(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記搬送速度または前記往復速度が変更された場合に、前記塗布ノズルからの塗布剤の単位時間あたりの吐出量を制御することを特徴とする、請求項6または請求項7に記載の塗布装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態に係る塗布装置1000について図面を参照して説明する。なお、この塗布装置1000は、伸縮性を備えた通気性材料の一例である衣類用の生地に、塗布剤の一例である熱可塑性樹脂の接着剤を塗布する装置であって、その後、別途設置された接着装置により、接着剤が塗布された生地と他の生地とを接着する。上述のようにこの塗布装置1000による塗布対象は通気性材料としているが、通気性を必ずしも備える必要はなく、たとえば通気性を備えない(または十分な通気性を備えない)雨合羽、スキーウェア、スノボウェア、ウェットスーツ等に用いられる素材(シール性が必要で多少の伸びが必要な素材)であっても構わない。この場合においては、後述する搬送台1410に設けられた搬送台吸引孔1412による吸引を行わないで(または弱めて)、材料を搬送するようにすることが好ましい。
【0019】
なお、この塗布装置1000により接着剤を塗布した直後に(場合によっては、接着機構を設けた塗布装置により)接着剤が塗布された生地と他の生地とを接着するようにしても構わない。本実施の形態に係る塗布装置1000に使用する接着剤の物性を、加熱して生地に塗布した直後から、常温状態において被塗布対象の生地からは剥がれず他の物体に付着しても接着することのないものとし、接着装置において加熱することにより、接着剤が塗布された生地と他の生地とを接着するようにしている。このため、この塗布装置1000で接着剤を生地に塗布した後に、別途設置された接着装置により生地を接着すること
を好適に行うことができる。このようにすると、接着装置において生地の接着部分をセッティングする場合に好ましい。
【0020】
また、伸縮性を備えた通気性材料は生地に限定されるものではなく、たとえば、シート状で通気性および伸縮性を有する材料(素材)であればよく、伸縮性の生地や、その他、ストレッチ素材、ゴム素材、ポリウレタンフィルム等の伸縮性フィルム類、およびこれらを複合して構成した複合体等が挙げられる。また、同一の材料どうしを接着する場合のみならず、異なる材料どうしを接着する場合に用いられるものであっても構わない。すなわち、本発明における被塗布対象は、生地等に限定されるものではなく、伸縮性を備えた通気性材料であれば構わない。
【0021】
また、詳しくは動作として後述するが、本実施の形態に係る塗布装置1000により接着剤が塗布される被塗布対象は肌着を形成する生地であるとし、この生地を接着することにより肌着が形成される。さらに、この肌着は、アウターの衣服(たとえば薄手のニット)の下に着用でき、肌触りが良く、かつ、アウターに響かない、女性用のアンダーシャツであるとする。
【0022】
[全体構成]
図1に本実施の形態に係る塗布装置1000の全体斜視図を、
図2にその拡大図をそれぞれ示す。これらの
図1および
図2に示すように、この塗布装置1000は、大きくは、被塗布対象であって伸縮性を備えた通気性材料の一例である生地を搬送する搬送部1100と、接着剤を生地に繰り返しパターンで塗布する塗布部1200と、繰り返しパターンを形成するために塗布ノズル1240を往復移動させる往復移動部1300と、生地の厚みに応じて塗布ノズル1240と生地との間隔を一定に保持する離隔移動部1400と、この塗布装置1000の全体を制御する制御部1500と、この塗布装置1000の各部で使用される圧縮空気を生成する空気機械(圧縮機(コンプレッサー)または送風機(ブロワ)であって以下においてはコンプレッサー1600と記載する)と、フレーム1710ならびにこのフレーム1710を支持するキャスター1720およびアジャスタ1730とで構成される。
【0023】
この塗布装置1000は、生地を搬送する搬送部1100に搬送中の生地を支持する搬送台1410を設けて、生地を挟んで搬送台1410に対向するように設けられ、接着剤を生地に非接触で塗布する塗布ノズル1240とを備え、搬送台1410および塗布ノズル1240の少なくとも一方を、生地の搬送方向と異なる方向に往復移動させる往復移動部1300を設けたことを特徴とする。この塗布装置1000においては、往復移動部1300が、塗布ノズル1240を生地の搬送方向と異なる方向に往復移動させるが、搬送台1410を生地の搬送方向と異なる方向に往復移動させるようにすれば(すなわち、生地の搬送方向と同じ方向に往復移動させなければ)構わない。また、この塗布装置1000においては、往復移動部1300が、塗布ノズル1240を生地の搬送方向と直交する方向に往復移動させるが、異なる方向であれば直交する方向でなくても構わない。
【0024】
さらに、この塗布装置1000は、生地の搬送方向において塗布ノズル1240の上流側に設けられ、生地の厚みを測定する厚み検知センサ1430と、計測した生地の厚みに基づいて、搬送台1410および塗布ノズル1240の少なくとも一方を離隔/近接させる離隔移動部1400とを設けたことを特徴とする。この塗布装置1000においては、離隔移動部1400が、搬送台1410を下降させて塗布ノズル1240から離隔させるが、塗布ノズル1240を上昇させて搬送台1410から離隔させるようにしても、または、搬送台1410を下降させて塗布ノズル1240を上昇させて互いに離隔させるようにしても、構わない。なお、離隔移動部1400は、このような離隔動作の逆動作として近接動作を行うことができる。
【0025】
さらに、この塗布装置1000の搬送台1410には、生地の一部を吸引する搬送台吸引孔1412が設けられ、この搬送台吸引孔1412は、塗布ノズル1240による塗布領域に重複する吸引領域または前記塗布領域の近傍の吸引領域を吸引することを特微とする。このような搬送台吸引孔1412により、搬送台1410上の生地の浮き上がりを防止することができ、塗布ノズル1240と生地とのクリアランスを一定に保つことができる。
【0026】
さらに、この塗布装置1000の搬送部1100には、生地の搬送方向において塗布ノズル1240の下流側に設けられた少なくとも1本の生地搬送用の吸引ローラ1110と、吸引ローラ1110を駆動する搬送駆動モータ1140とを設け、吸引ローラ1110の一部(この塗布装置1000においては上方)において吸引孔1112から生地を吸引することを特徴とする。
【0027】
さらに、この塗布装置1000の制御部1500は、生地における伸縮性の異なる部位に対し、伸縮性に応じて、搬送部1100による生地の搬送速度または/および往復移動部1300の往復速度を制御することを特徴とする。この塗布装置1000においては、制御部1500は、搬送部1100による生地の搬送速度を制御するものとする。この場合において、制御部1500は、接着剤の塗布パターンの繰り返しを、伸縮性が小さい(伸びにくい)部位ではその繰り返しの単位長さが短くなるように、伸縮性が大きい(伸びやすい)部位ではその繰り返しの単位長さが長くなるように制御する。さらに、制御部1500は、このように接着剤の塗布パターンの繰り返しピッチが変更される場合に、塗布ノズル1240からの接着剤の単位時間あたりの吐出量を制御することを特徴とする。この場合において、制御部1500は、塗布ノズル1240から吐出されて生地に形成された接着剤の太さが一定になるように制御することを特徴とする。さらに、制御部1500は、搬送速度が低下された場合(接着剤の塗布パターンの繰り返しピッチが短くなった場合)または往復速度が低下された場合に(接着剤の塗布パターンの繰り返しピッチが長くなった場合)、接着剤の吐出量を低下させるように制御することを特徴とする。
