(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
配列番号21で表されるDLL4タンパク質のアミノ酸配列で58番〜65番のアミノ酸配列、及び110番〜115番のアミノ酸配列を含むDLL4の立体構造エピトープを認知する、DLL4に特異的に結合するタンパク質、並びにVEGFに特異的に結合する抗体を含む、二重標的タンパク質であって、
前記DLL4に特異的に結合するタンパク質は、配列番号2で表される重鎖CDR1;配列番号3で表される重鎖CDR2;及び配列番号4で表される重鎖CDR3を含む重鎖可変領域、並びに配列番号5で表される軽鎖CDR1;配列番号6で表される軽鎖CDR2;及び配列番号7で表される軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域を含む、前記二重標的タンパク質。
前記二重標的タンパク質は、DLL4に特異的に結合するタンパク質及びVEGFに特異的に結合するIgG形態の抗体が、リンカーで連結された形態であることを特徴とする請求項1に記載の二重標的タンパク質。
前記DLL4に特異的に結合するタンパク質は、配列番号8で表される重鎖アミノ酸配列及び配列番号9で表される軽鎖アミノ酸配列を含むことを特徴とする請求項1に記載の二重標的タンパク質。
前記VEGFに特異的に結合する抗体は、配列番号10で表される重鎖CDR1;配列番号11で表される重鎖CDR2;及び配列番号12で表される重鎖CDR3を含む重鎖可変領域、並びに配列番号13で表される軽鎖CDR1;配列番号14で表される軽鎖CDR2;及び配列番号15で表される軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域を含むことを特徴とする請求項1に記載の二重標的タンパク質。
前記VEGFに特異的に結合する抗体は、配列番号16で表される重鎖アミノ酸配列及び配列番号17で表される軽鎖アミノ酸配列を含むことを特徴とする請求項1に記載の二重標的タンパク質。
前記癌は、食道癌、胃癌、大腸癌、直膓癌、口腔癌、咽頭癌、喉頭癌、肺癌、結腸癌、乳癌、子宮頸部癌、子宮内膜癌、卵巣癌、前立腺癌、睾丸癌、膀胱癌、腎臓癌、肝臓癌、膵臓癌、骨癌、結合組織癌、皮膚癌、脳腫瘍、甲状腺癌、白血病、ホジキン病、リンパ腫及び多発性骨髄血液癌よりなる群から選ばれることを特徴とする請求項16に記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0020】
前記目的を達成するための一つの態様として、本発明は、配列番号21で表されるDLL4(Delta−like ligand4)タンパク質のアミノ酸配列で58番〜65番アミノ酸配列、及び110番〜115番のアミノ酸配列を含むDLL4の立体構造エピトープ(conformational epitope)を認知する、DLL4に特異的に結合するタンパク質、およびVEGF(Vascular endothelial growth factor)に特異的に結合する抗体を含む、二重標的タンパク質を提供する。
【0021】
本発明において、用語「二重標的タンパク質」とは、異なる二種類の抗原(標的タンパク質)に結合することができるタンパク質を意味する。具体的には、自然には存在せず、遺伝子工学または任意の方法によって製造された形態であることが好ましい。
【0022】
本発明の目的上、前記二重標的タンパク質は、癌細胞で過剰発現されるVEGFおよび内皮細胞で発現されるDLL4と結合することができる。また、前記二重標的タンパク質は、抗体の形態であってもよい。本発明の「二重標的タンパク質」は、「二重標的抗体」、「二重抗体」または「二重抗体タンパク質」と混用することができる。好ましくは、本発明の二重標的タンパク質は、VEGFおよびDLL4を抗原とすることができる。本発明の前記二重標的タンパク質の形態は、特にこれに限定されないが、VEGFに特異的に結合するIgG形態の抗体およびDLL4に特異的に結合するタンパク質がリンカーで連結された二重標的タンパク質の形を含み、その構造は、
図1Aに簡単に模式図で示した通りである。
【0023】
本発明の二重標的タンパク質は、具体的に、配列番号1で表される重鎖アミノ酸配列および配列番号20で表される軽鎖アミノ酸配列を含むものであってもよいが、これらに限定されない。
【0024】
本発明において、用語「抗体」とは、免疫学的に特定の抗原と反応性を有する免疫グロブリン分子を含む、抗原を特異的に認識する受容体の役割をするタンパク質分子を意味し、ポリクローナル抗体(polyclonal antibody)、モノクローナル抗体(monoclonal antibody)、全長(whole)抗体および抗体断片の両方を含む。また、前記用語は、キメラ性抗体(例えば、ヒト化マウス抗体)と異種結合抗体(例えば、二重特異性抗体)のような遺伝子工学によって生産された形態を含む。全長抗体は、2つの全体の長さの軽鎖および2つの全体の長さの重鎖を有する構造であり、それぞれの軽鎖は、重鎖とジスルフィド結合で連結されている。前記全長抗体は、IgA、IgD、IgE、IgM、およびIgGを含み、IgGは亜型(subtype)として、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を含むことができる。また、前記抗体は、二価(bivalent)、ジアボディ、トリアボディ及びテトラボディを含んでもよい。具体的には、本発明のVEGFに特異的に結合する抗体は、IgG形態であってもよい。
【0025】
本発明で二重標的タンパク質は、免疫グロブリン(Immunoglobulin G,IgG)の形態のVEGF(Vascular endothelial growth factor)に特異的に結合する抗体およびDLL4(Delta−like ligand4)に特異的に結合する全長抗体、Fab’、F(ab’)
2、Fab、Fv、rIgGまたはscFv形態のタンパク質がリンカーで連結された形態であってもよい。
【0026】
典型的には、免疫グロブリンおよびscFvは、重鎖および軽鎖を持ち、それぞれの重鎖および軽鎖は、不変領域と可変領域(前記部位は、ドメインとしても知られている)を含む。軽鎖および重鎖の可変領域は、相補性決定領域(complementarity−determining region、以下「CDR」と称する)と呼ばれる3つの高度可変領域と4つのフレームワーク領域(framework region)を含む。前記CDRは、主に抗原のエピトープ(epitope)に結合する役割を果たす。それぞれの鎖のCDRは、典型的にN−末端から始まって順次CDR1、CDR2、CDR3と呼ばれて、また、特定のCDRが位置している鎖によって識別することができる。
【0027】
本発明に係るDLL4に特異的に結合するタンパク質及びVEGFに特異的に結合する抗体を含む二重標的タンパク質は、ヒト由来DLL4とVEGFに対して強い親和性を示し、DLL4を発現している細胞(例えば、癌細胞や血管内皮細胞)がノッチ1またはノッチ4受容体に結合することを効果的に阻害するだけでなく、癌細胞で過剰発現するVEGFによってVEGF受容体を発現している血管内皮細胞が活性化される新生血管形成作用を抑制して、癌のような病気の治療において、より強い治療効果を期待することができる。
【0028】
本発明の二重標的タンパク質からVEGFに特異的に結合する抗体およびDLL4に特異的に結合するタンパク質は、それぞれの特異的な結合を維持し、特に二つの標的(抗原)を同時に抑制することができるので、一つの標的と結合して抑制するよりも、より効果的であり、同時に2つの信号を抑制することができる。
【0029】
本発明において、用語「抗体断片」とは、抗原結合能力を有する断片、例えば、Fab’、F(ab’)
2、Fab、Fv、rIgG及びscFvを含む、抗体の抗原結合形態を含む。特に、前記用語は、scFv(single−chain variable fragmentを含み、二価(bivalent)またはジアボディ(diabodies)、トリアボディ(triabodies)及びテトラボディ(tetrabodies)を含む。
【0030】
本発明において、用語「scFv(single−chain variable fragment)」とは、完全な抗原−認識および抗原−結合部位を有する最小抗体断片を意味して、抗体のVHおよびVLドメインを含み、ここで前記ドメインは、単一ポリペプチド鎖に存在することができる。
【0031】
本発明において、用語「配列番号21で表されるDLL4(Delta−like ligand4)タンパク質のアミノ酸配列で58番〜65番アミノ酸配列、及び110番〜115番のアミノ酸配列を含むDLL4の立体構造エピトープ(conformational epitope)を認知する、DLL4に特異的に結合するタンパク質、およびVEGF(Vascular endothelial growth factor)に特異的に結合する抗体を含む、二重標的タンパク質」とは、DLL4とVEGFによる二つのシグナル伝達経路を同時に抑制することができる二重標的タンパク質であれば制限なく含むことができる。前記二重標的タンパク質を構成するVEGFに特異的に結合する抗体およびDLL4に特異的に結合するタンパク質は、前記説明した全長抗体および抗体断片の形をいずれも含むことができる。
【0032】
本発明において、用語「配列番号21で表されるDLL4(Delta−like ligand4)タンパク質のアミノ酸配列で58番〜65番アミノ酸配列、及び110番〜115番のアミノ酸配列を含むDLL4の立体構造エピトープ(conformational epitope)を認知する、DLL4に特異的に結合するタンパク質」とは、配列番号21で表されるDLL4内のアミノ酸配列で58番〜65番アミノ酸配列、及び110番〜115番のアミノ酸配列を含むDLL4の立体構造エピトープに特異的に結合するタンパク質を意味する。このようなタンパク質は、癌の成長を抑制して癌治療効果を示すことができるタンパク質を意味し、高親和度で前記エピトープに結合して、DLL4活性を中和させる役割をすることができる。前記タンパク質は、ノッチ受容体に対するDLL4結合を遮断できて、DLL4によるシグナル伝達を抑制することができる。前記DLL4の配列番号21および配列番号22を含む立体構造エピトープに特異的に結合するタンパク質は、具体的には、全長抗体、Fab’、F(ab’)
2、Fab、Fv、rIgGまたはscFv(single−chain variable fragment)形態であってもよい。
【0033】
