特許第6283416号(P6283416)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許62834162,2,6−トリメチルシクロヘキサンカルボン酸の誘導体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6283416
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】2,2,6−トリメチルシクロヘキサンカルボン酸の誘導体
(51)【国際特許分類】
   C07C 69/75 20060101AFI20180208BHJP
   C07C 323/12 20060101ALI20180208BHJP
   A23G 3/34 20060101ALI20180208BHJP
   A23G 4/00 20060101ALI20180208BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20180208BHJP
   A23L 2/02 20060101ALI20180208BHJP
   A23L 5/42 20160101ALI20180208BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20180208BHJP
   A61K 8/46 20060101ALI20180208BHJP
   A61Q 1/04 20060101ALI20180208BHJP
   A61Q 5/02 20060101ALI20180208BHJP
   A61Q 5/12 20060101ALI20180208BHJP
   A61Q 9/02 20060101ALI20180208BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20180208BHJP
   A61Q 13/00 20060101ALI20180208BHJP
   A61Q 15/00 20060101ALI20180208BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
   C07C69/75 ZCSP
   C07C323/12
   A23G3/34 101
   A23G4/00
   A23L2/00 B
   A23L2/02
   A23L5/42
   A61K8/37
   A61K8/46
   A61Q1/04
   A61Q5/02
   A61Q5/12
   A61Q9/02
   A61Q11/00
   A61Q13/00 101
   A61Q15/00
   A61Q19/10
【請求項の数】15
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2016-529811(P2016-529811)
(86)(22)【出願日】2014年7月21日
(65)【公表番号】特表2016-532682(P2016-532682A)
(43)【公表日】2016年10月20日
(86)【国際出願番号】US2014047406
(87)【国際公開番号】WO2015013184
(87)【国際公開日】20150129
【審査請求日】2017年4月4日
(31)【優先権主張番号】61/856,794
(32)【優先日】2013年7月22日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000169466
【氏名又は名称】高砂香料工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダニエルス,タリア,エス.
(72)【発明者】
【氏名】ブランディーノ,モーリーン
(72)【発明者】
【氏名】ランキン,マイケル,イー.
【審査官】 阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平5−112494(JP,A)
【文献】 特開昭55−27188(JP,A)
【文献】 Infographic: Table of Esters and their Smells,[online],2013年12月13日,[検索日2017年10月11日],インターネット,<URL: http://jameskennedymonash.wordpress.com/2013/12/13/infographic-table-of-esters-and-their-smells/>
【文献】 Chemical Senses,1999年,Vol.24, No.2,p.161-170
【文献】 FLAVOUR AND FRAGRANCE JOURNAL,2004年,Vol.19, No.2,p.121-133
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 69/75
A23G 3/34
A23G 4/00
A23L 2/00
A23L 2/02
A23L 5/42
A61K 8/37
A61K 8/46
A61Q 1/04
A61Q 5/02
A61Q 5/12
A61Q 9/02
A61Q 11/00
A61Q 13/00
A61Q 15/00
A61Q 19/10
C07C 323/12
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物、その立体異性体又はそれらの混合物。:
【化1】
式中、Rはアリルである。
【請求項2】
前記化合物が(1R,6S)−2,2,6−トリメチルシクロヘキサンカルボン酸アリルである、請求項に記載の化合物。
【化2】
【請求項3】
(1R,6S)体である式(Ic)の化合物。
【化3】
式中、Rは3−(メチルチオ)ヘキシル、3−ヘキセニル、プロパルギル、2−(エチルチオ)エチル、シクロプロピルメチル又はシクロペンチルである。
【請求項4】
(1S,6R)体である式(Id)の化合物。
【化4】
式中、Rはアリルである。
【請求項5】
以下を含む香料組成物。:
.式(I)の化合物、その立体異性体又はそれらの混合物:
【化5】

式中、Rはアリルである;及び、
b.1つ以上の追加の香料成分。
【請求項6】
式(I)の化合物が、(1R,6S)−2,2,6−トリメチルシクロヘキサンカルボン酸アリルである、請求項に記載の香料組成物。
【請求項7】
食物、飲料、菓子、オーラルケア製品、医薬品及びゼラチン様材料から成る群から選択される製品の中に含まれる香料組成物である、請求項又はに記載の香料組成物。
【請求項8】
前記製品が、アルコール飲料、ソフトドリンク、ジュース、紅茶及びフレーバー水から成る群から選択される飲料である、請求項に記載の香料組成物。
【請求項9】
前記製品が、キャンディ及びガムから成る群から選択される菓子である、請求項に記載の香料組成物。
【請求項10】
前記製品が、練り歯磨き及び口内洗浄剤から成る群から選択されるオーラルケア製品である、請求項に記載の香料組成物。
【請求項11】
以下を含むフレグランス組成物。:
.式(I)の化合物、その立体異性体又はそれらの混合物:
【化6】
式中、Rはアリルである;及び、
b.1つ以上の追加のフレグランス成分。
【請求項12】
前記式(I)の化合物が、(1R,6S)−2,2,6−トリメチルシクロヘキサンカルボン酸アリルである、請求項11に記載のフレグランス組成物。
【請求項13】
