(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6283415
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】ラクタムまたはアミノ酸系脂肪酸アミドおよび有機ゲル化剤としてのその使用
(51)【国際特許分類】
C07C 237/06 20060101AFI20180208BHJP
C07C 231/10 20060101ALI20180208BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20180208BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20180208BHJP
C09D 7/40 20180101ALI20180208BHJP
C09D 11/00 20140101ALI20180208BHJP
C09J 201/08 20060101ALI20180208BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20180208BHJP
A61K 8/42 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
C07C237/06CSP
C07C231/10
C09K3/00 103M
C09D201/00
C09D7/12
C09D11/00
C09J201/08
C09J11/06
A61K8/42
【請求項の数】23
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-528577(P2016-528577)
(86)(22)【出願日】2014年7月18日
(65)【公表番号】特表2016-531107(P2016-531107A)
(43)【公表日】2016年10月6日
(86)【国際出願番号】FR2014051846
(87)【国際公開番号】WO2015011376
(87)【国際公開日】20150129
【審査請求日】2016年3月16日
(31)【優先権主張番号】1357349
(32)【優先日】2013年7月25日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベルナール,ミシェル・イグレク
【審査官】
早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−258613(JP,A)
【文献】
特開昭60−223876(JP,A)
【文献】
特開昭59−129271(JP,A)
【文献】
特開2002−088049(JP,A)
【文献】
特開2003−301164(JP,A)
【文献】
特開2002−316971(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0224455(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0237732(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 237/06
C07C 231/10
C09D 7/40
C09D 11/00
C09D 201/00
C09J 11/06
C09J 201/08
C09K 3/00
A61K 8/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪酸アミドであって、
a)芳香族、シクロ脂肪族または直鎖C2からC10脂肪族ジアミンから選択される第一級ジアミン
b)C3からC12ラクタムまたはアミノ酸、
c)任意成分である、前記ジアミンa)とは異なる第2の第一級ジアミンであって、前記第2の第一級ジアミンが直鎖C2からC10脂肪族ジアミンから選択されるもの、
d)ヒドロキシル化脂肪族C18またはC20一酸、
e)任意成分である、非ヒドロシリル化一酸であって、前記非ヒドロシリル化一酸が直鎖C6からC12脂肪族酸から選択され、前記一酸d)に対する前記一酸e)のモル比であるe/dが、0.5を超えないもの、
に基づき、
ならびにモル比b/(a+c)が0.25から3/1の範囲にある、脂肪酸アミド。
【請求項2】
