特許第6283377号(P6283377)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6283377向上した大細孔選択性を有するゼオライトSSZ−57
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6283377
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】向上した大細孔選択性を有するゼオライトSSZ−57
(51)【国際特許分類】
   C01B 39/48 20060101AFI20180208BHJP
   B01J 29/86 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
   C01B39/48
   B01J29/86 Z
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-560254(P2015-560254)
(86)(22)【出願日】2014年2月25日
(65)【公表番号】特表2016-511741(P2016-511741A)
(43)【公表日】2016年4月21日
(86)【国際出願番号】US2014018348
(87)【国際公開番号】WO2014134051
(87)【国際公開日】20140904
【審査請求日】2016年12月15日
(31)【優先権主張番号】61/771,069
(32)【優先日】2013年2月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503148834
【氏名又は名称】シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゾネス、ステイシー イアン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、コン − ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ベニン、アナベル
【審査官】 森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−509044(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0163752(US,A1)
【文献】 特表2005−515139(JP,A)
【文献】 特表2013−511464(JP,A)
【文献】 特開2003−306452(JP,A)
【文献】 特表平09−507522(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 39/00 − 39/54
B01J 21/00 − 38/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
てのアルミニウム原子が、12環チャネルを形成するゼオライト構造の領域内に配置されていることを特徴とする、アルミノホウケイ酸塩SSZ−57ゼオライトであって、
ゼオライトにn−ヘキサン及び3−メチルペンタンを50/50でフィードした場合に、316℃かつ40分間の稼動時点で、ゼオライトが0.3と1.0の間(上下限を含む)の拘束指数を有する、アルミノホウケイ酸塩SSZ−57ゼオライト
【請求項2】
ゼオライトにn−ヘキサン及び3−メチルペンタンを50/50でフィードした場合に、拘束指数の試験中、316℃かつ40分間の稼動時点で、ゼオライトが2.5から4.5(上下限を含む)のiso−C/n−Cの比を生成する、請求項1に記載のゼオライト。
【請求項3】
下記の組成を有する、請求項1又は2に記載のゼオライト:
【表1】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、向上した大細孔選択性(enhanced large pore selectivity)を有するアルミノホウケイ酸塩SSZ−57ゼオライトに関する。本発明のアルミノホウケイ酸塩SSZ−57ゼオライトは、実質的に全てのアルミニウム原子が、12環チャネルを形成するゼオライト構造の領域内に配置されていることを特徴とする。
【背景技術】
【0002】
ゼオライトは商業的に有用な一群の結晶質材料である。ゼオライトは、特徴的なX線回折(XRD)パターンによって示された秩序化された細孔構造を有する明確な結晶構造を備えている。その結晶構造は、異なる種ごとに特徴的である空洞(cavities)と細孔(pores)とを規定する。
【0003】
小細孔ゼオライトは、一般に、最大8員環(8−MR)までの構造と5Å(0.5nm)未満の平均細孔径とを有するのに対し、中細孔ゼオライトは、一般に、10員環(10−MR)の構造と約5Å(0.5nm)から約7Å(0.7nm)までの平均細孔径とを有する。大細孔ゼオライトは、一般に、少なくとも12員環(12−MR)の構造と約7Å(0.7nm)より大きな平均細孔径を有する。
【0004】
