特許第6283387号(P6283387)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6283387
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】軌道用スラブ搬送装置
(51)【国際特許分類】
   E01B 29/02 20060101AFI20180208BHJP
   E01B 33/08 20060101ALI20180208BHJP
   E01B 37/00 20060101ALI20180208BHJP
   B61D 15/00 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
   E01B29/02
   E01B33/08
   E01B37/00 C
   B61D15/00 B
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-65064(P2016-65064)
(22)【出願日】2016年3月29日
(65)【公開番号】特開2017-179763(P2017-179763A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2016年9月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】591159837
【氏名又は名称】東進産業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504116722
【氏名又は名称】株式会社トキオ
(73)【特許権者】
【識別番号】000125820
【氏名又は名称】株式会社 ニッチ
(74)【代理人】
【識別番号】100080746
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 武嗣
(72)【発明者】
【氏名】米谷 尚
(72)【発明者】
【氏名】近藤 修治
(72)【発明者】
【氏名】進藤 尚政
【審査官】 西田 光宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−273312(JP,A)
【文献】 実開昭52−049408(JP,U)
【文献】 特開昭50−102004(JP,A)
【文献】 特開平05−230804(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3054993(JP,U)
【文献】 米国特許第03881422(US,A)
【文献】 特開2001−310775(JP,A)
【文献】 特開2011−084131(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01B 29/00
E01B 31/00
E01B 37/00
E01B 33/08
B61D 47/00
B61D 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道走行用台車(1)に軌道用スラブ(S)を載置するための荷受けテーブル(2)を設け、該荷受けテーブル(2)に上記軌道用スラブ(S)を吊り上げるためのクレーン装置(3)を立設し、さらに、カントを有する軌道(R)上において上記台車(1)が停車した台車傾き状態で上記荷受けテーブル(2)を台車進行方向に対しての左右方向に水平状に保持するための水平保持手段(H)を備え、
上記水平保持手段(H)は、上記荷受けテーブル(2)の左右各々に対応して設けられ、上記荷受けテーブル(2)を上記台車(1)に対して左右に傾動させるアクチュエータ(6)と、上記台車(1)に対して上記荷受けテーブル(2)を左右に傾動可能かつ連結分離自在に枢結する枢結手段(Z)と、を具備し、
上記水平保持手段(H)は、上記台車傾き状態で、傾斜上方側の上記枢結手段(Z)を連結状態とすると共に、傾斜下方側の上記枢結手段(Z)を分離状態とし該傾斜下方側の上記アクチュエータ(6)を伸長状態として、上記荷受けテーブル(2)を上記左右方向に水平状に保持するように構成したことを特徴とする軌道用スラブ搬送装置。
