特許第6283414号(P6283414)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6283414有機ゲル化剤として用いられる脂環式ジアミン及び脂肪族ジアミンをベースとする脂肪酸ジアミド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6283414
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】有機ゲル化剤として用いられる脂環式ジアミン及び脂肪族ジアミンをベースとする脂肪酸ジアミド
(51)【国際特許分類】
   C07C 235/06 20060101AFI20180208BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20180208BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20180208BHJP
   C09D 7/40 20180101ALI20180208BHJP
   C09D 11/00 20140101ALI20180208BHJP
   C09J 201/08 20060101ALI20180208BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20180208BHJP
   A61K 8/42 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
   C07C235/06
   C09K3/00 103M
   C09D201/00
   C09D7/12
   C09D11/00
   C09J201/08
   C09J11/06
   A61K8/42
【請求項の数】23
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-528576(P2016-528576)
(86)(22)【出願日】2014年7月18日
(65)【公表番号】特表2016-530245(P2016-530245A)
(43)【公表日】2016年9月29日
(86)【国際出願番号】FR2014051844
(87)【国際公開番号】WO2015011375
(87)【国際公開日】20150129
【審査請求日】2016年3月18日
(31)【優先権主張番号】1357347
(32)【優先日】2013年7月25日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベルナール,ミシェル・イグレク
【審査官】 早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−048965(JP,A)
【文献】 特開昭60−223876(JP,A)
【文献】 特開昭59−129271(JP,A)
【文献】 特開昭64−060665(JP,A)
【文献】 特開昭49−028108(JP,A)
【文献】 特開2009−215290(JP,A)
【文献】 特開2002−038126(JP,A)
【文献】 特開2008−260834(JP,A)
【文献】 特開2013−049761(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 235/06
C09D 7/40
C09D 11/00
C09D 201/00
C09J 11/06
C09J 201/08
C09K 3/00
A61K 8/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪酸ジアミド混合物であって、
a)6個の炭素原子の環を含む少なくとも1つの脂環式ジアミン、
b)12−ヒドロキシステアリン酸(12−HSA)、9−ヒドロキシステアリン酸(9−HSA)、10−ヒドロキシステアリン酸(10−HSA)、14−ヒドロキシエイコサン酸(14−HEA)又はこれらの2成分もしくは3成分もしくは4成分混合物から選択される、脂肪族オキシ酸、
c)直鎖一級脂肪族CからC12ジアミンから選択される、少なくとも1つの第2のジアミン、
d)任意成分である少なくとも1つの一酸であって、前記少なくとも1つの一酸が、飽和且つ非−ヒドロキシル化直鎖CからC18カルボン酸から選択される、一酸、
e)任意成分である少なくとも1つの第3の一級ジアミンであって、前記c)とは異なり、且つ少なくとも1つの第3の一級ジアミンが、直鎖脂肪族CからC12ジアミンから選択される、第3の一級ジアミン
f)キシリレンジアミンから選択される、少なくとも1つの芳香族ジアミンであって、前記芳香族ジアミンは部分的もしくは全体的にa)に定義される脂環式ジアミンに置き換えられてもよいもの、