【0028】
このような特徴を備えた本実施の形態に係る塗布装置1000の各部について説明する。以下の説明においては、
図1および
図2に加えて、塗布装置1000の正面図を示す
図3およびその拡大図である
図6、塗布装置1000の側面図を示す
図4およびその拡大図である
図7、塗布装置1000の上面図を示す
図5を適宜参照する。
[各部構成]
・搬送部1100
搬送部1100は、被塗布対象である生地を矢示T方向へ搬送する。この搬送部1100は、生地を吸引搬送する吸引ローラ1110と、生地の搬送方向下流側において吸引ローラ1110との間に生地を挟持する第1挟持ローラ1120と、生地の搬送方向上流側において搬送台1410との間に生地を挟持する第2挟持ローラ1130と、これらの吸引ローラ1110、第1挟持ローラ1120および第2挟持ローラ1130を回転駆動させる搬送駆動モータ1140とで構成される。
【0029】
吸引ローラ1110は、搬送駆動モータ1140から駆動ベルト1142により回転力が伝達されて矢示R方向(
図2、
図7)に回転されるとともに、その上方の角度α(
図7)の領域において生地を吸引する(αは鉛直上方から生地搬送下流方向へ90度〜180度程度)。この吸引ローラ1110の上面高さは、運転位置(
図2の矢示Z(2)側)における搬送台1410の上面高さに対応させており、搬送台1410から吸引ローラ1110へ生地が滑らかに搬送される。なお、吸引ローラ1110における吸引範囲については、上記の角度αに限定されるものでなく、吸引範囲は生地搬送駆動力が伝わり、生地が
離れる時に吸引ローラに巻き付かないように、生地種類、搬送張力、搬送速度等と合わせて適宜決めれば良い。たとえば、角度αが鉛直上方から生地搬送方向上流側10度から始まってもよい。
【0030】
この吸引ローラ1110の周囲には多数の吸引孔1112が設けられ、その内部に設けられた回転しない吸引機構(たとえばコンプレッサー1600から供給される圧縮空気により負圧を発生させるエジェクタやブロアを用いた吸引機構)により、上述した角度αの領域における吸引孔1112から生地を吸引する。
第1挟持ローラ1120は、運転位置(
図7の矢示S(2)方向)と準備位置(
図7の矢示S(1)方向)とに回動可能な第1アーム1124で保持されるとともに、少なくとも運転位置において搬送駆動モータ1140から第1駆動ベルト1122により回転力が伝達されて矢示R方向(
図2、
図7)に回転される。この運転位置において(生地の搬送方向下流側において)、第1挟持ローラ1120は、吸引ローラ1110とその外周どうしが接するように設けられ、これらの吸引ローラ1110と第1挟持ローラ1120とにより生地を挟持して(さらには吸引ローラ1110により吸引して)生地を矢示T方向へ搬送する。第1挟持ローラ1120の外周面は、生地との摩擦係数が高い材料等で覆われているか、第1挟持ローラ1120そのものが生地との摩擦係数が高い材料等で構成されている。
【0031】
第2挟持ローラ1130は、運転位置(
図4の矢示U(2)方向)と準備位置(
図4の矢示U(1)方向)とに回動可能な第2アーム1134で保持されるとともに、少なくとも運転位置において搬送駆動モータ1140から第2駆動ベルト1132により回転力が伝達されて第1挟持ローラ1120と同じ矢示R方向(
図2、
図7)に回転される。この運転位置において(生地の搬送方向上流側において)、第2挟持ローラ1130は、搬送台1410と接するように設けられ、これらの搬送台1410と第2挟持ローラ1130とにより生地を挟持して(さらには吸引ローラ1110により吸引して吸引ローラ1110および第1挟持ローラ1120で挟持して)生地を矢示T方向へ搬送する。第2挟持ローラ1130の外周面も第1挟持ローラ1120と同様に、生地との摩擦係数が高い材料等で覆われているか、第2挟持ローラ1130そのものが生地との摩擦係数が高い材料等で構成されている。
【0032】
これらの第1挟持ローラ1120および第2挟持ローラ1130は、以下の違いがある。第1挟持ローラ1120は、単体で運転位置に回動して、吸引ローラ1110とともに、生地搬送方向下流側で生地を挟持して生地を矢示T方向へ搬送する。第2挟持ローラ1130は、単体で生地を搬送するのではなく、第1挟持ローラ1120が運転位置にあるときに第2挟持ローラ1130を運転位置に回動させて、生地搬送方向上流側で生地を搬送台1410との間で挟持して生地を矢示T方向へ搬送する。たとえば、第1挟持ローラ1120のみを使用するのは生地が小さめの筒状であって、生地搬送方向上流側で生地を挟持して搬送する必要がない場合が、第1挟持ローラ1120(生地搬送方向下流側)および第2挟持ローラ1130(生地搬送方向上流側)を使用するのは生地が大きな平面状であって、生地搬送方向上流側および下流側で生地を挟持して搬送する必要がある場合が、それぞれ想定できる。このように想定できるが、さらに、搬送する材料(ここでは生地)によっては、第1挟持ローラ1120は使用せずに材料を搬送することも想定できる。また、吸引ローラ1110に吸引孔1112のない搬送ローラを使用しても構わない。この場合には、この搬送ローラの表面に搬送する材料をグリップする材料および/または表面加工を施すことが好ましい。
【0033】
なお、生地の搬送に関与する、これらの吸引ローラ1110、第1挟持ローラ1120および第2挟持ローラ1130には、以下のように回転力が伝達される。吸引ローラ11
10には、駆動ベルト1142(図示しない回転力伝達ベルトがある場合を含む)を介して、搬送駆動モータ1140から回転力が伝達され、第1挟持ローラ1120および第2挟持ローラ1130には、第1駆動ベルト1122および第2駆動ベルト1132(図示しない回転力伝達ベルトがある場合を含む)を介して、挟持駆動モータ1150から回転力が伝達される。この場合において、制御部1500により搬送駆動モータ1140の回転数が変化されて吸引ローラ1110の周速度が変化すると、第1挟持ローラ1120の周速度および第2挟持ローラ1130の周速度が吸引ローラ1110の周速度に同期して変化するように、回転力伝達機構(挟持駆動モータ1150速度制御、駆動ベルトおよびプーリ等)が構成されている。また、一部のローラは従動ローラであっても構わない。
【0034】
・塗布部1200
塗布部1200は、たとえば熱可塑性樹脂の接着剤を、塗布ノズル1240から生地に塗布する。塗布部1200は、塗布ノズル1240と、必要な量の接着剤をストレージするとともに所定の粘度になるように温度が維持される接着剤ストレージ部1210と、接着剤ストレージ部1210に連結されて加熱されて所望の粘度となった接着剤を塗布ノズル1240へ送り込むギヤポンプ1230と、そのギヤポンプ1230を回転させるギヤポンプモータ1220とで構成される。これらの接着剤ストレージ部1210、ギヤポンプモータ1220、ギヤポンプ1230および塗布ノズル1240は、基本的に公知のものである。この塗布部1200による塗布ノズル1240へ接着剤を送り込む量(すなわち塗布ノズル1240からの接着剤吐出量)は、その詳細については後述するが、制御部1500により制御される。
【0035】
ギヤポンプモータ1220は、制御部1500によりその回転数が変化されて、ギヤポンプ1230から塗布ノズル1240へ送り込まれる接着剤の量を制御して、塗布ノズル1240から生地へ塗布される接着剤の量が制御される。