【請求項2】
上記荷受けテーブル(2)の左右中心位置に、上記クレーン装置(3)の旋回軸心(L3)を配設した請求項1記載の軌道用スラブ搬送装置。
【請求項3】
上記クレーン装置(3)は、上記荷受けテーブル(2)に固設された基台(31)と、該基台(31)に立設された支柱部(33)と、該支柱部(33)から水平方向に延設され先端が自由端状のアーム部(34)と、を有する旋回可能な片持ち梁型である請求項1又は2記載の軌道用スラブ搬送装置。
【請求項4】
上記クレーン装置(3)は上記軌道用スラブ(S)を吊り上げるための巻上機(35)を有し、
上記巻上機(35)にて昇降自在な吊枠体(8)が、吊り上げ中心軸心(L8)廻りに回転自在に構成されている請求項1,2又は3記載の軌道用スラブ搬送装置。
【請求項5】
上記荷受けテーブル(2)の前後左右夫々に、アウトリガー(5)(5)(5)(5)を搭載した請求項1,2,3又は4記載の軌道用スラブ搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道用スラブ搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軌道床面に据付けられる軌道用スラブを搬送するための軌道用スラブ搬送装置は、軌道を走行する1台の台車に、2機の門型クレーン装置を設けたものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−273312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の装置は、軌道工事区間や作業前後回送区間において台車が走行する軌道にカント(左右方向の傾き)があると、容易かつ安全に作業することが困難といった問題があった。
図12に示すように、従来の装置は、カントを有する軌道R上に台車91を停車させた状態で、隣接線部Kの軌道用スラブSを跨ぐように門型クレーン装置93を旋回させようとすると、吊荷(軌道用スラブ)を吊り上げるための動力を非常に大きくする必要があり、事実上、旋回は不可能であった。
また、仮に、図12に示すように、カントを有する軌道R上に台車91を停車させて、隣接線部Kの軌道用スラブSを跨ぐように門型クレーン装置93を旋回させようとすると、門型クレーン装置93の揺動側支柱99の下端99dが床面B等に接触するため旋回ができないといった問題があった。そして、旋回できたとしても、揺動側支柱99を適切に設置することが非常に困難であると共に、最大8度のカント(勾配)を有する軌道R上で軌道用スラブSを吊って上昇・横行させることも困難であった。
また、揺動側支柱99を適切に設置して、台車91の荷台91aを左右方向の水平状に保持しようとすると、門型クレーン装置93のアーム部94等が、トンネル壁やトンネル内構造物等と干渉する虞があるといった問題や、台車91の左右の車輪92,92の内、傾斜下方位置の車輪92Aをレール材rから浮かすことになり、脱線の危険があるため実際に作業を行うことはできないという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、カントを有する軌道工事区間(曲線工事区間)での軌道用スラブの敷設作業や回収作業を容易かつ迅速に、かつ、安全に行うことが可能な軌道用スラブ搬送装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の軌道用スラブ搬送装置は、軌道走行用台車に軌道用スラブを載置するための荷受けテーブルを設け、該荷受けテーブルに上記軌道用スラブを吊り上げるためのクレーン装置を立設し、さらに、カントを有する軌道上において上記台車が停車した台車傾き状態で上記荷受けテーブルを台車進行方向に対しての左右方向に水平状に保持するための水平保持手段を備え、上記水平保持手段は、上記荷受けテーブルの左右各々に対応して設けられ、上記荷受けテーブルを上記台車に対して左右に傾動させるアクチュエータと、上記台車に対して上記荷受けテーブルを左右に傾動可能かつ連結分離自在に枢結する枢結手段と、を具備し、上記水平保持手段は、上記台車傾き状態で、傾斜上方側の上記枢結手段を連結状態とすると共に、傾斜下方側の上記枢結手段を分離状態とし該傾斜下方側の上記アクチュエータを伸長状態として、上記荷受けテーブルを上記左右方向に水平状に保持するように構成したものである。
