(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6283363
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】体外血液処置中に再循環を検出するためのデバイスおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61M 1/16 20060101AFI20180208BHJP
A61M 1/34 20060101ALI20180208BHJP
A61M 1/36 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
A61M1/16 111
A61M1/34 123
A61M1/36 141
【請求項の数】18
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-532322(P2015-532322)
(86)(22)【出願日】2013年9月10日
(65)【公表番号】特表2015-529116(P2015-529116A)
(43)【公表日】2015年10月5日
(86)【国際出願番号】EP2013002718
(87)【国際公開番号】WO2014044365
(87)【国際公開日】20140327
【審査請求日】2016年8月24日
(31)【優先権主張番号】102012018628.2
(32)【優先日】2012年9月21日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】61/703,845
(32)【優先日】2012年9月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508274323
【氏名又は名称】フレゼニウス メディカル ケア ドイチュランド ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 克博
(74)【代理人】
【識別番号】100129610
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 暁子
(72)【発明者】
【氏名】ニュルンベルガー、 トーマス
【審査官】
石川 薫
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−329747(JP,A)
【文献】
特開2009−136704(JP,A)
【文献】
特表2011−509131(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/14−1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体外血液処置装置用の再循環を検出するデバイスであって、前記体外血液処置装置が、
膜(2)によって第1のチャンバ(3)と第2のチャンバ(4)とに分割されたダイアライザ(1)またはフィルタの前記第1のチャンバ(3)に通じる動脈血ライン(6)、および前記ダイアライザまたはフィルタの前記第1のチャンバから出ている静脈血ライン(7)を有する体外血液回路(5A)と、
前記ダイアライザ(1)またはフィルタの前記第2のチャンバ(4)を含む液システム(5B)と、
前記動脈血ライン(6)を通して前記ダイアライザまたはフィルタの前記第1のチャンバに、および前記ダイアライザまたはフィルタの前記第1のチャンバから前記静脈血ライン(7)を通して事前設定の血流量Qbで血液を輸送するデバイス(8)と、
前記ダイアライザまたはフィルタの上流で前記動脈血ライン(6)において事前設定の代用液量Qsで代用液を前記血液に供給するデバイス(16)と
を含み、
前記再循環を検出するデバイスが、
前記動脈および/または静脈血ライン(6、7)の前記体外血液回路の圧力を測定するための測定ユニット(18)と、
前記圧力測定に基づいて再循環を検出するための評価ユニット(19)と
を含む、再循環を検出するデバイスにおいて、
前記血液を輸送するデバイス(8)および前記代用液を供給するデバイス(16)と協働する制御ユニット(17)を含み、前記制御ユニットは、前記再循環を検出する動作モードにおいて、
事前設定の時間間隔で、事前設定の第1の血流量Qb1が事前設定の第2の血流量Qb2まで減少されるように、前記血液を輸送するデバイス(8)が制御され、
前記事前設定の時間間隔で、代用液が、事前設定の代用液量Qsで、前記ダイアライザまたはフィルタの上流で前記動脈血ラインにおいて前記血液に送り込まれるように、前記代用液を供給するデバイス(16)が制御される
ように構成され、