塗布ノズル1240のノズル径は、被塗布対象の生地の種類、繰り返しパターン(たとえば往復移動部1300による塗布ノズル1240の振幅)、生地の単位面積あたりの塗布量等により決定される。
【0036】
塗布ノズル1240は、往復移動部1300および厚み検知センサ1430とともに、退避エアシリンダ1350(
図8にのみ記載)により、運転位置(
図2の矢示Y(2)方向)と準備位置(
図2の矢示Y(1)方向)とに移動される。準備位置において、生地を準備したり、この塗布装置1000のメンテナンス作業が行われる。
・往復移動部1300
往復移動部1300は、生地の搬送方向とは異なる方向へ、塗布ノズル1240を所望の振幅で繰り返し往復移動させる。このように往復移動部1300による塗布ノズル1240の往復移動と、搬送部1100による生地の搬送とにより、繰り返しパターンで生地に接着剤が塗布される。この往復移動部1300による塗布ノズル1240の往復移動速度は、その詳細については後述するが、制御部1500により制御される。
【0037】
往復移動部1300は、塗布ノズル1240を保持するノズルホルダー1330と、このノズルホルダー1330を保持するホルダーステー1340と、ホルダーステー1340を介してノズルホルダー1330と連結されたクランク1320と、クランク1320を駆動するクランクモータ1310とで構成される。これらの塗布ノズル1240、ノズルホルダー1330およびホルダーステー1340が、クランク1320およびクランクモータ1310により、往復移動(
図2の矢示X−X方向)される。この塗布装置1000においては、このようなクランク1320を用いて往復移動を実現させているが、往復移動を実現させる機構はこのようなクランク1320に限定されるものではない。
【0038】
塗布ノズル1240の振幅となる、この往復移動の往復移動部1300におけるストローク(後述する
図12に示す接着パターンPの振幅)は、接着剤の塗布領域における生地搬送方向と垂直な方向の幅(生地接着幅)に基づいて決定される。
なお、厚み検知センサ1430は、ノズルホルダー1330に保持されないので往復移動部1300により往復移動するものではないが、厚み検知センサ1430は、塗布ノズル1240および往復移動部1300(ホルダーステー1340、ノズルホルダー1330、ノズルホルダー1330、クランク1320およびクランクモータ1310)とともに、退避エアシリンダ1350により、運転位置(
図2の矢示Y(2)方向)と準備位置(
図2の矢示Y(1)方向)とに移動される。
【0039】
上述したように、この往復移動部1300においては、生地の搬送中に塗布ノズル1240を所望の振幅で繰り返し往復移動させるが、生地の搬送停止中または間欠搬送中に塗布ノズル1240を往復移動させても構わない。すなわち、生地の搬送および停止と塗布ノズル1240の往復移動との組合せにより色々な塗布パターン(たとえば後に図示するジグザク状ではなくパルス状のような塗布パターン)を実現することができる。
【0040】
・離隔移動部1400
離隔移動部1400は、生地方向上流側に設けられた厚み検知センサ1430により検知した生地の厚みに応じて、塗布ノズル1240から搬送台1410を離隔位置(
図2の矢示Z(1)方向)へ離隔させたり、塗布ノズル1240へ搬送台1410を運転位置(
図2の矢示Z(2)方向)へ接近させたりする。たとえば、生地の二重部等で厚みが厚くなると塗布ノズル1240から搬送台1410を離隔位置へ離隔させて、生地の二重部等を通過すると塗布ノズル1240へ搬送台1410を運転位置へ接近させる。この離隔移動部1400は、搬送方向に連続的に厚みが変わる材料(ここでは生地)に塗布する場合、厚み検知センサ1430により検知した材料の厚みに応じて、塗布ノズル1240と材料とを相対的に離隔/接近させる制御を行うこともできる。この離隔移動部1400は、このように塗布ノズル1240から離隔される搬送台1410と、離隔動作を実現する離隔エアシリンダ1420と、生地の厚みを検知する厚み検知センサ1430とで構成される。この離隔移動部1400による搬送台1410を塗布ノズル1240から離隔するタイミングは、その詳細については後述するが、制御部1500により制御される。
【0041】
搬送台1410は、
図2に示すように断面が略L字形状であって、角部は斜めに形成されて生地が矢示T方向に搬送されやすいように構成されている。この搬送台1410の生地搬送面(上面)には、生地を吸引するための搬送台吸引孔1412が設けられている。この搬送台吸引孔1412は、搬送台吸引孔1412による吸引範囲に、塗布ノズル1240による接着剤の塗布領域を少なくとも包含する位置に設けられる。逆に、この搬送台吸引孔1412は、塗布ノズル1240による接着剤の塗布領域に、搬送台吸引孔1412による吸引範囲を少なくとも包含する位置に設けられても構わない。すなわち、搬送台吸引孔1412は、塗布ノズル1240による接着剤の塗布領域と搬送台吸引孔1412による吸引範囲とが重複する領域を備えていれば構わない。さらに、塗布ノズル1240による接着剤の塗布領域と、搬送台吸引孔1412による吸引範囲とが、重複する領域を必ず備える必要はない。たとえば、塗布ノズル1240による接着剤の塗布領域の周囲が搬送台吸引孔1412による吸引範囲であっても構わない。さらに、搬送台吸引孔1412による吸引範囲は、1つの領域に限定されるものではなく、複数の領域に分割されていても構わない。このような搬送台吸引孔1412により、搬送台1410上の生地の浮き上がりを防止することができ、塗布ノズル1240と生地とのクリアランスを一定に保つことができれば、搬送台吸引孔1412による吸引範囲(塗布ノズル1240による接着剤の塗布領域との相対的位置および領域数等)は限定されるものではない。
【0042】
また、搬送台1410の生地搬送面であって塗布ノズル1240による塗布領域近傍には、生地搬送方向に対して垂直方向の生地の位置を規制する規制板1414を備える。さらに具体的には、本実施の形態においては生地端に接着剤を塗布するので、この規制板1414は生地端に対応する位置に設けられている。
[制御ブロック]
このような構成を備えた塗布装置1000は、制御部1500により制御される。制御部1500は、たとえば、各種計器を内部に備えた制御盤1510と、操作者の入力デバイスである各種の操作ボタン1520と、操作者への出力デバイスである各種の表示計器1530と、操作者の入出力デバイスであるタッチパネル1540とで構成される。
【0043】
さらに具体的に、
図8に示す制御ブロック図を参照して、制御部1500について説明する。
図8に示すように、制御部1500は、予め記憶されたプログラムおよびパラメータ(搬送速度等)に従って各種の入力信号を受けて演算処理を実行し各種の出力機器への出力信号(制御信号)を出力する演算装置(ここではCPU1800とする)と、厚み検知センサ1430および操作ボタン1520からの入力信号を受けるための入力インターフェイス1810と、タッチパネル1540からの入力信号を受けたりタッチパネル1540に各種情報を表示するため入出力インターフェイス1820と、上述した各種モータを制御するためのモータ駆動ドライバ1830と、上述した各種エアシリンダを制御するためのシリンダ駆動ドライバ1840と、コンプレッサー1600を駆動するための出力インターフェイス1850と、表示計器1530に各種情報を表示するための表示ドライバ1860と、図示しないメモリ(プログラムおよびパラメータを記憶)で構成される。
