(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
例えば、X線やγ放射線などのイオン化放射線用の半導体検出器は、天文学及び非破壊試験の先行技術(特に医療分野)において周知である。
【0003】
そのような検出器が撮像に使用されるとき、検出器は、入射光子の空間識別ができなければならない。
【0004】
一般に撮像に使用されるイオン化放射線検出器構造を
図1に示す。
【0005】
この検出器100は、半導体素子110を含み、半導体素子110の前側は、入射放射線に晒され、第1の電極120で覆われ、後側は、一次元又は二次元周期配列で分散された複数の第2の基本電極130
iで覆われる。したがって、場合によって、第2の基本電極は、一次元で周期的に分散されたストリップ、又は二次元で周期的に分散されたブロックの形をとることができる。以下では、配列が一次元か二次元かにかかわらず、慣例的に、そのような第2の電極にピクセルという名前を使用する。
【0006】
一方の第1の電極と他方の第2の基本電極との間に高電圧が印加される。図示された事例では、第1の電極は陰極として働き、第2の電極は陽極として働く。
【0007】
検出器に入射しエネルギーが半導体の禁制帯よりも大きい光子は、電子正孔対を生成し、半導体内の電界の効果によって、電子が陽極の方に移動し、正孔は陰極に向かう。一般に、入射光子は、そのエネルギーに応じて、半導体と相互作用する際に1つ又は複数の電子正孔対を生成でき、各対は、指示された挙動を示す。
【0008】
第2の基本電極又はピクセル130
iはそれぞれ、前置増幅器140
iに接続される。収集された電荷に比例し、光子によって与えられたエネルギーに比例するピクセル130
iからの信号は、前置増幅器140
iによって増幅され、次にアナログ符号変換器150
iによってデジタル化され、その後で、一般にASIC又はFGPA回路の形のデジタル信号処理(DSP)集積回路160
iによって処理される。
【0009】
したがって、入射光子が半導体と相互作用するとき、相互作用位置の右側にあるピクセルは、前置増幅器への入力におけるパルスで表された電荷を収集する。したがって、処理の後で、「作用を受けた」ピクセル、換言するとこの電荷を収集したピクセルを決定し、そのピクセルから相互作用点の座標を、ピクセル化ステップと等しい精度、即ちピクセルの空間的周期と等しい精度で決定できる。
【0010】
しかしながら、相互作用点の決定は、2つの妨害現象による作用を受けることがある。
【0011】
第1のいわゆる「電荷共有」現象は、ピクセル化間隔が、相互作用中に作成された電荷雲のサイズより小さいときに起こる。そのような状況では、様々な電荷、例えばピクセル型陽極の場合には電子が、隣接ピクセルによって収集されてもよい。この現象の程度は、更に、検出器の幾何学形状、入射光子のエネルギー、及び相互作用の深さに依存する。
【0012】
第2の現象は、いわゆる「誘導電荷」の現象である。実際には、電荷キャリアが生成されて半導体110中を移動するとき、その電荷キャリアは、基本電極130
i内に電流を生じさせる。被作用ピクセルのまわりのピクセルからの出力では、電子は、正孔の移動度よりも大きい移動度を有するので、一般に、最初に正ローブが現れ、次に負ローブが現われ、符号反転の瞬間は、電子が被作用ピクセルによって収集された瞬間に対応する。電荷誘導現象は、文献で広く述べられており、特許文献1を参照されたい。
【0013】
ピクセル型半導体の空間分解能を改善する第1の方法は、ピクセル化間隔を小さくすることである。しかしながら、前述の電荷共有現象によって、達成される分解能を大幅に改善することもできず、また光子によって与えられるエネルギーを正確に推定することもできない。更に、きわめて多数の増幅器、ADCコンバータ及び処理回路を必要とし、検出器が複雑で高価になる。更に、この結果として、回路内の検出器の成ハイブリッド化が難しくなる。
【0014】
第2のより有望な方法は、ピクセル化間隔より小さい分解能を達成するために幾つかの隣接ピクセルから来る信号を処理することからなる。
【0015】
特許文献2は、光子の相互作用の位置が検出器のピクセル化間隔より小さい分解能で得られる検出器について記載している。より正確には、特許文献2は、相互作用時に被作用ピクセルと隣接ピクセルから来る信号のそれぞれの値を補間して、その瞬間における電荷プロファイルを取得し、そのように取得したプロファイルを、ピクセル化間隔より小さい距離だけ離間された相互接続点に関して計算されかつ取得されたプロファイルに最も近い標準的プロファイルと比較して、相互作用点の座標を提供することを提案する。しかしながら、この方法は、信号がきわめて小さいときに作用を受けたピクセルに隣接したピクセルからの信号を使用し、その結果、そのような信号が通常、ノイズによってかき消されるという欠点を有する。したがって、この結果、相互作用点の座標に大きな誤差が生じる可能性がある。
【0016】
