【実施例】
【0105】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。
【0106】
例1:フェブキソスタットエチルエステルの製造
2−[3−ホルミル−4−(2−メチルプロポキシ)フェニル]−4−メチルチアゾール−5−カルボン酸エチル(10.0g,28.8mmol)を90%ギ酸(70ml)に懸濁後、塩酸ヒドロキシルアミン(2.41g,34.7mmol)及びギ酸ナトリウム(3.14g,46.2mmol)を加え、4時間加熱還流した。水を加え、析出した結晶をろ取後、水で洗浄し、表題化合物の粗結晶(ウェット状態)を得た。この粗結晶をメタノールに懸濁させ、室温で撹拌後、結晶をろ取し、メタノールで洗浄した。更に得られた結晶をジクロロメタンに溶出し、不溶物をろ過後、メタノールを加え撹拌した。析出した結晶をろ取し、メタノールで洗浄後、室温で減圧乾燥して表題化合物(8.31g,収率83.9%)を白色結晶性粉末として得た。
【0107】
下記の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)条件における原料化合物及び表題化合物の保持時間はそれぞれ約9.7min、約13minであった。
検出器:紫外線吸光光度計(測定波長:320nm)
カラム:L−column ODS 4.6×250mm
移動相:50mM KH
2PO
4/アセトニトリル=1/3
流量:1ml/min
カラム温度:40℃
【0108】
例2:フェブキソスタットのG晶の製造
例1で得たフェブキソスタットエチルエステル(8.00g,23.2mmol)をエタノール(32ml)及びテトラヒドロフラン(32ml)の混合溶液に懸濁後、水酸化カリウム(1.84g,27.9mmol)の水(1.84ml)/エタノール(16ml)溶液を加え、50℃で3.5時間加熱撹拌した。水を加え、不溶物をろ過後、ろ液に1mol/L塩酸を加えた。析出した結晶をろ取し、水で洗浄後、40℃で一晩減圧乾燥した。表題化合物の湿結晶7.90g(理論収量7.77g)を得た。粉末X線回折スペクトルを測定して、この結晶がG晶であることを確認した(
図1)。
【0109】
例3:アセトニトリルを用いた、フェブキソスタットのC晶の製造。
上述のG晶の一部を採取して、これにC晶の種晶(Journal of Chemical Engineering of Japan,35,pp.1116−1122,2002の「2.3.Crystallization」の項に記載された結晶化方法により製造して粉末X線回折スペクトル及び赤外吸収スペクトルにより同定したもの、19.5mg)を添加し、アセトニトリル(117ml)を加え、更にC晶の種晶(19.5mg)を追加した。室温で一晩撹拌後、結晶をろ取し、アセトニトリルで洗浄した。得られた結晶を一晩風乾後、80℃で48時間減圧乾燥して表題化合物のC晶(6.69g,収率91%)を白色結晶性粉末として得た(以下、このC晶を「アセトニトリルC晶」と呼ぶ)。
【0110】
得られた白色結晶性粉末に含まれる不純物は上記(a)のHPLC条件のピーク面積比において個々の不純物の最大で0.1以下、総量で0.5%以下であり、白色結晶性粉末のピーク面積比は99.8%であった。
【0111】
例4:メタノールと水の混合溶媒を用いた、フェブキソスタットのC晶の製造。
フェブキソスタットのG晶(20.0g)をメタノール/水(1050ml/450ml)に懸濁後、フェブキソスタットのC晶の種晶(50mg)を加え、50℃で12時間加熱撹拌した。室温まで放冷後、析出物を濾過し、80℃で16時間減圧乾燥した。得られた粉末は粉末X線回折スペクトル、赤外分光スペクトルよりフェブキソスタットのC晶であることを確認した(以下、このC晶を「メタノール水C晶」と呼ぶ)。
【0112】
例5
例3で得たアセトニトリルC晶(190g)をジェットミル(100型/パウレック社製)で粉砕した。粉砕圧力1kgf・供給圧力2kgf、粉砕圧力2kgf・供給圧力3kgf及び粉砕圧力3kgf・供給圧力4kgfのいずれの条件でも良好に微粉化された。
【0113】
これらのアセトニトリルC晶のジェットミル粉砕物中のアセトニトリル残留量を測定したところ、いずれも約100ppmであり、粉砕前のアセトニトリル残留量(200ppm)に比べてアセトニトリルの残留濃度が約2分の1に減少した。なお、1998年に厚生省から通知された「医薬品の残留溶媒ガイドラインについて」におけるアセトニトリル残留量の許容濃度は410ppmであるので、200ppmのアセトニトリルが残留している場合には、許容濃度の2分の1のアセトニトリル濃度であるので許容濃度ぎりぎりであるが、約100ppmの残留アセトニトリル濃度であれば、許容濃度の4分の1の濃度であるので、許容限度を超えるリスクがかなり低くなる点で、大きなメリットがある。
【0114】
例6:粉末X線回折スペクトルの測定
試料約100mgを標準的試料ホルダーに緩く詰め込み、スライドガラスで平滑にし、ブルカーエイエックスエス(Bruker AXS)卓上型X線回折装置D2 PHASER(CuKα放射線)を用いて回折パターンを測定した。回折パターンを管電圧=30kV、管電流=10mA、ロックドカップル走査(locked−couple scan)、スリット0.6mm、スキャッター0.5mm、2θ範囲=4から40°、ステップサイズ=0.02°、及びステップ時間=0.5秒として収集した。DIFFRAC.SUITE version2 2.2.59.0及びDUFFRAC.EVA version 2.1の各ソフトウェアをデータ収集及び分析のために用いた。
【0115】
粉末X線回折スペクトルを測定した結果を
図1〜4に示す。例2で得たG晶の粉末X線回折スペクトルを
図1に、例4で得た未粉砕のメタノール水C晶の粉末X線回折スペクトルを
図2に、例3で得た未粉砕のアセトニトリルC晶の粉末X線回折スペクトルを
図3に、例5で得たアセトニトリルC晶のジェットミル粉砕物(粉砕圧力3kgf、供給圧力4kgf)の粉末X線回折スペクトルを
図4に夫々示す。未粉砕のアセトニトリルC晶(
図3)及びアセトニトリルC晶のジェットミル粉砕物(
図4)は、いずれも、6.62°、13.36°、15.52°の回折角にピークを有するC晶に特徴的な粉末X線回折スペクトルを示し、他の結晶形や非晶質体の混入は認められなかった。なお、例4で得た未粉砕のメタノール水C晶についても、同様に、6.62°、13.36°、15.52°の回折角にピークを有するC晶の粉末X線回折スペクトルを示し、他の結晶形や非晶質体の混入は認められなかった。
【0116】
例7:赤外吸収スペクトルの測定
試料約2mgをメノウ鉢で粉末とし、これに赤外吸収スペクトル用臭化カリウム0.20gを加え、速やかにすり混ぜた後、錠剤成型器に入れて加圧製錠し、堀場(HORIBA)フーリエ変換赤外分光光度計FT−720を用いて赤外吸収スペクトルを測定した。スペクトルはスキャン回数=10、走査速度=2.5、分解能=4、測定範囲=400から4000cm
−1として収集した。HORIBA FT−IR for Windows(登録商標)version 4.07ソフトウェアをデータ収集及び分析のために用いた。
【0117】
赤外吸収スペクトルを測定した結果を
図5、
図6及び
図7に示す。例4で得た未粉砕のメタノール水C晶(
図5)、例3で得た未粉砕のアセトニトリルC晶(
図6)、例5で得たジェットミル粉砕(粉砕圧力3kgf、供給圧力4kgf)後のアセトニトリルC晶(
図7)のいずれも、1703cm
−1付近及び2240cm
−1付近にピークを有する、C晶に特徴的な赤外吸収スペクトルを示し、他の結晶形や非晶質体の混入は認められなかった。例4で得た未粉砕のメタノール水C晶についても同様に、C晶に特徴的な赤外吸収スペクトルを示し、他の結晶形や非晶質体の混入は認められなかった。
【0118】
例8:示差走査熱量スペクトルの測定
