特許第6283453号(P6283453)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6283453架橋樹脂成形体、摺動部材、ギア及び軸受け
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6283453
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】架橋樹脂成形体、摺動部材、ギア及び軸受け
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/00 20060101AFI20180208BHJP
   C08K 5/04 20060101ALI20180208BHJP
   F16H 55/06 20060101ALI20180208BHJP
   F16C 33/20 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
   C08L77/00
   C08K5/04
   F16H55/06
   F16C33/20 A
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-531801(P2017-531801)
(86)(22)【出願日】2017年1月10日
(86)【国際出願番号】JP2017000466
【審査請求日】2017年6月13日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】599109906
【氏名又は名称】住友電工ファインポリマー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(72)【発明者】
【氏名】岡部 昭平
(72)【発明者】
【氏名】山崎 智
【審査官】 横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−211598(JP,A)
【文献】 特開2016−199665(JP,A)
【文献】 特開平05−008300(JP,A)
【文献】 特開昭59−012936(JP,A)
【文献】 特開2005−113035(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00−13/08
F16C 33/20
F16H 55/06
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋助剤としてトリアリルイソシアヌレート又はトリメチロールプロパントリアクリートを含み、主成分としてポリアミドを含む樹脂組成物から成形される架橋樹脂成形体であって、
架橋に供されていない架橋助剤を含有し、
600℃で12秒間加熱されたときに発生するガスをガスクロマトグラフィー分析して得られる第1のクロマトグラムが、同じ条件で上記架橋助剤をガスクロマトグラフィー分析して得られる第2のクロマトグラムのピークと保持時間が等しいピークを有する架橋樹脂成形体。
【請求項2】
上記ポリアミドがポリアミド66である請求項1に記載の架橋樹脂成形体。
【請求項3】
電離放射線の照射により架橋されている請求項1又は請求項2に記載の架橋樹脂成形体。
【請求項4】
上記電離放射線の照射量が1kGy以上1000kGy以下である請求項3に記載の架橋樹脂成形体。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の架橋樹脂成形体からなる摺動部材。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の架橋樹脂成形体からなるギア。
【請求項7】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の架橋樹脂成形体からなる軸受け。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋樹脂成形体、摺動部材、ギア及び軸受けに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミドは、強度、耐摩擦摩耗性、耐薬品性等に優れることから、産業機械分野の各種部品向けに幅広く用いられている。さらに、ポリアミドを架橋させることで、上述の特性をさらに向上させることができる(特開2015−209512号公報参照)。このようなポリアミドを用いた架橋樹脂成形体は、自動車部品、機械部品、電気電子部品等に広く利用される。
【0003】
近年では、軽量化の観点から、特に高い機械的強度が要求される摺動部材、例えばギア、カム、軸受け等についても、金属部品から樹脂成形品への代替が求められつつある。このため、ポリアミドを主成分とする架橋樹脂成形体には、より高い機械的強度が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−209512号公報
