicularis、cyno)受容体−リガンド結合阻害アッセイ(RLBアッセイ)
96ウェルプレートを重炭酸塩緩衝液中、4μg/mlのヒトST2L−ECD(配列番号1のアミノ酸19〜328)又はC末端His6標識の付いた2μg/mlのcyno ST2L−ECD(配列番号2のアミノ酸19〜321)50μlを用いて4℃で16時間コーティングした。その後の工程はいずれも室温で行った。プレートを200μlブロッキング用緩衝液でブロッキングして、PBS+0.05% Tweenを含む洗浄用緩衝液300μlで3回洗浄した。抗ST2L mAbの様々な希釈剤30μlをウェルに加えて1時間インキュベートした。ヒト受容体−リガンド結合アッセイでは、ビオチン化ヒトIL−33(配列番号3の残基112〜270)20μlを最終濃度100ng/mlで加えて、30分間インキュベートした。cyno受容体−リガンド結合アッセイでは、ビオチン化cyno IL−33(配列番号4の残基112〜269)を最終濃度200ng/mlで加えて、30分間インキュベートした。プレートを洗浄用緩衝液300μlで3回洗浄した。0.2μg/mlストレプトアビジン−HRP(Jackson Immunoresearch)50μlを加えて、30分間インキュベートした。プレートを、PBS+0.05% Tweenを含む洗浄用緩衝液300μlで3回洗浄した。各ウェルにTMB基質(EMD Biosciences)50μlを加えた。2N硫酸100μlを加えることによって反応を止めた。Envisionプレートリーダー(Perkin Elmer)を用いてOD450を測定した。
【0139】
キメラST2L構築物の作製
ヒト及びマウスST2LドメインI、II及びIII交換を特徴とする様々な構築物は、標準的な分子生物学的手法を用いて設計及び作製された。構築物を表1に挙げる。アミノ酸ナンバリングは、ヒトST2L(hST2L)(配列番号1、NP_057316)タンパク質及びマウスST2L(mST2L)(配列番号5、NP_001020773)タンパク質に対応する。
【0140】
【表2】
【0141】
ドメイン結合定量アッセイ。
ST2LドメインI、II及びIIIに結合する抗体は、電気化学発光検出形式を利用した標準的な捕集ELISA法(Meso−Scale Discovery(MSD)法)を用いて求めた。各抗体10μg/mLでMSD HighBindプレートの各ウェルを室温において2時間コーティングした(ウェル1個当たり5μL)。プレートは、5% MSDブロック用緩衝液150μLを用いて室温において2時間ブロッキングして、HEPES洗浄用緩衝液で3回洗浄した後、スルホタグで標識化したhuST2L−ECD若しくはマウスST2L−ECD(配列番号5のアミノ酸28〜326)又はHHM−ST2L(配列番号6)又はHMH−ST2L(配列番号8)キメラ又はHH−ST2L(配列番号1の残基19〜205)25μLを5nM〜40nMまでの段階的な濃度でプレートに加えた。プレートにアルミ箔で蓋をして、穏やかに振盪させながら室温で1時間インキュベートした。次に、プレートをHEPES洗浄用緩衝液で3回洗浄した。各ウェルにMSDリードバッファー(150μl)を加えた後、MSD Sector Imager 6000を用いてプレートの読み取りを行った。
【0142】
ヒトST2L−ECDのドメインIは、ヒトST2L−ECD、HHM−ST2L及びHMH−ST2Lには結合するがマウスST2L−ECDには結合しない抗体であると認めれる。ヒトST2L−ECDのドメインIIIは、ヒトST2L−ECD及びHHM−ST2Lには結合するがマウスST2L−ECDには結合しない抗体であると認められる。ヒト及びマウスST2L−ECDのドメインIIIは、ヒトST2L−ECDには結合するがHH−ST2Lには結合しない抗体であると認められる。
【0143】
抗ST2L mAbの親和性測定。
【0144】
抗ST2L mAb、huST2L−ECD及びcynoST2L−ECDは標準的な方法を用いて発現させた。ヤギ抗ヒトIgG Fcγフラグメント特異的Ab(カタログ番号109−005−098)はJackson ImmunoResearch laboratories(West Grove、PA)から入手した。GLCセンサーチップ(Bio−Radカタログ番号176−5011)、CM−5センサーチップ(GE Healthcareカタログ番号BR100014)及び捕捉表面調製用試薬は、Biacore(GE healthcare、Piscataway、NJ)又はBio−Rad Life Sciences(Bio−Rad、Hercules、CA)から入手した。
【0145】
抗ST2L抗体とHis6標識化ヒトST2L−ECD及びHis6標識化cyno ST2L−ECDとの相互作用については、ProteOnによりProteOn XPR36を用いて25℃で調べた。バイオセンサー表面は、アミンカップリング化学反応についての製造業者の説明書を用いてヤギ抗ヒトIgG Fcγフラグメント特異的抗体(Ab)をGLCセンサーチップの表面にカップリングさせることにより調製した。カップリング用緩衝液は、10mM酢酸ナトリウム(pH 4.5)であった。ヤギ抗ヒトIgG Fcγ(約4500反応単位)を水平方向に固定した。抗ST2L抗体を精製してから又は未精製の上清として供給した。いずれにしても、これら抗体をPRB(PBS(pH 7.4)に、3mMのEDTA及び0.005% Tween−20を補充したもの)で約0.5μg/mLの濃度まで希釈した。抗体を、抗ヒトFcγ抗体変性GLCチップ上に垂直方向に捕捉した(60〜130RU)。抗ST2L mAbを捕捉した後、huST2L ECDを溶解状態で(0.024〜15nM、5倍希釈)又はcynoST2L ECDを溶解状態で(0.020〜5nM、4倍希釈)水平方向に注入した。すべての実験において会合を4分間モニタリングした(200μLを50μL/分で注入)。解離を30分間モニタリングした。センサー表面の再生は、10mMグリシン(pH 1.5)の15秒パルスを3回用いて行った。ProteOnソフトウェアを用い、物質移動を含む1:1結合モデルを用いてデータをフィッティングした。
【0146】
Biacore実験は、Biacore 2000又はBiacore 3000光バイオセンサー(Biacore AB)を用いて実施した。実験はいずれも、0.1%BSAを含む又は含まないBRB(PBS(pH 7.4)に、3mM EDTA及び0.005% Tween 20を補充したもの)中で25℃において行った。
【0147】
Biacoreバイオセンサーの表面は、アミンカップリング化学反応についての製造業者の説明書を用いてヤギ抗ヒトlgG Fcγフラグメント特異的Abを、CM−5チップのカルボキシメチル化デキストラン表面にカップリングさせることにより調製した。カップリング用緩衝液は、10mM酢酸ナトリウム(pH 4.5)であった。平均6000反応単位(RU)のAbを4つのフローセルそれぞれに固定した。抗ST2L mAbは、抗ヒトFcγ抗体変性センサーチップ表面で捕捉した(約33 RU)。抗ST2L mAbを捕捉した後、huST2L ECDを溶解状態で(0.2〜15nM、3倍希釈)又はcynoST2L ECDを溶解状態で(0.2〜15nM又は0.020〜5nM、3倍希釈)注入した。会合を4分〜8分間モニタリングした(C2521及びC2519の場合、200μLを50μL/分又は20μl/分で注入した)。解離を10分間又は最長2.5時間モニタリングした。センサー表面の再生は、50mMのNaOHを注入する及び/又は100mMのH3PO4を注入することによって行った。
【0148】
Scrubberソフトウェア、バージョン1.1g(BioLogic Software)を用いてデータを処理した。データは、バッファー注入によって作成した曲線を検体注入に関する参照を差し引いた曲線から差し引き、ノイズ信号及び装置からのノイズへのバッファーの寄与を補正することで、二重の参照の差分除去を行った。(Myszka著、Journal of Mol Recogn、第12巻、279〜284頁、1999年)。
【0149】
データ処理後、反応速度及び親和性の測定で得たデータは、Scrubberソフトウェア又はBIAevaluationソフトウェア、バージョン4.0.1(Biacore、AB)を用いて解析した。物質移動項を含む単純な1:1結合モデルを用いて反応速度データを解析した。
【0150】
抗マウスST2L mAb(C1999/CNTO3914)のマウスST2L ECDに対する親和性の測定。
【0151】
抗マウスST2L mAb(C1999/CNTO3914)及びマウスST2L細胞外ドメイン(muST2L−ECD)は標準的な方法を用いて発現させて精製した。抗マウスIgG Fcγフラグメント特異的Abは、Jackson ImmunoResearch laboratories(West Grove、PA)から入手した。捕捉表面を調製するためのセンサーチップ及び試薬はBiacore(GE healthcare、Piscataway、NJ)から入手した。実験用Biacore泳動用バッファー(BRB)は0.005% Tween−20及び0.1mg/mLのBSAを有するPBS(pH 7.4)を含んでおり、データは25℃で収集した。
【0152】
抗ST2L抗体とmuST2L−ECDとの相互作用については、Biacore2000において25℃で調べた。バイオセンサー表面は、アミンカップリング化学反応についての製造業者の説明書を用いて抗マウスFc特異的抗体をCM4センサーチップの表面にカップリングさせることにより調製した。C1999/CNTO3914及びmuST2L−ECDをBRBで希釈した。C1999は、抗マウスFcγ抗体(約85RU)を用いて捕捉した。捕捉後、溶液中muST2L ECD(配列番号5の残基28〜326)を溶解状態で注入した(15nMで開始した、濃度は3倍希釈で5種類)。会合を8分間モニタリングした。解離を最大6000秒にわたってモニタリングした。再生は、1/100希釈リン酸を用いて行った。1:1結合モデルを用いてデータをフィッティングした。
【0153】
ヒト好塩基球細胞株アッセイ(好塩基球サイトカイン放出アッセイ)