香水、コロン、消臭スプレー、キャンドル、パーソナルケア製品、化粧品、洗剤、ファブリックケア製品及び家庭用洗剤から成る群から選択される製品の中に含まれるフレグランス組成物である、請求項11又は12に記載のフレグランス組成物。
【請求項14】
前記製品が、石鹸、デオドラント、シャンプー、コンディショナー、シャワージェル及びシェービングローションから成る群から選択されるパーソナルケア製品である、請求項13に記載のフレグランス組成物。
【請求項15】
前記製品が、クリーム、ローション、軟膏、オイル、スプレー、パウダー、ゲル、ポリッシュ及び口紅から成る群から選択される化粧品である、請求項13に記載のフレグランス組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレグランス及び香料の分野で使用される化合物や、その化合物を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
合成フレグランス及び合成香料の製造や、その消費者向製品への使用には継続的な重要性がある。特にダマスコンに類似する香料の性質を有する化合物が必要とされている。ダマスコン(アルファ、ベータ、ガンマ及びデルタ異性体)は、フレグランス及び香料における産業において重要な香り成分であり、高い拡散性で、独特のフルーティーノート、グリーンノート及びフローラルノートを与える。ダマスコンは構造的にα,β−不飽和ケトン基を含み、そのため皮膚感作物質としての警告をうけている。現在、フレグランス及び香料におけるダマスコンの使用は高度に制限されている。ダマスコンの代替物の必要性は産業にとって重要な事柄である。
【0003】
本発明の化合物は、2,2,6−トリメチルシクロヘキサンカルボン酸の誘導体である。2,2,6−トリメチルシクロヘキサンカルボン酸の誘導体の炭素骨格はダマスコンの炭素骨格と類似する。しかし、問題となっているダマスコンのα,β−不飽和ケトン基は、エステル、無水物又は炭酸アシル基で置換されている。
【0004】
2,2,6−トリメチルシクロヘキサンカルボン酸のエステル及び他の誘導体は文献的にほとんど知られていない。シスメチルエステルは、特許文献1や非特許文献1に記載のように製造されている。トランスメチルエステルは製造されている(非特許文献2参照)。エチルエステルもまた以前に特許文献に記載されている(特許文献2参照)。特許文献3は、本発明の化合物と比べるとシクロヘキシル環部分にさらに炭素を有する2,2,5,6−テトラメチルシクロヘキサンカルボン酸及び6−エチル−2,2−ジメチルシクロヘキサンカルボン酸の芳香性エステルを開示している。
【0005】
本発明の化合物は、フレグランス及び/又は香料以外の使用について特許文献4、特許文献5及び特許文献6に記載されたtert−ブチル−2,2,6−トリメチルシクロヘキサン−カルボン酸を除いて、他では文献に記載されていない。実際、本発明が開示する化合物は、いずれも当技術分野においてフレグランス及び/又は香料としての使用について他では記載されていない。特許文献4、特許文献5及び特許文献6は、エナンチオリッチな形ではなく、ラセミ体のtert−ブチル−2,2,6−トリメチルシクロヘキサンカルボン酸を開示している。
【0006】
本発明の化合物は、いくつかの合成経路で製造できる。本発明の化合物は、酸塩化物中間体を介し、対応するアルコール又はハロゲン化アルキルと反応させることによって、それらのカルボン酸前駆体から製造できる。Shiveらはこの方法を用いて、2,2,6−トリメチルシクロヘキサンカルボン酸のメチルエステルを製造した(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許出願公開第920354号明細書
【特許文献2】米国特許第5,288,702号明細書
【特許文献3】米国特許第4,439,353号明細書
【特許文献4】特開2003−241366号公報
【特許文献5】特開平11−029529号公報
【特許文献6】特開平11−029528号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Helv.Chim.Acta.1973,2548−2567
【非特許文献2】J.Am.Chem,Soc.1942,385−389
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、化合物、香料組成物及びフレグランス組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
ひとつの実施態様では、本発明は式(I)の化合物を提供する:
【0011】
【化1】
【0012】
式中、Rは非置換もしくは置換のC−C直鎖アルキル、非置換もしくは置換のC−C分岐鎖アルキル、非置換もしくは置換のC−C直鎖アルケニル、非置換もしくは置換のC−C分岐鎖アルケニル、非置換もしくは置換のC−C直鎖アルキニル、非置換もしくは置換のC−C分岐鎖アルキニル、非置換もしくは置換のC−Cシクロアルキル、非置換もしくは置換のC−Cシクロアルケニル、非置換もしくは置換のC−Cアルキルアルコキシ、非置換もしくは置換のC−Cアルキル(アルキルチオ)、非置換もしくは置換のアリール、非置換もしくは置換のベンジル、非置換もしくは置換のナフチル、非置換もしくは置換の非芳香族複素環、非置換もしくは置換のヘテロアリール、非置換もしくは置換のC−Cアシル、又は、非置換もしくは置換のカルボキシであり、立体異性体及びそれらの混合物を含む。
【0013】
ひとつの実施態様では、本発明は式(Ib)の化合物(その立体異性体及び混合物を含む。)を提供する。:
【0014】
【化2】
【0015】
式(Ib)の化合物は、Rがアリルである式(I)の化合物である。ひとつの実施態様では、化合物は(1R,6S)−2,2,6−トリメチルシクロヘキサンカルボン酸アリルである。
【0016】
ひとつの実施態様では、本発明は式(Ic)の化合物を提供する。:
【0017】
【化3】
【0018】
式中、Rは非置換もしくは置換のC−C直鎖アルキル、非置換もしくは置換のC−C分岐鎖アルキル、非置換もしくは置換のC−C直鎖アルケニル、非置換もしくは置換のC−C分岐鎖アルケニル、非置換もしくは置換のC−C直鎖アルキニル、非置換もしくは置換のC−C分岐鎖アルキニル、非置換もしくは置換のC−Cシクロアルキル、非置換もしくは置換のC−Cシクロアルケニル、非置換もしくは置換のC−Cアルキルアルコキシ、非置換もしくは置換のC−Cアルキル(アルキルチオ)、非置換もしくは置換のアリール、非置換もしくは置換のベンジル、非置換もしくは置換の非芳香族複素環、非置換もしくは置換のヘテロアリール、非置換もしくは置換のC−Cアシル、又は、非置換もしくは置換のカルボキシであり、それらの混合物を含む。
【0019】
ひとつの実施態様では、本発明は式(Id)の化合物を提供する。:
【0020】
【化4】
【0021】
式中、Rは非置換もしくは置換のC−C直鎖アルキル、非置換もしくは置換のC−C分岐鎖アルキル、非置換もしくは置換のC−C直鎖アルケニル、非置換もしくは置換のC−C分岐鎖アルケニル、非置換もしくは置換のC−C直鎖アルキニル、非置換もしくは置換のC−C分岐鎖アルキニル、非置換もしくは置換のC−Cシクロアルキル、非置換もしくは置換のC−Cシクロアルケニル、非置換もしくは置換のC−Cアルキルアルコキシ、非置換もしくは置換のC−Cアルキル(アルキルチオ)、非置換もしくは置換のアリール、非置換もしくは置換のベンジル、非置換もしくは置換の非芳香族複素環、非置換もしくは置換のヘテロアリール、非置換もしくは置換のC−Cアシル、又は、非置換もしくは置換のカルボキシであり、それらの混合物を含む。
