(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6283373
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】コバルト含有量が少量から0である合金を用いた制御棒駆動装置
(51)【国際特許分類】
G21C 7/16 20060101AFI20180208BHJP
G21D 1/00 20060101ALI20180208BHJP
C22C 19/05 20060101ALN20180208BHJP
C22C 38/00 20060101ALN20180208BHJP
C22C 38/58 20060101ALN20180208BHJP
【FI】
G21C7/16 A
G21D1/00 Y
!C22C19/05 F
!C22C38/00 302L
!C22C38/58
【請求項の数】14
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-549416(P2015-549416)
(86)(22)【出願日】2013年11月26日
(65)【公表番号】特表2016-509204(P2016-509204A)
(43)【公表日】2016年3月24日
(86)【国際出願番号】US2013071818
(87)【国際公開番号】WO2014099294
(87)【国際公開日】20140626
【審査請求日】2016年11月21日
(31)【優先権主張番号】13/721,851
(32)【優先日】2012年12月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508177046
【氏名又は名称】ジーイー−ヒタチ・ニュークリア・エナジー・アメリカズ・エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】GE−HITACHI NUCLEAR ENERGY AMERICAS, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】クレジング,マリア・クリスティン
(72)【発明者】
【氏名】デュルカ,キャサリン・プロシック
(72)【発明者】
【氏名】キャグラーカン,イーロイ
【審査官】
長谷川 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭62−170883(JP,A)
【文献】
特開昭59−085995(JP,A)
【文献】
米国特許第05524030(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 7/10
G21C 7/16
G21D 1/00
C22C 19/05
C22C 38/00
C22C 38/58
B22F 5/00
F16K 3/00
F16K 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御棒駆動装置(100)であって、
近位端及び反対側の遠位端を有する円筒ハウジング構造(102)と、
前記円筒ハウジング構造(102)内の駆動組立体であって、駆動ピストン(104)及びインデックスチューブ(106)を含む駆動組立体と、
前記円筒ハウジング構造(102)の近位端に接続されたフランジ(108)であって、空孔(110)を画成しているフランジ(108)と、
前記フランジ(108)により画成された前記空孔(110)内に配置された、2重量%未満かつ非ゼロのコバルトを有する合金から作られている逆止弁ボール(112)であって、前記空孔(110)が、開位置と閉位置との間で前記逆止弁ボール(112)が変位するのを容易にするように構成されており、前記開位置が、第1方向の第1流れを可能にして、前記円筒ハウジング構造(102)の遠位端に向かう前記駆動ピストン(104)の移動を容易にし、前記閉位置が、反対の第2方向の第2流れを止める、逆止弁ボール(112)と、
を備える、制御棒駆動装置(100)。
【請求項2】
前記合金が、0.5重量%未満のコバルトを含む、請求項1に記載の制御棒駆動装置(100)。
【請求項3】
前記合金の硬度が、Rockwell C(HRC)の尺度で、少なくとも30である、請求項1または2に記載の制御棒駆動装置(100)。
【請求項4】
前記合金の融点が、少なくとも1700°Fである、請求項1から3のいずれかに記載の制御棒駆動装置(100)。
【請求項5】
前記合金が、ニッケル基合金又は鉄基合金である、請求項1から4のいずれかに記載の制御棒駆動装置(100)。
【請求項6】
前記合金が、ホウ素を含む、請求項1から5のいずれかに記載の制御棒駆動装置(100)。
【請求項7】