前記評価ユニット(19)は、再循環の前記検出のために前記動脈および/または静脈血ラインにおいて前記圧力測定ユニット(18)によって測定される前記圧力が、前記圧力の変化に関してモニタされるように構成される
ことを特徴とする、再循環を検出するデバイス。
【請求項2】
前記評価ユニット(19)は、圧力上昇が前記動脈血ラインで検出されたとき、再循環の存在を知らせる制御信号が発生されるように構成されることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記評価ユニット(19)は、圧力低下が前記静脈血ラインで検出されたとき、再循環の存在を知らせる前記制御信号が発生されるように構成されることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記再循環を検出する前記デバイスが、前記評価ユニット(19)の前記制御信号を受け取る光学および/または音響信号ユニット(21)を含み、前記信号ユニットは、前記信号ユニットが前記評価ユニットからの前記制御信号を受け取ったとき前記信号ユニットが音響および/または光信号を発生するように構成されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記評価ユニット(19)は、前記動脈または静脈血ラインの前記圧力の前記変化の量が事前設定の閾値と比較されるように構成され、前記評価ユニット(19)は、前記圧力変化の前記量が前記事前設定の閾値よりも大きいときに再循環の存在を示す制御信号を発生することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記制御ユニット(17)は、前記再循環を検出する前記動作モードにおいて前記事前設定の時間間隔で代用液を前記供給するデバイス(16)が、事前設定の代用液量Qsと、第1の血流量Qb1と第2の血流量Qb2との間の差との間の差が特定の値に対応するように制御されるように構成されることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記特定の値がゼロであることを特徴とする請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記評価ユニット(19)は、前記動脈血ラインにおいて前記圧力測定ユニット(18)によって測定された前記圧力の前記変化の量と、前記静脈血ラインにおいて測定された前記圧力の前記変化の量との間の比が計算されるように構成されることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項9】
作動ユニット(20)が前記制御ユニット(17)のために設けられ、前記作動ユニットは、作動要素(20A)の作動の後、前記制御ユニットが前記再循環を検出する前記動作モードを選択するように構成され、前記血液を輸送するデバイス(8)および代用液を前記供給するデバイス(16)が制御されることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項10】
膜(2)によって第1のチャンバ(3)と第2のチャンバ(4)とに分割されたダイアライザ(1)またはフィルタの前記第1のチャンバ(3)に通じる動脈血ライン(5)、および前記ダイアライザまたはフィルタの前記第1のチャンバから出ている静脈血ライン(7)を有する体外血液回路(5A)と、
前記ダイアライザ(1)またはフィルタの前記第2のチャンバ(4)を含む液システム(5B)と、
前記動脈血ラインを通して前記ダイアライザまたはフィルタの前記第1のチャンバに、および前記ダイアライザまたはフィルタの前記第1のチャンバから前記静脈血ラインを通して事前設定の血流量Qbで血液を輸送するデバイス(8)と、
前記ダイアライザまたはフィルタの上流で前記動脈血ラインにおいて事前設定の代用液量Qsで代用液を前記血液に供給するデバイス(16)と
を含む体外血液処置装置において、
請求項1から9のいずれか一項に記載の前記再循環を決定するデバイスを含む
ことを特徴とする体外血液処置装置。
【請求項11】
体外血液処置装置のための再循環を検出するデバイスの作動方法であって、前記体外血液処置装置が、
膜によって第1のチャンバと第2のチャンバとに分割されたダイアライザまたはフィルタの前記第1のチャンバに通じる動脈血ライン、および前記ダイアライザまたはフィルタの前記第1のチャンバから出ている静脈血ラインを有する体外血液回路と、
前記ダイアライザまたはフィルタの前記第2のチャンバを含む液システム(5B)と、