【0007】
また、上記荷受けテーブルの左右中心位置に、上記クレーン装置の旋回軸心を配設したものである。
また、上記クレーン装置は、上記荷受けテーブルに固設された基台と、該基台に立設された支柱部と、該支柱部から水平方向に延設され先端が自由端状のアーム部と、を有する旋回可能な片持ち梁型である。
また、上記クレーン装置は上記軌道用スラブを吊り上げるための巻上機を有し、上記巻上機にて昇降自在な吊枠体が、吊り上げ中心軸心廻りに回転自在に構成されているものである。
また、上記荷受けテーブルの前後左右夫々に、アウトリガーを搭載したものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、カントを有する軌道であっても、軌道用スラブの敷設(布設)作業や回収作業を容易に行うことができる。軌道用スラブの玉掛け作業を水平な場所で行えて安全である。クレーン装置がトンネル壁面やトンネル内構造物と干渉する虞がなくなる。段取り作業や片づけ作業を容易かつ迅速に行え、工事全体の時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の一形態の要部断面正面図である。
図2】平面図である。
図3】側面図である。
図4】アクチュエータの一例を示す要部断面正面図である。
図5】枢支部の一例を示す要部断面正面図である。
図6】作用を説明するための要部断面正面図である。
図7】作用を説明するための要部断面正面図である。
図8】作用を説明するための要部断面正面図である。
図9】吊枠体の一例を示す側面図である。
図10】吊枠体の一例を示す平面図である。
図11】吊枠体の一例を示す正面図である。
図12】従来技術の問題点を説明するための正面図である。
図13】従来技術の問題点を説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図示の実施形態に基づき本発明を詳説する。
本発明に係る軌道用スラブ搬送装置は、図1乃至図5に示すように、台車1が走行する鉄道の軌道Rの側方に設けられた隣接線部Kに対して、古い軌道用スラブSの回収や、新規の軌道用スラブSの敷設(据付)を行うための装置であって、軌道R(左右一対のレール材r,r)を走行するための1台の台車1に、軌道用スラブSを載置するための1つの荷受けテーブル2と、荷受けテーブル2に立設され軌道用スラブSを1枚ずつ吊り上げるための1基のクレーン装置3と、を設けている。
【0011】
さらに、荷受けテーブル2を左右方向に水平状に保持するための水平保持手段Hを具備している。
この水平保持手段Hは、荷受けテーブル2の左右各々に対応して設けられ、テーブル2を台車1に対して左右に傾動させるための油圧シリンダ等のアクチュエータ6と、台車1に対してテーブル2を左右傾動可能として、かつ、連結分離自在に枢結する枢結手段Zとを、具備している。
【0012】
アクチュエータ6を、テーブル2の左右各々に対応させると共に前後各々に対応させて配設し、合計で4箇所設けている。
枢結手段Zは、枢支部7とロック手段70とを備えている。この枢支部7を、テーブル2の左右各々に対応させると共に前後各々に対応させて配設し、合計で4箇所設けている。
【0013】
図4に示すように、左右一方のアクチュエータ6Cは、ロッド部62の先端が左右一方の前後方向軸心Lc廻りに揺動自在にテーブル2の下面2bの左右一方側に枢結され、バレル部61が車体基台10の左右一方側に取着されている。
左右他方のアクチュエータ6Dは、ロッド部62の先端が左右他方の前後方向軸心Ld廻りに揺動自在にテーブル2の下面2bの左右他方側に枢結され、バレル部61が車台基台10の左右他方側に取着されている。また、各アクチュエータ6のバレル部61を、車台基台10に、前後方向の取付軸心Lg廻りに揺動自在に枢着している。
【0014】