【発明の概要】
【0005】
本開示の架橋樹脂成形体は、架橋助剤を含む樹脂組成物から成形される架橋樹脂成形体であって、ポリアミドを主成分とし、さらに架橋に供されていない架橋助剤を含有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、試作例1のクロマトグラム(第1のクロマトグラム)である。
図2図2は、試作例4のクロマトグラム(第1のクロマトグラム)である。
図3図3は、架橋助剤のクロマトグラム(第2のクロマトグラム)である。
図4図4は、図1のクロマトグラムからピークを抽出した図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[本開示が解決しようとする課題]
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、機械的強度に優れる架橋樹脂成形体、摺動部材、ギア及び軸受けを提供することを課題とする。
【0008】
[本開示の効果]
本開示によれば、機械的強度に優れる架橋樹脂成形体、摺動部材、ギア及び軸受けを提供することができる。
【0009】
[本発明の実施形態の説明]
本発明の一態様に係る架橋樹脂成形体は、架橋助剤を含む樹脂組成物から成形される架橋樹脂成形体であって、架橋に供されていない架橋助剤を含有する。
【0010】
当該架橋樹脂成形体は、架橋に供されていない架橋助剤を含有することによって、高分子から遊離している架橋助剤が摺動性を向上し、機械的強度、特に耐摩耗性に優れるものとなっていると推察される。
【0011】
上記架橋助剤がトリアリルシアヌレート又はトリメチロールプロパントリアクリレートであることが好ましい。このように、上記架橋助剤がトリアリルシアヌレート又はトリメチロールプロパントリアクリレートであることによって、機械的強度を向上する効果が顕著となる。
【0012】
当該架橋樹脂成形体は、ポリアミドを主成分とすることが好ましい。このように、ポリアミドを主成分とすることによって、当該架橋樹脂成形体は、強度、耐摩擦摩耗性、耐薬品性等により優れるものとなる。
【0013】
上記ポリアミドがポリアミド66であることが好ましい。このように、上記ポリアミドがポリアミド66であることによって、当該架橋樹脂成形体の強度及び耐摩擦摩耗性がよりさらに向上する。
【0014】
当該架橋樹脂成形体は、600℃で12秒間加熱されたときに発生するガスをガスクロマトグラフィー分析して得られる第1のクロマトグラムが、同じ条件で上記架橋助剤をガスクロマトグラフィー分析して得られる第2のクロマトグラムのピークと保持時間が等しいピークを有するものであることが好ましい。このように、当該架橋樹脂成形体は、600℃で12秒間加熱されたときに発生するガスが架橋助剤を含むことによって、遊離した架橋助剤による摺動性向上効果がより確実となると考えられる。
【0015】
当該架橋樹脂成形体は、電離放射線の照射により架橋されていることが好ましい。このように、当該架橋樹脂成形体が電離放射線の照射で架橋されたものであることによって、当該架橋樹脂成形体の機械的強度がより向上する。
【0016】
上記電離放射線の照射量が1kGy以上1000kGy以下であることが好ましい。このように、上記電離放射線の照射量を上記範囲内とすることによって、十分な架橋密度を得つつ照射による樹脂の劣化を抑制することができる。
【0017】
また、本発明の別の態様に係る摺動部材は、当該架橋樹脂成形体からなる摺動部材である。このように、当該架橋樹脂成形体からなる摺動部材は、機械的強度に優れるため、比較的良好な耐久性を有する。
【0018】
また、本発明の別の態様に係るギアは、当該架橋樹脂成形体からなるギアである。このように、当該架橋樹脂成形体からなるギアは、機械的強度に優れるため、比較的良好な耐久性を有する。
【0019】
また、本発明の別の態様に係る軸受けは、当該架橋樹脂成形体からなる軸受けである。このように、当該架橋樹脂成形体からなる軸受けは、機械的強度に優れるため、比較的良好な耐久性を有する。
【0020】
ここで、「主成分」とは、質量含有率が最も大きい成分を意味する。
【0021】
[本発明の実施形態の詳細]
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0022】
[架橋樹脂成形体]
当該架橋樹脂成形体は、架橋助剤を含む樹脂組成物から成形されるものであり、架橋に供されていない架橋助剤を含有する。また、当該架橋樹脂成形体は樹脂組成物中にフィラーを含んでもよい。当該架橋樹脂成形体は、このように、架橋に供されず、骨格となる樹脂から遊離している架橋助剤を含有することで、機械的強度、特に耐摩耗性や摺動性を向上すると推察される。
