特許第6283444号(P6283444)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6283444
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】ゴルフクラブセット
(51)【国際特許分類】
   A63B 53/00 20150101AFI20180208BHJP
   A63B 53/04 20150101ALI20180208BHJP
   A63B 102/32 20150101ALN20180208BHJP
【FI】
   A63B53/00 A
   A63B53/04 A
   A63B102:32
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-133173(P2017-133173)
(22)【出願日】2017年7月6日
【審査請求日】2017年10月10日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504017809
【氏名又は名称】ダンロップスポーツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100179213
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 未知子
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雅敏
【審査官】 砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】 特開平8−229164(JP,A)
【文献】 特開平11−333037(JP,A)
【文献】 特開2016−7497(JP,A)
【文献】 米国特許第4147349(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 53/00−53/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロフト角が異なる複数のゴルフクラブにより構成されたゴルフクラブセットであって、
前記各ゴルフクラブは、シャフトと、ゴルフクラブヘッドと、を有し、
前記各ゴルフクラブヘッドは、
クラウン部と、
打球を行なうフェース面を有するフェース部と、
ソール部と、
前記シャフトが取り付けられるホーゼル部と、を備え、
前記複数のゴルフクラブのうち、少なくとも一組の、前記ロフト角の異なるゴルフクラブにおいて、
前記ロフト角が大きい前記ゴルフクラブのゴルフクラブヘッドは、前記ロフト角が小さい前記ゴルフクラブのゴルフクラブヘッドよりも、基準状態において、前記ホーゼル部を除くゴルフクラブヘッドの最下点から最上点までの長さが長く、且つスイートスポット(重心から前記フェース面への垂線と当該フェース面との交点)が高い、ゴルフクラブセット。
【請求項2】
ロフト角が異なる複数のゴルフクラブにより構成されたゴルフクラブセットであって、
前記各ゴルフクラブは、シャフトと、ゴルフクラブヘッドと、を有し、
前記各ゴルフクラブヘッドは、
クラウン部と、
フェース部と、
ソール部と、
前記シャフトが取り付けられるホーゼル部と、を備え、
前記複数のゴルフクラブのうち、少なくとも一組の、前記ロフト角の異なるゴルフクラブにおいて、
前記ロフト角が大きい前記ゴルフクラブのゴルフクラブヘッドは、前記ロフト角が小さい前記ゴルフクラブのゴルフクラブヘッドよりも、基準状態において、前記ホーゼル部を除くゴルフクラブヘッドの最下点から最上点までの長さが長く、
前記ロフト角が大きいゴルフクラブのゴルフクラブヘッドは、前記ロフト角が小さいゴルフクラブのゴルフクラブヘッドよりも、体積が大きいゴルフクラブセット。
【請求項3】
前記複数のゴルフクラブは、基準状態における、フェース−バック方向の最もフェース側の点と最もバック側の点との間の長さが同じである、請求項1または2に記載の、ゴルフクラブセット。
【請求項4】
前記ゴルフクラブヘッドは、中空のウッド型である、請求項1から3のいずれかに記載のゴルフクラブセット。
【請求項5】