を含む反応混合物から得られる少なくともつの反応生成物を含む、脂肪酸ジアミド混合物
【請求項2】
a/(a+f)のモル百分率が少なくとも50%から100%までの範囲であり、並びに(a+f)/(a+c+e+f)のモル百分率が30%から80%の範囲である、請求項1のジアミド混合物
【請求項3】
脂環式ジアミンa)が、キシリレンジアミンf)の存在下にあり、並びに前記ジアミンa)が、ジアミンa)+キシリレンジアミンf)の総モル数の50mol%から99mol%に相当する、請求項1または2のジアミド混合物
【請求項4】
モル比a/(a+f)が100%であって、前記ジアミンf)は存在せず、前記脂環式ジアミンa)が、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1,4−BACまたは1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1,3−BACである、請求項1または2のジアミド混合物
【請求項5】
i)ジアミドb−a−bと、
ii)ジアミドb−c−bと、
iii)ジアミドb−e−bと、
を含み、
式中、「a」は、前記ジアミドi)において、各アミノ基の水素原子が1つ少ない前記ジアミンa)の二価の残基であり、
「c」は、前記ジアミドii)において、各アミノ基の水素原子が1つ少ない前記ジアミンc)の二価の残基であり、
「e」は、前記ジアミドiii)において、各アミノ基の水素原子が1つ少ない前記ジアミンe)の二価の残基であり、
「b」は、カルボキシ部分の−OHが少ない12−ヒドロキシステアリン酸の残基である
請求項1から4のいずれか一項のジアミド混合物
【請求項6】
前記ジアミンa)、c)及びe)並びに任意のキシリレンジアミンf)と、前記一酸b)及び任意のd)との間の反応に由来する少なくとも2つの異なる反応生成物を含む、請求項1から5のいずれか一項のジアミド混合物
【請求項7】
前記一酸d)が、モル比d/(b+d)を0.5未満とする比率で存在する、請求項1から6のいずれか一項のジアミド混合物
【請求項8】
微細化された粉状物の形態である、請求項1から7のいずれか一項のジアミド混合物
【請求項9】
有機溶媒媒体における有機ゲル化剤としての、請求項1から8のいずれか一項のジアミド混合物の使用。
【請求項10】
レオロジー添加剤としてジアミド混合物が使用される、請求項9の使用。
【請求項11】
前記ジアミド混合物が、コーティング組成物中に、又はグルーもしくは接着剤組成物もしくはストリッピングもしくは成型又は化粧品組成物中に使用される、請求項9または10の使用。
【請求項12】
前記ジアミド混合物が、マスチック又はシーリング組成物中に使用される、請求項9または10の使用。
【請求項13】
請求項1から8のいずれか一項に定義される少なくとも1つのジアミド混合物を含む、有機ゲル化剤。
【請求項14】
レオロジー添加剤として請求項1から8のいずれか一項に定義される少なくとも1つのジアミド混合物を含む、有機結合剤組成物。
【請求項15】
コーティング組成物もしくはゲルコート組成物又はグルーもしくは接着剤もしくはストリッピングもしくは化粧品組成物である、請求項14の有機結合剤組成物。
【請求項16】
マスチック又はシーリング組成物である、請求項14の有機結合剤組成物。
【請求項17】
成型組成物である、請求項14の有機結合剤組成物。
【請求項18】
前記結合剤が、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、アルキッド、シラン樹脂、ポリウレタン、ポリエステルアミド、溶媒ベースアクリル樹脂、アクリルモノマー及び/もしくはオリゴマー又は塩素化エラストマーもしくは非塩素化エラストマー及び塩素化エラストマー以外の塩素化ポリマーから選択される、請求項14の有機結合剤組成物。
【請求項19】
前記脂環式ジアミンa)が、前記環を含めて全体で6から18個の炭素原子を含み、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1,3−BAC)、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1,4−BAC)、1,2−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1,2−BAC)及びこれらの異性体混合物、デカヒドロナフタレンジアミン類、イソホロンジアミン類から選択される、請求項1の脂肪酸ジアミド混合物
【請求項20】