KU812細胞(ヒト好塩基球細胞株、ATCC、CRL−2099)を滅菌済み96ウェル丸底組織培養プレートに入れた、10% FBS及びペニシリン/ストレプトマイシンを補充したRPMI 1640成長培地(Invitrogen)合計40μl中に、ウェル1個当たり細胞25,000〜50,000個プレーティングした。抗ヒトST2L mAb及び対照群を様々な濃度で加えて(ウェル1個当たり50μl)、37℃でインキュベートした。1時間インキュベートした後、組み換え型「成熟」IL−33(配列番号3のアミノ酸111〜270)をRPMI成長培地10μl中、最終濃度10ng/mlで加えた。その後、細胞を37℃で18〜24時間インキュベートすることで、IL−33が媒介するIL−5及びIL−6の誘導を行わせた。インキュベート後、ELIZA法(R&D systems)又はビーズを用いた多重分析法(Millipore)のいずれかを用いた後続のIL−33誘発IL−5及びIL−6の検出のために、細胞を採取して、細胞上清を回収した。
【0154】
ヒトマスト細胞サイトカイン放出アッセイ及びPGD2放出アッセイ
マスト細胞はCD34+ヒト臍帯血細胞(Lonza)由来のものであった。冷凍用バイアル瓶に入れた>1.0×106のCD34+臍帯血細胞を素早く解凍して50mlコニカルチューブに移した。この細胞に、温めた又は室温のStem−Pro34培地+補充物(合計25ml、Invitrogen)をゆっくり滴下した。細胞を1,000rpmで15分間遠心分離にかけ、培地(StemPro−34 10mlに次の補充物を加えたもの:30ng/mlのIL−3、100ng/mlのIL−6及び100ng/mlのSCF)に再懸濁した。細胞を6ウェルプレートのうち2ウェルにプレーティングして、1週間培養した。4日目に、細胞は、補充物を含むStem Pro−34培地で1:3倍で継代した。7日目に、非接着性細胞を取り出して、0.5×106/mlで10ng/mlのIL−6及び100ng/mlのSCFを含むStemPro−34培地にプレーティングした。細胞を毎週継代して、マスト細胞が6〜10週で成熟するまで(FceR1、cKit及びトリプターゼの発現により判定)細胞密度を0.5×106/mlで保持した。
【0155】
成熟マスト細胞をStemPro−34中、0.5×106個/mlで培養して、IL−4(10ng/ml、Peprotech)、IL−6(10ng/ml、R&D Systems)及びSCF(100ng/ml、Invitrogen)中で4日間毎日刺激した。アッセイを行う前に細胞を採取して、1,000RPMで10分間遠心分離にかけて、新たに調製したStemPro−34培地、又は抗生物質を含まず100ng/mlのヒト組み換え型SCFを含む10% FCS含有RPMIに再懸濁した。細胞を、96ウェル平底組織培養プレートにウェル1個当たり細胞数65,000〜75,000個/0.16mlの密度でプレーティングした。プレートに抗ST2L mAbを50、10、2、0.4、0.08、0.016、0.0032μg/mlの最終濃度で30分間加えてからIL−33を加えた。組み換え型ヒト「成熟」IL−33(配列番号3の残基111〜270)もまた、100ng/mlのSCFを含む培地中において10倍(10又は30ng/ml)で調製した。最終濃度を1ng/ml(図6及び7A〜7E)又は3ng/ml(図8A〜8E)とするためにウェルに10倍のIL−33を20μl加えて、プレートを37℃、5% CO2において一晩インキュベートした。刺激後18〜24時間で培養上清を採取した。プレートを1,000RPMで10分間遠心分離にかけた。上清を取り出して、丸底96ウェルプレートに入れて−20℃で保存した後、評価した。Millipore製ヒトサイトカインキットを使用し、Luminex(商標)法を用いてサイトカイン濃度を分析した。PGD2濃度は、Cayman Chemical Company製プロスタグランジンD2−MOX EIAキットを用い、製造者の取扱説明書に従って求めた。ELISA法の感度を高めるために、マスト細胞培養上清中のPGD2を、メトキシルサミン塩酸塩(MOX−HCl)によって非分解性MOX−PGD2(メトキシルサミン−PGD2)へ転換した。
【0156】
マウス受容体−リガンド結合阻害アッセイ(マウスRLBアッセイ)
96ウェル透明プレート(VWR)に2μg/mlヤギ抗ヒトIgG、Fcγフラグメント特異的(Jackson Immunoresearch)抗体50μlを、4℃において約16時間コーティングした。残りの工程は室温で行った。ウェルをブロッキング用緩衝液と共にインキュベートし、洗浄して、ヒトFcに融合した2μg/mlマウスST2L−ECD 50μlを1時間かけて添加した。プレートを洗浄して、抗mST2L抗体を含む又は含まない1μg/mlのビオチン化mIL−33を添加した。プレートを洗浄して、ストレプトアビジンHRP(Jackson Immune Research)を用いて検出を行い、TMB基質(RDI Division of Fitzgerald Industries)を用い、製造者の取扱説明書に従って信号を現像した。
【0157】
マウス及びヒトレポーター遺伝子法(ヒト又はマウスRGAアッセイ)
HEK293細胞を、白色透明底組織培養処理用96ウェルプレート(NUNC)にDMEM、10%FBS中、ウェル1個当たり細胞50,000個でプレーティングし、加湿したインキュベータにおいて、37℃、5% CO2で24時間インキュベートした。細胞は、ヒト又はマウスST2L−ECDのcDNAのいずれかをコードするベクター、NF−κB−ルシフェラーセベクター(Stratagene、Agilent Technologies、Santa Clara、CA)と共にOpti−MEM培地(Invitrogen)においてLipofectamine(商標)2000を用いて標準プロトコルを利用して同時形質移入した。37℃、5% CO2において24時間インキュベートした後、形質移入したエル(ell)を、抗ST2L抗体を含む又は含まないマウス(R&D Systems、配列番号5の残基109〜266)又はヒトIL−33(配列番号3の残基112〜270)で37℃、5% CO2において16時間処理した。ルシフェラーゼ活性は、Steady−Glo(登録商標)試薬(Promega)を用いて製造者の取扱説明書に従って測定した。
【0158】
マウスT細胞増殖アッセイ
マウスTh2細胞(D10.G4.1、ATCC)は、細胞増殖完全培地、すなわち1.5g/L重炭酸ナトリウム、4.5g/Lグルコース、10mMのHEPES及び1.0mMピルビン酸ナトリウムを含有するように調整しかつ0.05mMの2−メルカプトエタノール、0.05mMのIL−1α(R&D Systems)、10%ウシ胎仔血清、ConAを有する10%ラットT−STIM因子(Becton Dickinson製ラットIL−2培養補充物)を補充した、2mMのL−グルタミンを含むRPMI 1640培地において培養した。この細胞を、アッセイ培地(RPMI、10%FBS、IL−1含まず、T−STIM含まず)で2回洗浄し、1ml中細胞1.25×105個で再懸濁して、白色透明底の組織培養処理用96ウェルプレート(NUNC、Rochester、NY)に入れた培地80μl中にプレーティングした。様々な量のマウスIL−33(配列番号5の残基109〜266)を最終アッセイ体積100μlとなるように細胞に加えた。抗体中和を試験する場合、抗体対照群(使用済みハイブリドーマ培地に添加されたもの)又はハイブリドーマ上清を細胞に添加して、1時間インキュベートした後、20pg/mlのmIL−33を添加した。プレートを加湿したインキュベータ内で37℃、5% CO2において24時間培養した。CellTiter−Glo(登録商標)試薬(Promega、Madison、WI)を用い生細胞の定量を行った。プロトコルは製造者の取扱説明書に従って行った。
【0159】
マウス骨髄由来マスト細胞アッセイ
マウス骨髄は、Balb/cマウス(6週)の骨髄由来のものであった。細胞をRPMI培地(エンドトキシン非含有)、10% FBS、10% WEHI細胞株培養上清、10ng/mlのIL−3(Peprotech)、0.1mM必須アミノ酸、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen)にウェル1個当たり細胞300,000個でプレーティングした。抗ST2L mAb(100、10、1、0.1又は0.01μg/ml)を細胞と共に1時間インキュベートしてから、「成熟」IL−33(配列番号215の残基109〜266(10ng/ml、R&D Systems)を添加した。約24時間後、上清を採取して、Luminex(商標)製Millipore Mouse 22−plexキットを用いて製造者の取扱説明書に従って分析するまで凍結させた。
【0160】
Cyno内皮細胞アッセイ
EGM(登録商標)−2内皮細胞増殖培地−2(Lonza)中で培養したカニクイザル大動脈内皮細胞を、96ウェル組織培養プレートに、ウェル1個当たり細胞10,000個又は20,000個でプレーティングした。この細胞に抗ST2L抗体50μlを100μg/mlで開始してその後、4倍又は5倍希釈して添加した後、37℃で1時間インキュベートしてから、組み換え型cyno「成熟」IL−33(配列番号4)を添加した。続いてこの細胞に20ng/mlカニクイザルIL−33 50マイクロリットルを添加して、37℃で24時間インキュベートした。IL−33誘発サイトカイン反応を評価するために、上清を採取して、Luminex(商標)(Millipore)製非ヒトPrimate IL−8キットによって製造者の取扱説明書に従ってサイトカイン濃度を評価した。
【0161】
マウス腹膜潅流アッセイ
6匹のBalb/cマウスの腹膜をPBS合計3mlで洗浄することで、腹膜細胞を回収した。この細胞の大部分は、B220及びF4/80の発現(FACS分析法)で決定すると、リンパ細胞及びマクロファージであることが分かった。約1%はcKit+(CD117+)マスト細胞であった。細胞を遠心分離にかけて、沈殿物を細胞1×106個/mlで、Alpha MEM培地(Invitrogen)に10% FBS、ペニシリン100U/ml及びストレプトマイシン100μg/mlを加えたものに再懸濁した。細胞を、96ウェルプレートウェルに、ウェル1個当たり200μlでプレーティングして、37℃で2時間休ませた。この細胞に抗ST2L mabを30分添加した後、10ng/mlのマウス「成熟」IL−33(R&D Systems、配列番号215の残基109〜266)を添加した。IL−33を添加して24時間後に上清を回収して、分析するまで−20℃で保存し、Luminex(商標)用Millipore Mouse 22−plexキットを用いて製造者の取扱説明書に従って分析した。
【実施例】
【0162】
実施例1.ラット抗マウスST2L抗体の作製