【0044】
CPU1800には、バス等で、入力インターフェイス1810、入出力インターフェイス1820、モータ駆動ドライバ1830、シリンダ駆動ドライバ1840、出力インターフェイス1850および表示ドライバ1860が接続されている。入力インターフェイス1810には、厚み検知センサ1430および操作ボタン1520が接続され、入出力インターフェイス1820には、タッチパネル1540が接続され、モータ駆動ドライバ1830には、搬送駆動モータ1140、挟持駆動モータ1150、ギヤポンプモータ1220およびクランクモータ1310が接続され、シリンダ駆動ドライバ1840には、退避エアシリンダ1350および離隔エアシリンダ1420が接続され、出力インターフェイス1850には、コンプレッサー1600が接続され、表示ドライバ1860には、表示計器1530が接続されている。このようにシリンダ駆動ドライバ1840には、エアシリンダが接続されて動作が制御されるとして説明したが、エアシリンダでなく電動シリンダであっても構わない。
【0045】
以下に、この塗布装置1000において、動的制御される、離隔移動部1400における搬送台1410の離隔制御、往復移動部1300における塗布ノズル1240の往復移動速度制御、および、塗布部1200における塗布ノズル1240からの接着剤吐出量制御について詳しく説明する。なお、動的制御とは、被塗布対象である1つの生地が塗布されている間(塗布開始から塗布終了までの間)における制御であって、塗布開始から塗布終了までの間は一定の動作しかしない静的制御(生地の搬送速度制御)に対する制御であるとする。
【0046】
[離隔制御]
以下に、離隔移動部1400における搬送台1410の離隔制御について説明する。
制御部1500のCPU1800には、厚み検知センサ1430が検知した生地の厚みについての信号が入力され、CPU1800は、シリンダ駆動ドライバ1840を介して離隔エアシリンダ1420を動作(上昇動作/下降動作)させる。
【0047】
CPU1800は、厚み検知センサ1430から生地の厚みが変化した入力信号を受けると、演算したタイミングで、離隔エアシリンダ1420の動作指令信号(下降指令信号)をシリンダ駆動ドライバ1840へ出力する。離隔エアシリンダ1420が下降動作すると、搬送台1410が所定の距離分(ストローク分)だけ下降する。
離隔エアシリンダ1420のストロークは、たとえば、生地が二重部(生地の厚みが2倍)を備える場合、ストロークは生地の厚みとほぼ同じとなる。すなわち、生地の厚みが厚くなった分だけ、搬送台1410を下降させて、搬送台1410と塗布ノズル1240とのクリアランスを一定とする。なお、厚み検知センサ1430は、被塗布対象である生地が透過性を備えることを前提として、光電式の透過センサである。
【0048】
より具体的には、CPU1800は、厚み検知センサ1430が生地の二重部を検知すると、厚み検知センサ1430と塗布ノズル1240との距離から算出されるタイミング(二重部が塗布ノズル1240に到達したタイミング)で搬送台1410を所定の距離分だけ下降させて、二重部の長さから算出されるタイミング(二重部が塗布ノズル1240を通過したタイミング)で搬送台1410を元に戻す。このタイミングは、設定された生地の搬送速度に基づいて算出される。
【0049】
なお、生地搬送方向下流側であって塗布ノズル1240のごく近傍に厚み検知センサをさらに追加して設けて、この追加した厚み検知センサにより二重部を検知しなくなったタイミング(塗布ノズル1240を通過したタイミング)で搬送台1410を元に戻すようにしても構わない。
このように厚み検知センサ1430は、光電式の透過センサとしたが、レーザー変位計であっても構わない、さらに、このように厚み検知センサ1430の代わりにレーザー変位計を生地搬送方向上流側であって塗布ノズル1240のごく近傍に設けて、生地の塗布面と塗布ノズル1240とを常に一定の間隔とするように、搬送台1410および/または塗布ノズル1240を上下方向に任意の位置で位置制御可能なステッピングモータで移動させるように制御しても構わない。すなわち、生地の厚みが厚くなると搬送台1410および/または塗布ノズル1240を離隔させ、生地の厚みが薄くなると搬送台1410および/または塗布ノズル1240を接近させて、搬送台1410と塗布ノズル1240とのクリアランスを一定とする。
【0050】
[塗布ノズル往復速度制御]
以下に、往復移動部1300における塗布ノズル1240の往復移動速度制御について説明する。
制御部1500のCPU1800は、パラメータとしてメモリに記憶された生地における伸縮性の異なる部位についての情報に基づいて、伸縮性に応じて、往復移動部1300の往復速度を制御するために、モータ駆動ドライバ1830を介してクランクモータ1310の回転速度を制御する。
【0051】
たとえば、生地の伸縮性が、小さい部位(A部)、中ぐらいの部位(B部)、大きい部位(C部)と順に塗布ノズル1240に到達する場合を想定する。メモリには、これらの部位の長さ(または生地の搬送速度から算出されるこれらの部位を塗布する時間)、これらの部位における接着パターンPのピッチ(後述する接着パターンPの繰り返し単位の長
さであるピッチ)が記憶されている。ここでは、生地搬送方向の生地長さ(接着剤を塗布する長さ)の最初の1/3がA部、次の1/3がB部、残りの1/3がC部であって、A部:B部:C部のピッチ比が1:1.5:2でメモリに記憶されているとする。
【0052】
CPU1800は、生地の伸縮性が小さいA部に接着剤を塗布している期間aにおけるクランクモータ1310の回転速度に対して、生地の伸縮性が中ぐらいのB部に接着剤を塗布している期間bにおけるクランクモータ1310の回転速度が1/1.5になるように、さらに、生地の伸縮性が大きいC部に接着剤を塗布している期間cにおけるクランクモータ1310の回転速度が1/2になるように、モータ駆動ドライバ1830にクランクモータ1310の速度指令信号を出力する。なお、クランクモータ1310の回転数と、塗布ノズル1240の往復移動速度とは比例するものとし、期間a、期間bおよび期間cは設定された生地の搬送速度に基づいて算出される。また、生地の搬送速度は一定とする。
【0053】
より具体的には、CPU1800は、期間aにおいて100%の回転数でクランクモータ1310が回転するように、期間bにおいて66.6%の回転数でクランクモータ1310が回転するように、期間cにおいて50%の回転数でクランクモータ1310が回転するように、モータ駆動ドライバ1830に速度指令信号を出力する。生地の搬送速度は一定であって、伸縮性が高くなるに従って塗布ノズル1240の往復移動速度が次第に低下するので、接着パターンPの繰り返し単位の長さであるピッチについて、期間a(部位A部)のピッチに対して、期間b(部位B部)が1.5倍、期間c(部位C部)が2倍となる。
【0054】
すなわち、生地の搬送時には搬送部1100の吸引ローラ1110と第1挟持ローラ1120とで生地が挟持されて引っ張られるので、伸縮性の大きい部位C部は伸縮性の小さい部位A部よりも、生地が伸びた状態で接着剤が塗布されてしまう。搬送状態を開放すると(すなわちこの塗布装置1000から生地を取り外すと)、伸縮性の大きい部位C部は、伸縮性の小さい部位A部よりも縮んで、ピッチが短くなる。これでは、生地の伸縮性が異なる部位によりピッチが異なる状態で接着装置で接着するので、均一に接着することが難しい。このため、上述したように、伸縮性の低い部位においては短いピッチで接着剤を繰り返し塗布して、伸縮性の高い部位においては長いピッチで接着剤を繰り返し塗布して、搬送状態から開放されたときに、伸縮性の差異がある部位においても同じピッチにすることができる。