試料約2mgを試料容器(アルミニウム製、φ5×2.5mm、50μL)に充てんし、リガク(Rigaku)Therm plus EVOシリーズ高感度示差走査熱量計DSC8230を用いて、加熱速度10℃/分、大気圧下で示差走査熱量(DSC)を測定した。Rigaku Thermo plus EVO version 1.006−6ソフトウェアをデータ収集及び分析のために用いた。
示差走査熱量スペクトルを測定した結果を
図9、
図8及び
図10に示す。例4で得た未粉砕のメタノール水C晶(
図8)、例3で得た未粉砕のアセトニトリルC晶(
図9)、例5で得たジェットミル粉砕(粉砕圧力3kgf、供給圧力4kgf)後のアセトニトリルC晶(
図10)のいずれも、約201℃〜約202℃に単一ピークを示したことから、他の結晶形や非晶質体の混入は認められなかった。例4で得た未粉砕のメタノール水C晶についても同様に、約201℃〜約202℃に単一ピークを示し、他の結晶形や非晶質体の混入は認められなかった。
【0119】
同様に、例5においてジェットミル粉砕の条件を変えて得られたアセトニトリルC晶のジェットミル粉砕物の示差走査熱量の測定結果のまとめを表1に示す。ジェットミル粉砕条件は、粉砕圧力1kgf・供給圧力2kgf、粉砕圧力2kgf・供給圧力3kgf及び粉砕圧力3kgf・供給圧力4kgfの3条件である。いずれの条件で粉砕しても、約201℃〜約202℃に単一の吸熱ピークを示したことから、非晶質体や他の結晶形を含まない純粋なC晶であることが確認できた。
【0120】
【表1】
【0121】
例9:粒度分布の測定
試料約2mgを0.2% Aerosol OTを含むn−ヘキサンに添加し、30秒間超音波を照射して分散した。この分散液を用いて、島津(Shimadzu)レーザ回折式粒子径分布測定装置SALD−2200により粒度分布(D50及びD90)を測定した。Shimadzu WingSALD−2200 version 1.02ソフトウェアをデータ収集及び分析のために用いた。
図11は、未粉砕のメタノール水C晶の粒度分布を示す図およびデータである。未粉砕のアセトニトリルC晶のD50は36.819μm、D90は133.348μmであった。
図12は、未粉砕のアセトニトリルC晶の粒度分布を示す図およびデータである。未粉砕のアセトニトリルC晶のD50は20.483μm、D90は73.755μmであった。
【0122】
図13は、アセトニトリルC晶のジェットミル粉砕物(粉砕圧力3kgf・供給圧力4kgf)の粒度分布を示す図およびデータである。粉砕圧力3kgf・供給圧力4kgfでジェットミル粉砕したアセトニトリルC晶のD50は3.637μm、D90は7.346μmであった。これらの結果から、未粉砕のアセトニトリルC晶に比べて5分の1以下のD50、及び、10分の1以下のD90を示すこと、並びに、1μm〜10μmの粒子径の間に90%以上の粒子が分布するより均一な粒度分布を示すことがわかった。
【0123】
同様に、例5においてジェットミル粉砕の条件を変えて得られたアセトニトリルC晶のジェットミル粉砕物の粒度分布の測定結果のまとめを表2に示す。ジェットミル粉砕条件は、粉砕圧力1kgf・供給圧力2kgf、粉砕圧力2kgf・供給圧力3kgf及び粉砕圧力3kgf・供給圧力4kgfの3条件である。いずれの条件で粉砕しても、D90が10μm未満である十分に小さい粒度を示したが、これら3条件の中では、粉砕圧力3kgf・供給圧力4kgfの条件でジェットミル粉砕した場合に最も小さい粒子径の粉砕物が得られることが確認できた。
【0124】
【表2】
【0125】
例10:乳鉢による粉砕
例3で得られたアセトニトリルC晶の未粉砕物(5g)を磁製乳鉢(直径13cm)、磁製乳棒(長さ15cm、重量154g)で強く粉砕し、経時的に粉砕物のサンプリングを行い、示差走査熱量測定および粒度分布を測定した(表3)。
示差走査熱量測定の結果、乳鉢で粉砕すると、10分後には約210℃に吸熱ピークが現れることから、C晶以外の結晶形への転移が認められた。また、30分後には、150℃以下に発熱ピークが現れたことから、非晶質体の混入も確認された。さらに、30分間にわたって乳鉢粉砕したアセトニトリルC晶の粒度は、10分間にわたって乳鉢粉砕したアセトニトリルC晶の粒度に比べて、明らかに粒子径が増大していた。メノウ乳鉢およびメノウ乳棒によって粉砕を行っても同様の結果が得られた。
【0126】
【表3】
【0127】
例11:ボールミルによる粉砕
例3で得られたアセトニトリルC晶の未粉砕物(15g)を遊星ボールミル(PM100/Retsch社製:125ml容器/20mmボール6個/回転数400rpm)で粉砕し、経時的に粉砕物のサンプリングを行い、示差走査熱量測定および粒度分布を測定した(表4)。
示差走査熱量測定の結果、ボールミル粉砕すると約210℃の吸熱ピークは30分後〜60分後で最大になったこと、及び、150℃以下に現れる発熱ピークは60分間の間、ボールミルによる粉砕時間に依存して増え続けたこと、及び、60分後にはC晶に特徴的な約201℃〜約202℃付近に現れる吸熱ピークが消失することから、ボールミル粉砕によって、C晶が消失して非晶質体化したことが確認できた。さらに、粒度分布もボールミルによる粉砕時間に依存して増大し続けたことがわかった。なお、以下、60分間ボールミルで粉砕したアセトニトリルC晶を「アセトニトリルC晶のボールミル粉砕物」ということにする。
【0128】
【表4】
【0129】
また、アセトニトリルC晶を60分間ボールミル粉砕した後の粉砕物の粉末X線回折スペクトル(
図14)、赤外分光スペクトル(
図15)、示差走査熱量測定スペクトル(
図16)を示す。
アセトニトリルC晶のボールミル粉砕物の示差走査熱量測定スペクトル(表4、
図16)では、C晶に特徴的な約201℃〜約203℃の吸熱ピークが消失しているとともに、84.5℃付近に発熱ピークがあることから、C晶が消失していること及び非晶質が生じていることがわかった。また、粉末X線回折スペクトル(
図14)は明らかに平坦化した非晶質体に特徴的なスペクトルを示していた。これらの結果から、アセトニトリルC晶を60分間ボールミル粉砕した粉砕物の粉末は、実質的に非晶質体のみからなると考えられた。
【0130】
アセトニトリルC晶のボールミル粉砕物の赤外分光スペクトル(
図15)は、非晶質体に特徴的な位置にピークが現れていた(特許3547707号の
図16を参照)。さらに、示差走査熱量測定スペクトル(
図16)では、未粉砕のアセトニトリルC晶では約201℃〜約202℃にのみ単一の吸熱ピークを有していたのに対して、ボールミル粉砕によって約201℃〜約202℃の吸熱ピークが消失するとともに、アセトニトリルC晶のボールミル粉砕物では、約210℃に強い吸熱ピークが現れるとともに、150℃以下の位置、具体的には、
図16の約84.6℃近辺の位置に発熱ピークが現れていた。
【0131】
例12:サンプルミルによる粉砕、および、ハンマーミルによる粉砕
実施例1のC晶(15g)を、ハンマーの高速回転による衝撃で粉砕を行うサンプルミル(SM−1/アズワン社製)で粉砕し、経時的に粉砕物のサンプリングを行い、示差走査熱量測定および粒度分布を測定した(表5)。
示差走査熱量測定の結果、サンプルミル粉砕によって150℃以下の発熱ピークは生じなかったものの、アセトニトリルC晶が有さない約210℃の吸熱ピークは粉砕時間に依存して増大し続け240分後には−44.106J/gに達したことから、サンプルミル粉砕によって、他の結晶形への転移が進行したことがわかった。さらに、粒度分布も、未粉砕のアセトニトリルC晶のD50(20.483μm)及びD90(73.755μm)に比べて細かくはなったものの、サンプルミル粉砕を240分間行った後の粒度分布は、D50で11.281μm、D90で29.768μmに過ぎず、D50が60分後、120分後、240分後でほぼ同じであったことから、サンプルミル粉砕による微粉化の程度には限界があることがわかった。
【0132】
【表5】
【0133】