配列番号21で表されるDLL4(Delta−like ligand4)タンパク質のアミノ酸配列で58番〜65番アミノ酸配列、及び110番〜115番のアミノ酸配列を含む立体構造エピトープに特異的に結合するタンパク質は、具体的には、前記DLL4に特異的に結合するタンパク質は、配列番号2で表される重鎖CDR1;配列番号3で表される重鎖CDR2;及び配列番号4で表される重鎖CDR3を含む重鎖可変領域および配列番号5で表される軽鎖CDR1;配列番号6で示される軽鎖CDR2;及び配列番号7で表される軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域を含む形態であってもよい。
【0034】
より具体的には、前記重鎖は、配列番号8で表される重鎖アミノ酸配列を含んでもよく、軽鎖は、配列番号9で表される軽鎖アミノ酸配列を含んでもよいが、前記のCDR配列を含み、DLL4に特異的に結合して癌治療効果を示すことができるタンパク質であれば、その配列は変わってもよい。前記重鎖および軽鎖は、リンカーを介して連結することができる。
【0035】
また、本発明の二重標的タンパク質の構成要素であるDLL4に特異的に結合するタンパク質は、ヒトDLL4だけでなく、マウスDLL4に特異的に結合して、DLL4とノッチのタンパク質との間の相互作用を阻害することができる。
【0036】
本発明の一実施例では、DLL4とVEGFの生物学的阻害活性に優れた本発明の二重標的タンパク質のDLL4に特異的に結合する抗体のエピトープを究明した。具体的には、本発明では、DLL4の58番〜65番のアミノ酸配列、及び110番〜115番のアミノ酸配列が形成するDLL4の連続した分子表面に結合することを究明した。したがって、DLL4の58番〜65番のアミノ酸配列(配列番号22)および/または110番〜115番のアミノ酸配列(配列番号23)が、本発明に係るDLL4に特異的に結合する抗体のエピトープになってもよく、より具体的には、前記DLL4の配列番号22および23番の部位が形成する分子の表面部位が立体構造エピトープになってもよい。
【0037】
本発明において、用語「デルタ様リガンド4(delta−like ligand4,DLL4)」とは、ノッチタンパク質を受容体とするリガンドのデルタ部類の一つであり、具体的には、ノッチ1またはノッチ4受容体に結合するタンパク質を意味するが、これに限定されない。前記DLL4は、哺乳類のDLL4であれば、制限せず含んでもよいが、具体的には、ヒトまたはマウスのDLL4を意味する。DLL4は、がんの血管(tumor vasculature)をはじめとする様々な癌細胞で過剰発現されており、複数の異種移植(xenograft)モデルで異常血管の数を増加させてがんの成長を促すことが知られている。
【0038】
そこで、本発明の配列番号21で表されるDLL4(Delta−like ligand4)タンパク質のアミノ酸配列で58番〜65番アミノ酸配列、及び110番〜115番のアミノ酸配列を含むDLL4の立体構造エピトープに特異的に結合するタンパク質を含む二重標的タンパク質は、DLL4の機能を抑制して癌治療に効果的に利用することができる。前記DLL4に関する情報は、アメリカ国立衛生研究所のGenBankなど公知のデータベースから得ることができ、その例として、Accession NumberがGene ID:54567、NCBI Reference Sequence:NM_019074.3であるDLL4の情報であり、前記DLL4は、配列番号21のアミノ酸配列を含むことができる。
【0039】
本発明において、用語「ノッチ(Notch)受容体」とは、ノッチシグナル伝達を媒介するタンパク質を意味し、ノッチと混用して使用することができる。前記ノッチ受容体は、ノッチシグナル伝達を媒介するタンパク質であれば、制限されず含まれ、具体的には、ノッチ1またはノッチ4受容体であってもよいが、これに限定されない。
【0040】
本発明において、用語「ヒトデルタ様リガンド4(DLL4)とノッチ(Notch)受容体との間の相互作用を阻害」とは、本発明のDLL4に特異的に結合する二重標的タンパク質がDLL4に結合してDLL4とノッチ受容体との間の相互作用を阻害させることを意味し、具体的には、配列番号21で表されるDLL4(Delta−like ligand4)タンパク質のアミノ酸配列で58番〜65番のアミノ酸配列、及び110番〜115番のアミノ酸配列を含むDLL4の立体構造エピトープに特異的な二重標的タンパク質がDLL4に結合してDLL4とノッチ1またはノッチ4受容体との相互作用を阻害させることを意味するが、これに限定されない。本発明の配列番号21で表されるDLL4(Delta−like ligand4)タンパク質のアミノ酸配列で58番〜65番のアミノ酸配列、及び110番〜115番のアミノ酸配列を含むDLL4の立体構造エピトープに特異的な二重標的タンパク質の結合によってDLL4とノッチ受容体との間の相互作用が阻害され、DLL4のノッチ受容体結合によるノッチタンパク質の構造的変化を持って来ず、加水分解することができないため、ノッチシグナル伝達をできないようにする。癌でDLL4とノッチ受容体が結合すると、血管のサイズを増大させ、血管内皮細胞間のシグナル伝達または癌細胞と血管内皮細胞との間のノッチシグナル伝達を活性化させ、がんの増殖や転移を抑制することが知られている。
【0041】
したがって、癌でDLL4によるノッチシグナル伝達を遮断すると、特に血管新生の調節が行われにくくなって、がんの成長を抑制することができるようになる。また、DLL4を遮断すると、血管新生部位の末端の細胞で外側抑制(lateral inhibition)の欠失が現れて、過度の発芽が行われるようになって、その結果として過度に多いながらも、生産性は落ちる血管新生反応が高くなり、酸素を供給する灌流が悪くなって、がんの周辺に低酸素状態が誘導されることがあり、抗がん効果をもたらすことができ、特に抗VEGF治療でも抵抗性を示す癌でも抗がん効果を示すことができる。
【0042】
したがって、DLL4とノッチとの間の相互作用を効果的に抑制する本発明のDLL4に特異的に結合するタンパク質を含む二重標的タンパク質を癌の治療において効果的に使用することができる。
【0043】
本発明の用語「VEGFに特異的に結合する抗体」とは、癌細胞で広範囲にVEGFを抗原として、これに特異的に結合する抗体であればいずれも含まれる。具体的な例としては、VEGFを標的とする治療用抗体であるベバシズマブ(Bevacizumab、商品名アバスチン(登録商標))であってもよいが、これに限定されない。このようなVEGFに特異的に結合する抗体は、前記の全長抗体または抗体断片の形をいずれも含み、IgG抗体の形態であってもよいが、これに限定されない。VEGFは、血管新生において重要な役割を果たすリガンドでこれを抑制すると、血管新生が行われなくて、癌を治療することができる。前記ベバシズマブは、ジェネンテク社アバスチン(Avastin)で、米国FDAに承認を受けたもので、安定的に使用できる治療用抗体である。
【0044】
前記VEGFに特異的に結合する抗体は、具体的に、配列番号10で表される重鎖CDR1;配列番号11で表される重鎖CDR2;及び配列番号12で表される重鎖CDR3を含む重鎖可変領域および配列番号13で表される軽鎖CDR1;配列番号14で示される軽鎖CDR2;及び配列番号15で表される軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域を含んでもよく、より具体的には、配列番号16で表される重鎖アミノ酸配列及び配列番号17で表される軽鎖アミノ酸配列を含んでもよいが、VEGFに特異的に結合して癌治療効果を示すことができるタンパク質の配列を制限なしに含んでもよい。
【0045】
本発明の二重標的タンパク質の構成要素であるVEGFに特異的に結合する抗体は、癌細胞で過剰発現されるVEGFに特異的に結合して、本発明の二重標的タンパク質を、VEGFを発現する癌細胞に集中させることができるだけでなく、VEGFと結合してそれ自体でも抗がん活性を有することができる。
【0046】
本発明において、用語「血管内皮成長因子(vascular endothelial growth factor,VEGF)」とは、血管内皮細胞の生長活性を増進させる成長因子の一種で、大食細胞(マクロファージ)、平滑筋細胞、腫瘍細胞などのいくつかの細胞によって分泌される。胎生期の血管生成に重要な役割を果たすだけでなく、速い生長と代謝が行われる腫瘍組織での酸素の供給のために、血管新生(angiogenesis)を誘導する役割をする。そのVEGFタンパク質とこれの受容体によるpathwayは、成体で、特に抗がん剤のターゲットシグナル伝達経路と研究されている。
【0047】
併せて、前記二重標的タンパク質のVEGF結合部位は、ヒトVEGFとVEGF受容体との間の相互作用を阻害させるものを意味し、具体的には、VEGFに特異的な二重標的タンパク質がVEGFに結合してVEGFとVEGFR−2受容体との相互作用を阻害させることを意味するが、これに限定されない。
【0048】
本発明の目的上、前記VEGF受容体は、哺乳類のVEGFに結合するタンパク質であれば、制限なく含まれるが、具体的には、ヒトVEGFに結合するタンパク質を意味することができる。
【0049】
本発明のVEGFに特異的な二重標的タンパク質によるVEGFとVEGF受容体との間の相互作用阻害によりVEGFのVEGF受容体結合によるVEGF/VEGF受容体シグナル伝達を阻害することになる。癌でVEGFとVEGF受容体が結合すると、癌組織の血管内皮細胞(stromal/endothelial cell)でVEGF/VEGF受容体シグナル伝達が活性化され、これはDLL4/Notchシグナル伝達経路の作用機序とは異なり、新生血管形成過程を強く抑制して血管の数を減少させて、腫瘍内の血管の機能(vascular function)を弱化させて、がんの増殖や転移を抑制することが知られている。
【0050】
したがって、本発明の前記DLL4とVEGFに特異的な二重標的タンパク質は、互いに異なる機序のがん組織新生血管形成抑制能を示して、より優れた抗癌能力を持つ治療剤として使用することができる。
【0051】
具体的には、前記二重標的タンパク質は、DLL4に特異的に結合するタンパク質及びVEGFに特異的に結合するIgG(Immuniglobulin G)形態の抗体がリンカーで連結された形態であってもよい。
【0052】