【0022】
また、本発明は香料組成物を提供する。代表的な香料組成物は、上で定義されるような式(I)の化合物を1つ以上含む。該組成物はさらに1つ以上の追加の香料成分を含むことができる。該香料組成物は、(1R,6S)−2,2,6−トリメチルシクロヘキサンカルボン酸アリルを含むことができる。ひとつの実施態様では、該香料組成物は、1つ以上の、食物、飲料、菓子、オーラルケア製品、医薬品、及び/又は、ゼラチン様材料である製品中に含むことができる。飲料は、1つ以上の、アルコール飲料、ソフトドリンク、ジュース、紅茶、及び/又は、フレーバー水でもよい。菓子は、1つ以上の、キャンディ及び/又はガムでもよい。オーラルケア製品は、1つ以上の、練り歯磨き及び/又は口内洗浄剤でもよい。
【0023】
また、本発明はフレグランス組成物を提供する。代表的なフレグランス組成物は、上で定義されるような式(I)の化合物を1つ以上含む。該組成物はさらに1つ以上の追加のフレグランス成分を含むことができる。該フレグランス組成物は、(1R,6S)−2,2,6−トリメチルシクロヘキサンカルボン酸アリルを含むことができる。ひとつの実施態様では、該フレグランス組成物は、1つ以上の、香水、コロン、消臭スプレーもしくは他の空気ケア組成物、キャンドル、パーソナルケア製品、化粧品、洗剤、ファブリックケア製品、及び/又は、家庭用洗剤である製品中に含むことができる。パーソナルケア製品は、1つ以上の、石鹸、デオドラント、シャンプー、コンディショナー、シャワージェル、及び/又は、シェービングローションでもよい。化粧品は、1つ以上の、クリーム、ローション、軟膏、オイル、スプレー、パウダー、ゲル、ポリッシュ、及び/又は、口紅でもよい。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<詳細な説明>
用語「フレグランス」と「香料」の両方が本明細書に使用されているが、有用な芳香性を有する化合物が有用な風味特性を有することがあると理解すべきであり、また逆も同様である。したがって、用語「フレグランス」と「香料」は互いに排他的ではなく、むしろ「フレグランス」と「香料」の両方を包含することができる。「フレグランス組成物」又は「香料組成物」は芳香と香味の両方の性質を有することができ、「香料及びフレグランス組成物」と同義である。「フレグランス」は「アロマ」として知られている。
【0025】
本明細書に使用される用語「皮膚感作物質」は、皮膚への接触で、炎症、かゆみ、及び/又は、その他のアレルギーもしくは免疫応答を引き起こす可能性がある物質又は材料を意味する。
【0026】
本明細書に使用される用語「エナンチオリッチな」は、一方のエナンチオマーを他のものよりも多く含むキラル化合物のサンプルを意味する。例えば、化合物のエナンチオリッチなサンプルは、一方のエナンチオマーを60%、もう一方のエナンチオマーを40%含むことができ、又は、一方のエナンチオマーを70%、もう一方のエナンチオマーを30%含むことができ、又は、一方のエナンチオマーを80%、もう一方のエナンチオマーを20%含むことができ、又は、一方のエナンチオマーを90%、もう一方のエナンチオマーを10%含むことができる。化合物のエナンチオリッチなサンプルは、エナンチオマーを等量(50:50混合物)で含む化合物のラセミサンプルと区別できる。
【0027】
本明細書に使用される用語「アルキル」は、飽和脂肪族基を意味する。アルキル基は、直鎖(例えば、エチル、n−プロピル、n−ブチル)でもよいし、分岐鎖(例えば、i−プロピル、s−ブチル)でもよい。
【0028】
本明細書に使用される用語「アルケニル」は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合(C=C)を有する不飽和脂肪族基を意味する。アルケニル基は直鎖(例えば、アリル)でもよいし、分岐鎖(例えば、プレニル)でもよい。
【0029】
本明細書に使用される用語「アルキニル」は、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合(C≡C)を有する不飽和脂肪族基を意味する。アルキニル基は直鎖(例えば、プロパルギル)でもよいし、分岐鎖でもよい。
【0030】
本明細書に使用される用語「シクロアルキル」は、飽和脂肪族炭素環基を意味する。シクロアルキル基は1つ以上の環を含むことができる。非限定的な例として、シクロアルキル基にはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチルを含むことができる。
【0031】
本明細書に使用される用語「シクロアルケニル」は、少なくとも1個の炭素−炭素二重結合(C=C)を有する不飽和脂肪族炭素環基を意味する。シクロアルケニル基は1つ以上の環を含むことができる。
【0032】
本明細書に使用される用語「アルキルアルコキシ」は、1つ以上のアルコキシル基でさらに置換されたアルキル基を意味する。
【0033】
本明細書に使用される用語「アルコキシル」は、式−OR(式中、Rはアルキル基又はシクロアルキル基である)の部分を意味する。
【0034】
本明細書に使用される用語「アルキル(アルキルチオ)」は、1つ以上のアルキルチオ基でさらに置換されたアルキル基を意味する。
【0035】
本明細書に使用される用語「アルキルチオ」は、式−SR(式中、Rはアルキル基又はシクロアルキル基である)の部分を意味する。
【0036】
本明細書に使用される用語「アリール」は、不飽和の芳香族炭素環基を意味する。アリール基は1つ以上の環を含むことができる。非限定的な例として、アリール基にはフェニル基、ナフチル基、トリル基及びキシリル基を含むことができる。
【0037】
本明細書に使用される用語「ベンジル」は、式−CHPhの部分を意味する。
【0038】
本明細書に使用される用語「非芳香族複素環」は、炭素原子とヘテロ原子の両方を含む飽和又は不飽和の非芳香族基を意味する。非芳香族複素環基は1つ以上の環を含むことができる。ひとつの実施態様では、非芳香族複素環基は、1,2,3,4,5又は6つのヘテロ原子を含む、3,4,5,6,7又は8員の単環であってもよい。ひとつの実施態様では、非芳香族複素環基は二環系であってもよい。ヘテロ原子は、N、O及び/又はSであってもよい。非限定的な例として、非芳香族複素環基には、ピペラジニル、モルホリニル、ピロリジニル、オキセタニル、ピラゾリニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、ジヒドロフリル、テトラヒドロフリル、ピラニル、ジヒドロピラニル、テトラヒドロピラニル、ピペリジニル、2−オキソピペラジニル、2−オキソピペリジニル、2−オキソピロリジニル、2−オキサゼピニル、アゼピニル、ヘキサヒドロアゼピニル、テトラヒドロチオピラニル、チオモルホリニル、ジオキサニル、イソチアゾリジニル、チエタニル,チイラニル等を含むことができる。複素環基は、環に沿った置換に適切な任意の位置、例えば5員環の1−,2−,3−,4−又は5位もしくは6員環の1−,2−,3−,4−,5−又は6位で結合できる。
【0039】