市販のA晶(D50 19μm;北京連本医薬化学技術有限公司/Beijing Lianben Pharm−chemicals Tech.Co.,Ltd.から購入したもの)をハンマーミル(大徳薬機製、DF−15)を用いて12000rpmの回転数で瞬時に粉砕した。ハンマーミルで粉砕したA晶(以下、「A晶のハンマーミル粉砕物」という。)は、例22の比表面積の測定に用いた。
【0134】
例13:示差走査熱量測定による非晶質体の定量法の確立
非晶質体の定量法の確立のためのフェブキソスタットの非晶質体の標品として、例11でアセトニトリルC晶をボールミルで60分間粉砕して得られたものを用いた。
アセトニトリルC晶のジェットミル粉砕物(粉砕圧力3kgf・供給圧力4kgf)に、1、2.5、5、10、25、及び50%相当量の非晶質体(C晶を遊星ボールミルで60分間粉砕して調製したもの)を添加して総量約200mgとし、袋混合した調製物について示差走査熱量測定における挙動変化を測定した。
【0135】
非晶質体の混合物は1%以上の非晶質体が存在すると210℃付近に吸熱ピークを示し、非晶質体混合割合の増加とともに増大した。一方、C晶に特徴的な約201℃〜約202℃に現れる吸熱ピークは、非晶質体混合割合の増加とともに減少し、非晶質体混合割合が100%になると消失した。非晶質体の混合割合と200℃以上の吸熱及び発熱ピークのピーク強度との間に線形性は認められなかった。一方、150℃以下の再結晶化に伴う発熱ピーク量(J/g)は非晶質体の含有割合に応じて直線的に増加することが確認され、非晶質体の含有割合の定量が可能であった。C晶及び非晶質体の混合物の示差走査熱量測定結果のまとめを表6に示す。約150℃以下に現れる発熱ピークの発熱ピーク量(J/g)をx、非晶質体の割合をyとしたときの直線回帰式は、[y=6.0675x]であり、相関係数(r)は0.995であった。
【0136】
【表6】
【0137】
例14:走査電子顕微鏡による結晶の観察
日立製の電子顕微鏡(TM3000 Miniscope/HITACHI)を用いて例3、例4、例5で得た各結晶の走査電子顕微鏡写真を撮影した。
例4で得たメタノール水C晶(未粉砕)の走査電子顕微鏡写真を撮影したところ、柱状晶であり、柱の柱径は約20μm前後、柱の長さは1000μmを超えることが確認できた。その代表的な写真を
図17〜
図19に示す。一部の結晶は、より細い柱状晶が寄り添っているように観察されることから、裂けやすい柱状晶であることが窺える。なお、
図17の写真の倍率は100倍、
図18及び
図19の写真の倍率は80倍である。
図17〜
図19の電子顕微鏡写真の下の横棒は1mm(1000μm)の縮尺を示し、横棒の上の目盛は0.1mm(100μm)の間隔を示す。
【0138】
例3で得た未粉砕のアセトニトリルC晶を走査電子顕微鏡写真で観察したところ、メタノール水C晶よりも短く、かつ、柱の柱径に対する柱の長さの比が小さい柱状晶であり、柱の柱径が6μm前後、柱の長さが20μm前後であることが確認できた。その代表的な写真を
図20〜
図22に示す。
図20〜
図22の写真の倍率は500倍である。
図20〜
図22の写真の下の横棒は200μmの縮尺を示し、横棒の上の目盛は20μmの間隔を示す。
【0139】
例5で得たアセトニトリルC晶のジェットミル粉砕物を走査電子顕微鏡写真で観察したところ、さらに小さく粉砕されており、もはや、柱状晶の形状を維持しておらず、多少は短径と長径の長さの差はあっても、概ね1.5μm〜6.5μmの径を有する粒状であることが確認できた。その代表的な写真を
図23〜
図25に示す。
図23〜
図25の写真の下の横棒は20μmの縮尺を示し、横棒の上の目盛は2μmの間隔を示す。
【0140】
例15:走査電子顕微鏡写真に写った結晶の大きさの測定
未粉砕のアセトニトリルC晶、アセトニトリルC晶のジェットミル粉砕物(粉砕圧力3kgf・供給圧力4kgf)の夫々について、走査電子顕微鏡写真に写っている結晶の長さを測定した。未粉砕のアセトニトリルC晶は柱状晶であるので、柱の長さを測定した。一方、アセトニトリルC晶のジェットミル粉砕物は粒状であるので、長径の長さを測定した。測定した結晶の数は、各群430個である。その結果を表7に示す。未粉砕のアセトニトリルC晶の長径の長さの平均値は17.32μmであるのに対して、アセトニトリルC晶のジェットミル粉砕物の長径の平均値は2.96μmであり、未粉砕のアセトニトリルC晶の長径の長さの平均値の約17%の長さになっていた。なお、粉砕していないメタノール水C晶の長径の長さについては、統計解析可能な個数の結晶の長さを測定してはいないものの、
図17〜
図19の電子顕微鏡写真には1mmを超える長さの柱状晶が多数観察されることから、少なくとも、未粉砕のアセトニトリルC晶の長さの5倍以上、おそらくは10倍以上の平均長を有することは明らかと考えられた。
【0141】
【表7】
【0142】
例16:かさ密度及びタップ密度の測定
例3で得た未粉砕のアセトニトリルC晶、例4で得たメタノール水C晶、例5で得たアセトニトリルC晶のジェットミル粉砕物(粉砕圧力3kgf・供給圧力4kgf)、市販のA晶(D50 19μm;北京連本医薬化学技術有限公司/Beijing Lianben Pharm−chemicals Tech.Co.,Ltd.から購入したもの)、前記の市販のA晶を例12と同様にハンマーミル(大徳薬機製、DF−15)で粉砕した試料の夫々について、定容量法によって、かさ密度及びタップ密度を測定した。かさ密度及びタップ密度は以下の方法で求めた。
【0143】
<定容量法による嵩密度の測定法>
定容量法による嵩密度は、次式により計算した。
定容量法による嵩密度(g/ml)=(MT1−M0)/V
ここで、式の右辺の変数は、次のとおりである。
MT1: タップ前の紛体と測定用容器の合計質量(g)
M0: 測定用容器の質量(g)
V: 測定用容器の容量(ml)
【0144】
<定容量法によるタップ密度の測定法>
定容量法によるタップ密度は、次式により計算した。
定容量法によるタップ密度(g/ml)=(MT2−M0)/V
ここで、式の右辺の変数は、次のとおりである。
MT2: タップ後の紛体と測定用容器の合計質量(g)
M0: 測定用容器の質量(g)
V: 測定用容器の容量(ml)
【0145】
右辺の変数は、次のように測定した。
かさ比重測定器(容量25ml、JIS Z 2504/筒井理化学器械)の重量(M0)を測定後、測定器の上部から、測定器内にあふれるまで結晶を入れ、測定器内が結晶で十分に満たされたのを確認後、測定器上部に堆積した過剰量の結晶をスパーテルで擦りきり、全体の重量(MT1)を量った。
この測定器を手で30回程度タッピングし、再び測定器上部からあふれるまで結晶を入れる。この工程を数回繰り返し、測定器内が結晶で十分に満たされたのを確認後、スパーテルで擦りきり、全体の質量(MT2)を量った。
これらの変数を上記の式に与えて定容量法による嵩密度及び定容量法によるタップ密度を算出した(表8)。
【0146】
例4で得た未粉砕のメタノール水C晶及び市販のA晶については、紛体が綿状であるために、容器内に大きな空隙ができてしまうとともに、容器の上に盛り上げってしまうため、定容量法による嵩密度は測定できなかった。
例3で得た未粉砕のアセトニトリルC晶のタップ密度は、例4で得た未粉砕のメタノール水C晶のタップ密度と比べて3.1倍高かった。また、例3で得た未粉砕のアセトニトリルC晶のタップ密度は、市販のA晶のタップ密度と比べて2.4倍高かった。
【0147】
【表8】
【0148】
例17:アセトニトリルC晶のジェットミル粉砕物の溶解速度
例5で得たアセトニトリルC晶のジェットミル粉砕物(粉砕圧力3kgf・供給圧力4kgf)の溶解速度を例3で得た未粉砕のアセトニトリルC晶及び市販のA晶(D50=19μm;Beijing Lianben Pharm−chemicals Tech.Co.,Ltd./北京連本医薬化学技術有限公司より購入)と比較した。なお、例3で得た未粉砕のアセトニトリルC晶は、目開き16メッシュの篩過品を用いた。試料100mg及びマグネット撹拌子(スターラーバー)を200mlのコニカルビーカーに入れ、溶出試験第1液(pH1.2)、pH5.5のMcllvaine緩衝液、溶出試験第2液(pH6.8)、及び水をそれぞれ100mlを加え、ヤマト科学(Yamato)製マグミキサーM−41を用い、毎分500回転で撹拌した。経時的に試験液の一部を採取し、フィルターでろ過して試料溶液とし、標準溶液に対して吸光度測定法(測定波長317nm)により試験した。