なお、左右一方の前後方向軸心Lc(第1軸心)及び左右他方の前後方向軸心(第2軸心)Ldは、テーブル2の荷受け基準面(上面)2aと平行な一平面Eに含まれかつ相互に平行である。左右方向及び前後方向に傾斜してない軌道Rに台車1が停車している基準状態(図4参照)においては、一平面Eは水平面状であり、第1・2軸心Lc,Ldは前後水平状である。
【0015】
図5に示すように、左右一方の枢支部7Cは、テーブル2の下面2bの左右一方側に前後方向に沿って固設された枢支軸部72と、車体基台10の左右一方側に固設され枢支軸部72が上下方向に抜き差し可能な正面視上方開口切欠状(U字状)の軸支持部71と、を備えている。
左右他方の枢支部7Dは、テーブル2の下面2bの左右他方側に前後方向に沿って固設された枢支軸部72と、車体基台10の左右他方側に固設され枢支軸部72が上下方向に抜き差し可能な上方開口切欠状の軸支持部71と、を備えている。
そして、左右一方の枢支部7Cの枢支軸部72の軸心(枢支軸心)L7は、左右一方の前後方向軸心Lcと同心状(上)に配設している。
左右他方の枢支部7Dの枢支軸部72の軸心(枢支軸心)L7は、左右他方の前後方向軸心Ldと同心状(上)に配設している。
【0016】
そして、枢結手段Zは、枢支軸部72が、軸支持部71のU字状の下端内縁71gに当接するように差し込まれた連結状態と、枢支軸部72が軸支持部71の下端内縁71gから離間してテーブル2が上方への分離状態(図7参照)と、に後述のロック手段70の作動によって、切換え自在である。
【0017】
即ち、枢結手段Zの他の要部を形成するロック手段70は、枢支軸部72と軸支持部71の連結を保持するロック状態と、枢支軸部72が軸支持部71から分離自在となるロック解除状態と、に切り換えることができる。
【0018】
ロック手段70は、下端内縁71gに在る枢支軸部72の上方への抜けを阻止するストッパ部材78と、ストッパ部材78を軸心方向に往復作動させてストッパ部材78をロック位置と非ロック位置(枢支軸部72の上方位置から逃がした位置)とに切換え操作する油圧シリンダ等のロック用アクチュエータ79と、を備えている。
ロック用アクチュエータ79は、バレル部を車体基台10に固設している。なお、ロック用アクチュエータ79は、左右一方の枢支部7Cに対応する一方のロッド部と、左右他方の枢支部7Dに対応する他方のロッド部と、を有する両出しロッド型シリンダとして、左右方向に隣り合う枢支部7C,7Dに対応させるように共用とする構成を図示している。なお、片出しロッドシリンダとして各枢支部7,7,7,7に夫々対応するように設けるも自由である(図示省略)。
【0019】
前後方向及び左右方向に傾斜していない軌道Rに台車1が停車している基準状態(図4及び図5)において、アクチュエータ6は短縮状態であり、枢結手段Zは連結状態である。
【0020】
そして、図6乃至図8に示すように例えば、左右一方に下傾(左右他方に上傾)するカントを有する軌道Rに台車1を停車させた台車傾き状態では、傾斜上方側(図6図8の左方側)の枢結手段Zを連結状態とすると共に、傾斜下方側(図6図8の右方側)の枢結手段Zを分離状態として、傾斜下方側のアクチュエータ6(図6図8では右方側のアクチュエータ6C)を伸長状態として、荷受けテーブル2を左右方向に水平状に保持することができる。図6図8に於ては、ロック手段70は、左方側をロック状態とし、右方側は解除していることが判る。
【0021】
さらに、図1乃至図3及び図8に示すように、テーブル2にアウトリガー5を搭載している(設けている)。
アウトリガー5は、左右方向に移動自在スライドアーム51と、スライドアーム51の先端に直交状に固着され上下方向に伸縮自在な油圧シリンダ等の固定用アクチュエータ52と、を備えている。
アウトリガー5は、図2に示すように、平面視でテーブル2の前後左右の角部近傍に、夫々対応させ、合計で4箇所設けている。また、左右外方へ突出可能である。
【0022】