前記脂肪酸アミドが、一酸d)に基づく脂肪酸基を各末端に担持する少なくとも1つのジアミドを含み、前記ジアミドは、式d−b−a−d、d−b−a−b−d、d−a−dによって表すことができ、ならびに前記ジアミンc)が存在する場合には、式d−c−dとしても表わすことができる、請求項1に記載の脂肪酸アミド。
【請求項3】
前記一酸e)が存在すること、および前記脂肪酸アミドが、式d−b−a−d、d−b−a−b−d、e−b−a−d、e−b−a−b−d、e−b−a−e、e−b−a−b−e、d−a−d,d−a−e、e−a−eによって表すことができ、ならびに前記ジアミンc)が存在する場合には、式e−c−e、d−c−d、d−c−eとしても表すことができるジアミド少なくとも3つを含む、請求項1または2に記載の脂肪酸アミド。
【請求項4】
前記一酸d)が、12−ヒドロキシステアリン酸である、請求項1から3のいずれか一項に記載の脂肪酸アミド。
【請求項5】
モル比b/(a+c)が、0.25から2/1である、請求項1から4のいずれか一項に記載の脂肪酸アミド。
【請求項6】
前記ジアミンa)が、芳香族ジアミンから選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の脂肪酸アミド。
【請求項7】
前記アミンa)が、キシレンジアミン、またはトルイレンジアミンからの芳香族ジアミンである、請求項6に記載の脂肪酸アミド。
【請求項8】
前記ジアミンが、キシレンジアミンである、請求項7に記載の脂肪酸アミド。
【請求項9】
前記一酸d)が、前記一酸e)の不存在下、12−ヒドロキシステアリン酸である、請求項6から8のいずれか一項に記載のアミド。
【請求項10】
前記一酸e)の存在下、前記一酸d)が12−ヒドロキシステアリン酸である、請求項6から8のいずれか一項に記載のアミド。
【請求項11】
前記ジアミンc)が存在する、請求項1から10のいずれか一項に記載のアミド。
【請求項12】
以下の連続的な工程:
i)前記ジアミンa)と、前記ラクタムまたはアミノ酸b)との反応によりb)で変性されたジアミンa)の生成、
ii)前記一酸e)の存在下もしくは不存在下、および前記ジアミンc)の存在下もしくは不存在下、工程i)からの生成物と前記一酸d)との反応、
を含む少なくとも様式A)を含むかまたは少なくとも様式A)に従って行われる、請求項1から10のいずれか一項に記載のアミドの製造方法。
【請求項13】
前記方法が、様式A)に従って行われ、前記成分b)がラクタムであり、および前記アミンa)との前記反応が、アニオン開始剤として前記ジアミンを使用する前記ラクタムb)のアニオン性オリゴマー化である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
以下の連続的な工程:
i’)前記一酸d)または一酸e)が存在する場合には、任意の前記一酸e)と、前記ラクタムもしくはアミノ酸b)との反応により、b)で変性された対応する一酸の生成、
ii’)前記ジアミンc)の存在下もしくは不存在下、および前記工程i’)からの前記一酸が前記一酸d)である場合、この場合において、前記一酸e)の存在下もしくは不存在下、あるいは、前記工程i’)からの前記一酸が一酸e)である場合、この場合において、前記一酸d)の存在下、前記工程i’)から生成した前記変性された一酸と、前記ジアミンa)との反応、
を含む少なくとも様式B)を含むかまたは少なくとも様式B)に従って行われる、請求項1から10のいずれか一項に記載のアミドの製造方法。
【請求項15】
前記一酸e)が存在し、
以下の連続的な工程:
i’)前記一酸e)と、前記ラクタムもしくはアミノ酸b)との反応によりb)で変性された一酸e)の生成、
ii’)前記ジアミンc)の存在下もしくは不存在下、工程i’)で生成した前記変性された一酸と、前記ジアミンa)および前記一酸d)との反応、
を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項1から11のいずれか一項に記載の、少なくとも1つのアミドを含む、または前記少なくとも1つのアミドからなる、有機ゲル化剤。
【請求項17】
少なくとも1つの極性有機溶媒を含む有機溶媒中で予備活性化形態である、請求項16に記載の有機ゲル化剤。
【請求項18】