【0149】
試験結果を
図26に示す。溶出試験第1液(pH1.2)に対する、アセトニトリルC晶のジェットミル粉砕物の3分後及び5分後の溶解速度は、A晶よりも速かった。また、水に対する、アセトニトリルC晶のジェットミル粉砕物の1分後〜10分後の溶解速度は、A晶よりも未粉砕のアセトニトリルC晶よりも速かった。さらに、pH5.5のMcIlvaine緩衝液及び溶出試験第2液(pH6.8)に対する、アセトニトリルC晶のジェットミル粉砕物の溶解速度および溶解量は、未粉砕のアセトニトリルC晶と比較して高値を示し、市販のA晶と同等であった。
これらの結果から、溶出試験第1液(pH1.2)、pH5.5のMcIlvaine緩衝液、溶出試験第2液(pH6.8)、及び水のいずれに対しても、アセトニトリルC晶のジェットミル粉砕物は、市販のA晶と同等か市販のA晶以上の溶解速度を示す優れた原薬であることがわかった。
【0150】
例18:アセトニトリルC晶のジェットミル粉砕物を含む錠剤の溶出速度
例5で得たアセトニトリルC晶のジェットミル粉砕物(粉砕圧力3kgf・供給圧力4kgf)を用いて特許4084309号明細書の実施例1の処方に従って錠剤を製造した。例3で得た未粉砕C晶(目開き16メッシュの篩過品)又はA晶(D50=19μm,Beijing Lianben Pharm−chemicals Tech.Co.,Ltd./北京連本医薬化学技術有限公司より購入)を用いて同様に錠剤を製造して溶出プロファイルを比較した。各結晶50.0g、乳糖水和物(SuperTab 11SD、DFE Pharma製)183.8g、部分アルファー化デンプン(PC−10、旭化成ケミカルズ製)37.5g、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC−SL、日本曹達製)7.5g、クロスカルメロースナトリウム(ND−200、旭化成ケミカルズ製)31.3gを乳鉢を使用して混合した。精製水93gを混合末に加えて練合した。得られた湿潤顆粒を8号メッシュで整粒した後、50℃で通風乾燥させ、顆粒を得た。得られた顆粒を22号メッシュで整粒した後、篩過顆粒290gにステアリン酸マグネシウム(太平化学産業製)9.4gをポリ袋にて混合し、打錠用顆粒を得た。この打錠用顆粒をロータリー式打錠機(VELA5、菊水製作所製、打錠圧2500kgf/cm
2)で打錠し7mm径の錠剤を得た。
【0151】
試験液としてpH5.5のMcIlvaine緩衝液900mlを用い、パドル法により毎分60回転で富山産業(Toyama)恒温水槽式溶出試験器NTR−6200Aを用いて撹拌した。5分間、10分間、15分間、30分間、45分間、60分間の各時間攪拌後に試験液をフィルターでろ過して試料溶液とし、標準溶液に対して吸光度測定法(測定波長317nm)によりフェブキソスタットの濃度を測定した。例5で得られたアセトニトリルC晶のジェットミル粉砕物を含む錠剤は、全ての撹拌時間において、未粉砕のアセトニトリルC晶を含む錠剤よりも早い溶出を示し、60分攪拌後には、未粉砕のアセトニトリルC晶と比較して約20%高い溶出率を示した。また、アセトニトリルC晶のジェットミル粉砕物を含む錠剤は、撹拌開始から5分後、10分後及び15分後の時点において、A晶を含む錠剤、F錠、フィルムコーティング剥離したF錠のいずれと比較しても、より速い溶出速度を示し、最終的にこれらのA晶を含有する錠剤と同等の約95%の溶出率を示した(
図27)。
【0152】
例19:アセトニトリルC晶のジェットミル粉砕物の安定性試験
例5で得たアセトニトリルC晶のジェットミル粉砕物(粉砕圧力3kgf、供給圧力4kgf)を褐色ガラス瓶(蓋はポリエチレンの中蓋が付いたポリプロピレン製。)または厚さ0.04mmのポリエチレン袋に入れて密封し、長期保存試験(25℃±2℃/60%RH±5%)、および、加速試験(40℃±2℃/75%RH±5%)の各条件下での安定性を検討した。 安定性の測定は、乾燥減量、HPLCによる純度試験および粉末X線回折を測定することにより行った。
【0153】
アセトニトリルC晶のジェットミル粉砕物の乾燥減量:
乾燥減量とは、文字通り、乾燥による重量変化の試験である。乾燥減量の測定は、アセトニトリルC晶1グラムを長期保存試験条件で3ヶ月保存した場合と、加速試験条件で1ヶ月および3ヶ月保存した場合の夫々について、その乾燥減量測定した。測定は、乾燥機(IKEDA RIKA AUTOMATIC OVEN DEK)を用いて105℃で2時間乾燥させたときの質量を天秤にて測定することにより行った。
表9に示すように、3ヶ月までの加速試験と長期保存試験において、問題となるレベルの乾燥減量は観察されなかった。
【0154】
【表9】
【0155】
アセトニトリルC晶のジェットミル粉砕物の純度試験:
HPLCによる純度試験は、長期保存試験条件で3ヶ月および6ヶ月保存した場合と、加速試験条件で1ヶ月、3ヶ月および6ヶ月保存した場合について測定した。
まず、測定試料10mgを移動相25mLに溶かし、試料溶液とした。この試料溶液を1mL分取し、移動相を加えて200mLとし、標準溶液とした。試料溶液及び標準溶液、10μLずつを正確とり、次の条件で液体クロマトグラフィーにより試験を行った。試料溶液中のフェブキソスタットのピーク面積と、類縁物質のピーク面積の比により純度を算出した。長期保存条件下においても(
図28)、加速条件下においても(
図29)、6ヶ月の保存期間中、不純物の総量はフェブキソスタットの約0.05%で一定しており、不純物の総量の変化は見られなかった。同様に、個々の不純物の中で最もピーク面積の大きな不純物(保持時間2.6min)は、長期保存条件下においても、加速条件下においても、6ヶ月の保存期間中、約0.035%で一定しており、最も多く含まれる不純物の量に変化は見られなかった。このように、長期保存条件および加速条件の夫々において、アセトニトリルC晶のジェットミル粉砕物中に不純物の増加は認められなかった。
【0156】
試験条件
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:320nm)
カラム:内径4.6mm、長さ15cmのステンレス管に粒子径5μmのオクタデシルシリル化シリカゲルが充填された市販のカラムを用いた。
カラム温度:40℃
移動相:アセトニトリル/pH2.0の0.1mol/Lリン酸二水素カリウム液を2倍に希釈した液=13/7
流量:フェブキソスタットの保持時間が約5分になるように調整する(約1mL/min)。
面積測定範囲:フェブキソスタットの保持時間の約6倍の範囲
【0157】
測定機器
SHIMADZU 高速液体クロマトグラフ装置
ポンプ :LC−20AD
オートサンプラー :SIL−20ACHT
UV検出器 :SPD−M20A
カラムオーブン :CTO−20AC
デガッサ :DGU−20A3R
【0158】
アセトニトリルC晶のジェットミル粉砕物の粉末X線回折:
粉末X線回折は、アセトニトリルC晶のジェットミル粉砕物をポリエチレン袋中に密封した試料、および、同じ試料を褐色ガラス瓶に入れた試料の夫々について、長期保存試験条件と加速試験条件の夫々について3ヶ月保存したサンプルを測定した。測定方法は、例6と同様であった。
図30に示すように、ポリエチレン袋中に密封して加速条件下で3ヶ月保存した場合、褐色ガラス瓶に入れて加速条件下で3ヶ月保存した場合、ポリエチレン袋中に密封して長期保存下で3ヶ月保存した場合、褐色ガラス瓶に入れて長期保存条件下で3ヶ月保存した場合、のいずれも、粉末X線回折チャートにおけるピークの位置及び強度に変化はないことから、保存期間中に結晶形に変化はなかったことが確認できた。
