(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記前側領域と前記後側領域との間に、トゥ−ヒール方向に延び、肉厚が漸進的に変化する移行領域が設けられている、請求項1から5のいずれかに記載のゴルフクラブヘッド。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような構造では、トゥ−ヒール方向の中央付近の反発性能が向上するものの、トゥ側及びヒール側の反発性能については、改善の余地があった。本発明は、この問題を解決するためになされたものであり、カップフェース構造を採用しつつ、トゥ側及びヒール側の反発性能の向上を図ることができるゴルフクラブヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るゴルフクラブヘッドは、クラウン部及びソール部を有するとともに、前記クラウン部及びソール部で囲まれた開口を有する、ヘッド本体と、前記ヘッド本体の開口を塞ぐフェース用部材と、を備え、前記フェース用部材は、板状に形成されたフェース部と、前記フェース部の周縁から延びる周縁部と、を有するカップ状に形成され、前記ヘッド本体において、前記開口を形成する端面は、前記フェース部と平行に延びるように形成され、前記ゴルフクラブヘッド本体における前記クラウン部は、前記開口側の縁部に沿ってトゥ−ヒール方向に延びる前側領域と、前記前側領域よりもバック側に配置され、且つ前記前側領域よりも肉厚が薄い、後側領域と、を備え、前記前側領域は、トゥ側に配置される第1トゥ側縁部と、ヒール側に配置される第1ヒール側縁部と、前記第1トゥ側縁部と第1ヒール側縁部との間に配置され、当該第1トゥ側縁部及び第1ヒール側縁部よりも肉厚の厚い、第1中央縁部と、を備え、前記第1トゥ側縁部及び第1ヒール側縁部のフェース−バック方向の長さは、前記第1中央縁部よりも長い。
【0007】
上記ゴルフクラブヘッドにおいて、前記フェース用部材の周縁部のうち、前記クラウン部に沿う部分は、前記第1トゥ側縁部、第1ヒール側縁部、及び前記第1中央縁部とそれぞれ接合する、第2トゥ側縁部、第2ヒール側縁部、及び第2中央縁部を備えており、前記第2中央縁部の肉厚は、前記第2トゥ側縁部及び前記第2ヒール側縁部の肉厚よりも厚くすることができる。
【0008】
上記ゴルフクラブヘッドにおいて、前記第2トゥ側縁部は、フェース側に配置される前側第2トゥ側縁部と、バック側に配置される後側第2トゥ側縁部と、を備え、前記第2ヒール側縁部は、フェース側に配置される前側第2ヒール側縁部と、バック側に配置される後側第2ヒール側縁部と、を備え、前記前側第2トゥ側縁部の肉厚は、前記後側第2トゥ側縁部の肉厚よりも厚く、前記前側第2ヒール側縁部の肉厚は、前記後側第2ヒール側縁部の肉厚よりも厚くすることができる。
【0009】
上記ゴルフクラブヘッドにおいて、前記後側第2トゥ側縁部と前記第1トゥ側縁部とが接合され、両者の肉厚が同じであり、前記後側第2ヒール側縁部と前記第1ヒール側縁部とが接合され、両者の肉厚が同じであるものとすることができる。
【0010】
上記ゴルフクラブヘッドにおいて、前記後側第2トゥ側縁部のフェース側の端縁から、前記第1トゥ側縁部のバック側の端縁に至っては、肉厚が漸進的に薄くなるように形成することができ、前記後側第2ヒール側縁部のフェース部側の端縁から、前記第1ヒール側縁部のバック側の端縁に至っては、肉厚が漸進的に薄くなるように形成することができる。
【0011】
上記各ゴルフクラブヘッドにおいては、前記前側領域と前記後側領域との間に、トゥ−ヒール方向に延び、肉厚が漸進的に変化する移行領域を設けることができる。
【0012】