【0023】
当該架橋樹脂成形体は、例えば歯車、カム、軸受け等他物体と擦り合わされる摺動部材として使用することができる。つまり、当該架橋樹脂成形体の形状として特に限定されず、上記摺動部材をはじめとする任意の部材に必要な形状とすることができる。また、そのように成形された当該架橋樹脂成形体からなるギア、軸受け又はその他の摺動部材は、全て本発明の実施形態であると解釈される。
【0024】
当該架橋樹脂成形体からなる摺動部材は、低摩擦で摩耗が小さい。当該架橋樹脂成形体からなるギアは、摩耗によるバックラッシの増加が小さい。また、当該架橋樹脂成形体からなる軸受けは、摩耗が小さいので経時的な精度低下が小さい。
【0025】
<樹脂>
上記樹脂組成物の主成分とされる樹脂としては、例えばポリアミド、ポリエステル、ポリケトン等を挙げることができる。特に、上記樹脂組成物がポリアミドを主成分として含有することで、当該架橋樹脂成形体は機械的特性、耐摩擦摩耗特性及び耐薬品性に優れるものとなる。
【0026】
上記樹脂組成物は、主成分と異なる樹脂を含んでもよい。なお、主成分と異なる樹脂は単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。ただし、上記樹脂組成物は、樹脂成分として、ポリアミドのみを含むことが好ましい。
【0027】
上記ポリアミドを主成分とする樹脂組成物中のポリアミドの含有量の下限としては、70質量%が好ましく、80質量%がより好ましい。上記樹脂組成物中のポリアミドの含有量が上記下限に満たない場合、当該架橋樹脂成形体の機械的特性、耐摩擦摩耗特性及び耐薬品性が不十分となるおそれがある。
【0028】
上記ポリアミドとしては、例えばポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド66/6I、ポリアミド66/6T、ポリアミド6T/66、ポリアミド6T/6I、ポリアミド6T/6I/66、ポリアミド6T/11、ポリアミド6T−5MT、ポリアミド6T/6、ポリアミドMXD−6、ポリアミド9T、全芳香族ポリアミド等が挙げられる。これらの中でも特に弾性率や機械的強度の観点からポリアミドが好ましい。ポリアミドの中でもポリアミド66がより好ましい。
【0029】
上記ポリエステルとしては、例えばポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンナフタレート等が挙げられる。これらの中でも、特に弾性率や機械的強度の観点からポリブチレンテレフタレートが好ましい。
【0030】
上記ポリケトンとしては、例えばケトン−エチレンコポリマー、ケトン−エチレン−プロピレンターポリマー等が挙げられる。
【0031】
上記ポリアミド、ポリエステル及びポリケトン以外の樹脂としては、例えばポリオレフィン、ポリウレタン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、天然又は合成ゴム、シリコーン、ABS(スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体)樹脂、ポリカーボネート、ポリ乳酸、ポリアセタール等が挙げられる。
【0032】
上記樹脂組成物が樹脂成分としてポリアミドとポリアミド以外の樹脂とを含有する場合、上記樹脂組成物の全樹脂成分中のポリアミド以外の樹脂の割合の上限としては、20質量%が好ましく、10質量%がより好ましく、5質量%がさらに好ましい。ポリアミド以外の樹脂の割合が上記上限を超える場合、当該架橋樹脂成形体の機械的特性、耐摩擦摩耗特性及び耐薬品性が不十分となるおそれがある。
【0033】
<架橋助剤>
上記架橋助剤としては、例えばアリル化合物、アクリレート又はメタクリレート化合物、オキシム化合物、ビニル化合物、マレイミド化合物等が挙げられる。なお、架橋助剤は単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0034】
上記アリル化合物としては、例えばヘキサメチレンジアリルナジイミド、ジアリルイタコネート、ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられる。これらの中でもトリアリルイソシアヌレートがより好ましい。
【0035】
上記アクリレート又はメタクリレート化合物としては、例えばジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、アクリル酸/酸化亜鉛混合物、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、トリメタクリルイソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等が挙げられる。これらの中でもトリメチロールプロパントリアクリレートがより好ましい。