前記ゴルフクラブヘッドのロフト角は、16〜35度である、請求項1から4のいずれかに記載のゴルフクラブセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブセット及びゴルフクラブに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフクラブセットは、一般的に、ロフト角の異なる複数のクラブが含まれている(例えば、特許文献1)。そのうち、ロフト角の小さいクラブは、飛距離を伸ばすときに用いられる。一方、ロフト角の大きいクラブは、グリーンまでの距離が短いショットに用いられ、グリーン上の狭いエリアを狙う機会が多い。そのため、ロフト角の大きいクラブでは、ボールをグリーン上に止めるためにバックスピン量を多くするのが有効である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−61035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のゴルフクラブセットに含まれるゴルフクラブでは、このようなロフト角の大小に起因する性能が十分とはいえず、さらなる改良が望まれていた。本発明は、この問題を解決するためになされたものであり、ロフト角の小さいクラブはより飛距離を伸ばし、ロフト角の大きいクラブはよりバックスピン量を増大することが可能なゴルフクラブセット、及びこれに含まれるゴルフクラブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るゴルフクラブセットは、ロフト角が異なる複数のゴルフクラブにより構成されたゴルフクラブセットであって、前記各ゴルフクラブは、シャフトと、ゴルフクラブヘッドと、を有し、前記各ゴルフクラブヘッドは、クラウン部と、フェース部と、ソール部と、前記シャフトが取り付けられるホーゼル部と、を備え、前記複数のゴルフクラブのうち、少なくとも一組の、前記ロフト角の異なるゴルフクラブにおいて、前記ロフト角が大きい前記ゴルフクラブのゴルフクラブヘッドは、前記ロフト角が小さい前記ゴルフクラブのゴルフクラブヘッドよりも、基準状態において、前記ホーゼル部を除くゴルフクラブヘッドの最下点から最上点までの長さが長い。
【0006】
上記ゴルフクラブセットにおいて、前記ロフト角が大きいゴルフクラブのゴルフクラブヘッドは、前記ロフト角が小さいゴルフクラブのゴルフクラブヘッドよりも、体積を大きくすることができる。
【0007】
上記各ゴルフクラブセットにおいて、前記複数のゴルフクラブは、基準状態における、フェース−バック方向の最もフェース側の点と最もバック側の点との間の長さを同じにすることができる。なお、長さが同じであるとは、完全な同一のみならず、例えば、2mm以内程度の多少のずれは許容される。
【0008】
上記各ゴルフクラブセットにおいて、前記ゴルフクラブヘッドは、中空のウッド型とすることができる。
【0009】
上記各ゴルフクラブセットにおいて、前記ゴルフクラブヘッドのロフト角は、16〜35度とすることができる。
【0010】
本発明に係るゴルフクラブは、ロフト角が異なる複数のゴルフクラブにより構成されたゴルフクラブセットに含まれるゴルフクラブであって、前記各ゴルフクラブは、シャフトと、ゴルフクラブヘッドと、を有し、前記各ゴルフクラブヘッドは、クラウン部と、フェース部と、ソール部と、前記シャフトが取り付けられるホーゼル部と、を備え、前記複数のゴルフクラブのうち、少なくとも一組の、前記ロフト角の異なるゴルフクラブにおいて、前記ロフト角が大きい前記ゴルフクラブのゴルフクラブヘッドは、前記ロフト角が小さい前記ゴルフクラブのゴルフクラブヘッドよりも、基準状態において、前記ホーゼル部を除くゴルフクラブヘッドの最下点から最上点までの長さが長い。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ロフト角の小さいクラブはより飛距離を伸ばし、ロフト角の大きいクラブはよりバックスピン量を増大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係るゴルフクラブヘッドの基準状態の斜視図である。
図2図1の平面図である。
図3図2のA−A線断面図である。
図4A】フェース部の境界を説明する図である。
図4B】フェース部の境界を説明する図である。
図5】ゴルフクラブセットに含まれるロフト角の異なるゴルフクラブの側面図である。
図6図5から抜き出した3番ユーティリティと6番ユーティリティの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るゴルフクラブセットの一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態に係るゴルフクラブセットを構成するゴルフクラブは、ユーティリティ型(ハイブリッド型ともいう)のゴルフクラブであり、例えば、クラブ長が36〜42インチ、ロフト角が15〜35°の範囲にある2〜6番ユーティリティである。そして、後述するように、各クラブは、主として、ロフト角、ヘッドの高さ(ヘッド厚)などが相違している。以下では、まず、ゴルフクラブの1つを例に取り、共通の構造を概説した後、ゴルフクラブセットにおける、各ゴルフクラブの相違点について、詳細に説明する。