上記各ゴルフクラブヘッドにおいて、前記後側領域には、少なくとも1つの薄肉部を形成することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、カップフェース構造を採用しつつ、トゥ側及びヒール側の反発性能を向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るゴルフクラブヘッドの一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1は本実施形態に係るゴルフクラブヘッドの基準状態の斜視図、
図2は
図1の平面図である。なお、ゴルフクラブヘッドの基準状態については、後述する。
【0016】
<1.ゴルフクラブヘッドの概要>
図1に示すように、本実施形態に係るゴルフクラブヘッド(以下、単に「ヘッド」ということがある)100は、中空構造であり、フェース部1、クラウン部2、ソール部3、及びホーゼル部4によって壁面が形成されている。
【0017】
フェース部1は、ボールを打球する面であるフェース面を有しており、クラウン部2はフェース部1と隣接し、ヘッド100の上面を構成する。ソール部3は、主としてヘッド100の底面を構成し、フェース部1とクラウン部2以外のヘッド100の外周面を構成する。すなわち、ヘッド100の底面のほか、フェース部1のトウ側からヘッドのバック側を通りフェース部1のヒール側へと延びる部位もソール部3の一部である。さらに、ホーゼル部4は、クラウン部2のヒール側に隣接して設けられる部位であり、ゴルフクラブのシャフト(図示省略)が挿入される挿入孔41を有している。そして、この挿入孔41の中心軸線Zは、シャフトの軸線に一致している。ここで説明するヘッドは、ドライバー(#1)又はフェアウェイウッドといったウッド型であるが、そのタイプは限定されず、いわゆるユーティリティ型及びハイブリッド型等であってもよい。
【0018】
ここで、ゴルフクラブヘッド100を地面に設置するときの基準状態について説明する。まず、
図2に示すように、上記中心軸線Zが地面に対して垂直な平面P1に含まれ、且つ所定のライ角及びリアルロフト角で地面上にヘッドが載置された状態を基準状態と規定する。そして、上記平面P1を基準垂直面と称する。また、
図2に示すように、上記基準垂直面P1と地面との交線の方向をトゥ−ヒール方向と称し、このトゥ−ヒール方向に対して垂直であり且つ地面に対して平行な方向をフェース−バック方向と称することとする。また、フェース−バック方向については、フェース側を前側、バック側を後側と称することがある。
【0019】
本実施形態において、フェース部1とクラウン部2、及びフェース部1とソール部3との境界は、次のように定義することができる。すなわち、両者の間に稜線が形成されている場合には、これが境界となる。一方、明確な稜線が形成されていない場合には、
図3Aに示されるように、ヘッド重心GとスイートスポットSSとを結ぶ直線Nを含む各断面E1、E2、E3…において、
図3Bに示されるように、フェース外面輪郭線Lfの曲率半径rがスイートスポット側からフェース外側に向かって初めて200mmとなる位置Peがフェース部1の周縁となり、これがクラウン部2またはソール部3との境界として定義される。なお、スイートスポットSSとは、ヘッド重心Gを通るフェース面の法線(直線N)とこのフェース面との交点である。
【0020】
また、本実施形態において、クラウン部2とソール部3との境界は次のように定義することができる。すなわち、クラウン部2とソール部3との間に稜線が形成されている場合には、これが境界となる。一方、これらの間に明確な稜線が形成されていない場合には、ヘッドを基準状態に設置し、これをヘッド100の重心の真上から見たときの輪郭が境界となる。
【0021】
また、ヘッド100は、例えば、比重がほぼ4.3〜4.5程度のチタン合金(Ti−6Al−4V、Ti−8Al−1Mo−1V等)で形成することができる。また、チタン合金以外にも、例えばステンレス鋼、マレージング鋼、アルミニウム合金、マグネシウム合金、またはアモルファス合金などの中から1種または2種以上を用いて形成することもできる。
