特許第6283487号(P6283487)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6283487
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0585 20100101AFI20180208BHJP
   H01M 10/0567 20100101ALI20180208BHJP
【FI】
   H01M10/0585
   H01M10/0567
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-202446(P2013-202446)
(22)【出願日】2013年9月27日
(65)【公開番号】特開2015-69810(P2015-69810A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2016年3月8日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507357232
【氏名又は名称】オートモーティブエナジーサプライ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】米原 清佳
(72)【発明者】
【氏名】松本 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】本田 崇
(72)【発明者】
【氏名】萩山 康介
(72)【発明者】
【氏名】川村 文洋
(72)【発明者】
【氏名】嶋村 修
(72)【発明者】
【氏名】宮竹 一希
(72)【発明者】
【氏名】松崎 生馬
(72)【発明者】
【氏名】山口 隆太
(72)【発明者】
【氏名】野元 邦治
【審査官】 青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−023221(JP,A)
【文献】 特開2002−216849(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0585
H01M 10/0567
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極板および負極板をセパレータを介して積層してなる扁平な発電要素を、フィルム状の外装体の内部に、余剰電解液分を含む非水電解液および少なくとも1種類以上の皮膜形成可能な電解液添加剤とともに収容して、
外装体の外側から発電要素の扁平面を加圧した状態で、少なくとも初回の充電を含む充電工程と、
充電工程の後に、余剰電解質を発電要素の電極間に移動させるように加圧を開放する工程と、を行い、
加圧の加圧力が0.98×10-2MPa〜24.5×10-2MPaであり、
非水電解液中の電解液添加剤量が3重量%〜7重量%であり、
電解液添加剤は、負極活物質表面で還元分解して皮膜形成し、
少なくとも初回の充電を含む充電工程を行った後の非水電解液中に残存する電解液添加剤が4000ppm以上6259ppm以下であることを特徴とする非水電解質二次電池の製造方法。
【請求項2】
圧した状態の電池の外形の厚さは、発電要素の積層方向の厚さの1.02倍〜1.07倍であることを特徴とする請求項1記載の非水電解質二次電池の製造方法。
【請求項3】
非水電解液量は、発電要素の空孔体積の1.1倍〜1.6倍であることを特徴とする請求項1または2記載の非水電解質二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、フィルム状の外装体を用いた扁平な非水電解質二次電池製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池は、金属層の表面に合成樹脂層が積層されたラミネートフィルムを外装体として用い、リチウム複合酸化物等を活物質とした正極板、炭素材料等(黒鉛等)を活物質とした負極板、およびセパレータを複数積層してなる発電要素を、リチウム塩等を含んだ電解質(リチウム塩等を溶解させた非水電解質等)とともに内部に収容した、扁平形状をなす構成が知られている。
【0003】
電池の製造工程では、初回の充電(initial charge)等の充電工程が行われるが、負極板に強い還元力(電解質を還元分解する還元力)が発生するため、電解質が還元分解して負極板の活物質(以下、負極活物質)の活性面に付着し皮膜が形成(活性面を覆うように形成)される。これによって、還元分解が抑制される。すなわち、還元分解を抑制する皮膜は、電池の諸特性を向上させる作用を奏することになる。
【0004】