【0014】
<1.ゴルフクラブヘッドの概要>
まず、本実施形態に係るゴルフクラブセットのうちの1つのゴルフクラブ(例えば、ユーティリティ型ゴルフクラブ)を例に取り、そのゴルフクラブヘッドについて説明する。図1は本実施形態に係るゴルフクラブセットのうちの1つのゴルフクラブヘッドの基準状態の斜視図、図2図1の平面図、図3図2のA−A線断面図である。なお、ゴルフクラブヘッドの基準状態については、後述する。
【0015】
図1図3に示すように、このゴルフクラブヘッド(以下、単に「ヘッド」ということがある)10は、内部空間を有する中空構造であり、フェース部1、クラウン部2、ソール部3、及びホーゼル部4によって壁面が形成されたユーティリティ型のゴルフクラブヘッドである。
【0016】
フェース部1は、ボールを打球する面であるフェース面を有しており、クラウン部2はフェース部1と隣接し、ヘッド10の上面を構成する。ソール部3は、主としてヘッド10の底面を構成し、フェース部1とクラウン部2以外のヘッド10の外周面を構成する。すなわち、ヘッド10の底面のほか、フェース部1のトウ側からヘッドのバック側を通りフェース部1のヒール側へと延びる部位もソール部3の一部である。さらに、ホーゼル部4は、クラウン部2のヒール側に隣接して設けられる部位であり、ゴルフクラブのシャフト(図示省略)が挿入される挿入孔41を有している。そして、この挿入孔41の中心軸線Zは、シャフトの軸線に一致している。
【0017】
ここで、ゴルフクラブヘッド10を地面に設置するときの基準状態について説明する。まず、図2に示すように、上記中心軸線Zが地面に対して垂直な平面P1に含まれ、且つ所定のライ角及びリアルロフト角で地面上にヘッドが載置された状態を基準状態と規定する。そして、上記平面P1を基準垂直面と称する。また、図2に示すように、上記基準垂直面P1と地面との交線の方向をトゥ−ヒール方向と称し、このトゥ−ヒール方向に対して垂直であり且つ地面に対して平行な方向をフェース−バック方向と称することとする。
【0018】
本実施形態において、フェース部1とクラウン部2、及びフェース部1とソール部3との境界は、次のように定義することができる。すなわち、両者の間に稜線が形成されている場合には、これが境界となる。一方、明確な稜線が形成されていない場合には、図4Aに示されるように、ヘッド重心GとスイートスポットSSとを結ぶ直線Nを含む各断面E1、E2、E3…において、図4Bに示されるように、フェース外面輪郭線Lfの曲率半径rがスイートスポット側からフェース外側に向かって初めて200mmとなる位置Peがフェース部1の周縁となり、これがクラウン部2またはソール部3との境界として定義される。なお、スイートスポットSSとは、ヘッド重心Gを通るフェース面の法線(直線N)とこのフェース面との交点である。
【0019】
また、本実施形態において、クラウン部2とソール部3との境界は次のように定義することができる。すなわち、クラウン部2とソール部3との間に稜線が形成されている場合には、これが境界となる。一方、これらの間に明確な稜線が形成されていない場合には、ヘッドを基準状態に設置し、これをヘッド10の重心の真上から見たときの輪郭が境界となる。
【0020】
また、ヘッド10は、例えば、比重がほぼ4.3〜4.5程度のチタン合金(Ti−6Al−4V、Ti−8Al−1Mo−1V等)で形成することができる。また、チタン合金以外にも、例えばステンレス鋼、マレージング鋼、アルミニウム合金、マグネシウム合金、またはアモルファス合金などの中から1種または2種以上を用いて形成することもできる。
【0021】
また、このゴルフクラブヘッド10の体積は、例えば、90cm3以上、460cm3以下が望ましい。
【0022】
<2.ゴルフクラブヘッドの組立構造>
本実施形態に係るゴルフクラブヘッド10は、図3に示すように、クラウン部2及びソール部3を有するヘッド本体101と、フェース部1及びその周縁から延びる周縁部15を有するカップ状に形成されたフェース用部材102と、を組み立てることで構成される。このヘッド本体101は、クラウン部2及びソール部3で囲まれた開口18を有し、この開口18を塞ぐようにフェース用部材102が取り付けられる。すなわち、フェース用部材102の周縁部15の端面が、ヘッド本体101の開口18の端面と突き合わされ、これらが、溶接によって接合される(いわゆるカップフェース構造)。そして、フェース用部材102は、ヘッド本体101の開口18の縁部に取付けられることで、ヘッド本体101と一体化され、これによって、フェース用部材102の周縁部15は、ヘッド10のクラウン部2及びソール部3の一部として機能する。