前記合金が、少なくとも2重量%のシリコンを含む、請求項1から6のいずれかに記載の制御棒駆動装置(100)。
【請求項8】
前記合金が、Colmonoy、Tristelle、又はNoremである、請求項1から7のいずれかに記載の制御棒駆動装置(100)。
【請求項9】
Colmonoyが、Colmonoy5又はColmonoy84である、請求項8に記載の制御棒駆動装置(100)。
【請求項10】
前記Tristelleが、Tristelle5183である、請求項8に記載の制御棒駆動装置(100)。
【請求項11】
前記Noremが、Norem2である、請求項8に記載の制御棒駆動装置(100)。
【請求項12】
前記円筒ハウジング構造(102)内のコレット組立体(114)であって、前記駆動組立体の前記インデックスチューブ(106)を囲み、コレットピストン(118)に取り付けられ、前記インデックスチューブ(106)と係合するように構成されたコレット指部(116)を含むコレット組立体(114)をさらに備える、請求項1から11のいずれかに記載の制御棒駆動装置(100)。
【請求項13】
前記コレット指部(116)が、2重量%未満のコバルトを有する合金で作られている、請求項12に記載の制御棒駆動装置(100)。
【請求項14】
前記コレット指部(116)の前記合金が、0.5重量%未満のコバルトを含む、請求項13に記載の制御棒駆動装置(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、原子炉の制御棒駆動機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
制御棒駆動装置は、中性子束を制御し、その結果、核燃料の核分裂の速度を制御するために、炉心へ制御棒を挿入/除去するために使用される。核燃料の核分裂の速度は、反応器の熱出力、及び生成される蒸気の量に影響を与え、したがって、生成される電力に影響を与える。従来の制御棒駆動装置は、コバルト基合金で作られた部品を含む。このような部品の例として、逆止弁ボールやコレット構造を挙げることができる。コバルト基合金(例えば、Stellite)は、その硬度と、耐摩耗性及び耐侵食性が望ましいレベルであるために、従来、制御棒駆動装置に用いられている。
【0003】
しかし、合金中に、コバルトが比較的大量(例えば51重量%)存在すると、工場人員に関する被曝の問題を増大させる。特に、原子炉環境は、従来の合金内の、安定したコバルト59を放射性コバルト60に変換する。放射性コバルト60は、より高い放射線レベルに寄与するとともに、除染のコストを増大させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/139294号明細書
【発明の概要】
【0005】
制御棒駆動装置は、近位端及び反対側の遠位端を有する円筒ハウジング構造を含むことができる。駆動組立体は、円筒ハウジング構造内に配置してもよい。駆動組立体は、駆動ピストン及びインデックスチューブを含むことができる。フランジは円筒ハウジング構造の近位端に接続され得る。フランジは、フランジに空孔を画成することができる。逆止弁ボールは、フランジにより画成された空孔内に配置することができる。空孔は、開位置と閉位置との間で逆止弁ボールの変位を容易にするように構成されてもよい。開位置は、第1方向の第1流れを可能にして、円筒ハウジング構造の遠位端に向かう駆動ピストンの移動を容易にすることができ、一方、閉位置は、反対の第2方向の第2流れを止めることができる。逆止弁ボールは2重量%未満のコバルトを有する合金から作られ得る。制御棒駆動装置は、円筒ハウジング構造内のコレット組立体を含むことができる。コレット組立体は、2重量%未満のコバルトを有する合金から作られ得る。コバルト含有量が低い合金の結果として、放射性コバルト60は、原子炉環境によって合金の安定したコバルト59から生成され、したがって、工場人員の被曝を低減することができる。
【0006】
本明細書の非限定的な実施形態の様々な特徴及び利点は、添付の図面と共に詳細な説明を読むことによって、より明らかとなろう。添付の図面は例示のみを目的として提供され、特許請求の範囲を限定すると解釈するべきではない。添付の図面は、明示しない限り、原寸に比例して描かれていると見なされるべきではない。明確を期するため、図面の様々な寸法は、誇張されている場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】非限定的な実施形態による制御棒駆動装置の分割断面図である。
【
図2】非限定的な実施形態による制御棒駆動装置に用いられるコレット組立体の側部破断図である。
【
図3】非限定的な実施形態による制御棒駆動装置に用いられ得る、コレット組立体の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