本発明の用語「リンカー(linker)」とは、基本的には、2つの異なる融合パートナー(例えば、生物学的高分子など)を、水素結合、静電相互作用、ファンデルワールス力、ジスルフィド結合、塩橋、疎水性相互作用、共有結合などを利用して連結することができる連結体を意味するが、具体的には、生理学的条件または他の標準的なペプチド条件(例えば、ペプチド精製条件、ペプチド貯蔵条件)下、少なくとも一つのジスルフィド結合に参加できる少なくとも一つのシステインを持つことができ、単にそれぞれの融合パートナーを連結する役割以外にも、融合パートナーの間に一定の大きさの間隔を与える役割を果たすかまたは融合体に柔軟性または剛性を提供するヒンジ(hinge)の役割を果たすことができる。前記リンカーは、非ペプチドリンカーまたはペプチドリンカーであってもよく、ペプチド結合、ジスルフィド結合等によって直接連結されているものもいずれも含むことができる。
【0053】
本発明では、前記リンカーは、特にこれに限定されないが、具体的には、DLL4に特異的に結合するタンパク質及びVEGFに特異的に結合する抗体を連結できるポリペプチドであってもよく、より具体的には、前記DLL4に特異的に結合するタンパク質とVEGFに特異的に結合する抗体のFc領域のC−末端を連結することができるペプチドリンカーであってもよく、さらに具体的には、GGGGSモチーフが3回繰り返された形のアミノ酸配列で構成されたペプチドリンカーであってもよい。前記GGGGSモチーフは、1〜10回繰り返してもよく、最も具体的には、下記の配列番号18のアミノ酸配列または配列番号19のポリヌクレオチド配列によってコードされたアミノ酸配列で構成されてもよい。
【0054】
リンカーペプチド(配列番号18):GGGGSGGGGSGGGGS
リンカーヌクレオチド(配列番号19):GGTGGAGGTGGCAGCGGTGGTGGCGGCAGTC CCGGTGGCGGCTCC
【0055】
本発明において、用語「非ペプチドリンカー」とは、繰り返し単位が2つ以上結合された生体適合性リンカーを意味し、前記繰り返し単位は、ペプチド結合ではなく、任意の共有結合を介して互いに連結されてもよい。
【0056】
本発明の非ペプチドリンカーは、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol;PEG)単独重合体、ポリプロピレングリコール単独重合体、エチレングリコール−プロピレングリコール共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、ポリサッカライド、デキストラン、ポリビニールエチルエーテルのような生分解性高分子、脂質重合体、キチン類、ヒアルロン酸、またはこれらの組み合わせであってもよい。具体的には、ポリエチレングリコール単独重合体であってもよく、当該分野で既知のこれらの誘導体および当該分野の技術水準で容易に製造することができる誘導体も、本発明の範囲に含まれる。より具体的には、分子量1〜5kDaの分子量であるポリエチレングリコール単独重合体であってもよく、最も具体的には、3.4kDa程度の両末端に両機能性アルデヒド(bifunctional aldehyde)の形でDLL4に特異的に結合するタンパク質、及びVEGFに特異的に結合する抗体を連結させることができるリンカーであってもよい。特に、両末端に反応アルデヒドグループの反応基を有する場合、非特異的反応を最小限にするために効果的である。
【0057】
前記リンカーを介して直接または間接的に連結されている部位は、特にこれに限定されないが、Fc部分、Fab’、F(ab’)
2、Fab、Fvなどになってもよい。前記二重標的タンパク質は、特にこれに限定されないが、前記DLL4に特異的に結合するタンパク質の全部または一部及びVEGFに特異的に結合する抗体の全部または一部が連結された形;またはDLL4に特異的に結合するタンパク質の全部または一部及びVEGFに特異的に結合する抗体全体または一部がペプチドリンカーで連結された形となってもよい。
【0058】
また、DLL4に特異的に結合するタンパク質の全部または一部及びVEGFに特異的に結合する抗体の重鎖の全部または一部がペプチドリンカーで連結された形;DLL4に特異的に結合するタンパク質の全部または一部及びVEGFに特異的に結合する抗体の軽鎖の全体または一部がペプチドリンカーで連結された形;またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0059】
本発明の実施例によると、本発明者等はIgG形態のアバスチンの重鎖領域C−末端とscFv形態のDLL4結合タンパク質をリンカーで連結した二重標的タンパク質をコードするポリヌクレオチドをベクターに挿入して、これを動物細胞に導入してアバスチン−DLL4結合二重標的タンパク質を分離して、DLL4とVEGFに特異的に結合する二重標的タンパク質アバスチン−DLL4 BsAbを作製した。前記二重標的タンパク質分子は、アバスチンIgG抗体分子とDLL4結合scFvをリンカーで連結した構造を持っている(
図1)。前記動物細胞に導入・発現したアバスチン−DLL4結合二重標的タンパク質を分離して発現と純度を確認した(
図2A及び
図2B)。また、アバスチン−DLL4結合二重標的タンパク質が標的であるVEGFおよびDLL4に特異的に結合することを確認した(
図3)。また、前記二重標的タンパク質は、各抗原に対する対照抗体と類似する結合活性を示して、ヒトDLL4に対しては30nMのKD値を、ヒトVEGFに対しては0.126nMのKD値を示しており(表2〜3)、血管内皮細胞のDLL4とヒトノッチ1受容体との結合およびVEGFとVEGF受容体との結合によるそれぞれのシグナル伝達経路が二重標的タンパク質の処理によって効果的に抑制されることを確認した(
図10)。これらの結果は、本発明のDLL4とVEGFに特異的な二重標的タンパク質がそれぞれの受容体であるノッチ及びVEGF受容体との結合を効率的に遮断して、抗癌効果をもたらすことができることを示唆するもので、アバスチン耐性を持つヒト胃がん(SCH)と肺癌(A549)細胞株異種移植モデル(xenograft model)で二重抗体の抗癌効果を確認した(
図11及び
図12)。
【0060】
もう一つの態様として、本発明は、前記二重標的タンパク質をコードするポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含む発現ベクター、及び前記発現ベクターが導入された形質転換体を提供する。
【0061】
本発明で提供する前記二重標的タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターは、特にこれに限定されないが、哺乳類細胞(例えば、ヒト、サル、ウサギ、ラット、ハムスター、マウス細胞など)、植物細胞、酵母細胞、昆虫細胞または細菌細胞(例えば、大腸菌など)を含んでいる真核または原核細胞において、前記ポリヌクレオチドを複製および/または発現することができるベクターであってもよく、具体的には、宿主細胞で前記ポリヌクレオチドが発現されるように、適切なプロモーターに作動可能に連結されて、少なくとも一つの選別マーカーを含むベクターであってもよく、より具体的には、ファージ、プラスミド、コスミド、ミニ−染色体、ウィルス、レトロウィルスベクターなどに前記ポリヌクレオチドが導入された形態になってもよい。
【0062】
前記二重標的タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターは、前記二重標的タンパク質の重鎖または軽鎖をコードするポリヌクレオチドをそれぞれ含む発現ベクターまたは重鎖または軽鎖をコードするポリヌクレオチドの両方を含む発現ベクターであってもよい。
【0063】
本発明で提供される前記発現ベクターが導入された形質転換体は、特にこれに限定されないが、前記発現ベクターが導入されて形質転換された大腸菌、ストレプトマイセス、ラットチフス菌などのバクテリア細胞;酵母細胞;ピキア・パストリスなどの菌類細胞;ドロソフィラ、スポドプテラSf9細胞などの昆虫細胞;CHO(中国ハムスター卵巣細胞、chinese hamster ovary cells)、SP2/0(マウス骨髄腫)、ヒトのリンパ芽球(human lymphoblastoid)、COS、NSO(マウス骨髄腫)、293T、ボーズ黒色腫細胞、HT−1080、BHK(子ハムスター腎臓細胞、baby hamster kidney cells)、HEK(ヒト胚性腎細胞、human embryonic kidney cells)、PERC.6(ヒト網膜細胞)などの動物細胞;または植物細胞になってもよい。本発明の一実施例によると、CHO−S細胞を宿主細胞として利用した。
【0064】
本発明において、用語「導入」とは、二重標的タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを宿主細胞に伝達する方法を意味する。このような導入は、カルシウムホスフェート−DNA共沈殿法、DEAE−デキストラン−媒介トランスフェクション法、ポリブレン−媒介形質感染法、電気衝撃法、微細注射法、リポソーム融合法、リポフェクタミンおよび原形質体融合法などの当分野で公知の様々な方法によって行われてもよい。また、形質導入は、感染(infection)を手段としてウィルス粒子を使用して目的物を細胞内に伝達させることを意味する。併せて、遺伝子のボンバードメント(bombardment)などによりベクターを宿主細胞内に導入することができる。本発明での導入は、形質転換と混用して使用することができる。
【0065】
さらに他の態様として、本発明は、前記二重標的タンパク質を製造する方法を提供する。
具体的には、(a)前記形質転換体を培養して、二重標的タンパク質を生産する工程;及び(b)前記(a)工程で生産された二重標的タンパク質を回収する工程を含む、DLL4に特異的に結合するタンパク質及びVEGF(Vascular endothelial growth factor)に特異的に結合する抗体を含む二重標的タンパク質の製造方法であってもよい。
【0066】
より具体的には、前記二重標的タンパク質の製造方法は、(a)VEGFに特異的に結合する抗体をコードするポリヌクレオチドおよび重鎖可変領域は、配列番号2で表される重鎖CDR1;配列番号3で表される重鎖CDR2;及び配列番号4で表される重鎖CDR3を含み、軽鎖可変領域は、配列番号5で表される軽鎖CDR1;配列番号6で表される軽鎖CDR2;及び配列番号7で表される軽鎖CDR3を含む、DLL4に特異的に結合するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを取得する工程;(b)前記(a)工程で取得したVEGFに特異的に結合する抗体をコードするポリヌクレオチドのうちFc領域をコードするポリヌクレオチドの3’−末端およびDLL4に特異的に結合するタンパク質をコードするポリヌクレオチドの5’−末端をリンカーで連結して二重標的タンパク質をコードするポリヌクレオチドを取得する工程;(c)前記(b)工程の二重標的タンパク質をコードするポリヌクレオチドをクローニングして発現ベクターを製造する工程;(d)前記(c)工程の発現ベクターを宿主細胞に導入して形質転換体を培養する工程;及び(e)前記(d)工程の形質転換体から二重標的タンパク質を回収する工程を含む方法であってもよい。