マウスST2−Fc(R&D Systems(配列番号5のSer27〜Ser342)を腹腔内に用いてラットを免疫化して、特異的IgG力価を評価した。十分な力価が得られた直後に、膵細胞を単離してFO細胞と融合した。得られたハイブリドーマを96ウェルプレート又はメチルセルロースにプレーティングして10日間培養した。抗原特異的クローンを、mST2−Fcとの結合について標準的な捕捉ELISA法で確認し、そしてFcタンパク質単独と比較してクロススクリーニングした。マウスST2特異的ハイブリドーマは、IL−33のST2との結合阻害についてELISAで更に試験し、また、IL−33誘発D10.G4.1マウスTh2細胞増殖阻害についても試験した。受容体−リガンド結合アッセイと細胞系増殖アッセイの両者における中和を示すハイブリドーマを、限界希釈法によってクローン的に選択した。ハイブリドーマのV領域の配列を決定して、マウスIgG1バックグラウンドにクローン化した。ST2L−ECDドメイン特異性については、様々なヒト−マウスドメイン交換構築物を用いて、電気化学発光検出による標準的な免疫吸着法で対応した。
【0163】
ハイブリドーマC1999が分泌した抗体は、マウスIgG1バックグラウンドにクローン化されて、CNTO3914と命名された。CNTO3914可変領域及びCDRの配列を表2に示す。CNTO3914は、ヒトST2Lと交差反応せず、また、マウスST2L−ECDのドメインIに結合する。
【0164】
【表3】
【0165】
実施例2.マウス抗ヒトST2L抗体の作製
マウス抗ヒトST2 mAbを作製するために2つの異なる免疫化を行った。
【0166】
BALB/cを可溶性ST2−Fc(R&D Systems、配列番号157)で腹腔内で免疫化して特異的IgG力価を評価した。十分な力価を得た後、膵細胞を単離してFO細胞と融合した。得られたハイブリドーマを96ウェルプレートにプレーティングして10日間培養した。抗原特異性クローンの、C末端His6標識化huST2L−ECD及びHis6標識化cyno ST2L−ECDへの結合について標準的な捕捉ELISA法で確認した。cyno ST2Lと交差反応するヒトST2L特異的ハイブリドーマは更に、IL−33のhuST2Lへの結合阻害についてELISA法で、そしてNF−κB活性化についてレポーター遺伝子法で試験した。更なる調査のために、レポーター遺伝子法で又はELISA法とレポーター遺伝子法の両方で阻害を示すクローンを選択した。
【0167】
更なる分析のために、ハイブリドーマC2494、C2519A及びC2521Aから得た抗体を選択した。C2519A及びC2521AはヒトST2LとドメインIIIで結合するが、C2494はヒトST2LとドメインIで結合する。抗体C2494をヒトIgG2バックグラウンドへクローン化して、その全長抗体をSTLM62と命名した。
【0168】
抗ヒトST2L mAbは、全長ST2L構築物を用い、しかもヒトST2L−ECDを発現するように形質移入された細胞でブーストして、Genovac Gmbhにおいて社有のDNA免疫法で作製された。ハイブリドーマのヒトST2L−ECDへの結合については、フローサイトメトリーによってスクリーニングした。このアッセイで結合を示したクローンは、hST2L−ECDと結合することが確認され、そして更に、標準的な捕捉ELISA法によりcyno ST2L−ECDとの結合についても特性評価を行った。選ばれたクローンは、受容体−リガンド結合阻害ELISA法及びレポーター遺伝子法で特性評価を行った。更なる調査のために、レポーター遺伝子法又はELISA法とレポーター遺伝子法の両方で阻害を示すクローンを選択した。
【0169】
更なる分析のために、GenovacハイブリドーマC2244から得た抗体を選択して、ヒトIgG2バックグラウンドへクローン化した。全長抗体をSTLM15と命名した。STLM15はヒトST2LとドメインIで結合する。
【0170】
マウス抗ヒト抗体のVH配列及びVL配列並びにCDRドメイン配列を表3に示す。
【0171】
【表4】
【0172】
実施例3.完全ヒトST2L抗体の作製
ヒトST2Lに結合するFabを、Shiら著、J Mol Biol、第397巻、385〜396頁、2010年、国際特許出願公開第WO2009/085462h号、米国特許出願公開第2010/0021477号の記載と同様にして、デノボpIXファージディスプレイライブラリから選択した。簡潔に言えば、ライブラリは、ヒトスキャフォールドを多様化することによって作製されたものであり、生殖細胞系列VH遺伝子であるIGHV1−69*01、IGHV3−23*01及びIGHV5−51*01をH3ループを介してヒトIGHJ−4ミニ遺伝子で組み替え、そしてヒト生殖細胞系列VLκ遺伝子であるO12(IGKV1−39*01)、L6(IGKV3−11*01)、A27(IGKV3−20*01)及びB3(IGKV4−1*01)をIGKJ−1ミニ遺伝子で組み替えることで、完全なVH及びVLドメインが構築された。多様化に際し、重鎖及び軽鎖可変領域内の、タンパク質抗原及びペプチド抗原と高頻度に接していると確認された位置に相当するH1、H2、L1、L2及びL3ループ周辺の位置を選択した。選択した位置での配列多様性は、それぞれのIGHV又はIGLV遺伝子に含まれるIGHV又はIGLV生殖細胞系列遺伝子ファミリーそれぞれの位置で見られる残基に制限した。長さがアミノ酸7〜14個分の単鎖〜中鎖型の合成ループを用いることで、H3ループにおいて多様性が発生した。H3でのアミノ酸分布は、ヒト抗体において観察されるアミノ酸の変動を模倣するよう設計された。ライブラリ設計の詳細は、Shiら著、J.Mol.Biol.、第397巻、385〜396頁、2010年に記載されている。ライブラリを作製するために利用したスキャフォールドは、これらのヒトVH及びVL生殖細胞系列遺伝子起源に準じて命名した。スクリーニングにあたって、3つの重鎖ライブラリを、4個の生殖細胞系列軽鎖又は生殖細胞系列軽鎖ライブラリと組み合わせることで24個の固有VH:VLの組み合わせを作製した。huST2L−ECD−Fcに対するファージパニンク実験では、24個のVH:VLライブラリの組み合わせを利用した。
【0173】
ライブラリは、huST2L−ECDのFc融合物(配列番号1の残基19〜328)を用いてパニングした。パニングは、溶液状態の抗原(Ag)及び表示されたAgという、2つの異なるフォーマットで行った。溶液状態のAgの場合、ストレプトアビジン被覆磁気ビーズを、3%脱脂粉乳を含むPBS中でブロッキングした。10倍高濃度のヒトFcタンパク質を競合相手として含むビオチン化(Bt)抗原huST2L−ECDヒトFc融合物(Bt−huST2L−ECD−Fc)を、Fab−pIXファージライブラリと混合した。Bt−huST2L−ECD−Fcに結合したFab−pIXファージを、ブロッキングされたストレプトアビジン(SA)被覆磁気ビーズ上に捕捉した。選抜を3ラウンド行い、そのうち、1〜3ラウンドにおけるhuST2L−ECD−Fc濃度はそれぞれ100nM、10nM、10nMであった。Agディスプレイでは、Bt−huST2L−ECD−FcをSA被覆磁気ビーズにコーティングした。Fab−pIXファージライブラリと10倍過剰のヒトFcタンパク質との混合物を、Bt−huST2L−ECD−FcディスプレイSA磁気ビーズと同時に添加した。1〜3ラウンドで使用したBt−Ag濃度はそれぞれ100nM、10nM、10nMであった。huST2L−ECD−Fcタンパク質に結合するFabのために、ELISA法によって両方のパニングフォーマットでスクリーニングを行った。この選抜からはhST2L−Fcと結合した合計79個のFabが単離された。全体で最も高い結合活性を有するFab HuT2SU−39が、ELISAの順位によって判明した。
【0174】
ELISA法を基にしたIL−33結合阻害アッセイを79個のFabで行った。合計32個のFabが、IL−33のhuST2L−ECD−Fcへの結合阻害を示した。46個のFabを、pIXデノボ活動から親和性成熟のために選択した。
【0175】
実施例4.完全ヒトST2L抗体の親和性成熟
選抜した抗体を、Shiら著、J Mol Biol、第397巻、385〜396頁、2010年及び国際特許出願公開第WO09/085462A1号に記載の「インライン」成熟化方法を用いて親和性成熟させた。この技法では、第一選抜において生成されたFabクローンのVH領域を、対応するVLスキャフォールドのライブラリと組み合わせる。実施例3で確認した46個のFabから得られたVH遺伝子を全て、その元のVL遺伝子ファミリーに従ってプールとして適切なVL成熟ライブラリへとクローン化した。使用したVLスキャフォールドライブラリ及びその多様化スキームを表4に示す。ヒトVLスキャフォールドは、次に示すもの、すなわちIGKV1−39*01(O12)、IGKV3−11(L6)、IGKV3−20(A27)及びIGKV4−1*01(B3)であって、例えば米国特許出願公開第2012/0108795号に記載されているものである。親和性成熟パニンクでは、ファージライブラリを先ずBt−huST2−ECD−Fcに添加した。インキュベート後、成熟ライブラリファージ/Bt−hST2L−ECD−Fc複合体をSA被覆磁気ビーズに添加した。Bt−huST2−Fc濃度は、ラウンド1〜3ではそれぞれ10nM、1nM及び0.1nMであった。ラウンド3での最終洗浄は、親和性改善を更に促進させるために、10nMの非標識化huST2L−ECD−Fc存在下において室温で一晩行った。
【0176】
【表5】
【0177】
成熟パニングからは、合計161個の配列固有のFabが得られた。huST2L−ECDと最高の結合を示すFabを、更なる特性評価のためにIgGへと転換した。
【0178】
更なる特性評価のために、MAbであるST2M48、ST2M49、ST2M50及びST2M51を選択した。それらのVH配列及びVL配列並びにCDR配列を表5に示す。MabであるST2M48、ST2M49、ST2M50及びST2M51はヒトST2LとドメインIIIで結合し、また、マウスST2Lと交差反応する。
【0179】
【表6】
【0180】
実施例5.抗ST2L抗体の特性評価。
上述のように様々な活動から生じた抗体は更に、そのIL−33/ST2L阻止能について、NF−κBレポーター遺伝子法で測定されるそのIL−33誘発シグナル伝達の阻害について、抗体のマスト細胞応答阻害能について、ヒト及びcyno ST2Lに対するその親和性について、並びにマウスST2Lとの交差反応性についても特性評価を行った。エピトープマッピングは、材料及び方法にも記載したヒト/マウスST2Lドメイン交換キメラ構築物を用いて行った。実験結果を表6、7及び8に示す。表7及び8において、「+」は、抗体がIL−33/ST2L相互作用を阻止することを表し、そして「−」は、抗体がIL−33/ST2L相互作用を阻止しないことを表す。CNTO3914を含む実験は、ヒトと交差反応性しないので、マウス細胞及び試薬を用いて行った。他の抗体ではいずれも、ヒト細胞及びヒト試薬をアッセイで使用した。
