(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、いくつかの実施形態に係るインクジェットプリンタについて説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材、部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。以下の説明では、インクジェットプリンタを正面から見たときに、インクジェットプリンタから遠ざかる方を前方、インクジェットプリンタに近づく方を後方とする。また、図面中の符号Yは主走査方向を示し、符号Xは主走査方向Yと直交する副走査方向Xを示している。また、図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を表している。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、インクジェットプリンタの設置態様等を限定するものではない。
【0012】
(第1実施形態)
図1は、一実施形態に係る大判のインクジェットプリンタ(以下、「プリンタ」とする。)10の正面図である。
図2は、キャリッジ24の記録媒体5と対向する側の面(本実施形態では下面)の構成を示す模式図である。プリンタ10は、ロール状の記録媒体5を順次前方(副走査方向Xの下流側)に移動させると共に、主走査方向Yに移動するインクヘッド40(
図2参照)からインクを吐出することによって、記録媒体5上に画像を印刷する。
【0013】
記録媒体5は、画像が印刷される対象物である。記録媒体5は特に限定されない。記録媒体5は、例えば、普通紙やインクジェット用印刷紙等の紙類であってもよいし、樹脂製やガラス製などの透明なシートであってもよいし、金属製やゴム製等のシートであってもよい。本実施形態にあっては、記録媒体5は透明なシートである。
【0014】
図1に示すように、プリンタ10は、プリンタ本体10Aと、プリンタ本体10Aを支持する脚11とを備えている。プリンタ本体10Aは、主走査方向Yに延びている。プリンタ本体10Aは、ガイドレール12と、ガイドレール12に係合したキャリッジ24とを備えている。ガイドレール12は、主走査方向Yに延びている。ガイドレール12は、キャリッジ24の主走査方向Yへの移動をガイドする。キャリッジ24には無端状のベルト13が固定されている。ベルト13は、ガイドレール12の右側に設けられたプーリ14Aおよび左側に設けられたプーリ14Bに巻き掛けられている。右側のプーリ14Aにはキャリッジモータ15が取り付けられている。キャリッジモータ15は、制御装置30と電気的に接続されている。キャリッジモータ15は、制御装置30によって制御される。キャリッジモータ15が駆動するとプーリ14Aが回転し、ベルト13が走行する。それにより、キャリッジ24がガイドレール12に沿って主走査方向Yに移動する。このように、キャリッジ24が主走査方向Yに移動することによって、インクヘッド40も主走査方向Yに移動する。本実施形態では、ベルト13とプーリ14Aとプーリ14Bとキャリッジモータ15とが、キャリッジ24およびインクヘッド40を主走査方向Yに移動させる移動機構の一例である。
【0015】
キャリッジ24の下方には、プラテン16が配置されている。プラテン16は、主走査方向Yに延びている。プラテン16には記録媒体5が配置される。プラテン16の上方には、記録媒体5を上から押下するピンチローラ17が設けられている。ピンチローラ17は、キャリッジ24より後方に配置されている。プラテン16には、グリッドローラ18が設けられている。グリッドローラ18は、ピンチローラ17の下方に配置されている。グリッドローラ18は、ピンチローラ17と対向する位置に設けられている。グリッドローラ18は、フィードモータ22(
図4参照)に連結されている。グリッドローラ18は、フィードモータ22の駆動力を受けて回転可能に形成されている。フィードモータ22は、制御装置30と電気的に接続されている。フィードモータ22は、制御装置30によって制御される。ピンチローラ17とグリッドローラ18との間に記録媒体5が挟まれた状態でグリッドローラ18が回転すると、記録媒体5は副走査方向Xに搬送される。本実施形態では、ピンチローラ17とグリッドローラ18とフィードモータ22とが、記録媒体5を副走査方向Xに移動させる搬送機構の一例である。
【0016】
プリンタ10は、インクヘッド40を備えている。
図2に示すように、インクヘッド40は、キャリッジ24に設けられている。インクヘッド40は、複数の第1インクヘッド41C、41M、41Y、41Kと、1つの第2インクヘッド42とからなっている。
図2に示すように、キャリッジ24において、第1インクヘッド41C、41M、41Y、および41Kと、第2インクヘッド42とは主走査方向Yに並んで配置されている。
【0017】
複数の第1インクヘッド41C、41M、41Y、41Kは、それぞれ、カラー画像を形成するためのプロセスカラーインクを吐出する。本実施形態にあっては、第1インクヘッド41Cは、シアンインクを吐出する。第1インクヘッド41Mは、マゼンタインクを吐出する。第1インクヘッド41Yは、イエローインクを吐出する。第1インクヘッド41Kは、ブラックインクを吐出する。ただし、第1インクヘッドの数は4個に限定されない。また、プロセスカラーインクの色調は何ら限定されるわけではない。
【0018】
図2に示すように、複数の第1インクヘッド41C、41M、41Y、41Kは、それぞれ、副走査方向Xに並んだ複数のノズル43を有している。本実施形態において、各第1インクヘッド41C、41M、41Y、41Kでは、複数のノズル43が1列に並んでノズル列44を構成している。ただし、ノズル43の配置は何ら限定されるわけではない。ノズル列44は、副走査方向Xの上流側に位置する第1上流側ノズル列44Aと、副走査方向Xの下流側に位置する第1下流側ノズル列44Bとを備えている。複数の第1インクヘッド41C、41M、41Y、41Kのノズル43は、副走査方向Xに関して揃った位置に配置されている。なお、本実施形態では、第1上流側ノズル列44Aのノズル43の数と、第1下流側ノズル列44Bのノズル43の数とは同じであるが、これに限定されない。