【0022】
また、このゴルフクラブヘッド100の体積は、例えば、90cm
3以上、470cm
3以下が望ましい。
【0023】
<2.ゴルフクラブヘッドの組立構造>
本実施形態に係るゴルフクラブヘッドは、
図4に示すように、クラウン部2及びソール部3を有するヘッド本体10と、フェース部1及びその周縁から延びる周縁部5を有するカップ状に形成されたフェース用部材20と、を組み立てることで構成される。このヘッド本体10は、クラウン部2及びソール部3で囲まれた開口30を有し、この開口30を塞ぐようにフェース用部材20が取り付けられる。すなわち、フェース用部材20の周縁部5の端面が、開口30の端面と突き合わされ、これらが、溶接によって接合される。そして、フェース用部材20は、ヘッド本体10の開口に取付けられることで、ヘッド本体10と一体化され、これによって、フェース用部材20の周縁部5は、クラウン部2及びソール部3の一部として機能する。したがって、フェース用部材20の周縁部5がヘッド本体10に取付けられることで一体的に形成される面が、クラウン部2及びソール部3を構成する。そのため、厳密には、ヘッド本体10の各部は、これらの一部ではあるが、以下では、これを区別することなく、ヘッド本体10の各部も、クラウン部2及びソール部3と称することがある。
【0024】
<3.クラウン部の構造>
次に、
図5も参照しつつ、ヘッド本体10のクラウン部2について説明する。
図5は基準状態にあるヘッド100をヘッド本体10とフェース用部材20とに分解した平面図である。なお、
図5では、各部位を視認しやすいように、ハッチングにより色分けしている。
【0025】
まず、
図5に示すように、クラウン部2の開口縁部の形状について説明する。上述したように、クラウン部2の開口30の端面は、フェース部1と概ね平行になるようにトゥ−ヒール方向に延びている。そして、クラウン部2の開口側の縁部には、トゥ−ヒール方向に延びる帯状の前側領域21が設けられている。そして、この前側領域21のバック側には、トゥ−ヒール方向に延びる帯状の移行領域22が設けられ、さらにそのバック側に後側領域23が設けられている。前側領域21の肉厚は、後側領域23よりも厚く形成されている。移行領域22は、前側領域21の後端縁と後側領域23の前端縁との間で、肉厚が漸進的に薄くなるように形成されている。
【0026】
次に、前側領域21について説明する。前側領域21には、トゥ側からヒール側へ並ぶ、第1トゥ側縁部211、第1中央縁部212、及び第1ヒール側縁部213が設けられている。これらはトゥ−ヒール方向に延びるように帯状に形成されている。そして、第1中央縁部212の肉厚が、第1トゥ側縁部211及び第1ヒール側縁部213の肉厚よりも厚くなるように形成されている。また、第1トゥ側縁部211と第1中央縁部212との間、及び第1ヒール側縁部213と第1中央縁部212との間には、肉厚が漸進的に変化する移行部214,215が、それぞれ形成されている。第1中央縁部212の肉厚は、例えば、
1.0〜1.5mmとすることができ、第1トゥ側縁部211及び第1ヒール側縁部213の肉厚は、
0.5〜1.1mmとすることができる。
【0027】
また、第1トゥ側縁部211及び第1ヒール側縁部213のフェース−バック方向の長さは、第1中央縁部212よりも長くなっている。すなわち、第1トゥ側縁部211及び第1ヒール側縁部213の後端縁は、第1中央縁部212の後端縁よりもバック側に位置している。これにより、前側領域21の後端縁は、第1トゥ側縁部211から第1中央縁部212へ向かって傾斜するように形成されている。同様に、前側領域21の後端縁は、第1ヒール側縁部213から第1中央縁部212へ向かって傾斜するように形成されている。第1トゥ側縁部211及び第1ヒール側縁部213の接合面からのフェース−バック方向の長さは、5.0〜10.0mmとすることができ、第1中央縁部212のフェース−バック方向の長さは、1.0〜5.0mmとすることができる。また、移行領域22は、前側領域21の後端縁に沿って形成されているため、第1中央縁部212と対応する位置がフェース側に窪んでいる。なお、移行領域22のフェース−バック方向の長さは、概ね一定である。