請求項1から11のいずれか一項に記載の少なくとも1つのアミド、または請求項16もしくは17に記載の有機ゲル化剤を含む、有機バインダー組成物。
【請求項19】
組成物が、コーティング組成物、またはゲルコート組成物、接着もしくは粘着組成物、剥離剤、マスチックもしくはシーリング組成物、成形組成物または化粧料組成物である、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
有機ゲル化剤としての、請求項1から11のいずれか一項に記載のアミドの使用。
【請求項21】
コーティング、接着もしくは粘着組成物、マスチック、剥離剤もしくはシーラント、成形組成物または化粧料組成物に関係する、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
請求項1から11のいずれか一項に記載の少なくとも1つのアミドを含む、コーティング剤、マスチック、シーラント、剥離剤、成形部品、化粧料または接着もしくは粘着シールから選択される、最終製品。
【請求項23】
前記ヒドロキシル化脂肪族C18またはC20一酸が、12−ヒドロキシステアリン酸または14−ヒドロキシエイコサン酸から選択される、請求項1に記載の脂肪酸アミド。
【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
本発明は、組成においてジアミンに対する特定比のラクタムまたはアミノ酸を含む特定組成のアミド、その製造方法および種々の用途、例えばコーティング、マスチック、シーラント、成形または化粧料組成物中での有機ゲル化剤またはレオロジー添加剤としてのアミドの使用に関する。これらのジアミドは、高温で特別の挙動を示す性能を有し、特に高温で、好ましくは少なくとも60℃の温度で、より好ましくは少なくとも70℃の温度でたれ抵抗の挙動を有する。
【0002】
これは、本発明のアミド添加剤が高温安定性を有すると同時に、より高温での前記アミドの活性化のため、より高温での使用を要求する用途系におけるその使用を可能にするからである。特に、本発明のジアミドによって活性化および温度安定性ならびに少なくとも60℃の温度での使用が可能となる。
【0003】
さらに、本発明は、ジアミドの末端(脂肪)基についてはよく制御された微細構造のジアミドを有するように、再現性がありおよび微細構造を制御しならびにその結果としてのレオロジー性能を有するように、その実施において実用的な特定の方法を使用することによって、前記ラクタムまたはアミノ酸の微細な取り込みを可能にする。
【0004】
本発明は、第1に特定組成を有するアミドに関する。
【0005】
本発明の第2の主題は、様式A)または様式B)による2つの代替様式を有する製造方法である。
【0006】
本発明の他の主題は、本発明による少なくとも1つのアミドを含む、または前記少なくとも1つのアミドからなる、有機ゲル化剤、特にレオロジー添加剤である。
【0007】
有機ゲル化剤として、特にレオロジー添加剤として本発明のアミドを含む有機バインダー組成物、この目的のための前記アミドの使用およびこうして得られた最終製品もまた包含されている。
【発明を実施するための形態】
【0008】
したがって、本発明の第1の主題は、脂肪酸アミドであって、
a)芳香族、脂環式または直鎖C
2からC
10脂肪族ジアミンから選択される第一級ジアミン、
b)C
3からC
12ラクタムまたはアミノ酸、好ましくはC
3からC
12ラクタム、より好ましくはC
4からC
9ラクタム、さらにより好ましくはC
6ラクタム、
c)任意の、前記ジアミンa)とは異なる第2の第一級ジアミンであって、好ましくは直鎖C
2からC
10脂肪族ジアミンから選択されるもの、
d)ヒドロキシル化脂肪族一酸、好ましくはC
18またはC
20ヒドロキシル化脂肪族一酸、より好ましくは12−ヒドロキシステアリン酸または14−ヒドロキシエイコサン酸、好ましくは12−ヒドロキシステアリン酸、
e)任意の、直鎖C
6からC
12脂肪酸、特に、C
6からC
10脂肪酸から選択される非ヒドロシリル化一酸であって、前記一酸d)に対する前記一酸e)のモル比であるe/dが、好ましくは0.5を超えないもの、
に基づき(上記反応によって得られることを意味する)、ならびにモル比b/(a+c)が0.25から3/1の範囲にあり、好ましくは0.25から2/1、さらに好ましくは0.35から2/1の範囲にある、脂肪酸アミドである。