前記脂環式ジアミンa)が、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1,3−BAC)および1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1,4−BAC)から選択される、請求項1の脂肪酸ジアミド混合物
【請求項21】
前記脂環式ジアミンa)が、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1,3−BAC)である、請求項1の脂肪酸ジアミド混合物
【請求項22】
前記オキシ酸b)が、12−ヒドロキシステアリン酸、又は12−ヒドロキシステアリンと前記他のオキシ酸類との2成分もしくは3成分混合物から選択される、請求項1の脂肪酸ジアミド混合物
【請求項23】
前記芳香族ジアミンf)が、m−キシリレンジアミン(m−XDA)である、請求項1の脂肪酸ジアミド混合物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は第1に、その構造中に脂環式ジアミン及び脂肪族ジアミンの両方を特定のモル比で含む脂肪酸ジアミド、並びに有機ゲル化剤もしくはレオロジー剤又は添加剤としてのこの生成物の使用、とりわけコーティング、成型、マスチックもしくはシーリング、ストリッピング又は化粧品組成物における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
US3977894は、有機粘土、グリセリルトリス(12−ヒドロキシステアラート)並びにCからC18脂肪族ジアミン及び12−ヒドロキシステアリン酸をベースとする脂肪族アミドの均質な混合物をベースとする自己活性化可能なレオロジー添加剤を記載している。
【0003】
レオロジー添加剤、とりわけジアミン成分として脂肪族アミン及びキシリレンジアミン、とりわけm−キシリレンジアミンを含むジアミドをベースとするチキソトロピー剤は、有利な性能品質を有するものとしてすでに公知である。しかしながら、その毒性、中でも取り扱いにおける健康への強い影響に関連する環境的制約により、少なくとも部分的に低い濃度への置き換え、好ましくは全体的に置き換えるという論議が持ち上がっている。しかし、このような置き換えは得られた脂肪酸アミドのレオロジー性能品質に著しい影響を与えるものであってはならない。より具体的には、目標となるジアミドは、比較的低い温度、即ち40℃から80℃未満の温度に曝される活性化条件において、チキソトロピー効果及び垂れ耐性について高い性能品質を有していなければならない。このことは、とりわけ反応性もしくは非反応性有機溶媒媒体中の結合剤組成物の場合に対応し、前記溶媒は蒸発効果を介してもしくは反応効果を介して、高い活性化温度に曝されるべきではなく、また高温度において溶媒蒸気の排出があった場合も環境及び健康に対して危険を与えてはならないし、前記溶媒がより高温度に加熱されることにより反応し易くなった場合に結合剤組成物の安定性に危険を与えてもならない。さらに、最終用途性能品質の顕著な機能障害を起こしてはならない。この問題はとりわけ、反応性もしくは非反応性溶媒媒体中の、塗料、ワニス、インク、及びゲルコートなどとして通常知られるコーティング組成物について、又はグルーもしくは接着剤又はストリッピングもしくは成形剤又は化粧品基剤についてあてはまる。例えば、塗料において使用される非反応性型の溶媒はキシレンである。挙げることのできる反応性溶媒(反応性希釈剤としても知られる)の例は、不飽和ポリエステル又はビニルエステルをベースとするゲルコート又は成型組成物におけるスチレン又はアクリルモノマーである。
【0004】
m−キシリレンジアミンの並びにこのジアミン及び12−ヒドロキシステアリン酸をベースとするジアミドの、塗付組成物、特にコーティング又はグルーもしくは接着剤に使用される溶媒に対する親和性によって、このジアミンは、これらの用途のために適した、有機ゲル化添加剤又はレオロジー添加剤のための必須の成分となる。より具体的には、キシレンなどの非反応性溶媒媒体中の塗料、ワニス及びインクなどのコーティングにおいて、その置き換えの問題点は、最終用途におけるレオロジー性能品質を著しく損なうことなしに、この溶媒における性能品質とこの媒体において使用され得る有機結合剤とのよい妥協点を探すことである
【0005】