前記動脈血ラインを通して前記ダイアライザまたはフィルタの前記第1のチャンバに、および前記ダイアライザまたはフィルタの前記第1のチャンバから前記静脈血ラインを通して事前設定の血流量Qbで血液を輸送するデバイスと、
前記ダイアライザまたはフィルタの上流で前記動脈血ラインにおいて事前設定の代用液量Qsで代用液を前記血液に供給するデバイスと
を含み、
測定ユニットが前記体外血液回路の圧力を前記動脈および/または静脈血ラインにおいて測定し、評価ユニットが前記再循環の検出を前記圧力測定に基づいて行う、再循環を検出するデバイスの作動方法において、
前記再循環を検出するデバイスは、制御ユニットをさらに有し、
前記制御ユニットは、前記再循環を検出する動作モードにおいて、事前設定の第1の血流量Qb1が、事前設定の時間間隔で事前設定の第2の血流量Qb2まで減少されるように前記血液を輸送するデバイスを制御し、かつ、代用液が、事前設定の代用液量Qsで、前記ダイアライザまたはフィルタの上流で前記動脈血ラインにおいて前記血液に前記事前設定の時間間隔で供給されるように前記代用液を供給するデバイスを制御し、
前記評価ユニットが、前記動脈または静脈血ラインにおいて圧力測定ユニットによって測定される前記圧力を、前記圧力の変化に関してモニタし、圧力変化があるときに再循環の存在を推定することを特徴とする、再循環を検出する、デバイスの作動方法。
【請求項12】
評価ユニットが、前記動脈血ラインにおいて前記圧力測定ユニットによって測定される前記圧力を、前記圧力の増加に関してモニタし、圧力の増加があるときに再循環の存在を推定することを特徴とする請求項11に記載の作動方法。
【請求項13】
評価ユニットが、前記静脈血ラインにおいて前記圧力測定ユニットによって測定される前記圧力を、前記圧力の減少に関してモニタし、圧力の減少があるときに再循環の存在を推定することを特徴とする請求項11に記載の作動方法。
【請求項14】
前記再循環を検出するデバイスは、光学および/または音響信号ユニットをさらに含み、圧力変化があるときに、前記光学および/または音響信号ユニットに音響および/または光信号が発生されることを特徴とする請求項11から13のいずれか一項に記載の作動方法。
【請求項15】
前記評価ユニットが、前記動脈または静脈血ラインの前記圧力の前記変化の量を事前設定の閾値と比較し、前記圧力変化の前記量が前記事前設定の閾値よりも大きいときに再循環の存在を推定すさることを特徴とする請求項11から14のいずれか一項に記載の作動方法。
【請求項16】
前記再循環を検出するための前記動作モードにおいて、前記制御ユニットが、事前設定の代用液量Qsと、第1の血流量Qb1と第2の血流量Qb2との間の差との間の差が特定の値に対応する代用液量Qsを選択することを特徴とする請求項11から15のいずれか一項に記載の作動方法。
【請求項17】
前記特定の値がゼロであることを特徴とする請求項16に記載の作動方法。
【請求項18】
評価ユニットが、前記動脈血ラインにおいて前記圧力測定ユニットによって測定された前記圧力の前記変化の量と、前記静脈血ラインにおいて測定された前記圧力の前記変化の量との間の比を計算することを特徴とする請求項11から17のいずれか一項に記載の作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体外血液処置装置用の再循環を検出するためのデバイス、および再循環を検出するためのデバイスを有する体外血液装置に関する。また、本発明は、体外血液処置中に再循環を検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
体外血液処置または清浄化のための様々な方法は、普通は尿によって除去される物質を取り除くために、および液回収のために使用される。血液透析において、患者の血液は体の外でダイアライザによって清浄化される。ダイアライザは血液チャンバと透析液チャンバとを含み、それらは半透膜によって分離される。処置の間、患者の血液は血液チャンバを通って流れる。血液を効果的に清浄化して、普通は尿によって除去される物質を除くために、新鮮な透析液が透析液チャンバを通って連続的に流れる。
【0003】
ダイアライザの膜を通る低分子物質の輸送は、血液透析(HD)の場合には透析液と血液との間の濃度差(拡散)によって本質的に決定されるが、血漿水に溶けている物質、特に、高分子物質は、血液濾過(HF)の場合にはダイアライザの膜を通って高い流量(対流)によって効果的に取り除かれる。血液濾過では、ダイアライザはフィルタとして機能する。血液透析濾過(HDF)は2つのプロセスの組合せである。
【0004】