ゼオライトの細孔内で生じる、パラフィン異性化、オレフィン骨格又は二重結合異性化、不均化、アルキル化、及び芳香族化合物のトランスアルキル化等の炭化水素転化反応は、ゼオライトのチャネルのサイズによる制約によって支配される。供給原料の一部が大きすぎて、細孔に入ることができずに反応できない場合、反応物選択性が生じる;その一方で、生成物の一部がチャネルから離れることができないか、又はその後に反応しない場合、生成物選択性が生じる。生成物分布もまた、特定の反応が生じないような遷移状態選択性によって変化させることができる。反応遷移状態が大きすぎるとそれが細孔内に形成できないためである。形状選択性もまた、分子のサイズ(diminsions)が細孔のサイズに近づく状況下で、拡散のコンフィギュレーションの制約からもたらされる。
【0005】
ゼオライトSSZ−57は、既知のゼオライトであり、Elomariに対する2003年4月8日発行の米国特許第6,544,495号において初めて開示された。2011年に、SSZ−57は、国際ゼオライト学会(IZA)の構造委員会により、骨格タイプコード(framework type code) *SFVが割り当てられた。
【0006】
SSZ−57の構造は、最近、C.Baerlocherらによって解明され(Science 333,1134−1137頁(2011年))、現在、乱れたZSM−11(MEL)構造で記述される骨格タイプを有するものとして特徴付けられている。その乱れは、規則正しく、16の10環チャネルのうちの1つを置換する12環チャネルによるものである。その12員環チャネルによる秩序の乱れにより、孤立した三次元の10員環チャネル系の大きなポケットを有する骨格が生じる。
【0007】
ゼオライトのホウケイ酸塩の形態中のホウ素をアルミニウムで置換し、実質的に全てのアルミニウム原子が、12環チャネルを形成するゼオライト構造の領域内に配置されている、アルミノホウケイ酸塩材料を産することにより、大細孔選択性を向上することができることが、現在見出されたところである。
【発明の概要】
【0008】
本発明によれば、実質的に全てのアルミニウムが12環チャネルを形成するゼオライト構造の領域内に配置されていることを特徴とする、アルミノホウケイ酸塩SSZ−57が提供される。
【0009】
本発明はまた、以下の工程によるアルミノホウケイ酸塩SSZ−57モレキュラーシーブを調製する方法を含む:
(a)(1)少なくとも1つの酸化ケイ素の供給源と;(2)少なくとも1つの酸化ホウ素の供給源と;(3)少なくとも1つの周期表の第1族及び第2族から選択される元素の供給源と;(4)水酸化物イオンと;(5)N−ブチル−N−シクロヘキシルピロリジニウムカチオン、N−プロピル−N−シクロヘプチルピロリジニウムカチオン、N−ブチル−N−シクロオクチルピロリジニウムカチオン、及びそれらの混合物からなる群から選択される構造規定剤(「SDA」)と;(6)水と;を含有する反応混合物を調製する工程;
(b)ホウケイ酸塩SSZ−57の結晶を形成するのに十分な結晶化条件下で該反応混合物を維持する工程;
(c)ホウケイ酸塩SSZ−57結晶を焼成条件で焼成する工程;並びに
(d)焼成したホウケイ酸塩SSZ−57の12環チャネルの骨格中の少なくとも一部のホウ素をアルミニウムで置換して、実質的に全てのアルミニウムが12環チャネルを形成するゼオライト構造の領域内に配置されていることを特徴とする、アルミノホウケイ酸塩SSZ−57を提供する工程。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】例1で合成されたアルミノホウケイ酸塩SSZ−57ゼオライトのX線回折分析の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
はじめに
以下の用語は明細書全体を通して使用され、特に断りがなければ以下の意味を有するであろう。
【0012】
「活性供給源」は、反応することでき、かつ、ゼオライト構造に取り込まれることができる形態の元素を供給できる試薬又は前駆体を意味する。「供給源」及び「活性供給源」は、本明細書において互換的に使用される。
【0013】
「拘束指数」(CI)は、アルミノホウケイ酸塩又は他のモレキュラーシーブが、その内部構造へと、様々なサイズの分子がアクセスするのを制御する程度を測るため便利な尺度である。高度に制限されたアクセスとその内部構造からの放出を提供するゼオライトは、高い値の拘束指数を有しており、この種のゼオライトは、通常、小さいサイズの細孔を有している。一方、内部ゼオライト構造への比較的自由なアクセスを提供するゼオライトは、低い値の拘束指数を有しており、通常、大きいサイズの細孔を有している。拘束指数を決定できる方法は、V.J.Frilletteらによる文献(J.Catal.67,218−222頁(1981年))及びS.I.Zonesらによる文献(Microporous Mesoporous Mater.35−36,31−46頁(2000年)に十分に記載されている。拘束指数の値が約12より大きい範囲にあるゼオライトは、小細孔ゼオライトであると考えられる。拘束指数の値が約1から約12の範囲内にあるゼオライトは、中細孔ゼオライトであると考えられる。拘束指数の値が約1未満の範囲にあるゼオライトは、小細孔ゼオライトであると考えられる。