前述の特許文献1は、また、被作用ピクセルに隣接したピクセルから来る過渡信号を使用して検出器の空間分解能を改善する方法について述べている。より正確には、被作用ピクセルの左側の隣接ピクセルから来る信号と、被作用ピクセルの右側の隣接ピクセルから来る信号との差から得た反応差を計算し、この反応差の振幅ピークから相互作用点の位置を導出することを提案する。この方法の欠点は、やはり、特に相互作用位置が被作用ピクセルの中心に近いときにノイズに極めて弱くなることである。実際に、反応差の振幅がきわめて小さいこの事例では、隣接ピクセルに生じた電荷は、当該のピクセルの中心のまわりに対称的に分散される。この結果、振幅ピークが、ノイズによってかき消されることがあり、誤差は、相互作用位置の推定に悪影響を及ぼす。
【0017】
したがって、本発明の1つの目的は、ピクセル化間隔より小さい空間分解能を達成できるピクセル型半導体検出器を用いてイオン化放射線を検出し、同時にノイズに関して相互作用位置の十分に頑強な推定を行うことを保証する方法を提案することである。本発明の別の目的は、前記方法を実現できるピクセル型半導体検出器構造を提案することである。最後に、本発明の副次的な目的は、そのようなピクセル型半導体検出器を較正する方法を提案することである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、幾つかのピクセルにピクセル化された半導体検出器を活用してイオン化放射線を検出する方法であって、
各ピクセルが、前記検出器と前記イオン化放射線との相互作用の際に集まる電荷の特性である信号を提供し、
前記方法は、
(a)所定のしきい値を超える信号振幅を有する、被作用ピクセルと呼ばれるピクセルを決定するステップと、
(b)前記被作用ピクセルの信号から、衝突瞬間と呼ばれる瞬間を決定し、第1の所定の時間シフトを用いて前記衝突瞬間から決定された第1の瞬間を得るステップと、
(c)前記被作用ピクセルに隣接した少なくとも1つのピクセルに対して、前記第1の瞬間における前記隣接したピクセルの信号の測定値を決定するステップと、
(d)前記測定値から前記イオン化放射線の記相互作用点の少なくとも1つの座標を推定するステップと、を含む方法。
【0020】
前記ステップ(b)は、前記衝突瞬間から第2の所定の時間シフトによって第2の瞬間を決定するステップを含み、前記第1の瞬間は前記衝突瞬間の前であり、前記第2の瞬間は前記衝突瞬間の後であり、前記ステップ(c)は、前記第1の瞬間と前記第2の瞬間との間における前記隣接したピクセルの信号の偏差を決定するステップを含む。
【0021】
前記第1と第2の瞬間が、前記信号偏差の最大統計分散を示すものとして決定されると有利である。
【0022】
ステップ(c)で、作用を受けた点に隣接するピクセルQの集合Vの信号のそれぞれの偏差M
Qが決定され、ステップ(d)では、前記イオン化放射線の相互作用点の座標が、前記偏差から推定される。
【0023】
第1の実施形態によれば、前記相互作用点の前記座標xが、条件付き確率p(M
Q|x
i),Q∈Vを共に最大化することで最尤法を用いて推定され、
ここで、x
iは、前記座標の複数の離散した可能な値であり、前記条件付き確率関数p(M
Q|x
i)は、較正又はシミュレーションステップで事前に決定されている。
【0024】
次に、前記相互作用点の前記座標xが次式によって推定される。
【数1】
【0025】
第1の実施形態の変形によれば、前記相互作用点の座標xが、次式の前記条件付き確率
【数2】
とQ∈Vを一緒に最大化することによって、前記最尤法を用いて推定され、
ここで、次式
【数3】
は、前記被作用ピクセルの信号のエネルギーE
0によって正規化された偏差であり、
x
iは、前記座標の複数の離散した可能な値であり、
前記条件付き確率関数は、較正又はシミュレーションステップで事前に決定されている、
【0026】
次に、相互作用点の座標xは、以下の式によって推定されうる。
【数4】
【0027】
第1の実施形態の別の変形によれば、前記相互作用点の前記座標xが、前記条件付き確率p(M
Q|x
i)並びに条件付き確率P(E
0|x
i)を共に最大化することで前記最尤法を用いて推定され、
ここで、E
0は、前記被作用ピクセルのエネルギーを表わし、x
iは、前記座標の複数の離散した可能な値であり、
前記条件付き確率関数p(M
Q|x
i)とP(E
0|x
i)が、較正又はシミュレーションステップで事前に決定されている。
【0028】
相互作用点の座標xは、以下の式によって推定されうる。
【数5】
【0029】
第2の実施形態によれば、相互作用点の座標は、以下の式によって推定されうる。
【数6】
【0030】
ここで、B
xが、それぞれの偏差M
Qによって重み付けされたVのピクセルと、前記衝突時間における前記被作用ピクセルの信号の振幅によって重み付けされた被作用ピクセルとの共通重心の座標であり、U(B
x)が、較正又はシミュレーションによって決定された前記検出器の均一照射下のB
xの分散を均一にする関数である。
【0031】
関数U(B
x)は、U(B
x)=p[F(B
x)−1/2]によって有利に決定され、pは、検出器のピクセル化間隔であり、F(B