【0181】
特性評価した抗体は、IL−33/ST2L相互作用を阻止する群(mAbであるSTLM15、STLM62及びCNTO3914)と、IL−33/ST2L相互作用を阻止しない群(mAbであるC2519、C2521、ST2M48、ST2M49、ST2M50及びST2M51)とに分類された。IL−33/ST2L相互作用を阻止する抗体は、ST2LドメインIに結合するが、阻止しない抗体はST2LドメインIIIに結合する。試験した抗体は、NF−κBレポーター遺伝子法で評価されるST2L下流シグナル伝達と、KU812ヒト好塩基球細胞株による、又はCNTO3914の場合はマウスTh2細胞増殖で評価される、IL−33誘発サイトカイン放出と、を阻害した。ST2LドメインIに結合する抗体は、サイトカイン及びケモカインの分泌で評価されるヒトマスト細胞応答を、ST2LドメインIIIに結合する抗ST2L抗体と比べると更に高い水準で阻害した。マウスST2LドメインIに結合するがヒトと交差反応しないCNTO3914は、IL−33誘発マウスマスト細胞応答をも阻害することができた。
【0182】
【表7】
【0183】
【表8】
【0184】
【表9】
【0185】
実施例7.ST2LドメインI結合抗体CNTO3914の、鼻腔内IL−33誘発気道過敏症(AHR)、気道の炎症及びマスト細胞応答阻害。
4日間毎日連続して用量2μg/マウスの「成熟」IL−33(R&D Systems)(配列番号215の残基109〜266)をメスBALB/cマウスに鼻腔内投与した。抗マウスST2L抗体CNTO3914を20mg/kg(又は2mg/kg又は0.2mg/kg)で、最初のIL−33鼻腔内投与の24時間前に予防として皮下投与した。対照群マウスには、アイソタイプ対照CNTO5516又はPBSを、最初のIL−33鼻腔内投与の24時間前に投与した。メタコリンを段階的に投与する気道過敏症(AHR)については、Flexiventシステム(Scireq、Montreal、Quebec、カナダ)を用いた強制法を利用して測定した。気道過敏症(AHR)の測定では、マウスを100mg/kgのペントバルビタール及び13mg/kgのフェニトインで麻酔して、気管切開してからFlexiVentにつないだ。ベースラインを判読するためにマウスに生理食塩水を噴霧した後、2種の用量(10及び20mg/mL)のメタコリンを噴霧した。生理食塩水及び各用量のメタコリンについて、抵抗(R)値を、「Snapshot」パータベーションを利用して約2分間集めた。ピーク抵抗値は、0.9超のCOD(決定定数)を有する値のみを用いて算出した。
【0186】
別の群のマウスは、肺の細胞性応答に関して処置して解析した。最後のmIL−33アイソタイプ又はPBS投与から24時間後に、マウスを、Sleepaway(登録商標)I.P.の過剰投与によって屠殺した。マウスの肺を、0.1% BSAを含む冷PBS 0.7mlで洗浄した。得られた気管支肺胞(BAL)体液を1200rpmで10分間遠心分離にかけて、無細胞上清を、サイトカイン/ケモカインを分析するまで−80℃で保存した。BAL試料は、血球計を用いた総カウントのために用いた。様々なBALでは、光学顕微鏡下でライトギムザ染色を行った後、サイトスピンのスメアによって約200個の細胞をカウントした。
【0187】
無細胞上清を回収して、Luminexタンパク質分析に用いるまで−80℃で保存した。肺組織を取り出した後、好適なかん流が生じるまで、冷却した滅菌PBS 5mlを用いて右心室からかん流させた。次いで、肺葉を、PBS 1mlとプロテアーゼ阻害剤が入ったFast Prep(登録商標)チューブに入れて、サイトカイン/ケモカインプロファイリングのために−80℃で冷凍保存した。Murine Millipore 22−plexに関する製造者のプロトコルに従ってサイトカイン/ケモカイン多重アッセイを行った。BAL体液中のマウスマスト細胞プロテアーゼ−1(mMCP−1)をELISA法(Moredun Scientific)で解析した。
【0188】
気道過敏症
IL−33を鼻腔内投与することで誘発された肺の炎症モデルでは、CNTO3914が気道過敏症をかなり阻害した(図1)。2μg/マウスのMIL−33を4日間連続して鼻腔投与する24時間前に、CNTO3914を皮下投与した。Flexiventで測定されるピーク気道抵抗は、CNTO3914を20mg/kg投与するとかなり低下した。エラーバーはそれぞれ、一群当たり3匹(CNTO5516、アイソタイプ対照抗体)〜6匹のマウスの平均値の標準誤差を表している。2回の別個の調査でこの結果が繰り返された。ボンフェローニ法(Bonferroni post test)による二元配置分散分析法(Two-Way ANOVA)を用いて有意性、CNTO5516/IL−33に対するCNTO3914/IL−33**p<0.05、及びIL−33治療群によるPBSに対する***p<0.001を求めた。
【0189】
気道の炎症
使用したモデルにおいて、CNTO3914は気管支肺胞洗浄(BAL)細胞動員を大幅に阻害した(図2)。2mg/マウスのmIL−33を連続して4日間鼻腔内投与する24時間前に、CNTO3914を皮下投与した。BAL白血球は、IL−33の投与によりかなり増加したが、20mg/kgのCNTO3914でかなり阻害した。エラーバーはそれぞれ、一群当たり3匹(CNTO5516、アイソタイプ対照抗体)〜6匹のマウスの平均値の標準誤差を表している。2回の別個の調査でこの結果が繰り返された。ボンフェローニ法(Bonferroni post test)による二元配置分散分析法(Two-Way ANOVA)を用いて有意性を求めた。すなわち、***p<0.001。
【0190】
インビボにおけるマスト細胞応答
マスト細胞は、トリプターゼ及びキマーゼを包含するプロテアーゼをその顆粒内に貯蔵しており、それらはマスト細胞が活性化すると迅速に放出される。マウスマスト細胞プロテアーゼ1(mMCP−1)は、活性化したマスト細胞により放出されるβキマーゼであって、寄生虫感染を制御するのに重要であることで知られている(Knightら著、J Exp Med、第192巻、1849〜56頁、2000年、Huntleyら著、Parasite Immunol、第12巻、85〜95頁、1990年)。mMCP−1の測定値は、マスト細胞のマーカーとして用いることもでき、気道の炎症のマスト細胞依存モデル、ハウスダストのダニに誘発されることが分かった(Yu及びChen著、J Immunol、第171巻、3808〜3815頁、2003年)。ELISA法(Moredun Scientific)で求められたMMCP−1は、IL−33投与マウスから得たBAL体液内では大幅に増加して、CNTO3914により用量に応じて阻害された(図3)。チューキー法(Tukey post test)による一元配置分散分析法(One-Way ANOVA)を用いて有意性、IL−33処置に対して**p<0.01、***p<0.001を求めた。
【0191】
実施例8.抗ST2LドメインI結合抗体の、インビトロでのマスト細胞応答阻害。
マスト細胞応答は、マウス及びヒトマスト細胞によるケモカイン及びサイトカインの放出、並びにヒトマスト細胞内でのプロスタグランジンD2の放出によって評価した。
【0192】
抗ST2LドメインI結合抗体CNTO3914は、マウス骨髄由来マスト細胞によるIL−33誘発サイトカインの放出、例えばGM−CSF(図4A)、IL−5(図4B)、及びTNFα(図4C)の放出を阻害した。
【0193】
抗ヒトST2LドメインI結合mabのC2494(STLM62)は、抗体濃度2、10及び50μg/mlにおいて、3ng/mlのIL−33で誘発されたヒト臍帯血由来マスト細胞によるIL−33誘発PGD2の放出を阻害した(図5)。
【0194】
抗ST2LドメインI結合抗体C2494及びC2244は、抗体濃度50μg/ml、10μg/ml及び2μg/mlにおいて、ヒト臍帯血由来マスト細胞によるIL−33誘発GM−CSF、IL−5、IL−8、IL−13及びIL−10の放出を阻害した(図6及び8A〜8E)。阻害の程度は、測定されたサイトカイン/ケモカイン、試験した抗体及び抗体濃度、並びに使用した培地に左右された。平均阻害率(%)計算値は、抗体濃度2μg/mlで行ったアッセイではいずれも50.6〜100%であり、また、抗体濃度50μg/mlで行ったアッセイでは62〜100%であった(図9)。
【0195】
抗ST2LドメインIII結合抗体C2521、C2519、ST2M48、ST2M49、ST2M50及びST2M51は、抗体濃度50μg/ml及び10μg/mlでは、マスト細胞によるIL−33誘発サイトカインの放出を大きく阻害しないか又は全く阻害しない、すなわち刺激したことが分かった(図7A〜7E及び図8A〜8E)。阻害の程度は、測定されたサイトカイン/ケモカイン、試験した抗体、及び使用した培地に左右された。平均阻害率(%)計算値は、抗体濃度2μg/mlで行ったアッセイではいずれも−594.4〜31.9%であり、また、抗体濃度50μg/mlで行ったアッセイでは−481.5〜36%であった(図9)。一部のアッセイでは、抗体ST2M50は、抗体濃度10μg/mlにおいてGM−CSF、IL−5、IL−10及びIL−13の分泌も抑制した(図8A〜8E)。
【0196】
平均阻害率(%)は、次の式を用いて算出した:(1−(mAb存在下で放出されたサイトカインの濃度)/(mAb不存在下でIL−33に応じて放出された同様のサイトカインの濃度))×100。サイトカイン濃度はpg/mlで表す。一部の例では、阻害率(%)は負の値であるが、これは、mAb存在下でのサイトカインの放出が、mAbの非存在下で放出されるよりも実際には大量であったことを示す。マスト細胞内でサイトカインの放出を誘発するのに用いられるIL−33の濃度に応じて、mAbの効力にほんのわずかな変化が生じ得る。同様に、使用されるアッセイ培地に応じて、mAbの活性にも経度の変化が生じ得る(StemPro−34対RPMI/10% FCS)。濃度2μg/ml、10μg/ml又は50μg/mlにおける平均阻害率(%)で測定すると、試験したST2LドメインI結合抗体はいずれも、全てのサイトカイン及びケモカインの放出を少なくとも50%阻害した。
【0197】
実施例9.ST2LドメインI結合抗体の、鼻腔内IL−33誘発気道リモデリング阻害。
