特許第6283404号(P6283404)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6283404
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】ロータリダンパ
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/14 20060101AFI20180208BHJP
   F16F 9/50 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
   F16F9/14 A
   F16F9/50
【請求項の数】5
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-227616(P2016-227616)
(22)【出願日】2016年11月24日
【審査請求日】2017年12月6日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000198271
【氏名又は名称】株式会社ソミック石川
(74)【代理人】
【識別番号】100136674
【弁理士】
【氏名又は名称】居藤 洋之
(72)【発明者】
【氏名】中屋 一正
【審査官】 鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】 特開平4−327036(JP,A)
【文献】 特開平11−311285(JP,A)
【文献】 特開2013−181641(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/00−9/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動体を液密的に収容する円筒状の内室を有するとともに同内室内に径方向に沿う壁状に形成されて前記流動体の周方向の流動を妨げる固定ベーンを有したハウジングと、
軸体の外周部に前記内室内を仕切りつつ前記流動体を押しながら回動する可動ベーンを有したロータと、
前記内室内に前記固定ベーンおよび前記可動ベーンによって形成されるとともに前記可動ベーンの回転方向によって容積が増加または減少する少なくとも4つの個室とを備えたロータリダンパにおいて、
前記可動ベーンの一方への回動によって容積が同時に減少するとともに同可動ベーンの他方への回動によって容積が同時に増加する少なくとも2つの前記個室間で相互に前記流動体を流通させる第1双方向連通路と、
前記可動ベーンの前記一方への回動によって容積が同時に増加するとともに同可動ベーンの前記他方への回動によって容積が同時に減少する少なくとも2つの前記個室間で一方から他方にのみ前記流動体を流通させる第1片方向連通路と、
前記第1双方向連通路によって連通される前記少なくとも2つの個室である連通個室のうちの少なくとも1つと前記第1片方向連通路によって連通される前記少なくとも2つの個室である片側連通個室のうちの少なくとも1つとの間で前記片側連通個室側から前記連通個室側に前記流動体を流通させ、かつ前記連通個室側から前記片側連通個室側に前記流動体を制限しつつ流通させる第2双方向連通路と、
前記第2双方向連通路が連通していない前記連通個室のうちの少なくとも1つと前記第2双方向連通路が連通していない前記片側連通個室のうちの少なくとも1つとの間で前記片側連通個室側から前記連通個室側にのみ前記流動体を制限しつつ流通させる第2片方向連通路とを備えることを特徴とするロータリダンパ。
【請求項2】
請求項1に記載したロータリダンパにおいて、
前記第1双方向連通路および前記第1片方向連通路は、
前記ロータにおける前記軸体にそれぞれ形成されていることを特徴とするロータリダンパ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載したロータリダンパにおいて、
前記第2双方向連通路および前記第2片方向連通路は、
前記ロータにおける前記可動ベーンにそれぞれ形成されていることを特徴とするロータリダンパ。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1つに記載したロータリダンパにおいて、さらに、
前記第2双方向連通路が連通する前記片側連通個室に連通させて前記流動体の膨張または収縮による体積変化を吸収するアキュムレータを備えることを特徴とするロータリダンパ。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のうちのいずれか1つに記載したロータリダンパにおいて、さらに、
前記内室内に形成された前記少なくとも4つの個室のうち、前記可動ベーンの回動方向に関わらず他の個室に対して常に高圧状態にならない個室とこの常に高圧状態にならない個室に対して前記可動ベーンの回動によって高圧状態になることがある個室とを前記流動体の制限量を調整可能に連通させるバイパス通路を備えることを特徴とするロータリダンパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、四輪または二輪の自走式車両または産業用機械器具における回動機構において運動エネルギの減衰装置として用いられるロータリダンパに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、四輪または二輪の自走式車両または産業用機械器具においては、回動機構において運動エネルギの減衰装置としてロータリダンパが用いられている。例えば、下記特許文献1には、減衰特性が異なる2つの減衰力発生要素を備えてロータの正転時と逆転時とで減衰力が異なるロータリダンパが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−82593号公報
【発明の概要】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示されたロータリダンパにおいては、ロータの正転時と逆転時とで減衰力を異ならせるために2つの減衰力発生要素を備えているため、装置構成が大型化、複雑化および重量化するという問題がある。
【0005】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、装置構成を小型化、単純化および軽量化することができるロータリダンパを提供することにある。