x)は、検出器の均一照射の下の共通重心B
xの分布関数である。
【0032】
本発明は、イオン化放射線に晒され、第1の電極で覆われた前側と、ピクセルとして知られる複数の基本電極で覆われた後側とを有する半導体素子を含むイオン化放射線検出器であって、
各ピクセルは、前記半導体素子との前記イオン化放射線の相互作用の際に前記ピクセルから来る電荷信号を読み取るのに適切な読取りチャネルと関連付けられ、
前記検出器が、ピクセルの各読取りチャネルに対して、
前記読み取った信号を所定のしきい値と比較し、前記ピクセルが作用を受けたかどうかを示すブール信号を生成する弁別手段と、
前記ピクセルが作用を受けたことを前記ブール信号が示すときに、前記衝突瞬間と呼ばれる読み取った信号が最大値に達した瞬間を決定する同期手段と、
前記衝突瞬間を受け取り、前記被作用ピクセルに隣接した1組のピクセルから読み取った信号のサンプルを記憶するように意図された記憶手段を前記衝突瞬間の関数として制御する制御手段とを備え、
前記検出器は、隣接ピクセルの前記集合の少なくとも1つのピクセルから読み取られた信号の測定値を得るように構成され、前記得られた測定値から前記相互作用点の少なくとも1つの座標を決定する処理ユニットをさらに含む。
【0033】
前記処理ユニットは、隣接ピクセルの前記集合から読み取られた信号のそれぞれの偏差を計算するように構成され、
前記偏差は、衝突瞬間前の第1の瞬間と衝突瞬間後の第2の瞬間との間で計算され、
前記処理ユニットは、前記得られた偏差から前記相互作用点の少なくとも1つの座標を決定する、ことが好ましい。
【0034】
前記読取りチャネルによって読み取られた前記信号は、前記同期手段と記憶手段の上流のフィルタリング手段によってフィルタリングされると有利である。
【0035】
第1の実施形態によれば、前記イオン化放射線検出器は、メモリを含み、前記メモリには、前記集合に属する各隣接ピクセルに対して、前記座標x
i,i=1,...,Nの複数の離散値に関する偏差の条件付き確率p(M
Q|x
i)が記憶される。
【0036】
前記イオン化放射線検出器は、メモリを含み、前記メモリには、前記集合に属する各隣接点に対して、前記ピクセルに対して読み取られた前記信号の前記偏差の統計的分布を提供するテーブルが記憶される。
【0037】
本発明は、上記イオン化放射線検出器を較正する方法に関し、
前記検出器が、複数の座標点x
i,i=1,...,Nを連続的に照射するように高度に平行化されたビームで掃引され、
そのように照射された各点に関して、前記被作用ピクセルに隣接した画素の集合から読み取られた信号のそれぞれの偏差M
Qが各被作用ピクセルに対して計算され、
前記偏差は、前記第1の瞬間と第2の瞬間の間で計算され、
照射される各点に関して、前記偏差p(M
Q|x
i)の統計的分布を提供するテーブルが更新される。
【0038】
更に、作用を受けたピクセルに隣接したピクセルの集合から読み取られた信号の偏差が、前記テーブルを更新する前に前記被作用ピクセルからの前記信号のエネルギー(E
0)によって正規化されてもよい。
【0039】
本発明は、イオン化放射線検出器を較正する方法に関し、
前記検出器は、均一イオン化放射線を用いて照射され、
前記被作用ピクセルに隣接したピクセルの集合から読み取られた前記信号の前記それぞれの偏差M
Qが作用を受けた各ピクセルに対して計算され、
前記偏差は、前記第1と第2の瞬間の間で計算され、
前記ピクセルから読み取られた前記信号の前記偏差の前記統計的分布を提供するテーブルが前記集合(Q∈V)に属する各隣接ピクセルに対して更新される。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下に、前述した意味でピクセル化されたイオン化放射線検出器を考察する。ピクセルは、
図2に示されたような2つの直交方向Ox及びOyに沿って配列され、Ox方向のピクセル化間隔(Ox方向のピクセルの空間的周期p
x)が、方向Oyのピクセル化間隔(方向Oyのピクセルの空間的周期p
y)と同じ(p
x=p
y=p)であると仮定する。しかしながら、本発明は、これらの空間的周期が異なる場合に適用されることは明らかである。また、電荷共有効果を無視できるほどピクセル化間隔が十分に大きくまたピクセルのサイズが十分に大きいと仮定する。例えば、ピクセルのサイズは、mm程度のものでよく、そのサイズは、半導体との相互作用によって生じる電荷雲の空間範囲(約100μm)よりもかなり大きい。
【0042】
単に説明のために、ここでは、ピクセルは陽極であり陰極が検出器の入射放射線に晒される側を覆うと仮定する。しかしながら、本発明は、ピクセルが陰極であり共用陽極が検出器の入射放射線に晒される側を覆う対称的な事例にも適用される。
【0043】
検出器の原点Oは、被作用ピクセルであると仮定されるピクセルn,200、即ち、光子と半導体との相互作用から生じる電子を収集するピクセルの中心として任意に選択された。更に、検出器のOxy平面内の相互作用点の投射が、Pによって表わされる。
【0044】
ピクセルnから来る信号S