そこで、単なる電解質の還元分解に由来する皮膜(以下、電解質由来皮膜)を形成するのではなく、電解質由来皮膜よりも良質な皮膜を形成することにより、電池の諸特性の向上に貢献することが検討されている。例えば、予め電解質に対し電解質添加剤(例えばビニレンカーボネート等の添加剤)を添加してから電池の充電工程を行うことにより、その添加剤を還元分解させて所望の皮膜(以下、添加剤由来皮膜)を活性面に形成する手法が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−306602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、活性面に添加剤由来皮膜を形成できたとしても、充電工程に起因して負極活物質が膨張した場合には、負極活物質に新たな活性面が形成(活性面が膨張し添加剤由来皮膜に罅割れ等が生じて新たな活性面が出現)されてしまうことが考えられるが、特許文献1では、この新たな活性面については特に想定されていなかった。すなわち、多くの場合、負極活物質の膨張前に、添加剤の殆どは還元分解により消費されてしまうため(電解質中に添加剤が殆ど残存していない状態になるため)、新たな活性面には添加剤由来皮膜を形成することができていなかったことが、電池の諸特性の向上を困難にしていたと推測される。
【0007】
本発明は、かかる技術的課題に鑑みてなされたものであって、電池の諸特性の向上に貢献することを図った非水電解質二次電池製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る非水電解質二次電池製造方法は、前記の課題を解決することを目的としたものであり、その一つは正極板および負極板をセパレータを介して積層してなる扁平な発電要素を、フィルム状の外装体の内部に、余剰電解質分を含む非水電解質および少なくとも1種類以上の電解質添加剤とともに収容して、外装体の外側から発電要素の扁平面加圧した状態で、少なくとも初回の充電を含む充電工程を行い、加圧の加圧力が0.98×10-2MPa〜24.5×10-2MPaであり、非水電解液中の電解液添加剤量が3重量%〜7重量%であり、電解液添加剤は、負極活物質表面で還元分解して皮膜形成し、少なくとも初回の充電を含む充電工程を行った後の非水電解液中に残存する電解液添加剤が4000ppm以上6259ppm以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る非水電解質二次電池製造方法によれば、電池の諸特性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】この発明による非水電解質二次電池の一例を説明するための概略斜視図。
図2図1の非水電解質二次電池の概略断面図。
図3】電池を加圧する加圧手段の一例を示す概略斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<電池の構成例>
図1図2の非水電解質二次電池(以下、電池)1は、例えばリチウムイオン二次電池であり、図1に示すように、扁平な長方形の外観形状を有し、長手方向の一方の端縁には一対の端子2,3を備えている。
【0013】
この電池1は、図2に示すように、矢印X(扁平面)方向から見て長方形をなす発電要素4を電解質(図示省略)とともに2枚のラミネートフィルムからなる外装体5の内部に収容したものである。発電要素4は、セパレータ43を介して交互に積層された複数の正極板41および負極板42からなり、例えば、3枚の負極板42と、2枚の正極板41と、これらの間の4枚のセパレータ43と、を含んでいる。つまり、この例では、発電要素4の最外層に負極板42が位置している。但し、発電要素4の最外層に正極板41が位置する構成も可能である。なお、図2における各部の寸法は必ずしも正確なものではなく、説明のために誇張したものとなっている。
【0014】
正極板41は、図1図2の矢印X方向から見て概略長方形をなす正極集電体41aの両面に正極活物質層41b,41cを形成したものである。正極集電体41aは、例えば、アルミニウム箔、アルミニウム合金箔、銅箔、又は、ニッケル箔等の電気化学的に安定した金属箔から構成されている。また、正極活物質層41b,41cは、例えば、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMnO2)、スピネル型マンガン酸リチウム(LiMn24)、または、コバルト酸リチウム(LiCoO2)等のリチウム複合酸化物からなる正極活物質と、バインダと、を混合したものを、正極集電体41aの主面に塗布することにより形成されている。ここで、リチウム複合酸化物の遷移金属(Ni,Mn,Co)の一部は、Li、Mg、B、Al、V、Cr、Fe、Co、Ni、Mn、W、またはTi等で置換されていてもよい。バインダとしては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、カルボキシメチルセルロース、スチレンブタジエンゴムなどが使用できる。また正極活物質層には、アセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛、繊維状炭素等の炭素材料からなる導電助剤を添加しても良い。
【0015】
負極板42は、図1図2の矢印X方向から見て概略長方形をなす負極集電体42aの両面に負極活物質層42b,42cを形成したものである。負極集電体42aは、例えば、銅箔、ステンレス箔、又は、鉄箔等の電気化学的に安定した金属箔から構成されている。負極活物質層42b,42cは、例えば、非晶質炭素、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素、黒鉛、あるいは非晶質炭素で被覆された黒鉛等のような、リチウムイオンを吸蔵及び放出する負極活物質に、バインダを混合したものを、負極集電体42aの主面に塗布することにより形成されている。