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の特徴は、流動体を液密的に収容する円筒状の内室を有するとともに同内室内に径方向に沿う壁状に形成されて流動体の周方向の流動を妨げる固定ベーンを有したハウジングと、軸体の外周部に内室内を仕切りつつ流動体を押しながら回動する可動ベーンを有したロータと、内室内に固定ベーンおよび可動ベーンによって形成されるとともに可動ベーンの回転方向によって容積が増加または減少する少なくとも4つの個室とを備えたロータリダンパにおいて、可動ベーンの一方への回動によって容積が同時に減少するとともに同可動ベーンの他方への回動によって容積が同時に増加する少なくとも2つの前記個室間で相互に流動体を流通させる第1双方向連通路と、可動ベーンの前記一方への回動によって容積が同時に増加するとともに同可動ベーンの前記他方への回動によって容積が同時に減少する少なくとも2つの前記個室間で一方から他方にのみ流動体を流通させる第1片方向連通路と、第1双方向連通路によって連通される前記少なくとも2つの個室である連通個室のうちの少なくとも1つと第1片方向連通路によって連通される前記少なくとも2つの個室である片側連通個室のうちの少なくとも1つとの間で片側連通個室側から連通個室側に流動体を流通させ、かつ連通個室側から片側連通個室側に流動体を制限しつつ流通させる第2双方向連通路と、第2双方向連通路が連通していない連通個室のうちの少なくとも1つと第2双方向連通路が連通していない片側連通個室のうちの少なくとも1つとの間で前記片側連通個室側から前記連通個室側にのみ流動体を制限しつつ流通させる第2片方向連通路とを備えることにある。
【0007】
この場合、第2双方向連通路における連通個室側から片側連通個室側に流動体を制限しつつ流通させるとは、前段の片側連通個室側から連通個室側への流動体の流れ易さに対して同一条件下においてより流れ難くして両者間に圧力差を生じさせていることを意味する。また、第2片方向連通路における片側連通個室側から連通個室側にのみ流動体を制限しつつ流通させるとは、前記第2双方向連通路における片側連通個室側から連通個室側への流動体の流れ易さに対して同一条件下においてより流れ難くして両者間に圧力差を生じさせていることを意味する。これらの場合、流動体の流通の制限は、流動体を流通させる流路の大きさまたは流通を妨げる負荷などによって実現される。
【0008】
このように構成した本発明の特徴によれば、ロータリダンパは、1つの内室を構成する複数の個室間を第1双方向連通路、第1片方向連通路、第2双方向連通路および第2片方向連通路で連通させることでロータの一方への回動時とロータの他方への回動時とで圧力が上昇する個室の数を異ならせているため、ロータの一方への回動時と他方への回動時とで減衰力が異なるロータリダンパの装置構成を小型化、単純化および軽量化することができる。
【0009】
また、本発明の他の特徴は、前記ロータリダンパにおいて、第1双方向連通路および第1片方向連通路は、ロータにおける軸体にそれぞれ形成されていることにある。
【0010】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、ロータリダンパは、第1双方向連通路および第1片方向連通路がロータを構成する軸体に形成されているため、装置構成を小型化、単純化および軽量化することができる。
【0011】
また、本発明の他の特徴は、前記ロータリダンパにおいて、第2双方向連通路および第2片方向連通路は、ロータにおける可動ベーンにそれぞれ形成されていることにある。
【0012】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、ロータリダンパは、第2双方向連通路および第2片方向連通路がロータにおける可動ベーンに形成されているため、装置構成を小型化、単純化および軽量化することができる。
【0013】
また、本発明の他の特徴は、前記ロータリダンパにおいて、さらに、第2双方向連通路が連通する片側連通個室に連通させて流動体の膨張または収縮による体積変化を吸収するアキュムレータを備えることにある。
【0014】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、ロータリダンパは、第2双方向連通路が連通する片側連通個室は、ロータの回動方向に関わらず常に他の個室に対して高圧とならない非高圧状態にある。このため、本発明に係るロータリダンパは、この常時非高圧状態の片側連通個室に連通させて流動体の膨張または収縮による体積変化を吸収するためのアキュムレータを設けることで安定した状態で正確に流動体の体積変化を抑えることができる。
【0015】
また、本発明の他の特徴は、前記ロータリダンパにおいて、さらに、内室内に形成された少なくとも4つの個室のうち、可動ベーンの回動方向に関わらず他の個室に対して常に高圧状態にならない個室とこの常に高圧状態にならない個室に対して可動ベーンの回動によって高圧状態になることがある個室とを流動体の制限量を調整可能に連通させるバイパス通路を備えることを特徴とするロータリダンパ。
【0016】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、ロータリダンパは、内室内に形成された少なくとも4つの個室のうち、可動ベーンの回動方向に関わらず他の個室に対して常に高圧状態とならない個室とこの常に高圧状態とならない個室に対して可動ベーンの回動によって高圧状態となることがある個室とを流動体の制限量を調整可能に連通させるバイパス通路を備えるため、バイパス通路における流量を調整することで可動ベーンの回動によって高圧状態となった個室の圧力を調整してロータリダンパの減衰力を加減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係るロータリダンパの全体構成の概略的に示す斜視図である。
図2図1示すロータリダンパの全体構成を概略的に示す正面図である。
図3図1示すロータリダンパの全体構成を概略的に示す側面図である。
図4図2に示す4−4から見たロータリダンパの断面図である。
図5図2に示す5−5から見たロータリダンパの断面図である。
図6図3に示す6−6から見たロータリダンパの断面図である。
図7図3に示す7−7から見たロータリダンパの断面図である。
図8】ロータリダンパの作動状態を説明するために図6および図7を模式化した説明図である。
図9図8に示した状態からロータが時計回りに回動した状態を示す説明図である。
図10図8に示した状態からロータが反対側まで回動した状態を示す説明図である。
図11図10に示した状態からロータが反時計回りに回動した状態を示す説明図である。
図12】本発明の変形例に係るロータリダンパの内部構造を示す図6に対応する断面図である。
図13】本発明の変形例に係るロータリダンパの内部構造を示す図7に対応する断面図である。
図14】ロータリダンパの作動状態を説明するために図12および図13を模式化した図であってロータが時計回りに回動した状態を示す説明図である。