【0014】
拘束指数試験において、細孔が狭くなると、3−メチルペンタンに対してn−ヘキサンを許容する高い選択性が発生する。例えば、8環を有する小細孔ゼオライトは、理想的にはn−ヘキサンのみを選択するので、CI値は非常に高いであろう(すなわち、50以上)。中細孔ゼオライトでは、10環であって、CI値は3〜12の範囲に落ちるであろう。しかし、一つの例外が見られ、それは、10環の開口(portal)がより大きな空洞(cavity)の中に開いている場合である。例えば、ゼオライトSSZ−35は、ZSM−5のサイズの開口部(opening)を有しているが、CI値は1未満である(ZSM−5は、温度に依存して6〜8であろう)。これは予想外であるが、起こりうるようである。なぜなら、その空洞は、3−メチルペンタンをより容易に中に入れることを許容し、2つの反応物が関与する反応中、大きな遷移状態を許容することにより、より多くの3−メチルペンタンの分解(crack)を容易にするからである(これらは、したがって、Frilleteの文献で予期されないケースとなる)。細孔が大きくなると、3−メチルペンタンにとって制約がなくなり、熱力学的観点から分解が容易になり、典型的には、大細孔ゼオライトは1.0未満のCI値を示す。
【0015】
ノルマルブタンに対するイソブタンの比(iso−C/n−Cの比)は、特に断りのない限り、重量比をいう。
【0016】
「周期表」という用語は2007年6月22日版のIUPAC元素周期表を指し、周期表の族の付番方式はChem.Eng.News63(5)、26−27(1985)に記載の通りである。
【0017】
本明細書で使用される「実質的に全てのアルミニウム原子が、12環チャネルを形成するゼオライト構造の領域内に配置されていることを特徴とする」という句は、10環チャネルを形成するゼオライト骨格の一部に配置されているアルミニウム原子の量が、ゼオライトの骨格全体の中の総量の10%未満であることを意味する。
【0018】
本明細書及び添付された特許請求の範囲の目的のために、別途指摘しない限り、明細書及び特許請求の範囲で使用した量、パーセンテージ又は割合及び他の全ての数値は、全ての例において「約」という用語によって修飾されると理解すべきである。したがって、反対に指摘されていない限り、以下の明細書及び添付された特許請求の範囲で述べる数値パラメータは、達成することが求められる所望の特性に応じて変化することがある概数である。本明細書及び添付された特許請求の範囲で使用する場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、明示的及び明確に1個の指示対象に限定されていない限り、複数の指示対象を包含することに留意されたい。本明細書で使用する場合、「包含する(include)」及びその文法的変形は、非限定的であることが意図され、したがって、リストの形で項目を列挙することは、リストされた項目に置き換え又は加え得るようなその他の類似の項目を排除するためではない。本明細書で使用する場合、「含む(comprising)」という用語は、その用語に続いて示された要素又は工程を包含することであるが、このような要素又は工程のいずれも網羅的ではなく、一実施形態が他の要素又は工程を包含できることを意味する。
【0019】
特に断りがない限り、個々の成分又は成分の混合物を選択することのできる一つの属の要素、材料又は他の成分を記載することは、列挙された成分及びその混合物の全ての可能性のある下位の属の組み合わせを包含することを意図している。
【0020】
特許可能な範囲は特許請求の範囲により規定され、当業者に想到される他の実施例を包含し得る。そのような他の実施例は、それらが特許請求の範囲の文言と相違することのない構造的な要素を有しているのであれば、又はそれらが特許請求の範囲の文言と非実質的な相違しかない等価な構造的要素を含んでいるのであれば、特許請求の範囲内にあると意図される。本明細書と矛盾しない限りは、本明細書中で参照される全ての引用は参照することにおいて本明細書に取り込まれるものとする。
【0021】
Al−SSZ−57LPの調製
ホウケイ酸塩SSZ−57前駆体材料の調製において、N−ブチル−N−シクロヘキシルピロリジニウムカチオン、N−プロピル−N−シクロヘプチルピロリジニウムカチオン、N−ブチル−N−シクロオクチルピロリジニウムカチオン、及びそれらの混合物からなる群から選択されるカチオンを、結晶化テンプレートとしても知られている構造規定剤(「SDA」)として使用する。ホウケイ酸塩SSZ−57の作製に有用なSDAは、以下の構造(1)、(2)及び(3)によって表される:
【化1】

N−ブチル−N−シクロヘキシルピロリジニウムカチオン
【化2】

N−プロピル−N−シクロヘプチルピロリジニウムカチオン
【化3】

N−ブチル−N−シクロオクチルピロリジニウムカチオン
【0022】
N−ブチル−N−シクロヘキシルピロリジニウムカチオン、N−プロピル−N−シクロヘプチルピロリジニウムカチオン、及びN−ブチル−N−シクロオクチルピロリジニウムカチオンは、Elomariに対する2003年4月8日発行の米国特許第6,544,495号に記載のとおりに調製することができる。
