(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6283358
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】耐カール性バリヤフィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20180208BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20180208BHJP
B65D 81/24 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B65D65/40 D
B65D81/24 E
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-518738(P2015-518738)
(86)(22)【出願日】2013年6月11日
(65)【公表番号】特表2015-526314(P2015-526314A)
(43)【公表日】2015年9月10日
(86)【国際出願番号】CA2013000555
(87)【国際公開番号】WO2014005214
(87)【国際公開日】20140109
【審査請求日】2016年5月24日
(31)【優先権主張番号】61/668,293
(32)【優先日】2012年7月5日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513269848
【氏名又は名称】ノヴァ ケミカルズ(アンテルナショナル)ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボルス、ニタン
(72)【発明者】
【氏名】オーブ、ノルマン ドリアン ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ウォード、ダニエル アール.
【審査官】
増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】
特表2010−510333(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0107542(US,A1)
【文献】
国際公開第2011/154840(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0300391(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0248228(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0029182(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
B65D 65/40
B65D 81/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア層、第一表皮層及び第二表皮層を含むバリヤフィルムであって、
該コア層は実質的に
a)92〜60重量%の核高密度ポリエチレン樹脂、及び
b)8〜40重量%の高圧、低密度ポリエチレン
の混合物からなり;
該第一表皮層は、
i)直鎖状低密度ポリエチレン;及び
ii)核形成剤を含んでいない高密度ポリエチレン
からなる群から選択される樹脂を含み;
該第二表皮層は、良好な封止強度を与える樹脂から作られた密封材層である、
上記バリヤフィルム。
【請求項2】
前記高圧、低密度ポリエチレンは、0.5〜3g/10分のメルトインデックス、I2及び0.917〜0.922g/ccの密度を有する、請求項1のバリヤフィルム。
【請求項3】
前記核高密度ポリエチレンは、0.3〜20g/10分のメルトインデックス、I2を有する、請求項1のバリヤ樹脂。
【請求項4】
前記表皮層の少なくとも一つは、EVA、及びアイオノマーからなる群から選択される密封材樹脂を含む、請求項1のバリヤ樹脂。
【請求項5】
5つの層からなる、請求項1のバリヤフィルム。
【請求項6】
7つの層からなる、請求項1のバリヤフィルム。
【請求項7】
9つの層からなる、請求項1のバリヤフィルム。
【請求項8】
前記核HDPEは、ジカルボン酸の塩である核形成剤を含む、請求項1のバリヤフィルム。
【請求項9】
前記ジカルボン酸は、ヘキサヒドロフタル構造を有する環状ジカルボン酸である、請求項8のバリヤフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高いバリヤ性を有する多層プラスチックフィルムのための新規な設計に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスバリヤ性を有するプラスチックフィルムは、乾燥食品のパッケージに広く使用されている。フィルムは低い透湿度率(Water Vapor Transmission Rate:WVTR)及び低い酸素透過率(Oxygen Transmission Rate:OTR)を有するべきである。芳香バリヤ性もまた好ましい。
【0003】