【0036】
上記オキシム化合物としては、例えばp−キノンジオキシム、p,p’−ジベンゾイルキノンジオキシム等が挙げられる。
【0037】
上記ビニル化合物としては、例えばジビニルベンゼンが挙げられる。
【0038】
上記マレイミド化合物としては、例えばN,N’−m−フェニレンビスマレイミド、N,N’−(4,4’−メチレンジフェニレン)ジマレイミド等が挙げられる。
【0039】
上記架橋助剤としては、当該架橋樹脂成形体の架橋密度をより大きくできることから、アリル化合物及びアクリレート化合物が好ましく、トリアリルイソシアヌレート及びトリメチロールプロパントリアクリレートが特に好ましい。
【0040】
当該架橋樹脂成形体は、加熱により高分子鎖のネットワークを緩めた場合に、架橋に供されていない架橋助剤が揮発するものであることが好ましい。このように、遊離した架橋助剤の自由度が高いことで、当該架橋樹脂成形体の摺動性等を向上できると考えられる。
【0041】
加熱により高分子鎖のネットワークを緩める方法としては、当該架橋樹脂成形体を短時間高温で加熱する方法が挙げられる。この場合、加熱温度(炉温)を主成分である樹脂の熱分解温度以上とし、加熱時間を主成分である樹脂の大半が熱分解しない程度の短時間とすることが好ましい。具体例としては、当該架橋樹脂成形体を600℃で12秒間加熱することで、架橋に供されていない架橋助剤を揮発させられる。
【0042】
つまり、当該架橋樹脂成形体を600℃で12秒間加熱して発生するガスをガスクロマトグラフィー分析して得られる第1のクロマトグラムが、同じ条件で架橋助剤をガスクロマトグラフィー分析して得られる第2のクロマトグラムのピークと保持時間が等しいピークを有することが好ましい。
【0043】
また、当該架橋樹脂成形体は、電離放射線の照射で架橋されたものであることが好ましい。つまり、架橋助剤による樹脂の架橋を電離放射線の照射により促進して当該架橋樹脂成形体を得ることで、架橋密度を向上でき、当該架橋樹脂成形体の強度をより向上できると考えられる。
【0044】
<フィラー>
当該架橋樹脂成形体に含有するフィラーとしては、無機フィラーが好ましい。当該架橋樹脂成形体が樹脂組成物中に無機フィラーを含有することで、当該架橋樹脂成形体の機械的強度をより向上できる。この観点から、無機フィラーとしては針状フィラーを用いることが好ましい。
【0045】
針状フィラーの平均アスペクト比の下限としては、2が好ましく、10がより好ましく、20がさらに好ましい。一方、針状フィラーの平均アスペクト比の上限としては、100が好ましく、90がより好ましく、80がさらに好ましい。針状フィラーの平均アスペクト比が上記下限未満の場合、機械的強度の向上効果が不十分となるおそれがある。逆に、針状フィラーの平均アスペクト比が上記上限を超える場合、無機フィラーが樹脂組成物中に混合する際に損傷し易くなるおそれがある。
【0046】
なお、針状フィラーの平均径(平均短径)の下限としては、0.1μmが好ましく、0.3μmがより好ましい。一方、針状フィラーの平均径の上限としては、1μmが好ましく、0.6μmがより好ましい。また、針状フィラーの平均長さ(平均長径)の下限としては、5μmが好ましく、10μmがより好ましい。一方、針状フィラーの平均長さの上限としては、40μmが好ましく、20μmがより好ましい。
【0047】
無機フィラーの主成分としては、当該架橋樹脂成形体の耐摩耗性を高めつつ機械的強度を向上できるワラステナイト及びチタン酸化合物が好ましい。このチタン酸化合物としては、チタン酸カリウム、チタン酸アルミニウム等が例示できる。
【0048】
上記樹脂組成物における無機フィラーの含有量の下限としては、樹脂成分100質量部に対し、10質量部が好ましく、20質量部がより好ましく、30質量部がさらに好ましい。一方、上記含有量の上限としては、樹脂成分100質量部に対し、60質量部が好ましく、55質量部がより好ましく、50質量部がさらに好ましい。上記含有量が上記下限未満の場合、当該架橋樹脂成形体の機械的強度を十分に大きくすることができないおそれがある。一方、上記含有量が上記上限を超える場合、上記樹脂組成物の成形性が低下するおそれがある。
【0049】
さらに、当該架橋樹脂成形体は、上記樹脂組成物中に摺動剤を含有することができる。上記樹脂組成物中に摺動剤を含有することによって、当該架橋樹脂成形体の動摩擦係数を小さくすることができるので、摺動中における物理的劣化抑制効果をより高めることができる。
【0050】