【0009】
好ましくは、本発明のアミドの構造において、ラクタムまたはアミノ酸b)から生じる繰り返し単位を有する、鎖延長によるオリゴアミドの可能な形成は、前記繰り返し単位の数が3を超えない、好ましくは3未満、より好ましくは1から2の範囲に限定される。
【0010】
前記モル比b/(a+c)におけるc)は、前記ジアミンc)が存在する場合にのみ考慮され、それ以外では、この比はb/aとなることに留意すべきである。
【0011】
本発明の具体的な選択肢によれば、前記脂肪酸アミドは、式d−b−a−d、d−b−a−b−d、d−a−dによって表すことができ、ならびに前記ジアミンc)が存在する場合には、d−c−dとしても表すことができる、一酸d)に基づく脂肪酸基を各末端に担持する少なくとも1つのジアミドを含む。
【0012】
より具体的には、前記一酸e)が存在する場合には、前記アミドは、式d−b−a−d、d−b−a−b−d、e−b−a−d、e−b−a−b−d、e−b−a−e、e−b−a−b−e、d−a−d,d−a−e、e−a−eによって表すことができ、ならびに前記ジアミンc)が存在する場合には、式e−c−e、d−c−d、d−c−eとしても表すことができるジアミド少なくとも3つを含む。
【0013】
C
18またはC
20の一酸d)として、12−ヒドロキシステアリン酸(12−HSA)、9−ヒドロキシステアリン酸(9−HSA)および/または10−ヒドロキシステアリン酸(10−HSA)または14−ヒドロキシエイコサン酸(14−HEA)を挙げることができ、12−ヒドロキシステアリン酸(12−HSA)および14−ヒドロキシエイコサン酸(14−HEA)が好ましく、12−ヒドロキシステアリン酸(12−HSA)が最も好ましい。前記ヒドロキシル化一酸が、言及された前記一酸の少なくとも2つの混合物であってもよい。
【0014】
ジアミンa)は第一級アミンである。前記ジアミドのジアミン成分a)の適切で好ましい直鎖脂肪族ジアミンの例として、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン(即ち、テトラメチレンジアミン)、ペンタメチレンジアミンまたはヘキサメチレンジアミンを挙げることができ、好ましくはエチレンジアミンまたはヘキサメチレンジアミンである。
【0015】
成分a)のさらに適切な脂環式ジアミンの例として、シクロヘキサン−1,3−ジアミン、シクロヘキサン−1,4−ジアミンおよびシクロヘキサン−1,2−ジアミンを挙げることができ、特にシクロヘキサン−1,3−ジアミンまたはシクロヘキサン−1,4−ジアミン、イソホロンジアミン、1,3−、1,4−もしくは1,2−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(それぞれ、m−、p−、もしくはo−キシレンジアミンの水素添加反応から生じる)、好ましくは1,3−もしくは1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、デカヒドロナフタレンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン(BMACM)もしくはビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン(BACM)または1−{[4−(アミノメチル)シクロヘキシル]オキシ}プロパン−2−アミンを挙げることができる。好ましい脂環式ジアミンは、シクロヘキサン−1,3−ジアミン、シクロヘキサン−1,4−ジアミン、1,3−、1,4−もしくは1,2−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミンおよびビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンから選択される。
【0016】
前記ジアミドの成分a)としての芳香族ジアミンの適切で好ましい例として、キシレンジアミン、好ましくはm−、もしくはp−キシレンジアミン;フェニレンジアミン、好ましくはm−もしくはp−フェニレンジアミン;またはトルイレンジアミン、好ましくはm−もしくはp−トルイレンジアミンを挙げることができる。
【0017】