従来これらの用途に使用されている紙包装は、部分的にセロファンに置換された。しかし、セロファンは高価であり、加工することが困難である。
【0004】
高密度ポリエチレン(HDPE)から調製されるバリヤフィルムは紙又はセロファンの代替を提供する。HDPEフィルムはコストと性能の間に良いバランスを与える。しかしながら、付加的なバリヤ及び/又は強靭性を必要とする場合は、より高価なバリヤ樹脂(例えば、エチレン−ビニルアルコール(EVOH)、ポリアミド(ナイロン)、ポリエステル、エチレン−酢酸ビニル(EVA)、又はポリ塩化ビニリデン(PVDC))からなる層、及び/又はより強い/より強靭な樹脂(例えば、アイオノマー又は直鎖状低密度ポリエチレン(「LLDPE」)の層を含む多層フィルムを調製することが知られている。EVA、アイオノマー
(ionomer)、「高圧低密度ポリエチレン」(「LDPE」)又はプラストマーから調製される
密封材(sealant)層も多層構造に採用される。
【0005】
上記の高価なバリヤ樹脂(ポリアミド、EVOH、ポリエステル及びPVDC)はHDPEよりも高い極性である傾向がある。これは多層フィルム構造中の極性樹脂と非極性樹脂の層の間に接着問題を引き起こし得る。したがって、「結合層」又は接着剤は、層が互いに分離する可能性を減少するように層の間に使用されてもよい。
【0006】
単一層のHDPEフィルムは高価でなく、調製が容易で、かつ水蒸気及び酸素透過性に適度な抵抗性を与える。さらに、フィルムの厚さを増加することのみによりバリヤ性能を増加することを提供することが簡単である。しかしながら、HDPEフィルムの機械的性質(破断強度及び衝撃強度など)及び密封性能は比較的低く、それゆえ多層フィルムが広く用いられる。
【0007】
このように、バリヤフィルムの設計は、より高価な極性樹脂のより良い性能に対するHDPE樹脂の低コストとのバランスをとったコスト/利益分析を包含するものである。フィルムのコストを低減するその他の方法は、単純に、より薄い、又は「ダウンゲージの」フィルムを製造することにより、より少ない材料を使用することである。
【0008】
HDPEを用いた多層バリヤフィルムの例は、米国特許登録4,188,441号(Cook)、米国特許登録4,254,169号(Schroeder)、及び米国特許登録6,045,882号(Sandford)及び出願人によるカナダ国特許出願CA2,594,472号公報(Aubeeら)に開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、
コア層と2つの表皮層を含むバリヤフィルムであって、該コア層は実質的に
a)60〜92重量%の核(nucleated)高密度ポリエチレン樹脂、及び
b)40〜8重量%の高圧、低密度ポリエチレン
の混合物からなる、上記バリヤフィルムを提供する。
【0010】
これらのフィルムがそれ自体で丸くなる、すなわち「カール」しうることは、多層フィルム製造の当業者により理解される。このカールを引き起こすメカニズムについて一般に受け入れられた理論は「収縮差」、すなわち、一つの層が他の層と異なる率で収縮する傾向、であり、これがカールにつながる。この理論は学問上の議論であったが、The annual conference of the Society of Plastics Engineers (「SPE」)2002に掲載された2報の論文(参照:Morris; SPE (2002),60th (Vol 1),40−46及びMorris;SPE(2002),60th(Vol 1), 32−39)にまとめられている。
【0011】
収縮差の度合いに影響しうる二つの要因は、
1)構造の素材(例えば、表皮層が内部層に使用される素材よりも収縮する素材から出来ている場合など)、及び、
2)製造条件(例えば、新たに加工されたフィルムがそのフィルムの一側面でのみ冷却される(インフレーションフィルムの内側のような)場合、その側面の収縮率はインフレーションフィルムの気泡の「外側」における収縮率とは異なることができる。
【0012】
これらの問題は、核形成剤が多層フィルムの一つの層に使用された素材に存在するときに増加することがある。一般的に、核形成剤の添加はポリマー素材を冷却の際により収縮させるためである(核形成剤の非存在下における同様の冷却条件下での同一のポリマーについての収縮率に比較して)。ある程度、この問題はコア層と表皮層の少なくとも一つにおいて同一の核ポリマーを使用することにより緩和することができる。このタイプのフィルム設計の例はカナダ国特許登録CA2,594,472号公報の表1に開示されている。本発明者らはここに多層フィルムのコア層におけるHDPEとLDPEの混合物を利用するもう一つの代替の設計を発見した。
【課題を解決するための手段】
【0013】
A. HDPE
本発明のフィルムに使用するために好適なHDPEは、ASTM D1505に定義されるように、0.950g/立方センチメートル(g/cc)から約0.970g/ccの密度を有する。好ましいHDPEもまた、0.955g/ccより大きい密度を有し、最も好ましいHDPEは0.958g/ccより大きい密度を有するエチレンの単独重合体である。好ましいHDPEはさらに0.3〜20g/10分、特に0.5〜10g/10分のメルトインデックス(I