nは、電荷信号としても知られ、収集電荷、即ち、相互作用点において入射光子によって半導体に供給されたエネルギーの関数である。
【0045】
信号S
nは、例えば既知のカスプフィルタを使用して有利にフィルタリングされる。このフィルタは、フォームe
−|t|/τのパルス応答を示す。あるいは、信号S
nは、ガウスパルス応答フィルタを使用してフィルタリングされてもよい。
【0046】
一般的に、使用されるフィルタは、収集電荷に比例する特性(振幅及び/又は積分)を有するパルスを得るように選択される。
【0047】
フィルタリング後の時間の関数としての信号S
nのグラフを
図3Aに示す。より正確には、この図は、相互作用点の異なる位置、換言すると、ピクセル200の表面内のPの異なる位置の信号S
nの統計的分布を示す。信号S
nのグラフは、パルス波形を有し、時間t
0の瞬間に関して実質的に対称的である。この時間t
0は、後述するように、ピクセルnが作用を受け、測定の残りの部分の基準時間として働く瞬間を定義する。以下では、t
0は、(被作用ピクセルの)衝突瞬間(instant of impact)とも呼ばれる。
【0048】
図3Bは、被作用ピクセルに隣接したピクセルから来た信号、例えば、被作用ピクセルの右側にあるピクセル201からの信号(ここではS
n+1として示される)か、被作用ピクセルの左側にあるピクセル203からの信号(ここではS
n-1と呼ばれる)を示す。この信号(S
n+1,S
n-1)は、前述のようにカスプフィルタによってフィルタリングされることが好ましい。
【0049】
より正確には、
図3Bは、相互作用点の異なる位置、即ち、被作用ピクセル200内の投射Pの異なる位置に関する、そのような信号(S
n-1,S
n+1)の統計的分布を表わす。前述のように、この信号は、第1の正ローブを呈し、次に第2の負ローブを呈し、符号の変化は、統計的に時間t
0の近くの瞬間に起こる。電荷信号の二極の形態は、Oy方向の隣接ピクセル(被作用ピクセルの上のピクセル202とその下のピクセル204)に関しては同一になり、二次(即ち、被作用ピクセルから距離2pにある)の隣接ピクセルに関しては類似になる。関係するピクセルの近さの程度に関係なく、第2の負ローブが第1の正ローブに続く。ピクセルが陰極で共通電極が陽極の場合は、この順序が逆になることが分かる。
【0050】
第1の瞬間t
1=t
0−Δt
1と第2の瞬間t
2=t
0+Δt
2(それぞれ被作用ピクセルの衝突瞬間の前後)が考慮され、換言すると、衝突瞬間を括弧でくくった時刻[t
1t
2]が考慮される。
図3Bに示されたように、瞬間t
1及びt
2は、好ましくは、電荷信号の振幅の最大分布に対応するように選択される。より正確には、事前の較正ステップ又はシミュレーションにおいて、ピクセルnの均一照射を行なうことができ、隣接ピクセル(例えば、n−1、n+1)から来る信号の振幅の統計的分布を考慮することができる。次に、瞬間t
1(又はt
2のそれぞれ)は、信号振幅分散が最大である衝突瞬間t
0の前(又は後のそれぞれ)の瞬間として決定される。次に、測定を行なうために後で使用される時間シフトΔt
1及びΔt
2を導出することができる。
【0051】
以下では、M
n+1、即ち、第1の瞬間t
1と第2の瞬間t
2の間の信号S
n+1の偏差が、M
n+1=S
n+1(t
0−Δt
1)−S
n+1(t
0+Δt
2)によって与えられる。同様に、M
n-1、即ち、同じ瞬間における信号S
n-1の偏差が、M
n-1=S
n-1(t
0−Δt
1)−S
n-1(t
0+Δt
2)によって与えられる。より一般には、偏差M
n+1(M
n-1)は、第1の瞬間t
1と第2の瞬間t
2との間の信号振幅S
n+1(S
n-1)の差の特性である。
【0052】
本発明の基礎となる考えは、被作用ピクセルに隣接した少なくとも1つのピクセルの信号の偏差を、衝突瞬間に対して同期的に取得し、少なくともこの偏差から検出器の平面内の相互作用点の座標を決定することである。実際には、この偏差は、衝突瞬間t
0に対して事前に決定された時間間隔(Δt
1,Δt
2)を使用して計算される。次に、この瞬間は、被作用ピクセルによって生成された信号S
nから決定され、そのような信号は、通常、良好な信号対雑音比を示す。したがって、瞬間t
0と、したがって第1と第2の瞬間t
1,t
2が、高精度で決定される。更に、前記第1と第2の瞬間は、被作用ピクセル内の相互作用点の様々な位置の電荷信号分散が最大になるように規定される。換言すると、これらの瞬間に基づいて計算された偏差は、相互作用位置により大幅に異なる。したがって、相互作用点の位置の測定は、被作用ピクセルに隣接したピクセルからの信号に影響を及ぼすノイズに対して頑強である。
【0053】
図4は、本発明の第1の実施形態によるイオン化放射線を検出する方法を概略的に示す。
【0054】
ステップ410では、被作用ピクセル、即ち、所定のしきい値を超える電荷信号を提供するピクセルが決定される。これを行うために、検出器の各ピクセルの電荷信号のピーク検出を行なうことができる。ピーク検出によって得られたこの信号の最大値E