【0067】
また、前記製造方法は、(a)VEGFに特異的に結合する抗体をコードするポリヌクレオチドおよび重鎖可変領域は、配列番号2で表される重鎖CDR1;配列番号3で表される重鎖CDR2;及び配列番号4で表される重鎖CDR3を含み、軽鎖可変領域は、配列番号5で表される軽鎖CDR1;配列番号6で表される軽鎖CDR2;及び配列番号7で表される軽鎖CDR3を含む、DLL4に特異的に結合するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを取得する工程;(b)前記(a)工程のポリヌクレオチドをクローニングして発現ベクターを製造する工程;(c)前記(b)工程の発現ベクターを宿主細胞に導入して形質転換体を培養する工程;及び(d)前記(c)工程の形質転換体からVEGFに特異的に結合する抗体およびDLL4に結合するタンパク質を取得して、VEGFに特異的に結合する抗体のFc領域のC−末端及びDLL4に結合するタンパク質のN−末端をリンカーで連結する工程を含む方法であってもよい。
【0068】
本発明の二重標的タンパク質は、前記公知の組換え手段または生化学的方法によって製造することができ、抗体は、適切な宿主細胞に導入され、形質転換体の培養液から回収することができる。
【0069】
具体的には、二重標的タンパク質は、公知の分離方法によって分離することができ、例えば、タンパク質A−セファロース、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、またはアフィニティー・クロマトグラフィーのような通常の免疫グロブリン精製手順によって培養培地から適切に分離することができるが、これに限定されない。
【0070】
さらに他の態様として、本発明は、前記二重標的タンパク質を含む組成物を提供する。
さらに他の態様として、本発明は、前記二重標的タンパク質を含む癌治療用組成物を提供する。
【0071】
前記二重標的タンパク質は、DLL4とVEGFに同時に結合してノッチとVEGF受容体との結合を阻害することにより、癌の成長抑制に関与することができる。前記DLL4/ノッチ受容体とVEGF/VEGF受容体については、前述した通りである。本発明の組成物は、DLL4とVEGFに特異的に結合する二重標的タンパク質を含む組成物を生体内に投与して、癌の発生、増殖、または転移を抑制させたり、進行を防ぎ、がんを治療することができる。
【0072】
本発明で、用語「癌」とは、癌の種類を制限されずに含むが、その例として食道癌、胃癌、大腸癌、直膓癌、口腔癌、咽頭癌、喉頭癌、肺癌、結腸癌、乳癌、子宮頸部癌、子宮内膜癌、卵巣癌、前立腺癌、睾丸癌、膀胱癌、腎臓癌、肝臓癌、膵臓癌、骨癌、結合組織癌、皮膚癌、脳腫瘍、甲状腺癌、白血病、ホジキン病、リンパ腫または多発性骨髄血液癌であり得る。本発明において、用語「治療」とは、組成物の投与によって癌の症状が好転するか、有利に変更されているいずれかの行為を意味する。
【0073】
また、本発明の薬学的組成物は、薬学的に許容可能な担体をさらに含んでもよい。
本発明において、用語「薬学的に許容可能な担体」とは、生物体を刺激せずに投与化合物の生物学的活性および特性を阻害しない担体または希釈剤をいう。液状溶液に製剤化される組成物において許容される薬学的担体としては、滅菌および生体に適したものであって、生理食塩水、滅菌水き、リンゲル液、緩衝食塩水、アルブミン注射溶液、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノール、およびこれらの成分のうち1成分以上を混合して使用することができ、必要に応じて、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤などの他の通常の添加剤を添加してもよい。また、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤、及び潤滑剤を付加的に添加して水溶液、懸濁液、乳濁液などのような注射用剤形、丸薬、カプセル、顆粒または錠剤に製剤化することができる。
【0074】
前記薬学的組成物は、経口または非経口の種々に剤形であってもよい。
製剤化する場合には、通常用いる充鎮剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤等の希釈剤または賦形剤を用いて調剤される。経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、このような固形製剤は、前記化合物に少なくとも一つ以上の賦形剤、例えば、デンプン、カルシウムカーボネート(calcium carbonate)、スクロース(sucrose)またはラクトース(lactose)、ゼラチン等を混ぜて調製される。また、単純な賦形剤以外にマグネシウムステアレート、タルクのような潤滑剤も用いられる。経口のための液状製剤には、懸濁剤、内容液剤、油剤、シロップ剤等が該当し、よく使用される単純希釈剤である水、リキッドパラフィン以外に種々の賦形剤、例えば湿潤剤、甘味制、芳香剤、保存剤等が含まれる。非経口投与のための製剤には滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、油剤、凍結乾燥製剤、座薬が含まれる。非水性溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール(propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物性油、エチルオレートのような注射可能なエステル等が用いられる。座薬の基剤としては、ウィテプゾール(witepsol)、マクロゴール、ツイン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、クリセロゼラチン等が用いられる。
【0075】
前記薬学的組成物は、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤と坐剤からなる群から選択されるいずれか一つの剤形を有してもよい。
【0076】
前記本発明の組成物は、薬学的に有効な量で投与する。本発明で、用語「薬剤学的に有効な量」とは、医学的治療または予防に適用可能な合理的な受益/危険の割合で疾患を治療するのに十分な量を意味し、有効用量レベルは、個体の種類および疾患の重症度、患者の年齢、性別、疾病の種類、薬物の活性、薬物に対する敏感度、使用された本発明組成物の投与時間、投与経路および排出比率、治療期間、使用された本発明の組成物と同時使用される薬物を含んだ要素およびその他医学分野に良く知られた要素により定められる。そして、単一または多重投与してもよい。前記要素を全て考慮して副作用なしに最小限の量で最大の効果を得ることができる量を投与することが重要であり、当業者によって容易に決定することができる。
【0077】
本発明の一実施例によると、本発明の二重標的タンパク質がVEGF及びDLL4の両方に結合し(
図3、
図4Aおよび
図4B)、DLL4を中和させることができ(
図5)、アバスチン耐性を持つヒト胃がん(SCH)及び肺癌(A549)細胞株異種移植モデルで二重標的タンパク質の抗癌効能を確認して(
図11及び
図12)、癌治療用組成物の有効成分として使用することができることを確認した。
【0078】
さらに他の態様として、本発明は、前記二重標的タンパク質を含む薬学的組成物を利用して癌を治療する方法を提供する。前記方法は、薬学的組成物を薬学的に有効な量で投与することによって行われてもよい。
【0079】
前記二重標的タンパク質及び薬学的に有効な量については、前述した通りである。
前記二重標的タンパク質は、薬学的に許容可能な担体をさらに含む薬学的組成物を癌が発症したか、発症の疑いがある個体に投与する工程を含む癌を治療する方法であってもよく、使用できる担体及び癌は、前述した通りである。前記個体は、牛、豚、羊、鶏、犬、ヒトなどを含む哺乳動物、鳥類などを含んでもよく、本発明の組成物の投与によって癌が治療されている個体は、制限せず含んでもよい。
【0080】
この時、組成物は液剤、散剤、エアゾール、カプセル剤、腸溶剤またはカプセル剤または座薬の形態で投与することができる。投与経路は、腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下内投与、内皮投与、経口投与、局所投与、鼻内投与、肺内投与、直腸内投与などを含むが、これらに制限されない。しかし経口投与時、ペプチドは消化されるので、経口用組成物は活性薬剤をコーティングしたり胃での分解から保護されるように剤形化されなければならない。また、製薬組成物は、活性物質が標的細胞に移動できる任意の装置によって投与できる。
さらに他の態様として、本発明は、前記二重標的タンパク質を含む癌診断用組成物を提供する。
【0081】
前記二重標的タンパク質及び癌については、前述した通りである。
本発明において、用語「診断」とは、病理状態の存在または特徴を確認することを意味する。本発明の目的上、診断は、癌を発症したか否かを確認することである。
【0082】
本発明の癌診断用組成物は、本発明の二重標的タンパク質を利用して、がんが疑われる個体の分離された試料のVEGFまたはDLL4タンパク質のレベルを測定して、測定されたVEGFまたはDLL4タンパク質のレベルが、正常対照群試料よりも高い場合、がんを判断するのに使用することができる。
【0083】
これのためのタンパク質のレベルを測定する分析法としては、ウェスタンブロッティング(Western blotting)、ELISA、放射性免疫測定法(radioimmunoassay)、放射性免疫拡散法(radialimmunodiffusion)、オクタロニー免疫拡散法(Ouchterlony immunodiffusion)、ロケット免役電気泳動法(rocket immunoelectrophoresis)、免疫組織染色(immunohistostaining)、免疫沈降反応分析法(immunoprecipitation assay)、補体固定分析法(complement fixation assay)、FACS及びタンパク質チップ分析法(protein chip assay)を含むか、これに限定されるのではない。前記のような分析方法によって、正常対照群と癌の疑いの個体でのVEGFまたはDLL4タンパク質レベルを比較することができ、これにより、実際の癌が疑われる患者から癌が発症したか否かについて診断することができるようになる。