2)(190°C、2.16kgの負荷でASTM D1238により計測され、「I
2」として通常参照される)を有する。
【0014】
HDPEの分子量分布(重量平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で割ることによって決定され、Mw及びMnはASTM D6474−99によるゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより決定される)は好ましくは2〜20であり、特に2〜10である。
【0015】
極めて好ましいHDPEは、異なる重合条件下で行う2つの反応器を使用した溶液重合工程により調製する。これは均一な、そのままで2つのHDPE混合成分を与える。この工程の例は、米国特許7,737,220号公報(Swabeyら)に記載されており、その開示はここに参照として取り込まれる。この「二重の反応」工程はまた、極めて異なるメルトインデックス値を有する混合物の調製を容易にする。(二重反応工程により調製された)混合物であって、第一のHDPE混合成分が0.5g/10分未満のメルトインデックス値(I
2)を有し、第二のHDPE混合成分は100g/10分より大きいI
2値を有するものを用いるのが特に好ましい。これらの混合物の第一のHDPE混合成分量は、好ましくは40〜60重量%(残りは第二の混合成分で100重量%となる)である。全部のHDPE混合組成物は、好ましくは3〜20のMWD(Mw/Mn)を有する。
【0016】
B. 核形成剤
核形成剤の用語は、ここでは、核ポリオレフィン組成物の調製の分野の当業者にとってその通常の意味で伝達する意味である。すなわち、ポリマー融解物を冷却するときのポリマーの結晶化挙動を変化させる添加物である。
【0017】
核形成剤は、ポリプロピレン成型組成物を調製し、ポリエチレンテレフタレート(PET)の成型特性を改善するために広く使用されている。
【0018】
核形成剤の総論は米国特許5,981,636号公報、米国特許6,466,551号公報及び米国特許6,559,971号公報に与えられており、それらの開示はここに参照として取り込まれる。
【0019】
本発明の多層フィルムは、「核HDPE」を含まなければならないコア層を含む。ここで用いられるように、「核HDPE」の用語はその単純な意味で伝達されるように意味され、つまり、核形成剤(パートBで示した)を含むHDPE(上記パートAで示した)を意味する。
【0020】
核形成剤は、好ましくは、HDPE中に良好に分散する。使用される核形成剤の量は、好ましくは、極めて少ない、重量で100万あたり100〜3000部(ポリエチレンの重量に基づく)であり、それゆえ当業者によって、確実に核形成剤を良好に分散させることができるように何らかの注意が必要であることは、理解されるであろう。ポリエチレンに細かく分散された形状(50ミクロン未満、特に10ミクロン未満)の核形成剤を加えることは、混合を促進するために好ましい。「物理的混合」(すなわち、核形成剤と固体形状の樹脂の混合物)に代わるものは核形成剤の「マスターバッチ」の使用である。「マスターバッチ」の用語は、少量のHDPE樹脂と、添加物(本発明においては核形成剤)を最初に融解混合する行為をさし、その後、その「マスターバッチ」とHDPE樹脂の残ったバルクとを融解混合する。
【0021】
核形成剤に対して1/2〜2/1重量比のステアリン酸金属塩(ステアリン酸亜鉛やステアリン酸カルシウムなど)を含むことが特に好ましい。理論にとらわれることを望むものではないが、ステアリン酸塩は核形成剤の分散を改善するであろうと考えられている。
【0022】
本発明に使用するために適切である核形成剤の例は、米国特許5,981,636号に開示されている環状有機構造(及び、その塩、例えばジシクロ[2.2.1]ヘプタンジカルボン酸二ナトリウム塩)、米国特許5,981,636号(米国特許6,465,551号(Zhaoら、Milliken)に開示されている)に開示されている構造の飽和型、亜鉛グリセロラート、米国特許6,559,971号(Dorsonら、Milliken)に開示されているヘキサヒドロフタル酸構造(又は「HHPA」構造)を有する特定の環状ジカルボン酸の塩、及び米国特許5,342,868号に開示されているリン酸エステル、及び旭電化工業株式会社からNA−11及びNA−21の商品名で販売されているものを含む。好ましいバリヤ核形成剤は環状ジカルボン酸及びそれらの塩であり、特に米国特許6,559,971号に開示されているHHPA構造の二価金属又は半金属塩(特に、カルシウム塩)である。明確にするために、一般的に、HHPA構造は環に6つの炭素原子と環構造の隣接する原子上の置換基である2つのカルボン酸基を有する環構造を含む。環中のその他の4つの炭素原子は、米国特許6,559,971号に開示されているように、置換されていてもよい。好ましい例は1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、カルシウム塩(CAS登録番号491589−22−1)である。