【0055】
なお、上述したように、生地における伸縮性の異なる部位に対し、伸縮性に応じて、塗布ノズル1240の往復移動速度を制御したが、搬送部1100による生地の搬送速度を制御するようにしても構わない。塗布ノズル1240の往復移動速度が一定の場合、生地の搬送速度が低速になるに従いピッチが短くなり、生地の搬送速度が高速になるに従いピッチが長くなる。
【0056】
さらに、生地における伸縮性の異なる部位に対し、伸縮性に応じて、塗布ノズル1240の往復移動速度および搬送部1100による生地の搬送速度を制御して、所望のピッチを実現するようにしても構わない。
[塗布ノズル吐出量制御]
以下に、塗布部1200における塗布ノズル1240からの接着剤吐出量制御について説明する。まず、生地の搬送速度を一定にして塗布ノズル1240の往復移動速度を制御した場合の接着剤吐出量制御について説明して、次に、塗布ノズル1240の往復移動速度を一定にして生地の搬送速度を制御した場合の接着剤吐出量制御について説明する。
【0057】
上述したように、接着パターンPのピッチを変化させて接着剤を塗布すると、短ピッチの方が長ピッチよりも生地の単位長さあたりの線分の長さが長くなる。すなわち、生地の単位長さあたりに(生地の搬送速度は同じであるので塗布単位時間あたりに)、接着パターンPが2山ある短ピッチと、接着パターンPが1山ある長ピッチとを比較すると、2山ある短ピッチの方が線分が長くなっている。このように生地の搬送速度を一定にして塗布ノズル1240の往復移動速度を制御することにより接着パターンPのピッチを変化させて接着剤を塗布する場合において、塗布単位時間あたりに同じ量を塗布ノズル1240から生地に塗布(吐出)していたのでは、長ピッチの線分の太さが短ピッチの線分の太さよりも太くなってしまう。これでは、生地の伸縮性が異なる部位により接着パターンPを形成する接着剤の線分の太さが異なる状態で接着装置で接着するので、均一に接着することが難しい。
【0058】
制御部1500のCPU1800は、上述した接着剤の塗布パターンの繰り返しピッチが変更される塗布ノズル往復速度制御に連動して、塗布ノズル1240からの接着剤の単位時間あたりの吐出量を制御するために、モータ駆動ドライバ1830を介してギヤポンプモータ1220の回転速度を制御する。
より具体的には、CPU1800は、上述したパラメータをメモリに記憶して、CPU1800により塗布ノズル往復速度制御を実行する場合に、生地の単位長さあたりにおける、接着剤により形成された線分の長さ(線分の長さであってピッチではない)を、部位A部が長さAA、部位B部が長さBB、部位B部が長さCCとすると、ピッチが長くなるので(振幅は同じ)、生地の単位長さあたりの線分長について、AA>BB>CCの関係が成立する。そして、単位時間あたりの接着剤の吐出量を、期間aにおいて1とすると、期間bにおいて1×BB/AA、期間cにおいて1×CC/AAとなるように、CPU1800は、モータ駆動ドライバ1830を介してギヤポンプ1220の回転数を制御する。
【0059】
すなわち、生地の搬送速度を一定として、塗布ノズル1240の往復移動速度が低下された場合に(ピッチを長くする場合)、ギヤポンプ1220の接着剤吐出量を低下させるように制御して、塗布ノズル1240から吐出されて生地に形成された塗布剤の太さが一定になるように制御される。これとは逆に、生地の搬送速度を一定として、塗布ノズル1240の往復移動速度が上昇された場合に(ピッチを短くする場合)、ギヤポンプ1220の接着剤吐出量を上昇させるように制御して、塗布ノズル1240から吐出されて生地に形成された塗布剤の太さが一定になるように制御される。
【0060】
次に、塗布ノズル1240の往復移動速度を一定にして生地の搬送速度を制御することにより接着パターンPのピッチを変化させて接着剤を塗布する場合におけるギヤポンプ1220の接着剤吐出量制御について説明する。
搬送部1100による生地の搬送速度を制御することにより、伸縮性の低い部位においては短いピッチで接着剤を繰り返し塗布して、伸縮性の高い部位においては長いピッチで接着剤を繰り返し塗布することは、塗布ノズル往復速度制御と同じである。また、生地の単位長さあたりの線分長について、AA>BB>CCの関係が成立することも同じである。このように生地の搬送速度を制御してピッチを変化させた場合にも、接着パターンPを形成する接着剤の線分の太さが同じなるように、ギヤポンプ1220の接着剤吐出量が制御される。
【0061】
この場合においては、生地の単位長さあたりの線分長が長いA部についてはそのA部を搬送する搬送速度は低速であり、線分長が長いC部についてはそのC部を搬送する搬送速度は高速である。よって、A部の線分を塗布する塗布時間は長く、C部の線分を塗布する
塗布時間は短くなる。このため、生地の単位長さあたりの線分長が長いA部であっても塗布時間が長いので、塗布ノズル1240からの単位時間あたりの吐出量を低下させないと線分の太さが太くなる。一方、生地の単位長さあたりの線分長が短いC部においては塗布時間が短いので、塗布ノズル1240からの単位時間あたりの吐出量を上昇させないと線分の太さが細くなる。線分の太さがこのように変化しないように、CPU1800は、モータ駆動ドライバ1830を介してギヤポンプ1220の回転数を制御する。
【0062】
すなわち、塗布ノズル1240の往復移動速度を一定として、生地の搬送速度が低下された場合に(ピッチを短くする場合)、ギヤポンプ1220の接着剤吐出量を低下させるように制御して、塗布ノズル1240から吐出されて生地に形成された塗布剤の太さが一定になるように制御される。これとは逆に、塗布ノズル1240の往復移動速度を一定として、生地の搬送速度が上昇された場合に(ピッチを長くする場合)、ギヤポンプ1220の接着剤吐出量を上昇させるように制御して、塗布ノズル1240から吐出されて生地に形成された塗布剤の太さが一定になるように制御される。
【0063】
このように、接着剤の塗布パターンの繰り返しピッチが変更される塗布ノズル往復速度制御または生地搬送速度制御に連動して、塗布ノズル1240からの接着剤の単位時間あたりの吐出量が制御される。詳しくは、生地搬送速度が低下または塗布ノズル往復速度が低下された場合に、吐出量が低下するように制御される。
さらに、塗布ノズル1240の往復移動速度および搬送部1100による生地の搬送速度を制御して所望のピッチを実現した場合であっても、塗布ノズル1240からの接着剤の単位時間あたりの吐出量を制御して、生地に形成された塗布剤の太さが一定になることを実現するようにしても構わない。
【0064】
[動作]
以上のような構造を備えた塗布装置1000の動作を説明する。動作の説明においては、アンダーシャツの袖部を身頃(この身頃は生地二重部を備える)に接着するために、身頃のアームホールに接着剤を塗布する場合を一例として説明する。なお、この動作の説明にあたり、まず、アンダーシャツについて説明する。
【0065】
・動作対象のアンダーシャツ
図9にアンダーシャツ10の正面図を示す。この
図9に示すように、このアンダーシャツ10は、丸編みされた身頃部11と、左右の袖部12とを有している。身頃部11と袖部12とは別々に編成された伸縮性編地であって、後述するように、接着剤を用いた貼り合わせ構造により身頃部11と袖部12とが肩部で接合されて、アンダーシャツ10の全体を形成している。
【0066】
ここで、このアンダーシャツ10の伸縮方向について説明する。身頃部11は、