【0023】
一般に、Al−SSZ−57LPは、以下の工程によって調製される:
(a)(1)少なくとも1つの酸化ケイ素の供給源と;(2)少なくとも1つの酸化ホウ素の供給源と;(3)少なくとも1つの周期表の第1族及び第2族から選択される元素の供給源と;(4)水酸化物イオンと;(5)N−ブチル−N−シクロヘキシルピロリジニウムカチオン、N−プロピル−N−シクロヘプチルピロリジニウムカチオン、N−ブチル−N−シクロオクチルピロリジニウムカチオン、及びそれらの混合物からなる群から選択される構造規定剤(「SDA」)と;(6)水と;を含有する反応混合物を調製する工程;
(b)ホウケイ酸塩SSZ−57の結晶を形成するのに十分な結晶化条件下で該反応混合物を維持する工程;
(c)ホウケイ酸塩SSZ−57結晶を焼成条件で焼成する工程;並びに
(d)ホウケイ酸塩SSZ−57の12環チャネルの骨格中の少なくとも一部のホウ素をアルミニウムで置換して、実質的に全てのアルミニウム原子が、12環チャネルを形成するゼオライト構造の領域内に配置されていることを特徴とする、アルミノホウケイ酸塩SSZ−57(Al−SSZ−57LP)を提供する工程。
【0024】
ホウケイ酸塩SSZ−57前駆体材料は反応混合物から形成され、その反応混合物は、モル比換算で、下記表1の通り同定されている:
【表1】

ここで、Qは、N−ブチル−N−シクロヘキシルピロリジニウムカチオン、N−プロピル−N−シクロヘプチルピロリジニウムカチオン、N−ブチル−N−シクロオクチルピロリジニウムカチオン、及びそれらの混合物からなる群から選択される構造規定剤(「SDA」)であり;Mは、周期表の第1族及び第2族から選択される元素である。
【0025】
本明細書で有用な酸化ケイ素の供給源は、フュームドシリカ、沈降性ケイ酸塩、シリカヒドロゲル、ケイ酸、コロイド状シリカ、テトラアルキルオルトケイ酸(たとえばテトラエチルオルトケイ酸)、及びシリカヒドロキシドを含む。
【0026】
有用であり得る酸化ホウ素の供給源としては、ホウケイ酸ガラス、アルカリボレート、ボロン酸、ボレートエステル及び特定のモレキュラーシーブが挙げられる。酸化ホウ素の供給源の非限定的な例としては、カリウムテトラボレート10水和物及びホウ素ベータモレキュラーシーブ(B−ベータモレキュラーシーブ)が挙げられる。
【0027】
本明細書に記載する各実施形態では、ゼオライト反応混合物を、1を超える供給源によって供給することができる。また2つ以上の反応成分を、1つの供給源によって提供することができる。一例として、ホウケイ酸塩モレキュラーシーブは、米国特許第5,972,204号で教示されているように、ホウ素含有ベータモレキュラーシーブから合成することができる。
【0028】
反応混合物は、バッチ式又は連続式のどちらかで調製することができる。ホウケイ酸塩SSZ−57の結晶サイズ、結晶形態、及び結晶化時間は、反応混合物の性質及び結晶化条件によって変動することがある。
【0029】
反応混合物は、ゼオライトの結晶が形成されるまで高温にて維持される。水熱結晶化は、反応混合物が125℃から200℃の間の温度にて自生圧力を受けるように、通常、圧力下にて、通常、オートクレーブ内で行う。
【0030】
水熱結晶化の工程の間、ゼオライト結晶を反応混合物から自発的に核形成させることができる。ゼオライトの結晶をシード材料として使用することは、完全な結晶化が起こるために必要な時間を短縮するのに有利であり得る。さらに、シード添加は、いかなる望ましくない相よりも核形成及び/又はゼオライトの形成を促進することによって、生成物の純度の向上をもたらすことができる。シードとして使用する場合、シード結晶は典型的には、反応混合物で使用される酸化ケイ素の供給源の重量の0.5%から5%の間の量で添加される。
【0031】
ゼオライト結晶がいったん形成されると、ろ過等の標準的な機械分離技法によって、固体生成物を反応混合物から分離することができる。結晶を水洗し、次に乾燥させて、合成したまま(as−synthesized)のゼオライト結晶を得る。乾燥の工程は、大気圧にて又は真空下で行うことができる。
【0032】
続いて、ホウケイ酸塩SSZ−57ゼオライトを、蒸気、空気又は不活性ガス中で、200℃から800℃の範囲の温度で、1から48時間の範囲かそれ以上の期間にわたって加熱する焼成条件で焼成する。
【0033】
Al−SSZ−57LPは、ホウケイ酸塩SSZ−57骨格中のホウ素をアルミニウムに、合成後選択的置換することにより、ホウケイ酸塩SSZ−57から調製される。本明細書で使用される「選択的置換」とは、ゼオライトの骨格中の90%以上のモル量のアルミニウム原子が、12環チャネルを形成する構造の部分内に配置されていることを意味する。ホウケイ酸塩SSZ−57中のホウ素の置換は、ホウケイ酸塩SSZ−57を、硝酸アルミニウム等のアルミニウム塩で適当な処理をすることにより、直ちに達成することができる。かかる方法は既知であり、例えば、Chen及びZonesに対する2002年10月22日発行の米国特許第6,468,501号に記載されている。その骨格構造中においてアルミニウムによって置換されるホウ素の量の範囲が、以下の要因、例えば、ゼオライトが処理される時間の長さ、反応条件及び反応混合物中のアルミニウム塩濃度等に依存して変化するということは、当業者によって認識されるであろう。一実施形態において、焼成したホウケイ酸塩SSZ−57を、焼成したホウケイ酸塩SSZ−57の12環チャネル骨格中のホウ素の量をアルミニウムの量で置換する影響を与えるのに十分な時間及び温度で、硝酸アルミニウム九水和物の量にさらし、これにより、測定可能な程度に、向上した大細孔選択性を有するアルミノホウケイ酸塩SSZ−57を産する。