【0019】
第2インクヘッド42は、本実施形態にあっては、カラー画像の色調や意匠性に変化を与えるための、所謂、特色インクを吐出する。ここでは、第2インクヘッド42はホワイトインクを吐出する。本実施形態では、第2インクヘッド42の数は1個であるが、これに限定されない。第2インクヘッド42の数は、例えば2個以上であってもよい。また、特色インクの色調は何ら限定されるわけではない。第2インクヘッド42は、例えばシルバーインクやゴールドインクなどのメタリックインクや、透明インクを吐出するように構成されていてもよい。
【0020】
図2に示すように、第2インクヘッド42は、副走査方向Xに並んだ複数のノズル45を有している。本実施形態において、第2インクヘッド42では、複数のノズル45が1列に並んでノズル列46を構成している。ただし、ノズル45の配置は何ら限定されるわけではない。ノズル列46は、副走査方向Xの上流側に位置する第2上流側ノズル列46Aと、副走査方向Xの下流側に位置する第2下流側ノズル列46Bとを備えている。なお、本実施形態では、第2上流側ノズル列46Aのノズル45の数と、第2下流側ノズル列46Bのノズル45の数とは同じであるが、これに限定されない。第2インクヘッド42のノズル45は、第1インクヘッド41C、41M、41Y、41Kのノズル45と、副走査方向Xに関して揃った位置に配置されている。
【0021】
なお、
図2において、第1インクヘッド41C、41M、41Y、41Kおよび第2インクヘッド42には、それぞれ10個のノズル43、45が図示されているが、実際にはさらに多数(例えば300個)のノズル43、45が形成されている。ただし、ノズル43、45の個数は何ら限定されるわけではない。
【0022】
第1インクヘッド41C、41M、41Y、41Kおよび第2インクヘッド42の内部には、アクチュエータ47および48(いずれも
図8参照)が設けられている。第1インクヘッド41C、41M、41Y、41Kに設けられたアクチュエータ47と第2インクヘッド42に設けられたアクチュエータ48とは同じ機構であるが、便宜上、第1インクヘッド41C、41M、41Y、41Kに設けられたアクチュエータ47を第1アクチュエータ47と呼び、第2インクヘッド42に設けられたアクチュエータ48を第2アクチュエータ48と呼ぶこととする。本実施形態に係る第1アクチュエータ47は、圧力室47Aと圧電素子47Bを備えている。圧力室47Aにはインクが貯留されている。圧電素子47Bは圧力室47Aに接触して設けられ、駆動時には圧力室47Aを収縮させるように変位する。第2アクチュエータ48も第1アクチュエータ47と同じ機構であり、圧力室48Aと圧電素子48Bを備えている。第1アクチュエータ47と第2アクチュエータ48とは、制御装置30と電気的に接続されている。第1アクチュエータ47と第2アクチュエータ48とは、制御装置30によって制御される。第1アクチュエータ47および第2アクチュエータ48が駆動することによって、第1インクヘッド41C、41M、41Y、41Kのノズル43および第2インクヘッド42のノズル45から記録媒体5に向かってインクが吐出される。
【0023】
第1インクヘッド41C、41M、41Y、41K、および第2インクヘッド42は、それぞれ、図示しないインク供給路によって、図示しないインクカートリッジと連通されている。インクカートリッジは、例えばプリンタ本体10Aの右端部に着脱可能に配置されている。なお、インクの材料は何ら限定されず、従来からインクジェットプリンタのインクの材料として用いられている各種の材料を使用することができる。上記インクは、例えば、ソルベント系(溶剤系)顔料インクや水性顔料インクであってもよいし、水性染料インク、あるいは、紫外線を受けて硬化する紫外線硬化型顔料インク等であってもよい。本実施形態においては、プリンタ10はインクを硬化させるインク硬化装置として紫外線照射装置を備えており、従って、インクは、紫外線硬化型顔料インクである。
【0024】
図3は、キャリッジ24周辺を示す斜視図である。
図3に示すように、本実施形態に係るプリンタ10は、第1紫外線照射装置26Aおよび第2紫外線照射装置26Bの2つの紫外線照射装置を備えている。第1紫外線照射装置26Aおよび第2紫外線照射装置26Bは、キャリッジ24に搭載されている。第1紫外線照射装置26Aおよび第2紫外線照射装置26Bは、インクを硬化させる周波数の紫外線を照射する光源を備え、それぞれ記録媒体5上の所定の位置に上記紫外線を照射できるように設置されている。上記光源は、例えば、紫外線照射LEDである。第1紫外線照射装置26Aは、キャリッジ24において副走査方向Xの上流側に設置されている。つまり、第1上流側ノズル列44Aおよび第2上流側ノズル列46Aと主走査方向Yに並んで配置されている。第1紫外線照射装置26Aは、自身の直下に紫外線を照射するように設置されている。第2紫外線照射装置26Bは、キャリッジ24において副走査方向Xの下流側に設置されている。つまり、第1下流側ノズル列44Bおよび第2下流側ノズル列46Bと主走査方向Yに並んで配置されている。第2紫外線照射装置26Bも、自身の直下に紫外線を照射するように設置されている。なお、第1紫外線照射装置26Aと第2紫外線照射装置26Bとは制御上において分離されていればよく、構造上一体であってもよい。
【0025】
図1に示すように、プリンタ本体10Aの右端部には、操作パネル20が設けられている。操作パネル20には、機器状態を表示する表示部と、ユーザーによって操作される入力キー等が設けられている。操作パネル20の内側には、プリンタ10の各種の動作を制御する制御装置30が収容されている。