図9の紙面横方向がコース方向であって(ウェール方向よりも)伸縮しやすい方向であって(胴回りに沿って伸びやすい)、袖部12は、腕の周囲長に沿った方向がコース方向であって(ウェール方向よりも)伸縮しやすい方向である(腕回りに沿って伸びやすい)。なお、コース方向とはヨコ編地における編成方向と同一方向を意味し、ウェール方向とはコース方向と直交する方向を意味する。
【0067】
上記のようなコース方向使いの場合、袖部12の腕回り方向に対して身頃部11のアームホールは伸縮しにくく(詳しくは後述するがアームホールにおいて伸縮性の差が存在する)、袖部12の腕回り方向は伸縮しやすい。この場合において、一般的な縫着で袖部12を身頃部11に接合する場合には、伸びやすい袖部12に伸びにくい身頃部11に過不足なく縫い合わせる必要があるので、袖部12の腕回り方向長さを身頃部11のアームホ
ールよりも短く設計している。一方、後述する接着剤を用いた貼り合わせ構造の場合には、このように袖部12の腕回り方向長さを身頃部11のアームホールよりも短く設計してしまうと、袖部12の腕回り方向長さが不足してしまうことがある。このため、袖部12の腕回り方向長さは、身頃部11のアームホールと同じであるか、身頃部11のアームホールよりも長く設計している。なお、ヨコ編地をアンダーシャツに用いる場合は上述のとおりであるが、タテ編地を用いる場合は、コース方向とウェール方向がヨコ編地の場合と逆になる。したがって、
図9の紙面横方向がウェール方向、ウェール方向と直交する方向がコース方向となる。
【0068】
なお、身頃部11は、前身頃と後身頃とを、接着剤を用いた貼り合わせ構造により接合されたものであっても構わない。また、袖部12は、丸編機により編成された丸編地をそのまま用いたものであってもよく、また、横編機または丸編機により編成された編地を裁断し、その後接着剤を用いた貼り合わせ構造により筒状に接合されたものであっても構わない。このアンダーシャツ10における袖部12は後者であるとする。
【0069】
いずれにしても、別々に編成された身頃部11と左右の袖部12とが、接着剤により貼り合わせられており、縫着されていない。さらには、このアンダーシャツ10は、縫着部を一切備えず、別々に編成された各部位は、貼り合わせ構造により接着されている。
身頃部11の上側であって着用者の首部に対応する部分には、開口部として浅いU字形状に剔られた衿部が形成され、身頃部11の下側であって着用者のウエスト部に対応する部分には、開口部として身頃下端部が形成され、袖部12の端部であって着用者の手首部に対応する部分には、開口部として手先を出すための袖口部が形成されている。これらの開口部における生地端は、周縁を切りっぱなし仕様とされた生地(周縁処理が不要な伸縮性編地)で構成されている。
【0070】
さらに、アンダーシャツ10の特徴的な構成について、
図10および
図11を参照して説明する。ここで、
図10は、このアンダーシャツ10の左半分の部分拡大図であって、
図11は、このアンダーシャツ10の着用状態を示す斜視図である。
これらの図に示すように、このアンダーシャツ10において、身頃部11の上側の左右端は衿部を構成するために、接着剤を用いた貼り合わせ構造112を備え、袖部12は横編機または丸編機により編成された編地を裁断して筒状に形成するために、接着剤を用いた貼り合わせ構造120を備え、身頃部11と袖部12とを肩部で接合するために、接着剤を用いた貼り合わせ構造110を備える。
【0071】
これらの貼り合わせ構造110、112、120は、後述するように、基本的に同じ構造を備える。この貼り合わせ構造の中で、貼り合わせ構造112、120は、直線的であるのに対して、貼り合わせ構造110は、曲線的かつ全周であることが特徴であって、従来は接着剤による接合が不可能であった。この貼り合わせ構造110を含め貼り合わせ構造112、120は、以下に示す貼り合わせ構造により実現されている。なお、以下においては、貼り合わせ構造110、112、120は同じ構造を備えるので、貼り合わせ構造110について説明する。
【0072】
この貼り合わせ構造110は、伸縮性生地どうしとなる身頃部11(伸縮性生地1)および袖部12(伸縮性生地2)を接着剤により形成される接着パターンPを介して貼り合わせる生地の貼り合わせ構造である。身頃部11と袖部12との接着手順を示す
図12を参照して、この貼り合わせ構造について詳しく説明する。なお、
図12においては、身頃部11の袖接合部の表側に袖部12の身頃接合部が重ねられているが(袖部12が上)、この逆で、身頃部11の袖接合部の裏側に袖部12の身頃接合部が重ねられていても(身
頃部11が上)構わない。
【0073】
接着パターンPは、
図12に示すように、接着剤を所定形状(
図12では、ジグザグ形状)に形成することで伸縮性生地1および伸縮性生地2が連続的に接着される接着部3と、この接着部3により平面視において開ロ形成され、伸縮性生地1および伸縮性生地2が接着剤により接着されない非接着部4と、からなり、接着部3と非接着部4とが所定方向(
図12では、袖部12の腕回りに沿った伸縮性を有する方向)に繰り返し設けられる。
【0074】
接着パターンPは、前述したように、接着部3と、非接着部4とからなり、
図12に示すように、接着剤が伸縮性生地1および伸縮性生地2のそれぞれの接着面1a、接着面2aに熱接着して固着した接着部位の平面視形状のことをいう。
また、接着部3は、所定方向(
図12における袖部12の腕回りに沿った伸縮性を有する方向)に所定形状(
図12では、ジグザグ形状)を連続的に繰り返して形成される部分である。
【0075】
接着部3は、より具体的に説明すると、接着パターンPの形状がジグザグ形状の場合は、
図12に示すように、接着部3を構成する最小繰り返し単位Uが、「<」形状もしくは「>」形状であり、この最小繰り返し単位Uである「<」形状もしくは「>」形状が伸縮性生地1および伸縮性生地2の伸縮性を有する方向に複数かつ連続的に繰り返して配置形成される部分のことである。
【0076】
図12に示すジグザグ形状は、所定のジグザグ振幅(生地の伸縮性を有する方向と直交する振幅)と所定のジグザグピッチをー定周期で繰り返すものである。
一方、非接着部4は、この接着部3により平面視において開口形成され、伸縮性生地1および伸縮性生地2が接着剤により接着されない部分である。
非接着部4は、より具体的に説明すると、接着パターンPの形状がジグザグ形状の場合は、
図12に示すように、伸縮性生地1および伸縮性生地2のそれぞれにおいて接着部3の最小繰り返し単位Uである「<」形状もしくは「>」形状の開口端から内側の所定領域に亘って接着剤が塗布されず、伸縮性生地1および伸縮性生地2が接着されない部分のことである。
【0077】
この非接着部4は、接着剤が塗布されない領域であるため、生地を伸縮性を有する方向に伸縮しても接着剤による伸縮の阻害を受けない伸びしろ部分となる。
具体的には、非接着部4は、生地を伸ばす方向に引っ張ると、非接着部4が伸びしろとして伸縮性を有する方向に伸びるため、接着剤による伸縮の阻害を受けないのである。
接着パターンPの形状をジグザグ状にして伸縮性生地どうしを接着する場合、前述した所定のジグザグ振幅と所定のジグザグピッチを変更することで、伸縮性生地どうしの伸長力と伸長性をコントロールすることができる。
【0078】
なお、接着パターンPの形状をジグザグ状にする場合、その周期については特に限定するものではなく、
図12に示すように、一定周期である必要はない。ジグザグ形状の周期については、生地特性、貼り合わせ位置、製造条件等により適宜決めればよい。