C57BL/6マウスに、1μg/マウスの「成熟」IL−33(又はPBS)(配列番号215の残基109〜266)を1日目、3日目、5日目、7日目及び9日目に鼻腔内投与して、10日目又は20日目に肺を分析した。抗マウスST2L抗体CNTO3914又はアイソタイプ対照(CNTO5516)を、最初のIL−33鼻腔内投与の6時間前に2mg/kgで皮下投与した。対照群のマウスには、最初のIL−33鼻腔内投与の6時間前にアイソタイプ対照CNTO5516又はPBSを与えた。膨張させた肺を組織学的検査のために10%ホルマリン緩衝液で固定した。分析に用いた染色法としては、H&E、マソントリクローム染色及びPAS染色が挙げられた。
【0198】
IL−33処置は、杯細胞の肥厚化を伴う細気管支上皮の肥大及び肥厚化並びに主に好酸球と混成された細気管支周囲の浸潤物を中度にないし顕著に誘発した。細気管支上皮の肥大及び肥厚化はCNTO3914を与えた動物では認められなかった。マッソントリクローム染色法は、コラーゲンの含有量を求めるためのものであったが、この染色法により、IL−33処置された動物において杯細胞の肥大が明らかとなった。CNTO3914で処置された動物では、肺胞及び気管支周囲の領域に浸潤物が認められなかった。
【0199】
実施例10.完全ヒトST2L抗体の作製
更なるヒトST2L結合Fabは、ストレプトアビジン被覆磁気ビーズ上に捕捉されたビオチン化抗原と共にキメラHHM−ST2L構築物(配列番号6、表1)を用いてライブラリをパニングしたこと以外は、実施例3の記載と本質的に同様にしてデノボpIXファージディスプレイライブラリから選抜した。ファージライブラリを、3%脱脂粉乳を含むPBS−T内でブロッキングした。競合タンパク質であるMHM−ST2Lのキメラ型(配列番号7、表1)をブロッキング溶液に添加することで、ヒトST2LドメインIアミノ酸配列に特異的結合するFabを目指したファージの選抜を行った。ファージ選択を3ラウンド行った後、FabのhST2L−Fcタンパク質への結合についてELISA法でスクリーニングした。
【0200】
こうして選抜したものからhST2L−Fcに結合する19種のFabを単離して、キメラST2L構築物(表1)との結合についてだけでなく、マウスST2Lタンパク質及びヒトST2Lタンパク質との結合についても更にスクリーニングすることで、特異的なドメインをマッピングし、そしてそれらのIL−33/hST2L相互作用阻止能についての特性評価を行った。FabであるST2F1、ST2F4及びST2F6は、hIL−33/ST2L相互作用を阻止してST2LのドメインIに結合し、そして親和性成熟を生じさせた。
【0201】
【表10】
【0202】
実施例11.ヒトST2L結合Fabの親和性成熟
Shiら著、j Mol Biol、第397巻、385〜396頁、2010年及び国際特許出願公開第WO2009/085462号並びに実施例4に記載の「インライン」成熟化法を用いて、ST2F1、ST2F4及びST2F6を親和性成熟した。ST2F1、ST2F4及びST2F6における親和性成熟は、対応する軽鎖ライブラリB3、L6及びL6それぞれを多様化してライブラリをFabのVH領域と組み合わせることによって行った。L6及びB3の親和性成熟ライブラリーにおける軽鎖残基の多様化スキームを表10に示す。位置ナンバリングはKabatに準ずる。親和性成熟パニングでは、ビオチン化huST2−ECD−Fcを、ラウンド1では10nM、ラウンド2では1nM及びラウンド3では0.1nMの濃度においてストレプトアビジン(SA)被覆磁気ビーズ上で捕捉した。ラウンド3での最終洗浄は、非標識化huST2L−ECD−Fc10nMの存在下、室温において一晩行った。
【0203】
【表11】
【0204】
ST2F6軽鎖成熟ライブラリの選抜により、改善された結合剤が得られた(ST2F14、ST2F17、ST2F31及びST2F41)(図10及び図11)。これらは、ProteOnを用いてFabとして検査して、2nMから400pMまでの親和性の適度な改善が証明された。
【0205】
ST2F14、ST2F17、ST2F31及びST2F41の親和性を更に改善するために、ST2F14、ST2F17、ST2F31及びST2F41中の共通の重鎖ST2H41を、表11に示す多様化スキームを用いてHCDR1及びHCDR2のKabat位置31、32、33、35、50、52、53、56及び58においてランダム化した。得られた重鎖ライブラリを、親和性が改善された4つの軽鎖ST2L32、ST2L35、ST2L49及びST2L59と組み合わせて、このライブラリを軽鎖成熟ライブラリについての記載と同様にしてパニング及びスクリーニングを行った。ST2F14との結合が改善されたFabを単離して、更なる特性評価のためにIgGへと転換した。生成された抗体(STLM103、STLM107、STLM108、STLM123、STLM124、STLM206、STLM207、STLM208、STLM209、STLM210、STLM211、STLM212、STLM213、STLM214、STLM215、STLM216、STLM217、STLM218、STLM219、STLM220、STLM221、STLM222)(図10及び図11)はVH3−23又はVκ−L6由来のフレームワークを有する。抗体は全てST2LドメインIに結合して、IL−33/ST2L相互作用を阻止する。
【0206】
【表12】
【0207】
HCDR3の開始部分でDPモチーフを置換するために別の変異体を設計してSTLM208 VH ST2L257として発現させた。変異体の配列を図12に示す。
【0208】
実施例11.C2494のヒトフレームワークへの適合化(HFA)
フレームワークへの適合化法は、米国特許出願公開第2009/0118127号及びFranssonら著、J Mol Biol、第398巻、214〜231頁、2010年の記載と本質的に同様にして行った。簡潔に言えば、重鎖配列及び軽鎖配列を、IMGTデータベースにおけるBLASTサーチ(Kaasら著、Nucl.Acids.Res.、第32巻、D208−D210頁、2004年、及びLefrancら著、Nucl.Acid Res.、第33巻、D593〜D597頁、2005年)を用いてヒト生殖細胞系列配列(2007年10月1日現在では「01」アレルのみ)と比較した。この一連のヒト生殖細胞系列遺伝子から、重複する遺伝子(アミノ酸レベルで100%同一)と、対になっていないシステイン残基を含むものと、を除去した。フレームワーク及びCDR領域の両者において残りの最もマッチングしたヒト生殖細胞系列遺伝子を受容体ヒトフレームワークとして選択した。合計で9個のヒトVL生殖細胞系列フレームワーク及び7個のヒトVH生殖細胞系列フレームワークを、全体の配列相同性及びCDR長並びにCDR類似性に基づいて選択した。FR−4は、IGHJ/IGJK生殖細胞系列遺伝子のC2494配列との配列類似性、VL鎖の場合はJK2そしてVH鎖の場合はJH1に基づいて選択した(Kaasら著、Nucl.Acid Res.第32巻、D208〜D210頁、2004年及びLefranc M.−Pら著、Nucl.Acid Res.、第33巻、D593〜D597頁、2005年)。次いで、C2494のCDR(図14の下線部)は、VHのCDR−H1に相当する領域を除き、選択されたアクセプターヒトフレームワークに転移してHFA変異体を産生させた。この領域では、CDRとHVとの組み合わせ又はより短いHCDR2(Kabat−7とも称され、米国特許出願公開第2009/0118127号を参照のこと)が非ヒト抗体からヒトFRへ転移された。というのも、図14においてグレーで強調したHCDR2残基は、既知の構造体の抗原抗体複合体において接触してないことが分かったためである(Almagro著、J Mol Recognit.、第17巻、132頁、2004年)。
【0209】
C2494の成熟タンパク質配列(VL:配列番号52、VH:配列番号48)を図14に示す。図において、CDR残基(Kabat)には下線を付しており、ChothiaのHVループをCDRの下に示し、また、選択されたヒトフレームワークに転移された残基をHVの下に示す(HFA)。グレーで強調したHCDR2残基はどの変異体にも転移されなかった。
【0210】
C2494のFvフラグメントの3次元相同性モデルは、MOEの抗体モデリングモジュール(CCG、Montreal)を用いて構成した。このモデルは、露出したメチオニン残基及びトリプトファン残基、潜在的なN−グリコシル化モチーフ及び脱アミド化モチーフなどの、発生傾向を評価するのに用いた。LCDR3中には、Fv構造モデルに基づいてMet(M94)残基が潜在的に露出している。Met(M94)残基を除去するために、M94L変異を含む変異体(STLL280、O12b)を作製して特性評価を行った。重鎖では、HCDR3直前のCARモチーフ中のR残基(Chothia残基92〜94、図14)は、マイナスの電荷を有する残基のクラスター(Chothia残基D31、D32、D96及びD101a、図14)に悪影響を及ぼす可能性があり、これらは結合にとって重要な場合がある。Chothia残基94においてアルギニンをロイシンで置換したVH(CAR→CAL)を作製して特性評価を行った。
【0211】
設計された重鎖及び軽鎖をC2494親と共に組み合わせたmAbwの、ヒトST2Lへの結合について評価した。作製されたHFA mAbからは、IGHV1−24*01(配列番号148)及びIGHV1−f*01(配列番号149)重鎖フレームワーク(STLH195及びSTLH194)を有するVH鎖を含むmAbが、IGKV3−15*01(L2)(配列番号150)、IGKV1−9*01(L8)(配列番号151)、IGKV1−5*01(L12)(配列番号152)、IGKV1−12*01(L5)(配列番号153)、IGKV1−39*01(O12)(配列番号154)、IGKV1−27*01(A20)(配列番号155)又はIGKV1−33*01(O18)(配列番号156)フレームワーク(STLL280、STLL278、STLL277、STLL276、STLL275、STLL274、STLL273、STLL272)を有する様々なHFA軽鎖と組み合わせたときに、抗体を十分に発現してST2Lに結合した。
【0212】
HFAのVH変異体及びVL変異体の配列をそれぞれ表12に示す。転移された残基には下線を付し、そして更なる置換をグレーで強調した。表13には、配列番号に加えて、固有のpDR(プラスミド)並びに各HFAのVH及びVLに関するCBIS IDも示している。更なる特異性評価のために選択された発現mAbにおける、重鎖と軽鎖の組み合わせを表14に示す。
【0213】
表15は、C2494のCDRを転移するのに用いたヒトフレームワーク(V領域とJ領域の組み合わせ)を示す。
【0214】
表12.