図4は、本実施形態に係るプリンタ10のブロック図である。
図4に示すように、制御装置30は、フィードモータ22、キャリッジモータ15、第1アクチュエータ47、第2アクチュエータ48、第1紫外線照射装置26A、および第2紫外線照射装置26Bとそれぞれ通信可能に接続されており、それらを制御可能に構成されている。制御装置30は、第1吐出制御部31と、第2吐出制御部32と、第1ドット制御部33と、第2ドット制御部34と、スキャン制御部35と、フィード制御部36と、を備えている。
【0026】
制御装置30の構成は特に限定されない。制御装置30は、例えばマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータのハードウェア構成は特に限定されないが、例えば、ホストコンピュータ等の外部機器から印刷データ等を受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:central processing unit)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、上記プログラムや各種データを格納するメモリ等の記憶装置とを備えている。なお、制御装置30は必ずしもプリンタ本体10Aの内部に設けられている必要はなく、例えば、プリンタ本体10Aの外部に設置され、有線または無線を介してプリンタ本体10Aと通信可能に接続されたコンピュータ等であってもよい。
【0027】
第1吐出制御部31は、第1上流側ノズル列44Aのノズル43から記録媒体5に向かってプロセスカラーインクを吐出させる部位である。第1吐出制御部31は、第1アクチュエータ47(
図4、
図8参照)に接続され、第1上流側ノズル列44Aのノズル43からプロセスカラーインクを吐出させる。
【0028】
第2吐出制御部32は、記録媒体5上に吐出されたプロセスカラーインクに向かって、第2下流側ノズル列46Bのノズル45から特色インクを吐出させる部位である。本実施形態における特色インクは、ホワイトインクである。第2吐出制御部32は、第2アクチュエータ48(
図4、
図8参照)に接続され、第2下流側ノズル列46Bのノズル45からホワイトインクを吐出させる。
【0029】
第1ドット制御部33は、プロセスカラーインクの硬化後のドット径を制御する部位である。本実施形態では、第1ドット制御部33は、第1紫外線照射装置26Aと接続され、予め定められたタイミングと強度で第1紫外線照射装置26Aに紫外線を照射させる。第1ドット制御部33は、上記紫外線の照射を制御することによって、プロセスカラーインクの硬化後のドット径をコントロールする。
【0030】
第2ドット制御部34は、特色インクの硬化後のドット径を制御する部位である。本実施形態では、第2ドット制御部34は、第2紫外線照射装置26Bと接続され、予め定められたタイミングと強度で第2紫外線照射装置26Bに紫外線を照射させる。第2ドット制御部34は、上記紫外線の照射を制御することによって、特色インクの硬化後のドット径をコントロールする。
【0031】
スキャン制御部35は、キャリッジモータ15と接続され、キャリッジモータ15の駆動を制御する。スキャン制御部35は、キャリッジモータ15の制御を介して、キャリッジ24の主走査方向Yへの移動動作を制御する。
【0032】
フィード制御部36は、フィードモータ22と接続され、フィードモータ22の駆動を制御する。フィード制御部36は、グリッドローラ18を駆動させるフィードモータ22の制御を介して、プラテン16に載置されグリッドローラ18によって副走査方向Xに搬送される記録媒体5の搬送を制御する。
【0033】
プロセスカラーインクだけを用いた通常の印刷において、制御装置30のフィード制御部36は、記録媒体5が順次前方(副走査方向Xの下流側)に送り出されるように、フィードモータ22を制御する。また、スキャン制御部35はキャリッジモータ15を駆動してキャリッジ24を主走査方向Yに移動させるとともに、第1吐出制御部31は第1アクチュエータ47を駆動して第1インクヘッド41C、41M、41Y、41Kからインクを吐出させ、記録媒体5の印刷面にプロセスカラーインクを着弾させる。さらに、第1ドット制御部33は、プロセスカラーインクの吐出の後、プロセスカラーインクを硬化させるために、第1紫外線照射装置26Aおよび第2紫外線照射装置26Bに紫外線を照射させる。スキャン制御部35は、例えば、フィード制御部36によって記録媒体5が1回前方に送り出されるまでに、キャリッジ24を主走査方向Yに1回または複数回移動させる。
【0034】
ところで、本実施形態に係るプリンタ10は、上記のような通常の印刷だけでなく、下層の印刷の上に上層の印刷を重ねる重ね印刷を行うこともできるように構成されている。重ね印刷においては、例えば、まず記録媒体5上にプロセスカラーインクによって画像が印刷される。次いで、プロセスカラーインクを硬化させる。そして、硬化したプロセスカラーインクの上に、視覚効果を与えるための特色インクの印刷が行われる。その後、吐出された特色インクの硬化が行われる。重ね印刷の目的は、画像に対する特定の視覚効果の付与である。本実施形態においては、記録媒体5が透明シートであるため、画像に対する地色(ホワイト)の付与である。
【0035】
しかしながら、本実施形態に係るプリンタ10においてもそうであるように、一般に、特色インクを吐出するインクヘッドは1個または少数である。特色インク用のインクヘッドの数が少ないと、特色インクがプロセスカラーインクの層を覆いきれず、所望の視覚効果を十分に得られないことがある。例えば、本実施形態のように、透明な記録媒体に対してプロセスカラーインクで画像を印刷した上から、下地色のホワイトインクを重ねて印刷しようとする場合、ホワイトインクの層がプロセスカラーインクの層を覆いきれないと、遮光が不十分になることがある。このように、上層の特色インクが下層の画像を十分に覆っていないと、狙ったような視覚効果が得られない。このような視覚効果の低下は、透明な記録媒体における地色の場合だけでなく、重ね印刷全般について起こり得ることである。