血液(透析)濾過において、ダイアライザの膜を通して血液から取り除かれた液の一部は、一般にダイアライザの上流またはダイアライザの下流のいずれかで体外血液回路に送り込まれる無菌置換液(sterile substitution fluid)と置き換えられる。ダイアライザの上流での置換液の供給は前希釈とも呼ばれ、ダイアライザの下流での供給は後希釈とも呼ばれる。
【0005】
血液(透析)濾過の装置は既知であり、透析液は新鮮な水および濃縮物からオンラインで調製され、置換液は透析液からオンラインで調製される。
【0006】
既知の血液(透析)濾過装置において、置換液(代用液(substituate))は、機械の液システムから代用液ラインを介して体外血液回路に送り込まれる。前希釈では、代用液ラインはダイアライザまたはフィルタの上流で動脈血ラインの接続点につながるが、一方、後希釈では、代用液ラインはダイアライザまたはフィルタの下流で静脈血ラインの接続点につながる。
【0007】
血液透析、血液濾過、および血液透析濾過などの慢性血液清浄化治療の既知の方法では、血管接続(シャント)が、一般に、動脈と静脈との間に外科術で患者の血管系への通路として適用される。以下で「フィステル」について言及するとき、これは、患者の静脈と動脈との間の任意の種類の接続を意味すると理解されたい。
【0008】
フィステルを通って流れる血液は、実際の透析処置の間のみ使用される。透析がない期間には、フィステル中の血流は機能的左/右シャントに対応し、心拍出量(HMV)からの動脈血の一部は、抹消使用を迂回して、静脈系および心臓に直接送り込まれる。フィステル流は心臓および肺を介して再循環する。心拍出量中のフィステル流の比率は、心肺再循環として定義される。
【0009】
心肺再循環は、患者の循環系負荷だけでなく、透析の効率への影響がある。体外回路からの透析済み血液は、大きい身体循環からの静脈逆流と混合され、それによって、全身系循環区域を迂回するので、動脈血中の透析可能成分の濃度の系統的な低下が生じる(D. Schneditz等、Cardiopulmonary recirculation during haemodialysis. Kidney Int.42:1450〜1456、1992:非特許文献1)。
【0010】
フィステルの灌流が、フィステルの機能的能力にとって重要である。フィステル流が臨界値より低くなる場合、フィステル血栓症の危険性が血管アクセスのありうる損失を伴って増加し、それは、透析処置において無視できない合併症を意味する(W. Bay等、Color Doppler flow predicts PTFE graft failure、J. Am. Soc. Nephrol.5:407 (1994):非特許文献2)。透析処置中のフィステル流が体外血流(Q
B)よりも小さい場合、局所フィステル再循環が生じ、静脈血ラインによってフィステルにフィードバックされる透析済み血液の一部分が、動脈血ラインを介してダイアライザに再び送り込まれる。フィステル再循環R
Aは、透析効率に大幅な減少を引き起こす(F. Gotch、「Models to predict recirculation and its effects on treatment time in single−needle−dialysis」、First Intl. Symposium on Single−Needle−Dialysis、publisher: S. Rignoir、R. Vanholder and P. Ivanovich、Cleveland、ISAO Press、1984、305頁以下:非特許文献3)。それゆえに、血管アクセスの質の測定は透析処置の質保証の重要な手段である。
【0011】
国際公開第98/32477号(特許文献1)は、再循環R、すなわち、フィステル再循環(R
A)と心肺再循環R
CPとの合計を測定する方法を説明している。既知の方法では、透析液の物理的または化学的特性変数がダイアライザの上流の透析液経路で変えられ、血液側の物理的または化学的特性変数の変化がもたらされる。血液側の特性変数の変化は、ダイアライザの透析液チャンバの下流の透析液の特性変数の変化をもたらす。再循環を決定するために、ダイアライザの下流の透析液経路の特性変数が測定され、再循環Rは、特性変数の変化の時間関連経過から決定される。透析液イオン濃度、例えば、透析液のNa濃度、または透析液の温度が変化し、物理的または化学的特性変数として測定されうる。
【0012】
米国特許5830365号明細書(特許文献2)は心肺再循環を決定する方法を説明しており、心肺再循環を決定する方法は、血流の逆転の前後に自動的に実行される相次ぐ再循環率の2つの測定に基づいている。既知の方法は血流の逆転を必要とすることが欠点である。
【0013】