要素又は層が、別の要素又は層「の上にある」、「に接続された」、「に結合された」、又は「を覆う」と言及される場合、その要素又は層は、直接に別の要素又は層の上にある、に接続された、に結合された、又は、を覆う場合もあるし、間に介在する要素又は層が存在してもよいことを理解すべきである。対照的に、要素が、別の要素又は層「の直接上に」、「に直接接続された」、又は「に直接結合された」と言及される場合、間に介在する要素又は層は存在しない。本明細書全体を通じて、同様の数字は同様の要素を指す。本明細書中で使用される場合、用語「及び/又は」は、関連する列挙事項の、1以上の任意の、かつすべての組み合わせを含む。
【0009】
第1、第2、第3等の用語が、様々な要素、部品、領域、層、及び/又は部分を説明するために本明細書で使用されるが、これらの要素、部品、領域、層、及び/又は部分は、これらの用語によって限定されるべきではないことを理解されたい。これらの用語は、1つの要素、部品、領域、層、又は部分を区別するためにのみ使用される。したがって、以下で論じられる第1要素、第1部品、第1領域、第1層、又は第1部分は、例示的実施形態の教示から逸脱することなく、第2要素、第2部品、第2領域、第2層、又は第2部分と呼ぶことができる。
【0010】
空間的に相対的な用語(例えば、「下方」、「下」、「下側」、「上」、「上側」、等)は、本明細書においては、図に示すように、1つの要素又は特徴の、別の要素は特徴との関係を説明するため、説明を容易にするために使用され得る。空間的に相対的な用語は、図に示される向きに加えて、使用中又は動作中の装置の、それぞれ異なる向きを含むことが意図されることを理解されたい。例えば、図の装置がひっくり返された場合、他の要素又は特徴の「下に」又は「下方に」あると説明した要素は、他の要素又は特徴の「上に」向いていることになる。したがって、用語「下に」には、上に、と下に、の両方の向きが含まれ得る。装置は、その他の向きに向けることもでき(90度、又は他の向きに回転される)、本明細書で使用される空間的相対表現は適切に解釈される。
【0011】
本明細書で使用する用語は、単に様々な実施形態を説明する目的のためであり、例示的実施形態を限定することを意図するものではない。本明細書中で使用される場合、単数形の表現は、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、複数形も含むことが意図される。「含む」、及び/又は「備える」は、本明細書で使用される場合、記載した特徴、数、ステップ、操作、要素及び/又は部品が存在することを示し、1以上の他の特徴、数、ステップ、操作、要素、部品及び/又はそれらの群の存在又は追加を排除するものではないことが、さらに理解されるであろう。
【0012】
例示的実施形態は、例示的実施形態の、理想化された実施形態(及び中間構造)の概略図である断面図を参照して本明細書に記載されている。そのため、例えば、製造技術及び/又は公差の結果として、図面の形状から変形することが予想される。したがって、例示的な実施形態は、本明細書に示す領域の形状に限定されると解釈すべきではなく、例えば製造の結果生じる形状のずれを含むものと解釈すべきである。例えば、矩形として示される注入領域は、通常は丸い、或いは曲がった形体を有し、かつ/又はその縁部における注入濃度は、注入から非注入に二値的に変化するのでなく、勾配を有している。同様に、注入によって形成される埋め込み領域は、埋め込み領域と、表面であって、そこを通して注入が行われる表面との間の領域に、いくらかの注入をもたらす場合がある。したがって、図に示す領域は、実際は概略であり、その形状は、装置の領域の実際の形状を示すものではなく、例示的実施形態の範囲を限定するものではない。
【0013】
特に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、例示的な実施形態が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。一般的に使用される辞書で定義されるものを含む用語は、関連技術の文脈におけるその意味と一致する意味を有するものとして解釈されるべきであり、本明細書で明確に定義しない限り、理想的な意味又は過度に形式的な意味には解釈されるべきではないことをさらに理解されたい。
【0014】
図1は、非限定的な実施形態による制御棒駆動装置の分割断面図である。制御棒駆動装置は、単に、1ページで見られるようにするために、2つの部分に分割されている。そうであっても、制御棒駆動装置は、実際には一体の細長い構造を意味するものと理解すべきである。
図1を参照すると、制御棒駆動装置100は、近位端、及び反対側の遠位端を有する円筒ハウジング構造102を含む。円筒ハウジング構造102の近位端は、