【0036】
そこで、本実施形態に係るプリンタ10の制御装置30は、記録媒体5上に吐出されるプロセスカラーインクの硬化後のドット径を予め定められた「第1のドット径」に制御する第1ドット制御部33と、プロセスカラーインク上に吐出される特色インクの硬化後のドット径を「第1のドット径」よりも大きい「第2のドット径」に制御する第2ドット制御部34とを備える。本実施形態においては、プロセスカラーインクは、シアン、マゼンタ、ブラック、イエローのプロセスカラーインクであり、特色インクはホワイトインクである。
【0037】
上記インクジェットプリンタによれば、上層を形成する特色インクのドット径を下層を形成するプロセスカラーインクのドット径よりも大きくすることによって、画像の層を特色インクの層で確実に覆うことができる。それによって、特色インクが画像に対して付与する視覚効果を確実に発揮させることができる。さらに、上記インクジェットプリンタによれば、第2下流側ノズル列46Bのノズルの数を増やしたり、第2下流側ノズル列46Bのノズルの吐出回数を増やしたりすることなく、上記効果を得ることが可能である。よって、印刷効率を低下させることがない。
【0038】
以下に、連続重ね印刷のプロセスについて説明する。
図5は、連続重ね印刷におけるキャリッジ24周辺を上方から見た模式図である。
図5において、ノズル43および45に施されたハッチングは、当該ノズルからインクが吐出されていることを表している。また、第1紫外線照射装置26Aおよび第2紫外線照射装置26Bに施された点灯マークは、当該紫外線照射装置が紫外線を照射していることを表している。
【0039】
図5(a)は、プロセスカラーインクの吐出および硬化中を示す図である。つまり、
図5(a)は、下層の印刷中を示す図である。下層の印刷においては、プロセスカラーインクは、第1上流側ノズル列44Aのノズル43から吐出されている。
図5(a)に示された状態において、キャリッジ24は主走査方向Yに移動しながら下層の印刷を行っている。
【0040】
記録媒体5に吐出されたプロセスカラーインクの硬化は、吐出と同一パス中に同時進行的に行われる。
図5(a)において、下層のプロセスカラーインクには第1紫外線照射装置26Aによって紫外線が照射されている。第1紫外線照射装置26Aは、第1上流側ノズル列44Aおよび第2上流側ノズル列46Aと並んでいるので、第1上流側ノズル列44Aのノズル43から吐出されたプロセスカラーインクにだけ紫外線が照射される。なお、上記紫外線の照射は、例外的には、プロセスカラーインクの吐出と別のパスにおいて行われることもあり得る。
【0041】
プロセスカラーインクへの紫外線の照射後、フィード制御部36は、フィードモータ22を駆動させて、記録媒体5を1回前方へ移動させる。このときの移動距離は、第1上流側ノズル列44Aの副走査方向Xの長さ分である。記録媒体5の移動後、第2吐出制御部32は、第2下流側ノズル列46Bのノズル45にホワイトインクを吐出させ、上記吐出に続いて、第2紫外線照射装置26Bに紫外線を照射させる。第2紫外線照射装置26Bは、下層の上に吐出されたホワイトインクに向かって紫外線を照射する。
図5(b)は、第2下流側ノズル列46Bのノズル45によるホワイトインクの吐出および第2紫外線照射装置26Bによる紫外線の照射を示す図である。
図5(b)において符号E1で示した領域は、前のプロセスにおいて下層のプロセスカラーインクの硬化が完了している硬化済み領域E1を表している。
図5(b)に示された状態では、第2下流側ノズル列46Bのノズル45は、領域E1に向かってホワイトインクを吐出し、同時進行的に第2紫外線照射装置26Bがホワイトインクを硬化させている。このとき、第2上流側ノズル列44Aのノズル43からは硬化済み領域E1の次の(副走査方向Xの上流の)領域E2に向けてプロセスカラーインクが吐出され、第1紫外線照射装置26Aは吐出されたプロセスカラーインクを硬化させている。このように、本実施形態に係るプリンタ10は、副走査方向Xについて第1上流側ノズル列44Aと第2下流側ノズル列46Bの位置がずれているため、連続的に重ね印刷を行うことができる。
【0042】
上記連続重ね印刷における印刷プロセスにおいて、第1ドット制御部33および第2ドット制御部34は、硬化後におけるホワイトインクのドット径が硬化後におけるプロセスカラーインクのドット径よりも大きくなるように、第1紫外線照射装置26Aおよび第2紫外線照射装置26Bを制御する。本実施形態においては、各ノズルが吐出するインクのドットサイズは同じである。つまりインクドットの体積自体はほぼ同じである。また、ノズル43のピッチとノズル45のピッチは同じであり、従って、ノズル43から吐出されるインクドットとノズル45から吐出されるインクドットの単位面積当たりの数は同じである。
【0043】
硬化後のプロセスカラーインクおよび特色インクのドット径は、主に、インクが吐出されてから硬化を開始するまでの時間によって調整される。本実施形態においては、硬化後のプロセスカラーインクおよび特色インクのドット径は、各インクが吐出されてから紫外線の照射が開始されるまでの時間によって調整される。そこで、以下では、プロセスカラーインクが吐出されてから紫外線が照射されるまでの時間を「第1の硬化開始時間」と称する。また、特色インクが吐出されてから紫外線が照射されるまでの時間を「第2の硬化開始時間」と称する。第1ドット制御部33は、プロセスカラーインクが吐出されてから予め定められた「第1の硬化開始時間」が経過した後に、第1紫外線照射装置26Aにプロセスカラーインクの硬化を開始させる。第2ドット制御部34は、特色インクが吐出されてから「第2の硬化開始時間」が経過した後に、第2紫外線照射装置26Bに特色インクの硬化を開始させる。「第2の硬化開始時間」は「第1の硬化開始時間」よりも長く設定されている。「第2の硬化開始時間」が「第1の硬化開始時間」よりも長く設定されることにより、特色インク(ホワイトインク)は吐出後、プロセスカラーインクよりも遅く硬化が開始される。特色インクは、吐出されてから硬化までの時間が長いため潰れて扁平になり、比較的ドット径が大きく硬化される。逆に、プロセスカラーインクは、吐出されてから硬化までの時間が短いため潰れて扁平になる時間がなく、比較的ドット径が小さく硬化される。