再循環を決定する方法であって、動脈または静脈血ライン中の血液の粘性が、代用液ポンプをオンに切り替えるおよび/またはオフに切り替えることによって変えられる方法が欧州特許出願公開第1595560号明細書(特許文献3)から分かる。血液の粘性の変化は、体外血液回路の静脈または動脈の側の圧力低下または圧力上昇をもたらし、それが、圧力変化に基づいて再循環を検出するために捕捉される。既知の方法は、代用液ポンプをオンに切り替える、および/またはオフに切り替えることにより代用液量の変化を可能にし、一方、体外血液回路の血液ポンプは事前設定の血流量で血液を輸送し続ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開第98/32477号
【特許文献2】米国特許5830365号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第1595560号明細書
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】D. Schneditz等、Cardiopulmonary recirculation during haemodialysis. Kidney Int.42:1450〜1456、1992
【非特許文献2】W. Bay等、Color Doppler flow predicts PTFE graft failure、J. Am. Soc. Nephrol.5:407 (1994)
【非特許文献3】F. Gotch、「Models to predict recirculation and its effects on treatment time in single−needle−dialysis」、First Intl. Symposium on Single−Needle−Dialysis、publisher: S. Rignoir、R. Vanholder and P. Ivanovich、Cleveland、ISAO Press、1984、305頁以下
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の根底にある問題は、体外血液処置中のフィステルの状態の検査を大きい費用なしにルーチン的に実行できるように、体外血液処置中に再循環を迅速にかつ確実に検出することができるデバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明によれば、この問題への解決策が独立請求項の特徴によって行われる。従属請求項の主題は本発明の有利な実施形態に関連する。
【0018】
本発明によるデバイスおよび本発明による方法は、置換液(代用液)のボーラスの投与による目標設定した血液希釈に基づく。体外回路に流れる液の粘性の変化によって、血液希釈は、体外血液回路の静脈枝および動脈枝の圧力状態に変化をもたらす。再循環は、体外回路の圧力変化の検出に基づいて検出される。圧力変化は、動脈血ラインの圧力の増加または静脈血ラインの圧力の低下として現われうる。
【0019】
本発明によるデバイスおよび本発明による方法は、代用液のボーラスの投与中の血流量の目標設定した減少によって特徴づけられる。体外血液処置の間、血流量は、事前設定の時間間隔内に、以下で第1の血流量と呼ぶ事前設定の現在の血流量から、以下で第2の血流量と呼ぶ血流量まで減少される。第2の血流量は、医師が事前設定できる最小血流量に対応することが好ましい。本発明によれば、血流量の減少は、代用液のボーラス投与によって再び少なくとも部分的に補償される。事前設定の時間間隔における血液の体積の減少は、代用液によって完全に取って代わられることが好ましい。ボーラス投与は血流量の減少と同時に行われるべきであり、すなわち、血液処置が減少された血流量で行われる事前設定の時間間隔は、代用液ボーラスが投与される時間間隔に対応すべきである。しかしながら、血流量の減少の時間間隔とボーラス投与の時間間隔との間に、ある一定の時間シフトを事前設定することもできる。
【0020】
代用液の同時ボーラス投与および血流量の減少を用いて、体外回路を通って流れる液の組成、すなわち、代用液で希釈された血液が再循環の検出のために最適化されることが示されている。時間間隔内の血流量および代用液量の目標設定した変化から、体外回路の静脈枝および動脈枝でかなり大きい圧力変化が起き、それは、再循環の検出のために高度の信頼性で捕捉することができる。したがって、試験方法の感度および信頼性が全体的に改善される。
【0021】
再循環を検出するための本発明によるデバイスは、別個のアセンブリを形成することができ、または体外血液処置装置の構成要素とすることができる。
【0022】