図1の上側部分に示されており、一方、円筒ハウジング構造102の遠位端は、
図1の下側部分に示されている。原子炉に設置されたとき、制御棒が、制御棒駆動装置100の遠位端に固定される。
【0015】
駆動組立体は、円筒ハウジング構造102内に配置される。駆動組立体は、駆動ピストン104及びインデックスチューブ106を含む。駆動ピストン104とインデックスチューブ106は、円筒ハウジング構造102内に同心状に配置されてもよい。フランジ108は、円筒ハウジング構造102の近位端に接続されている。フランジ108は、フランジ108に空孔110を画成している。逆止弁ボール112は、フランジ108によって画成された空孔110内に配置されている。空孔110は、開位置と閉位置との間で、逆止弁ボール112が変位するのを容易にするように構成されている。開位置は、第1方向の第1流れを可能にして、円筒ハウジング構造102の遠位端に向かう駆動ピストン104の移動を容易にする。一方、閉位置は、反対の第2方向の第2流れを止める。逆止弁ボール112は、2重量%未満のコバルトを有する合金で作られ得る。例えば、合金は0.5重量%未満のコバルトを含むことができる。
【0016】
制御棒駆動装置100は、さらに、円筒ハウジング構造102内に、コレット組立体114を含むことができる。コレット組立体114は、駆動組立体のインデックスチューブ106を囲んでもよい。コレット組立体114は、コレットピストン118に装着されたコレット指部116を備えている。コレット指部116は、インデックスチューブ106と係合するように構成されてもよい。コレット組立体114又はその一部分(例えば、コレット指部116)のみを、2重量%未満のコバルトを有する合金で作ってもよい。例えば、合金は0.5重量%未満のコバルトを含むことができる。
【0017】
図2は、非限定的な実施形態による制御棒駆動装置に用いられるコレット組立体の側部破断図である。
図3は、非限定的な実施形態による制御棒駆動装置に用いられ得る、コレット組立体の平面図である。
図2〜3を参照すると、コレット組立体114は、コレットピストン118の周囲に配置された複数のコレット指部116を備えている。コレット組立体114は6つのコレット指部116を有するものとして示されているが、例示的な実施形態は、これに限定されるものではないことを理解されたい。各コレット指部116は、コレット組立体114の中心に向かって内側に延びる先端部を有している。制御棒駆動装置100に設けられたとき、コレット組立体114が、意図した軸線方向に移動する際、コレット指部116の先端部が、インデックスチューブ106の溝に係合/離脱する。
【0018】
以下の表1は、本明細書で説明した合金の材料を示している。
【0019】
【表1】
以下の表2は、本明細書で説明した合金のために考慮される材料の、より着目すべき群を示している。
【0020】
【表2】
逆止弁ボール112及び/又はコレット組立体114を作るために使用される合金は、硬度が、Rockwell C(HRC)の尺度で少なくとも30であり、融点が少なくとも1700°Fであることができる。合金は、ニッケル基合金又は鉄基合金であってもよい。また、合金は、ホウ素を含んでもよい。さらに、合金は、少なくとも2重量%のシリコンを含むことができる。
【0021】
合金はColmonoy、Nucalloy、Tristelle、Noremであってもよいが、例示的な実施形態は、これらに限定されるものではない。例えば、ColmonoyはColmonoy5又はColmonoy84であってもよい。NucalloyはNucalloy453であってもよい。TristelleはTristelle5183であってもよい。NoremはNorem2であってもよい。さらに、本明細書の実施例を、主として逆止弁ボール112及びコレット組立体114に関連して説明したが、本明細書の合金は、制御棒駆動装置100の他の部品を作ることにも用いることができることを理解されたい。本明細書で説明した、少量〜0のコバルトを含有する合金の結果、コバルト60による放射レベルを低減することができる。
【0022】
いくつかの例示的な実施形態が本明細書に開示されているが、他の変形形態も可能であることを理解されたい。そのような変形形態は、本開示の精神及び範囲からの逸脱と見なされるべきではなく、当業者には明らかである、このような修正形態は、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0023】
100 制御棒駆動装置
102 円筒ハウジング構造
104 駆動ピストン
106 インデックスチューブ
108 フランジ
110 空孔
112 逆止弁ボール
114 コレット組立体
116 コレット指部
118 コレットピストン