本明細書に使用される用語「ヘテロアリール」は、炭素原子とヘテロ原子の両方を含む不飽和芳香環基を意味する。ヘテロアリール基は1つ以上の環を含むことができる。ひとつの実施態様では、ヘテロアリール基は、1,2,3又は4つのヘテロ原子を含む5又は6員の単環であってもよい。ヘテロ原子は、N、O及び/又はSであってもよい。非限定的な例として、ヘテロアリール基には、ピリジル,フラニル,チオフェニル,チアゾリル,イソチアゾリル,トリアゾリル,イミダゾリル,イソオキサゾリル,ピロリル,ピラゾリル,ピリミジニル,ベンゾフラニル,イソベンゾフラニル,ベンゾチアゾリル,ベンゾイソチアゾリル,ベンゾトリアゾリル,インドリル,イソインドリル,ベンゾオキサゾリル,キノリル,イソキノリル,ベンゾイミダゾリル,ベンゾイソオキサゾリル及びベンゾチオフェニル基を含むことができる。ヘテロアリール基は、環に沿った置換に適切な任意の位置、例えば5員環の1−,2−,3−,4−又は5位もしくは6員環の1−,2−,3−,4−,5−又は6位で結合できる。
【0040】
本明細書に使用される用語「アシル」は、式−C(O)R(式中、Rはアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アリール基又はベンジル基である)の部分を意味する。
【0041】
本明細書に使用される用語「カルボキシ」は式−C(O)OR(式中、Rはアルキル基、シクロアルキ基ル、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アリール基又はベンジル基である)の部分を意味する。
【0042】
本明細書に使用される用語「立体異性体」は、可能性がある任意のエナンチオマー、ジアステレオマー、シス/トランス異性体及び/又はE/Z異性体を意味する。
【0043】
本明細書に使用される用語「置換された」は、酸素,窒素,硫黄,アルキル,アルケニル,アルキニル,アリール,ハロ,ハロアルキル,ハロアルケニル,ハロアルキニル,ハロアリール,ヒドロキシ,アルコキシ,カルボキシ,ハロアルコキシ,ニトロ,ニトロアルキル,ニトロアルケニル,ニトロアルキニル,ニトロアリール,ニトロヘテロシクリル,アジド,アミノ,アルキルアミノ,アルケニルアミノ,アルキニルアミノ,アリールアミノ,ベンジルアミノ,アシル,アルケニルアシル,アルキニルアシル,アリールアシル,アシルアミノ,アシルオキシ,アルデヒド,アルキルスルホニル,アリールスルホニル,アルキルスルホニルアミノ,アリールスルホニルアミノ,アルキルスルホニルオキシ,アリールスルホニルオキシ,ヘテロシクリル,ヘテロシクロキシ,ヘテロシクリルアミノ,ハロヘテロシクリル,アルキルスルフェニル,アリールスルフェニル,カルボアルコキシ,カルボアリールオキシ,メルカプト,アルキルチオ,アリールチオ,アシルチオ等から選択される1つ以上の基で、1つ以上の水素原子が置き換わることにより基がさらに置換されたことを意味する。
【0044】
ひとつの実施態様では、本発明は式(I)の化合物を提供する。:
【0045】
【化5】
【0046】
式中、Rは非置換もしくは置換のC−C直鎖アルキル、非置換もしくは置換のC−C分岐鎖アルキル、非置換もしくは置換のC−C直鎖アルケニル、非置換もしくは置換のC−C分岐鎖アルケニル、非置換もしくは置換のC−C直鎖アルキニル、非置換もしくは置換のC−C分岐鎖アルキニル、非置換もしくは置換のC−Cシクロアルキル、非置換もしくは置換のC−Cシクロアルケニル、非置換もしくは置換のC−Cアルキルアルコキシ、非置換もしくは置換のC−Cアルキル(アルキルチオ)、非置換もしくは置換のアリール、非置換もしくは置換のベンジル、非置換もしくは置換のナフチル、非置換もしくは置換のピペラジニル、非置換もしくは置換のモルホリニル、非置換もしくは置換のヘテロアリール、非置換もしくは置換のC−Cアシル、又は、非置換もしくは置換のカルボキシであり、立体異性体及びそれらの混合物を含む。
【0047】
ひとつの実施態様では、本発明は式(Ic)の化合物を提供する。:
【0048】
【化6】
【0049】
式中、Rは非置換もしくは置換のC−C直鎖アルキル、非置換もしくは置換のC−C分岐鎖アルキル、非置換もしくは置換のC−C直鎖アルケニル、非置換もしくは置換のC−C分岐鎖アルケニル、非置換もしくは置換のC−C直鎖アルキニル、非置換もしくは置換のC−C分岐鎖アルキニル、非置換もしくは置換のC−Cシクロアルキル、非置換もしくは置換のC−Cシクロアルケニル、非置換もしくは置換のC−Cアルキルアルコキシ、非置換もしくは置換のC−Cアルキル(アルキルチオ)、非置換もしくは置換のアリール、非置換もしくは置換のベンジル、非置換もしくは置換の非芳香族複素環、非置換もしくは置換のヘテロアリール、非置換もしくは置換のC−Cアシル、又は、非置換もしくは置換のカルボキシであり、それらの混合物を含む。
【0050】
ひとつの実施態様では、本発明は式(Id)の化合物を提供する。:
【0051】
【化7】
【0052】
式中、Rは非置換もしくは置換のC−C直鎖アルキル、非置換もしくは置換のC−C分岐鎖アルキル、非置換もしくは置換のC−C直鎖アルケニル、非置換もしくは置換のC−C分岐鎖アルケニル、非置換もしくは置換のC−C直鎖アルキニル、非置換もしくは置換のC−C分岐鎖アルキニル、非置換もしくは置換のC−Cシクロアルキル、非置換もしくは置換のC−Cシクロアルケニル、非置換もしくは置換のC−Cアルキルアルコキシ、非置換もしくは置換のC−Cアルキル(アルキルチオ)、非置換もしくは置換のアリール、非置換もしくは置換のベンジル、非置換もしくは置換の非芳香族複素環、非置換もしくは置換のヘテロアリール、非置換もしくは置換のC−Cアシル、又は、非置換もしくは置換のカルボキシであり、それらの混合物を含む。
【0053】
式(I)の化合物には、式(Ic)及び式(Id)の化合物が含まれる。すなわち、式(Ic)及び式(Id)の化合物は、定義された立体化学を用いた式(I)の化合物である。式(Ic)及び式(Id)は式(I)の一部である。式(Ic)の化合物は(1R,6S)の立体化学を有し、一方、(Id)の化合物は(1S,6R)の立体化学を有する。式(Ic)及び式(Id)の化合物は式(I)に包含され、式(I)の化合物の製造、組み合わせ、処方、組成物及び使用方法の全てに、式(Ic)及び/又は式(Id)の化合物を含むことができる。以下に述べるように、式(Ic)及び式(Id)の化合物はエナンチオリッチな形で製造することができる。すなわち本発明は、(1S,6R)エナンチオマーと比べて(1R,6S)エナンチオマーの量が多い式(Ic)の化合物の調製物と、(1R,6S)エナンチオマーと比べて(1S,6R)エナンチオマーの量が多い式(Id)の化合物の調製物を提供する。
【0054】
本発明の化合物は、単独で使用してもよいし、組み合せて使用してもよい。式(I)の化合物の組み合わせ又は混合物には、2、3、4又はそれ以上の式(I)の化合物を含むことができる。式(I)の化合物は、他のフレグランス成分や香料成分と混合可能な無色又はほとんど無色の液体である。
【0055】
ひとつの実施態様では、式(I)の化合物は、Rが非置換もしくは置換のC−C分岐鎖アルキル、非置換もしくは置換のC−C直鎖アルケニル、非置換もしくは置換のC−C直鎖アルキニル、非置換もしくは置換のC−Cシクロアルキル又は非置換もしくは置換のC−Cアルキル(アルキルチオ)基の化合物である。
【0056】
ひとつの実施態様では、本発明は式(Ib)の化合物(その立体異性体及びそれらの混合物を含む。)を提供する。:
【0057】
【化8】
【0058】
式(Ib)の化合物は、Rがアリルである式(I)の化合物である。ひとつの実施態様では、化合物は(1R,6S)−2,2,6−トリメチルシクロヘキサンカルボン酸アリルである。