再循環を検出するための本発明によるデバイスは、本発明による方法を行うための主要構成要素を既に含んでいる血液処置装置の構成要素であることが好ましい。
【0023】
再循環を決定するためのデバイスは、動脈および/または静脈血ラインの体外回路の圧力を測定するための測定ユニットと、圧力測定に基づいて再循環を検出するための評価ユニットとを含む。また、再循環を検出するためのデバイスは、血液を血液処置装置に輸送するためのデバイスおよび代用液を血液処置装置に供給するためのデバイスと協働する制御ユニットを含む。制御ユニットは、再循環を検出するための動作モードを設定し、血液を輸送するためのデバイスは、事前設定の第1の血流量Q
b1が、事前設定の時間間隔で第2の血流量Q
b2まで減少されるように制御され、代用液を供給するためのデバイスは、代用液が、事前設定の時間間隔で、事前設定の代用液量Q
sで、ダイアライザまたはフィルタの上流で動脈血ラインにおいて血液に供給されるように制御される。輸送量は一定とすることができ、または特定のプロファイルを有する、例えば、事前設定の時間間隔内で連続的にまたは不連続的に上昇または下降することができる。
【0024】
好ましい実施形態では、制御ユニットは、再循環を検出するための動作モードにおいて事前設定の時間間隔で代用液を供給するためのデバイスが、事前設定の代用液量Q
sと、第1の血流量Q
b1と第2の血流量Q
b2との間の差との間の差が特定の値に対応するように制御されるように構成される。したがって、血流量の減少は、代用液の供給によって少なくとも部分的に補償される。しかしながら、特定の値がゼロであり、その結果、完全な補償が行われることが好ましい。
【0025】
特に好ましい実施形態は、圧力変化が検出されたとき評価ユニットが再循環の存在を知らせる制御信号を発生するように準備し、再循環を決定するためのデバイスは、評価ユニットの制御信号を受け取る光学および/または音響信号ユニットを含み、前記信号ユニットは、信号ユニットが評価ユニットからの制御信号を受け取ったとき音響および/または光信号を発生する。
【0026】
体外血液回路の静脈枝の圧力低下は、最初に、血流の減少に伴うボーラス投与に起因する血液希釈のために生じる。再循環がある場合、血液容量の一部は、血液回路の動脈枝に直接進み、それは、動脈カニューレでの圧力低下が、粘性の減少のために減少するので、血液回路の動脈枝に時間シフトされた圧力上昇をもたらす。その結果、再循環を、血液回路の動脈枝の圧力上昇によって検出することができる。
【0027】
特に好ましい実施形態では、評価ユニットは、動脈または静脈血ラインの圧力変化の量が事前設定の閾値と比較されるように構成され、評価ユニットは、圧力変化の量が事前設定の閾値よりも大きいときに再循環の存在を示す制御信号を発生する。しかしながら、他の評価方法を使用して、再循環を検出することもできる。唯一重要な点は、再循環による圧力上昇が検出されることである。
【0028】
一般に、それは、再循環が検出されて、血管アクセスの状態に関する情報が得られる場合、十分である。しかしながら、再循環を検出するための本発明によるデバイスは、さらに、再循環の決定を可能にする。再循環の百分率比率を計算するために、評価ユニットは、動脈血ラインで測定された圧力の変化の量と静脈血ラインで測定された圧力の変化の量と間の比が計算されるように構成されることが好ましい。圧力測定ユニットで測定された圧力信号の積分が、互いに関係づけられることが好ましい。
【0029】
再循環は、本発明によるデバイスが再循環を検出したらすぐに、先行技術で既知の他の方法を用いて正確に決定することもできる
【0030】
再循環試験を迅速に開始するために、さらに特に好ましい実施形態は、制御ユニットのための作動ユニットを提供し、作動ユニットは、作動要素の作動の後、制御ユニットが再循環を検出するための動作モードを選択し、その結果、これに必要なプロセスステップが自動的に実行されるように構成される。したがって、再循環試験が迅速に開始され、次に、自動的に実行されうる。作動ユニットは、機械スイッチもしくは押しボタン、またはタッチスクリーンのオペレータパネルとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】再循環を検出するためのデバイスを有する体外血液処置装置を非常に簡単化した図表示で示す図である。
【
図2】ボーラス投与中の体外血液回路の流量を示す図である。
【
図3】再循環がある状態でボーラス投与中の体外血液回路の動脈枝および静脈枝における圧力の時間関連経過の実施形態の第1の例を示す図である。
【
図4】再循環がある状態でボーラス投与中の体外血液回路の動脈枝および静脈枝における圧力の時間関連経過の実施形態の第2の例を示す図である。