【0023】
したがって、フェース用部材102の周縁部15がヘッド本体101に取付けられることで一体的に形成される面が、ヘッド10のクラウン部2及びソール部3を構成する。そのため、厳密には、ヘッド本体101のクラウン部2及びソール部3は、ヘッド10のクラウン部2及びソール部3の一部ではあるが、本明細書では、これらを区別することなく、ヘッド本体101の各部も、単にクラウン部2、ソール部3と称することがある。
【0024】
<3.クラウン部の構造>
続いて、クラウン部2について説明する。図1図3に示すように、クラウン部2は、フェース部1側に配置される隆起部21と、隆起部21よりもバック側に配置される基部22とを備えている。隆起部21は、主として、フェース部1に沿ってトゥ−ヒール方向に延びる帯状の領域である。一方、基部22は、隆起部21よりも低い位置でクラウン部2の大半を占める領域であり、その周縁はソール部3と接している。そして、隆起部21と基部22との境界には段差を構成する傾斜面23が形成されている。これにより、隆起部21と基部22との段差の分だけ、フェース部1の上下方向の高さが高くなっている。
【0025】
この傾斜面23は、フェース部1側にいくにしたがって、上方に延びるように構成されている。これにより、ゴルフクラブヘッド100を基準状態で設置したとき、上方から傾斜面23を視認することができる。すなわち、アドレスに入ったゴルファーから視認可能となっている。そして、傾斜面23は、隆起部21に沿って形成されているため、隆起部21と同様に、平面視において帯状に形成されている。
【0026】
図3に示すように、隆起部21のフェース−バック方向の幅Dは、例えば、平面視において、5〜25mmとすることが好ましく、7〜20mmとすることがさらに好ましい。
【0027】
また、傾斜面23の平面視におけるフェース−バック方向の幅Lは、例えば、1〜9mmとすることが好ましく、2〜7mmであることがさらに好ましい。さらに、傾斜面23の高さHは、例えば、0.5〜8mmとすることが好ましく、0.5〜6mmとすることがさらに好ましく、0.5〜5mmとすることが特に好ましい。
【0028】
<4.ゴルフクラブヘッドの製造方法>
次に、上記のゴルフクラブヘッドの製造方法の一例について説明する。まず、上述したヘッド本体101とフェース用部材102とを準備する。このようなヘッド本体101及びフェース用部材102は、種々の方法で作製することができる。例えば、ヘッド本体101は、公知のロストワックス精密鋳造法などの鋳造によって製造することができる。また、フェース用部材102は、例えば、鍛造製法や、平板のプレス加工、鋳造等により製造することができる。また、このとき用いるフェース用部材102の加工前の平板は、圧延方向が、フェース部1のトゥ側の上部からヒール側の下部に向かう方向とほぼ一致するように加工される。
【0029】
そして、これらを、例えば、溶接(TIG(タングステン−不活性ガス)溶接、プラズマ溶接、レーザー溶接、ロウ付けなど)により接合した後、所定の塗装を施すと、ゴルフクラブヘッドが完成する。
【0030】
なお、本実施形態に係るヘッドは、少なくともソール部3を有するヘッド本体と、他の部分を組み合わせることで構成される。例えば、フェース部1のみを別部材で構成してヘッド本体に取り付けることでヘッドを構成したり、あるいはクラウン部2に開口を設けたヘッド本体を形成し、この開口を別部材で塞ぐことでヘッドを構成することもできる。
【0031】
<5.ゴルフクラブセットにおけるゴルフクラブ間の相違点>
続いて、図5も参照しつつ、ゴルフクラブセットにおけるロフト角の異なるクラブ間の相違点について説明する。図5は、基準状態にある複数のゴルフクラブヘッドの側面図である。なお、図5では、一例として、本実施形態に係るゴルフクラブセットのうち、番手が隣接する4つのゴルフクラブのヘッドを示しており、ロフト角が小さい順に、3番ユーティリティ(U#3)、4番ユーティリティ(U#4)、5番ユーティリティ(U#5)、及び6番ユーティリティ(U#6)が、左から右へこの順で並んでいる。なお、図5においては、これらゴルフクラブ間の相違について、発明の特徴を明確にするため、各ヘッドをやや誇張して記載している。したがって、図5は、後述する表1などに示す実際の角度、形状などとは相違するが、これによって発明の本質が変わるものではない。なお、以下の説明でヘッドの寸法の説明をするときには、特に断りのない限り、基準状態での寸法を指すこととする。