【0034】
Al−SSZ−57LPの特徴付け
本明細書に記載された方法で作製したAl−SSZ−57LPゼオライトは、表2に記載したとおりの組成を有する(モル比換算)。
【表2】
【0035】
本明細書の教示にしたがって調製したAl−SSZ−57LPゼオライトは、本明細書の例2に記載した方法及び条件を用いた40分の稼動(on−stream)時点で、上下限を含む0.3と1.0の間(0.3≦CI≦1.0)の拘束指数(CI)を有するものと特徴付けられる。
【0036】
本明細書に記載したAl−SSZ−57LPゼオライトは、拘束指数の試験中、本明細書の例2に記載した方法及び条件を使用した40分の稼動(on−stream)時点、上下限を含む2.5から4.5(2.5≦iso−C/n−C≦4.5)のiso−C/n−Cの比を示す。
【実施例】
【0037】
以下の例証的な実施例は、非限定的であることが意図される。
(例1)
ゼオライトの合成
【0038】
前述のElomariに対する2003年4月8日発行の米国特許第6,544,495号の実施例2に記載の通りに、ホウ素SSZ−57を作製した。その後、2%エアブリードした窒素フロー下の薄床(thin bed)中で、その材料を焼成した。温度傾斜プログラムは、1℃/分で120℃までとした。焼成は、その温度で2時間保持した後、前と同様な温度傾斜で540℃まで上昇させ、その温度で5時間保持した。この後に続く酸性アルミニウム処理においてイオン交換が行われるので、この段階ではイオン交換は必要ない。
【0039】
焼成したホウ素SSZ−57を、水性の硝酸アルミニウム溶液中95℃で、時間の長さを変えて加熱することにより、いくつかのバッチのAl−SSZ−57LPを調製した。一例では、1.0グラムのゼオライトを、0.25グラムの硝酸アルミニウム九水和物及び10ミリリットルの水にさらし、密閉瓶中で4日間加熱を行った。大細孔領域中にほんのわずかな活性な酸性触媒中心を有する材料を作成するのが望ましい場合は、短時間で反応を実行することにより、Alの少ない(したがって、SAR値がより高い)SSZ−57LPを生成することができる。
【0040】
構造体の一部ではない任意の硝酸アルミニウムを除去するため、サンプルを、0.01規定のHCl50mlで2回最初に洗浄し、仕上げる。次にそのサンプルを水で洗浄し、乾燥させた。その生成物のNMR分析結果は、アルミニウムがその格子中に配置されていることを確認するために、再度焼成することは必要がないことを示した。
【0041】
Al−SSZ−57LPゼオライト生成物を、粉末XRDにより分析した。上記の一例について得られたXRDパターンを図1に示す。下記の表3に、焼成したモレキュラーシーブ生成物の粉末XRD線を示す。
【表3】
【0042】
前述のElomariに対する2003年4月8日発行の米国特許第6,544,495号の実施例5に記載の通りに、Al−SSZ−57を合成した。その材料を、上記の通りに焼成し、その後、米国特許第6,544,495号の実施例9に記載の通りの方法を用いて、H+型へと転化させた。
【0043】
Al−ZSM−11は、比率(SiO:Al:SDA:NaOH:HO=1:0.03:0.20:0.10:30)の材料を加熱することにより作製し、160℃で6日間加熱した(SDAは、O.Terasakiらの文献(Chemstry of Materials vol8(1996年)463−468頁)に開示されている)。その材料を、上記の通りに焼成し、その後、米国特許第6,544,495号の実施例9に記載の通りの方法を用いて、H+型へと転化させた。
(例2)
拘束指数(Constraint Index)決定
【0044】
型の各ゼオライトを3kpsiでペレット化し、粉砕し、20−40メッシュに造粒した。造粒した材料のうちの0.6gを試料とし、これを空気中540℃で4時間焼成し、乾燥を確実にするためにデシケーターで冷却した。その後、0.5gを、3/8インチのステンレス鋼管中に詰め、そのモレキュラーシーブ床の両側にアランダムを詰めた。リンドバーグ炉を用いてその反応管を加熱した。ヘリウムを10cc/分及び大気圧で反応管中に導入した。反応器を約316℃に加熱し、n−ヘキサン及び3−メチルペンタンの50/50フィードを8μl/分の速度で反応器中に導入した。フィードはブラウンリーポンプで送入した。10分のフィード導入後にGC(ガスクロマトグラフ)への直接採取を始めた。拘束指数(CI)値を、当該技術分野において既知である方法を用いてGCから計算した。
【0045】
拘束指数の結果を表4に示す。また、分解反応からのiso−C/normal−C生成物の、比較生成物の選択性も表4に示す。高いiso−C/normal−Cの比は、大細孔選択性を示している。