【0084】
本発明の癌診断用組成物は、本発明の二重標的タンパク質の他に前記のタンパク質のレベルを測定する方法を実行するために必要なもので、当業界に知られていることを制限せずにさらに含んでもよい。
【0085】
さらに他の態様として、本発明は、(a)前記の二重標的タンパク質を利用して、がんが疑われる個体の分離された試料のVEGFまたはDLL4タンパク質のレベルを測定する工程;及び(b)前記(a)工程で測定されたVEGFまたはDLL4タンパク質のレベルが、正常対照群よりも高い場合、がんと判断する工程を含む、癌の診断方法を提供する。
【0086】
前記二重標的タンパク質、癌、個体、診断、およびタンパク質のレベルを測定する工程(方法)については、前述した通りである。
【0087】
本発明において、用語「試料」とは、癌患者でVEGFまたはDLL4の発現レベルの差が出る、全血、血清、血液、血漿、唾液、尿、喀痰、リンパ液、脳脊髄液、および細胞間液のような試料などを含むが、これに制限されない。
【0088】
さらに他の態様として、本発明は、配列番号21で表されるDLL4(Delta−like ligand4)タンパク質のアミノ酸配列で58番〜65番アミノ酸配列、及び110番〜115番のアミノ酸配列を含む、DLL4の立体構造エピトープを提供する。
【0089】
本発明の一実施例では、架橋化反応と質量分析を介して、配列番号21のDLL4で架橋化反応が起こるアミノ酸残基を究明しており、前記残基を含む58番〜65番アミノ酸配列[FRVCLKHF]及び110番〜115番アミノ酸配列(配列番号23)の二つの断片が
図7に示すように、連続した分子表面を構成することにより、DLL4のエピトープを形成することを確認した。
【0090】
さらに他の態様として、本発明は、前記立体構造エピトープを認識する、DLL4に特異的に結合するモノクローナル抗体を提供する。
本発明のDLL4、モノクローナル抗体、ベクター、形質転換体等は、前述した通りである。
【0091】
具体的には、前記モノクローナル抗体は、配列番号2で表される重鎖CDR1;配列番号3で表される重鎖CDR2;及び配列番号4で表される重鎖CDR3を含む重鎖可変領域および配列番号5で表される軽鎖CDR1;配列番号6で示される軽鎖CDR2;及び配列番号7で表される軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域を含む形態であってもよい。より具体的には、前記重鎖は、配列番号8で表されるアミノ酸配列を含んでもよく、前記軽鎖は、配列番号9で表されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0092】
さらに他の態様として、本発明は、前記モノクローナル抗体をコードするポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含む発現ベクター、及び前記発現ベクターが導入された形質転換体を提供する。
【0093】
本発明のDLL4、モノクローナル抗体、ベクター、形質転換体などは、前述した通りである。
さらに他の態様として、本発明は、前記二重標的タンパク質を、がんが疑われる個体に投与する工程を含む、癌の治療方法を提供する。
【0094】
前記個体は、癌の予防または治療が必要な個体であり、ヒトだけでなく、がん及びこれと類似する症状の治療を必要とする牛、馬、羊、豚、ヤギ、ラクダ、羚羊、犬、猫などの哺乳動物であってもよいが、これらに限定されない。
【0095】
本発明で使用される用語「投与」とは、ある適切な方法で患者に本発明の薬学的組成物を導入することを意味し、本発明の組成物の投与経路は、目的組織に到達することができるのであれば、経口または非経口の様々な経路を通じて投与してもよい。
【0096】
本発明の癌の治療方法は、二重標的タンパク質またはこれを含む薬学的組成物を治療学的に有効な量で投与することを含む。適切な計1日の使用量は、正しい医学的判断の範囲内で処置医によって決定することができることは、当業者に自明なことである。また、1回または数回に分けて投与してもよい。しかし、本発明の目的上、特定の患者のための具体的な治療的有効量は、達成しようとする反応の種類と程度、場合によって、他の製剤が使用されるか否かをはじめとする具体的な組成物、患者の年齢、体重、一般健康状態、性別および食事、投与時間、投与経路、および組成物の分泌率、治療期間、具体的組成物と共に使用するか同時使用される薬物をはじめとする様々な因子と医薬分野でよく知られている類似因子に応じて異なるように適用してもよい。
【実施例】
【0097】
以下、実施例に基づいて本発明の構成と効果をさらに詳細に説明する。これらの実施例は、単に本発明を例示するためのものであって、本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されるものではない。
【0098】
≪実施例1:抗DLL4/VEGF二重標的タンパク質の製造≫
実施例1−1:DLL4抗原の製造
ヒトDLL4の細胞外ドメインの抗原は、アールアンドディシステム社から提供されたヒトDLL4タンパク質(Cat:1506−D4/CF)を使用した。このDLL4抗原タンパク質は、Accession No.Q9NR61のDLL4アミノ酸配列の27番目〜524番目のアミノ酸を含む。前記タンパク質C−末端にヒスチジン−タグ(10−His tag)が結紮されている。
【0099】
さらに他のDLL4の細胞外ドメインの特定領域の抗原を製造した。この特定領域は、アミノ酸27〜アミノ酸251を含む。この領域は、Notch1受容体と結合すると知られている「DSL(デルタ/セレート(Serrate)/lag−2)」ドメインと称されるモチーフを含有する。Fcタンパク質に融合されたDLL4の細胞外ドメインの欠失断片(アミノ酸27〜251)をコードするポリヌクレオチドの上流にCMVプロモーターを含む哺乳類発現プラスミドベクターが、標準組換えDNA技術を使用して製造された。Fcタンパク質に融合されたヒトDLL4のキメラであるDLL4の欠失断片をコードする付加的な構築物が、通常の遺伝子組換えDNA技術を使用して製造された。前記製造された構築物をHEK293E細胞に一時的に形質感染して、Fcタンパク質に融合されたヒトDLL4のアミノ酸27〜251を含む組換え融合タンパク質を発現させた。前記タンパク質を収得するために、72時間ごとにコンディショニング培地を収集し、これを4回繰り返した。このコンディショニング培地からタンパク質A親和性クロマトグラフィーを使用して精製した。
【0100】
実施例1−2:ライブラリファージの製造
多様性を持つヒト由来scFv(single−chain variable fragment)ライブラリ細胞2.7×10
10個を2X YT CM[Tryptone(CONDA,1612.00)17g、イースト抽出物(CONDA,1702.00)10g、NaCl(sigma,S7653−5kg)5g、クロラムフェニコール(sigma,C0857)34μg/mL)]、2%グルコース(sigma,G5400)及び5mM MgCl
2(sigma,M2393)を含む培地(3L)で37℃で2〜3時間培養した後(OD
600=0.5〜0.7)、ヘルパーファージ(helper phage)を感染させ2X YT CMK(2X YT CM、カナマイシン(sigma,K1876)70μg/mL、1mM IPTG(ELPISBIO,IPTG025))培地に30℃で16時間培養した。培養した細胞を遠心分離(4500rpm、15分、4℃)した後、上澄み液に4%PEG(Fluka,81253)6000と3%NaCl(sigma,S7653)を添加してよく溶かした後、氷で1時間反応させた。再度遠心分離(8000rpm、20分、4℃)した後、ペレットにPBSを添加して溶かした後、遠心分離(12000rpm、10分、4℃)して、ライブラリファージを含む上澄み液を新しいチューブに入れ、4℃で保管した。
【0101】
実施例1−3:ファージディスプレイ(phage display)によるパニング(panning)
ヒトDLL4結合する抗DLL4抗体を選別するために、ヒトDLL4抗原に対するパニングを3回(round)進行した。
【0102】
免疫試験管(immunotube)に10μg/mLの濃度の組換えヒトDLL4(R&D system社)溶液を添加して4℃で一晩試験管の表面にタンパク質を吸着させた後、ウシ血清アルブミン1%溶液を試験管に添加してDLL4が吸着されていない表面を保護した。試験管を空にして、1%ウシ血清アルブミン溶液に分散された10
12CFUの抗体ファージライブラリを入れて抗原と結合させた。非特異的に結合したファージをPBS−T(Phosphate buffered saline−0.05%Tween20)溶液に5回洗浄した後、残っている抗原特異的ファージ抗体を100mMトリエチルアミン溶液を利用して回収した。
【0103】
前記回収されたファージを1Mトリスバッファー(pH7.4)で中和させた後、ER2537大腸菌に37℃で1時間感染させ、感染した大腸菌をカルベニシリンを含有するLB(Luria−Bertani)寒天培地に塗抹して37℃で一晩培養した。翌日、培養された大腸菌を、4mLのSB(superbroth)−カルベニシリン培養液に懸濁し、15%グリセロールを添加して、一部は−80℃に保管し、残りのうち50μLを20mLのSB−カルベニシリン培養液に2%グルコース溶液(glucose)を添加して、37℃で培養した。
【0104】
培養液の吸光度が600nmで(OD
600)0.6になると、遠心分離して培養液を除去して、これを再び20mLのSB−カルベニシリン培養液に懸濁した後、10
12PFUのVCSM13ヘルパーファージを入れて、ゆっくりと攪拌し、37℃で培養した。翌日培養液を遠心分離した後、培養液のみ取りポリエチレングリコール8000(PEG8000)を4%、塩化ナトリウム(NaCl)を3%添加して4℃で30分間沈殿させた後、遠心分離した。上澄み液を除去し、沈殿したファージをPBS1mLに懸濁させて、これをライブラリとして使用して、前記のパニング過程を繰り返すことにより、抗原特異的クローンを増幅/濃縮させた。
【0105】