所与の系における、作動媒体に関連するパラメータ、特定の組成に関連するパラメータ(分子的及び構造的パラメータ)及び活性化条件に関連するその他のパラメータにより、レオロジー性能品質は著しく変動し、非常に特定的な公知の系の公知な性能品質から一般的にこれらの性能品質を外挿したり予測したりすることは非常に困難である。特定の目標適用媒体におけるゲル化の効果は、可溶化されるアミド(特異的に限定された目標溶解性を有する)の能力及び結晶繊維を形成する能力と前記有機溶媒をベースとする前記媒体における沈降及び沈殿傾向との間の特定の妥協を必要とする。上記及び下記定義における用語「溶媒」は高温、特に90℃を超える高温における活性化を受けることができない(活性化することができない)主たる有機溶媒として理解されなければならない。従って、本発明による前記溶媒は90℃未満の温度においてのみ活性化され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第3977894号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は概説した欠点を克服することであり、従って特定の且つ選択的な組成の新規な脂肪族ジアミドを開発することにある。この組成物は、キシリレンジアミンについて部分的に、より特定的には全体的に置き換える脂環式構造のジアミドを、前記ジアミドの必須のアミン成分として特定の比率における少なくとも1つの脂肪族ジアミンの存在下で含む。本発明は従って、キシリレンジアミン単独(アミン成分として100%)をベースとする、即ち前記の環状ジアミンによる置き換えをしない、有機ゲル化剤の性能品質を比較の基準として、満足できる、特に少なくとも同等である、有機ゲル化剤の性能品質を目的とする。本発明によるジアミドは特に上記の通りより低温で活性化することが可能である。
【0008】
本発明の優位点は、有機溶媒媒体中の結合剤組成物の分野における従来技術の製品および使用と比較して十分な、少なくとも同等の性能品質を持ち、m−キシリレンジアミンのみをベースとする(脂環式ジアミンを全く含まない)アミドによって得られるレオロジー性能品質と少なくとも同等のレオロジー性能品質である。これらの性能品質が前記の芳香族ジアミンの毒性に関連する環境的及び健康的制限を受けずに得られる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は第1に特定の組成の前記ジアミドを対象とする。
【0010】
本発明の第2の主題は、前記ジアミドの有機ゲル化剤としての使用に関する。
【0011】
他の主題は前記ジアミドを含む有機ゲル化剤である。
【0012】
最後に本発明は前記ジアミドを含む種々の使用のための結合剤組成物に関する。
【0013】
従って、本発明の第1の主題は、
a)6個の炭素原子の環を含む少なくとも1つの脂環式ジアミン、特に前記環を含めて全体で6から18個の炭素原子を含む少なくとも1つの脂環式ジアミンであって、前記ジアミンは好ましくは1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1,3−BAC)、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1,4−BAC)、1,2−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1,2−BAC)及びこれらの異性体混合物、デカヒドロナフタレンジアミン類、イソホロンジアミン類、より好ましくは1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1,3−BAC)、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1,4−BAC)、なおより好ましくは1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1,3−BAC)から選択される、少なくとも1つの脂環式ジアミン、
b)12−ヒドロキシステアリン酸(12−HSA)、9−ヒドロキシステアリン酸(9−HSA)、10−ヒドロキシステアリン酸(10−HSA)、14−ヒドロキシエイコサン酸(14−HEA)又はこれらの2成分もしくは3成分もしくは4成分混合物から、好ましくは12−ヒドロキシステアリン酸又は12−ヒドロキシステアリンと前記他のオキシ酸類との2成分もしくは3成分混合物から選択される、脂肪族オキシ酸、
c)直鎖一級脂肪族CからC12、好ましくはCからC、より好ましくはCからCジアミンから選択される、少なくとも1つの第2のジアミン、
d)任意の少なくとも1つの一酸であって、飽和且つ非−ヒドロキシル化直鎖CからC18、好ましくはCからC15、より好ましくはCからC12カルボン酸から選択される、少なくとも1つの一酸、
e)任意の少なくとも1つの第3の一級ジアミンであって、c)とは異なり且つ直鎖脂肪族CからC12、好ましくはCからC、より好ましくはCからCジアミン類から選択される、少なくとも1つの第3の一級ジアミン
f)キシリレンジアミンから、好ましくはm−、p−キシリレンジアミン(m−、p−XDA)から、より好ましくはm−キシリレンジアミン(m−XDA)から選択される、少なくとも1つの芳香族ジアミンであって、前記芳香族ジアミンは部分的もしくは全体的にa)に定義される脂環式ジアミンに置き換えられてもよいもの、