nが、所定のしきい値より大きいとき、対応するピクセルが被作用ピクセルであると見なされる。変形では、この最大値の値E
n(受け取ったエネルギーを示す)も記憶される。
【0055】
第2のステップ420で、被作用ピクセルの衝突瞬間t
0が決定され、それから、衝突瞬間前の第1の瞬間t
0−Δt
1と、後の第2の瞬間t
0+Δt
2とが導出され、時間シフトΔt
1及びΔt
2は、前述のように、事前の較正又はシミュレーションステップによって得られている。
【0056】
第3のステップ430で、被作用ピクセルに隣接したピクセルから来る第1の信号の偏差が、瞬間t
0−Δt
1とt
0+Δt
2との間で決定される。より一般的には、平面Oxy内の被作用点に隣接したピクセルの非空集合Vが考慮され、各ピクセルQ∈Vに関して、その信号の瞬間t
0−Δt
1とt
0+Δt
2の間の偏差M
Qが決定される。
【0057】
軸Oxに沿った相互作用点の座標xの決定が必要とされるとき、集合Vは、この軸に沿った被作用ピクセル(例えば、
図2のピクセル201又は203)と位置合わせされた少なくとも1つのピクセルを含むことが好ましい。同様に、軸Oyに沿った相互作用点の座標yの決定が必要とされるとき、集合Vは、この軸に沿った被作用ピクセルと位置合わせされた1つのピクセル(例えば、
図2のピクセル202及び204)を含むことが好ましい。座標x、yを同時に決定するために、集合は、両方とも以前のピクセルあるいは単一のピクセル(例えば、ピクセル205、207、208又は209のうちの1つ)を含んでもよい。
【0058】
特定の事例では、集合Vは、被作用ピクセルの両側にあるとは限らない2つのピクセルで構成される。これらのピクセルは、被作用ピクセルの一次隣接ピクセル、即ち、すぐ隣りのピクセルでもよく、被作用ピクセルの高次隣接ピクセルでもよい。最後に、当該の両方のピクセルは、被作用ピクセルと位置合わせされてもされなくてもよい。しかしながら、軸Oxに沿った相互作用点の座標xの決定が必要とされるとき、Oxに沿って被作用ピクセル200と位置合わせされた隣接ピクセル201及び203が考慮されることが好ましい。あるいは、ピクセル205,207あるいは208,209を考慮することができる。同様に、軸Oyに沿った相互作用点の座標yの決定が検討されるとき、隣接ピクセル202及び204が考慮される。あるいは、ピクセル205,208または207,209が考慮されもよい。
【0059】
第4のステップ440で、相互作用点の少なくとも1つの座標が、前のステップで得られたように、Vに属するピクセルからの信号の偏差から推定される。既に述べたように、集合Vは、単集合に縮小されてもよい。
【0060】
第1の実施形態では、Vの各ピクセルに関して、そのピクセルの信号の偏差の確率分布が、相互作用点の座標の複数の離散値x
i(又は、y
i)に関する較正又はシミュレーションステップで事前に決定されていると仮定する。例えば、離散値は、x
i=(i/N)・p/2でよく、ここで、i=−N,..0,...Nであり、Nは、所望の分解能レベルに依存する非ゼロ整数である。
【0061】
前の較正又はシミュレーションステップにおいて、各ピクセルQ∈Vの条件付き確率関数p(M
Q|x
i)が決定される。ピクセルの配列が平面内の変換に関して不変の場合は、検出器全体の関数の数(2N+1)・Card(V)を決定するには十分である。
【0062】
実際には、検出器を較正するために、後者のピクセル化間隔が、既知のエネルギーEの高度に平行化されたビームによって掃引される。この掃引は、後で推定するために必要となる座標の軸に沿って実行されると有利である。換言すると、座標xの推定では、Ox軸に沿って較正掃引が行われ(例えば、x=−p/2からx=+p/2まで。
図2の区分ABを参照)、座標yの推定では、軸Oyに沿って較正掃引が行われる(例えば、y=−p/2からy=+p/2まで。
図2では区分CDを参照)。OxとOyの両方に沿った同時較正のため、二等分軸に沿った掃引を行なうことができる(例えば、軸Δに沿って。
図2の区分EFを参照)。
【0063】
ビームによって掃引された座標x
i(又は、y
i)の各値に関して、偏差の統計的分布M
Q,Q∈V(他の場合は、条件付き確率関数p(M
Q/x
i)として知られる)が記録される。これらの関数は、x
i(及び/又は、y
i)に関連した座標の値ごとにメモリ(参照テーブル)に記憶された値のテーブルの形をとる。
【0064】
第1の変形によれば、ステップ440で、相互作用点の座標xは、以下のように、最尤法を使用して最大化することによって、複合確率p(M
Q|x
i)を最大化することによって、例えばそれらの積を最大化することによって推定される。
【数7】
・・・(1)
【0065】
代替として、確率p(M
Q|x
i)の他の増加関数(例えば以下の2式)が想定されてもよいことに注意されたい。
【数8】
【数9】
【0066】
1つの特定の事例では、集合Vが、被作用ピクセルの左側の隣接ピクセルと右側の隣接ピクセルに縮小される場合、また以前に使用されたものと同じ表記が保持される場合、