【0023】
C. LDPE
本発明のフィルムのコア層は、a)「核HDPE」とb)高圧、低密度ポリエチレン(若しくは「LDPE」)の混合物から調製される。
【0024】
コア層中の核HDPE及びLDPEの相対量は、5〜40重量%のLDPEと95〜60重量%の核HDPE(特に8〜20重量%LDPEと92〜80重量%の核HDPE)である。
【0025】
LDPEは、好ましくは、0.5〜3g/10分のメルトインデックスI
2(190°Cで2.16kgの重りを使用し、ASTM D1238で測定される)を有し、0.917〜0.922g/立方センチメートル(g/cc)の密度を有する。
【0026】
D. フィルム構造
三層フィルム構造はA−B−C層として記載することができる。ここで、内部層B(「コア」層)は二つの外部「表皮」層A及びCの間に挟まれる。多くの多層フィルムで、表皮層の一つ(若しくは両方)は良好な封止強度を与え、かつ典型的には密封材層と呼ばれる樹脂から作られる。
【0027】
表1は三層フィルム構造の比較を記載している(初出はカナダ国特許CA2,594,472号公報、Aubeeら)。例として示されるように、この種類の構造は非常に良好なカール耐性を与える。それはコア層と表皮層の両方(と、その他の表皮層を形成する密封材樹脂)に核HDPEを含んでいる。密封材樹脂はLDPE(上記パートCに記載した)である。
【0028】
しかしながら、表皮層がその他の樹脂(直鎖
状低密度ポリエチレン「LLDPE」、若しくは核形成剤を含んでいないHDPEなど)に置換されているとき、いくつかの「カール」がしばしば見られる。
【0029】
五層、七層及び九層のフィルム構造も本発明の範囲内である。当技術分野の当業者により理解されるように、ナイロンのコア層及び、従来のHDPE(又はLLDPE)と従来の密封材樹脂からなる表皮層を使用することにより優れたWVTR性能を有するバリヤフィルムを調製することは、既知である。これらの構造は、一般的に、外部層からナイロンコア層の分離を防ぐための「結合層」が必要である。いくつかの応用のために、上記の三層構造はナイロン(ポリアミド)コアの五層構造の代替として使用されるであろう。
【0030】
本発明による好ましい五層構造には、コア層におけるHDPE類の(核)混合物が、五層構造の機械特性及び破断特性を改善するために低密度ポリエチレン(例えば、LLDPE)からなる層と直接接している。これらの構造の二つの「表皮層」はポリエチレン、ポリプロピレン、環状オレフィン単独重合体から形成されることができ、それらの表皮層の一つは、最も好ましくは、密封材樹脂から形成される。
【0031】
七層構造はさらなる設計の柔軟性を可能にする。好ましい七層構造には、一つの層はナイロン(ポリアミド)、又は望ましいバリヤ特性を有する代替の極性樹脂、及び構造中にナイロン層を取り込む二つの結合層で構成される。ナイロンは比較的高価であり、使用することが難しい。本発明の七層構造により、(本発明のコア層の優れたWVTR性能により)より少ない量のナイロンを使用することが可能となる。カール挙動を1から5までの定性的スケールにして表す。MDカール及びTDカールは、フィルムがそれぞれ縦方向(MD)及び横方向(TD)においてカールする傾向を参照するものである。「0」の値はカールがないことを示し、5の値は極端なカールを示す。試験した異なる三層構造のまとめを表2に示す。
【0032】
多層フィルムのコア層は、好ましくは40〜70重量%の(2ミル未満の厚みを有する)薄いフィルムである。全てのフィルムにおいて、コア層は少なくとも0.5ミル厚であることが好ましい。
【表1】
【0033】
n.HDPE(コア層及び表皮層Aで用いられている)の用語は、核形成剤を含むHDPEと同一に扱う。
【0034】
E. その他の添加物
本発明のフィルムの調製に用いられるポリマーは、その他の従来型の添加物を含んでもよい。特に、(1)一次酸化防止剤(ビタミンEを含むヒンダードフェノールなど)、(2)二次酸化防止剤(特にホスファイト及びホスホナイト)、及び(3)加工助剤(特にフッ素エラストマ、及び/又はポリエチレングリコール加工助剤)を含んでもよい。
【0035】
F. フィルム押し出し成形工程
インフレーションフィルム工程
押し出し成形−インフレーションフィルム工程は、多層プラスチックフィルムの調製のためのよく知られた工程である。この工程は融解したプラスチックを加熱、融解及び搬送し、多数の環状口金を通してそれら押し進める多くの押出成形機に採用されている。典型的な押出温度は330〜500°Fであり、特に、350〜460°Fである。
【0036】
ポリエチレンフィルムは金型から引き出されてチューブ状に形成され、最終的には一対の延伸ローラ又はニップローラを通過する。内部圧縮空気はその後、マンドレルから導入され、チューブの径を増大させ、所望のサイズの「気泡」を形成する。したがって、インフレーションフィルムは二方向に引き伸ばされ、つまり軸方向(気泡の径を「膨らませる」強制空気を使用することによる)及び気泡の縦方向(機械を通して気泡を引く巻取り装置の動きによる)である。外部空気もまた、金型から出る際に、融解物を冷却するために気泡外周に導入される。フィルム幅は気泡中に多かれ少なかれ内部空気が導入されることにより異なり、それゆえに気泡サイズは増加又は減少する。フィルム厚さは、本質的に、引き下げ率を制御するために、延伸ロール又はニップロールの速度を増加する、又は減少することにより制御される。本発明において好ましい多層フィルムは1〜4ミルの合計厚を有する。