【表4】
【0046】
示した通り、これらの結果は、酸性の硝酸アルミニウム溶液で処理されたSSZ−57の挙動が、低い拘束指数と高いiso/normal比のC生成物の価値を与えるという点で、その大細孔と密接に関連することを実証している。いかなる理論にも束縛されることを望むものではないが、直接合成によって作製したAl−SSZ−57は、その構造全体に分布するアルミニウムを有し、10−MR細孔及び12−MR細孔の両方の領域が、あたかも大細孔(large pores foul)としてのZSM−11の一部のように見える拘束指数に寄与するものであると考えられる。
(例3)
一元機能酸性ゼオライト上での1,3−ジエチルベンゼンの異性化及び不均化
【0047】
Al−ZSM−11と同様に、H型のAl−SSZ−57、Al−SSZ−57LP及びB−SSZ−57(上記の例1に記載した手順と同様の手順を用いて、焼成したB−SSZ−57と酢酸アンモニウムのイオン交換によって調製した)上での1,3−ジエチルベンゼンの気相異性化及び不均化を、流通式固定床反応器内において大気圧で実施して、10環細孔に対する12環細孔内に位置する活性サイトの、反応活性及び選択性に対する寄与を評価した。実験手順は、1,3−ジイソプロピルベンゼンの反応について記載したものと同様である(C.Y.Chen,S.I.Zones,A.W.Burton,S.A.Elomari及びS.Svelleらによる文献(Studies in Surface Science and Catalysis,172(2007年)329−332頁,Proceedings of the Tokyo Conference on Advanced Catalytic Science and Technology(2006年))中の「Characterization of large and extra−large pore zeolites via isomerization and disproportionation of 1,3−diisopropylbenzene as a catalytic test reaction」を参照)。
【0048】
本例で試験したH型のゼオライトは、特に断りがなければ、例1で上述した通りに調製した。各触媒の実験に先立って、触媒(20−40メッシュ)を、20℃から400℃で3時間、150mL/分のNフロー中でその場で脱水した後、400℃で5時間保持した。その後、望ましくない分解又は副反応を最小限にしながら、1,3−ジエチルベンゼンの初期転化率が〜20%になるような温度として150℃を選択し、反応器を150℃の反応温度に冷却した。この初期のフィード転化率は、0.2mmol/hのフィード速度及び150mL/分のキャリアガス(N)速度を維持しながら、触媒量を0.11から1.75gに調整することにより、達成された。それゆえに、修正された滞留時間Wcat/F13DEBは、460g・h/molと7565g・h/molの間で変化した(ここで、Wcatは、400℃での脱水触媒のグラム重量を表し、F13DEBは、単位mol/hのフィード速度を表す。)。触媒から生成物流への生成物の物質移動を向上し、望ましくない分解又は副反応を最小限にするために、反応中、150mL/分の高いNフロー速度が必要であった。
【0049】
酸触媒反応には典型的な、本研究で検討した1,3−ジエチルベンゼンの反応は、触媒の不活性化をいくつか伴っていた。それゆえに、本明細書において報告した全ての結果は、目標初期フィード転化率20%に到達するために用いられたWcat/F13DEBに応じて、稼働時間の初期反応時間の0.5−1.3時間で取得した。反応生成物は、60m長のZebron ZB−Waxキャピラリーカラムを備えたオンラインGCで、35分ごとに分析した。
【0050】
表5に、150℃での、上記の4つのゼオライト上での1,3ジエチルベンゼンの反応からの触媒実験の結果を示す。それらの触媒性能を以下に要約する。
(1)B−SSZ−57を使用した場合、1,3−ジエチルベンゼンの転化率は、150℃で、わずかに〜0.3mol%であり、修正された滞留時間Wcat/F13DEBは7565g・h/molと長かった。反応温度が200℃及び250℃にそれぞれ上昇すると、転化率は1.2mol%及び3.4mol%にわずかに上がった(200℃及び250℃のデータは表5に示さず)。1,4−ジエチルベンゼン(14DEB)が実質的に唯一の生成物であった。1,2−ジエチルベンゼン(12DEB)、トリエチルベンゼン(TEBs)及びエチルベンゼン(EB)等の他の生成物は無視できるほど少なかった。B−SSZ−57の10環細孔及び12環細孔の両方に存在するボロンサイトは、十分に活性ではなく、150℃で、1,3−ジエチルベンゼンの異性化及び不均化を触媒しないように見える。