図15】ロータリダンパの作動状態を説明するために図12および図13を模式化した図であってロータが反時計回りに回動した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るロータリダンパの一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係るロータリダンパ100の全体構成を概略的に示す斜視図である。また、図2は、図1示すロータリダンパ100の全体構成を概略的に示す正面図である。また、図3は、図1示すロータリダンパ100の全体構成を概略的に示す側面図である。なお、本明細書において参照する各図は、本発明の理解を容易にするために一部の構成要素を誇張して表わすなど模式的に表している部分がある。このため、各構成要素間の寸法や比率などは異なっていることがある。このロータリダンパ100は、二輪の自走式車両(バイク)の後輪を上下動可能に支持するスイングアームの基端部に取り付けられて後輪の上下動時に運動エネルギを減衰させる減衰装置である。
【0019】
(ロータリダンパ100の構成)
ロータリダンパ100は、ハウジング101を備えている。ハウジング101は、ロータ111を回転自在に保持しつつロータリダンパ100の筐体を構成する部品であり、アルミニウム材、鉄材または亜鉛材によって構成されている。具体的には、ハウジング101は、主として、ハウジング本体102と蓋体106とで構成されている。
【0020】
ハウジング本体102は、図4ないし図7に示すように、後述するロータ111の可動ベーン118a,118bおよび流動体123を収容するとともにロータ111の軸体112の一方の端部を回転自在に支持する部品であり、筒体における一方端が大きく開口するとともに他方端が小さく開口する有底円筒状に形成されている。このハウジング本体102の内部は、前記筒体における大きく開口する側に2つの半円筒の空間が対向した内室103が形成されるとともに、この内室103の底部から前記筒体における小さく開口する側に掛けてロータ支持部105が形成されている。
【0021】
内室103は、ロータ111の可動ベーン118a,118bとともに流動体123を液密的に収容する空間である。この内室103内には、固定ベーン104a,104bがハウジング本体102と一体的に形成されている。固定ベーン104a,104bは、ロータ111とともに内室103内を仕切って個室を形成する壁状の部分であり、ハウジング本体102の軸線方向に沿ってハウジング本体102の内周面から内側に向かって凸状に張り出して形成されている。本実施形態においては、固定ベーン104a,104bは、ハウジング本体102の内周面における周方向上での互いに対向する位置に設けられている。また、固定ベーン104a,104bの各先端部には、ロータ111の軸体112の外周面に密着するシール材がそれぞれ設けられている。
【0022】
ロータ支持部105は、ロータ111の軸体112における一方の端部を回転自在な状態で支持する円筒状の部分である。このロータ支持部105は、パッキンなどのシール材を介してロータ111の軸体112を液密的に支持している。
【0023】
蓋体106は、ハウジング本体102に形成されている内室103を液密的に塞ぐための部品であり、円筒状に形成されたロータ支持部107の一方の端部がフランジ状に張り出した形状に形成されている。ロータ支持部107は、ロータ111の軸体112における他方の端部を回転自在な状態で支持する円筒状の部分である。このロータ支持部107は、パッキンなどのシール材を介してロータ111の軸体112を液密的に支持している。
【0024】
また、蓋体106には、調整ニードル109を備えたバイパス通路108が形成されている。バイパス通路108は、内室103内が可動ベーン118a,118bによって4つに仕切られた第1個室R1、第2個室R2、第3個室R3および第4個室R4のうちの第1個室R1と第2個室R2とを連通する第2双方向連通路121とは別に両個室間を連通させて流動体123を互いに流通させる通路である。
【0025】
また、調整ニードル109は、バイパス通路108を流通する流動体123の流量を調整するための部品であり、ドライバなどの工具(図示せず)を使って回動させることにより流動体123の流通量を増減することができる。この蓋体106は、4つのボルト110によってハウジング本体102における内室103が開口する側の端部に取り付けられている。
【0026】
ロータ111は、ハウジング101の内室103内に配置されて内室103内を4つの空間である第1個室R1、第2個室R2、第3個室R3および第4個室R4にそれぞれ仕切るとともに、この内室103内で回動することによりこれらの第1個室R1、第2個室R2、第3個室R3および第4個室R4の各個室の容積をそれぞれ増減させるための部品であり、主として、軸体112と可動ベーン118a,118bとで構成されている。
【0027】
軸体112は、可動ベーン118a、118bを支持する部分であり、アルミニウム材、鉄材または亜鉛材によって構成されている。この軸体112には、一方の端部に接続部113が形成されるとともに他方の端部にアキュムレータ114が設けられている。接続部113は、ロータリダンパ100が取り付けられる2つの部品間のうちの一方の部品に接続するための部分である。本実施形態においては、接続部113は、断面形状が六角形状の有底筒状の穴で構成されている。
【0028】
アキュムレータ114は、内室103内の流動体123の温度変化による膨張または収縮による体積変化を補償するための機具である。具体的には、アキュムレータ114は、主として、シリンダ114a、ピストン114b、圧縮ガス114cおよびガスバルブ体114dによって構成されている。シリンダ114aは、流動体123、ピストン114bおよび圧縮ガス114cをそれぞれ収容する部分であり、軸体112の前記他方の端部に第1片方向連通路116に連通した状態で円筒状に形成されている。
【0029】
ピストン114bは、シリンダ114a内を液密的かつ気密的に仕切りつつ往復摺動する円柱状の部品である。圧縮ガス114cは、流動体123の膨張または収縮に応じて圧縮または膨張させる媒体であり、本実施形態においては窒素ガスなどの不活性ガスによって構成されている。ガスバルブ体114dは、シリンダ114aを気密的に封止しつつシリンダ114a内に圧縮ガス114cを注入するための部品であり、軸体112の前記他方の端部に気密的に嵌め込まれている。すなわち、アキュムレータ114は、軸体112内に一体的に組み付けられている。
【0030】
また、この軸体112には、第1双方向連通路115および第1片方向連通路116がそれぞれ形成されている。第1双方向連通路115は、可動ベーン118a,118bの一方への回動によって容積が同時に減少するとともに同可動ベーン118a,118bの他方への回動によって容積が同時に増加する2つの個室間で相互に流動体123の流通を可能とする通路である。本実施形態においては、第1双方向連通路115は、可動ベーン118a,118bの図示反時計回りの回動によって容積が同時に減少するとともに図示時計回りの回動によって容積が同時に増加する第1個室R1と第3個室R3とが互いに連通するように軸体112を貫通した状態で形成されている。
【0031】