【0159】
例20:アセトニトリルC晶のジェットミル粉砕物を用いた試作錠の安定性
例5で得たアセトニトリルC晶のジェットミル粉砕物(粉砕圧力3kgf、供給圧力4kgf)を用いて20mgのフェブキソスタットを含有する素錠(以下、「試作素錠(MeCN粉砕)」という。)とフィルムコーティング錠(以下、「試作FC錠(MeCN粉砕)」という。)を作製し、夫々について、加速試験(40℃±2℃/75%RH±5%)、および、苛酷試験(60℃±2℃/湿度コントロールなし)の各条件下での安定性を検討した。測定項目としては、硬度、重量、溶出性及び純度を測定した。なお、比較のため、FC錠である市販のF錠(10mg錠:ロット番号5051及び5049、20mg錠:ロット番号6062及び6056、40mg錠:ロット番号8016)についても同じ測定を行った。
【0160】
素錠の作製は、以下のように行った。まず、アセトニトリルC晶のジェットミル粉砕物70.0g、乳糖水和物263.9g、部分アルファー化デンプン64.8g、ヒドロキシプロピルセルロース10.5g、を撹拌混合造粒装置(VG−5、パウレック製)を使用して混合した。次に、精製水102gを混合末に加えて練合した。得られた湿潤顆粒を湿式乾式整粒機(QC−197s、パウレック製)φ4.75mmを使用して整粒した後、50℃で通風乾燥させ、顆粒を得た。得られた顆粒を湿式乾式整粒機(QC−197s、パウレック製)φ1.1mmで整粒した後、篩過顆粒185gにクロスカルメロースナトリウム11.9gをポリ袋にて混合した後、ステアリン酸マグネシウム1gをポリ袋にて混合し、打錠用顆粒を得た。この打錠用顆粒をロータリー式打錠機(VELA5、菊水製作所製、打錠圧2500kgf/cm2)で打錠し7mm径の素錠(重量125mg)を得た。
【0161】
フィルムコーティング錠の作製は、以下のように行った。まず、アセトニトリルC晶のジェットミル粉砕物70.0g、乳糖水和物263.9g、部分アルファー化デンプン64.8g、ヒドロキシプロピルセルロース10.5gを撹拌混合造粒装置(VG−5、パウレック製)を使用して混合した。次に、精製水102gを混合末に加えて練合した。得られた湿潤顆粒を湿式乾式整粒機(QC−197s、パウレック製)φ4.75mmを使用して整粒した後、50℃で通風乾燥させ、顆粒を得た。得られた顆粒を湿式乾式整粒機(QC−197s、パウレック製)φ1.1mmで整粒した後、篩過顆粒185gにクロスカルメロースナトリウム11.9gをポリ袋にて混合した後、ステアリン酸マグネシウム1gをポリ袋にて混合し、打錠用顆粒を得た。この打錠用顆粒をロータリー式打錠機(VELA5、菊水製作所製、打錠圧2500kgf/cm2)で打錠し7mm径の素錠(重量125mg)を得た。次に、ヒプロメロース25.2g、2.8gのマクロゴール6000を精製水289.6gに溶解し、コーティング液を作製した。得られた素錠に、調製したコーティング液を自動コーティング装置を用いて、給気70℃にて7mg/錠の被覆を行い、フィルムコート錠を得た。
【0162】
試作錠の硬度試験:
試作素錠(MeCN粉砕)(20mg錠)、試作FC錠(MeCN粉砕)(20mg錠)、F錠(10mg錠、20mg錠、40mg錠)の夫々について、長期保存条件(3ヶ月、6ヶ月)、加速条件(1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月)及び苛酷条件(1ヶ月、3ヶ月)で保存した後の硬度をOKADA SEIKO PC−30を用いて測定し、測定開始時の硬度と比較した(表10)。ただし、表中、「−」と表示されている条件での測定は行っていない。試作素錠(MeCN粉砕)も、試作FC錠(MeCN粉砕)も、F錠に対して遜色ない十分な硬度を有し、保存による硬度の低下は見られなかった。
【0163】
【表10】
※ 硬度の単位はニュートン(N)である。
【0164】
試作錠の重量変化:
試作素錠(MeCN粉砕)(20mg錠)、試作FC錠(MeCN粉砕)(20mg錠)、F錠(10mg錠、20mg錠、40mg錠)の夫々について、長期保存条件(3ヶ月、6ヶ月)、加速条件(1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月)及び苛酷条件(1ヶ月、3ヶ月)で保存した後の重量の変化を測定し、測定開始時の重量と比較した(表11)。ただし、表中、「−」と表示されている条件での測定は行っていない。試作素錠(MeCN粉砕)も、試作FC錠(MeCN粉砕)も、F錠と同様に、重量の変化は3%未満であり、保存期間中を通じて問題となるレベルの重量変化は認められなかった。
【0165】
【表11】
※ 重量の単位はミリグラム(mg)である。
【0166】
試作錠の溶出性:
試作素錠(MeCN粉砕)(20mg錠)、試作FC錠(MeCN粉砕)(20mg錠)、F錠(10mg錠、20mg錠、40mg錠)の夫々について、長期保存条件(3ヶ月、6ヶ月)、加速条件(1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月)及び苛酷条件(1ヶ月、3ヶ月)で保存した後に、日本薬局方の溶出試験第2液(pH6.8)中でパドル速度50rpmで30分間撹拌した後の溶出率を、紫外可視分光光度計を用いて測定し、測定開始時の溶出率と比較した(表12)。ただし、表中、「−」と表示されている条件での測定は行っていない。試作素錠(MeCN粉砕)も、試作FC錠(MeCN粉砕)も、F錠と同様に、94%以上の溶出率が保たれており、保存期間中を通じて問題となるレベルの溶出率の変化は認められなかった。
【0167】
【表12】
※ 溶出率の単位はパーセント(%)である。
【0168】
試作錠の純度試験:
試作素錠(MeCN粉砕)(20mg錠)、試作FC錠(MeCN粉砕)(20mg錠)、F錠(10mg錠、20mg錠、40mg錠)の夫々について、加速条件(1ヶ月、3ヶ月)及び苛酷条件(1ヶ月、3ヶ月)で保存した後に、例19の純度試験と同様の方法で不純物の量を経時的に測定した(
図31、
図32)。ただし、F錠(10mg錠、20mg錠、40mg錠)については、加速条件下でのみ6ヶ月まで測定した。なお、錠剤からの抽出は、1錠を取り原薬10mgに対して移動相25mL相当量に溶解分散し、試料溶液とした。この試料溶液を1mL分取し、移動相を加えて200mLとし、標準溶液とした.加速条件下においても(
図31)、苛酷条件下においても(
図32)、試作素錠(MeCN粉砕)、試作FC錠(MeCN粉砕)ともに、F錠と同様に、3ヶ月の保存期間中、不純物の総量はフェブキソスタットの総量の0.1%以下であり、不純物の総量の変化は見られなかった。同様に、個々の不純物の中で最もピーク面積の大きな不純物(保持時間2.6min)は、加速条件下においても、苛酷条件下においても、3ヶ月の保存期間中、0.040%未満の水準で一定しており、最も多く含まれる不純物の量に変化は見られなかった。このように、加速条件および苛酷条件の夫々において、試作素錠(MeCN粉砕)(20mg錠)及び試作FC錠(MeCN粉砕)(20mg錠)に含まれる不純物の増加は認められなかった。
【0169】
例21:試作FC錠(MeCN粉砕)の溶出試験
例20で作製した試作FC錠(MeCN粉砕)(20mg錠)について、日本薬局方の溶出試験第1液(pH1.2)、McIlvain緩衝液(pH5.0)、溶出試験第2液(pH6.8)、精製水に対する溶出試験を行って、F錠(20mg錠)の溶出特性と対比した(
図33)。なお、溶出試験方法は例18と同様の方法で行った。
いずれの条件においても、アセトニトリルC晶のジェットミル粉砕物を用いて作製した試作FC錠(MeCN粉砕)(20mg錠)の試験液への溶出率は、F錠(20mg錠)の溶出率とほぼ同じか若干上回っており、良好な溶出特性を示した(
図33)。
【0170】
例22:比表面積の測定