【0032】
図5に示すように、本実施形態に係るゴルフクラブセットでは、各ゴルフクラブヘッドにおけるフェース−バック方向の最もフェース側の点と最もバック側の点との間の長さL(以下、ヘッド幅と称する)が同じである。具体的には、ヘッド幅Wは、例えば、50〜80mmの範囲に設定することができる。但し、ホーゼル部4を除く、ヘッドの高さが相違する。より詳細に説明すると、ヘッド10を水平面Hに配置したときのヘッド10の最下点、つまり水平面Hから、ヘッド10の最上点までの高さB(以下、ヘッド厚と称する)について、ロフト角の大きいクラブほど、ヘッド厚Bが大きくなっている。また、ヘッド厚Bの変化に連動して、フェース面の面方向の長さAも、ロフト角の大きいクラブほど大きくなっている。さらに、ヘッド10の体積についても、概ねロフト角の大きいクラブほど、大きくなっている。一例として、これら4つのクラブにおける上記各寸法等を表1に示す。但し、以下の表1はあくまでも一例であり、適宜変更することができる。なお、重心高さは、ヘッドの重心の水平面Hからの高さであり、SS高さは、ヘッドのSS点(スイートスポット)の水平面Hからの高さである。
【表1】
【0033】
<6.特徴>
以上の実施形態によれば、次の効果を得ることができる。
【0034】
(1) 図6は、対比のため、図5から3番ユーティリティ(U#3)及び6番ユーティリティ(U#6)に係るヘッドを抜き出して示したものである。同図によれば、ロフト角の大きいクラブであるU#6の方が、ロフト角の小さいクラブであるU#3に比べ、SS点がより高くなる。すなわち、U#6は、U#3に比べロフト角が大きいため、元々幾何学的にSS点が高いが、上記のように、ヘッド厚Bが大きいため、重心Gが上がり、SS点がさらに高くなる。
【0035】
そのため、ボール80を打球したときには、打点KがSS点から離れたU#6の方が、重心周りにZ方向(上下方向)に回転しやすくなる。これによって、いわゆるギア効果が大きくなり、SP方向の回転であるバックスピン量を増大させることができる。したがって、グリーンまでの距離が短いショットに用いられるロフト角の大きいクラブほど、バックスピン量をより増大することができる。なお、上記のような16〜35度のロフト角を有するユーティリティ型のクラブは、地面に直接置かれたボールを打球することが多いため、幾何学的に打点KがSS点よりも下になりやすい。
【0036】
一方、U#3では、ロフト角が小さいことに加え、ヘッド厚が小さくなっているため、重心Gが下がり、SS点がさらに低くなる。そのため、SS点とボール80の打点Kとの距離が短くなり、インパクト時におけるヘッドの重心G周りのZ方向の回転が小さくなる。その結果、打球の打出し角の低下を抑制できるとともに、SS点が打点に近くなることでギア効果が小さくなり、SP方向の回転であるバックスピン量が小さくなる。
【0037】
したがって、ロフト角の小さいクラブでは、打球の打出し角の低下を抑制するとともにバックスピン量を小さくすることで、ボールの飛距離を向上させることができる。また、ロフト角の小さいクラブの方が距離の長いショットに使用されるため、このような効果は特に有効であり、ボールの飛距離をより伸ばすことができる。
【0038】
このように、本実施形態に係るゴルフクラブセットでは、ロフト角の小さいクラブほど、より飛距離を伸ばすことができ、ロフト角の大きいクラブほど、よりバックスピン量を増大することができる。
【0039】
(2) U#6のようなロフト角の大きいクラブほど、ヘッド厚Bが大きいため、ヘッドの上下方向の慣性モーメントが大きくなる。そのため、インパクト時のヘッドの上下方向の回転方向へのぶれが小さくなり、打球の打ち出し角度が安定する。その結果、ボールの飛距離を安定させることができる。特に、ロフト角の大きいクラブは、クラブ長が短くスイング時のヘッドの回転半径が小さいため、ロフト角の小さいクラブに比べてヘッドが芝面に対してより鋭角に進入しつつボールとのインパクトを迎える。そのため、フェース面上の打点が上下方向にばらつき易く、インパクト時にヘッドが上下回転方向にぶれ易くなるが、本実施形態によれば、ロフト角の大きいクラブであっても、ぶれが小さくなり、ボールの飛距離を安定させることができる。
【0040】
(3)ロフト角の大きいクラブほど、ヘッドの体積が概ね大きくなるため、上下方向の慣性モーメントが大きくなる。その結果、上記(2)で示した効果を得ることができる。