前記ジアミドのジアミン成分c)に好ましい適切な直鎖脂肪族ジアミンの例として、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン(即ち、テトラメチレンジアミン)、ペンタメチレンジアミンまたはヘキサメチレンジアミンを挙げることができ、エチレンジアミンまたはヘキサメチレンジアミンが好ましい。
【0018】
成分b)は、C
3からC
12ラクタム、すなわち、環内に2から11個の炭素原子およびアミド−CO
2NH−基を有する環であってもよく、ここで、b)が等価のアミノ酸であってもよく、ラクタムと等価であるが、環状構造の代わりに直鎖を形成していてもよい。成分b)は好ましくはラクタムであり、特にC
4からC
9ラクタム、さらに好ましくはカプロラクタムなどのようなC
6ラクタムである。
【0019】
一酸e)の例として、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸またはドデカン酸(即ち、ラウリン酸)を挙げることができる。以下の酸:ヘキサン酸、オクタン酸、ノナン酸およびデカン酸が好ましい。
【0020】
好ましくは、ジアミンa)および任意のc)ならびにラクタムもしくはアミノ酸b)との間のモル比b/(a+c)では、特にラクタムb)が、0.25から2/1に変化し、さらに好ましくは0.35から2/1に変化する。
【0021】
具体的な選択肢によれば、本発明の前記脂肪酸アミドは、ジアミンa)として、芳香族ジアミンから選択されるジアミンを有し、さらに好ましくは、この場合において、前記ジアミンa)がキシレンジアミン、好ましくはm−もしくはp−キシレンジアミン;フェニレンジアミン、好ましくはm−もしくはp−フェニレンジアミン;またはトルイレンジアミン、好ましくはm−もしくはp−トルイレンジアミンからの芳香族ジアミンである。さらに特には、前記芳香族ジアミンa)が、キシレンジアミン、好ましくはm−もしくはp−キシレンジアミンであり、さらに好ましくはm−キシレンジアミンである。この選択肢において、さらに特定の場合には、前記ヒドロキシル化一酸d)、すなわちC
18またはC
20ヒドロキシ酸(即ち、ヒドロキシル化一酸)は、前記一酸e)の不存在下で12−ヒドロキシステアリン酸(12−HSA)である。他のもう一つの選択肢によれば、好ましくはヘキサン酸、オクタン酸、ノナン酸またはデカン酸から選択される前記一酸e)の存在下で、前記一酸d)(C
18またはC
20ヒドロキシ酸)は、12−ヒドロキシステアリン酸(12−HSA)である。
【0022】
さらに特には、c)が存在する場合には、前記ジアミンa)およびジアミンc)は、芳香族ジアミンa)および直鎖脂肪族ジアミンc)からなるジアミンの混合物に、または脂環式ジアミンa)および直鎖脂肪族ジアミンc)の混合物に、対応する、もしくはその形態であることができる。
【0023】
本発明による前記アミドはまた、以下:
様式A)による:
i)前記ジアミンa)と、前記ラクタムまたはアミノ酸b)、好ましくはラクタムb)との反応によりb)で変性されたジアミンa)の生成、
ii)前記一酸e)の存在下もしくは不存在下、および前記ジアミンc)の存在下もしくは不存在下、工程i)の生成物と前記一酸d)との反応、または
様式B)による:
i’)前記一酸d)または一酸e)が存在する場合には、任意の前記一酸e)と、前記ラクタムもしくはアミノ酸b)、好ましくはラクタムb)との反応により、b)で変性された対応する一酸の生成、
ii’)前記ジアミンc)の存在下もしくは不存在下、および前記工程i’)からの前記一酸が前記一酸d)である場合、この場合において、前記一酸e)の存在下もしくは不存在下、あるいは、工程i’)からの前記一酸が一酸e)である場合、この場合において、前記一酸d)の存在下、前記工程i’)から(生成した)前記変性された一酸と、前記ジアミンa)との反応、
の連続的な反応工程を含む、様式A)またはB)により定義される方法を介して得ることができる生成物として定義することもできる。
【0024】
様式B)による本発明のアミドの定義の具体的な選択肢によれば、前記一酸e)は以下:
i’)前記一酸e)と前記ラクタムもしくはアミノ酸b)、好ましくはラクタムb)との反応によりb)で変性された一酸e)の生成、
ii’)前記ジアミンc)の存在下もしくは不存在下、前記工程i’)で生成した前記変性一酸と前記ジアミンa)および前記一酸d)との反応、
の連続的な反応工程に存在する。