第1片方向連通路116は、可動ベーン118a,118bの前記一方への回動によって容積が同時に増加するとともに同可動ベーン118a,118bの前記他方への回動によって容積が同時に減少する2つの個室間で一方から他方にのみ流動体123を流通させる通路である。本実施形態においては、第1片方向連通路116は、可動ベーン118a,118bの図示反時計回りの回動によって容積が同時に増加するとともに図示時計回りの回動によって容積が同時に減少する第2個室R2と第4個室R4とが第2個室R2から第4個室R4にのみ流動体123が流通するように一方向弁117を介して軸体112を貫通した状態で形成されている。また、この第1片方向連通路116は、前記アキュムレータ114のシリンダ114aにも連通している。
【0032】
一方向弁117は、第2個室R2と第4個室R4とを連通させる第1片方向連通路116において流動体123の第2個室R2側から第4個室R4側への流通を許容しつつ第4個室R4側から第2個室R2側への流動を阻止する弁である。
【0033】
可動ベーン118a,118bは、内室103内を複数の空間に仕切りつつこれらの各空間の容積を液密的にそれぞれ増減させるための部品であり、軸体112(内室103)の径方向に延びる板状体によってそれぞれ構成されている。この場合、これら2つの可動ベーン118a,118bは、軸体112を介して互いに反対方向(換言すれば仮想の同一平面上)に延びて形成されている。また、可動ベーン118a,118bの各先端部には、内室103の内周面に密着するシール材が設けられている。これらにより、可動ベーン118a,118bは、前記固定ベーン104a,104bと協働して内室103内に互いに4つの空間である第1個室R1、第2個室R2、第3個室R3および第4個室R4を互いに液密的に形成する。
【0034】
より具体的には、内室103内には、固定ベーン104aと可動ベーン118aとで第1個室R1が形成され、可動ベーン118aと固定ベーン104bとで第2個室R2が形成され、固定ベーン104bと可動ベーン118bとで第3個室R3が形成され、可動ベーン118bと固定ベーン104aとで第4個室R4が形成される。すなわち、第1個室R1、第2個室R2、第3個室R3および第4個室R4は、内室103内において周方向に沿って隣接して形成されている。
【0035】
これらの可動ベーン118a,118bには、第2双方向連通路121および第2片方向連通路122がそれぞれ形成されている。第2双方向連通路121は、第1双方向連通路115によって連通される2つの連通個室としての第1個室R1および第3個室R3のうちの第1個室R1と、第1片方向連通路116によって連通される2つの片側連通個室としての第2個室R2および第4個室R4のうちの第2個室R2とが互いに連通するように第1個室R1と第2個室R2とを仕切る可動ベーン118aに形成されている。
【0036】
この第2双方向連通路121は、片側連通個室である第2個室R2側から連通個室である第1個室R1側に流動体123を流通させるとともに第1個室R1側から第2個室R2側に流動体123を制限しつつ流通させるように構成されている。具体的には、第2双方向連通路121は、図8に示すように、一方向弁121aと絞り弁121bとが並列配置されて構成されている。
【0037】
一方向弁121aは、第2個室R2側から第1個室R1側に流動体123を流通させるとともに第1個室R1側から第2個室R2側へは流動体123の流れを阻止する弁で構成されている。また、絞り弁121bは、第1個室R1と第2個室R2との間で流動体123の流れを制限しつつ双方向に流通させることができる弁で構成されている。この場合、絞り弁121bにおける流動体123の流れを制限しつつとは、一方向弁121aにおける流動体123の流れ易さに対して同一条件(例えば、圧力および流動体の粘度など)下において流動体123が流れ難いことを意味する。
【0038】
第2片方向連通路122は、第2双方向連通路121が連通していない連通個室である第3個室R3と、第2双方向連通路121が連通していない片側連通個室である第4個室R4との間で片側連通個室である第4個室R4側から連通個室である第3個室R3側にのみ流動体123を制限しつつ流通させるように第3個室R3と第4個室R4とを仕切る可動ベーン118bに形成されている。具体的には、第2片方向連通路122は、第4個室R4側から第3個室R3側にのみ流動体123を流通させる一方向弁122aと、流動体123の流通量を制限する絞り弁122bとが直列配置されて構成されている。この場合、絞り弁122bにおける流動体123の流れを制限しつつとは、一方向弁122aにおける流動体123の流れ易さに対して同一条件(例えば、圧力および流動体の粘度など)下において流動体123が流れ難いことを意味する。
【0039】
流動体123は、内室103を回動する可動ベーン118a,118bに対して抵抗を付与することによりロータリダンパ100にダンパー機能を作用させるための物質であり、内室103内に満たされている。この流動体123は、ロータリダンパ100の仕様に応じた粘性を有する流動性を有する液状、ジェル状または半固体状の物質で構成されている。この場合、流動体123の粘度は、ロータリダンパ100の仕様に応じて適宜選定される。本実施形態においては、流動体123は、油、例えば、鉱物油またはシリコーンオイルなどによって構成されている。なお、図4図6図7図12および図13においては、流動体123を破線円で囲んだ領域のみ示している。
【0040】
このように構成されたロータリダンパ100は、互いに可動的に連結される2つの部品間に設けられる。例えば、ロータリダンパ100は、二輪の自走式車両(図示しない)の基本骨格であるフレーム側を固定側としてハウジング101が取り付けられるとともに、二輪の自走式車両の後輪を上下動可能に支持するスイングアームの基端部側を可動側としてロータ111が取り付けられる。
【0041】
(ロータリダンパ100の作動)
次に、このように構成されたロータリダンパ100の作動について説明する。この作動説明においては、内室103内におけるロータ111および流動体123の動きの理解を容易にするために内室103内を模式的に示した図8図11を用いて説明する。なお、図8図11は、可動ベーン118a,118bの動きに対する流動体123の挙動の理解を助けるために図6および図7を模式化して示している。また、図8図11においては、流動体123の圧力が他の個室に対して相対的に高い状態を濃いハッチングで示し、圧力が相対的に低い状態を薄いハッチングで示している。また、図9および図11においては、可動ベーン118a,118bの回動方向を太線の破線矢印で示すとともに、流動体123の流動方向を細線の破線矢印で示している。
【0042】
まず、自走式車両が平地を走行してスイングアームが下降した状態においては、ロータリダンパ100は、図8に示すように、可動ベーン118aが固定ベーン104aに最接近するとともに可動ベーン118bが固定ベーン104bに最接近した状態にある。すなわち、ロータリダンパ100は、第1個室R1および第3個室R3の各容積が最小の状態であるとともに、第2個室R2および第4個室R4の各容積が最大の状態になる。