【0044】
硬化後のプロセスカラーインクおよび特色インクのドット径は、さらに、紫外線の強度によっても調整される。紫外線硬化型のインクは照射される紫外線の強度が強いほど速く硬化する。第1ドット制御部33は、「第1の強度」で紫外線を照射するように第1紫外線照射装置26Aを制御し、第2ドット制御部34は、「第2の強度」で紫外線を照射するように第2紫外線照射装置26Aを制御する。「第2の強度」は「第1の強度」よりも弱く設定されている。特色インクを硬化させる紫外線の強度を、プロセスカラーインクを硬化させる紫外線の強度よりも弱く設定することによって、特色インクはプロセスカラーインクよりもゆっくり硬化する。特色インクは、硬化速度が遅いため硬化するまでに潰れて扁平になり、比較的ドット径が大きく硬化される。なお、本実施形態では硬化開始時間の制御および紫外線照射強度の制御の両方でインクのドット径を調整しているが、どちらか一方による調整であってもよい。
【0045】
図6は、記録媒体5上のプロセスカラーインクおよびホワイトインクを側方から見た模式図である。
図6において、プロセスカラーインク51は、記録媒体5の表面に存在し、そのドット径(直径)はD1である。上記ドット径D1が、本実施形態における「第1のドット径」に相当する。プロセスカラーインク51のドットの高さはH1である。一方、ホワイトインク52のドットは、ドット径(直径)がD2である。上記ドット径D2が、本実施形態における「第2のドット径」に相当する。ホワイトインク52のドットの高さはH2である。プロセスカラーインク51およびホワイトインク52の設定上のドットサイズは同じなので、体積はほぼ等しい。そこで、潰れてから硬化したホワイトインク52のドット高さH2は、あまり潰れないうちに硬化したプロセスカラーインク51のドット高さH1よりも低く、ホワイトインク52のドット径D2は、プロセスカラーインク51のドット径D1よりも大きい。ホワイトインク52のドット径D2がプロセスカラーインク51のドット径D1よりも大きいため、プロセスカラーインク51のドットはホワイトインク52のドットに覆われる。そこで、印刷物は、所望の視覚効果を得ることができる。
【0046】
上記のようなドット径の制御は、インクの種類に応じたバリエーションを持ってもよい。例えば、特色インク52が記録媒体5に対してプロセスカラーインク51よりも濡れ性を有する(接触角が小さい)インクである場合は、プロセスカラーインク51と特色インク52とを同じ条件で硬化させてもよい。同じ条件で硬化すれば、特色インク52のドット径D2の方が、出来なりでプロセスカラーインク51のドット径D1よりも大きくなる。
【0047】
上記のように、本実施形態に係るプリンタ10によれば、下層・上層を重ねて印刷する重ね印刷において上層を形成する特色インクの層が下層を形成する画像の層を十分に覆うことができ、所望の視覚効果を得ることができる。
【0048】
(第2実施形態)
第2実施形態は、インク硬化装置として、紫外線照射装置の代わりにヒータを備える実施形態である。従って、第2実施形態におけるインクは、熱によって硬化されるインクまたは熱によって硬化が促進されるインクである。第2実施形態に係るプリンタ10は、紫外線照射装置の代わりにヒータを備えること、および一部の制御を除き、第1実施形態に係るプリンタ10と共通である。そこで、以下の第2実施形態の説明においては、第1実施形態と同じ部材には同じ符号を付すものとし、重複する説明は省略または簡略化する。上記は、第3実施形態の説明においても同様である。
【0049】
図7は、プラテン16上を上方から見た模式図である。プラテン16の上方には、キャリッジ24が主走査方向Yに摺動自在にガイドレール12(
図7では図示省略)に係合されている。プラテン16上には記録媒体5が載置されている。プラテン16の下面(記録媒体5が載置されている「上面」の裏の面)には、第1ヒータ28Aおよび第2ヒータ28Bが取り付けられている。第1ヒータ28Aは、副走査方向Xに関して、第1上流側ノズル列44Aおよび第2上流側ノズル列46Aと同じ位置に配置されている。図示は省略するが、第1ヒータ28Aの主走査方向Y方向の幅は、記録媒体5の幅よりも広く、幅方向において記録媒体5の全体を加熱できるようになっている。第2ヒータ28Bは、副走査方向Xについて、第1下流側ノズル列44Bおよび第2下流側ノズル列46Bと同じ位置に配置されている。第2ヒータ28Bの主走査方向Y方向の幅も、図示は省略するが、記録媒体5の幅より広く、幅方向において記録媒体5の全体を加熱できるようになっている。つまり、第1ヒータ28Aと第2ヒータ28Bとは、第1ヒータ28Aを副走査方向Xの上流側にして、副走査方向Xに並んで配置されている。重ね印刷においては、第1ヒータ28Aは、第1上流側ノズル列44Aのノズル43からプロセスカラーインクが吐出される領域E3を加熱し、プロセスカラーインクを硬化させる。また、第2ヒータ28Bは、第2下流側ノズル列46Bのノズル45から特色インクが吐出される領域E4を加熱し、特色インクを硬化させる。
【0050】