【0016】
負極活物質は、粒径としては0.1μm〜90μmであることが好ましく、BET比表面積としては0.1〜10m2/gであることが好ましい。バインダとしては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、カルボキシメチルセルロース、スチレンブタジエンゴムなどが使用できる。負極活物質層には、アセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛、繊維状炭素等の炭素材料からなる導電助剤を添加しても良い。
【0017】
負極集電体42aの長手方向の端縁の一部は、負極活物質層42b,42cを具備しない延長部40として延びており、その延長部40の先端部40aが負極端子3における外装体5内側の一端部3aに接合されている。負極集電体42aが複数の場合には、それら負極集電体42aの各延長部40の先端部40aを束ねて一体にした状態にして接合する。
【0018】
この接合においては、例えば、延長部40の先端部40aを負極端子3の一端部3aに当接した状態で、超音波接合(超音波ホーンを先端部40aに当接して接合)する手法が挙げられる。また図2には示されていないが、同様に、正極集電体41aの長手方向の端縁の一部が、正極活物質層41b,41cを具備しない延長部(延長部40に相当;図示省略)として延びており、その延長部の先端部が正極端子2における外装体5内側の一端部に接合される。
【0019】
セパレータ43は、正極板41と負極板42との間の短絡を防止すると同時に電解質を保持する機能を有するものであって、例えば、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン等から構成される微多孔性膜からなる。なお、セパレータ43としては、ポリオレフィン等の単層膜に限られず、ポリプロピレン膜をポリエチレン膜でサンドイッチした三層構造のものや、ポリオレフィン微多孔性膜と有機不織布等を積層したものも用いることができる。また、シリカ、アルミナ、マグネシア、ジルコニア、チタニアなどの無機粒子をポリオレフィン微多孔膜の片面あるいは両面に付着させたものや、これらの無機粒子をポリオレフィン膜に分散させたものも用いることができる。あるいは耐熱性樹脂の多孔膜や粒子をポリオレフィン微多孔膜の片面あるいは両面に付着させたものでもよい。上記の粒子を多孔膜の表面に付着させる際に、正極あるいは負極の説明で述べたバインダを用いることもできる。
【0020】
電極とセパレータを積層した構造の発電要素4を電解質とともに収容する外装体5は、フィルム状のものであれば特に限定はないが、図2に一部を拡大して示すように、例えば、熱融着層51と金属層52と保護層53との三層構造を有するラミネートフィルムからなる。中間の金属層52は、例えばアルミニウム箔からなり、その内側面を覆う熱融着層51は、熱融着が可能な合成樹脂例えばポリプロピレン(PP)からなり、金属層52の外側面を覆う保護層53は耐久性に優れた合成樹脂、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)からなる。なお、さらに多数の層を有するラミネートフィルムを用いることもできる。また、前記の例では金属層52の両面に合成樹脂層を積層しているが、金属層52の外側の合成樹脂層は必ずしも必須のものではなく、内側表面にのみ合成樹脂層を備えた構成であってもよい。ラミネートフィルムの総厚さは、0.05〜0.8mmが好ましい。
【0021】
外装体5は、一つの例では、図2の発電要素4の下面側に配置される1枚のラミネートフィルムと上面側に配置される他の1枚のラミネートフィルムとの2枚構造をなし、これら2枚のラミネートフィルムの周囲の4辺を重ね合わせ、かつ互いに熱融着した構成となっている。図示例は、2枚構造の外装体5を示している。また、他の一つの例では、外装体5は1枚の比較的大きなラミネートフィルムからなり、2つ折りとした状態で内側に発電要素4を配置した上で、周囲の3辺を重ね合わせ、かつ互いに熱融着した構成となっている。
【0022】
長方形をなす電池1の短辺側に位置する一対の端子2,3は、外装体5のラミネートフィルムを熱融着する際に、外装体5内側の一端部(負極端子3の場合は一端部3a)にそれぞれ集電体41a,42aの延長部(集電体42aの場合は延長部40)に接合された状態で、外装体5外側の他端部(負極端子3の場合は他端部3b)がラミネートフィルムの接合面5aを通して外部へ引き出されている。そして、一対の端子2,3は、一端部と他端部との間(負極端子3の場合は一端部3aと他端部3bとの間)が外装体5のラミネートフィルムの接合面5aによって挟持され、その挟持された挟持部分3cにおいて封着されることになる。
【0023】
熱融着部と発電要素の間の距離は、外装体内部を減圧した状態で、たとえば1〜25mmが好ましい。1mm未満では貯留液を電極から充分に離間させることができない。25mmを超えると、長時間使用でも貯留液中の添加剤が電極に戻りにくくなり、本発明の効果が得られにくくなる。