【0043】
この状態から自走式車両の後輪が段差などに乗り上げた場合には、スイングアームが上昇するためロータリダンパ100は、図9に示すように、ロータ111が図示時計回りに回動する。すなわち、ロータリダンパ100は、可動ベーン118aが固定ベーン104bに向かって回動するとともに可動ベーン118bが固定ベーン104aに向かって回動する。これにより、ロータリダンパ100は、第1個室R1および第3個室R3の各容積がそれぞれ増加するとともに第2個室R2および第4個室R4の各容積がそれぞれ減少する。
【0044】
この場合、最大容積にあった第2個室R2および第4個室R4のうちの第4個室R4は、第2個室R2に対して第1片方向連通路116によって「流入が可,流出が不可」の状態であるとともに、第3個室R3に対して第2片方向連通路122によって「流入が不可,流出が絞り付きで可」の状態である。したがって、第4個室R4は、第4個室R4内の流動体123が絞り弁122bを介して第3個室R3内にのみ流出する。これにより、第4個室R4は、圧力が上昇して高圧状態となるため、第1片方向連通路116を介して連通する第2個室R2からの流動体123の流入はない。
【0045】
また、これと同時に、第2個室R2は、第4個室R4に対して第1片方向連通路116によって「流入が不可,流出が可」の状態であるとともに、第1個室R1に対して第2双方向連通路121によって「流入が絞り付きで可、流出が可」である。この場合、第4個室R4は、前記したように高圧状態である。したがって、第2個室R2は、第2個室R2内の流動体123が第2双方向連通路121を介して第1個室R1内に流出する。この場合、第2個室R2は、流動体123が第2双方向連通路121における一方向弁121aを介して円滑に流動するため、圧力の上昇は抑えられ非高圧状態を維持する。なお、ここで非高圧状態とは、他の個室の圧力に対する相対的なものである。
【0046】
一方、最小容積にあった第1個室R1および第3個室R3のうちの第3個室R3は、第1個室R1に対して第1双方向連通路115によって「流入が可,流出が可」の状態であるとともに、第4個室R4に対して第2片方向連通路122によって「流入が絞り付きで可,流出が不可」の状態である。したがって、第3個室R3は、第1個室R1および第4個室R4からそれぞれ流動体123が絞り弁122bを介して流入するため、非高圧状態を維持する。
【0047】
また、これと同時に、第1個室R1は、第3個室R3に対して第1双方向連通路115によって「流入が可、流出が可」の状態であるとともに、第2個室R2に対して第2双方向連通路121によって「流入が可,流出が絞り付きで可」の状態である。したがって、第1個室R1は、第2個室R2から流動体123が流入するとともに第3個室R3に対して流動体123が流出するため、非高圧状態を維持する。
【0048】
すなわち、ロータ111が図示時計回りに回動した場合においては、ロータリダンパ100は、第4個室R4のみが流動体123の流出が制限されて高圧状態となるため、減衰力は後述する図示反時計回り時の減衰力に比べて小さい。そして、この後、ロータリダンパ100は、図10に示すように、可動ベーン118aが固定ベーン104bに最接近するとともに可動ベーン118bが固定ベーン104aに最接近した状態となる。すなわち、ロータリダンパ100は、第1個室R1および第3個室R3の各容積がそれぞれ最大となるとともに、第2個室R2および第4個室R4の各容積がそれぞれ最小の状態となる。なお、この状態は、自走式車両のスイングアームが上昇した状態である。
【0049】
次に、スイングアームが下降した場合には、ロータリダンパ100は、図11に示すように、ロータ111が図示反時計回りに回動する。すなわち、ロータリダンパ100は、可動ベーン118aが固定ベーン104aに向かって回動するとともに可動ベーン118bが固定ベーン104bに向かって回動する。これにより、ロータリダンパ100は、第1個室R1および第3個室R3の各容積がそれぞれ減少するとともに第2個室R2および第4個室R4の各容積がそれぞれ増加する。
【0050】
この場合、最大容積にあった第1個室R1および第3個室R3のうちの第1個室R1は、第3個室R3に対して第1双方向連通路115によって「流入が可,流出が可」の状態であるとともに、第2個室R2に対して第2双方向連通路121によって「流入が可,流出が絞り付きで可」の状態である。また、この場合、第3個室R3は、可動ベーン118bの回動によって第1個室R1とともに容積が減少しつつある。したがって、第1個室R1は、第1個室R1内の流動体123が絞りを介して第2個室R2内にのみ流出する。これにより、第1個室R1は、圧力が上昇して高圧状態となる。
【0051】
また、これと同時に、第3個室R3は、第1個室R1に対して第1双方向連通路115によって「流入が可,流出が可」の状態であるとともに、第4個室R4に対して第2片方向連通路122によって「流入が絞り付きで可,流出が不可」の状態である。したがって、第3個室R3は、第3個室R3内の流動体123が第1個室R1内にのみ流出する。これにより、第3個室R3は、第1個室R1とともに圧力が上昇して高圧状態となる。
【0052】
一方、最小容積にあった第2個室R2および第4個室R4のうちの第2個室R2は、第1個室R1に対して第2双方向連通路121によって「流入が絞り付きで可,流出が可」の状態であるとともに、第4個室R4に対し第1片方向連通路116によって「流入が不可,流出が可」の状態である。したがって、第2個室R2は、第1個室R1から流動体123が絞りを介して流入するとともに第4個室R4に対して流動体123が流出するため、非高圧状態を維持する。すなわち、第2個室R2は、可動ベーン118a,118bの回転方向に関わらず常に非高圧状態を維持する。
【0053】
また、これと同時に、第4個室R4は、第2個室R2に対して第1片方向連通路116によって「流入が可、流出が不可」の状態であるとともに、第3個室R3に対して第2片方向連通路122によって「流入が不可,流出が絞り付きで可」の状態である。したがって、第4個室R4は、第2個室R2から流動体123が流入するのみであるため、非高圧状態を維持する。
【0054】
すなわち、ロータ111が図示反時計回りに回動した場合においては、ロータリダンパ100は、第1個室R1および第3個室R3が流動体123の流出が制限されてそれぞれ高圧状態となるため、減衰力は前記した図示時計回り時の減衰力に比べて大きくなる。この場合、ロータリダンパ100の減衰力は、前記した図示時計回り時に比べて高圧状態の個室が2倍存在するため減衰力も2倍となる。
【0055】