上記摺動剤としては、例えば超高分子量ポリエチレンなどのポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン・ポリヘキサフルオロプロピレンなどのフッ素樹脂、例えばポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、アミノ変性ポリジメチルシロキサン、エポキシ変性ポリジメチルシロキサン、アルコール変性ポリジメチルシロキサン、カルボキシ変性ポリジメチルシロキサン、フッ素変性ポリジメチルシロキサン等のシリコーン、例えばグラファイト等の層状無機化合物、例えばガラス繊維、チタン酸カリウムウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、ボロン酸ウィスカ等の無機繊維、例えばLCP繊維、アラミド繊維、カーボン繊維等の有機繊維、例えばアルミナ、シリカ、タルク等の無機粒子、例えばメタリン酸塩、ピロリン酸塩、リン酸水素カルシウム、リン酸水素カリウム、リン酸バリウム、リン酸リチウム、メタリン酸カルシウム、ピロリン酸亜鉛等のリン酸塩、例えばスピンドル油、タービン油、マシン油、ダイナモ油等の鉱物油、例えばモンタン酸カルシウム等のモンタン酸塩、例えば二酸化モリブテンなどが挙げられる。なお、上記摺動剤は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0051】
中でも、上記摺動剤としては、当該架橋樹脂成形体の耐摩耗性をより高められる点より、ポリオレフィンが好ましく、ポリエチレンがより好ましい。
【0052】
上記樹脂組成物中の上記摺動剤の含有量の下限としては、樹脂成分100質量部に対し、1質量部が好ましく、1.5質量部がより好ましく、2質量部がさらに好ましい。一方、上記含有量の上限としては、樹脂成分100質量部に対し、10質量部が好ましく、9.5質量部がより好ましく、9質量部がさらに好ましい。上記含有量が上記下限に満たない場合、当該架橋樹脂成形体の耐摩耗性を十分に大きくすることができず、摺動中における物理的劣化抑制効果が不十分となるおそれがある。また、上記含有量が上記上限を超える場合、上記樹脂組成物の成形性が低下するおそれがある。
【0053】
上記樹脂組成物は、必要に応じて添加剤を含んでもよい。上記添加剤としては、例えば重合禁止剤、充填剤、可塑剤、顔料、安定剤、滑剤、軟化剤、増感剤、酸化防止剤、難燃剤、離型剤、耐候剤、帯電防止剤、シランカップリング剤等が挙げられる。なお、添加剤は単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0054】
上記樹脂組成物は、各構成成分を混合することにより得ることができる。具体的には、上記樹脂組成物は、例えばポリアミド及び上記架橋助剤を混合することにより得ることができる。上記混合の際には、単軸混合機、2軸混合機等の混合機を用いることができる。また、混合の際には加熱してもよい。
【0055】
<架橋樹脂成形体の製造方法>
当該架橋樹脂成形体は、架橋助剤を含有する樹脂組成物を射出成形する射出成形工程を備える方法によって製造することができる。また、当該架橋樹脂成形体は、上記射出成形工程で得られた成形体に電離放射線を照射する電離放射線照射工程をさらに備える方法によって製造することが好ましい。
【0056】
(射出成形工程)
射出成形工程では、上記樹脂組成物を射出成形し、所望の形状を有する当該架橋樹脂成形体を得る。樹脂及び架橋助剤の種類によっては、この射出成形工程において架橋反応を進行させることができる。また、例えば加熱によりラジカルを発生して架橋助剤を活性化するラジカル発生剤を用い、射出成形工程で樹脂組成物を注入した金型を加熱することによって樹脂組成物中の樹脂を架橋してもよい。
【0057】
射出成形工程における上記樹脂組成物の温度の下限としては、200℃が好ましく、250℃がより好ましい。一方、上記温度の上限としては、350℃が好ましく、320℃がより好ましい。上記温度が上記下限に満たない場合、上記樹脂組成物の流動性が不十分となり、十分な射出成形速度が得られないおそれがある。また、上記温度が上記上限を超える場合、樹脂の熱分解を生じるおそれがある。
【0058】
射出成形工程の射出圧の下限としては、70kg/cmが好ましく、80kg/cmがより好ましい。一方、上記射出圧の上限としては、130kg/cmが好ましく、120kg/cmがより好ましい。上記射出圧が上記下限に満たない場合、充填不良が生じて所望の形状やサイズを有する当該架橋樹脂成形体を得ることができないおそれがある。また、上記射出圧が上記上限を超える場合、当該架橋樹脂成形体の周囲にバリを生じるおそれや生産性の低下を招くおそれがある。
【0059】