【0028】
続いて、後側領域23について説明する。本実施形態において、後側領域23は、本体部231と、本体部の中に形成された3つの薄肉部24,25,26と、を有している。薄肉部24,25,26は、本体部231よりも肉厚が薄く形成されている。例えば、本体部231の肉厚は、0.5〜0.8mmとすることができ、薄肉部24,25,26の肉厚は、0.3〜0.6mmとすることができる。
【0029】
ここでは、3つの薄肉部を、トゥ側からヒール側へむかって第1薄肉部24、第2薄肉部25、及び第3薄肉部26と称することとする。第1薄肉部24は、トゥ側に配置され、台形状に形成されている。より詳細に説明すると、第1薄肉部24は、4つの辺によって囲まれた領域である。すなわち、移行領域22から隙間を空けて、第1トゥ側縁部211と対向するようにトゥ−ヒール方向に延びる第1辺241と、第1辺241のトゥ側の端部からバック側にいくにしたがってトゥ側へ斜めに延びる第2辺242と、第1辺241のヒール側の端部からバック側にいくにしたがってトゥ側へ斜めに延びる第3辺243と、第2辺242及び第3辺243のバック側の端部同士を結び、クラウン部2の周縁に沿って延びる第4辺244と、で囲まれている。
【0030】
第2薄肉部25は、4つの辺によって囲まれ、概ね扇型に形成された領域である。すなわち、移行領域22から隙間を空けて、第1中央縁部212と対向するようにトゥ−ヒール方向に延びる第1辺251と、第1辺251のトゥ側の端部からバック側にいくにしたがってトゥ側へ斜めに延びる第2辺252と、第1辺251のヒール側の端部からバック側にいくにしたがってヒール側へ斜めに延びる第3辺253と、第2辺252及び第3辺253のバック側の端部同士を結び、クラウン部2の周縁に沿って延びる第4辺254と、で囲まれている。
【0031】
第3薄肉部26は、4つの辺によって囲まれ、概ね台形状に形成された領域である。すなわち、移行領域22から隙間を空けて、第1ヒール側縁部213と対向するようにトゥ−ヒール方向に延びる第1辺261と、第1辺261のトゥ側の端部からバック側にいくにしたがってヒール側へ斜めに延びる第2辺262と、第1辺261のヒール側の端部からバック側にいくにしたがってヒール側へ斜めに延びる第3辺263と、第2辺262及び第3辺263のバック側の端部同士を結び、クラウン部2の周縁に沿って延びる第4辺264と、で囲まれている。
【0032】
これら3つの薄肉部24,25,26の間には隙間が形成されている。すなわち、第1薄肉部24の第3辺243と第2薄肉部25の第2辺252とは概ね平行に延びており、その間に幅が一定の隙間が形成されている。また、第2薄肉部25の第3辺253と第3薄肉部26の第2辺262とは概ね平行に延びており、その間に幅が一定の隙間が形成されている。なお、これらの隙間は、本体部231の一部であり、各薄肉部24,25,26よりも肉厚が厚くなっている。
【0033】
また、各薄肉部24,25,26と本体部231との境界には、移行部27が、それぞれ設けられており、肉厚が漸進的に変化するようになっている。
【0034】
<4.フェース用部材の構造>
次に、フェース用部材20について説明する。上述したように、フェース用部材20は、板状のフェース部1と、周縁部5と、を備えている。周縁部5は、概ね一定の幅(フェース部1からの突出長さ)に形成されている。そして、