そして、この後、ロータリダンパ100は、図8に示すように、可動ベーン118aが固定ベーン104aに最接近するとともに可動ベーン118bが固定ベーン104bに最接近して第1個室R1および第3個室R3の各容積がそれぞれ最小となるとともに第2個室R2および第4個室R4の各容積がそれぞれ最大の状態に戻る。
【0056】
なお、上記作動説明においては、ロータリダンパ100の作動状態の理解を容易にするため、可動ベーン118aが固定ベーン104aに最接近するとともに可動ベーン118bが固定ベーン104bに最接近した状態、または可動ベーン118aが固定ベーン104bに最接近するとともに可動ベーン118bが固定ベーン104aに最接近した状態から可動ベーン118a,118bが回動した場合について説明した。しかし、ロータリダンパ100は、可動ベーン118a,118bが固定ベーン104aと固定ベーン104bとの間の途中に位置している状態から固定ベーン104a側または固定ベーン104b側に回動することが当然に有り得ることである。
【0057】
上記作動方法の説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、ロータリダンパ100は、1つの内室103を構成する第1個室R1、第2個室R2、第3個室R3および第4個室R4の各個室間を第1双方向連通路115、第1片方向連通路116、第2双方向連通路121および第2片方向連通路122で連通させることでロータ111の一方(図示時計回り)への回動時とロータ111の他方(図示反時計回り)への回動時とで圧力が上昇する個室の数を異ならせているため、ロータ111の一方への回動時と他方への回動時とで減衰力が異なるロータリダンパ100の装置構成を小型化、単純化および軽量化することができる。
【0058】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。なお、下記に示す各変形例においては、上記各実施形態と同様の構成部分には対応する符号を付して、その説明は省略する。
【0059】
例えば、上記実施形態においては、ロータリダンパ100は、1つの内室103内を固定ベーン104a,104bおよび可動ベーン118a,118bによって4つの個室である第1個室R1、第2個室R2、第3個室R3および第4個室R4に仕切った。しかし、ロータリダンパ100は、可動ベーン118a,118bの一方への回動によって容積が同時に減少するとともに同可動ベーン118a,118bの他方への回動によって容積が同時に増加する個室を少なくとも2つ有するとともに、この可動ベーン118a,118bの前記一方への回動によって容積が同時に増加するとともに同可動ベーン118a,118bの前記他方への回動によって容積が同時に減少する個室を少なくとも2つ有していればよい。すなわち、ロータリダンパ100は、1つの内室103内においてロータ111の一つの方向への回動時に容積が同時に増加する少なくとも2つの個室とこれらの個室とは別に容積が同時に減少する少なくとも2つの個室を有していればよい。
【0060】
したがって、例えば、図12ないし図15にそれぞれ示すように、ロータリダンパ200は、3つの固定ベーン104a,104b,104cおよび3つの可動ベーン118a,118b,118cをそれぞれ均等配置で備えることにより1つの内室103内を6つの個室である第1個室R1、第2個室R2、第3個室R3、第4個室R4、第5個室R5および第6個室R6に仕切って構成することができる。
【0061】
この場合、第1双方向連通路115は、第1個室R1、第3個室R3および第5個室R5に互いに連通した状態で軸体112内に設けることができる。また、第1片方向連通路116は、第4個室R4と第6個室R6と互いに連通しつつこれらに対して第2個室R2側からのみ流動体123が流れる向きで一方向弁117を配置して構成することができる。
【0062】
また、第2双方向連通路121は、第1個室R1と第2個室R2とを仕切る可動ベーン118aに設けることができる。また、第2片方向連通路122は、第5個室R5と第6個室R6とを仕切る可動ベーン118cに設けることができる。
【0063】
このように構成されたロータリダンパ200は、図14に示すように、可動ベーン118aが固定ベーン104aに最接近し、可動ベーン118bが固定ベーン104bに最接近し、可動ベーン118cが固定ベーン104cに最接近した状態においてロータ111が図示時計回りに回動した場合には、2つの第4個室R4および第6個室R6がそれぞれ高圧状態となる。
【0064】
すなわち、最大容積にあった第2個室R2、第4個室R4および第6個室R6のうちの第6個室R6は、第1片方向連通路116および第2片方向連通路122によって第6個室R6内の流動体123が絞りを介して第5個室R5内にのみ流出して高圧状態となる。また、これと同時に、第4個室R4は、第1片方向連通路116によって第6個室R6と一体的に連通して第4個室R4内の流動体が第6個室R6に流入するため、第6個室R6とともに高圧状態となる。また、これと同時に、第2個室R2は、第2双方向連通路121によって第2個室R2内の流動体123が第1個室R1内にのみ流出するため、非高圧状態が維持される。
【0065】
一方、最小容積にあった第1個室R1、第3個室R3および第5個室R5のうちの第5個室R5は、第2片方向連通路122によって第4個室R4および第6個室R6からそれぞれ流動体123が流入するとともに第1双方向連通路115によって第3個室R3に対して流動体123が流出するため、非高圧状態を維持する。また、これと同時に、第1個室R1は、第2双方向連通路121によって第2個室R2から流動体123が流入するため、非高圧状態を維持する。また、これらと同時に第3個室R3は、第1双方向連通路115によって第5個室R5から流動体123が流入するため、非高圧状態を維持する。
【0066】
すなわち、ロータ111が図示時計回りに回動した場合においては、ロータリダンパ200は、第4個室R4および第6個室R6が流動体123の流出が制限されてそれぞれ高圧状態となるため、減衰力は後述する図示反時計回り時の減衰力に比べて小さい。
【0067】
次に、ロータリダンパ200は、図15に示すように、可動ベーン118aが固定ベーン104bに最接近し、可動ベーン118bが固定ベーン104cに最接近し、可動ベーン118cが固定ベーン104aに最接近した状態においてロータ111が図示反時計回りに回動した場合には、第1個室R1、第3個室R3および第5個室R5の3つの個室が高圧状態となる。
【0068】
すなわち、最大容積にあった第1個室R1、第3個室R3および第5個室R5のうちの第1個室R1および第3個室R3は、第1双方向連通路115によって一体的に連通するとともに、第2双方向連通路121によって第1個室R1内の流動体123が絞りを介して第2個室R2内にのみ流出する。この場合、第3個室R3内の流動体は、第1双方向連通路115によって第1個室R1に流動する。これらにより、第1個室R1および第3個室R3は、圧力がそれぞれ上昇して高圧状態となる。また、これと同時に、第5個室R5は、第1双方向連通路115および第2片方向連通路122によって第5個室R5内の流動体123が第1個室R1内にのみ流出する。これにより、第5個室R5は、第1個室R1および第3個室R3とともに圧力が上昇して高圧状態となる。