【0059】
当技術分野で公知の手順に従って式(I)の化合物を製造することができる。非限定的な例としては、2,2,6−トリメチルシクロヘキサンカルボン酸の誘導体化、例えばエステル化又はアシル化によって、式(I)の化合物を製造できる。当技術分野で公知の手順に従って、2,2,6−トリメチルシクロヘキサンカルボン酸のエステル化及び/又はアシル化は実施できる。例えば、本発明の実施例に記載するように、2,2,6−トリメチルシクロヘキサンカルボン酸は酸塩化物中間体に変換でき、そして該酸塩化物中間体はさらに反応を受けて式(I)の化合物を提供することができる。2,2,6−トリメチルシクロヘキサンカルボン酸は他の反応中間体(例えば、酸臭化物、ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)エステルなどの活性化エステル又はヤマグチ無水物などの活性化無水物)に変換でき、さらに反応を受けて式(I)の化合物を提供することができる。2,2,6−トリメチルシクロヘキサンカルボン酸は、例えばフィッシャーエステル化条件下におけるアルコールを用いたエステル化を介して又は無水物もしくは炭酸アシル誘導体を与えるハロゲン化アシル中間体との反応を介して、式(I)の化合物に直接変換することができる。式(I)の化合物は、米国特許第5,288,702号明細書に開示された一般的な手順(参照により本明細書中に援用された合成手順)に従って製造することができる。その(1R,6S)−及び(1S,6R)−異性体の両方を含む2,2,6−トリメチルシクロヘキサンカルボン酸は、参照により本明細書中に援用された米国特許第5,288,702号明細書の合成手順に従って製造することができる。
【0060】
本発明は香料組成物を提供する。上で定義するように、代表的な香料組成物は、式(I)の化合物を1つ以上含むことができる。該組成物はさらに1つ以上の追加の香料成分を含むことができる。追加の香料成分は、当技術分野で公知の香料及び/又はフレグランスであってもよい。例えば、追加の香料成分はこれらには限定されないが、様々な天然香料、人工香料、酸、塩基、アミノ酸、塩、甘味料、エステル、テルペン及びアロマを含むことができる。ひとつの実施態様では、該香料組成物は、1つ以上の食物、飲料、菓子、オーラルケア製品、医薬品、及び/又は、ゼラチン様材料である製品の中に含むことができる。食物は、1つ以上の、焼き菓子、スナック、乳製品、及び/又は、デザートでもよい。飲料は、1つ以上の、アルコール飲料、ソフトドリンク、ジュース、紅茶、及び/又は、フレーバー水でもよい。菓子は、1つ以上の、キャンディ及び/又はガムでもよい。オーラルケア製品は、1つ以上の、練り歯磨き及び/又は口内洗浄剤でもよい。ひとつの実施態様では、香料組成物中の1つ以上の式(I)の化合物の濃度は、重量換算で、0.001%〜5%、0.001%〜0.1%、0.005%〜0.1%、0.001%〜1%、0.005%〜1%、0.01%〜5%、0.05%〜5%、0.1%〜5%又は1%〜5%の範囲とすることができる。ひとつの実施態様では、香料組成物中の1つ以上の式(I)の化合物の濃度は、重量換算で、0.01%〜0.5%、0.01%〜0.4%、0.01%〜0.3%、0.01%〜0.2%、0.01%〜0.1%又は0.01%〜0.05%の範囲とすることができる。
【0061】
本発明はフレグランス組成物を提供する。上で定義するように、代表的なフレグランス組成物は、式(I)の化合物を1つ以上含む。該組成物はさらに1つ以上の追加のフレグランス成分を含むことができる。追加のフレグランス成分は、当技術分野で公知の香料及び/又はフレグランスであってもよい。例えば、追加のフレグランス成分はこれらには限定されないが、様々なエステル、テルペン、アルデヒド、ケトン、エーテル、ニトリル、エッセンシャルオイル及びその他のアロマを含むことができる。ひとつの実施態様では、該フレグランス組成物は、1つ以上の、香水、コロン、消臭スプレー、キャンドル、パーソナルケア製品、化粧品、洗剤、ファブリックケア製品、及び/又は、家庭用洗剤である製品の中に含むことができる。パーソナルケア製品は、1つ以上の、石鹸、デオドラント、シャンプー、コンディショナー、シャワージェル、及び/又は、シェービングローションでもよい。化粧品は、1つ以上の、クリーム、ローション、軟膏、オイル、スプレー、パウダー、ゲル、ポリッシュ、及び/又は、口紅でもよい。式(I)の化合物は、組成物にフローラルノート、フルーティーノート、フレッシュノート、ベリーノートを付与するために、フレグランス組成物において特に貴重な場合がある。ひとつの実施態様では、フレグランス組成物中の1つ以上の式(I)の化合物の濃度は、重量換算で、0.01%〜50%、0.01%〜1%、0.05%〜1%、0.01%〜10%、0.05%〜10%、0.1%〜10%、0.1%〜50%、0.5%〜50%、1%〜50%又は10%〜50%の範囲とすることができる。ひとつの実施態様では、フレグランス組成物中の1つ以上の式(I)の化合物の濃度は、重量換算で、0.1%〜5.0%、0.1%〜4%、0.1%〜3%、0.1%〜2%、0.1%〜1%又は0.1%〜0.5%の範囲とすることができる。
【0062】
フレグランス組成物又は香料組成物は、(1R,6S)−2,2,6−トリメチルシクロヘキサンカルボン酸アリルを含むことができる。フレグランス組成物又は香料組成物に含まれると、(1R,6S)−2,2,6−トリメチルシクロヘキサンカルボン酸アリルは有用な特性を有することができる。例えば、(1R,6S)−2,2,6−トリメチルシクロヘキサンカルボン酸アリルは、ダマスコンのような、もしくは、バラのような芳香もしくはアロマを有するので、ダマスコンのような、もしくは、バラのような特性を組成物に与えることができる。また驚くべきことに、(1R,6S)−2,2,6−トリメチルシクロヘキサンカルボン酸アリルは、ダマスコンもしくはバラのような芳香もしくはアロマとは異なるベリーやネクタリンのニュアンスと共に、珍しいフルーティーフローラルな特性をも組成物に与えることができることが分かった。ダマスコンとは異なり、(1R,6S)−2,2,6−トリメチルシクロヘキサンカルボン酸アリルはα,β−不飽和ケトン基を含まないので、ダマスコンと比較すると、皮膚感作物質としてのリスクが低減したことを示すことができる。ひとつの実施態様では、フレグランス組成物中の(1R,6S)−2,2,6−トリメチルシクロヘキサンカルボン酸アリルの濃度は、重量換算で、0.01%〜50%、0.01%〜1%、0.05%〜1%、0.01%〜10%、0.05%〜10%、0.1%〜10%、0.1%〜50%、0.5%〜50%、1%〜50%又は10%〜50%の範囲とすることができる。ひとつの好適な実施態様では、フレグランス組成物中の(1R,6S)−2,2,6−トリメチルシクロヘキサンカルボン酸アリルの濃度は、重量換算で、0.1%〜5.0%、0.1%〜4%、0.1%〜3%、0.1%〜2%、0.1%〜1%又は0.1%〜0.5%の範囲とすることができる。ひとつの実施態様では、香料組成物中の(1R,6S)−2,2,6−トリメチルシクロヘキサンカルボン酸アリルの濃度は、重量換算で、0.001%〜5%、0.001%〜0.1%、0.005%〜0.1%、0.001%〜1%、0.005%〜1%、0.01%〜1%、0.01%〜5%、0.05%〜5%、0.1%〜5%又は1%〜5%の範囲とすることができる。ひとつの好適な実施態様では、香料組成物中の(1R,6S)−2,2,6−トリメチルシクロヘキサンカルボン酸アリルの濃度は、重量換算で、0.01%〜0.5%、0.01%〜0.4%、0.01%〜0.3%、0.01%〜0.2%、0.01%〜0.1%又は0.01%〜0.05%の範囲とすることができる。