図5に示すように、周縁部5のうち、クラウン部側の領域は、トゥ−ヒール方向に並ぶ3つの帯状の領域を有している。すなわち、トゥ側からヒール側へ並ぶ第2トゥ側縁部51、第2中央縁部52、及び第2ヒール側縁部53を有しており、それぞれ、ヘッド本体10の第1トゥ側縁部211、第1中央縁部212、及び第1ヒール側縁部213と接合される。したがって、第2トゥ側縁部51、第2中央縁部52、及び第2ヒール側縁部53のトゥ−ヒール方向の長さは、それぞれ、ヘッド本体10の第1トゥ側縁部211、第1中央縁部212、及び第1ヒール側縁部213の長さと概ね同じである。
【0035】
第2中央縁部52の肉厚は、第2トゥ側縁部51及び第2ヒール側縁部53よりも厚く形成されている。そして、第2中央縁部52の肉厚は、これと接合する第1中央縁部212の肉厚と同じである。さらに、第2トゥ側縁部51と第2中央縁部52との間、及び第2ヒール側縁部53と第2中央縁部52との間には、肉厚が漸進的に変化する移行部54,55が、それぞれ形成されている。
【0036】
第2トゥ側縁部51及び第2ヒール側縁部53は、それぞれ、フェース−バック方向に並ぶ2つの領域により構成されている。すなわち、第2トゥ側縁部51は、フェース側の前側第2トゥ側縁部511と、バック側の後側第2トゥ側縁部512と、で構成されている。これらは、いずれもトゥ−ヒール方向に延びる帯状に形成されている。同様に、第2ヒール側縁部53は、フェース側の前側第2ヒール側縁部531と、バック側の後側第2ヒール側縁部532と、で構成されている。これらは、いずれもトゥ−ヒール方向に延びる帯状に形成されており、フェース−バック方向の長さは、それぞれ、前側第2トゥ側縁部511及び後側第2トゥ側縁部512と同じである。
【0037】
前側第2トゥ側縁部511及び前側第2ヒール側縁部531の肉厚は、概ね同じである。同様に、後側第2トゥ側縁部512及び後側第2ヒール側縁部532の肉厚は、概ね同じである。そして、前側第2トゥ側縁部511及び前側第2ヒール側縁部531の肉厚は、後側第2トゥ側縁部512及び後側第2ヒール側縁部532の肉厚よりも厚くなっており、0.6〜1.2mmとすることができる。また、後側第2トゥ側縁部512の肉厚は、これと接合する第1トゥ側縁部211の肉厚と同じである。同様に、後側第2ヒール側縁部532の肉厚は、これと接合する第1ヒール側縁部213の肉厚と同じである。このように肉厚を同じにすることにより、接合部分に応力集中が発生するのを抑制することができる。
【0038】
<5.ゴルフヘッドの製造方法>
次に、上記のように構成されたゴルフクラブヘッドの製造方法の一例について説明する。本実施形態に係るゴルフクラブヘッドのヘッド本体は、例えば、公知のロストワックス精密鋳造法などの鋳造によって製造される。一方、フェース用部材20は、例えば、鍛造製法や、平板のプレス加工、鋳造等により製造することができる。そして、完成したヘッド本体10の開口と、フェース用部材20の周縁部5とを突き合わせ、突き合わせ部分を溶接によって接合する。なお、溶接の手法としては、TIG(タングステン−不活性ガス)溶接、プラズマ溶接、レーザー溶接、ロウ付けなどを用いることができる。その後、塗装などを施せば、ゴルフクラブヘッドが完成する。
【0039】
図6に示すように、第1トゥ側縁部211と後側第2トゥ側縁部512とは、肉厚が同じであり、一体化される。同様に、第1中央縁部212と第2中央縁部52、第1ヒール側縁部213と後側第2ヒール側縁部532も、それぞれ、肉厚が同じであり、溶接により一体化される。
【0040】
<6.特 徴>
以上のように構成された本実施形態のゴルフクラブヘッドでは、次の効果を得ることができる。
【0041】
(1) ヘッド本体10の開口30の端面、及びこれと接合されるフェース用部材20の周縁部5の端面は、フェース部1と平行に延びている。特に、クラウン部2における両者の接合面は、トゥ−ヒール方向に沿って直線状に延びている。そのため、溶接時の接合精度を向上することができる。
【0042】