【
図5】再循環が生じていないときのボーラス投与中の体外血液回路の動脈枝および静脈枝における圧力の時間関連経過を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の実施形態の一例を、図面を参照することによって以下で詳細に説明する。
【0033】
図1は、再循環を検出するためのデバイスを含む体外血液処置装置の主要構成要素のみを簡単化した図表示で示す。
【0034】
現在の血液処置装置は血液(透析)濾過装置であり、血液(透析)濾過装置は、以下では血液チャンバと呼ぶ、血液が流れる第1のチャンバ3と、ダイアライザ液チャンバと呼ぶ、透析液が流れる第2のチャンバ4とに半透膜2によって分離されたダイアライザ1を含む。第1のチャンバ3は体外血液回路5Aに組み込まれ、一方、第2のチャンバ4は血液(透析)濾過装置の透析液システム5Bに組み込まれる。
【0035】
体外血液回路5Aは、動脈カニューレ6aから血液チャンバ3の入口3aに通じる動脈血ライン6と、ダイアライザ1の血液チャンバ3の出口3bから出ており、静脈カニューレ7aに通じる静脈血ライン7とを含む。動脈カニューレおよび静脈カニューレは患者のフィステル(シャント)に接続される(前記フィステルは示されていない)。患者の血液は、動脈血ライン6に配設される動脈血ポンプ8によってダイアライザ1の血液チャンバ3を通して送出される。血液ポンプ8は、第1の血流量と呼ぶ事前設定の血流量Q
bでダイアライザの血液チャンバ3に血液を送り込む。第1の血流量は血液処置中に変えることができる。血液ライン6、7およびダイアライザ3は、透析処置のために透析装置に挿入される1回限りの使用を意図した使い捨て品を形成する。気泡を除去するために、エアセパレータ(ドリップチャンバ)を動脈ラインおよび静脈血ラインに組み込むことができる。
【0036】
新鮮な透析液が透析液源9において調製される。透析液源9から、透析液供給ライン10は、ダイアライザ1の透析液チャンバ4の入口4aに通じる。透析液排出ライン11は、透析液チャンバ4の出口4bからドレイン12に通じる。透析液ポンプ13は透析液排出ライン11に組み込まれる。
【0037】
透析処置の間、代用液源15から代用液ライン14を介して体外血液回路5Aまで置換液(代用液)を送り込むことができる。置換ライン14は、血液ポンプ8の下流にあり、ダイアライザ1の血液チャンバ3の上流にある動脈血ライン6のラインセグメントに接続される。代用液は代用液ポンプ16で輸送され、代用液ポンプ16は事前設定の代用液量Q
sで動脈血ライン6に代用液を送り込む。代用液は、処置の間透析液から調製される液とすることができる。しかしながら、代用液は、代用液源で調製される液、例えば、料理用食塩水とすることもできる。
【0038】
再循環を検出するためのデバイスは制御ユニット17を含み、それは、血液処置装置の中央制御計算ユニットの構成要素とすることができる。血液ポンプ8および代用液ポンプ16は、再循環を検出するためのデバイスの制御ユニット17に制御線8’、16’を介して接続される。制御ユニットは、ポンプ8、16をオンおよびオフに切り替え、ポンプの特定の流量を事前設定する。
【0039】
また、再循環を検出するためのデバイスは、血液ポンプ8の上流で動脈血ライン6の圧力を測定するための動脈圧センサ18Aと、ダイアライザの血液チャンバの下流で静脈血ライン7の圧力を測定するための静脈圧センサ18Bとを有する測定ユニット18を含む。動脈圧センサ18Aおよび静脈圧センサ18Bはデータ線18A’および18B’を介して測定ユニット18に接続され、測定ユニット18は、データ線18’を介して、再循環を検出するためのデバイスの評価ユニット19に接続され、前記評価ユニットはデータ線19’を介して制御ユニット17に再び接続される。
【0040】
さらに、再循環を検出するためのデバイスは、作動要素20A、例えば押しボタンを有する作動ユニット20と、光学および/または音響信号送信器21Aを含む信号ユニット21とを含む。血液処置装置の構成要素とすることもできる作動ユニット20および信号ユニット21は、制御線20’およびデータ線21’を介して制御ユニット17に接続される。
【0041】
制御ユニット17は、本発明による方法を行うのに必要とされるステップを実行するためにデータ処理プログラムが走るデータ処理ユニット(マイクロプロセッサ)とすることができる。制御ユニットの機能のモードは、以下で詳細に説明する。制御ユニットは、血液処置装置の個々の構成要素が以下のように制御されるように構成される(プログラムされる)。
【0042】