【0068】
較正又はシミュレーションステップで、相互作用点の座標の様々な可能な値x
iに関して、被作用ピクセル(P(E
n|x
i))が受ける信号の振幅の条件付き確率方程式を決定することができる。実際には、確率分布P(E
n|x
i)は、相互作用点の投射Pが被作用ピクセルの中心に近いか遠いかによって異なる。関数p(M
Q|x
i)と同様に、掃引される各座標x
iの参照テーブルの形で、確率関数P(E
n|x
i)を記憶することができる。次に、最大尤度を求める際に、440で受け取った信号の振幅の測定値を考慮することによって、相互作用点の位置の推定を改善することができる。
【0070】
当然ながら、以前のように、p(M
Q|x
i)とP(E
n|x
i)の他の代替の増加関数が想定されうる。
【0071】
しかしながら、いかなる場合でも、この第1の変形は、較正/シミュレーションステップが測定中の放射エネルギーと同じ放射エネルギーで行われ、測定中の放射エネルギー後者が分かっていると仮定する。
【0072】
他方、測定中の放射線のエネルギーが分かっていない場合、第2の変形では、正規化ステップ(オプションのステップ435)が、推定ステップ440の前に行なわれる。ステップ435は、作用を受けたピクセルが受け取ったエネルギーによって偏差M
Qを正規化することから成る。換言すると、各偏差M
Qは、その正規化された値M
Q/E
nと置き換えられ、ここで、E
nは、ステップ410で記憶された、被作用ピクセルが受け取ったエネルギーの表示値である。次に、推定は、こうして正規化された侵入に適用される式(1)を使用して推定が行われる。
【0073】
図5Aは、2つの隣接ピクセルからの反応差に基づいて、先行技術によって、より正確には前述の米国特許第6169287号明細書に記載された方法によって入射放射線を検出する方法を使用して、相互作用点の実際位置(横座標)と推定位置(縦座標)との関係を表わす。
【0074】
図5Bは、同様に、本発明の第1の実施形態による推定方法によって、また正確には上記の式(2)を使用して、相互作用点の実際位置と推定位置との関係を表す。
【0075】
本発明の第1の実施形態により推定された位置と真位置の間の相関関係が、先行技術用のものより実質的に良好であることが分かる。相互作用位置の推定のこの改善は、本質的に、衝突瞬間t
0と相対的に同期された瞬間t
0−Δt
1及びt
0+Δt
2で偏差測定が行われることによるものであり、間隔Δt
1及びΔt
2は、相互作用の位置の精度を高めるように選択される。
【0076】
図6は、本発明の第2の実施形態によるイオン化放射線の検出方法を概略的に示す。
【0077】
ステップ610、620及び630はそれぞれ、第1の実施形態のステップ410,420及び430と同一であり、したがって、ここではその説明は繰り返さない。
【0078】
ステップ640で、相互作用点の少なくとも1つの座標は、Vに属するピクセルからの信号の偏差から推定される。第2の実施形態では、Card(V)≧2、換言すると被作用ピクセルに隣接した少なくとも2つのピクセルが考慮される。集合Vは、隣接ピクセルが被作用ピクセルを取り囲むように、即ち、より正確には、被作用ピクセルの中心が、Vのピクセルの中心を結ぶ多角形の内側にあるように選択される。
【0079】
次に、相互作用点の座標xは、次の式から推定される。
【0081】
ここで、B
xが、それぞれの偏差値M
Qによって重み付けされたVのピクセルの共通重心BのOxに沿った座標であり、Uは、後述する関数である。相互作用点(以下式)
【数13】
の座標yは、同じ方法で推定され、B
yは、共通重心BのOyに沿った座標である。
【0082】
二次元事例に対する一般化を失うことなく説明を単純化するため、以下に、一次元事例での第2の実施形態について述べる。
【0083】
したがって、Vのピクセルが、軸Ox上の作用を受けた点の両側にある。例えば、Vのピクセルは、以下式の座標点にあるように選択されてもよい。
【数14】
【0084】
この場合、共通重心の座標B
xは、次式を使用して計算できる。
【0086】
ここで、M
(k),(k≠k
0)は、既定の瞬間t
1とt
2の間にピクセルkから来る信号S
kの偏差を示し、M
(k0)は、被作用ピクセルから来る信号の振幅を示す。
【0087】
より一般には、様々なピクセルからのそれぞれの寄与の関連性を示す係数を使用して様々な偏差を重み付けすることによって共通重心の座標を算出でき、被作用ピクセルから遠いピクセルは、被作用ピクセルに近いピクセルよりも小さい係数が割り当てられる。
【0089】
ここで、α
k(正整数)は、被作用ピクセルk
0に対するピクセルkの位置に依存する重み付け係数である。これらの係数は、シミュレーションによって決定されうる。重み付け係数の値は、対応ピクセルが被作用ピクセルに近いほど大きい。係数α
kの値は、一般に、0〜2である。例えば、K=2のとき、α
k0=2,α
k0±1=1,α
k0±2=0.3となる。
【0090】