(2) ヘッド本体10のクラウン部2において、開口30側の縁部には、トゥ側からヒール側に向かって、第1トゥ側縁部211、第1中央縁部212、及び第1ヒール側縁部213が設けられている。そして、第1トゥ側縁部211及び第1ヒール側縁部213は、第1中央縁部212よりも肉厚が薄く、且つ、フェース−バック方向の長さが長く形成されている。これにより、クラウン部2における開口30側の縁部において、トゥ側及びヒール側が撓みやすくなり、トゥ−ヒール方向の中央付近のみならず、トゥ側及びヒール側へ反発の高いエリアを広げることができる。
【0043】
(3) フェース用部材20の周縁部5においては、トゥ側からヒール側に向かって、第2トゥ側縁部51、第2中央縁部52、及び第2ヒール側縁部53が設けられている。そして、第2トゥ側縁部51及び第2ヒール側縁部53は、第2中央縁部52よりも肉厚が薄く形成されている。これにより、フェース用部材20の周縁部5において、トゥ側及びヒール側が撓みやすくなり、トゥ−ヒール方向の中央付近のみならず、トゥ側及びヒール側へ反発の高いエリアを広げることができる。
【0044】
(4) ヘッド本体10における前側領域21の第1トゥ側縁部211及び第1ヒール側縁部213の肉厚は、第1中央縁部212よりも肉厚が薄いが、後側領域23よりは肉厚が厚くなっている。したがって、打球時の応力が大きくなるフェース部1に近い領域の強度を高めることができ、耐久性を向上することができる。また、ヘッド本体10の開口30の端面の肉厚が大きくなるため、フェース用部材20との接合強度も大きくすることができる。
【0045】
(5) ヘッド本体10の前側領域21においては、第1中央縁部212の後端縁が、第1トゥ側縁部211及び第1ヒール側縁部213の後端縁よりも、フェース側に位置している。そのため、トゥ−ヒール方向の中央付近では、肉厚の薄い後側領域23が、トゥ側及びヒール側に比べてフェース部1に近接している。したがって、打点となる確率の高いトゥ−ヒール方向の中央付近においてクラウン部2を撓み易くすることで反発性能を向上することができる。その一方で、フェース部1に近い領域におけるトゥ−ヒール方向の中央付近では、肉厚の厚い第1中央縁部212及び第2中央縁部52が配置されているため、耐久性も高くすることができる。したがって、強度の向上と反発性能の向上を両立することが可能となる。
【0046】
(6) ヘッド本体10の後側領域23は肉厚が薄いため、このために薄くした肉厚に係る重量は、ヘッドの他の部分に配分することができる。これにより、ヘッドの設計の自由度を向上することができる。例えば、ヘッド本体10のソール部3に上述した重量を配分すると、ヘッドの重心を低くすることができる。また、この後側領域23には、複数の薄肉部24〜26を設けているため、ヘッドの重心をさらに低くすることができる。
【0047】
(7) フェース用部材20の周縁部5においては、フェース側、つまり打撃を受ける側に肉厚の厚い前側第2トゥ側縁部511及び前側第2ヒール側縁部531を設けているため、周縁部5の強度を向上することができる。これに対して、前側第2トゥ側縁部511及び前側第2ヒール側縁部531のバック側には、肉厚の薄い後側第2トゥ側縁部512及び後側第2ヒール側縁部532が設けられているため、反発性能を向上することができる。
【0048】
また、本実施形態では、周縁部5のバック側に、肉厚の薄い後側第2トゥ側縁部512及び後側第2ヒール側縁部532を設けており、これによって周縁部5の軽量化を図っている。
【0049】
さらに、これに伴い、例えば、
図5に示すように、ヘッド本体10とフェース用部材20との接合部分は、上記前側第2トゥ側縁部511と後側第2トゥ側縁部512との境界、あるいは前側第2ヒール側縁部531と後側第2ヒール側縁部532との境界に設けられていない。すなわち、段差が生じ得る部分に、接合部分を設けていないため、強度の低下を抑制することができる。