そして、アウトリガー5を、台車1の車体基台10ではなく、テーブル2に設けているため、図8に示すように、カントを有する軌道Rに停車した場合であっても、テーブル2が左右方向の水平状に保持されるため、スライドアーム51を左右方向の水平状にスライドできて動作が安定する。また、固定用アクチュエータ52の伸縮軸心を、軌道R近傍の左右方向の水平状(テーブル2に平行状)の床面Bに対して直交状に突っ張って、安定して台車1を保持でき、クレーン装置3によるスラブSの持ち上げ作業等において、脱輪や横転(転覆)を確実に防止できる。
【0023】
さらに、図1乃至図3及び図8に示すように、テーブル2にクレーン装置3を立設している。
クレーン装置3は、荷受けテーブル2の荷受け基準面2aに固設された基台31と、基台31にターンテーブル等の旋回機構部32を介して立設された支柱部33と、支柱部33から水平方向に延設され先端が自由端状のアーム部34と、を有する(片持ち梁型の)クレーン本体30を備えた片持ち梁型である。
そして、クレーン装置3の旋回軸心(クレーン本体30の支柱部33の軸心)L3を、テーブル2の左右中心位置に配設している。また、旋回軸心L3は荷受け基準面2aに直交状である。
【0024】
クレーン本体30は、演算処理装置(CPUやシーケンサ等)や記憶装置(RAMやROM)、リレー回路等を備えた制御部39によって、図2に実線で示すように平面視で、アーム部34が前後方向に沿って配設されるアーム基準姿勢(収納姿勢)から、二点鎖線で示すようにアーム部34が左右一方側へのみ旋回可能状態と、図示省略するが左右他方側へのみ旋回可能状態と、に電気的制御によって切換え自在に構成している。このように制御することで、クレーン本体30が誤操作によって、隣接線部Kの反対側へ揺動して、トンネル壁等に干渉するのを防止している。
また、例えば、上り線の軌道R上に停車して作業を行った後、下り線の軌道R上に停車させて作業する場合(隣接線部Kの軌道Rへ移動する場合)に、Y字状の軌道合流部にて(左右の向きを気にせずに)上り線から下り線へ乗り換えて、クレーン本体30を上述した電気的制御によって上記旋回可能状態の何れか一方(上り線側へ旋回可能状態)に切換えを行うだけで、対応可能となり、作業時間の短縮や安全性の向上が図れる。
つまり、図13に示すような従来の装置は、矢印Yを進行方向とすると、従来のクレーン装置93は、左右中心位置から偏心して右位置に配設され、しかも、アーム部94が長く、前後方向に隣り合うクレーン装置93の左側にアーム部94の先端及び揺動側支柱99が配設されるため、クレーン装置93はアーム基準姿勢(収納姿勢)から左側へのみ旋回可能であった。そのため。上り線から下り線への移載は、左右の向きを考慮して乗り換え作業を行う必要があり、多大な手間と時間を要していた。
【0025】
また、図1図3図8に示すように、クレーン装置3は、クレーン本体30と、クレーン本体30のアーム部34に沿って往復移動自在にアーム部34に取着された電動横行式電気チェーンブロック等のメインの巻上機35と、を備えている。
メインの巻上機35は、クレーン本体30のアーム部34に2台並設している。
また、図示省略するが、クレーン本体30のアーム部34に鎖動横行式の非常用の予備巻上機を合計4つ取着している。
【0026】
そして、巻上機35のフック部35aと、軌道用スラブSに設けた掛け部Saと、を連結すると共に、巻上機35によって昇降自在な吊枠体8を備えている。
ここで、図3に示すように、クレーン本体30のアーム部34が前後方向に沿って配設されたクレーン基準姿勢(テーブル2に軌道用スラブSを載置する際の姿勢、或いは、テーブル2からスラブSを持ち上げる際の姿勢)で、巻上機35にて吊り持ちされている吊枠体8の姿勢を枠体基準姿勢とする。図9乃至図11に枠体基準姿勢の吊枠体8を示す。
【0027】
図9乃至図11に示すように、吊枠体8は、軌道用スラブSの長手方向(前後方向)に沿って配設される縦アーム部材81と、平面視で縦アーム部材81に直交状に配設され軌道用スラブSの幅方向(横方向)に沿って配設される前後一対の横アーム部材82,82と、を備えている。
横アーム部材82は左右両端部82d,82dに、軌道用スラブSに設けた掛け部Saに引っ掛かるフック部83を垂下状に備えている。
【0028】
縦アーム部材81は、前後方向に沿って列設した複数の位置決め貫孔81a,81aを有している。