フレームワーク適合したVL鎖(JK2配列に組み合わせたもの)
CDRには下線を付している。
【0215】
[配列表1]
【0216】
[配列表2]
【0217】
[配列表3]
【0218】
[配列表4]
【0219】
[配列表5]
【0220】
[配列表6]
【0221】
[配列表7]
【0222】
[配列表8]
【0223】
[配列表9]
【0224】
JH1に組み合わせたフレームワーク適合化VH鎖
【0225】
[配列表10]
【0226】
[配列表11]
【0227】
[配列表12]
【0228】
【表13】
【0229】
【表14】
【0230】
【表15】
【0231】
実施例12.抗原結合部位スキャンのためのアラニン及びヒト生殖細胞系列の突然変異体の設計
部位特異的変異誘発を行って、各CDR残基並びに他の抗体特性に潜在的影響を及ぼすいくつかの残基の結合への寄与を評価した。上記C2494のFvの分子モデルに基づいて、溶媒暴露CDR残基のサブセットは抗原の結合に関与すると予測された。これらは、アラニン、及び/又は最もマッチングした生殖細胞遺伝子中の対応残基である対応する「ヒト様の」残基へと変異された。C2494のVH中のD101aA(Chothia残基)(配列番号48中のD104A)の置換により、koffが1.43×10-4から3.2×10-5まで約4倍低下した。
【0232】
D101aAの置換により、ST2Lと結合する際にC2494 Fabのkoffが低下したので、同様の変異は更にC2494 HFA変異体の解離速度をも改善し得ると見込まれた。そのため、D101aA(Chothiaナンバリング)をSTLH194のVH(>VH2494−IGHV1−f*01、配列番号143)に組み込んでVH STLH201(配列番号145)を作製した。STLH201を、7個の軽鎖STLL280、STLL277、STLL276、STLL275、STLL274、STLL273及びSTLL272(表13及び表14)とそれぞれ組み合わせてmAbであるSTLM226、STLM227、STLM228、STLM229、STLM230、STLM231及びSTLM232を作製し、これらの特性評価を更に行った。そのため、mAbであるSTLM226、STLM227、STLM228、STLM229、STLM230、STLM231及びSTLM232は、親C2494抗体及び異なるHCDR3(配列番号146、GDFYAMAY)と比べて同一のLCDR1、LCDR2、LCDR3、HCDR1及びHCDR2配列を有している。更に、抗体STLM266 VL STLM280は、固有のLCDR3:LQSDNLLT(配列番号147)をも有していた。
【0233】
[配列表13]
D101aA(Chothiaナンバリング)の置換を組み込んだHCDR3:
配列番号146:GDFYAMAY
抗体STLM266 VL STLM280は、固有のLCDR3:LQSDNLLT(配列番号147)を有していた。
【0234】
実施例13.抗ST2L抗体の特性評価
ファージディスプレイ、ハイブリドーマ及びヒトフレームワークへの適合化活動から得た抗体の特性評価を、huST2L−ECD及びcynoST2L−ECDとの結合、親和性測定、ドメイン結合を決定するためのヒト/マウスキメラとの結合、受容体−リガンド阻害アッセイ、レポーター遺伝子法並びにマスト細胞応答アッセイを包含する様々なアッセイで行った。
【0235】
ファージディスプレイ活動由来の抗体のヒト及びcyno ST2Lに対する親和性、並びにそのヒトST2Lとの特異的結合を表16に示す。表16中の抗体はいずれも、ヒトST2LのドメインIに結合した。
【0236】
【表16】
【0237】
HFA活動から得た抗ST2L抗体の、親(STLM62、C2494)との関連において親和性を表17に示す。親和性はProteOnで分析した。実験は、25℃においてProteOnのPBS−T−E緩衝液(PBS、0.005%P20及び3mMのEDTA)を泳動用バッファーとして用いて行った。実験を行うために、GLCセンサーチップをヤギ抗ヒトFc(約5800RU)の共有結合固定化によって調製して、122〜146反応単位(RU)のMabを捕捉した。Mabを捕捉した後、0.024〜15nM(5倍希釈)のST2L−ECDを4分間(50μL/分で200μL)で注入した。解離は、全ての反応において30分間モニタリングした。再生は、10mMグリシン(pH1.5)の15秒パルスを2回用いて行った。ベースラインドリフトモデルを用いて1:1でデータをフィッティングした。
【0238】
試料の会合速度は速いので、曲線のフィッティング及び親和性の予測には、ラングミュア型の物質移動モデルを用いた。どの試料も、解離速度は、親クローン及び対照Mabよりも速かった。解離速度の差は、HFA変異体に対する親和性が親抗体に比べて低いことの主要因であった。
【0239】
【表17】
【0240】
【表18】
【0241】
選ばれた抗体のマスト細胞応答について試験して、3ng/mlのIL−33によって誘発されるIL−5、IL−13及びIL−8の、上述のヒト臍帯血由来マスト細胞からの放出の阻害を、RPMI+10% FCS中抗体100μg/ml、10μg/ml、1μg/ml、0.1μg/ml又は0.01μg/mlを用いて測定した。これらアッセイ条件において、試験した抗体はいずれも、IL−33誘発IL−5、IL−13及びIL−8サイトカイン放出を、抗体濃度100μg/mlでIL−33で誘発された対照試料に比べて約40%〜100%阻害した。
【0242】
実施例14.抗ST2L抗体による、ヒト好塩基球中での下方シグナル伝達経路阻害。
抗ST2L抗体の、ヒト好塩基球中でのp38MAPKシグナル伝達阻害能について試験した。
【0243】
ヘパリン化チューブで全血を回収し、室温(RT)にしてからアッセイを開始した。血液1mLを50mLコニカルチューブに分注して、PBSで希釈した抗ST2L抗体(STLB252)又はアイソタイプ対照(CNTO8937)を最終濃度2、20又は200μg/mLを目指して添加した。チューブを穏やかに回転させて混合し、インキュベータ内に37℃で30分間入れて、15分後穏やかに回転させた。その後、血液の細胞表面抗原(CD123−FITC、CRTH2−PCP−CY5.5及びCD45−APC−C7)を蛍光色素標識抗体で染色し、そしてチューブを37℃で15分間インキュベートした。それぞれのチューブに、温めた培地(RPMI−1640/10% FBS/1%ペニシリン−ストレプトマイシン溶液)1mLを添加した後、温めた培地で希釈したIL−33を最終濃度10ng/mLを目指して添加した。試料を37℃で10分間インキュベートした後、予め温めておいたBD Phosflow製Lyse/Fix緩衝液20mLをそれぞれのチューブに添加することで、赤血球を一斉に溶解させて試料を固定した。チューブを10回反転させて十分に混合して、37℃で10分間インキュベートした。試料を20mL滅菌室温PBSで洗浄し、室温の1倍希釈BD Perm/洗浄用緩衝液2mLに再懸濁して、室温で30分インキュベートした。試料をBD Perm/洗浄用緩衝液2mLで1回洗浄してから、BD Perm/洗浄用緩衝液400μLに再懸濁した。細胞内のp38−MAPK(vCell Signaling、カタログ番号6908S)に対するPE標識抗体を添加して、試料を室温で30分間インキュベートし、遮光した。試料をPerm/洗浄用緩衝液5mLで1回洗浄した後、FACS緩衝液100μLに再懸濁して、96ウェル丸底プレートに移した。試料は、各試料においてできるだけ多くのイベントを収集するハイスループットシステム(HTS)を用いたBD LSRIIフローサイトメトリーを使用して分析した。FloJoソフトウェアを用いてデータを解析した。好塩基球はCD45+CRTH2+CD123+として同定されて、それぞれの条件においてp38 MAPK陽性好塩基球の割合を評価した。全血を抗ST2L mAB(STLB252)でプレインキュベートすることにより、IL−33によって誘発されるp38−MAPKリン酸化反応が用量に応じて阻害されたが、アイソタイプ対照(CNTO 8937)では効果が全く見られなかった。抗ヒトST2L抗体は、全血の場合は、組み換え型ヒトIL−33によって好塩基球の活性が特異的に阻止された。この結果からは、抗ST2L抗体が、インビボでの内因性IL−33によるシグナル伝達を阻害することが分かる。
【0244】
【表19】
【0245】
実施例15.抗ST2L抗体によるインビボでの標的会合
mIL−33を6時間鼻腔内投与するBAL細胞動員のインビボモデル
1.2μg/マウスのmIL−33(R&D systems、番号3626−ML/CF)又はPBSを単回投与でオスBalb/cマウス(6〜8週、Taconic)に投与した。最初のmIL−33鼻腔内投与の24時間前に、ラット抗マウス抗体であるCNTO3914を又は2、0.2、0.06又は0.02mg/kg。アイソタイプ対照(ITC)mAであるCNTO 5516を2mg/kgで皮下投与した。mIL−33(又はPBS)投与から6時間後に、マウスを屠殺して血清分析のために血液を採取した。0.7mLのPBS/0.1% BSAを肺に2回注入して流出液を回収することにより、気管支肺胞洗浄(BAL)を行った。BALを遠心分離にかけて(1200rpm、10分)、血球計を用いて(Wright’s−Giemsa染色したサイトスピンプレパラートで)細胞の総数と分類別数とを計測するために細胞ペレットをPBS 200μlに再懸濁した。
【0246】
マウス血清中のCNTO 3914の測定
MSD SA−STDプレートをウェル1個当たり50μLのアッセイ用緩衝液で5分間かけてブロッキングした。プレートをひっくり返してアッセイ用緩衝液を取り除き、ペーパータオルで軽くたたいた。アッセイ用緩衝液中1.4μg/mLのビオチン化組み換え型マウスST2L/IL1R4/Fcキメラ(R&D System)をウェル1個当たり50μl添加して、冷蔵庫で一晩インキュベートした。前被覆プレートの各ウェルに、コーティング試薬を除去せずに評価用緩衝液150μLを添加して、30分間インキュベートした。プレートをプレート洗浄機において洗浄用緩衝液で3回洗浄した。プレートをペーパータオルで軽くたたいて残留洗浄用緩衝液を取り除いた。プレートの各ウェルにCNTO 3914試料をウェル1個当たり50μL添加した。プレートを、穏やかに撹拌しながら周囲温度において1時間インキュベートした。プレートをプレート洗浄機において洗浄用緩衝液で3回洗浄した。プレートの各ウェルに、ルテニウム標識化マウス抗マウスIgG1b(BD Biosciences)をウェル1個当たり50μLの用量設定で添加した。プレートを、穏やかに撹拌しながら周囲温度において1時間インキュベートした。プレートをプレート洗浄機において洗浄用緩衝液で3回洗浄した。プレートの各ウェルに、リードバッファーを150μL添加した。プレートの発光レベルを直ぐに、MSD Sector Imager 6000リーダーで読み取った。
【0247】
全血分析
血液をSarstedt製フィルターチューブ内においてDMEM培地+1%ペニシリン−ストレプトマイシン溶液+/−10ng/mlマウスIL−33(1:4)で希釈した。フィルターチューブを37℃で一晩インキュベートした後、上清におけるサイトカイン濃度及びケモカイン濃度をMillipore製Milliplexマウスサイトカイン/ケモカインキットを用い、製造者の取扱説明書に従って測定した。
【0248】
結果
抗ST2L抗体は、0.2mg/kg又は2mg/kgのCNTO 3914を24時間投与した後のマウスの血清中で検出することができた(図16A)。
【0249】
IL−33の鼻腔内投与により、気道への誘発細胞動員が6時間で誘発された(図16B)。抗ST2L mAbの投与により、BAL細部動員が低下した。BAL細胞動員の大幅な阻害を見込むのに必要とされる最少用量は0.2mg/kgであった(図16B)。統計的有意性は、一元配置分散分析法を用いて算出された。
【0250】
マウスIL−33で刺激された全血からは、IL−6(図16C)及びMCP−1(図16D)を含むことで、24時間後にサイトカインレベル及びケモカインレベルが増加したことが分かる。抗ST2L mAbであるCNTO 3914を20mg/kg又は2mg/kg投与されたマウスでは、CNTO 5516が投与されたマウス(アイソタイプ対照の抗マウスIgG1)に比べてIL−6及びMCP−1の濃度が低下したが、これはターゲット・エンゲージメントを示唆するものであった。全血分析において阻害と関連付けられる最少用量は2mg/kgであって、これによってBAL細胞動員も阻害された(図16B)。
【0251】
このデータからは全体として、抗ST2L mAbが作用部位に到達し、そして目的とする薬理作用が達成されたことが認められる(ターゲット・エンゲージメントを示唆する)。