【0069】
一方、最小容積にあった第2個室R2、第4個室R4および第6個室R6のうちの第2個室R2は、第2双方向連通路121によって第1個室R1から流動体123が絞りを介して流入するとともに、第1片方向連通路116によって第4個室R4および第6個室R6に対してそれぞれ流動体123が流出するため、非高圧状態を維持する。また、これと同時に、第4個室R4は、第1片方向連通路116によって第2個室R2から流動体123が流入するため、非高圧状態を維持する。
【0070】
すなわち、第2個室R2は、可動ベーン118a,118bの回転方向に関わらず常に非高圧状態を維持する。また、これらと同時に、第6個室R6は、第1片方向連通路116によって第2個室R2から流動体123が流入するため、非高圧状態を維持する。
【0071】
すなわち、ロータ111が図示反時計回りに回動した場合においては、ロータリダンパ200は、第1個室R1、第3個室R3および第5個室R5が流動体123の流出が制限されてそれぞれ高圧状態となるため、減衰力は前記した図示時計回り時の減衰力に比べて大きくなる。この場合、ロータリダンパ200の減衰力は、前記した図示時計回り時に比べて高圧状態の個室が1.5倍存在するため減衰力も1.5倍となる。なお、図14および図15においては、流動体123の圧力が他の個室に対して相対的に高い状態を濃いハッチングで示し、圧力が相対的に低い状態を薄いハッチングで示している。また、図14および図15においては、可動ベーン118a,118b,118cの回動方向を太線の破線矢印で示すとともに、流動体123の流動方向を細線の破線矢印で示している。
【0072】
また、上記変形例におけるロータリダンパ200においては、第1片方向連通路116は、第4個室R4と第6個室R6と互いに連通しつつこれらに対して第2個室R2側からのみ流動体123が流れる向きで一方向弁117を配置して構成した。しかし、第1片方向連通路116は、ロータ111の回動によって容積が同時に増加または減少する少なくとも2つの個室で一方から他方に流動体123を流通させればよい。
【0073】
したがって、上記変形例におけるロータリダンパ200のように、ロータ111の回動によって容積が同時に増加または減少する個室が3つ存在する場合には、例えば、第1片方向連通路116は、第2個室R2と第4個室R4とを互いに連通しつつこれらから第6個室R6側にのみ流動体123が流れる向きで一方向弁117を配置して構成することができる。これによれば、ロータリダンパ200は、ロータ111を図示時計回りに回動させた場合において、第6個室R6のみを高圧状態とすることができ、結果としてロータリダンパ200の減衰力を上記変形例に対して1/2倍にすることができる。なお、第1片方向連通路116は、ロータ111の回動によって容積が同時に増加または減少する個室が4つ以上存在する場合においても同様の要領で設置する配置することができる。
【0074】
また、上記変形例においては、第2双方向連通路121は、第1個室R1と第2個室R2とを仕切る可動ベーン118aに設けた。しかし、第2双方向連通路121は、第1双方向連通路115によって連通される少なくとも2つの個室である連通個室のうちの少なくとも1つと第1片方向連通路116によって連通される少なくとも2つの個室である片側連通個室のうちの少なくとも1つとの間で片側連通個室側から連通個室側に流動体123を流通させ、かつ連通個室側から片側連通個室側に流動体123を制限しつつ流通させるように設置すればよい。
【0075】
したがって、上記変形例におけるロータリダンパ200のように、ロータ111の回動によって容積が同時に増加または減少する個室が3つ存在する場合には、例えば、第2双方向連通路121を可動ベーン118aとともに可動ベーン118bにも設けることができる。この場合、ロータリダンパ200は、上記変形例に対し減衰力は小さくなるが、第3個室R3および第4個室R4と第1個室R1および第2個室R2との間で流動体123の流通が少なくなるため第1個室R1および第2個室R2の負担を少なくすることができる。なお、第2双方向連通路121は、ロータ111の回動によって容積が同時に増加または減少する個室が4つ以上存在する場合においても同様の要領で設置する配置することができる。
【0076】
また、上記変形例においては、第2片方向連通路122は、第5個室R5と第6個室R6とを仕切る可動ベーン118cに設けた。しかし、第2片方向連通路122は、第2双方向連通路121が連通していない連通個室のうちの少なくとも1つと第2双方向連通路121が連通していない片側連通個室のうちの少なくとも1つとの間で連通個室側から片側連通個室側にのみ流動体123を制限しつつ流通させるように設置すればよい。
【0077】
したがって、上記変形例におけるロータリダンパ200のように、ロータ111の回動によって容積が同時に増加または減少する個室が3つ存在する場合には、例えば、第2片方向連通路122を可動ベーン118cとともに可動ベーン118bにも設けることができる。この場合、ロータリダンパ200は、上記変形例に対し減衰力は小さくなるが、第1片方向連通路116を第4個室R4と第6個室R6と互いに連通しつつこれらに対して第2個室R2側からのみ流動体123が流れる向きで一方向弁117を配置して構成することにより、第4個室R4を第6個室R6と同じ挙動とすることができる。
【0078】
すなわち、このように構成したロータリダンパ200においては、ロータ111が図示時計回りに回動した場合には、第6個室R6に加えて第4個室R4についても高圧状態とすることができる。なお、第2片方向連通路122は、ロータ111の回動によって容積が同時に増加または減少する個室が4つ以上存在する場合においても同様の要領で設置する配置することができる。
【0079】
また、上記実施形態および上記変形例においては、第1双方向連通路115および第1片方向連通路116をロータ111の軸体112にそれぞれ設けるとともに、第2双方向連通路121および第2片方向連通路122を可動ベーン118a,118bまたは可動ベーン118a,118にそれぞれ設けた。しかし、第1双方向連通路115および第1片方向連通路116は、ロータ111の軸体112以外に場所に設けることができるとともに、第2双方向連通路121および第2片方向連通路122を可動ベーン118a,118b,118c以外の場所にそれぞれ設けることもできる。
【0080】
したがって、第1双方向連通路115、第1片方向連通路116、第2双方向連通路121および第2片方向連通路122は、例えば、ハウジング101の外壁部の内部または同外壁部の外側に露出した状態で第1個室R1、第2個室R2、第3個室R3、第4個室R4、第5個室R5および第6個室R6の各個室間に連通する内部配管または外部配管で構成することができる。また、第2双方向連通路121および第2片方向連通路122は、軸体112の内部または固定ベーン104a,104b,104cに形成することもできる。