射出成形工程における金型温度の下限としては、40℃が好ましく、50℃がより好ましい。一方、上記金型温度の上限としては、120℃が好ましく、100℃がより好ましい。上記金型温度が上記下限に満たない場合、急激な冷却により結晶化が生じ、当該架橋樹脂成形体の表面平滑性や寸法精度に悪影響を与えるおそれがある。また、上記金型温度が上記上限を超える場合、当該架橋樹脂成形体の周囲にバリを生じるおそれや寸法精度に悪影響を与えるおそれがある。
【0060】
(電離放射線照射工程)
電離放射線照射工程では、上記射出成形工程で得られた当該架橋樹脂成形体に電離放射線を照射し、当該架橋樹脂成形体内の樹脂の架橋を促進する。
【0061】
上記電離放射線としては、例えばα線、β線、γ線、電子線、X線等が挙げられる。中でも、上記電離放射線としては、制御の容易さ、安全性等の点より電子線が好ましい。
【0062】
上記電離放射線の照射量は、特に限定されないが、十分な架橋密度を得つつ照射による樹脂の劣化を抑制する点より1kGy以上1000kGy以下が好ましい。
【0063】
例えば上記電離放射線として電子線を照射する場合、その照射量の下限としては、5kGyが好ましく、10kGyがより好ましい。一方、上記照射量の上限としては、960kGyが好ましく、480kGyがより好ましい。電子線の照射量が上記下限に満たない場合、電子線照射後の成形体において十分な架橋密度が得られないおそれがある。また、上記照射量が上記上限を超える場合、電子線の照射による成形体の分解や劣化を生じるおそれがある。
【0064】
上記電離放射線の照射は、常温で行うことができる。また、上記電離放射線の照射は、低酸素又は無酸素の雰囲気下において行うことが好ましい。
【0065】
[その他の実施形態]
上記開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0066】
当該架橋樹脂成形体を製造するに際しては、例えば押出成形法、プレス成形法、ブロー成形法、真空成型法等の上記射出成形法以外の成形法を用いて上記樹脂組成物を所望の形状に成形してもよい。
【0067】
また当該架橋樹脂成形体を製造するに際しては、化学架橋法により上記樹脂組成物を架橋してもよい。
【0068】
さらに当該架橋樹脂成形体は、シャフト等の金属部品が組み込まれてもよい。
【実施例】
【0069】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0070】
<試作例1>
まず、100質量部の樹脂及び1質量部の架橋助剤を混合し、樹脂組成物を得た。なお、樹脂としては、旭化成社の「レオナ 1402S」(ポリアミド66)を用い、架橋助剤としては、エボニックデグサ社の「TAICROS」(トリアリルイソシアヌレート:TAIC)を使用した。
【0071】
次に、上記樹脂組成物を2軸混合機に投入し、240℃で溶融混合した。溶融混合後、2軸混合機から樹脂組成物を吐出し、その吐出物を水冷し細断して、ペレット状の樹脂組成物を得た。次に、ペレット状の樹脂組成物を射出成形機に投入し、射出成形機による射出成形を行い、40mm×40mm×2mmの板状成形体を得た。なお、射出成形の条件は、射出温度280℃、金型温度80℃、射出圧100kg/cm、保圧時間10秒とした。
【0072】
次に、上記板状成形体に照射量が150kGyとなるよう電子線を照射して、試作例1の試験片を得た。
【0073】
<試作例2>
電子線の照射量を1000kGyとした以外は試作例1と同様にして、試作例2の試験片を得た。
【0074】
<試作例3>
電子線の架橋助剤の配合量を5質量部とした以外は試作例1と同様にして、試作例3の試験片を得た。
【0075】
<試作例4>
電子線の架橋助剤の配合量を10質量部とした以外は試作例1と同様にして、試作例4の試験片を得た。
【0076】
<試作例5>
電子線の架橋助剤の配合量を10質量部とし、電子線の照射量を5kGyとした以外は試作例1と同様にして、試作例5の試験片を得た。
【0077】
<試作例6>
架橋助剤として、新中村化学工業社の「A−TMPT」(トリメチロールプロパントリアクリレート:TMPT)を使用した以外は試作例1と同様にして、試作例6の試験片を得た。
【0078】
<試作例7>
架橋助剤の配合量を5質量部とした以外は試作例6と同様にして、試作例7の試験片を得た。
【0079】
<試作例8>
架橋助剤の配合量を10質量部とした以外は試作例6と同様にして、試作例8の試験片を得た。
【0080】
<試作例9>
樹脂としてDSM社の「スタニルTW341−N」(ポリアミド46)を用いた以外は試作例3と同様にして、試作例9の試験片を得た。
【0081】
<試作例10>
樹脂として東レ社の「アミランCM1007」(ポリアミド6)を用いた以外は試作例3と同様にして、試作例10の試験片を得た。
【0082】
<試作例11>
樹脂としてクラレ社の「ジェネスタN1000A」(ポリアミド9T)を用いた以外は試作例3と同様にして、試作例11の試験片を得た。
【0083】