第1ヒータ28Aおよび第2ヒータ28Bは、第1ドット制御部33および第2ドット制御部34の制御により、それぞれ所定の温度を保持することができるように構成されている。第1ヒータ28Aは、第1ドット制御部33と接続され、第1ドット制御部33に設定された所定の温度(以下、「第1の温度」と呼ぶ。)に制御されている。第2ヒータ28Bは、第2ドット制御部34と接続され、第2ドット制御部34に設定された所定の温度(以下、「第2の温度」と呼ぶ。)に制御されている。
【0051】
本実施形態に係るプリンタ10では、第1ヒータ28Aおよび第2ヒータ28Bの温度を調整することによってインクの硬化速度を制御する。より詳しくは、第1ヒータ28Aの温度(=「第1の温度」)によってプロセスカラーインクの硬化速度を制御し、第2ヒータ28Bの温度(=「第2の温度」)によって特色インクの硬化速度を制御する。
【0052】
熱硬化性のインクは一般に、インクの種類ごとの適正な温度範囲内においては、温度が高いほど速く硬化する。第1実施形態の説明において説明されたように、インクの硬化が速い方がインクのドット径は小さくなり、硬化が遅い方がインクのドット径は大きくなる。ここでは、特色インクのドット径をプロセスカラーインクのドット径よりも大きくしたいので、「第2の温度」は「第1の温度」よりも低く設定されている。
【0053】
連続重ね印刷のプロセスにおいて、記録媒体5は副走査方向Xの下流側(プリンタ10の前方F側)に間欠的に移動するが、第1ヒータ28Aおよび第2ヒータ28Bと、キャリッジ24に設けられたインクヘッド40との副走査方向Xについての位置関係は不動である。従って、印刷の進行(記録媒体5の移動)にかかわらず、プロセスカラーインクの吐出される領域E3は第1ヒータ28Aによって「第1の温度」に保持され、特色インクの吐出される領域E4は第2ヒータ28Bによって「第2の温度」に保持される。上記のようにして、本実施形態に係るプリンタ10は、印刷中のどの時点でも、特色インクのドット径をプロセスカラーインクのドット径よりも大きく保っている。
【0054】
本実施形態に係るプリンタ10においては、さらに、プロセスカラーインクが吐出されてから特色インクが吐出されるまでの時間が第2吐出制御部32に登録されている。第2吐出制御部32は、登録された時間間隔を空けてプロセスカラーインク上に特色インクを吐出するように、第2下流側ノズル列46Bの第2アクチュエータ48を制御する。より詳しくは、第2吐出制御部32には、プロセスカラーインクが記録媒体5に対して特色インクよりも濡れやすいインクである場合には、プロセスカラーインクが記録媒体5に対して特色インクと同等以下の濡れ性である場合よりも、短い時間が設定される。特色インクよりもプロセスカラーインクの方が濡れやすい場合には、特色インクよりもプロセスカラーインクの方がドット径が大きくなりがちである。そこで、プロセスカラーインクの吐出と特色インクの吐出との間の時間間隔を短くすることにより、上層を形成する特色インクの吐出のタイミングを早める。特色インクの吐出タイミングを早めることにより、完全に硬化する前(=潰れて扁平化する前)のプロセスカラーインクの上に特色インクが吐出されることになり、プロセスカラーインクはより確実に特色インクに覆われる。
【0055】
本実施形態に係るプリンタ10にあっては、第1ヒータ28Aおよび第2ヒータ28Bはプラテン16の下面に設置されていたが、第1ヒータ28Aおよび第2ヒータ28Bの位置はプラテン16の下面に限られない。例えば、第1ヒータ28Aおよび第2ヒータ28Bは、第1実施形態における紫外線照射装置のようにキャリッジ24に搭載されていてもよい。キャリッジ24に搭載されていれば、記録媒体5の必要な場所を、必要なタイミングで加熱することができ、「第1の温度」と「第2の温度」の差もつけやすい。
【0056】
(第3実施形態)
第3実施形態は、プロセスカラーインクと特色インクとでドットサイズ(ドットの体積)を変える実施形態である。第3実施形態に係るプリンタ10は、第1インクヘッド41C〜41Kに第1アクチュエータ47を備え、第2インクヘッド42に第2アクチュエータ48を備えている。第1ドット制御部33は、第1アクチュエータ47に対し「第1の体積」のインクドットを形成させる「第1の制御信号」を送信するように設定されており、第2ドット制御部34は、第2アクチュエータ48に対し「第1の体積」よりも大きい「第2の体積」のインクドットを形成させる「第2の制御信号」を送信するように設定されている。つまり、特色インクのドットサイズの方が、プロセスカラーインクのドットサイズよりも大きくなるように設定されている。特色インクのドットサイズをプロセスカラーインクのドットサイズよりも大きく形成することによって、プロセスカラーインクによって描画された画像を特色インクで確実に覆うことができる。
【0057】
図8は、インクヘッド40の内部構造を示す模式図である。
図8(a)は、第1インクヘッドのうちの1つ41Cの内部構造を示す縦断面図である。
図8(b)は、第2インクヘッド42の内部構造を示す縦断面図である。先述したように、第1インクヘッド41Cは第1アクチュエータ47を備え、第2インクヘッド42は第2アクチュエータ48を備えている。
【0058】
本実施形態に係る第1アクチュエータ47および第2アクチュエータ48は、それぞれ第1ドット制御部33および第2ドット制御部34から送信される制御信号に基づき、吐出するインクのドットサイズを制御可能である。具体的には、例えば、S、M、Lの3種類のドットサイズを選択可能に構成されている。そのうちSサイズは、最も体積が小さい基本のドットサイズである。Sサイズの次に体積が小さいドットサイズはMサイズである。Mサイズは、例えば、Sサイズの2倍の体積を有している。最も体積が大きいドットサイズはLサイズである。Lサイズは、例えば、Sサイズの3倍の体積を有している。本実施形態ではドットサイズは3種類であるが、4種類以上であっても2種類であってもよく、またサイズの倍率は2倍、3倍でなくともよい。