(2)Al−SSZ−57LPを、150℃で試験した場合、修正された滞留時間Wcat/F13DEBは同じく7565g・h/molであり1,3−ジエチルベンゼンの転化率は、21.2mol%であった。この触媒活性は、12環細孔内に選択的に配置されたアルミニウムサイトに起因する。なぜなら、この試料では、ボロンサイトは10環細孔内にしか存在せず、上記のB−SSZ−57で示した通り、この試験反応では触媒的に不活性だからである。本試験で生成した生成物は、エチルベンゼンと同様に、1,4−ジエチルベンゼン及び1,2−ジエチルベンゼン、並びに1,2,4−トリエチルベンゼン及び1,3,5−トリエチルベンゼンであった。1,2−ジエチルベンゼンに対する1,4−ジエチルベンゼンの比が比較的低く(12.7)、かつトリエチルベンゼンに対するジエチルベンゼンの比が比較的低い(20.8)ことから、12環チャネルが、よりかさ高い生成物である1,2−ジエチルベンゼン及びトリエチルベンゼンを生成するための広い空間を提供していることが示唆される。
(3)例1の直接合成によって調製したAl−SSZ−57試料の場合、12環及び10環の両方の中にある触媒的に活性なアルミニウムサイトが反映して、20.9mol%の初期1,3−ジエチルベンゼン転化率が得られ、修正された滞留時間Wcat/F13DEBは比較的低く970g・h/molが得られた。Al−SSZ−57LPと比較すると、1,2−ジエチルベンゼンに対する1,4−ジエチルベンゼンの比はより高く(20.9)、かつトリエチルベンゼンに対するジエチルベンゼンの比はより高い(107.4)。この結果から、空間がより少ない10環チャネルが、このケースでは反応選択性により寄与し、よりかさ高くない生成物(すなわち、1,4−ジエチルベンゼンvs.1,2−ジエチルベンゼン、及びジエチルベンゼンvs.トリエチルベンゼン)の生成を促進していることが示唆される。
(4)Al−ZSM−11を基準試料として調べた。Al−SSZ−57と比較すると、10環細孔しか含有しないAl−ZSM−11は、かさ高くない生成物の生成に圧倒的に有利である。その結果、Al−ZSM−11は、1,2−ジエチルベンゼンに対する1,4−ジエチルベンゼンの比が最も高く(41.2)、かつトリエチルベンゼンに対するジエチルベンゼンの比が最も高い(246.1)。
(5)1,2,3−トリエチルベンゼンの生成は検出されず、それはおそらくその生成が熱力学的に望ましくないのが主な理由であろう。これらの実験では、エチレン及びベンゼンは検出されず、このことから、本例で適用した条件下では、1,3−ジエチルベンゼン及びその生成物中でエチル基の脱アルキル化が起こらないことが明らかとなった。また、それは、エチルベンゼン自体で、又はエチルベンゼンと他の重い芳香族化合物との間で、二次的な不均化が生じないことを意味する。不均化がジエチルベンゼンの間でのみ起こる場合は、理論的には、トリエチルベンゼンに対するエチルベンゼンのモル比は、1.0に等しくならなければならない。トリエチルベンゼンに対するエチルベンゼンの比が高い(1.9−3.2)ことから、おそらくジエチルベンゼンとトリエチルベンゼンが互いに不均化して、エチルベンゼンやいくつかの重い芳香族化合物を生成し、その後者は触媒に吸着して生成物流中に検出されなかったことが示唆される。
【表5】

(例4)
二元機能ゼオライト触媒上でのn−ヘキサンの水素化異性化
【0051】
上記の通り調製したH+型のゼオライトを、室温で12時間、水性(NHPd(NO溶液とイオン交換し、0.27wt%のPdを担持した。得られた触媒を、その後、空気中350℃で焼成した。Pd含有ゼオライトを、次いでペレット化し、粉砕し、篩にかけた。20−40メッシュ(0.35−0.71mm)の粒子を、触媒実験に使用した。
【0052】
反応を、流通式固定床反応器において純粋なn−ヘキサンをフィードとして用い、204℃から366℃(400−690°F)の範囲の温度、1480kPa(200psig)の圧力、1h−1のLHSV(液空間速度)及び炭化水素に対するHのモル比を6:1として、行った。各触媒試験の反応に先立って、触媒を、水素中350℃及び1480kPaで3時間、その場で還元した。その後、反応器の温度を204℃に下げて、触媒実験を開始した。その後、温度を5.6℃(10°F)ずつ漸増して366℃まで上昇させることにより、反応を連続的に行った。反応生成物を、60m長のHP−1キャピラリーカラムを備えたオンラインGCで分析した。各GC分析には20分時間をとり、全てのC−Cアルカンを十分に分離した。生成物中のシクロアルカン及びベンゼンの量は、無視できるほど少なかった。その他の詳細は、我々の先の刊行物に記載されている(C.Y.Chen,X.Ouyang,S.I.Zones,S.A.Banach,S.A.Elomari,T.M.Davis及びA.F.Ojoらによる文献(Journal Microporous and Mesoporous Materials,164(2012年)71−81頁中の「Characterization of shape selective properties of zeolites via hydroisomerization of n−hexane」を参照)。
【0053】