を含む反応混合物から得られる少なくとも1つの反応生成物を含む、特徴的な脂肪酸ジアミドに関する。
【0014】
好ましい選択肢によれば、a/(a+f)のモル百分率が少なくとも50%から100%までの範囲であり、並びにすべてのアミンに対する脂環式アミンa)及び芳香族アミンf)のモル比を表す(a+f)/(a+c+e+f)のモル百分率が30%から80%、好ましくは30%から65%の範囲である。より具体的には、他の脂肪族ジアミンに対するジアミンa)のモル比a/(c+e)は、少なくとも0.25であり、好ましくは0.45から0.95、より好ましくは0.5から0.85の範囲に在る。
【0015】
用語「直鎖」は、分岐した構造に対して、少なくとも4個の炭素原子を含み、且つ一切分岐を含まない鎖についてのみ意味を有し、より短い長さの鎖(C及びC)は常に直鎖と定義される。
【0016】
本発明の他の可能性によれば、前記脂環式ジアミンa)、好ましくは1,3−BACもしくは1,4−BACは、キシリレンジアミンf)、好ましくはp−XDAもしくはm−XDA、より好ましくはm−XDAの存在下にあり、並びに前記ジアミンa)は、ジアミンa)+キシリレンジアミンf)の総モル数の50mol%から99mol%、好ましくは前記総モル数の60%から99%に相当する。
【0017】
本発明の代替的なより好ましい選択肢によれば、モル比a/(a+f)は100%であって前記ジアミンf)は存在せず、好ましくは前記脂環式ジアミンa)は1,4−BACまたは1,3−BACである。前記ジアミンa)は単独であっても、あるいは前記ジアミンを含む混合物の形態であってもよい。
【0018】
より特定的な選択肢によれば、本発明による前記ジアミドは、
i)上記に定義されたとおりの、1モルの前記ジアミンa)及び2モルの前記オキシ酸b)の反応生成物からなるジアミドであって、好ましくは前記オキシ酸b)が12−ヒドロキシステアリン酸である、ジアミドと、
ii)上記に定義されたとおりの、1モルのジアミンc)及び2モルの前記前記オキシ酸b)の反応生成物からなるジアミドであって、好ましくは前記オキシ酸b)が12−ヒドロキシステアリン酸である、ジアミドと、
iii)上記に定義されたとおりの、1モルのe)によるジアミン及び2モルの前記オキシ酸b)の反応生成物からなるジアミドであって、好ましくは前記オキシ酸b)が12−ヒドロキシステアリン酸である、ジアミド
とを含む。
【0019】
本発明のジアミドは、前記ジアミンa)、c)及びe)並びに任意のキシリレンジアミンf)と、一酸b)及び任意のd)との間の反応に由来する少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つの異なる反応生成物を含んでいてもよい。
【0020】
特定の様式によれば、前記一酸d)はモル比d/(b+d)が0.5未満、好ましくは0.02と0.5との間の範囲にある比率で存在する。
【0021】
特に好ましくは、本発明の前記ジアミドは微細化された粉状物の形態、好ましくは20μ未満、より好ましくは15μ未満の体積平均粒径を有する粉状物の形態である。前記粒径の決定はレーザー検出器を備えた測定器を用いて実施することができる。
【0022】
微細化は機械的な粉砕に続く篩い、またはエアジェット粉砕して実施され、制御されたより狭い粒径分布を有する微細な粉状物が得られる。
【0023】
本発明の第2の主題は、有機溶媒媒体における有機ゲル化剤としての本発明のジアミドの使用に関する。
【0024】
従って、前記添加剤はレオロジー添加剤として、特に有機溶媒中に予め濃縮され、予め活性化されたペーストの形態で使用することができる。有機溶媒は溶媒の混合物であってよい。好ましくは、有機溶媒は極性溶媒であるか、あるいは少なくとも1つの極性溶媒を含んでいる。前記ジアミドの好ましい重要な使用は、コーティング組成物における、特に塗料、ワニス、インク及びゲルコートにおける又はグルー及び接着剤又はストリッピングもしくは成形又は化粧品組成物における(レオロジー添加剤としての)使用である。より好ましくは、前記使用は、上記に説明した通り、本発明の目的により置き換えられるべきm−キシリレンジアミンの、これらの媒体における親和性によって引き起こされる問題を考慮に入れたコーティング組成物に関する。
【0025】
本発明の他の主題は、上記した通り、本発明により定義されたとおりの少なくとも1つのジアミドを含む有機ゲル化剤、特にレオロジー添加剤である。より具体的には、予め活性化されたペーストの形態の、溶媒の混合物を含む少なくとも1つの有機溶媒中、好ましくは少なくとも1つの極性溶媒中で予め濃縮されている組成物における、レオロジー剤もしくは添加剤、とりわけチキソトロピー剤である。