【0063】
式(I)の化合物は、ダマスコンを超えるいくつかの利点を有することができる。ひとつの実施態様では、式(I)の化合物は、ダマスコンと比べて安定性を向上させることができる。式(I)の化合物は、ダマスコンと比べて化学的安定性を向上させることができる(例えば、酸化条件下における安定性の向上)。式(I)の化合物は、ダマスコンと比べて次亜塩素酸塩などの化学漂白剤の存在下での安定性を向上させることができ、化学漂白剤の還元分解を引き起こすことができる。例えば、実施例15に記載するように、デルタ−ダマスコンと比べて、(1R,6S)−2,2,6−トリメチルシクロヘキサンカルボン酸アリルは次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)に対する安定性を向上させることができる。
【0064】
式(I)の化合物は、1つ以上の追加のフレグランス成分と組み合せて香料組成物又はフレグランス組成物に含まれると、いくつかの有用な特性を有することができる。以下の実施例に示されるように、式(I)の化合物は、フローラル及び/又はフルーティーな特性を有する他の化合物を含む別の香料化合物又はフレグランス化合物と組み合せると、魅力的な香料及び/又はフレグランスの製造に有効な場合がある。
【0065】
示され、クレームされた様々な実施態様に加えて、本明細書に開示され、クレームされた特徴について可能性のある他のあらゆる組み合わせを有する他の実施態様も本発明に関する。そのため、本明細書に開示された特徴のあらゆる適切な組み合わせが本発明に含まれるように、本明細書に示される特定の特徴は本発明の範囲内において他の方法で互いに組み合わせることができる。すなわち、本発明の特定の実施態様についての前述の説明は、例示及び説明のために示されたものである。それは網羅的であることや、開示された実施態様に本発明を限定することを意図するものではない。
【0066】
本発明の趣旨及び範囲から逸脱しないで、本発明の化合物と組成物について様々な修正と変更がされうることは、当業者には明らかであろう。したがって、本発明が添付のクレームとその均等の範囲内にある修正と変更を含むことを意図する。
【実施例】
【0067】
以下の実施例は、本発明の特定の態様の単なる例証であり、限定するものと解釈するべきでない。略語は当技術分野における一般的な意味を有する。温度はセ氏温度(℃)で示す。核磁気共鳴(NMR)スペクトルデータはH及び13Cについて400MHz機器を用いてCDClで測定した。ケミカルシフトは標準物質として用いたTMSに対するppmで示した。
【0068】
香気評価(例えば、フローラル、フルーティー、ミンティ)は、専門調香師のパネル又は少なくとも1人以上の専門調香師によって行われた。
【0069】
以下の実施例に使用される「(1R,6S)−2,2,6−トリメチルシクロヘキサンカルボン酸」は、化合物のエナンチオリッチなサンプルであり、(1R,6S)−2,2,6−トリメチルシクロヘキサンカルボン酸を90%、(1S,6R)−エナンチオマーを10%含む。以下の実施例に使用される「(1S,6R)−2,2,6−トリメチルシクロヘキサンカルボン酸」は、化合物のエナンチオリッチなサンプルであり、(1S,6R)−2,2,6−トリメチルシクロヘキサンカルボン酸を90%、(1R,6S)−エナンチオマーを10%含む。
【0070】
<実施例1a:(1R,6S)−2,2,6−トリメチルシクロヘキサンカルボニルクロリド(「酸塩化物中間体の(1R,6S)−異性体」)の合成>
【0071】
【化9】
【0072】
0℃に冷却した(1R,6S)−2,2,6−トリメチルシクロヘキサンカルボン酸(1eq)のジクロロメタン溶液(200mL)に、15分間かけて塩化チオニル(1.2eq)を液滴で添加した。添加後、反応混合物を室温まで温め、次いで50℃で1.5時間加熱した。混合物を室温まで冷却し、減圧真空下で濃縮した。すぐに粗生成物として次のステップに運んだ。
【0073】
<実施例1b:(1S,6R)−2,2,6−トリメチルシクロヘキサンカルボニルクロリド(「酸塩化物中間体の(1S,6R)−異性体」)の合成>
【0074】
【化10】
【0075】
0℃に冷却した(1,6)−2,2,6−トリメチルシクロヘキサンカルボン酸(1eq)のジクロロメタン溶液(200mL)に、15分間かけて塩化チオニル(1.2eq)を液滴で添加した。添加後、反応混合物を室温まで温め、次いで50℃で1.5時間加熱した。混合物を室温まで冷却し、減圧真空下で濃縮した。すぐに粗生成物として次のステップに運んだ。
【0076】
<実施例2:(1R,6S)−2,2,6−トリメチルシクロヘキサンカルボン酸アリルの合成>
【0077】
【化11】
【0078】
酸塩化物中間体の(1R,6S)−異性体が入った0℃に冷却したフラスコに、塩化アリル(10.5eq;溶媒として使用)を20分間かけて液滴で添加した。添加後、混合物を75℃に加熱し、そのまま一晩放置した(GCは、約98%の純度の原料の反応を示した)。反応液を酢酸エチルで希釈し、5%NaCO(2×)と水(2×)で洗浄した。水層を酢酸エチル(1×)で逆抽出した。有機層を混合してMgSOで乾燥し、濾過して減圧で濃縮した。粗生成物は分別蒸留により精製した。(槽=70〜71℃、バルブ=56〜60℃、真空圧力=0.18〜0.9Torr)(収量:67.9%)。H NMR(400MHz,CDCl)δppm 0.88(m,10H)1.15(m,1H)1.45(m,3H)1.70(dd,1H)1.83(m,2H)4.55(m,2H)5.21(d,1H)5.32(m,1H)5.91(qd,1H)。13C NMR(101MHz,CDCl)δppm 20.98,21.23,21.74,30.29,31.41,34.60,41.27,60.91,64.51,118.27,132.60,174.27。香気の種類:フルーティー、パイナップル、ジュース、アップル、ベリー、フレッシュ、ダマスコン、サフラン酸エチル、エキゾチック。
【0079】
<実施例3:(1S,6R)−2,2,6−トリメチルシクロヘキサンカルボン酸アリルの合成>
【0080】
【化12】
【0081】
酸塩化物中間体の(1S,6R)−異性体が入った0℃に冷却したフラスコに、塩化アリル(10.5eq;溶媒として使用)を20分間かけて液滴で添加した。添加後、混合物を75℃に加熱し、そのまま一晩放置した(GCは、約98%の純度の原料の反応を示した)。反応液を酢酸エチルで希釈し、5%NaCO(2×)と水(2×)で洗浄した。水層を酢酸エチル(1×)で逆抽出した。有機層を混合してMgSOで乾燥し、濾過して減圧で濃縮した。粗生成物は、シリカゲルを通して0〜2%の酢酸エチル/ヘキサン混合液を用いて溶出し、精製した(収量は53.9%)。H NMR(400MHz,CDCl)δppm 0.87(m,10H)1.15(ddd,1H)1.44(m,3H)1.70(m,1H)1.83(m,2H)4.55(m,2H)5.21(dd,1H)5.32(m,1H)5.91(m,1H)。13C NMR(101MHz,CDCl)δppm 20.98,21.24,21.74,30.29,31.42,34.60,41.27,60.91,64.52,118.28,132.60,174.28。香気の種類:フローラル、フルーティー、ミンティー、アップル、プラム。