血液処置の間、血液ポンプ8は、事前設定の第1の血流量Q
b1で血液を輸送し、第1の血流量Q
b1は血液処置中に変更することができる。再循環試験を開始するために、作動要素20Aを作動させる、例えば、押しボタンが押される。押しボタンが押された後、制御ユニット17は再循環を検出するための動作モードを選択し、その結果、血液ポンプ8および代用液ポンプ16は、血流の減少に伴って代用液ボーラスを投与するように制御される。制御ユニット17は、血液ポンプ8が、事前設定の時間間隔ΔT内に、減少した第2の血流量Q
b2で血液を輸送するように構成される(プログラムされる)。制御ユニット17は、第1の血流量Q
b1と第2の血流量Q
b2との間の差を計算し、第1の血流量Q
b1と第2の血流量Q
b2との間の差に対応する代用液量Q
sに対する量を事前設定する。
【0043】
図2は、異なる流量に対するボーラス投与中の代用液量Q
sの選択を示す。血流量は、値Q
b1から最小値Q
b2=Q
min、例えば、50ml/minに減少される。ボーラス投与の前の血流量Q
b1が400ml/minの場合、例えば、ボーラス投与中の代用液量Q
sについては350ml/minの値という結果になり、それから、合計Q
G=Q
s+Q
b2として、再び400mlの値という結果になる。
【0044】
再循環検出のための動作モードでは、測定ユニット18の動脈圧センサ18Aおよび静脈圧センサ18Bが動脈血ライン6および静脈血ライン7の圧力を測定し、評価ユニット19が圧力信号を評価する。
【0045】
図3は、静脈圧p
v(mbar)および動脈圧p
a(mbar)の測定された時間関連経過を示す。血流の減少に伴う代用液ボーラスの後、血液希釈のために、特定の量だけの圧力低下Iが静脈血ライン7で検出され、血圧上昇IIが動脈血ライン6で検出され、それらは記号IおよびIIで表されている。実施形態のこの例では、再循環の量は20%になる。比較のために、
図4は、40%の再循環での静脈圧p
v(mbar)および動脈圧p
a(mbar)の時間関連経過を示し、一方、
図5は、再循環がないときの静脈圧p
v(mbar)および動脈圧p
a(mbar)の時間関連経過を示す。動脈圧上昇は再循環の場合にのみ認めることができることが見て明確に分かる。
【0046】
図3から5に示した圧力信号の特性経過は、血液の粘性の変化に起因する。ボーラス投与のために、血液チャンバの下流の静脈血ライン7の血液の粘性は、代用液の供給によって減少する。その結果、より小さい圧力低下が静脈カニューレ7aで生じる。したがって、静脈圧が低下する。その後すぐに、静脈血ライン7の血液の粘性は再び増加し、その結果、静脈圧は再び上昇する。フィステル再循環のために、希釈された血液の一部がフィステルを介して動脈血ライン6に直接進み、それは粘性の低下をもたらし、そのために動脈血ラインの圧力(負圧)は上昇する。評価ユニット19は、動脈圧上昇または静脈圧低下から、フィステル再循環が存在すると結論を下す。この点に関して、評価ユニット19は、動脈血ライン6の血圧上昇の量を決定し、その量を事前設定の閾値と比較する。代替として、評価ユニット19は、静脈血ライン7の圧力低下の量を決定することもでき、その量を事前設定の閾値と比較する。圧力のかなり大きい変化によって閾値が超えられる場合、評価ユニット19は再循環を知らせる制御信号を発生する。信号ユニット21は、評価ユニット19の制御信号を制御ユニット17を介して受け取り、その結果、信号送信器21は音響的および/または光学的警報を発生する。次に、処置を行う医師は必要な措置を取ることができる。
【0047】
本発明によるデバイスは、さらに、再循環の決定を可能にする。動脈圧センサの動脈圧信号の最大変化の量と、静脈圧センサの静脈圧信号の最大変化の量との間の比は、再循環の指標として役立つ。再循環Rez[%]は、評価ユニットによって以下の式により計算される。
【0048】
しかしながら、得られたヘマトクリット変化ΔHktと、静脈および動脈の側の測定された圧力変化(Δp
aおよびΔp
v)との間の関係は線形ではない。また、血流Q
b、カニューレの形状寸法、特に、その直径、および絶対ヘマトクリット値への依存性がある。それゆえに、本発明によるデバイスは、Q
bおよびQ
sが一定である定義された条件下での測定を可能にし、その結果、再循環Rez[%]を十分な精度で上述の式により決定できることが好ましい。
【0049】
血液の減粘の代わりの増粘に基づく測定と対照して、ダイアライザが詰まりを起こすことがあるか、または血栓がホース系に現われることがあるという問題が生じない。また、測定結果への心肺再循環からの影響が、本発明による測定法では、血液希釈直後の圧力変化を検出することにより現われない。