ヒトDLL4タンパク質内Notch1と結合する部位に結合する抗体をスクリーニングするために、パニング時、ヒトDLL4タンパク質とヒトDLL4特定の領域を指す欠失断片(アミノ酸27〜251)を交差してパニングを進行し、3回(round)進行した。その後抗体遺伝子を含むLB−カルベニシリン寒天培地に塗抹、培養して、単一コロニーを得て、これを400μL SB−カルベニシリン培養液に接種、培養した後IPTGで誘導してscFvの形のタンパク質を大腸菌のペリプラズム(periplasm)で発現した。大腸菌をTES溶液(Tris,EDTA,sucrose)に懸濁した後、4℃で1時間放置した後、遠心分離してペリプラズムを抽出し、これをELISA法を使用して組換えヒトDLL4抗原とscFvとの結合を確認するために使用した。
【0106】
結合されたscFvは、HRP(Horseradish peroxidase)−抗−HA抗体とテトラメチルベンジジン(TMB)基質を用いて検出した。これから確認された抗原特異的抗体クローンは、塩基配列分析法を使用して分析した。前記選別されたscFvの配列を分析した結果は、下記表1の通りである。
【0107】
【表1】
前記配列を有する抗−DLL4抗体を「MLCK−2」と命名した。
【0108】
実施例1−4:DLL4とVEGFをターゲットにする二重標的タンパク質(二重抗体)の製造
前記実施例1−3で作製されたヒトDLL4と結合するscFvの形態の抗体をリンカーを利用して、アバスチンIgG形態と連結して、ヒトVEGFとも結合することができる二重標的タンパク質の発現ベクターを製造した(
図1B)。
【0109】
前記製造された二重標的タンパク質は、配列番号1の重鎖アミノ酸配列(VEGF−DLL4BsAb heavy chain)と配列番号20の軽鎖アミノ酸配列を有する。前記鎖は、配列番号2で表された重鎖CDR1;配列番号3で表された重鎖CDR2;及び配列番号4で表された重鎖CDR3を含む重鎖可変領域を含み、軽鎖は配列番号5で表された軽鎖CDR1;配列番号6で表され軽鎖CDR2;及び配列番号7で表された軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域を含む。
【0110】
二重標的タンパク質の発現ベクターをCHO細胞に抗体産生のために、細胞内の遺伝子伝達効率を高めるポリマーを利用して当該遺伝子を形質注入した浮遊動物細胞を500mL培養用三角フラスコ(コーニング・コスタ)でボトル1本あたり200mLで培養して合計で1Lを培養した。IgG含有量が非常に低い(ultra low IgG)ウシ胎児血清(Fetal Bovine Serum,インビトロジェンコーポレーション)を含むRPMI培地(インビトロジェンコーポレーション)とCHO細胞専用培地の混合液1Lを4日間細胞インキュベーター(サンヨー)で培養して組換えタンパク質を生産した。細胞培養液を収得して遠心分離を実行して、浮遊細胞と分泌された組換えタンパク質を含む上澄み液を分離して0.22μm真空フィルタ装置(Millipore)で1回濾過した。
【0111】
抗体精製のために、一次的に組換えプロテイン−Aセファローズカラム(Hitrap MabSelect Sure,5mL,GE healthcare)を使用して、アバスチン−DLL4 BsAb二重標的抗体を培養液から精製した。具体的には、前記濾過された培養培地を、組換えプロテイン−Aセファローズカラムにロードした。カラムを50mM Tris−Cl(pH7.5)、100mM NaClで20倍カラム体積だけ洗浄し、10倍カラム体積の50mM Na−citrate緩衝溶液(pH5.0)で不純物を洗浄した。5mM Na−citrate 10mM NaCl緩衝溶液(pH3.4)で抗体を溶出させて1M Tris−HCl緩衝溶液(pH8.0)で中和させた。
【0112】
二次精製は、HiLoad TM 26/60 Superdex 200 Prep grade GL(GE healthcare)を使用してアバスチン−DLL4 BsAb二重標的抗体の沈殿物(Aggregation)を除去する精製過程を行った。カラムを50mM Na−Phosphate緩衝溶液(pH6.0)、20mML−Argで2倍カラム体積だけ平衡化させた後、一次精製済みのアバスチン−DLL4 BsAb二重標的抗体を流してサイズに応じた分離精製を行った。
【0113】
前記カラムを利用して分離精製した分画物をSDS−PAGEで分析(
図2)して、陽性分画物を集めて遠心分離型濃縮機(アミコンウルトラ、Amicon Ultra、30,000MWCO、Millipore)で濃縮させた。同じ遠心分離型濃縮機を使用してリン酸化剤形緩衝溶液で緩衝剤の交換および濃縮を実施した。最後に、抗体を0.22μm空隙直径のシリンジフィルターで滅菌濾過し、吸光度(A280)を測定して抗体濃度を決定した。
【0114】
≪実施例2:ELISAを使用した二重標的タンパク質のDLL4とVEGFの結合力分析≫
抗DLL4、抗VEGF二重標的タンパク質に対してELISAベースの溶液発色試験を使用して二重標的タンパク質の結合力を評価した。96ウェルプレート(Nunc−Immuno Plates,NUNC,Rochester,NY)を4℃で一晩50ng/mL濃度のhVEGF(R&D systems,cat:293−VE)と200ng/mL濃度のrhDLL4(R&D systems,cat:1506−D4/CF)でウェル当り100μLずつコーティングした後、非特異的結合部位をBSAで2時間遮断させた。96ウェルマイクロタイタープレート上で抗体を128nMおよび64nMで1/5ずつ希釈を行って、hDLL4及びhVEGFタンパク質でコーティングされたプレートに100μLずつ接種した後、2時間恒温処理して0.05%ツイン20(tween 20)を含むPBSで5回洗浄した。プレートに結合された抗体を検出するためにHRPが接合された抗Fab抗体(Pierce,cat:31414)を1:40000で希釈して洗浄された96ウェルプレートに処理した後、1時間37℃で反応させた後、比色用基質(3,3’,5,5’−Tetramethylbenzidine;Sigma−Aldrich)を使用して発色させ、酵素反応を0.5mol/L硫酸で中止させた。吸光度は、SpectraMax190(molecular Devices)機器を利用して、450nmの波長で測定した。
【0115】
図3で確認できるように、本発明の二重標的タンパク質が標的であるVEGFおよびDLL4に特異的に結合することを確認した。
【0116】
≪実施例3:DLL4/VEGF二重標的タンパク質のDLL4とVEGFの平衡解離定数(KD)の分析アッセイ≫
前記実施例1で分離精製された二重標的タンパク質(二重抗体)をアバスチン−DLL4 BsAbと命名し、分離精製された抗体の抗原に対する親和度を次のように分析した。アバスチン−DLL4 BsAb二重標的抗体のDLL4とVEGFの結合能の差を調べるためにBIACOREアッセイを実施した。
【0117】
SPR分析は、T200を使用して、running bufferはHBS−EP(10mM HEPES,pH7.4,150mM NaCl,3mM EDTA,0.15%surfactant P20)を使用した。表面準備はwizard programのsurface preparation_target immobilization(condition:25℃、5μL/min)を利用して、リガンドであるhVEGFとhDLL4を10mM酢酸ナトリウム(sodium acetate)緩衝溶液(pH4.5)に、それぞれ5μg/mL、4μg/mLとなるように希釈してCM5チップ表面に各実験が目標とするターゲット固定化レベルだけ固定した。固定化は、2つの流路(Fc,flow cell)が一つのセットで行われ、本実験では、一番目、三番目の流路はblank、二番目の流路はhVEGFで固定化して、四番目の流路はhDLL4で指定した。一番目、三番目の流路は、非特異的な結合とバッファによる変化数値を示すreferenceで、実験結果は、Fc2−Fc1、Fc4−Fc3の数値を使用した。hVEGF、hDLL4と結合する物質で、アバスチン−DLL4 BsAb二重標的抗体をモル濃度に換算してrunning bufferで100nMに希釈した後、1/2連続希釈して5濃度区間で分析した。分析試料は、最小希釈倍数100以上になるように高純度/高濃度で準備して緩衝液の変化による影響(Buffer effect)を最小限に抑えた。すべての分析は、Wizardプログラムを利用して、一つの試料に対して2倍数で行われ、すべての分析の間に再活性化工程(regeneration step)を置いて実験のベースラインが一定に維持されるようにした。
【0118】
結果は、Biaevaluation software 4.0 versionで分析した。Fc2−Fc1、Fc4−Fc3の結果でベースラインを0に設定した後、緩衝液注入(analyte 0nM)の部分を全sensorgramから引いた後、結果をBivalent binding modelを使用して結合親和度の分析を行った。分析項目は、K
a(M
−1s
−1)、Kd(s
−1)、KD(M)である。K
aは親和度(recognition)を示す結合定数(association constant)であり、Kdは、安全性(stability)を示す解離定数(dissociation constant)である。
【0119】
下記表2に二重標的タンパク質のhVEGFの結合能分析結果を示し、下記表3に二重標的タンパク質のhDLL4の結合能分析結果を示した。
【0120】
【表2】
【0121】
【表3】
【0122】
前記表2と表3で確認できるように、平衡解離定数であるK
D(M)は、k
d/k
aに換算した。hVEGFの結合能分析結果、K
D値が0.126nMレベルでアバスチンIgGの平衡解離定数と類似する値を得て(
図4Aおよび表2)、hDLL4に対する結合能分析結果、K
D値が30nMレベルの値を得た(
図4Bと表3)。これは、本発明の二重標的タンパク質がそれぞれの抗原に対する結合能が妨害されずに高いレベルを維持していることを示唆する。
【0123】
≪実施例4:DLL4/VEGF二重標的タンパク質の中和効果アッセイ≫
前記アバスチン−DLL4 BsAb二重標的抗体について、ELISA−ベースの溶液競争実験を介して中和効果を評価した。96ウェルマイクロタイタープレート(Nunc−Immuno Plates,NUNC,Rochester,NY)にPBSで希釈された500ng/mL濃度のhNotch−1−hFcタンパク質(R&D systems)をウェル当り100μLずつ添加した後、4℃で一晩コーティングした後、BSAで2時間処理して、非特異的結合部位を遮断させた。