【0082】
<実施例4:(1R,6S)−3−(メチルチオ)ヘキシル 2,2,6−トリメチルシクロヘキサンカルボキシレートの合成>
【0083】
【化13】
【0084】
酸塩化物中間体の(1R,6S)−異性体が入った0℃に冷却したフラスコに、3−メチルチオ−1−ヘキサノール(10.5eq;溶媒としても使用)を20分間かけて液滴で添加した。添加後、混合物を室温まで温め、そのまま一晩放置した。反応液を酢酸エチルで希釈し、5%NaCO(1×)と水(1×)で洗浄した。水層を酢酸エチル(1×)で逆抽出した。有機層を混合して、塩水(1×)で洗浄した。有機層を分離してMgSOで乾燥し、濾過して減圧で濃縮した。粗生成物は、シリカゲルを通して0〜3%の酢酸エチル/ヘキサン混合液を用いて溶出し、精製した(収量は53.9%)。H NMR(400MHz,CDCl)δppm 0.86(m,13H)1.12(m,1H)1.44(m,7H)1.80(m,5H)2.00(m,3H)2.58(m,1H)4.21(m,2H)。13C NMR(101MHz,CDCl)δppm 12.36,12.50,13.98,20.09,21.00,21.24,21.74,30.24,31.43,33.21,33.35,34.58,36.54,36.59,41.24,43.05,43.15,60.97,61.64,76.79,77.11,77.43,174.57。香気の種類:新鮮なつぶしたニンニク。
【0085】
<実施例5:(1R,6S)−((Z)−ヘキサ−3−エニル) 2,2,6−トリメチルシクロヘキサンカルボキシレートの合成>
【0086】
【化14】
【0087】
酸塩化物中間体の(1R,6S)−異性体が入った0℃に冷却したフラスコに、cis−3−ヘキサノール(10.5eq;溶媒としても使用)を20分間かけて液滴で添加した。添加後、混合物を室温まで温め、そのまま一晩放置した。反応液を酢酸エチルで希釈し、5%NaCO(1×)と水(1×)で洗浄した。水層を酢酸エチル(1×)で逆抽出した。有機層を混合して、塩水(1×)で洗浄した。有機層を分離してMgSOで乾燥し、濾過して減圧で濃縮した。粗生成物は、シリカゲルを通して0〜2%の酢酸エチル/ヘキサン混合液を用いて溶出し、精製した(収量は70.8%)。H NMR(400MHz,CDCl)δppm 0.87(m,13H)1.13(m,1H)1.42(m,3H)1.75(m,3H)2.03(m,2H)2.36(q,2H)4.05(m,2H)5.31(m,1H)5.47(m,1H)。13C NMR(101MHz,CDCl)δppm 14.30,20.71,21.00,21.26,21.75,26.94,30.22,31.42,34.61,41.29,60.96,63.40,124.10,134.42,174.65。香気の種類:薄い、パイナップル、フルーティー、甘い、オレンジジュースの果肉、ロウ質(waxy)。
【0088】
<実施例6:(1R,6S)−プロパ−2−イニル 2,2,6−トリメチルシクロヘキサンカルボキシレートの合成>
【0089】
【化15】
【0090】
酸塩化物中間体の(1R,6S)−異性体が入った0℃に冷却したフラスコに、プロパルギルアルコール(10.5eq;溶媒としても使用)を20分間かけて液滴で添加した。添加後、混合物を室温まで温め、そのまま一晩放置した。反応液を酢酸エチルで希釈し、5%NaCO(1×)と水(1×)で洗浄した。水層を酢酸エチル(1×)で逆抽出した。有機層を混合して、塩水(1×)で洗浄した。有機層を分離してMgSOで乾燥し、濾過して減圧で濃縮した。粗生成物は分別蒸留により精製した(収量は55.4%)。H NMR(400MHz,CDCl)δppm 0.88(m,10H)1.14(m,1H)1.43(m,3H)1.70(m,1H)1.85(m,2H)2.42(t,1H)4.65(m,2H)。13C NMR(101MHz,CDCl)δppm 20.90,21.17,21.68,30.36,31.33,34.54,41.22,51.09,60.63,74.52,173.79。香気の種類:フルーティー、アップル、プラム、ワイン。
【0091】
<実施例7:(1R,6S)−2−(エチルチオ)エチル 2,2,6−トリメチルシクロヘキサンカルボキシレートの合成>
【0092】
【化16】
【0093】
酸塩化物中間体の(1R,6S)−異性体が入った0℃に冷却したフラスコに、エチル2−ヒドロキシエチルスルフィド(10.5eq;溶媒としても使用)を20分間かけて液滴で添加した。添加後、混合物を室温まで温め、そのまま一晩放置した。反応液を酢酸エチルで希釈し、5%NaCO(1×)と水(1×)で洗浄した。水層を酢酸エチル(1×)で逆抽出した。有機層を混合して、塩水(1×)で洗浄した。有機層を分離してMgSOで乾燥し、濾過して減圧で濃縮した。粗生成物は、シリカゲルを通して0〜5%の酢酸エチル/ヘキサン混合液を用いて溶出し、精製した(収量は57.7%)。H NMR(400MHz,CDCl)δppm 0.87(m,10H)1.14(ddd,1H)1.25(t,3H)1.37(m,1H)1.47(m,2H)1.69(m,1H)1.81(m,2H)2.58(m,2H)2.73(m,2H)4.20(m,2H)。13C NMR(101MHz,CDCl)δppm 14.91,21.00,21.24,21.72,26.23,30.14,30.25,31.43,34.56,41.23,60.86,62.92,174.43。香気の種類:薄い、ニンニク。
【0094】
<実施例8:(1R,6S)−シクロプロピルメチル 2,2,6−トリメチルシクロヘキサンカルボキシレートの合成>
【0095】
【化17】
【0096】
酸塩化物中間体の(1R,6S)−異性体が入った0℃に冷却したフラスコに、シクロプロパンメタノール(10.5eq;溶媒としても使用)を20分間かけて液滴で添加した。添加後、混合物を室温まで温め、そのまま一晩放置した。反応液を酢酸エチルで希釈し、5%NaCO(1×)と水(1×)で洗浄した。水層を酢酸エチル(1×)で逆抽出した。有機層を混合して、塩水(1×)で洗浄した。有機層を分離してMgSOで乾燥し、濾過して減圧で濃縮した。粗生成物は、シリカゲルを通して0〜2%の酢酸エチル/ヘキサンを用いて溶出し、精製した(収量は32.0%)。H NMR(400MHz,CDCl)δppm 0.25(m,2H)0.53(m,2H)0.87(m,10H)1.13(m,2H)1.37(m,1H)1.48(m,2H)1.69(m,1H)1.81(m,2H)3.87(m,2H)。13C NMR(101MHz,CDCl)δppm 3.44,10.09,20.93,21.24,21.77,30.28,31.36,34.61,41.31,60.92,68.45,174.69。香気の種類:フローラル、フルーティー、レッドベリー。
【0097】
<実施例9:(1R,6S)−tert−ブチル 2,2,6−トリメチルシクロヘキサンカルボキシレートの合成>
【0098】
【化18】
【0099】