横アーム部材82,82は、縦アーム部材81の位置決め貫孔81a,81aを挿通するボルト部材89と、該ボルト部材89に螺着するナット部材88と、のボルト・ナット結合によって縦アーム部材81に、前後方向位置決め自在に取着されている。
つまり、縦アーム部材81の複数の位置決め貫孔81a,81aから、所望の位置決め貫孔81aを選択して、縦アーム部材81の上面に横アーム部材82を取着することで、横アーム部材82,82同士の前後方向距離を調整自在とし、様々な大きさ(例えば約2600〜約5950mmの長さ)の軌道用スラブSを吊り上げ可能としている。
【0029】
また、吊枠体8は、クレーン装置3の巻上機35を掛けるための掛かり具85を有する吊り部材86を備えている。
図11に示すように、吊り部材86は、一方の巻上機35Cのフック部35aが引っ掛かるための第1掛かり具85Cと、他方の巻上機35Dのフック部35aが引っ掛かるための第2掛かり具85Dと、を備えている。
【0030】
そして、吊り部材86と、縦アーム部材81との間に、スラストベアリング構造を有する回転機構部(材)87を介在させて、吊り部材86と、縦アーム部材81と、が相対的に吊り上げ中心軸心L8廻りに相互に回転自在に設けている。
吊り上げ中心軸心L8は、平面視で縦アーム部材81の中央位置、かつ、第1掛かり具85Cと第2掛かり具85Dの間の中央位置に、配設され、軌道用スラブSの上面に直交状のスラブ中央軸心と同軸心状(上)である。つまり、吊枠体8は軌道用スラブSをスラブ中央軸心廻りに回転自在に持ち上げる。また、台車1の基準状態(枠体基準姿勢)において、吊り上げ中心軸L8は鉛直状である。
【0031】
したがって、図3に示すように、巻上機35で吊り部材86を吊り上げて、図2に示すように、クレーン本体30を左右一方側へ旋回させると、横アーム部材82,82が取着されている縦アーム部材81が吊り上げ中心軸心L8廻りに、回転して(旋回して)、横アーム部材82,82に吊り持ちされている軌道用スラブSを、吊り上げ中心軸心L8(スラブ中央軸心)廻りに回転させて姿勢変更が可能となり、吊り上げた軌道用スラブSを、スラブ敷設予定部Jに対応する適切な姿勢に変更できる。
【0032】
また、図示省略するが、2台の台車1を連結して台車群を構成し、2台の台車1の内、走行先頭の台車1のクレーン装置3を古い軌道用スラブSの回収作業用とし、後続(後尾)の台車1のクレーン装置3を新規の軌道用スラブSの敷設用とする。つまり、2台の台車1(合計2基のクレーン装置3)で、軌道用スラブの敷設作業や回収作業といった軌道用スラブSの交換作業(工事)を行うことができる。また、牽引車への連結や、牽引を容易に行える。
例えば、図13に示すような従来技術は、2基の門型クレーン装置93,93を備えた台車91を、2台連結し、クレーン装置93を合計4基として台車群を構成していた。さらに、クレーン装置93のアーム部94の揺動先端が隣接線部Kの軌道用スラブSやスラブ敷設予定部Jの左右外方側まで届く(跨ぐ)ように、アーム部94の長さを設定する必要があるため、二点鎖線で示すように、収納状態(非作業状態)では台車91から大きく飛び出すため、台車群(2台の台車91,91)の前後夫々に、1台ずつ別のトロ(作業用台車)98,98を連結する必要があり長尺で重く、牽引が大変であった。このような従来の問題を解決している。
【0033】
なお、本発明は、設計変更可能であって、アクチュエータ6の数、枢支部7の数、アウトリガー5の数は自由である。アクチュエータ6は油圧シリンダに限らずスクリューシャフト等を用いたものとするも良い。
【0034】
以上のように、本発明の軌道用スラブ搬送装置は、軌道走行用台車1に軌道用スラブSを載置するための荷受けテーブル2を設け、さらに、荷受けテーブル2を左右方向に水平状に保持するための水平保持手段Hを備え、荷受けテーブル2に、軌道用スラブSを吊り上げるためのクレーン装置3を立設したので、カントを有する軌道工事区間であっても、軌道スラブの敷設作業や回収作業を容易に行うことができる。例えば、最大約8°の傾斜のカント(最大カント200)を有する軌道Rであっても、安全にクレーン装置3を旋回できる。軌道用スラブSの玉掛け作業を水平な場所で行えて安全である。クレーン装置3がトンネル壁面やトンネル内構造物と干渉する虞がなくなる。段取り作業や片づけ作業を容易かつ迅速に行え、工事全体の時間を短縮できる。上り線と下り線の左右方向の間隔が変化しても容易に対応できる。