【0026】
上記記載による用語「極性有機溶媒」は「少なくとも1つの極性有機溶媒」又は「少なくとも1つの極性有機溶媒を含む有機溶媒の混合物」を、その定義の中に含む、あるいは意味するものと解釈されるべきである。極性有機溶媒であると考えられる溶媒は少なくとも1つの極性基、例えばアルコールもしくはエステル基を含む溶媒である。第1の解釈選択肢による極性有機溶媒の例として、エタノールもしくはブタノール又はこれらの混合物などのアルコールを挙げることができ、第2の解釈選択肢による極性有機溶媒の例として、該アルコール(エタノールもしくはブタノール)と非極性アルコール、例えばキシレンとの混合物を挙げることができる。
【0027】
最後に、本発明は有機結合剤組成物を対象とし、前記有機結合剤組成物は、レオロジー剤(又は剤と同義の添加剤)として、本発明により上記に定義される少なくとも1つのジアミドを含む。
【0028】
より具体的には、前記有機結合剤は、コーティング、塗料、ワニス、インクもしくはゲルコート組成物又はグルーもしくは接着剤組成物又はストリッピングもしくは成型又は化粧品組成物である。より好ましい選択肢によれば、前記組成物はコーティング組成物である。他の可能性によれば、前記組成物はマスチックもしくはシーリング組成物である。他の選択肢によれば、この組成物は成型組成物である。成型又はゲルコート又は放射線架橋性コーティング組成物は、反応性溶媒媒体(反応性希釈剤としても知られる)中の組成物、例えばスチレン又は同等のコモノマーもしくは多官能アクリル系(アクリル)モノマー及び/又はオリゴマー中の不飽和ポリエステル又はビニルエステルであり、前記オリゴマーは反応性希釈剤として多官能アクリルモノマーを用いる。
【0029】
より具体的には、前記有機結合剤は、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、アルキッド、シラン樹脂、ポリウレタン、ポリエステルアミド、溶媒ベース(非反応性希釈剤)アクリル樹脂、アクリル(多官能)モノマー及び/もしくはオリゴマー(後者の場合、反応性希釈剤はアクリル(多官能)モノマーである)又は塩素化エラストマーもしくは非塩素化エラストマー及び塩素化エラストマー以外の塩素化ポリマーから、好ましくはエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、アルキッド、ポリウレタン、ポリエステルアミド、溶媒ベース(非反応性希釈剤)アクリル樹脂及び前記アクリルモノマー及び/もしくはオリゴマー又は塩素化エラストマーもしくは非塩素化エラストマーから選択することができる。
【0030】
アクリルモノマー及び/又はオリゴマーは、少なくとも1つのアクリラートもしくはメタクリラート官能基を有するモノマー及び/又はオリゴマーを意味し、特に多官能基、即ち一分子あたりに少なくとも2つの前記アクリラートもしくはメタクリラート官能基を有するモノマー及び/又はオリゴマーを意味する。
【0031】
下記に示す実施例は本発明及び性能品質の例示として掲げるものであり、本発明の範囲を一切限定するものでは無い。
【実施例】
【0032】
実験セクション
I−使用した出発材料
【0033】
【表1】
【0034】
II−使用した方法及び試験
配合物は、流動(垂れ)抵抗試験及び種々の速度における粘度の評価の2つの試験により評価される。
【0035】
− 流動抵抗試験
重力による垂れに対するコーティングの抵抗性を確立することができる垂れコントローラー(Sheen Instruments製Levelling/Sagging Tester)を用いて実施される。このコントローラーは、値を徐々に大きくしたノッチを有する平らな刃を具備したステンレス鋼で作製されている。
【0036】
試験は、垂れコントローラーを用いて、平行な種々の厚みの塗料ストリップをコントラストカード上に堆積させることからなる。コントラストカードは即座に、最も薄い膜を上にして垂直にされる。ストリップが重なったところの厚みが垂れの傾向を示す値となる。
【0037】
− 粘度評価
粘度評価は、Brookfield(R)RV viscometerを用いて25℃で実施する(スピンドル:S4)。スピンドル速度は50rpm(1分当たりの回転数)に設定し、安定化した後の各塗料の粘度を測定する。20rpm、10rpm、5rpm及び1rpmの速度について操作を繰り返す。
【0038】
III−ジアミド(又は有機ゲル化剤、レオロジー添加剤)の調製及び特性評価
【0039】
[実施例1]メタ−キシリレンジアミン及びヘキサメチレンジアミン及び12−HSAをベースとするアミド