【0050】
(8) カップフェース構造を有することにより、次のような利点がある。まず、ヘッド本体10とフェース用部材20とが溶接によって接合された場合、接合部分の剛性が高くなる。この剛性の高い接合部分が、フェース用部材20の周縁部5によってフェース部1から離間されているため、打球時にフェース部1の撓みを大きくすることができる。その結果、ヘッドの反発性能を向上させることができる。
【0051】
また、周縁部5によって、ヘッド本体10がフェース面から離間され、ヘッド本体10はフェース部1から離れている。そのため、ヘッド本体10はフェース用部材20ほどの強度が必要なく、肉厚をフェース用部材20よりも薄くすることができる。その結果、打球時には、フェース用部材20に加え、薄肉化されたヘッド本体10も撓ませることができるため、ヘッドの反発性能の向上に寄与させることができる。
【0052】
<7.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。例えば、以下の変更が可能である。
【0053】
<7.1>
上記実施形態では、移行領域22、移行部214,215,54,55を設けているが、このような部分を設けなくてもよい。また、ヘッド本体10の薄肉部24〜26も必要に応じて設ければよく、形状も特には限定されない。また、薄肉部24〜26を設けないようにすることもできる。
【0054】
<7.2>
上記実施形態では、フェース用部材20の後側第2トゥ側縁部512とヘッド本体10の第1トゥ側縁部211の肉厚を一定にしている。同様に、フェース用部材20の後側第2ヒール側縁部532とヘッド本体10の第1ヒール側縁部213の肉厚を一定にしている。しかしながら、これらを異なるようにすることもできる。あるいは、ヘッド本体10とフェース用部材20とを一体化させた状態において、後側第2トゥ側縁部512の前端縁から第1トゥ側縁部211の後端縁まで肉厚が漸進的に薄くなるようにすることもできる。同様に、後側第2ヒール側縁部531の前端縁から第1ヒール側縁部213の後端縁まで肉厚が漸進的に薄くなるようにすることもできる。
【0055】
<7.3>
上記実施形態では、クラウン部2の開口30側の縁部に、第1トゥ側縁部211、第1中央縁部212、及び第1ヒール側縁部213を設け、さらに、これと接合されるフェース用部材20の周縁部5に、第2トゥ側縁部51、第2中央縁部52、及び第2ヒール側縁部53を設けているが、フェース用部材20にこのような肉厚の異なる領域を設けなくてもよい。すなわち、本発明においては、クラウン部2に設けた第1トゥ側縁部211、第1中央縁部212、及び第1ヒール側縁部213だけでも、トゥ側及びヒール側の反発性能を向上することができる。
【0056】
<7.4>
また、上記実施形態では、クラウン部2及びフェース用部材20の構成、特に、周縁部5の構造について説明したが、フェース部1の構造については、特には限定されない。例えば、フェース部1の中央は打撃に対する機械的強度を上げるために、肉厚を大きくするが、その他の領域を含め、肉厚については特には限定されない。
【解決手段】ウッド型ゴルフクラブヘッドにおいて、フェース用部材は、板状に形成されたフェース部と、その周縁から延びる周縁部がカップ状に形成され、ヘッド本体において開口を形成する端面は、フェース部と平行に延びるように形成され、クラウン部は、開口側の縁部に沿ってトゥ−ヒール方向に延びる前側領域と、前側領域よりもバック側に配置され前側領域よりも肉厚が薄い後側領域とを備え、前側領域は、トゥ側に配置される第1トゥ側縁部と、ヒール側に配置される第1ヒール側縁部と、第1トゥ側縁部と第1ヒール側縁部との間に配置され、第1トゥ側縁部及び第1ヒール側縁部よりも肉厚の厚い、第1中央縁部と、を備え、前記第1トゥ側縁部及び第1ヒール側縁部のフェース−バック方向の長さは、前記第1中央縁部よりも長い。