また、接着パターンPの形状はジグザグ状に特に限定するものではなく、種々の接着パターンPが挙げられる。種々の接着パターンPの形状のなかでも、ジグザグ状またはカー
ブ状が好ましい。これは、生地に接着剤を塗布(付与)する際に塗布し易い形状であるからである。アンダーシャツ10に適用可能な接着パターンPは、帯状でも面状でもなく線状であることが特徴である。
【0079】
また、接着パターンPを構成する、接着部3と非接着部4との所定方向への繰り返し数は、少なくとも2回以上であればよく、所定の回数に限定されるものではない。なお、アンダーシャツ10の貼り合わせ構造に適用する場合には、その寸法に従った所定の回数となる。
ここで、繰り返し数が2回である場合、接着パターンPは、接着郎3、非接着部4、接着部3と順に配置された構成となるー方、繰り返し数が3回以上である場合、接着パターンPは、接着部3、非接着部4、接着部3、非接着部4、・・・と順に配置された構成となるのである。
【0080】
さらに、接着パターンPを構成する、接着部3と非接着部4との配置パターンについては、特に限定されるものではなく、不規則に構成されていてもよい。
接着剤としては、特に限定するものではないが、たとえぱ、上述したように熱可塑性樹脂が挙げられる。
このような熱可塑性樹脂としては、たとえばポリウレタン系ホットメルト樹脂、ポリエステル系ホットメルト樹脂、ポリアミド系ホットメルト樹脂、EVA系ホットメルト樹脂、ポリオレフィン系ホットメルト樹脂、スチレン系エラストマー樹脂、湿気硬化型ウレタン系ホットメルト樹脂、反応型ホットメルト樹脂等を用いることが好ましく、中でも反応型ホットメルト樹脂が特に好ましい。反応型ホットメルト樹脂は、接着強度が高く、しかも短時間での接着が可能なことから、身頃部におけるアームホール全周と袖部におけるアーム全周の貼り合わせのような、曲線であって、しかも貼り合わせ形状が合致しない場所にも好適に用いられる。
【0081】
このアンダーシャツ10は、身頃部11の衿部が貼り合わせ構造112により形成された後に、アームホールに接着剤が接着パターンPで塗布されて接着されることにより貼り合わせ構造110が形成される。このとき、塗布装置1000が用いられる。なお、この塗布装置1000を用いて貼り合わせ構造112、120の部分に接着剤を塗布するようにすることも好ましい。また、異なるパーツの生地どうしの接着ではなく、周縁処理として周縁を折り返して接着する場合に、この塗布装置1000を用いて周縁部分に接着剤を塗布するようにすることも好ましい。
【0082】
図10および
図11に示すように、塗布装置1000で接着剤が塗布されるアームホールには、生地の伸縮性が、小さい部位(A部)、中ぐらいの部位(B部)、大きい部位(C部)部位があって、D部には貼り合わせ構造112による生地の二重部がある。部位A部は、D部から前身頃側へアームホール長の1/6、部位B部は、直前のA部から腋下側へアームホール長の1/6、部位C部は、直前のB部からさらに腋下側へアームホール長の1/6、次いで後身頃へ回り、部位C部は、腋下から肩側へアームホール長の1/6、部位B部は、直前のC部から肩側へアームホール長の1/6、部位A部は、直前のB部から肩側へアームホール長の1/6となっている。
【0083】
・塗布装置の動作
上述したアンダーシャツ10のアームホールに本実施の形態に係る塗布装置1000により接着剤を塗布する動作について説明する。なお、生地の種類による透過性の違いに起因する厚み検知センサ1430のキャリブレーション(較正)は完了しているものとする
。
【0084】
まず、第1挟持ローラを準備位置(S(1))であって、塗布ノズル1240および往復移動部1300を準備位置(Y(1))として、搬送台1410の規制板1414にアームホールの生地端を当接させて、吸引ローラ1110にアームホールの生地を仕掛けて、第1挟持ローラ1120を運転位置(S(2))に操作者が移動させて、生地を塗布装置1000にセットする。なお、このとき、A部近傍が搬送台吸引孔1412の位置にセットされており、生地搬送方向下流側である吸引ローラ1110近傍にD部がセットされているものとする。また、アームホールに接着剤を塗布する場合には第2挟持ローラ1130は使用しないので、第2挟持ローラ1130を常に準備位置(U(1))にある。
【0085】
スタートボタンを操作者が押下すると、塗布ノズル1240および往復移動部1300が運転位置(Y(2))まで下降して、吸引ローラ1110および第1挟持ローラ1120が矢示R方向へ回転して、吸引ローラ1110の吸引孔1112の一部の領域(上方の角度αで示される領域)および搬送台吸引孔1412から生地が吸引される。吸引孔1112および搬送台吸引孔1412から生地が吸引されながら、吸引ローラ1110と第1挟持ローラ1120とで生地が挟持されて、矢示T方向に生地が搬送される。このときの生地の状態を、
図4および
図5に一点鎖線で身頃部11(1)として示す。
【0086】
このように生地を吸引しながら搬送が始まると同時に、塗布部1200により接着剤が塗布ノズル1240から生地に吐出されるとともに、往復移動部1300により塗布ノズル1240がパターンPを形成するべく往復移動される。このように生地を矢示T方向に搬送させて、塗布ノズル1240を往復移動させて、塗布ノズル1240から接着剤を生地に塗布することにより、
図12に示すような接着パターンPが形成される。このような接着パターンPが形成される動作が、アームホールの場合にはアームホールの1周分に亘って行われて、操作者が接着剤の塗布動作が1周したことを認識するとストップボタンを押下したりスタートボタンを再度押下する。これにより、塗布装置1000において、運転位置にあった機構が準備位置(Y(1)、S(1))へ、回転していた機構が回転を停止し、吸引していた機構が吸引を停止する。なお、停止については、操作者によるボタンの押下ではなく、生地の送り量を計測したり特定の箇所をセンサにより検知したりして、アームホールを1周したこと(一連の塗布動作の終了位置)を自動的に認識して、塗布装置1000を自動的に停止させたりすることもできる。
【0087】
このとき、接着パターンPは、
図12に示すように、接着剤を所定形状(
図12では、ジグザグ形状)に形成することで伸縮性生地1および伸縮性生地2が連続的に接着される接着部3と、この接着部3により平面視において開口形成され、伸縮性生地1および伸縮性生地2が接着剤により接着されない非接着部4と、からなり、接着部3と非接着部4とが所定方向(
図12では、袖部12の腕回りに沿った伸縮性が変化するアームホールの周縁に沿った方向)に繰り返し設けられる。
【0088】
このようにして塗布装置1000により接着剤がアームホールへ塗布されている動作中において、二重部であるD部が到達したことを厚み検知センサ1430が検知すると、D部が塗布ノズル1240に到達したタイミングで搬送台1410を所定の距離分(生地1重分)だけ下降されて、二重部であるD部におけるクリアランスが生地1重のときと同じになるように制御され、D部が塗布ノズル1240を通過したタイミングで搬送台1410が元に戻されて、一重部であるD部以外におけるクリアランスが生地1重に好適な距離に維持される。
【0089】
さらに、このようにして塗布装置1000により接着剤がアームホールへ塗布されている動作中において、アームホールの部位がA部からB部、C部、B部、A部と進んでアー
ムホールを1周する。