全ての場合に、共通重心は、被作用ピクセルと隣接ピクセルに対して行われた信号測定の正規化重み付け合計として得られる。
【0091】
第2の実施形態の説明を単純化するために、以下では、検出器の原点を被作用ピクセルの中心にとると仮定する。
【0092】
検出器が均一に照射されるとき、即ち、光子が、検出器にランダムで均一に到達するとき、B
xは、期間[−p/2,p/2]にわたって不均一に分散される確率変数である。したがって、測定中に値B
x(又は、B
xの一次関数)を使用して相互作用点の座標を推定することができない。
【0093】
共通重心の座標を分散させ、換言すると期間[−p/2,p/2]にわたってそのヒストグラムを均一化するように選択された関数Uは、次の式によって提供される。
【0095】
U(B
x)は、検出器が均一に照射されたときの確率変数B
xの分布関数である。実際には、分布関数F(B
x)は、定義上、ランダムな均一変数(期間[0,1]に亘る期間[−p/2,p/2]を有する)であり、したがって、関数U(B
x)自体は、[−p/2,p/2]にわたって均一に分散された確率変数であり、同じ期間からその値を得る。
【0096】
図7Aは、Vのピクセルの共通重心の統計的分布を相互作用点の様々な位置の関数として概略的に示す。
【0097】
より正確には、
図7Aで、横座標の軸は、検出器の軸Oxと一致し、確率変数B
xによって得られた値は、検出器が均一に照射されたとき、縦座標で示される。ここで検討される共通重心は、作用を受けた点の左側と右側のピクセルのものである(この場合、B
xは、式(5)から得られる。K=1)。
【0098】
B
xの各値に関して、衝突数(即ち、この値が観察される回数)は、色レベルによって示される。
【0099】
図7Bは、
図7Aの観察に対応するB
xのヒストグラムを示す。このヒストグラムは、B
xの各値に関して、区分[−p/2,p/2]に観察された出現数を合算することによって得られた。この図は、また、図の右側に示されたB
xの分布関数(期間[0,1]に亘る値をとる)を示す。
【0100】
図7Cは、この共通重心の変換のヒストグラムを関数Uによって示す。確率変数U(B
x)が[−p/2,p/2]にわたって実質的に均一に分散されることが分かる。実際には、被作用ピクセルの縁に観察される均一性からの比較的小さい偏差は、相互作用点の位置の推定の品質にほとんど影響を及ぼさない。
【0101】
以上のように、本発明の第2の実施形態による相互作用の位置を推定する方法は、事前の較正ステップを必要とする。第1の実施形態と違って、較正は、高度に平行化されたビームを使用する掃引によってではなく、検出器の均一照射下で行われる。
【0102】
実際には、共通重心の座標B
xの確率関数は、このステップで決定される。これを行うために、各事象に関して、即ち、作用を受けた各ピクセルに関して、隣接ピクセルQ∈Vから来る信号の偏差M
Q(並びに、被作用ピクセルから来る信号の振幅の値)が測定され、共通重心Bの座標B
xが計算される。
【0103】
このように得られたB
xの値のヒストグラム(
図7Bに示されたように)は、その確率関数を提供する。このヒストグラムから、分布関数F(B
x)が決定され、これからU(B
x)がB
xの各値に関して導出される。B
xの関数としての値U(B
x)は、テーブル(参照テーブル)の形でメモリに記憶される。
【0104】
後の測定ステップで、即ち、放射線の相互作用位置の推定中に、ステップ640で、偏差M
Qの共通重心の座標B
x(並びに、被作用ピクセルから来る信号の振幅の値)が計算され、これから、以下式で表される推定が、前述のテーブルを使って導出される。
【数18】
【0105】
図8は、本発明の一実施形態によるイオン化放射線検出器の構造の概略図である。
【0106】
イオン化放射線検出器800は、半導体素子810を含み、半導体素子810の入射放射線に晒された前側が、第1の電極820で覆われ、その後側は、一次元又は二次元の周期的配列によって分散された複数の第2の基本電極又はピクセル830
iで覆われる。
【0107】
各ピクセル830
iには、このピクセルから来る電荷信号を読み取るのに適した読取りチャネル840
iが関連付けられる。この読取りチャネル自体は、前置増幅、前置フィルタリング、アナログデジタル変換などの様々な処理ステップを含むことができる。アナログデジタル変換は、例えば、前置増幅段からの出力又はフィルタリングステップからの出力で行われてもよい。
【0108】
チャネル840
iの出力の信号は、一方でフィルタ850
iによってフィルタリングされ、他方でしきい値弁別器860
iによって分析される。
【0109】
フィルタ850
iは、受信パルスを成形するように設計された線形フィルタである(又は、線形フィルタではない)。例えば、それ自体で既知のカスプフィルタやガウス応答フィルタでよい。
【0110】
しきい値弁別器860
iは、チャネル840
iからの信号が所定のしきい値を越えたかどうかを検出し、このしきい値を越えたかどうかを示すブール信号ν
iを生成する。信号ν
iは、ピクセル830