例3で得た未粉砕のアセトニトリルC晶、例4で得たメタノール水C晶、例5で得たアセトニトリルC晶のジェットミル粉砕物(粉砕圧力3kgf・供給圧力4kgf)、例12で調製したA晶のハンマーミル粉砕物の夫々について、BET多点法を用いて比表面積を測定した。BET法は、低温において窒素やクリプトンなどの気体を固体の表面に単分子層で吸着させ、その吸着気体量を測定して夫々の分子の占める面積から固体の表面積を求める方法である。
【0171】
BET多点法による比表面積測定の測定機器及び測定条件は次のとおりであった。
測定機器: 4連式比表面積・細孔分布測定装置 NOVA−4200e型(Quantachrome社製)
使用ガス: 窒素ガス
冷媒(温度): 液体窒素(77.35K)
前処理条件: 110℃、6Hr以上真空脱気
測定相対圧力: 0.05<P/P0<0.3
【0172】
【表13】
【0173】
表13に示すように、未粉砕のメタノール水C晶の表面積は0.172m
2/gに過ぎなかったものが、未粉砕のアセトニトリルC晶の表面積は5.757m
2/gに増加し、33.5倍に面積が増加していた。未粉砕のメタノール水C晶は、日本薬局方への崩壊試験用第2液への溶解速度がA晶の1/2以下であることが問題であったが、未粉砕のアセトニトリルC晶は未粉砕のメタノール水C晶の33.5倍も大きな表面積を有するので、溶出性に優れることが容易に理解できる。
そして、さらにこれをジェットミル粉砕することにより、表面積は9.001m
2/gに増加し、未粉砕のアセトニトリルC晶の表面積の1.6倍に表面積が増加した。未粉砕のメタノール水C晶とアセトニトリルC晶のジェットミル粉砕物の表面積を対比すると、表面積は実に52.3倍に表面積が増加していた。アセトニトリルC晶のジェットミル粉砕物の表面積は、市販のA晶をハンマーミルで粉砕した試料の表面積の約1.2倍あることからわかるように、大きな表面積を有することが確認できた。アセトニトリルC晶のジェットミル粉砕物は未粉砕のメタノール水C晶の52.3倍も大きな表面積を有するので、とても溶出性に優れることが容易に理解できる。
【0174】
例23:原薬の外観
例3で得た未粉砕のアセトニトリルC晶、例4で得たメタノール水C晶、例5で得たアセトニトリルC晶のジェットミル粉砕物(粉砕圧力3kgf・供給圧力4kgf)、アセトニトリルC晶のボールミル粉砕物、未粉砕のA晶(例12および例16を参照)の夫々について、安息角の測定を試みたが、安息角が測定できないほどに流動性の悪い紛体であった。
そこで、安息角を測定する代わりに、各試料を肉眼視したときの外観を撮影した。
【0175】
未粉砕のメタノール水C晶(
図34)は、ふわふわした綿毛状の嵩高い塊であり、未粉砕のA晶よりも大きな1mmを超えるサイズの針状晶が目視で確認できた。
未粉砕のアセトニトリルC晶(
図35)は、やや嵩高い塊を形成する傾向があるが、未粉砕のメタノール水C晶よりも小さく、かつ、未粉砕のメタノール水C晶よりも密度の高い塊であった。未粉砕のアセトニトリルC晶の塊の周囲を良く目を凝らして見ると、小さな針状晶らしきものが確認できた。
【0176】
アセトニトリルC晶のジェットミル粉砕物(
図36)も、塊を形成する傾向があったが、針状晶らしき構造は見えず、プラスチックスプーンで均すと、容易に平らになり、きめ細かな微粒子が寄り集まっていることがわかった(
図37)。
アセトニトリルC晶のボールミル粉砕物(
図38)も、塊を形成する傾向があったが、針状晶らしき構造は見えず、アセトニトリルC晶のジェットミル粉砕物と同様にプラスチックスプーンで均すと、容易に平らになり、崩れやすいきめ細かな微粒子が寄り集まっていることがわかった。
アセトニトリルC晶のジェットミル粉砕物(
図36)とアセトニトリルC晶のボールミル粉砕物(
図38)は、写真では塊を形成してはいるが、とても崩れやすい塊であり、スパーテルで掬い取った際の粉の動きはコーンスターチ(
図39)や片栗粉(
図40)の粉の動きにとてもよく似ていた。アセトニトリルC晶のジェットミル粉砕物は、優れたハンドリング性を有することが確認できた。
【0177】
例24:
13C固体NMRによる結晶形の同定
A晶を含有する製剤は(以下、「A晶製剤」という。)、及び、例20で作製した未粉砕のアセトニトリルC晶を含有する素錠(以下、「C晶製剤」という。)の
13C固体NMRを測定するとともに、例12で調製したA晶のハンマーミル粉砕物(以下、「A晶原体」という。)、及び、アセトニトリルC晶のジェットミル粉砕物(以下、「C晶原体」という。)の
13C固体NMRを測定して対比し、製剤中に含まれるフェブキソスタット原薬の結晶形を確認した。
なお、A晶を含有する製剤、及び、アセトニトリルC晶のジェットミル粉砕物を含有する素錠については、ラップでくるんで軽く小槌で数回たたいて粉砕した試料を測定に用いた。
また、A晶製剤は、次のように作製した。まず、市販のA晶(D50 19μm;北京連本医薬化学技術有限公司/Beijing Lianben Pharm−chemicals Tech.Co.,Ltd.から購入したもの)20.0g、乳糖水和物75.4g、部分α化デンプン18.5g、ヒドロキシプロピルセルロース3.0gを乳鉢を使用して混合した。次に、精製水36.6gを混合末に加えて練合した。得られた湿潤顆粒を14号メッシュで整粒した後、50℃で通風乾燥させ、顆粒を得た。得られた顆粒を20号メッシュで整粒した後、篩過顆粒116.9gにクロスカルメロースナトリウム7.5g、ステアリン酸マグネシウム0.6gをポリ袋にて混合し、打錠用顆粒を得た。この打錠用顆粒をロータリー式打錠機(VELA5、菊水製作所製、打錠圧2500kgf/cm2)で打錠し、重量125mg、7mm径の素錠を得た。
固体NMRの測定は、
13C(100.5MHz)の核種を用い、各試料約49μlを直径3.2mmの固体NMR試料管に詰めて、室温で、15kHzの回転速度で測定した。測定機器及び測定条件は下記のとおりであった。
【0178】
測定機器: JNM−ECA600II
測定プローブ: 3.2mm CPMASプローブ
13C−CPMAS測定条件:
・測定モード cpmas_toss.jxp コンタクトタイム 2ms
・取込時間 33.9ms 待ち時間 3.5sec 積算回数 2200回(原薬)および8800回(製剤)
・ウィンドウ関数 EXPモード BF=20Hz
(Tossモードを使用してSSBを消去)
*化学シフトの基準はアダマンタンの信号(13C=29.5ppm)でシムZ0を調整した。
【0179】
図41に示すように、C晶原体及びC晶製剤の
13C固体NMRチャートでは、約20ppmにほぼ等価なトリプレットピーク(特許第4084309号公報の参考例3を参照)を有する一方で、A晶原体及びA晶製剤の
13C固体NMRチャートには、これらのピークが存在しなかったので、C晶の原薬を用いて湿式造粒して製造した錠剤中の結晶形がC晶のまま、結晶転移を生じていないことを、
13C固体NMRによって確認することができた。また、A晶原体及びA晶製剤の
13C固体NMRチャートでは、約19ppmにほぼ等価なダブルピークを有する一方で、C晶原体及びC晶製剤の
13C固体NMRチャートには、これらのピークが存在しなかったので、A晶の原薬を用いて製造した錠剤中の結晶形がA晶のまま、結晶転移を生じていないことを、
13C固体NMRによって確認することができた。
【0180】
なお、同様に、
図41のチャートから、A晶原体及びA晶製剤の
13C固体NMRチャートには存在せずに、C晶原体及びC晶製剤の
13C固体NMRチャートには存在するC晶に特徴的なピークとして、約28.5ppmのシングルピーク(A晶原体及びA晶製剤ではダブルピークとなっている)、約100ppmのシングルピーク、約114ppmのシングルピーク(A晶原体及びA晶製剤ではダブルピークとなっている)、約125ppmのシングルピーク、約131ppmのシングルピーク(A晶原体及びA晶製剤ではダブルピークとなっている)、約135ppmのシングルピーク、及び、約159ppmのシングルピーク、約167ppmのシングルピークが存在するので、これらのピークを手がかりとして、錠剤中のC晶を容易に同定することが可能である。