n−ヘキサンの水素化異性化を用いて、一連のPd/SSZ−57触媒及びPd/Al−ZSM−11を評価した。ジ分岐異性体(2,2−ジメチルブタン及び2,3−ジメチルブタン)に対するモノ分岐異性体(2−メチルペンタン及び3−メチルペンタン)の収量比、及び2,2−ジメチルブタンに対する2,3−ジメチルブタンの収量比は、これらのゼオライトの様々なチャネル系の形状選択的特性を特徴付けるためのツールを提供する。n−ヘキサンの転化率は、反応温度の上昇とともに増加する。低温では、水素化異性化が唯一の反応である。反応温度が上昇すると、水素化分解反応が始まり、その収率及び選択性が上がる。競合分解反応が発生すると、温度が上昇するにつれて、水素化異性化生成物の収率及び選択性が最初増加し、最大に進んだ後、減少する。水素化異性化は、最初、n−ヘキサンからモノ分岐異性体(2−メチルペンタン及び3−メチルペンタン)へと進行する。反応温度が上昇するにつれて、2−メチルペンタン及び3−メチルペンタンは、さらに2,2−ジメチルブタン及び2,3−ジメチルブタンへと異性化され、熱力学的平衡へと向かう。表6は、最大異性体収量で、n−ヘキサンの分岐異性体の分布を比較した表である。本例において試験した、触媒上での本反応からの触媒実験の結果を以下に要約する。
(1)ゼオライト構造全体にアルミニウムサイトを含有するPd/Al−SSZ−57を使用した場合、260℃及び1.0LHSVであって、76.3mol%の最大異性体収量で、ジ分岐異性体生成物に対するモノ分岐異性体生成物のモル比が13.1:86.9であり、一方、2,3−ジメチルブタンに対する2,2−ジメチルブタンのモル比は3.2:9.9である(表6参照)。後述するように、これらの選択性は、10環細孔及び12環細孔の両方に存在するアルミニウムサイトの触媒活性と関連することができる。
(2)Pd/Al−SSZ−57LPは、1.0LHSVで、75.1mol%の最大異性体収量を示すが、Pd/Al−SSZ−57の260℃に対して、かなり高い温度(327℃)を示す。この高い温度は、Al−SSZ−57LPの中に存在するアルミニウムサイトが、Al−SSZ−57に比べて少なくほとんど存在しないという事実を反映している。Pd/Al−SSZ−57と比較すると、Pd/Al−SSZ−57LPは、ジ分岐異性体生成物に対するモノ分岐異性体生成物のモル比が17.6:82.1であり、一方、2,3−ジメチルブタンに対する2,2−ジメチルブタンのモル比は8.0:9.6である。これらの結果は、12環細孔内に選択的に配置されたアルミニウムサイトに起因することができる。なぜなら、この試料では、ボロンサイトは10環細孔内にしか存在せず、Pd/B−SSZ−57を用いて後述するように、この試験反応では実質的には触媒的に不活性だからである。
(3)1.0LHSVにおいて、Pd/Al−SSZ−57LPは327℃で最大異性体収量に到達するが、一方、Pd/Al−SSZ−57は260℃で達する。典型的な1.0LHSVに対して、フィードのより長い滞留時間(すなわち、各0.5LHSV及び0.25LHSV)で、Pd/Al−SSZ−57LPを用い、2つの追加実験を行った。炭化水素に対するHの、同じモル比6:1を使用した。結果を表6に示す。フィードのLHSVが減少すると、最大異性体収量となる反応温度が低下した。0.5LHSV及び0.25LHSVの実験結果は両方とも、1.0LHSVで同じ触媒から得られる結果と同様な生成物選択性を示す。
(4)Pd/B−SSZ−57を、1.0LHSV及び230−366℃で試験した(データは表6に示さず)。Pd/Al−SSZ−57LP及びPd/Al−SSZ−57と比較した場合、それは基本的に不活性であった。例えば、300℃、327℃及び366℃でのn−ヘキサンの転化率は、それぞれ0.6mol%、2.8mol%及び8.8mol%にすぎなかった。対応する異性体収量は、0mol%、0.03mol%及び1.3mol%であり、あるとすれば2−メチルペンタン及び3−メチルペンタンが検出されたにすぎなかった。これらの結果は、Pd/Al−SSZ−57LPを用いて観察された触媒活性及び選択性が、12環細孔内に選択的に配置されたアルミニウムサイトと関連することを意味する。
(5)SSZ−57とZSM−11とは構造的に関連しているので、Pd/Al−ZSM−11を1.0LHSVで試験した。典型的な10環ゼオライトとして、ZSM−11は、271℃で、ジ分岐異性体生成物に対するモノ分岐異性体生成物のモル比が12.7:87.4と低く、2,3−ジメチルブタンに対する2,2−ジメチルブタンのモル比が2.2:10.5と低く、その最大異性体は63.5mol%である。これらの結果から、Al−SSZ−57LPは、12/10環ゼオライトの12環細孔中に特異的かつ選択的に作られた触媒サイトを有する触媒の例を提供することが示唆される。
【表6】
【0054】
示した通り、これらの結果は、酸性の硝酸アルミニウム溶液で処理されたSSZ−57の挙動が、低い拘束指数と高いiso/normal比のC生成物の価値を与えるという点で、その大細孔と密接に関連することを実証している。いかなる理論にも束縛されることを望むものではないが、直接合成によって作製したAl−SSZ−57は、その構造全体に分布するアルミニウムを有し、10−MR細孔及び12−MR細孔の両方の領域が、あたかも大細孔(large pores foul)としてのZSM−11の一部のように見える拘束指数に寄与するものであると考えられる。
図1