図10に示すように、アームホールにおける生地の伸縮性が異なるので、部位Aに接着剤を塗布している期間aにおいて100%の回転数でクランクモータ1310が回転するように、部位Bに接着剤を塗布している期間bにおいて66.6%の回転数でクランクモータ1310が回転するように、部位Cに接着剤を塗布している期間cにおいて50%の回転数でクランクモータ1310が回転するように制御される。
【0090】
生地の搬送速度が一定である場合に、伸縮性が高くなるに従って塗布ノズル1240の往復移動速度を次第に低下させると、
図10に示すように、接着パターンPの繰り返し単位の長さであるピッチについて、期間a(部位A部)のピッチに対して、期間b(部位B部)が1.5倍、期間c(部位C部)が2倍となる。ここでは、生地の搬送速度を一定として塗布ノズル1240の往復移動速度を低下させているが、塗布ノズル1240の往復移動速度を一定として生地の搬送速度を上昇させても同じように接着パターンPの繰り返し単位の長さであるピッチを長くすることができる。さらには、塗布ノズル1240の往復移動速度および生地の搬送速度の両方を制御して、接着パターンPの繰り返し単位の長さであるピッチを変化させることもできる。
【0091】
さらに、このようにして接着パターンPの繰り返し単位の長さであるピッチが変化されている動作中において、生地の単位長さあたりに接着剤により形成された線分の長さ(線分の長さであってピッチではない)を、部位A部が長さAA、部位B部が長さBB(<AA)、部位B部が長さCC(<BB<AA)とすると、単位時間あたりの接着剤の吐出量が、期間a(部位A部)において1として、期間b(部位B部)において1×BB/AA、期間c(部位C部)において1×CC/AAとなるように、ギヤポンプ1220の回転数が制御される。
【0092】
このように、生地の搬送速度が一定で塗布ノズル1240の往復移動速度が低下されてピッチが長くなり生地の単位長さあたりの線分の長さが短くなっても、それに従って単位時間あたりの接着剤の吐出量が次第に低下するので、
図10に示すように、接着パターンPを形成する線分における太さが同じになる。また、塗布ノズル1240の往復移動速度が一定で生地の搬送速度が上昇されてピッチが長くなり生地の単位長さあたりの線分の長さが短くなっても、それに従って単位時間あたりの接着剤の吐出量が次第に上昇するので、
図10に示すように、接着パターンPを形成する線分における太さが同じになる。
【0093】
このようにして、この塗布装置1000により、アームホールの1周分の周縁に、接着パターンPで接着剤が、同じ太さで、伸縮性に応じたピッチで、均一に塗布される。
このように塗布装置1000により接着剤が塗布された身頃部11と袖部12とは、接着装置により接着される。この場合において、
図12に示すように、アンダーシャツ10を裏返しにしない状態でアームホールの表側の周縁に接着剤を塗布して、その上側に袖部12を接着している。このようにすることにより、塗布装置で接着パターンが端部側にはみ出たとしても接着装置で接着部がずれたとしても、袖部12で隠れて表から見えないようにできたり、接着パターンが端部反対側にはみ出たとしても袖部12を少し余分に重ねて接着して表から見えないようにできたりするので好適である。
【0094】
この接着装置としては、伸縮性生地どうしの間に介在された熱可塑性樹脂(接着剤)を生地の外側から加熱および加圧して溶融することにより液状化して、冷却固化によって伸縮性生地どうしを接合する。このような接着装置としては、たとえば、ホットプレス機、アイロン等が挙げられる。より具体的には、接着装置では、伸縮性生地1および伸縮性生地2の各接着面1a、2aどうしを合わせて伸縮性生地1と伸縮性生地2との間に所定の接着パターンPの熱可塑性樹脂を介在させ、接着装置に載置し、接着装置で伸縮性生地1および伸縮性生地2の間に介在された熱可塑性樹脂を生地の外側から加熱加圧して溶融す
ることにより熱可塑性樹脂を熱溶融させ、その後、冷却固化によって伸縮性生地1および伸縮性生地2を固着する。
【0095】
このように、伸縮性材料どうしの間に介在させる接着パターンPをジグザグ形状として、伸縮性材料どうしの伸長力および伸長性をコントロールすることができる生地の貼り合わせ構造を実現することができるとともに、縫合に比べて非常に薄く接着部分が仕上がることにより、肌触りが良く、かつ、アウターに響かないアンダーシャツ10を実現することができる。
【0096】
以上のようにして、本実施の形態に係る塗布装置1000によると、生地の伸縮性を備えた通気性材料どうしを接着剤を介して接着する場合に、接着強度を確保しつつ、生地等が備える伸縮性を阻害することなく接着することができる接着パターンで接着剤を生地に塗布することができる。特に、生地の伸縮性に応じて接着パターンのピッチを変化させて、このピッチの可変に対応させて接着パターンの線分の太さが同じになるように接着剤の吐出量を変化させたので、伸縮性が異なる部位において均一に接着剤を塗布することができる。生地の厚みが異なる場合であっても、生地と塗布ノズルとのクリアランスを一定距離に維持するので、接着パターンが乱れることもない。
【0097】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本実施の形態においては、たとえば、以下のような変形例が考えられる。以下のいずれの変形例も、塗布装置1000に所望の機能を備えた以下の機構を付加することにより、より精度高く接着剤を生地に塗布することができるようになる。
【0098】
(1)エッジコントローラ
上述した塗布装置1000においては、アームホールの生地端部に接着パターンを乱すことなく接着剤を塗布する必要がある。この場合において、生地端部(エッジ)と塗布ノズル1240との位置関係が正しくないと、接着パターンを乱すことなく接着剤を塗布することが困難になる。すなわち、規制板1414に生地の端部を常に当接させておく必要がある。通常は、このために、操作者が目視で生地の端部を確認して、生地の送り込み具合を手で操作する(左右に生地を振る)ことになる。しかしながら、操作者の熟練度によってこのエッジコントロールの出来映えが異なり、接着パターンが乱れ、ひいてはアンダーシャツの品質がばらつく可能性がある。
【0099】
このような操作者による品質のばらつきを回避するために、生地の進行方向に対して垂直方向の出入りを調整するエッジコントローラを塗布ノズル1240の生地搬送方向上流側へ設ける。このエッジコントローラとしては、特開2010−259626号公報に開示される生地端処理装置に適用されたメインロータの調整機構を適用することが好ましい。
【0100】
(2)筒状生地の把持部
上述した塗布装置1000においてアームホールに接着剤を塗布する場合に、塗布しない側の身頃部11が
図5のW領域に垂れ下がった状態になる。垂れ下がった身頃部11は重量が作用して、生地を規制板1414から離隔するように引っ張ってしまう。また、垂れ下がった身頃部11は回転しないのに、アームホールは接着剤を塗布するために回転するので、ねじれが生じて生地を規制板1414から離隔するように引っ張ってしまう。このように生地捌きが好ましくない場合、接着パターンが乱れ、ひいてはアンダーシャツの
品質がばらつく可能性がある。このような不具合は、筒状物の一方の端部に接着剤を塗布する場合に顕著になる。
【0101】
このような不具合を回避するために、生地が少なくとも筒状部を備える場合であって、この筒状部の端部に接着剤を塗布する場合には、筒状部における端部の反対側を保持するとともに、接着剤が塗布される端部が搬送されることに連動して回転する回転保持部をW領域に設ける。この回転保持部により、接着剤が塗布されない端部側も保持されて回転されるので、生地を良好に捌くことができる。