【0181】
さらに、
図41のチャートから、C晶原体及びC晶製剤の
13C固体NMRチャートには存在せずに、A晶原体及びA晶製剤の
13C固体NMRチャートには存在するA晶に特徴的なピークとして、約19ppmのダブルピーク、約102ppmのシングルピーク、約120ppmのダブルピーク、約126ppmのダブルピーク、約130ppm〜約132ppmのダブルピーク、約134ppmのダブルピーク、約162ppmのシングルピーク、約168.5ppmのシングルピーク(右側に肩を伴う)、が存在するので、これらのピークを手がかりとして、錠剤中のA晶を同定することも容易である。
【0182】
例25:ラマン顕微鏡による観察
錠剤中のフェブキソスタットのC晶の結晶形、形態及び大きさをラマン顕微鏡を用いて観察した。
事前に、Renishaw社のinVia Reflex/StreamLineを用いて、フェブキソスタットのA晶及び試作錠(MeCN)の製造に用いた各成分のラマンスペクトルを確認した。その結果、C晶は約1695shift/cm−1のピークによって、A晶及び各添加剤と区別できることがわかった(
図42及び
図43)。また、A晶は、約1450shift/cm−1、約1330shift/cm−1のピークによって、C晶及び各添加剤と区別できることがわかった(
図42及び
図43)。
ラマン顕微鏡はRenishaw社の顕微レーザーラマン分光装置inVia Reflex/StreamLineを用い、ラマンイメージングを測定した。
測定条件は、下記のとおりであった。
励起波長 785nm STline
レーザー出力 50%(45mW/line)
露光時間 0.88sec/line
グレーティング 1200l/mm
マッピングエリア 1000×1000um(1.2umstep)
取得スペクトル 695556(5h45m)
対物レンズ X50
例20で作製した試作FC錠(MeCN粉砕)(20mg錠)の表面を切削し観察した。
【0183】
C晶のラマンイメージングの画像及び粒子解析の結果を夫々
図44と
図45に示す。顕微鏡画像(
図44)から、少なくとも直径10μm未満のC晶の微細な粒子が多数確認できた。また、粒子解析の結果(
図45)から、直径5μm以下の粒子(
図45の左端のX軸の隣の棒)が大多数であることが確認できた。C晶の粒子が多数密集している場合には、画像だけでは、大きな粒子のように見えてしまうことは容易に想定できるので、ほとんどのC晶の粒子は直径5μm以下であると考えられた。走査型電子顕微鏡型の顕微ラマン装置(例えばRenishaw社の「ラマン複合システム SEM ラマン」)を用いれば、密集している粒子を峻別して観察確認可能であろうと考えられた。
【0184】
例26:共焦点レーザー蛍光顕微鏡による観察
フェブキソスタットは、励起波長314nm、蛍光波長390nmで蛍光観察できることが非特許文献9に記載されていることから、実際に、錠剤中に含まれるフェブキソスタット原薬の形態及び大きさを観察することが可能かどうかを検証した。
共焦点レーザー蛍光顕微鏡は、Leica社製のTCS−SP5を用いた。試料は紫外光で励起すると蛍光を発することが予備実験で分かっていたので、405nmの励起光を用いて蛍光を観察した。TCS−SP5では、405nmの単一波長の励起光を半導体レーザーを用いて発生させるため、励起フィルターは不要である。今回の観察では、COHERENT社製の小型ダイオードレーザモジュールを用いて405nmの励起光を発生させた。また、TCS−SP5では、ダイクロイックミラーの機能を果たすものとして、SP5専用に設計されたライカ製ビームスプリッターを用いた。TCS−SP5は、蛍光波長をプリズムと可動式のスライダーを用いて分光してスキャンするため5nm単位で蛍光波長の自由な設定ができる。
【0185】
なお、フェブキソスタットについて非特許文献9に記載されている励起波長314nm、蛍光波長390nmは、いずれも、レンズを透過しにくい400nm以下の紫外波長域に属するため、蛍光顕微鏡観察を行うためには、より可視波長域の光で観察することが望ましい。
そして、一般に、ある物質の励起波長と蛍光波長は、一定の幅を有していることが多いため、蛍光顕微鏡観察を行うに先立つ予備検討として、まず、各結晶を可視波長域ぎりぎりの405nmの光で励起したときの蛍光スペクトル特性を確認した。
【0186】
なお、蛍光スペクトル特性の確認は、TCS−SP5を用いたλスキャンにより、単一の光学断層像について、405nmの励起光(出力レベルが15、25、あるいは35%)を照射し、蛍光を410nmから781.7nmの範囲で、スリット幅5nmで、5.9nm間隔で検出した。画像フォーマットは、512 x 512pixel、スキャン速度は400Hz、シグナルの平均化はラインモード2で行った。
【0187】
その結果、未粉砕のメタノール水C晶、未粉砕のアセトニトリルC晶、アセトニトリルC晶のジェットミル粉砕物、アセトニトリルC晶のボールミル粉砕物のいずれの試料についても、405nm(出力レベルが15%あるいは20%)の励起波長に対して420nm〜600nmの波長域に強い蛍光を発することを確認したので、以後の蛍光顕微鏡観察は励起波長405nm、蛍光波長420nm〜600nmで観察を行うことにした。
【0188】
なお、比較のため緑色蛍光および赤色蛍光も測定した。緑色蛍光に関しては、励起波長は488nm(出力レベル10%)、蛍光は500−550nmの波長域で取得し、赤色蛍光に関しては、励起波長は543nm(出力レベル40%)、蛍光は555−620nmの波長域で取得した。蛍光検出器は高感度蛍光検出器HyDを用いた。検出感度については、青色蛍光、緑色蛍光、赤色蛍光のいずれの場合も、HyDの取得ゲインは100%とした。Z−stackは、対物レンズが20倍、25倍、63倍、100倍の場合に、光学断層像の間隔をそれぞれ2.5μm、1μm、0.5μm、あるいは0.5μmとして観察し、最大投影法で行った。スキャン速度は200Hz、シグナルの平均化はラインモード3で行った。画像フォーマットは、512 x 512pixelあるいは1024 x 1024pixelとした。Photon counting modeでは、スキャン速度は10Hz、シグナルの平均化はラインモード1で行った。
その結果、緑色蛍光および赤色蛍光では、ほとんど蛍光はみられないことを確認した。
【0189】
共焦点レーザー蛍光顕微鏡観察は、(1)未粉砕のメタノール水C晶、(2)未粉砕のアセトニトリルC晶、(3)アセトニトリルC晶のジェットミル粉砕物、(4)アセトニトリルC晶のボールミル粉砕物、(5)未粉砕のアセトニトリルC晶を用いて作製した試作錠、(6)アセトニトリルC晶のジェットミル粉砕物を用いて作製した試作錠、(7)プラセボ錠、(8)乳糖水和物、(9)部分α化デンプン、(10)ヒドロキシプロピルセルロース、(11)クロスカルメロースナトリウム、(12)ステアリン酸マグネシウム、(13)ヒプロメロース、(14)マクロゴール6000の夫々について行った。
【0190】
未粉砕のアセトニトリルC晶を用いて作製した試作錠(以下、「MeCN−C素錠」という。)は、次のようにして作製した。
まず、未粉砕のアセトニトリルC晶50.0g、乳糖水和物183.8g、部分アルファー化デンプン37.5g、ヒドロキシプロピルセルロース7.5g、クロスカルメロースナトリウム31.3gを乳鉢を使用して混合した。次に精製水93gを混合末に加えて練合した。得られた湿潤顆粒を8号メッシュで整粒した後、50℃で通風乾燥させ、顆粒を得た。得られた顆粒を22号メッシュで整粒した後、篩過顆粒290gにステアリン酸マグネシウム9.4gをポリ袋にて混合し、打錠用顆粒を得た。この打錠用顆粒をロータリー式打錠機(VELA5、菊水製作所製、打錠圧2500kgf/cm2)で打錠し7mm径のMeCN−C素錠を得た。MeCN−C素錠の重量は128mgであった。