酸塩化物中間体の(1R,6S)−異性体が入った0℃に冷却したフラスコに、tert−ブタノール(10.5eq;溶媒としても使用)を20分間かけて液滴で添加した。添加後、混合物を室温まで温め、そのまま一晩放置した。反応液を酢酸エチルで希釈し、5%NaCO(1×)と水(1×)で洗浄した。水層を酢酸エチル(1×)で逆抽出した。有機層を混合して、塩水(1×)で洗浄した。有機層を分離してMgSOで乾燥し、濾過して減圧で濃縮した。粗生成物は、シリカゲルを通して0〜2%の酢酸エチル/ヘキサンを用いて溶出し、精製した(収量は39.5%)。H NMR(400MHz,CDCl)δppm 0.89(m,10H)1.10(m,1H)1.34(m,1H)1.45(m,11H)1.65(m,2H)1.79(m,1H)。13C NMR(101MHz,CDCl)δppm 20.81,21.28,21.80,28.28,30.30,31.36,34.66,41.47,61.58,79.82,173.95。香気の種類:フローラル、ローズ、フルーティー、アップル。
【0100】
<実施例10:(1R,6S)−シクロペンチル 2,2,6−トリメチルシクロヘキサンカルボキシレートの合成>
【0101】
【化19】
【0102】
酸塩化物中間体の(1R,6S)−異性体が入った0℃に冷却したフラスコに、シクロペンタノール(10.5eq;溶媒としても使用)を20分間かけて液滴で添加した。添加後、混合物を室温まで温め、そのまま一晩放置した。反応液を酢酸エチルで希釈し、5%NaCO(1×)と水(1×)で洗浄した。水層を酢酸エチル(1×)で逆抽出した。有機層を混合して、塩水(1×)で洗浄した。有機層を分離してMgSOで乾燥し、濾過して減圧で濃縮した。粗生成物は、シリカゲルを通して0〜1%の酢酸エチル/ヘキサンを用いて溶出し、精製した(収量は59.7%)。H NMR(400MHz,CDCl)δppm 0.86(m,10H)1.13(ddd,1H)1.36(m,1H)1.47(m,2H)1.57(m,2H)1.74(m,9H)5.16(tt,1H)。13C NMR(101MHz,CDCl)δppm 20.85,21.28,21.78,23.74,30.23,31.30,32.75,33.39,34.65,41.40,60.94,174.33。香気の種類:薄い、パイナップル、アップル、トロピカルフルーティー、ピーチ。
【0103】
<実施例11:フレグランス組成物>
表1に示す組成物で、バラ果実の女性用コロンを作製した。「TEC」とはクエン酸トリチルである。「DPG」とはジプロピレングリコールである。
【0104】
【表1】
【0105】
<実施例12:香料組成物>
表2に示す組成物で、練り歯磨きに使用できる香料組成物を作製した。
【0106】
【表2】
【0107】
<実施例13:フレグランス組成物>
表3に示す組成物で、パイナップルローズの香りのキャンドルに使用できるフレグランス組成物を作製した。
【0108】
【表3】
【0109】
表3の組成物で、パイナップルの輝きと緑を思わせる、芳醇で新鮮な黄色い果実のフレグランスを作製した。表3の組成物中に、5%(500.0万分率)の(1R,6S)−2,2,6−トリメチルシクロヘキサンカルボン酸アリルを含有することは、組成物の香りのために重要であった。(1R,6S)−2,2,6−トリメチルシクロヘキサンカルボン酸アリルを5%の安息香酸ベンジルと置き換えると、組成物は溶媒のような臭気となり、香りは深みがなくなって豊かさと広がりがほどんどなくなった。(1R,6S)−2,2,6−トリメチルシクロヘキサンカルボン酸アリルを5%のデルタ−ダマスコンと置き換えると、表3の組成物よりも爽やかさがない、強くて非常にフローラルなローズプラム及び熟した赤い果実の香りを有する組成物となった。(1R,6S)−2,2,6−トリメチルシクロヘキサンカルボン酸アリルを5%のTHESARON(登録商標)[(1R,6S)−2,2,6−トリメチルシクロヘキサンカルボン酸エチル]と置き換えると、表3の組成物ほどは熟していない、フルーティーなローズ系のそれほど甘くないドライな感じの香りを有する組成物となった。
【0110】
<実施例14:香料組成物>
表4に示す組成物で、例えば約0.1重量%〜約0.3重量%の濃度で、口内洗浄剤に使用できる香料組成物を作製した。
【0111】
【表4】
【0112】
<実施例15:漂白剤安定性試験>
(1R,6S)−2,2,6−トリメチルシクロヘキサンカルボン酸アリル及びデルタ−ダマスコンの次亜塩素酸塩安定性試験を下記の手順で実施した。
【0113】
市販の無香料の濃縮漂白剤である次亜塩素酸ナトリウム漂白剤製品CLOROX(登録商標)を入手した。該製品は薄黄色の水溶液であり、通常、約4.0重量%〜5.0重量%のNaClOと、pHを約12.4〜約12.7の範囲とするために十分な量の水酸化ナトリウムとを含む。
【0114】
無香料の濃縮漂白剤CLOROXのNaClO含量と、下記で試験されたサンプルすべてのNaClO含量を以下の手順に従って測定した。分析用サンプルは最初に十分に混合した。その後、分析用に2gのサンプルを250mlの三角フラスコに計り取った。次に、15mLの10%KI(ヨードカリウム)と、5mLの2.5M HSOをフラスコに加え、得られた混合物を十分に攪拌した。その後、黄色い色が消えるまで、0.1N チオ硫酸ナトリウムを用いて遊離のヨウ素を滴定し、添加したチオ硫酸ナトリウムの量を記録した。
計算式:NaClO(重量%)=((チオ硫酸ナトリウム量:mL)×(チオ硫酸ナトリウム溶液の正規値)×37.22×100)÷(サンプル重量:グラム×1000)
【0115】
無香料の濃縮漂白剤CLOROXのNaClOの初期濃度(重量%)を上記の手順に従って測定すると4.57%であった。
【0116】
HDPEボトル中で、(1R,6S)−2,2,6−トリメチルシクロヘキサンカルボン酸アリル及びデルタ−ダマスコンのサンプル60gを無香料の濃縮漂白剤CLOROXに加えたところ、該化合物は漂白剤溶液の上に浮かんでいた。また、香料化合物もしくはフレグランス化合物を加えていない無香料の濃縮漂白剤CLOROXの対照サンプルも作製した。1組のサンプルセットを室温(室温:約21℃)で保持し、別のサンプルセットを38℃で保持した。両方のサンプルセットの臭気及び2週間及び4週間の安定性を試験した。臭気は6段階の定性的ランクシステムに従って判定した(1+=優、1=良上、2=良、3=可、4=可下、及び、5=不可)。安定性は、上記の手順に従って、NaClO濃度(重量%)を測定することによって判定した。試験の結果を表5及び6に示す。
【0117】
【表5】
【0118】
【表6】
【0119】
表6のデータは、(1R,6S)−2,2,6−トリメチルシクロヘキサンカルボン酸アリルが、デルタ−ダマスコンと比べて次亜塩素酸ナトリウム漂白剤安定性を改善できたことを示す。デルタ−ダマスコンを含むサンプルに比べて、(1R,6S)−2,2,6−トリメチルシクロヘキサンカルボン酸アリルを含むサンプルでは、NaClOの分解が減ることが観察された。4週間の室温保持後、デルタ−ダマスコンを含む漂白剤サンプルでは14.44%のNaClOが分解したのに比べて、(1R,6S)−2,2,6−トリメチルシクロヘキサンカルボン酸アリルを含む漂白剤サンプルでは9.45%のNaClOが分解した。38℃で4週間保持後、デルタ−ダマスコンを含む漂白剤サンプルでは30.32%のNaClOが分解したのに比べて、(1R,6S)−2,2,6−トリメチルシクロヘキサンカルボン酸アリルを含む漂白剤サンプルでは24.02%のNaClOが分解した。
【0120】
優先権の主張
本出願は、35U.S.C.§119の下、2013年7月22日に出願された米国特許仮出願第61/856,794号に基づく優先権を主張しており、その内容全体を参照により本明細書に包含する。