【0041】
(4) 本実施形態に係るゴルフクラブセットでは、すべてのゴルフクラブのヘッド幅Wを一定にしている。すなわち、ロフト角の大小にかかわらず、すべてのクラブにおいて、ヘッド幅Wが同じである。これにより、次の効果を得ることができる。まず、幾何学的にSS点を高くするためには、重心Gをよりバック側に配置すること、つまり重心深度を大きくするという方法がある。しかし、ユーティリティはラフでも使用する機会が多いため、ヘッド幅Wを大きくすると、ソール部3のフェース−バック方向の長さも長くなり、ソール部3と地面との抵抗が大きくなる。そこで、本実施形態では、上記のように、ロフト角が大きくなるほど、ヘッド厚を大きくすることでSS点を高くしつつ、ロフト角が大きくなっても、ヘッド幅Wを一定にすることで、スイング時の抵抗を小さくしている。
【0042】
(5) クラウン部2において、隆起部21が基部22よりも、傾斜面23を介して高く形成されているため、隆起部21が高くなった分だけ、フェース部1の高さを高くすることができる。そのため、フェース部1における反発性能を向上することができる。また、クラウン部2においては、隆起部21のみが高く形成され、クラウン部2の大半を占める基部22は隆起部21よりも低い位置に形成されているため、ヘッドの重心を低くすることができる。
【0043】
<7.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。また、以下の変形例は、適宜組み合わせることができる。例えば、以下の変更が可能である。
【0044】
<7.1>
上記実施形態では、ロフト角が大きいクラブほど、ヘッド厚が大きくなるように設定されているが、ゴルフクラブセットの中で、必ずしもすべての隣接する番手のゴルフクラブで、このような関係を充足していなくてもよい。すなわち、ゴルフクラブセットの中の、いずれかのロフト角の大きいクラブとロフト角の小さいクラブにおいて、このような関係が充足されていればよい。したがって、例えば、U#3〜U#6のクラブにおいて、ヘッド厚Bの関係を(U#3<U#4=U#5<U#6)としたり、あるいは(U#3<U#4<U#5=U#6)とすることができる。
【0045】
<7.2>
上記実施形態では、ロフト角が大きいクラブほど、ヘッド10の体積が概ね大きくなっているが、ロフト角が大きくなるにしたがって、完全にヘッド10の体積が大きくなっていなくてもよい。例えば、上記実施形態のように、U#3〜U#5は、この順でヘッド10の体積が大きくなっているが、U#6はU#5よりも小さく、U#4よりも大きくなるように設定してもよい。
【0046】
<7.3>
上記実施形態では、すべてのクラブで、ヘッド幅が一定であるが、必ずしも一定にしなくてもよく、異なるようにすることもできる。
【0047】
<7.4>
上記実施形態に係るヘッドのクラウン部2は、隆起部21を有しているが、隆起部21の形状は特には限定されない。また、隆起部21のないクラウン部2であってもよい。
【0048】
<7.5>
また、本発明に係るゴルフクラブセットとは、同種のゴルフクラブを含むゴルフクラブセットを意味し、1つのゴルフクラブセットには、上記のようなユーティリティ型のゴルフクラブのみが含まれる。そして、本発明に係るゴルフクラブセットは、ユーティリティ型のゴルフクラブのほか、例えば、ドライバーやフェアウェイウッドなどのウッド型のような中空のヘッドを有するゴルフクラブによって構成することもできる。
【符号の説明】
【0049】
1 フェース部
2 クラウン部
3 ソール部
【要約】
【課題】ロフト角の小さいクラブはより飛距離を伸ばし、ロフト角の大きいクラブはよりバックスピン量を増大することが可能なゴルフクラブセット、及びこれに含まれるゴルフクラブを提供する。
【解決手段】本発明に係るゴルフクラブセットは、ロフト角が異なる複数のゴルフクラブにより構成されたゴルフクラブセットであって、前記各ゴルフクラブは、シャフトと、ゴルフクラブヘッドと、を有し、前記各ゴルフクラブヘッドは、クラウン部と、フェース部と、ソール部と、前記シャフトが取り付けられるホーゼル部と、を備え、前記複数のゴルフクラブのうち、少なくとも一組の、前記ロフト角の異なるゴルフクラブにおいて、前記ロフト角が大きい前記ゴルフクラブのゴルフクラブヘッドは、前記ロフト角が小さい前記ゴルフクラブのゴルフクラブヘッドよりも、基準状態において、前記ホーゼル部を除くゴルフクラブヘッドの最下点から最上点までの長さが長い。
【選択図】図5
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6