【0252】
実施例16.抗ST2L抗体のエピトープ
抗ST2L抗体を選抜するために、エピトープマッピング及び競合試験を行った。
【0253】
競合結合アッセイ
競合結合アッセイを行って、抗ST2L mAbに対するエピトープ群の結合差異を評価した。MSD HighBindプレート(Meso Scale Discovery、Gaithersburg、MD)に、ウェル1個当たり5μL(10μg/mL)のST2L−ECDタンパク質を室温で2時間かけてコーティングした。各ウェルに、5%のMSDブロッカーA緩衝液(Meso Scale Discovery、Gaithersburg、MD)を100マイクロリットル及び50マイクロリットル添加して、室温で2時間インキュベートした。プレートを0.1MのHEPES緩衝液(pH 7.4)で3回洗浄した後、MSD蛍光染料(スルホタグ、NHSエステル)で標識化された各抗SST2L抗体と様々な競合相手との混合物を添加した。10又は30nMの標識抗体を、1nMから2μM又は5μMまでの段階的な競合抗体を加えてインキュベートした後、混合物容量25μLの指定されたウェルに添加した。プレートを、穏やかに振盪しながら室温で2時間インキュベートした後、0.1MのHEPES緩衝液(pH 7.4)で3回洗浄した。MSDリードバッファーTを蒸留水で希釈して(4倍)ウェル1個当たり150μLの量で分配し、そしてSECTOR Imager 6000で分析した。
【0254】
以下の抗体を競合アッセイで使用した。すなわち、ST2LドメインI結合性中和抗体であるSTLM208、STLM213、C2244(STLM15)及びC2494(STLM62)、ST2LドメインIII結合性中和抗体であるC2539、並びにヒトST2LドメインIに結合する抗ST2L非中和抗体であるC2240。図17A及び図17Bは競合実験結果を表している。実験結果によれば、確認されたエピトープ・ビンは、ビンAがmAb C2244、C2494、STLM208若しくはSTLM213であり、ビンBがmAb C2240であり、そしてBinCがC2539である。IL33/ST2L相互作用を阻止しかつマスト細胞応答を阻害する抗体は、同一エピトープ内にあって、互いに交差競合することが分かった。競合データ一覧を表20に示す。
【0255】
【表20】
【0256】
エピトープマッピング:H/D交換分析
H/D交換において、抗体のパータベーション分析に用いた手順は、いくつかの変更点を含むが前述のものと同様である(Hamuro,Y.ら著、Journal of Biomolecular Techniques、第14巻、171〜182頁、2003年、Horn,J.R.ら著、Biochemistry、第45巻、8488〜8498頁、2006年)。組み換え型ST2−ECD(C末端にHis−タグを有するHEK293Eから発現したもの)(配列番号157の残基18〜328)を重水溶液中で所定の時間インキュベートすると、交換可能な水素原子に重水素取り込みが生じた。重水素化ST2−ECDを、固定化抗ST2L C2244 Fab分子を含むカラム上で捕捉した後、水性緩衝液で洗浄した。逆交換したST2−ECDタンパク質をカラムから溶出させて、重水素を含むフラグメントの位置の特定を、プロテアーゼ消化及び質量分析法によって調べた。
【0257】
図18は、C2244 Fabと複合体を形成したヒトST2−ECD(溶解性ST2)の単純化したH/D交換マッピングを示している。配列番号119のST2−ECDの残基18〜31(アミノ酸残基RCPRQGKPSYTVDW、配列番号210)をFab(配列番号1の完全長ST2Lの残基35〜48に相当)で保護した。このデータからは、C2244がエピトープRCPRQGKPSYTVDW;配列番号210)に結合していることと、C2244と競合する抗体(C2494、STLM208又はSTLM213)も同様の又は重複するエピトープに結合する可能性があることが分かる。
【0258】
変異誘発によるエピトープマッピング
ST2LドメインIにおける対応するマウス残基に置換基を有するいくつかのST2L変異体を作製した。試験された抗体は、マウスST2Lとは交差反応しなかったことから、結合が消失及び/又は抑制されたST2L変異体は、ST2L上の置換部位にエピトープ残基を示すと見込まれる。変異は、標準的な方法を用いて、配列番号1の完全長ST2Lの残基19〜205を有する構築物HH−ST2Lに導入された。抗体の、ST2L変異体との結合については、ELISA法又はProteOnによって試験した。
【0259】
表面プラズモン共鳴法
結合試験は、ProteOn XPR36タンパク質相互作用アレイシステム(Bio−Rad)を用いて行った(Bravman T.ら著、Anal Biochem、第358巻、281〜288頁、2006年)。抗ヒト/抗マウスFc混合物(Jackson ImmunoResearch、カタログ番号109−005−098/115−005−071)を、アミンカップリング反応によってGLCセンサーチップ上に固定した。その後、0.5% NonidetP−40及び0.5%デオキシコール酸Na塩を含むPBS中で調製した抗体溶液を流す(1mg/mL)ことによって個々の抗ST2L mAbを捕捉した。表面内シグナルは、抗Fc被覆表面では約250共鳴単位(RU、1RU=タンパク質1pg/mm2)に到達し、このことから、これら抗体が抗ST2L mAbに特異的に捕捉されたことが確認された。流体系を90°回転させた後、野生型ST2L−D1D2又は変異タンパク質(0.5% NonidetP−40及び0.5%デオキシコール酸Na塩を含むPBS中、0.5mg/mL)を平行流路に注入した。これらアッセイはいずれも25℃で行った。表面上でのST2L−D1D2依存性シグナルを二重の参照によって獲得し、抗体のみを固定した表面上で認められた反応と溶媒のみを注入して認められたシグナルとを差し引く(これにより、結合依存性反応が補正できる)。得られたセンサーグラムを、最も単純化した1:1相互作用モデル(ProteOn解析ソフトウェア)でフィッティングすることで、対応する会合速度定数及び解離速度定数(ka及びkd)が得られた。
【0260】
図19は、作製されたST2L変異体、並びに抗ST2L抗体ST2B206及びST2B252の当該変異体に対する親和性を表している。変異体93NL94(93TF94から93NL94へ置換されたもの)は、STLM208及びSTLB252両者との結合親和性が約10.8×10-12Mから約49.5×10-12Mまで約5倍低下した。結合親和性が大幅に低下しなかったことは、抗体とST2L−D1D2との間の相互作用としての結合エネルギーが、H/D交換分析で同定されたエピトープ領域(RCPRQGKPSYTVDW;配列番号210)とこの93NL94部位からの追加寄与との合計であることを意味する。残基のナンバリングは、配列番号1の全長ヒトST2Lに準ずる。
【0261】
実施例17.ST2LドメインI結合抗体による、インビトロでの初代ヒト肺マスト細胞応答阻害。
ST2LドメインI結合抗体の肺マスト細胞応答阻害能は、初代ヒト肺マスト細胞内でのケモカイン及びサイトカインの放出によって評価した。
【0262】
初代ヒト肺マスト細胞の分離
初代ヒト肺マスト細胞を、International Institute for the Advancement of Medicineから入手した正常な非喫煙者組織から分離した。細胞は、柔組織を細かく切って洗浄し、そして酵素コラゲナーゼ及びヒアルロニダーゼ中において37℃で一晩消化させることによって肺柔組織及び末梢気道から分散した。細胞を回収して洗浄し、そしてMACS Miletnyi Biotec製CD117マイクロビーズキット(ヒト)を用いた濃縮プロセスに付すことで、最終的にこの集団からマスト細胞を選抜した。実験を行う前に、マスト細胞は、StemPro−34+200ng/ml幹細胞因子中で6週間培養した。分離してから2週間後に、細胞を、フローサイトメトリーを用いて表現型で特性評価することで、マスト細胞の純度(%)を確認した。その後のアッセイで用いた細胞は、CD117(C−kit又は幹細胞因子受容体)及びFc≦RI(親和性の高いIgE受容体)に対して89%二重陽性であった。さらに、ST2Lに対しては94.2%陽性であったことから、そのマスト細胞表現型が確認された。
【0263】
初代ヒト肺マスト細胞からのサイトカイン放出に関する評価
StemPro−34+200ng/ml幹細胞因子中で約6週間培養した初代ヒト肺マスト細胞を回収し、RPMI(10%加熱不活性化FCSを含む)中で遠心分離にかけることによって洗浄した。細胞数を計数し、96ウェルプレートあたりRPMI/10%FCS培地に細胞数65,000個の密度でプレーティングした。抗ST2LドメインI結合Mabを初代肺マスト細胞に添加して、37℃において30分間結合させてからIL−33で刺激した。細胞は、3ng/mlのIL−33で24時間刺激することで、様々な介在物質の培養上清への蓄積が開始した。培養上清を採取して、専用のMilliplex製9−plexキットで評価するまで冷凍保存した。
【0264】
抗ST2LドメインI結合抗体であるSTLM208は、抗体濃度100μg/ml、10μg/ml及び/又は1μg/mlにおいて、初代ヒト肺マスト細胞内でのIL−33に誘発されたGM−CSFの放出(図20A)、IL−5の放出(図20B)、IL−8の放出(図20C)及びIL−13の放出(図20D)を阻害した。臍帯血由来マスト細胞を用いても同様の結果が得られた(図示せず)。

本発明は以下の態様を包含し得る。
[1] ヒトST2LのドメインI(配列番号9)に特異的結合する、単離されたヒト若しくはヒト適合性抗体拮抗物質又はそのフラグメント。
[2] 前記抗体がIL−33/ST2L相互作用を阻止する、上記[1]に記載の単離された抗体。
[3] ヒトST2Lに対する解離定数(KD)約5×10-12M〜約7×10-10M、ヒトST2Lに対する会合速度定数(Kon)約2×106-1-1〜約1×108-1-1、又はヒトST2Lに対する解離速度定数(Koff)約1×10-6-1〜約1×10-2-1を有する、上記[2]に記載の単離された抗体。
[4] カニクイザル(cyno)ST2L(配列番号2)に対する解離定数(KD)約3×10-12M〜約2×10-9M、cyno ST2Lに対する会合速度定数(Kon)約4×106-1-1〜約1×108-1-1又はcyno ST2Lに対する解離速度定数(Koff)約7×10-5-1〜約1×10-1-1を有する、上記[3]に記載の単離された抗体。
[5] a)配列番号160の重鎖相補的決定領域(HCDR)1(HCDR1)(X123MX4)であって、式中、
1はS、F、D、I、G又はVであり、
2はY又はDであり、
3はA、D又はSであり、そして
4はS、F又はIであるもの、
b)配列番号161のHCDR2(HCDR2)(X5IX6GX7GGX8TX9YADSVKG)であって、式中、
5はA、S、T、Y又はDであり、
6はS、R、E、K、G又はAであり、
7はS、E又はNであり、
8はS、R、E、G、T、D又はAであり、そして
9はY、D、N、A又はSであるもの、そして、
c)配列番号162のHCDR3(HCDR3)(X1011WSTEGSFFVLDY)であって、式中、
10はD、A、R、N、Q、P、E、I、H、S、T又はYであり、そして
11はP、A、H、Y、E、Q、L、S、N、T、V又はIであるもの、そして、
d)配列番号163の軽鎖相補的決定領域(LCDR)1(LCDR1)(RASQSVDDX12LA)であって、式中、
12は、A又はDであるもの、
e)配列番号90のLCDR2(LCDR2)
(DASNRAT)、そして、
f)配列番号164のLCDR3(LCDR3)(QQX131415161718T)であって、式中、
13はF又はYであり、
14はY、I又はNであり、
15はN、G、D又はTであり、
16はW又はAであり、
17はPであるか又は欠失しており、そして
18はL又はIであるもの、を含む、上記[4]に記載の単離された抗体。
[6] a)配列番号97のHCDR1、
b)配列番号114のHCDR2、
c)配列番号84のHCDR3、
d)配列番号130のLCDR1、
e)配列番号90のLCDR2、及び、
f)配列番号134のLCDR3、又は
g)配列番号191のVH及び配列番号209のVL、を含む、上記[5]に記載の単離された抗体。
[7] 前記HCDR1、前記HCDR2、前記HCDR3、前記LCDR1、前記LCDR2及び前記LCDR3が、
a)それぞれ配列番号78、81、84、87、90及び92からなるもの、
b)それぞれ配列番号78、81、84、130、90及び131からなるもの、
c)それぞれ配列番号78、81、84、130、90及び132からなるもの、