【0024】
<電解質の一例>
電解質としては、特に限定されるものではないが、リチウムイオン二次電池に一般的に使用される電解質として、例えば、有機溶媒にリチウム塩が溶解した非水電解質を用いることができる。有機溶媒としては、例えば、プロピレンカーボーネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の溶媒を一種または二種以上組み合わせた溶媒を用いることができる。また、リチウム塩としては、例えば、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiC49SO3、LiN(CF3SO22、LiC(CF3SO23等を好ましく用いることができる。
【0025】
電解質量においては、余剰電解質分が含まれた量とする。ここで余剰電解質とは、外装体内に存在する全電解質の体積から、正極の空孔体積、負極の空孔体積、およびセパレータの空孔体積の合計(以下、発電要素の空孔体積)を差し引いた電解質量である。この値が正のとき、電解質量の倍率としては、発電要素の空孔体積の1倍を超えることになる。本発明におけるこの値の例としては、電極41,42およびセパレータ43の空孔体積の合計値(発電要素4の空孔体積)に対して、1倍超であればよいが、1.1倍〜1.6倍の電解質量となるように設定することが好ましく、倍率が1.2倍〜1.6倍であることがさらに好ましい。外装体5内に余剰電解質分を含む電解質が収容された状態で、外装体5の外側から発電要素の扁平面を加圧すると、余剰電解質が外装体5内における発電要素4の周辺部5bに移動(例えば発電要素4の各電極等の積層方向に対し垂直方向に移動)して貯留されることになり、本発明の効果を高めることができる。
【0026】
<添加剤の一例>
添加剤としては、充電工程の際に負極活物質(図2では負極活物質層42b,42c)により還元分解し活性面に添加剤由来皮膜を形成できるものであれば良く、種々のものを適用することができるが、例えばビニレンカーボネート(VC)、4−メチルビニレンカーボネート、4,5−ジメチルビニレンカーボネート、4−エチルビニレンカーボネート、4,5−ジエチルビニレンカーボネート、4−プロピルビニレンカーボネート、4,5−ジプロピルビニレンカーボネート、4−フェニルビニレンカーボネート、4,5−ジフェニルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、ジビニルエチレンカーボネート、これらのカーボネート類の水素原子の一部がフッ素原子で置換された化合物、プロパンスルトンなどのスルトン、鎖状あるいは環状のスルホン酸エステル、鎖状あるいは環状のジスルホン酸エステルなどが挙げられる。これらの中でも、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、ジビニルエチレンカーボネート、スルトン、フルオロエチレンカーボネートが好ましい。これらの添加剤は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0027】
添加剤量においては、加圧下での充電工程後(少なくとも初回の充電後)に外装体5内に残存する程度であれば良く、適宜設定することができるが、例えば電解質中の1重量%〜7重量%となるように添加することが好ましい。これにより、充電工程後(出荷時)の電解質中に例えば3000ppm以上の添加剤を残存させることができ、その後の充電工程に等より負極活物質に膨張由来活性面が形成された場合には、膨張由来活性面が露出しないように、添加剤由来皮膜を十分形成すると推測されるので好ましい。
【0028】
<製造手順および充電工程の一例>
電池1の製造手順としては、以下の通りである。まず、負極板42、セパレータ43および正極板41、セパレータ43を順次積層して発電要素4を構成し、負極板42の負極集電体42aの延長部40に対し負極端子3の内側端(一端部3a)を接合する。同様に、正極板41の正極集電体41aの延長部40に対し正極端子2の内側端(負極端子3の一端部3aに相当)を接合する。次に、この発電要素4を外装体5となるラミネートフィルムで覆いながら、比較的小さな充填口を残して周囲の4辺(2つ折りの場合は3辺)を熱融着する。そして、充填口を通して外装体5の内部に、余剰電解質分を含む電解質および少なくとも1種類以上の添加剤を充填し、外装体5内部を減圧し、その後、充填口を熱融着して外装体5を密閉状態とする。これにより電池1が完成する。
【0029】
次に、完成した電池1を、加圧手段(加圧ホルダ等)に装填して外装体5の外側から電池の厚み方向に加圧することで発電要素の扁平面を加圧し、余剰電解質を外装体5内における発電要素4の周辺部5bに移動させて貯留した状態で、一対の端子2,3を介して所定条件で電圧を印加し少なくとも初回の充電を含む充電工程を行うことにより、発電要素4の各電極間に滞留した電解質に含まれる添加剤を還元分解し、負極活物質層42bにおける負極活物質表面に添加剤由来皮膜を形成する。ここで初回の充電とは、最初の充電のことであり、例えば、注液後に最初に、電池の充電方向に一定電流を流し電池の使用電圧範囲内の所定電圧になるまで通電を行ったり、使用電圧範囲の最大電圧に達するまで通電を行ったり、電圧変化が階段状に上昇していくように電流を変化させて通電をおこなったり、途中で一次的に通電を停止させたりすることを含む。