【0025】
本発明の第2の主題は本発明の上記で定義したアミドの製造のための対応方法であって、少なくとも様式A)または様式B)を含み、あるいはこれに従って実行され、そして上記のおよび以下の連続的な反応工程を含む。
【0026】
様式A)による方法は以下の連続的な工程:
i)前記ジアミンa)と、前記ラクタムまたはアミノ酸b)、好ましくはラクタムb)との反応によりb)で変性されたジアミンa)の生成、
ii)前記一酸e)の存在下もしくは不存在下、および前記ジアミンc)の存在下もしくは不存在下、工程i)からの生成物と前記一酸d)との反応、
を含む。
【0027】
さらに具体的には、様式A)による前記方法において、前記成分b)がラクタムであり、前記アミンa)との前記反応は、アニオン開始剤として前記アミンを使用する前記ラクタムb)のアニオン性オリゴマー化である。このケースは、モル比がb/(a+c)<1についてとりわけ有効である。
【0028】
様式B)による方法は、以下の連続的な工程:
i’)前記一酸d)または一酸e)が存在する場合には、任意の前記一酸e)と、前記ラクタムもしくはアミノ酸b)、好ましくはラクタムb)との反応により、b)で変性された対応する一酸の生成、
ii’)前記ジアミンc)の存在下もしくは不存在下、および前記工程i’)からの前記一酸が前記一酸d)である場合、この場合において、前記一酸e)の存在下もしくは不存在下、あるいは、前記工程i’)からの前記一酸が一酸e)である場合、この場合において、前記一酸d)の存在下、前記工程i’)から(生成した)前記変性された一酸と、前記ジアミンa)との反応、
を含む。
【0029】
様式B)による、この方法の最初の選択肢によれば、前記一酸e)が存在し、そして前記方法は以下:
i’)前記一酸e)と、前記ラクタムもしくはアミノ酸b)、好ましくはラクタムb)との反応によりb)で変性された一酸e)の生成、
ii’)前記ジアミンc)の存在下もしくは不存在下、工程i’)で生成した前記変性された一酸と、前記ジアミンa)および前記一酸d)との反応、
の連続的な反応工程を含む。
【0030】
本発明の他の主題は有機ゲル化剤であり、有機ゲル化剤は、本発明による上記の少なくとも1つのアミド、または本発明による上記の方法により得られる少なくとも1つのアミドを含む、または上記少なくとも1つのアミドからなる。さらに具体的には、有機ゲル化剤は、有機溶媒中で、好ましくは少なくとも1つの極性有機溶媒を含む有機溶媒中で、予備活性化された形態で存在する。
【0031】
本発明はまた有機バインダー組成物も包含しており、前記有機バインダー組成物は、本発明の上記で定義されるような少なくとも1つのアミドまたは有機ゲル化剤を含む。
【0032】
好ましくは、この組成物はコーティング組成物、特にペイント、ワニス、インク、もしくはゲルコート組成物、接着もしくは粘着組成物、剥離剤、マスチックもしくはシーリング組成物、成形組成物または化粧料組成物である。
【0033】
本発明はまた、有機ゲル化剤としての、または特に有機溶媒媒体中のレオロジー添加剤としての、より具体的にはコーティング、接着もしくは粘着組成物、剥離剤、マスチックもしくはシーラント組成物、成形組成物または化粧料組成物における、前記アミドの使用を包含する。
【0034】
最後に、本発明は、本発明により定義される少なくとも1つのアミドを含む、コーティング剤、マスチックもしくはシーラントまたは剥離剤、成形部品または化粧料、接着もしくは粘着シールから選択される最終製品を包含する。
【0035】
以下の実施例は、本発明の実例により表わされ、本発明の範囲をなんら制限することなく実施される。
【実施例】
【0036】
I.使用した出発物質
【0037】
【表1】
【0038】
II.使用した方法および試験
2種類の試験:流動抵抗(またはたれ抵抗)試験および異なる速度での粘度試験の評価により配合物を評価する。
【0039】
流動抵抗試験
流動抵抗試験は、重力によるたれに対するコーティングの抵抗を確認することができるたれテスター(シーンインストルメント製のレベリング/たれ落ちテスター)を使用して行う。これはストレイトブレイドを有するステンレス鋼で製造され、測定値を大きくするノッチを備えている。
【0040】