d)それぞれ配列番号78、81、84、130、90及び133からなるもの、
e)それぞれ配列番号78、81、84、130、90及び134からなるもの、
f)それぞれ配列番号95、109、84、130、90及び131からなるもの、
g)それぞれ配列番号96、110、84、130、90及び131からなるもの、
h)それぞれ配列番号97、111、84、130、90及び131からなるもの、
i)それぞれ配列番号96、110、84、130、90及び134からなるもの、
j)それぞれ配列番号97、111、84、130、90及び134からなるもの、
k)それぞれ配列番号97、112、84、130、90及び134からなるもの、
l)それぞれ配列番号98、113、84、130、90及び134からなるもの、
m)それぞれ配列番号97、114、84、130、90及び134からなるもの、
n)それぞれ配列番号97、115、84、130、90及び134からなるもの、
o)それぞれ配列番号99、116、84、130、90及び133からなるもの、
p)それぞれ配列番号100、117、84、130、90及び133からなるもの、
q)それぞれ配列番号101、118、84、130、90及び133からなるもの、
r)それぞれ配列番号102、120、84、130、90及び132からなるもの、
s)それぞれ配列番号103、121、84、130、90及び132からなるもの、
t)それぞれ配列番号103、122、84、130、90及び131からなるもの、
u)それぞれ配列番号103、123、84、130、90及び131からなるもの、
v)それぞれ配列番号104、124、84、130、90及び131からなるもの、
w)それぞれ配列番号105、125、84、130、90及び131からなるもの、
x)それぞれ配列番号106、126、84、130、90及び131からなるもの、
y)それぞれ配列番号95、127、84、130、90及び131からなるもの、
z)それぞれ配列番号107、128、84、130、90及び131からなるもの、
aa)それぞれ配列番号108、129、84、130、90及び131からなるもの、
bb)それぞれ配列番号97、114、165、130、90及び134からなるもの、
cc)それぞれ配列番号97、114、166、130、90及び134からなるもの、
dd)それぞれ配列番号97、114、167、130、90及び134からなるもの、
ee)それぞれ配列番号97、114、168、130、90及び134からなるもの、
ff)それぞれ配列番号97、114、169、130、90及び134からなるもの、
gg)それぞれ配列番号97、114、170、130、90及び134からなるもの、
hh)それぞれ配列番号97、114、171、130、90及び134からなるもの、
ii)それぞれ配列番号97、114、172、130、90及び134からなるもの、
jj)それぞれ配列番号97、114、173、130、90及び134からなるもの、
kk)それぞれ配列番号97、114、174、130、90及び134からなるもの、
ll)それぞれ配列番号97、114、175、130、90及び134からなるもの、
mm)それぞれ配列番号97、114、176、130、90及び134からなるもの、
nn)それぞれ配列番号97、114、177、130、90及び134からなるもの、
oo)それぞれ配列番号97、114、178、130、90及び134からなるもの、
pp)それぞれ配列番号97、114、179、130、90及び134からなるもの、
qq)それぞれ配列番号97、114、180、130、90及び134からなるもの、
rr)それぞれ配列番号97、114、181、130、90及び134からなるもの、
ss)それぞれ配列番号97、114、182、130、90及び134からなるもの、
tt)それぞれ配列番号97、114、183、130、90及び134からなるもの、
uu)それぞれ配列番号97、114、184、130、90及び134からなるもの、又は
vv)それぞれ配列番号97、114、185、130、90及び134からなるもの、を含む、上記[5]に記載の単離された抗体。
[8] 前記HCDR1、前記HCDR2、前記HCDR3、前記LCDR1、前記LCDR2及び前記LCDR3が、
a)それぞれ配列番号23、27、31、35、39及び43からなるもの、
b)それぞれ配列番号24、28、32、36、40及び44からなるもの、
c)それぞれ配列番号24、28、146、36、40及び147そからなるもの、又は
d)
それぞれ配列番号24、28、146、36、40及び44からなるもの、を含む、上記[4]に記載の単離された抗体。
[9] 前記抗体が、ヒトST2L(配列番号1)との結合に関して配列番号47の重鎖可変領域(VH)及び配列番号51の軽鎖可変領域(VL)を含む単離された抗体と競合する、上記[2]に記載の単離された抗体。
[10] 前記抗体が、配列番号1のアミノ酸残基35〜48(RCPRQGKPSYTVDW、配列番号210)においてヒトST2Lと結合する、上記[9]に記載の単離された抗体。
[11] 前記抗体が更に、配列番号1のアミノ酸残基T93及びF94においてもヒトST2Lと結合する、上記[10]に記載の単離された抗体。
[12] ヒトIGHV3−23(配列番号158)フレームワーク配列、IGHV1−24*01(配列番号148)フレームワーク配列又はIGHV1−f*01(配列番号149)フレームワーク配列由来のVHフレームワークを含む重鎖可変領域(VH)と、ヒトIGKV3−11(L6)(配列番号159)フレームワーク配列、IGKV3−15*01(L2)(配列番号150)フレームワーク配列、IGKV1−9*01(L8)(配列番号151)フレームワーク配列、IGKV1−5*01(L12)(配列番号152)フレームワーク配列、IGKV1−12*01(L5)(配列番号153)フレームワーク配列、IGKV1−39*01(O12)(配列番号154)フレームワーク配列、IGKV1−27*01(A20)(配列番号155)フレームワーク配列又はIGKV1−33*01(O18)(配列番号156)フレームワーク配列由来のVLフレームワークを含む軽鎖可変領域(VL)と、を含む、上記[1]に記載の単離された抗体。
[13] IgG1型、IgG2型、IgG3型又はIgG4型である、上記[1]に記載の単離された抗体。
[14] Fc領域内に置換を有する、上記[13]に記載の単離された抗体。
[15] 前記置換が、M252Y/S254T/T256E、V234A/G237A/P238S/H28A/V309L/A330S/P331S又はP238S/L234A/L235A置換を含み、残基のナンバリングがEUナンバリングに準ずる、上記[14]に記載の単離された抗体。
[16] 配列番号191の前記VHと少なくとも90%同一のVHと、配列番号209の前記VLと少なくとも94%同一のVLと、を含む、上記[12]に記載の単離された抗体。
[17] 配列番号143、144、145、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204又は205の前記VHと、配列番号135、136、137、138、139、140、141、142、206、207、208又は209の前記VLと、を含む、上記[16]に記載の単離された抗体。
[18] 前記VHおよび前記VLが
a)それぞれ前記配列番号186及び前記配列番号206からなる、
b)それぞれ前記配列番号187及び前記配列番号206からなる、
c)それぞれ前記配列番号197及び前記配列番号206からなる、
d)それぞれ前記配列番号198及び前記配列番号206からなる、
e)それぞれ前記配列番号199及び前記配列番号206からなる、
f)それぞれ前記配列番号200及び前記配列番号206からなる、
g)それぞれ前記配列番号201及び前記配列番号206からなる、
h)それぞれ前記配列番号202及び前記配列番号206からなる、
i)それぞれ前記配列番号203及び前記配列番号206からなる、
j)それぞれ前記配列番号204及び前記配列番号206からなる、
k)それぞれ前記配列番号205及び前記配列番号206からなる、
l)それぞれ前記配列番号195及び前記配列番号207からなる、
m)それぞれ前記配列番号196及び前記配列番号207からなる、
n)それぞれ前記配列番号188及び前記配列番号208からなる、
o)それぞれ前記配列番号189及び前記配列番号208からなる、
p)それぞれ前記配列番号190及び前記配列番号208からなる、
q)それぞれ前記配列番号187及び前記配列番号209からなる、
r)それぞれ前記配列番号191及び前記配列番号209からなる、
s)それぞれ前記配列番号192及び前記配列番号209からなる、
t)それぞれ前記配列番号193及び前記配列番号209からなる、又は
u)それぞれ前記配列番号194及び前記配列番号209からなる、上記[17]に記載の単離された抗体。
[19] 前記配列番号143、144、145、186、187、197、198、199、200、201、202、203、204又は205の前記VH又は前記配列番号135、136、137、138、139、140、141、142、206、207、208又は209の前記VLをコードする、単離されたポリヌクレオチド。
[20] 上記[19]に記載の単離されたポリヌクレオチドを含む、ベクター。
[21] 上記[20]に記載のベクターを含む、宿主細胞。
[22] 上記[21]に記載の宿主細胞を培養する工程と、前記細胞から抗体を回収する工程と、を含む、上記[18]に記載の抗体の製造方法。
[23] 上記[1]又は上記[6]に記載の単離された抗体と、製薬上許容された担体と、を含む、医薬組成物。
[24] 上記[1]又は上記[6]に記載の単離された抗体の治療上の有効量を、ST2L介在状態の治療又は予防を必要とする患者に、ST2L介在状態を治療又は予防するうえで十分な時間にわたって投与する工程を含む、ST2L介在状態の治療又は予防方法。
[25] 前記ST2L介在状態が、喘息、気道過敏症、サルコイドーシス、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、特発性肺線維症(IPF)、肺嚢胞性線維症、炎症性大腸炎(IBD)、好酸球性食道炎、強皮症、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、水泡性類天疱瘡、慢性じん麻疹、糖尿病性腎症、関節リウマチ、間質性膀胱炎又は移植片対宿主病(GVHD)であるか、或いは肺における炎症性細胞動員、杯細胞の肥厚化、粘液分泌又はマスト細胞応答の増加を伴う、上記[24]に記載の方法。
[26] 上記[1]に記載の単離された抗体の治療上の有効量を、マスト細胞応答を阻害する必要のある患者に、前記マスト細胞応答を阻害するうえで十分な時間にわたって投与する工程を含む、患者のマスト細胞応答を阻害する方法。
[27] 前記マスト細胞応答の阻害が、ヒト臍帯血由来マスト細胞により放出されるGM−CSF、IL−5、IL−8、IL−10又はIL−13の量を50μg/mlの抗体で少なくとも50%阻害することを含む、上記[26]に記載の方法。
[28] ST2LのドメインIに特異的結合する抗体を、対象に、IL−33とST2Lとの相互作用を阻害するうえで十分な量で投与する工程を含む、対象におけるIL−33とST2Lとの相互作用を阻害する方法。
[29] 前記対象がST2L介在状態にある、上記[28]に記載の方法。
[30] 前記ST2L介在状態が、喘息、気道過敏症、サルコイドーシス、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、特発性肺線維症(IPF)、肺嚢胞性線維症、炎症性大腸炎(IBD)、好酸球性食道炎、強皮症、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、水泡性類天疱瘡、慢性じん麻疹、糖尿病性腎症、関節リウマチ、間質性膀胱炎又は移植片対宿主病(GVHD)であるか、或いは肺における炎症性細胞動員、杯細胞の肥厚化、又は粘液分泌若しくはマスト細胞応答の増加を伴う、上記[29]に記載の方法。
[31] 前記抗体が、
a)配列番号97のHCDR1、
b)配列番号114のHCDR2、
c)配列番号84のHCDR3、
d)配列番号130のLCDR1、
e)配列番号90のLCDR2、及び、
f)配列番号134のLCDR3、又は
g)配列番号191のVH及び配列番号209のVL、を含む、上記[29]に記載の方法。
[32] 治療に使用される、上記[1]、上記[6]又は上記[9]のいずれか一項に記載の抗体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]