61.29gのメタ−キシリレンジアミン(0.46mol)、63.8gのエチレンジアミン(即ち、0.54mol)及び315.2gの12−ヒドロキシステアリン酸(1.00mol)を、窒素流下で、温度計、Dean−Stark装置、凝縮器及び撹拌機を具備した1リットルの丸底フラスコに入れる。
【0040】
窒素流下においたまま、混合物を200℃に加熱する。150℃から、Dean−Stark装置に除去された水がたまり始める。酸価及びアミン価により反応を監視する。酸価及びアミン価が10(mgKOH/g)未満である場合には、反応混合物を150℃に冷却してからシリコーン鋳型にあける。室温に冷却されたら、ミルにより生成物を機械的に微細化して、篩にかけ、得られる平均粒径が7μmの、微細で制御された粒径が得られる。
【0041】
実施例2、3及び4については、反応成分の比率を下記表2に示すようにして、同じ手法を使用する。
【0042】
【表2】
【0043】
IV−塗料配合物におけるレオロジー性能品質の評価
調製したアミドをキシレン中の高固体含有量(又は高乾燥抽出物)の(反応性)エポキシ塗料配合物において評価した。
【0044】
1)塗料配合物の調製
「ミルベース」として知られる配合物を、下記様式に従って、下記表3に掲げる比率を用いて調製する。
【0045】
下記の連続的操作をジャケットで加熱されている分散ボウル(Dispermill(R)2075 yellow line、供給業者:Erichsen)中で実施する:
1.1)エポキシ結合剤並びに分散剤及び脱ガス剤の導入。800回転/分(1分当たりの回転数、800rpm)で2分間、均質化を実施する。
1.2)充填剤及び顔料の導入後、7cmのパドルを用いて、3000rpmで30分間粉砕する。ジャケット付ボウルに冷却水(20℃)を用いてこの工程を室温で行う。
1.3)溶媒(表3によるブタノール)の導入及び均質化。
【0046】
2)「ミルベース」におけるアミド添加剤の活性化
ミルベースの調製から24時間後に、4cmのパドルを用いて3000rpmで調製物を再度分散させる。評価されるべきジアミドをミルベースに導入し、その場で、2つの活性化温度、50℃及び70℃において、300rpmで20分間活性化する。
【0047】
前記の評価は、活性化の24時間後、及びキシレンで希釈した硬化剤のミルベースへの添加後30分までは実施せず(表4参照)、こうして得られた塗料は、その塗布粘度について、キシレン/ブタノール混合物(重量で1/1)を用いて、Brookfield(R)CAP 1000粘度計を用いて2500s−1、25℃においてコーン4で測定して、約0.4Pもしくは約40mPa.s(より正確には0.37〜0.38Pもしくは37〜38mPa.s)に調整する。硬化剤及び溶媒混合物の間の比率は下記表4に定義されるとおりである。粘度調整に用いた1/1のキシレン/ブタノール混合物の量は変動する場合があるが、それぞれ互いに概ね1%未満の変動である。
【0048】
24時間後の評価前に、調整後、1500rpmで2分間、塗料を混合/均質化し、30分間放置する。
【0049】
【表3】
【0050】
【表4】
【0051】
3)調製したエポキシ塗料の配合物のレオロジーの評価及び結果
上記に概説した手順により、表3及び4に示す比率で調製したアミド1から4を用いて、及び検討した2つの活性化温度、50℃及び70℃により、いくつかの塗料配合物を調製した。
【0052】
垂れ抵抗及びレオロジーの結果は、50℃又は70℃において活性化した同じ配合物について、1,3−ビス−(アミノメチル)シクロヘキサンをベースとするアミド3は、m−キシリレンジアミンをベースとするアミド1と同等のもしくは少なくとも類似したチキソトロピー効果を有することを示す。
【0053】
垂れ抵抗及びレオロジーの結果は、50℃又は70℃において活性化した同じ配合物について、1,3−ビス−(アミノメチル)シクロヘキサンをベースとするアミド4は、m−キシリレンジアミンをベースとするアミド2と同等のもしくは少なくとも類似したチキソトロピー効果を有することを示す。
【0054】
従って、1,3−ビス−(アミノメチル)シクロヘキサンをベースとするアミド3及び4は、レオロジー添加剤の必要かつ非常に満足できる特性を有する。従って、ジアミンである、1,3−ビス−(アミノメチル)シクロヘキサンは、本発明の文脈にしたがm−キシリレンジアミンと置き換えることが可能であり、その結果、置き換えない場合に得られる結果と、少なくとも劣らないものが得られるが、置き換えない場合には、上述の未解決のジアミンの毒性の問題及び欠点がある。
【0055】
垂れ抵抗の結果を下記表5に、及びレオロジー性能の結果を下記表6に示す。
【0056】
【表5】
【0057】
レオロジー評価結果(粘度並びにチキソトロピー指数TI 1/10及びTI 5/50)を下記表6に示す。
【0058】
【表6】