試験は、たれテスターを使用してコントラストストリップ上に異なる厚さのストリップペイントを並列に配置する。コントラストチャートを直ちに垂直位置に、最も薄いフィルムを上にして配置する。ストリップペイントが合流する厚さはたれ傾向を示す。
【0041】
粘度評価
ブルックフィールド(R)RVを用いて25℃(スピンドル:S4)で行う。スピンドルの速度は50RPM(すなわち、rpm,1分当たりの回転数)にセットして、各ペイントの粘度は粘度が安定してから測定する。操作を、20RPM,10RPM,5RPMまたは1RPMの速度で繰返し行う。
【0042】
III.有機ゲル化剤およびレオロジー添加剤としてのジアミドの製造および特性
本発明の前記様式A)による(m)−キシレンジアミン/カプロラクタム予備縮合物の合成
272gのメタ−(m)−キシレンジアミン(即ち、2モルのジアミンまたは4当量のアミンY−NH)、226gのカプロラクタム(即ち、2モル)および0.8gのBorchikat(R)22を、窒素雰囲気下で、温度計、ディーンスターク装置、冷却管、および攪拌機を備えた0.5L丸底フラスコのなかに入れる。
【0043】
混合物を窒素流下で、250℃に加熱する。アミノリシスによる開環反応は粘度観察によって追跡する。8時間後、粘度は安定になり、そして反応混合物を150℃に冷却し、次いで排出する。
【0044】
[実施例1]
m−キシレンジアミン/カプロラクタム予備縮合物およびヘキサメチレンジアミンに基づくジアミド
64.4gのm−キシレンジアミン/カプロラクタム予備縮合物(即ち、0.25モルまたは0.5当量のアミン、初めに0.25モルのm−XDAが0.25モルのカプロラクタムと反応したことに対応する予備縮合物0.25モル)、63.8gのヘキサメチレンジアミン(即ち、0.25モル、0.5当量のアミン)、および315.2gの12−ヒドロキシステアリン酸(1.00モル、1.00当量カルボキシ)を、窒素雰囲気下で、温度計、ディーンスターク装置、冷却管および攪拌機を備えた1Lの丸底フラスコの中に入れる。
【0045】
混合物を窒素流下、200℃に加熱する。除去した水が、150℃からディーンスターク装置の中でたまり始める。酸価およびアミン価により反応を追跡する。酸価およびアミン価が10mgKOH/g未満である場合には、反応混合物を150℃に冷却し、次いでシリコーン成形器に排出する。周辺温度に冷却したら、生成物を粉砕および篩にかけて機械的に微粉化して、得られた平均粒径が7μである、微細で制御されたサイズの粒径が得られる。
【0046】
IV−ペイント配合物のレオロジー性能の評価
評価に使用したペイント配合物
1−調製
表3の割合で以下のようにミルベース配合物を調製する。
ジャケットシステムによって加熱した分散ボール(ディスパーミル(R)2075イエローライン、供給者:エリクセン)において、
1. エポキシ結合剤および分散剤ならびに消泡剤の導入。2分後、800回転/分(rpm)で均一化が起きる。
2. 充填剤および顔料、次いで7cmブレードを用いて3000回転/分で、30分間粉砕する。ジャケットボールにより、この工程は冷水浴(20℃)で冷却される
3. 溶媒の導入
【0047】
2−活性化
ミルベースの調製の24時間後、4cmブレードを用いて3000回転/分、該配合物を再度分散させる。所与の活性化温度(40℃から70℃まで変化する)で3000回転/分で20分間にわたって各ジアミドを導入する。
【0048】
ミルベースに希釈した硬化剤(表
3)を添加後、キシレン/ブタノール(1/1)混合物でペイントを0.4Pa.s(ブルックフィールド(R)CAP1000を用いて25℃においてコーン4の上で、2500s
−1で測定した)に調整する。硬化剤と溶媒混合物との間の割合を表
3で定義する。
【0049】
調整後、ペイントを1500回転/分、2分間混合し、次いで30分間静置する。
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】
【0052】
3−配合物のレオロジーの評価と結果
表2および表3の割合に従い、上述のプロトコルにより60℃の活性化温度でペイント配合物を調製した。
【0053】
たれ抵抗の結果(表4)およびレオロジー結果(表5)には、本発明による実施例1のジアミドがいったん60℃に活性化されると、配合物に対するチキソトロピー効果および良好なたれ抵抗を有することが示されている。
【0054】
【表4】
【0055】
【表5】