【0035】
また、水平保持手段Hは、荷受けテーブル2の左右各々に対応して設けられ、上記荷受けテーブル2を台車1に対して左右に傾動させるアクチュエータ6と、台車1に対して荷受けテーブル2を左右に傾動可能かつ連結分離自在に枢結する枢結手段Zとを、具備し、台車1がカントを有する軌道R上において停車した台車傾き状態で、傾斜上方側の枢結手段Zを連結状態とすると共に、傾斜下方側の枢結手段Zを分離状態として傾斜下方側のアクチュエータ6の伸長状態にて、荷受けテーブル2を左右方向に水平状に保持するように構成されたので、荷受けテーブル2をスムーズに揺動(傾動)させて、左右方向の水平状に保持できる。荷受けテーブル2を迅速にかつ安全に揺動できる。製造が容易で装置全体の小型化や軽量化を実現できる。
【0036】
また、荷受けテーブル2の左右中心位置に、クレーン装置3の旋回軸心L3を配設したので、左右の輪重比が良くなり、回送時の走行の際に、転覆の虞がなく、安全に走行できる。クレーン装置3を左右両側へ均等に旋回させることができ、台車1の左右の向きを考慮せずに軌道Rの乗り換えや走行を行うことができる。例えば、図12及び図13の従来の装置では、クレーン装置93を台車91の左右中心位置から大きくずらして設置しているため、クレーン装置93と反対側にカウンタウエイト(例えば1400Kg)を搭載して、空車時(スラブ非搭載時)の左右の輪重比を(計算値ではあるが)85%に抑えていたが、本発明では、カウンタウエイトを大量に搭載せずとも、左右の輪重比を90%以上にすることが実現可能である。
【0037】
クレーン装置3は、荷受けテーブル2に固設された基台31と、基台31に立設された支柱部33と、支柱部33から水平方向に延設され先端が自由端状のアーム部34と、を有する旋回可能な片持ち梁型であるので、クレーン装置3のアーム部34を短くできる。従って、台車1の前後寸法を短く、装置全体を小型化でき、留置スペースを減少できる。或いは、1台の台車1上の前後位置に油圧供給装置や電源装置等の他の装置や器具を設置可能なスペースを確保できる。また、テーブル2とアーム部34の間の空間を広くでき、軌道用スラブSの積載枚数を増加できる。段取り作業や片づけ作業を大幅に削減でき、作業(工事)全体の時間を短縮できる。例えば、図13に示す従来技術は、1台の台車91に前後一対の門型クレーン装置93,93を設け、門型クレーン装置93の揺動側支柱99を設置した後、隣り合う揺動側支柱99,99を、前後方向に沿った連結杆部材95で連結するため、段取りや片づけ作業に手間と時間がかかるという問題があったが、この問題を解決できる。
【0038】
また、クレーン装置3は軌道用スラブSを吊り上げるための巻上機35を有し、巻上機35にて昇降自在な吊枠体8が、吊り上げ中心軸心L8廻りに回転自在に構成されているので、軌道用スラブSの積み下ろし位置を、クレーン本体30の旋回と、巻上機35の往復移動(横行)と、吊枠体8の回転と、で容易に微調整できる。また、台車1を、スラブ敷設予定部Jや回収すべき軌道用スラブSに対して正確に停車させる必要がなく、迅速に作業できる。
【0039】
上記荷受けテーブル2の前後左右夫々に、アウトリガー5,5,5,5を搭載したので、アウトリガー5の作動や接地を容易に行うことができる。台車1の姿勢が安定し、脱線を防止でき、安全に作業を行うことができる。
【符号の説明】
【0040】
1 台車
2 荷受けテーブル
3 クレーン装置
5 アウトリガー
6 アクチュエータ
8 吊枠体
31 基台
33 支柱部
34 アーム部
35 巻上機
H 水平保持手段
L3 旋回軸心
L8 吊り上げ中心軸心
R 軌道
S 軌道用スラブ
Z 枢結手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図9
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図13