【0081】
また、上記実施形態においては、ロータ111の軸体112にアキュムレータ114を設けて構成した。これにより、ロータリダンパ100,200は、流動体123の温度変化に基づく膨張または収縮による体積変化を補償することができるとともにロータリダンパ100,200の構成を小型化することができる。しかし、アキュムレータ114は、ロータ111以外の場所、例えば、ハウジング101の外側に設けることもできる。
【0082】
また、ロータリダンパ100は、流動体123の体積変化を考慮する必要がない場合には、アキュムレータ114を省略して構成することもできる。なお、ロータリダンパ100は、アキュムレータ114を設ける場合には、第1個室R1、第2個室R2、第3個室R3、第4個室R4、第5個室R5および第6個室R6のうちの常に高圧状態とならない非高圧状態の個室(上記実施形態においては第2個室R2、上記変形例においては第2個室R2)に連通して設ける必要がある。また、アキュムレータ114は、圧縮ガス114cを用いたガス式のほかに、ピストン114bをスプリングで弾性的に押すスプリング式で構成することもできる。
【0083】
また、上記実施形態においては、第1個室R1と第2個室R2とを第2双方向連通路121とは別に調整ニードル109を備えたバイパス通路108を介して連通するように構成した。これにより、ロータリダンパ100は、調整ニードル109の操作を介してバイパス通路108における流動体123の流量を増減することにより図示反時計回り時における減衰力を加減することができる。
【0084】
しかしながら、このバイパス通路108は、内室103内に形成された少なくとも4つの個室のうち、可動ベーン118a,118bの回動方向に関わらず他の個室に対して常に高圧状態とならない個室とこの常に高圧状態とならない個室に対して可動ベーン118a,118bの回動によって高圧状態となることがある個室とを流動体123の制限量を調整可能に連通させるように形成されていればよい。
【0085】
すなわち、上記実施形態におけるロータリダンパ100においては、第2個室R2が可動ベーン118a,118bの回動方向に関わらず他の個室である第1個室R1、第3個室R3および第4個室R4に対して常に高圧状態とならない個室であり、第1個室R1、第3個室R3および第4個室R4が常に高圧状態とならない第2個室R2に対して可動ベーン118a,118bの回動によって高圧状態となることがある個室である。したがって、上記実施形態におけるロータリダンパ100においては、例えば、第2個室R2と第4個室R4との間にバイパス通路108を設けることにより図示時計回りに時における減衰力を加減することができる。
【0086】
また、上記変形例におけるロータリダンパ200においては、第2個室R2が可動ベーン118a,118b、118cの回動方向に関わらず他の個室である第1個室R1、第3個室R3、第4個室R4、第5個室R5および第6個室R6に対して常に高圧状態とならない個室であり、第1個室R1、第3個室R3、第4個室R4、第5個室R5および第6個室R6が常に高圧状態とならない第2個室R2に対して可動ベーン118a,118b,118cの回動によって高圧状態となることがある個室である。
【0087】
したがって、上記変形例におけるロータリダンパ200においては、第2個室R2と第1個室R1、第3個室R3および第5個室R5のうちの少なくとも1つとの間にバイパス通路108を設けることにより図示反時計回り時における減衰力を加減することができるとともに、第2個室R2と第4個室R4および第6個室R6のうちの少なくとも1つとの間にバイパス通路108を設けることにより図示時計回り時における減衰力を加減することができる。なお、バイパス通路108は、ハウジング101のいずれかの位置、より好ましくは、蓋体106に設けることによりロータリダンパ100,200の構成を小型化することができる。
【0088】
また、上記実施形態および上記変形例においては、ロータリダンパ100,200は、ハウジング101を固定側としロータ111を可動側とした。しかし、ロータリダンパ100,200におけるハウジング101に対するロータ111の回動は相対的なものである。したがって、ロータリダンパ100,200は、ハウジング101を可動側としロータ111を固定側とすることもできることは当然である。
【0089】
また、上記実施形態においては、ロータリダンパ100は、二輪自走式車両のスイングアームに取り付け場合について説明した。しかし、ロータリダンパ100は、二輪自走式車両におけるスイングアーム以外の場所(例えば、シートの開閉機構)、二輪自走式車両以外の車両(四輪自走式車両におけるサスペンション機構、シート機構または開閉扉)または自走式車両以外の機械装置、電機装置または器具に取り付けて用いることができる。
【符号の説明】
【0090】
R1…第1個室、R2…第2個室、R3…第3個室、R4…第4個室、R5…第5個室、R6…第6個室、
100,200…ロータリダンパ、101…ハウジング、102…ハウジング本体、103…内室、104a〜104c…固定ベーン、105…ロータ支持部、106…蓋体、107…ロータ支持部、108…バイパス通路、109…調整ニードル、
110…ボルト、111…ロータ、112…軸体、113…接続部、114…アキュムレータ、114a…シリンダ、114b…ピストン、114c…圧縮ガス、114d…ガスバルブ体、115…第1双方向連通路、116…第1片方向連通路、117…一方向弁、118a〜118c…可動ベーン、
121…第2双方向連通路、121a…一方向弁、121b…絞り弁、122…第2片方向連通路、122a…一方向弁、122b…絞り弁、123…流動体。
【要約】
【課題】装置構成を小型化、単純化および軽量化することができるロータリダンパを提供する。
【解決手段】ロータリダンパ100は、ハウジング101の内室103内が固定ベーン104a,104bおよびロータ111が備える可動ベーン118a,118bによって4つの個室に仕切られている。ロータ111の軸体112には、第1個室R1ないし第3個室R3を連通させる第1双方向連通路115および第2個室R2側から第4個室R4側にのみ流動体123を流通させる第1片方向連通路116が形成されている。可動ベーン118aには、第2個室R2側から第1個室R1側に流動体123を流通させるとともに逆方向には流動体123を制限しつつ流通させる第2双方向連通路121が設けられている。可動ベーン118bには、第4個室R4側から第3個室R3側にのみ流動体123を制限しつつ流通させる第2片方向連通路122が設けられている。
【選択図】 図8
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