<試作例12>
樹脂として東洋紡社の「バイロアミドMJ300」(ポリアミド6T/11)を用いた以外は試作例3と同様にして、試作例12の試験片を得た。
【0084】
<試作例13>
樹脂としてポリプラスチック社の「ジュラネックス800F」(ポリブチレンテレフタレート:PBT)を用いた以外は試作例3と同様にして、試作例13の試験片を得た。
【0085】
<試作例14>
樹脂として暁星社の「M330」(ポリケトン)を用いた以外は試作例3と同様にして、試作例14の試験片を得た。
【0086】
<試作例15>
樹脂の配合量を70質量部とし、ガラスフィラーを30質量部加えた以外は試作例3と同様にして、試作例15の試験片を得た。なお、上記ガラスフィラーとしては日本電気硝子社の「ECS03T」を使用した。
【0087】
<試作例16>
電子線の照射量を1200kGyとした以外は試作例3と同様にして、試作例16の試験片を得た。
【0088】
<試作例17>
電子線の照射量を1200kGyとした以外は試作例4と同様にして、試作例17の試験片を得た。
【0089】
<試作例18>
架橋助剤を配合せず、電子線を照射しなかった以外は試作例3と同様にして、試作例18の試験片を得た。
【0090】
<試作例19>
架橋助剤の配合量を0.1質量部とした以外は試作例3と同様にして、試作例19の試験片を得た。
【0091】
<試作例20>
電子線の照射量を1200kGyとした以外は試作例1と同様にして、試作例20の試験片を得た。
【0092】
<試作例21>
ラジカル発生剤を1質量部配合し、成型後に200℃で1時間加熱してラジカルを発生させることによって架橋助剤を活性化して樹脂を架橋し、電子線を照射しなかった以外は試作例3と同様にして、試作例21の試験片を得た。なお、上記ラジカル発生剤としては日油社の「ノフマーBC90」(2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン:DMDFB)を使用した。
【0093】
以上の試作例1〜21の配合及び電子線照射量を、表1及び表2にまとめて示す。
【0094】
<ガスクロマトグラフィー分析>
上記試作例の各試験片を600℃で12秒間加熱して発生するガスをガスクロマトグラフィー分析して第1のクロマトグラムを取得した。また、同じ条件で上記架橋助剤を単体でガスクロマトグラフィー分析して第2のクロマトグラムを取得した。この第2のクロマトグラムによって架橋助剤のピーク保持時間を特定し、各試験片の第1のクロマトグラムから、架橋助剤のピークと保持時間が等しいピークを抽出した。これにより、各試験片の第1のクロマトグラムに第2のクロマトグラムの架橋助剤のピークと保持時間が等しいピークが存在するか否かを判定した。
【0095】
なお、ガスクロマトグラフは、アジレントテクノロジー社の「5977MSD」を使用した。
【0096】
図1図2及び図3は、それぞれ試作例1、試作例18及び架橋助剤を上記手法によりガスクロマトグラフィー分析して得たクロマトグラムを示す。図3の架橋助剤のクロマトグラムにおけるピークの保持時間は7.737分であった。なお、この保持時間は7.737分のピークは、マススペクトル分析により導出した分子量がトリアリルイソシアヌレートの分子量に一致していた。
【0097】
続いて、図4に、図1及び図2のクロマトグラムから、保持時間7.737分近傍のピーク(ベースラインより突出する部分)を抽出したものを示す。図4のように保持時間は7.737分近傍にピークが存在するものは、架橋に供されていない架橋助剤を含有し、保持時間は7.737分近傍にピークが存在しないものは、架橋に供されていない架橋助剤を含有していないものと判断される。表1及び表2には、このようにして判定された架橋に供されていない架橋助剤の有無を合わせて示す。
【0098】
<摩耗量>
上記試作例について、機械的強度の指標として、摩耗試験による摩耗量を測定した。具体的には、上記試作例の各試験片の表面に対し、25℃の雰囲気で、回転軸を中心とする1つの円周上に配置された直径4.7mmの鉄製の3本のピンを荷重4MPa、速度30m/minで30分間摺動させるピンオンディスク型摩耗試験を行い、その摩耗量[mg]を測定した。なお、上記ピンの先端は平面状とした。表1及び表2には、この摩耗量を合わせて示す。
【0099】
【表1】
【0100】
【表2】
【0101】
表1及び表2に示すように、架橋に供されていない架橋助剤を含有していた試作例1〜17は、摩耗量が比較的小さかったのに対し、架橋に供されていない架橋助剤を含有していなかった試作例18〜21では、比較的摩耗量が大きかった。
【要約】
本発明の一態様の架橋樹脂成形体は、架橋助剤を含む樹脂組成物から成形される架橋樹脂成形体であって、架橋に供されていない架橋助剤を含有する。
図1
図2
図3
図4