【0124】
96ウェルマイクロタイタープレート上でアバスチン−DLL4 BsAb二重標的抗体(精製されたタンパク質)を0nM〜140nMの範囲の濃度で抗体を抗原タンパク質(ヒトDLL4−His,600ng/mL)の系列希釈液と予備混合させた。前記抗原と抗体を30分間恒温処理した後、遊離抗体の測定のために前記混合溶液をDLL4受容体であるhNotch−1−hFcタンパク質で予めコーティング(50ng/ウェル)されたマイクロタイタープレートに移した。その後、前記プレートを2時間恒温処理して0.05%ツイン20(tween 20)を含むPBSで5回洗浄し、プレートに結合されたDLL4抗原をHRP−接合されたHis抗−マウスIgGポリクローナル抗体試薬(Roche applied science)で検出するために、1:800の割合で前記HRP−接合されたHis抗−マウスIgGポリクローナル抗体を洗浄されたマイクロタイタープレートに処理した後、1時間37℃で反応させた。その次に、比色用基質(3,3’,5,5’−Tetramethylbenzidine;Sigma−Aldrich co.)を使用して発色させて、酵素反応を0.5mol/L硫酸で停止させた。450nmで吸光度を記録して、その結果を
図5に示して、プレート−コーティングされたhNotch−1−hFcタンパク質に結合されたヒトDLL4−Hisの50%減少を達成するために必要な抗体の量(IC
50)を下記表4に示した。
【0125】
【表4】
【0126】
前記表4のように、本発明の二重標的タンパク質は、DLL4に対して1.12nMの低いIC
50値を有して、単独項−DLL4抗体に劣らないDLL4阻害活性を有することを確認した。
【0127】
≪実施例5:架橋化反応と質量分析によるエピトープ地図作成≫
複数の不連続的な配列で構成された、しかし立体構造的に単一である分子表面を形成する構造的エピトープを究明するために、架橋反応と質量分析による架橋化反応の位置を確認するための手法を使用した。
【0128】
実施例5−1:架橋複合体の形成
抗原タンパク質ヒトデルタ様リガンド4(human DLL4,hDLL4,R&D Systems)と実施例1−3のMLCK2抗体をモル比が2:1となるように混合した後、K200クロスリンカー(CovalXAG.)を終濃度0.2mg/mLとなるように入れた。この混合物を室温で3時間反応させて抗原−抗体複合体を作製した後、Ultraflex II MALDI ToF(Bruker Daltonics)装置を利用して反応生成物の分子量を分析した。
図6に示すように、クロスリンカーを使用しない対照実験に比べてクロスリンカーを使用した場合、ヒトDLL4とMLCK2抗体との間の1:1及び2:1複合体が形成されたことが分かった。一方、ヒトDLL4もしくはMLCK2抗体単独でクロスリンカーと反応させた場合には、いかなる多量体や複合体も検出されなく、このことから、前記ヒトDLL4及びMLCK2抗体複合体の形成が相互特異的な反応であることを知ることができた。
【0129】
実施例5−2:加水分解酵素による断片の形成
架橋されたペプチド切片を区分するために、重水素で標識されていないd0−DSS(disuccinimidyl suberate)と12個の重水素で標識されたd12−DSSを1:1で混合して、DMFで溶かして、2mg/mL溶液を作った。この溶液を、ヒトDLL4:MLCK2=2:1混合溶液に終濃度0.2mg/mLになるように入れて、常温で3時間架橋化反応をさせた。反応物は、効果的な分解反応のためにDTT(dithiothreitol)とヨードアセトアミド(iodoacetamide)を利用して、還元およびアルキル化をさせて変性させて、トリプシン、アルファ−キモトリプシン、ASP−Nプロテアーゼなどのタンパク質加水分解酵素をそれぞれ使用して断片化をさせた。生成された断片化反応物は、Ultimate 3000 nano−liquidクロマトグラフィシステム(Dionex)とLTQ Orbitrap XL質量分析器(Thermo)で質量分析して、得られた質量分析データは、Xquest(バージョン2.0)ソフト、Stavrox(バージョン2.1)ソフトを用いて架橋化されたペプチドの対を分別した。その結果、表5に示されたように、hDLL4とMLCK2との間の架橋化されたペプチドの対を検出することができた。
【0130】
ヒトDLL4上の架橋化反応が起こった地点は、59、63、64、および110番のアミノ酸残基であり、これらの残基を含む[58−65,FRVCLKHF](配列番号22)および[110−115,TWPGTF](配列番号23)の二つの断片は、ヒトDLL4 C2 ドメイン(27−174)モデル上で7に示すように、連続した分子表面を構成しており、この二つの配列をMLCK2抗体に対するヒトDLL4のエピトープと推定することができる。
【0131】
【表5】
【0132】
≪実施例6:ウェスタンブロッティングによるエピトープ地図確認≫
ヒトDLL4のアラニン置換突然変異体のパネルを、以下のように製造したが、これらのパネルでは、ヒトDLL4細胞外タンパク質の領域の64番(Histidine、ヒスチジン)、65番(phenylalanine、フェニルアラニン)、および69番(Valine、バリン)アミノ酸をそれぞれのアミノ酸をアラニン(Alanine)で置換した。アラニン置換突然変異体のための発現ベクターは、前記実施例1−1に示すようにDLL4細胞外ドメインの特定領域に対する抗原の製造に使用したベクターを利用した。具体的に、前記ベクターは、ヒトDLL4特定領域のアミノ酸27〜アミノ酸251の遺伝子を含むベクターであり、この領域は、Notch1受容体と結合すると知られている「DSL(デルタ/セレート(Serrate)/lag−2)」ドメインと称されるモチーフを含有する。
【0133】
標準組換えDNA技術を使用して、Fcタンパク質に融合されたDLL4の細胞外ドメインの欠失断片(アミノ酸27〜251)をコードするポリヌクレオチドの上流にCMVプロモーターを含む哺乳類発現プラスミドベクターを製造した。このベクターでアミノ酸64番、65番及び69番を、それぞれアラニン(Alanine)で置換することができるように、組換えDNA技術(QuikChange Site−Directed Mutagenesis,Agilent)を活用して、突然変異体をHEK293E動物細胞にリポフェクタミン2000(インビトロジェン、Invitrogen)を使用してトランスクションをさせて4日間培養した後、発現培地を取得した。この時、対照群として野生型(Wild type)DLL4の細胞外ドメインの欠失断片(アミノ酸27〜251)をコードするタンパク質を使用した。
【0134】
4日間培養した突然変異体の発現培地を1000rpm、常温で10分間遠心分離して浮遊物を除去した後、0.45μmシリンジ濾過(syringe filtration)した。ウェスタンブロッティング実験のために突然変異体発現培地での発現程度をOctet(登録商標)system(ForteBio)を使用して定量して、これを利用して、SDS−Gelロード時、一定のタンパク質の量になるようにした。以来、Novex4〜12%Bis/Trisゲルに同様に突然変異体発現培地20μLずつ2つのゲルにロードしMOPS緩衝液を使用し、140Vで50分間ゲル電気泳動を行った。この時、対照群として野生型のDLL4の細胞外ドメインの欠失断片(アミノ酸27〜251)をコードするタンパク質を使用した。電気泳動が終わった後、ポリビニリデンジフルオライド膜にタンパク質バンドをトランスファー(transfer)した。合わせて2つの方法で進行するが、一つはDLL4の細胞外ドメインの欠失断片(アミノ酸27〜251)のSDS−Gelロード時、一定量の突然変異及び野生型タンパク質をロードしたかを確認するために、HRP−コンジュゲーションされた抗ヒトFc抗体(1:10000)(Pierce Cat:31413)を活用して、トランスファーされた膜に結合させた後、PBS−Tで3回洗浄を行って、もう一つは、突然変異体に対するMLCK2抗体の結合力を調べるためMLCK2抗体(1μg/mL)をトランスファーされた膜に一次結合させ、PBS−Tで3回洗浄した後、再度HRP−コンジュゲーションされた抗ヒトFab抗体(1:10000)を用いて二次結合させてPBS−Tで3回洗浄した。その後、膜にAmersham ECLウェスタブロッティング検出試薬(GE Healthcare)を塗布し、ImageQuant LAS 4000(GE Healthcare)装置を使用して信号を検出した。
【0135】
図8に示すように、ウェスタブロッティング分析結果を基に見ると、野生型およびDLL4の細胞外ドメインの欠失断片(アミノ酸27〜251)をコードする突然変異タンパク質を一定量でロードしたことを確認した。また、MLCK2抗体の突然変異体に対する結合力を確認した際に、64番のアミノ酸の突然変異体の場合、MLCK2抗体の結合力が喪失され、65番のアミノ酸突然変異体もMLCK2抗体の結合力が著しく低下したこと分かった。また、69番のアミノ酸の突然変異体の場合には、MLCK2抗体の結合力に影響を及ぼさないことを確認した。
【0136】
≪実施例7:DLL4/VEGF二重抗体の血管内皮細胞(HUVEC)の増殖に対する影響分析≫
DLL4とVEGFに結合する二重抗体の血管内皮細胞(HUVEC)の増殖に対する影響を分析するために、血管内皮細胞(HUVEC,Human umbilical vein endothelial cell)をLonza社から購入して実験に使用した。
【0137】
HUVECの培養は、1%ゼラチン(Sigma)が溶解されたPBS緩衝溶液(Gibco)でT−フラスコ(Nunc)を、室温で4〜6時間コーティングした後、PBSで洗浄して使用した。使用された培地は、EGM−2 Single Quot(Lonza)が含まれたEBM−2(Lonza)であり、細胞の培養は、密集度が80%を超えない限度で、37℃、5%CO
2インキュベーターで継代培養を進めており、パッセージ(passage)6以内の細胞を用いて実験した。
【0138】