【0059】
第1ドット制御部33は、例えば、Sサイズのドットサイズでインクを吐出させる「第1の制御信号」を、第1アクチュエータ47に対して送信する。
図8(a)は、第1インクヘッド41CからSサイズのインクドットSが吐出されている状態を示している。インクドットSは、圧力室47Aが、圧力室47Aに接触して設けられた圧電素子47Bの変位によって1回収縮させられることによって吐出される。即ち、インクドットSの体積は、圧力室47Aの1回の体積減少分である。
【0060】
第2ドット制御部34は、例えば、Lサイズのドットサイズでインクを吐出させる「第2の制御信号」を、第2アクチュエータ48に対して送信する。
図8(b)は、第2インクヘッド42からLサイズのインクドットLが吐出されている状態を示している。インクの吐出原理は、第1インクヘッド41Cにおけるものと同じである。第2アクチュエータ48は、
図8(b)において、1つのノズル当たり3つのインクドットSを吐出している。これは、極めて短い時間間隔を置いて3回吐出が行われることによってなされたものである。上記3回の吐出の間の時間間隔は極めて短いので、キャリッジ24が移動しているにも関わらず、3つのインクドットSは、ほぼ同じ地点に着弾する。3つのインクドットSが同じ地点に着弾することによって、インクドットSの3倍の体積を持つインクドットLが形成される。
【0061】
上記のようにして、第2アクチュエータ48は、第1アクチュエータ47が形成するインクドットよりも大きいサイズのインクドットを形成する。即ち、特色インクのドットサイズは、プロセスカラーインクのドットサイズよりも大きいものとなる。それにより、特色インクが画像を確実に覆い、所望の視覚効果が得られる。
【0062】
なお、上記した実施形態では、下層に吐出されるインクのドットサイズと上層に吐出されるインクのドットサイズとは異なるサイズに設定されていたが、同じ設定サイズにおいてインクドットの体積に差が設けられていてもよい。即ち、例えば同じSサイズについて、第1アクチュエータ47が吐出するインクドットよりも第2アクチュエータ48が吐出するインクドットの方が大きい体積になるように構成されていてもよい。例えばS、M、Lの3種類のドットサイズを設定可能なインクヘッドであれば、MサイズおよびLサイズの各サイズについても同様である。上記方法によっても、特色インクのドットサイズをプロセスカラーインクのドットサイズより大きくでき、特色インクによって画像を確実に覆うことができる。
【0063】
以上、本発明の好適な実施形態について説明した。しかし、上述の各実施形態は例示に過ぎず、本発明は他の種々の形態で実施することができる。
【0064】
例えば、本発明に係るプリンタ10は、特色インクのインクドットの密度が、プロセスカラーインクのインクドットの密度よりも高くなるように構成されていてもよい。ここで言う「インクドットの密度」とは、印刷部分における面積当たりのインクドットの数のことである。特色インクのインクドットを高い密度で形成する方法には、例えば、特色インクを吐出するパス数を増やす方法がある。あるいは、第2下流側ノズル列46Bのノズル45のピッチを狭くする方法や、ノズル45を2列以上に増やす方法などがある。このように、重ね印刷において特色インクのインクドットをプロセスカラーインクのインクドットよりも高い密度で形成することによって、特色インクでプロセスカラーインクをより確実に覆うことができ、所望の視覚効果を得ることができる。
【0065】
また、上記したいくつかの実施形態では、下層にプロセスカラーインクが吐出され、上層に特色インクが吐出されていたが、下層に特色インクが吐出され、上層にプロセスカラーインクが吐出されてもよい。
【0066】
上述したいくつかの実施形態においては、インクを吐出させる方式は、圧電素子の変位によって圧力室の体積を変化させる方式、いわゆるピエゾ駆動式であった。しかしながら、本発明に係る第1アクチュエータ47および第2アクチュエータ48は、例えば、二値偏向方式または連続偏向方式などの各種の連続方式、および、サーマル方式などの各種のオンデマンド方式によって実施されてもよい。本発明に係るアクチュエータの方式は、限定されない。
【0067】
(他の発明)
第1のインクジェットプリンタは、記録媒体にプロセスカラーインクを吐出する第1インクヘッドと、前記記録媒体にホワイトインクを吐出する第2インクヘッドと、前記記録媒体を副走査方向の上流側から下流側に搬送する搬送機構と、前記第1インクヘッドおよび前記第2インクヘッドを前記副走査方向に直交する主走査方向に移動させる移動機構と、前記第1インクヘッド、前記第2インクヘッド、前記搬送機構、および前記移動機構に接続され、前記第1インクヘッド、前記第2インクヘッド、前記搬送機構、および前記移動機構を制御する制御装置と、を備えている。前記第1インクヘッドと前記第2インクヘッドとは、前記主走査方向に並んで配置されている。前記第1インクヘッドは、前記副走査方向に並んだ複数のノズルからなる第1上流側ノズル列と、前記第1上流側ノズル列よりも前記副走査方向の下流側に位置しかつ前記副走査方向に並んだ複数のノズルからなる第1下流側ノズル列とを有している。前記第2インクヘッドは、前記副走査方向に並んだ複数のノズルからなる第2上流側ノズル列と、前記第2上流側ノズル列よりも前記副走査方向の下流側に位置しかつ前記副走査方向に並んだ複数のノズルからなる第2下流側ノズル列とを有している。前記制御装置は、第1吐出制御部と、第2吐出制御部と、搬送制御部と、第1ドット制御部と、第2ドット制御部と、を備えている。前記第1吐出制御部は、前記第1上流側ノズル列のノズルから前記記録媒体に向けて前記プロセスカラーインクを吐出させる。前記搬送制御部は、前記搬送機構を制御して、前記プロセスカラーインクが吐出された前記記録媒体を前記副走査方向の下流側に搬送する。前記第2吐出制御部は、前記第2下流側ノズル列のノズルから前記記録媒体上の前記プロセスカラーインクに向けて前記ホワイトインクを吐出させる。そして、前記第1ドット制御部は、前記記録媒体上に吐出される前記プロセスカラーインクの硬化後のドット径を予め定められた第1のドット径に制御し、前記第2ドット制御部は、前記プロセスカラーインク上に吐出される前記ホワイトインクの硬化後のドット径を前記第1のドット径よりも大きい第2のドット径に制御する。