iが作用を受けたかどうかを示す。
【0111】
フィルタ850
iからの出力の成形信号は、ブール信号ν
iと共に、同期装置870
iに送られる。信号ν
iが、ピクセル830
iが作用を受けたことを示すとき、同期装置は、成形信号のピークの検出を行い、パルス最大値に達した瞬間t
i0を識別する。したがって、瞬間t
i0、並びに必要に応じて、瞬間t
i0に達した成形信号E
i0の最大値を提供する。
【0112】
また、850
iの出力の成形信号は、この信号のL個の最新サンプルを連続的に記憶するFIFOバッファ880
iに提供される。
【0113】
制御モジュール890
iは、瞬間t
i0を受け取り、バッファへの書き込みを停止し、それにより、t
i0の前後のパルスのサンプルがバッファに記憶される。更には、制御モジュールは、隣接ピクセルQ∈Vと関連付けられたバッファへの書き込みを停止する複数のCard(V)信号(図示せず)を生成する。
【0114】
適切な場合、隣接チャネルのそれぞれの同期装置(即ち、隣接ピクセルに対応する)は、一緒に接続され、これらのチャネルによって読み取られた信号のそれぞれの最大値に依存する被作用ピクセルを決定し、即ち、どのピクセルが最も強いパルスを受け取ったかを決定する(二重線矢印)。したがって、同期装置870
iは、値E
i0を隣接チャネルの対応する値と比較し(一次元配列の場合には、E
i-10とE
i+10)、これより、ピクセル830
iが、被作用ピクセルとして正しく識別されたかどうかを導出することができる(その場合、隣接ピクセル830
i-1及び830
i+1が被作用ピクセルではない)。
【0115】
各被作用ピクセルに関して、処理ユニット895は、バッファ880
iから、作用を受けた(と識別された)ピクセルに対応する値E
i0、並びに瞬間t
i0−Δt
1とt
i0+Δt
2における隣接ピクセルQ∈Vからの信号の振幅(及び、必要に応じて、衝突時に被作用ピクセルからの信号の振幅の値)を回収する。これにより、これから偏差M
Q,Q∈Vが導出され、第1の実施形態の推定ステップ440又は第2の実施形態の推定ステップ640が実施される。
【0116】
処理ユニット895は、メモリ894に関連付けられ、メモリ894には、第1の実施形態では、各隣接ピクセルQ∈Vの値p(M
Q|x
i)のテーブル、並びに必要に応じて値P(E
0|x
i)のテーブル、又は第2の実施形態では、値U(B
x)=(F−(B
x)−1/2)pのテーブルが記憶される。
【0117】
第1の実施形態の較正ステップで、検出器800は、高度に平行化されたビームによって軸(Ox,Oy)に沿って掃引され、ビームの各位置に関して(即ち、相互作用点の各位置x
i,i=1,...,N)、計算ユニットは、被作用ピクセルに隣接したピクセルQ∈Vから来る信号の偏差M
Qを決定する。各隣接ピクセルに関して、観察された偏差M
Qの値と関連付けられたストライクカウンタを増分する(観測値は、複数の離散値にしたがって格付けされる)。座標位置x
iの照射の終わりに、x
iで知られる偏差M
Qの条件付き確率関数が、メモリ894に記憶される。このプロセスは、位置x
iのそれぞれに繰り返される。これを行うために、計算ユニットは、平行ビームの掃引手段(図示せず)と同期される。
【0118】
第2の実施形態の較正ステップで、検出器800は、イオン化放射線によって均一に照射される。各事象に関して、即ち各相互作用に関して、計算ユニットは、被作用ピクセルに隣接したピクセルQ∈Vから来る信号の偏差M
Qを決定し、それらの共通重心を計算し、その座標B
xを決定する。観察されたB
xの各値に関して(観察された値は、複数の離散値にしたがって格付けされる)、この値と関連付けられたストライクカウンタが増分される。較正ステップの終わりに、分布関数F(B
x)が計算され、次に、これから関数U(B
x)が導出され、メモリ894に記憶される。
【0119】
第1と第2の実施形態の説明で、相互作用点の位置は、被作用ピクセルに隣接するピクセルから来る信号の偏差の測定値から(また、適切な場合、被作用ピクセルから来る信号の振幅から)決定された。
【0120】
しかしながら、より一般的には、これらの測定値は、前述の意味で信号の偏差であるとは限らない。例えば、組み合わせは信号の測定値として解釈されてもよく、詳細には、ピクセルから来る前記信号の複数の瞬間t
1,...,t
mにおけるこの信号の振幅値の一次結合と見なされ、ここで、瞬間t
1,...,t
mは、衝突瞬間t
0の関数として決定される。例えば、衝突瞬間t
0に対して決定される瞬間に、検討中のピクセルから来る信号の4つ又は5つの振幅値の一次結合を含んでもよい。
【0121】
最後に、信号測定値を得るために、衝突瞬間t
0の前後それぞれの2つの瞬間も複数の瞬間t
i,...,t
mも決定しなくてもよい場合がある。特定の事例では、この衝突時間の前又は後の単一瞬間を簡単に決定できることがあり、隣接ピクセルの信号の測定値は、前記瞬間が衝突瞬間の前でも後でも、前記瞬間にこのピクセルから来る信号の振幅によって得られる値である。