血管内皮細胞増殖アッセイ(HUVEC proliferation assay)は、次のような方法で行った。hDLL4がコーティングされたプレートを準備するために、実験前日96ウェルプレート(BD)にrhDLL4(R&D systems)を1mg/mLでCarbonate緩衝溶液を使用して希釈させた後、100mL/ウェルで接種して4℃で一夜静置させた。また、HUVECは0.1%FBSが添加されたEBM−2最小培地で24時間放置して血清による影響を最小限にしようとした。実験当日rhDLL4がコーティングされたプレートは、それぞれのウェルをPBSで2回洗浄した後、それぞれの実験群ごとにhVEGF(50ng/mL)、抗体(アバスチン:20mg/mL、DLL4単独抗体:20mg/mL、アバスチン−DLL4 BsAb二重抗体:26mg/mL)を先に使用したEBM−2最小培地で希釈して処理(triplicate)して、常温で20分間静置させた。前日から24時間スターベションされたHUVECは、単一細胞化させた後、EBM−2最小培地を使用して4×10
3cells/ウェルになるように希釈して抗体が処理されたウェルに接種し、37℃、5%CO
2インキュベーターで96時間静置した。細胞増殖が終了した時、cell counting kit−8(CCK−8,Dojino)を各ウェルに10mLずつ処理し、37℃、5%CO
2インキュベーターで5時間静置した。SpectraMax190(molecular Devices)機器を利用して、450nmの波長で吸光度を測定して、細胞の増殖程度を各群毎に比較した(
図9)。
【0139】
図9のすべての図面(PBS処理群)で示すように、DLL4/Notchシグナル伝達が活性化されると、血管内皮細胞の増殖が約30%程度抑制され、これはVEGFによって血管内皮細胞増殖が活性化される作用と反対となる現象といえる。In vivo機序も、先に説明したようにVEGF抗体は、腫瘍の血管形成が抑制されて腫瘍成長と転移を防ぐ一方で、DLL4抗体は、腫瘍の異常血管(非活性型血管)の生成を過度に誘導することにより、腫瘍の成長を抑制すると明らかになっており、
図9の結果は、VEGFとDLL4の互いに異なる新生血管形成作用機序をin vitroで反映していると言える。
【0140】
図9Aで確認できるように、血管内皮細胞の増殖に重要な役割を果たすVEGFとその受容体、VEGFRのシグナル伝達経路をVEGF−targeting抗体(アバスチン、Avastin)を処理する場合は、DLL4の存在の有無に関係なく、濃度依存的に血管内皮細胞の増殖が抑制されることを確認した。一方、
図9Bの場合、DLL4単独抗体を処理した実験結果で、DLL4が存在しない実験群では、抗体処理濃度に関係なく、血管内皮細胞の増殖にほとんど影響を与えなく、DLL4がある実験群では、DLL4抗体処理濃度に依存的に血管内皮細胞の増殖が再開される現象を明らかにした。二重標的タンパク質を処理した場合は、DLL4が存在しない実験群では、アバスチン抗体処理と類似した増殖抑制効果を示したが(
図9C、黒色バー)、DLL4が存在する実験群では、アバスチン対比血管増殖抑制効能が減っていることを確認することができた(
図9A、9C、白色バー)。
【0141】
DLL4処理群でVEGF単独の抗体処理だけの増殖抑制効果を示さなかったことは、本発明の二重抗体がVEGFおよびDLL4のシグナル伝達体系を共に効果的に抑制しているとの実験結果と解釈することができる。
【0142】
≪実施例8:DLL4/VEGF二重抗体のDLL4/NotchおよびVEGF/VEGFRシグナル伝達経路抑制活性の分析≫
DLL4とVEGFに結合する二重抗体のDLL4/NotchおよびVEGF/VEGFRシグナル伝達経路抑制活性を調べるために、実施例4と同様の方法でHUVECを利用した。実験前日6ウェルプレート(BD)に組換えヒトDLL4(rhDLL4,recombinant human DLL4,R&D systems)を1mg/mLでCarbonate緩衝溶液を使用して希釈させた後、1mL/ウェルで添加した後、4℃で一夜静置させた。rhDLL4を処理しない対照実験群では、Carbonate緩衝溶液単独で1mL/ウェルで処理して同様に4℃で一夜静置させた。翌日、4℃の冷蔵庫からDLL4がコーティングされたプレートを取り出し、PBSで1回洗浄した後、EGM−2培地を各ウェルに1mLずつ処理して、各ウェル毎に抗体(アバスチン:20mg/mL、DBZ:0.08mM、DLL4単独抗体:20mg/mL、Oncomed社DLL4単独抗体:20mg/mL、アバスチン−DLL4 BsAb二重抗体:26mg/mL)を処理した。最終培養液の量は2mLであるため、抗体処理を2倍にして、常温で20分間静置した。抗体処理時間の間パッセージ#2〜#5(passage#2〜#5)の75Tプレートで培養されたHUVECを取り出して培地除去後、単一細胞化させた。遠心分離過程を介して細胞を洗浄し、新鮮なEGM−2培地を使用して再浮遊させて、細胞の数をカウントして5×10
5cells/mLに希釈した後、それぞれのウェルに1mLずつ接種して、37℃、5%CO
2インキュベーターで一日中培養した。0.2%FBSが含まれたEBM−2最小培地を準備して、一日中培養されたHUVECの各ウェルから培地を除去して、PBS1回洗浄した後、0.2%FBSが含まれたEBM−2最小培地を2mL処理した。また、それぞれのウェルに前日処理した同じ濃度の抗体(アバスチン:20mg/mL、DBZ:0.08mM、DLL4単独抗体:20mg/mL、Oncomed社DLL4単独抗体:20mg/mL、アバスチン−DLL4 BsAb二重抗体:26mg/mL)を処理し、37℃、5%CO
2インキュベーターで一日中培養した。抗体が処理されたHUVECの各ウェルにhVEGF(R&D systems)を100ng/mLで処理して、37℃、5%CO
2インキュベーターで5分間反応させた後、プレートを取り出して、直ちに培地を捨て、PBSで1回洗浄した後、細胞溶解緩衝液(1%NP−40,20mM Tris,137mM NaCl,10%Glycerol,2mM EDTA,1mM Sodium orthovanabate,1x Protease & phosphatase inhibitor coctail)を準備し、それぞれのウェルに150mLを添加した後、満遍なく広がるように振った。
【0143】
このプレートを氷の上にのせてスクレイパーでそれぞれのウェルのHUVECを掻き集めた後、1.5mLチューブに集めた後、氷の上に静置させた。5分単位で氷で1.5mLチューブを取り出してボルテックシング(Vortexing)3回後、再度氷に浸し置いて細胞溶解を進行した後、これを遠心分離(4℃、14000rpm、10分)して上澄み液を新しいチューブに移した後、定量を行い、5xSDS sample bufferに混合し、100℃で10分間沸騰させた後、SDS−PAGE分析を行った。準備されたタンパク質試料を4%〜12%bis−TRISゲルを介してSDS−PAGEを行ってサイズ毎に分離させた後、NICD(Cell signaling)、P−ERK(Cell signaling)、ERK(Cell signaling)、VEGFR2(Cell signaling)、P−VEGFR2(Cell signaling)、Actin(Santa Cruz)抗体を用いてウェスタンブロットを行った(
図10)。
【0144】
図10のように、本発明の二重標的タンパク質は、DLL4/NotchおよびVEGF/VEGFRシグナル伝達経路をそれぞれの単独の抗体程度抑制することができることを確認した。
【0145】
≪実施例9:アバスチン抵抗性を持つヒト胃癌細胞株異種移植モデル(Avastin−resistant human SCH gastric cancer xenograft model)での二重抗体抗がん活性の分析≫
報告された文献によると、SCHヒト胃がん細胞株(human gastric cancer)は、アバスチンの耐性を持っていると開示されており、SCH細胞株を用いたヌードマウス異種移植モデル(nude mouse xenograft model)で二重抗体の抗癌効能試験を行った。
【0146】
具体的には、アバスチン耐性SCH胃癌細胞株を雌ヌードマウス(female nude mouse)に接種した後、腫瘍サイズ(tumor size)が平均200mm
3に達したときに、週に1回、各抗体を投与して、本発明に係る二重ターゲット抗体のin vivo抗癌活性を確認した(
図11)。本ヌードマウス異種移植モデル(Nude mouse xenograft model)のin vivo試験では、ヒトDLL4を標的するアバスチン−DLL4二重抗体の代わりにヒトDLL4エピトープ(DSLドメイン)と同じマウスDLL4エピトープ(DSLドメイン)に結合する二重抗体であるアバスチン−マウスDLL4 surrogate二重標的タンパク質を投与して、二重抗体の優れた抗癌効果の検証を立証した。
【0147】
図11のように、アバスチンに対して耐性を有する胃癌細胞株に対して、本発明の二重標的タンパク質が抗癌効果を著しく増加させることをin vivo実験で確認した。
【0148】
≪実施例10:アバスチン抵抗性を持つヒトの肺癌細胞株異種移植モデル(Avastin−resistant human A549 lung cancer xenograft model)での二重抗体抗がん活性の分析≫
A549細胞株をヌードマウスに接種した後、アバスチン(2.5mg/kg/week)を3ヶ月間処理してアバスチン処理後にも腫瘍の大きさが減らず、腫瘍が成長するアバスチン投与に耐性を持ったA549癌細胞を確保した。この腫瘍を剥ぎ取った後、アバスチン耐性A549細胞をEx−vivo培養を行って、二重ターゲット抗体の効能分析のために使用した。
【0149】
具体的には、アバスチン耐性A549肺癌細胞株を雌ヌードマウス(female nude mouse)に接種した後、腫瘍サイズが平均200mm
3に達した時に、週に2回、各抗体を投与して、二重ターゲット抗体のin vivo抗癌活性を確認した(
図9)。アバスチン抵抗性A549細胞を用いたin vivo試験でも、ヒトDLL4を標的するアバスチン−DLL4二重抗体の代わりにヒトDLL4エピトープと同じ部位のマウスDLL4に結合する二重抗体であるアバスチン−マウスDLL4 surrogateを投与して、二重抗体の優れた抗癌効能の検証を立証した。
図12に示すように、アバスチンに対して耐性を有する肺癌細胞株に対して、本発明の二重標的タンパク質が抗癌効果を著しく増加させることをin vivo実験で確認した。
【0150】
以上の説明から、本発明が属する技術分野の当業者は、本発明がその技術的思想や必須特徴を変更することなく他の具体的な形態で実施可能であることが理解できるはずである。これと関連して、以上で記述した実施例はすべての面で例示的なものであり、限定的なものではないものとして理解しなければならない。本発明の範囲は、前記詳細な説明よりは、後述する特許請求範囲の意味及び範囲、そしてその等価概念から導出されるいずれの変更または変形された形態が、本発明の範囲に含まれると解釈されなければならない。