【0068】
上記インクジェットプリンタによれば、上層を形成するホワイトインクのドット径を、下層を形成するプロセスカラーインクのドット径よりも大きくすることができ、それにより、下層を上層で確実に覆うことができる。そこで、ホワイトインクが画像に対して付与する視覚効果を確実に発揮させることができる。さらに、上記インクジェットプリンタによれば、第2下流側ノズル列のノズルの数を増やしたり、第2下流側ノズル列のノズルの吐出回数を増やしたりすることなく、上記効果を得ることが可能である。よって、印刷効率を低下させることがない。
【0069】
第2のインクジェットプリンタは、第1のインクジェットプリンタにおいて、
前記記録媒体上に吐出された前記プロセスカラーインクを硬化させる第1インク硬化装置と、
前記プロセスカラーインク上に吐出された前記ホワイトインクを硬化させる第2インク硬化装置と、
を備え、
前記第1ドット制御部は、前記プロセスカラーインクが吐出されてから予め定められた第1の時間が経過した後に、前記第1インク硬化装置に前記プロセスカラーインクの硬化を開始させ、
前記第2ドット制御部は、前記ホワイトインクが吐出されてから前記第1の時間よりも長い第2の時間が経過した後に、前記第2インク硬化装置に前記ホワイトインクの硬化を開始させるものである。
【0070】
第3のインクジェットプリンタは、第2のインクジェットプリンタにおいて、
前記プロセスカラーインクおよび前記ホワイトインクは、光硬化性のインクであり、
前記第1インク硬化装置は、前記プロセスカラーインクを硬化させる光を照射する第1光照射機構を備え、
前記第2インク硬化装置は、前記ホワイトインクを硬化させる光を照射する第2光照射機構を備えているものである。
【0071】
第4のインクジェットプリンタは、第2または第3のインクジェットプリンタにおいて、
前記プロセスカラーインクおよび前記ホワイトインクは、光硬化性のインクであり、
前記記録媒体上に吐出された前記プロセスカラーインクを硬化させる光を照射する第1光照射機構と、
前記プロセスカラーインク上に吐出された前記ホワイトインクを硬化させる光を照射する第2光照射機構と、を備え、
前記第1ドット制御部は、前記第1光照射機構に、予め定められた第1の強度で前記プロセスカラーインクを硬化させる光を照射させ、
前記第2ドット制御部は、前記第2光照射機構に、前記第1の強度よりも弱い第2の強度で前記ホワイトインクを硬化させる光を照射させるものである。
【0072】
第5のインクジェットプリンタは、第2から第4のいずれかのインクジェットプリンタにおいて、
前記記録媒体は、透明な記録媒体であるものである。
【0073】
また、第6のインクジェットプリンタは、記録媒体にプロセスカラーインクを吐出する第1インクヘッドと、前記記録媒体にホワイトインクを吐出する第2インクヘッドと、前記記録媒体を副走査方向の上流側から下流側に搬送する搬送機構と、前記第1インクヘッドおよび前記第2インクヘッドを前記副走査方向に直交する主走査方向に移動させる移動機構と、前記第1インクヘッド、前記第2インクヘッド、前記搬送機、および構前記移動機構に接続され、前記第1インクヘッド、前記第2インクヘッド、前記搬送機構、および前記移動機構を制御する制御装置と、を備えている。前記第1インクヘッドと前記第2インクヘッドとは、前記主走査方向に並んで配置されている。前記第1インクヘッドは、前記副走査方向に並んだ複数のノズルからなる第1上流側ノズル列と、前記第1上流側ノズル列よりも前記副走査方向の下流側に位置しかつ前記副走査方向に並んだ複数のノズルからなる第1下流側ノズル列とを有している。前記第2インクヘッドは、前記副走査方向に並んだ複数のノズルからなる第2上流側ノズル列と、前記第2上流側ノズル列よりも前記副走査方向の下流側に位置しかつ前記副走査方向に並んだ複数のノズルからなる第2下流側ノズル列とを有している。前記制御装置は、第1吐出制御部と、第2吐出制御部と、搬送制御部と、を備えている。前記第1吐出制御部は、前記第1上流側ノズル列のノズルから前記記録媒体に向けて前記プロセスカラーインクを吐出させる。前記搬送制御部は、前記搬送機構を制御して、前記プロセスカラーインクが吐出された前記記録媒体を前記副走査方向の下流側に搬送する。第2吐出制御部は、前記第2下流側ノズル列のノズルから前記記録媒体上の前記プロセスカラーインクに向けて前記ホワイトインクを吐出させる。そして、前記第1吐出制御部および前記第2吐出制御部は、前記ホワイトインクのインクドットの密度を前記プロセスカラーインクのインクドットの密度よりも高くするように設定されている。
【0074】
第6のインクジェットプリンタによれば、上層を構成するホワイトインクのインクドットの密度を、下層を構成するプロセスカラーインクのインクドット密度よりも高くすることにより、下層を上層で確実に覆うことができる。その結果、所望の視覚効果を得ることができ、印刷品質を向上させることができる。
【解決手段】プロセスカラーインク51の硬化後のドット径を制御する第1ドット制御部と、ホワイトインク52の硬化後のドット径を制御する第2ドット制御部と、インク硬化装置とを備える。第1ドット制御部は、プロセスカラーインク51が吐出されてから第1の時間が経過した後に、インク硬化装置にプロセスカラーインク51の硬化を開始させる。第2ドット制御部は、ホワイトインク52が吐出されてから第1の時間よりも長い第2の時間が経過した後に、インク硬化装置にホワイトインク52の硬化を開始させる。