【0191】
アセトニトリルC晶のジェットミル粉砕物を用いて作製した試作錠(以下、「粉砕MeCN−C素錠」という。)は、次のようにして作製した。
まず、アセトニトリルC晶のジェットミル粉砕物70.0g、乳糖水和物263.9g、部分アルファー化デンプン64.8g、ヒドロキシプロピルセルロース10.5gを撹拌混合造粒装置(VG−5、パウレック製)を使用して混合した。次に精製水102gを混合末に加えて練合した。得られた湿潤顆粒を湿式乾式整粒機(QC−197s、パウレック製)φ4.75mmを使用して整粒した後、50℃で通風乾燥させ、顆粒を得た。得られた顆粒を湿式乾式整粒機(QC−197s、パウレック製)φ1.1mmで整粒した後、篩過顆粒185gにクロスカルメロースナトリウム11.9gをポリ袋にて混合した後、ステアリン酸マグネシウム1gをポリ袋にて混合し、打錠用顆粒を得た。この打錠用顆粒をロータリー式打錠機(VELA5、菊水製作所製、打錠圧2500kgf/cm2)で打錠し7mm径の粉砕MeCN−C素錠を得た。粉砕MeCN−C素錠の重量は125mgであった。
【0192】
プラセボ錠は、次のようにして作製した。
まず、乳糖水和物333.9g、部分α化デンプン64.8g、ヒドロキシプロピルセルロース10.5g、を撹拌混合造粒装置(VG−5、パウレック製)を使用して混合した。次に精製水102gを混合末に加えて練合した。得られた湿潤顆粒を湿式乾式整粒機(QC−197s、パウレック製)φ4.75mmを使用して整粒した後、50℃で通風乾燥させ、顆粒を得た。得られた顆粒をφ1.1mmを使用して整粒した後、篩過顆粒185gにクロスカルメロースナトリウム11.9gをポリ袋にて混合した後、ステアリン酸マグネシウム1gをポリ袋にて混合し、打錠用顆粒を得た。この打錠用顆粒をロータリー式打錠機(VELA5、菊水製作所製、打錠圧2500kgf/cm2)で打錠し7mm径のプラセボ錠を得た。プラセボ錠の重量は125mgであった。
【0193】
MeCN−C素錠、粉砕MeCN−C素錠、プラセボ錠の処方を表14に記載する。
【表14】
※ 表中の単位はミリグラム(mg)である。
【0194】
各結晶および添加剤についてはそのまま実験に使用した。一方、錠剤試料は、薬包紙に包んだ状態で、木槌で数回(5から7回)強打して、錠剤を粉砕し、粗粉砕物として実験に使用した。
観察は、各結晶、添加剤、および、錠剤の粗粉砕物を微量、スライドガラス(MATSUNAMI製)にのせ、共焦点レーザー蛍光顕微鏡(Leica社製、TCS SP5)により観察を行った。
【0195】
その結果、以下の観察結果を得た。
図46〜
図53はすべて白黒であるが、これらの図の右側の画像において、白い部分は、青い蛍光を発している。
(1)未粉砕のメタノール水C晶(
図46)
未粉砕のメタノール水C晶については、
図17〜
図19の走査電子顕微鏡写真と同様の形状及び大きさの蛍光画像および微分干渉画像が観察された(
図46)。
図46の結晶は長軸の長さが約670μmの針状晶であるが、1mmを超える長さの針状晶も多数蛍光観察された。なお、針状晶の端部で特に蛍光が強かった。また、蛍光画像からもささくれ立った針状晶であることがわかった。長軸の中央部で蛍光の強い小さな点が観察されているのは、
【0196】
(2)未粉砕のアセトニトリルC晶(
図47)
未粉砕のアセトニトリルC晶についても、
図20〜
図22の走査電子顕微鏡写真と同様の形状及び大きさの蛍光画像および微分干渉画像が観察された(
図47)。
図47左の図の右上の結晶は長軸の長さが約82μmの針状晶であるが、これは形状を判りやすく示すために大きめの結晶を選んで撮影したためであり、実際には、
図47左の図の中央付近の結晶のように、長軸の長さが約10μm〜20μmの針状晶が多数蛍光観察された。なお、針状晶の端部で特に蛍光が強かった。また、蛍光画像からもささくれ立った針状晶であることがわかった。
【0197】
(3)アセトニトリルC晶のジェットミル粉砕物(
図48)
アセトニトリルC晶のジェットミル粉砕物についても、
図23〜
図25の走査電子顕微鏡写真と同様の形状及び大きさの蛍光画像および微分干渉画像が観察された(
図48)。矢印の先に直径3μm前後の蛍光を発する粒子が確認できた。
図48左の蛍光画像の中央付近に、直径約17μmの蛍光体が観察されるが、実際には、直径3μm前後の蛍光を発する粒子が多数寄り集まっている構造物である。
図23〜
図25の走査電子顕微鏡写真において直径3μm前後の粒子が多数寄り集まっていることと同様の画像である。蛍光を発しているために輪郭がぼやけて直径約17μmの蛍光体のように見えているが、共焦点レーザー蛍光顕微鏡では、画面手前から奥に向かって多数の断層画像を取得しており、これらの断層画像を追ってゆくと、直径約17μmの蛍光体は実際には直径3μm前後の蛍光を発する粒子であることが確認できた。
【0198】
(4)アセトニトリルC晶のボールミル粉砕物(
図49)
アセトニトリルC晶のボールミル粉砕物については、直径約1μm〜約40μmに渡る様々な大きさの球状粒子の蛍光が観察された(
図49左)。アセトニトリルC晶のジェットミル粉砕物(
図48左)と異なるのは、アセトニトリルC晶のボールミル粉砕物の蛍光粒子は丸みを帯びていることと、粒子の大きさが実際に様々であることであった。
【0199】
(5)プラセボ錠(
図50)
プラセボ錠では青色の蛍光は観察されなかった(
図50左)。
(6)未粉砕のアセトニトリルC晶を用いて作製した試作錠
未粉砕のアセトニトリルC晶を用いて作製した試作錠については、多数の直径5μm前後の蛍光を発する粒子が観察された(
図51左)。微分干渉画像と対比すると、添加物と思われる蛍光を発しない直径20μm〜50μm程度の物体の周囲に付着した状態で直径5μm前後の蛍光を発する粒子が観察されたことがわかった。蛍光を発しない直径20μm〜50μm程度の物体の周囲に直径5μm前後の蛍光を発する粒子が多数付着しているために、画像によっては、直径20μm〜50μm程度の一つの蛍光体のように観察される画像もあったが、画面手前から画像奥に向かって多数の断層画像をを追ってゆくと、実際には直径5μm前後の蛍光を発する粒子が蛍光を発しない物体に周囲に多数付着していたことがわかった。未粉砕のアセトニトリルC晶を用いて作製した試作錠は、造粒過程で未粉砕のアセトニトリルC晶が粉砕されたと考えられた。このように、未粉砕のアセトニトリルC晶は、造粒によって、十分に小さなな粒子粉砕され得るので、良好な保存安定性と溶出性を兼ね備えた製剤に適している優れた結晶であることが確認された。
【0200】
(7)アセトニトリルC晶のジェットミル粉砕物を用いて作製した試作錠(
図52、
図53)
アセトニトリルC晶のジェットミル粉砕物を用いて作製した試作錠については、多数の直径2〜3μm前後のほぼ均一な大きさの蛍光を発する粒子が観察された(
図52左、
図53左)。微分干渉画像と対比すると、短径直径20μm〜30μm、長径50μm〜100μm程度の添加物と思われる蛍光を発しない物体の周囲に付着した状態で直径2〜3μm前後の蛍光を発する粒子が観察されたことがわかった。蛍光を発しない程度の物体の周囲に直径2〜3μm前後の蛍光を発する粒子が多数付着しているために、画像によっては、大きな一つの蛍光体のように観察される画像もあったが、画面手前から画像奥に向かって多数の断層画像をを追ってゆくと、実際には直径2〜3μm前後の蛍光を発する粒子が蛍光を発しない物体に周囲に多数付着していたことがわかった。
【0201】
添加剤
(7)プラセボ錠、(8)乳糖水和物、(9)部分α化デンプン、(10)ヒドロキシプロピルセルロース、(11)クロスカルメロースナトリウム、(12)ステアリン酸マグネシウム、(13)ヒプロメロース、(14)マクロゴール6000、の夫々についても、個々に、共焦点レーザー蛍光顕微鏡による観察を行ったが、いずれの添加剤も、405nmの励起光に対して蛍光は発しないことを確認した。