【0037】
気泡は次いで、延伸ロール又はニップロールを通過した後で速やかに崩壊して、フィルムの二つの二重層になる。冷却されたフィルムは次いでさらに消費者製品の様々な製造の為に切断又はシールすることにより加工されることができる。理論に縛られることを望むものではないが、一般的に、最終的なフィルムの物理特性は、ポリエチレンの分子構造及び製造条件の両方に影響されることは、インフレーションフィルム製造の当業者によって信じられている。例えば、製造条件は(縦方向及び軸又は横方向の両方における)分子配向の度合いに影響すると考えられている。
【0038】
「縦方向(MD)」と「横方向(TD)」(MDに対して垂直である)分子配向のバランスは、一般的に、本発明と関連する鍵となる特性に最も好ましいものであると考えられる(例えば、落槍衝撃強さ、縦方向及び横方向破断特性)。
【0039】
したがって、「気泡」上のこれらの延伸力は最終フィルムの物理特性に影響しうることが認識される。特に、「ブローアップ比」(すなわち、環状口金の直径に対する吹込み気泡の直径の比)は、最終フィルムの落槍衝撃強さ及び破断強度において重大な影響を有することがあるということが知られている。
【0040】
さらなる詳細は以下の実施例に与えられる。
【実施例】
【0041】
実施例1
フィルムはブランプトンエンジニアリング社により製造された三層共押出フィルムラインで製造した。2ミルの合計厚を有する三層フィルムを2/1のブローアップ比(BUR)を使用して調製した。
【0042】
「密封材」層(すなわち、表2のC層として同定される表皮層)を、別段の指示がない限り、約2g/10分のメルトインデックスを有する従来型の高圧、低密度ポリエチレン単独重合体から調製した。そのような低密度単独重合体は広く入手できる商業品であり、典型的には約0.915〜0.930g/ccの密度を有する。
【0043】
透湿度率(「WVTR」、特定のフィルム厚さ(ミル)での1日あたり100平方インチのフィルム当たりの水蒸気透過のグラム、すなわちg/100 in
2/日)を100°F(37.8°C)及び100%相対湿度の条件で、モダンコントロール社開発のMOCONパーマトロンでASTM F1249−90によって測定した。
【0044】
表2に示すように、いくつかのカールが、第一表皮層をLLDPE又はHDPEで調製したときに観測された。しかしながら、この問題は表皮層への核HDPEの添加(すなわち、核HDPE及び核のないHDPEの混合物、又はLLDPEと核HDPEの混合物を形成すること)により緩和することができた。表皮層におけるこれらの混合物の使用は、少量の「カール」を有するフィルムを製造することを確認した。(そして、そのようなフィルムは多くの最終使用/応用にとって満足のいくものとなるであろう。)
【0045】
驚くべきことに、コア層へのいくつかのLDPEの添加はわずかにカールする、又はカールの無い多層フィルムを製造することが確認された(発明のフィルム16−22を参照)。すなわち、核HDPEとLDPEの混合物から構成されるコア層の使用は、「フラットな」フィルムを製造することを観察した。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【0046】
表2のフィルムを製造するために使用したポリエチレン樹脂の簡単な説明を以下に与える:
LLDPE−A:0.65g/10分のメルトインデックス(I
2)及び0.916g/ccの密度を有するエチレン/オクテン共重合体
HDPE−A:0.95g/10分のメルトインデックス(I
2)及び0.958g/ccの密度を有するエチレン単独重合体
n.HDPE−1:1.2g/10分の密度及び0.966g/ccの密度を有する核HDPE
n.HDPE:HDPA−A単独重合体(上記)+核形成剤
LDPE−A:0.75g/10分のメルトインデックス(I
2)及び0.919g/ccの密度を有する高圧、低密度エチレン単独重合体
LDPE−2:2.2g/10分のメルトインデックス(I
2)及び0.923g/ccの密度を有する高圧、低密度エチレン単独重合体
HDPE−B:0.85g/10分のメルトインデックス(I
2)及び0.958g/ccの密度を有するエチレン単独重合体
HDPE−C:2.8g/10分のメルトインデックス(I
2)及び0.958g/ccの密度を有するエチレン単独重合体
−C:比較例
フッ素エラストマ工程(慣例的に融解破壊を低減するために用いられる型)を以下のフィルム:6、14、15、17、18及び28の表皮層Aに追加した。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の多層フィルムは多種多様の包装材の調製に適している。それらは特に、クラッカー及び朝食シリアルなどの「乾燥」食品の包装の調製に適している。