【0030】
そして、電池1を加圧手段から取り外して加圧を開放し、周辺部5bに貯留されていた余剰電解質を例えば発電要素4の各電極間に移動させる。これにより、例えば更なる充電工程(少なくとも初回の充電以降の充電)を行った場合に、負極活物質が膨張し膨張由来の活性面が生じても、余剰電解質中の添加剤が還元分解し、膨張由来活性面に付着して添加剤由来皮膜が形成されることで本発明の効果が得られると推測される。
【0031】
加圧手段は、発電要素4や外装体5を損傷させない程度で電池を外装体5の外側から加圧するものであって、余剰電解質を発電要素4の周辺部5bに移動させて貯留する程度に加圧できるものであれば良く、種々の形態のものを適用できるが、例えば図3に示すように、外装体5の厚さ方向から、緩衝体60を被覆した2枚の加圧板61を押しつけて加圧(図示矢印Y方向に加圧)する一軸加圧手段が挙げられる。緩衝体60としては、例えば、シリコンゴムなどの弾性を有する高分子材料あるいは布を用いることが挙げられる。加圧板61としては、例えば、ステンレス製板等の金属板,ガラス製板、樹脂板あるいはセラミック製板などの絶縁性固体板を用いることが挙げられる。
【0032】
例えば図1図2に示したような構造の電池1において、発電要素4や外装体5を損傷させない程度で外装体5の外側から電池を加圧するには、加圧力を約0.49×10-2MPa(0.05kgf/cm2)〜約24.5×10-2MPa(2.5kgf/cm2)の範囲に設定することが好ましい。また、この加圧力の範囲で外装体5の外側から電池を加圧した際の発電要素の積層方向の厚さに対する電池の厚さ(以下、厚さ比率)は、1.02倍〜1.07倍程度になる。このような加圧力や厚さとすることで、本発明の効果をより高めることができる。なお、ここでいう厚さ比率の分母は、電解質を含んでいないときの発電要素単体の初期厚さであり、分子は外装体に電解質とともに発電要素を外装体内に収納した状態の電池の外形の厚さ(外装体厚さ含む)である。たとえば発電要素内に電解質を過剰に含んだ状態では、正負極板とセパレータの間隔が広くなって、過剰分が多くなるほど厚さ比率は大きくなる傾向がある。
【0033】
また、初回の充電の際に加圧を行うことが挙げられるが、初回の充電の後の充電においても加圧を行っても良く、例えば負極活物質において膨張由来活性面が出現し始めるタイミングを鑑みて適宜加圧することが好ましい。
【0034】
本実施形態では、正極板および負極板をセパレータを介して積層してなる扁平な発電要素を、金属層の少なくとも内側表面に樹脂層を積層したラミネートフィルムからなる外装体の内部に、余剰電解質分を含む非水電解質および少なくとも1種類以上の電解質添加剤とともに収容して、外装体の外側から発電要素の扁平面を加圧した状態で、少なくとも初回の充電を行うようにしたので、電池の諸特性を向上させることが可能となる。あるいは、正極板および負極板をセパレータを介して積層してなる発電要素が、金属層の少なくとも内側表面に樹脂層を積層したラミネートフィルムからなる外装体の内部に、余剰電解質分を含む非水電解質および少なくとも1種類以上の電解質添加剤とともに収容され、端子を導出した状態で外装体が密封されて、少なくとも初回の充電を含む充電工程が行われた扁平な非水電解質二次電池において、充電工程後の非水電解質中に残存する電解質添加剤が3000ppm以上であり、かつ非水電解質量が発電要素の空孔体積の1.1倍〜1.6倍となるようにしたので、電池の諸特性を向上させることが可能となる。
【0035】
その理由は明らかではないが、以下の作用が考えられる。初回の充電工程において、外装体の外側から発電要素の扁平面を加圧した状態とすることにより、余剰電解質を発電要素の周辺に移動(例えば発電要素の各電極等の積層方向に対し垂直方向に移動)させて溜めておくことができ、これにより電極から離間しているので、この余剰電解質に含まれる添加剤が初回の充電時に還元分解に使用されることを抑制でき、さらに、発電要素の周辺に溜めた余剰電解質が、電池の加圧を開放することにより、例えば発電要素の各電極間に移動し、この後、例えば更なる充放電を行うことにより膨張由来活性面が形成された場合、余剰電解質中の添加剤(発電要素の周辺に溜められていた添加剤)が還元分解され、膨張由来活性面に対して添加剤由来皮膜が形成されると推測される。これにより、初回の充電時に形成された添加剤由来皮膜に例えば罅割れ等ができて新たに出現した膨張由来活性面が、再度添加剤由来皮膜で保護されるため、電池の諸特性が向上すると考えられる。
【0036】
<実施例>
正極を以下のように作製した。スピネル構造を有するLi1.1Mn1.94粉末と、リチウム・ニッケル・コバルト・マンガン複合酸化物と、バインダ樹脂としてポリフッ化ビニリデンと、導電助剤としてカーボンブラック粉末とを、所定の割合で、溶媒であるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)中に均一に分散させてスラリーを作製した。得られたスラリーを、正極集電体となる厚み20μmのアルミニウム箔上に塗布した後NMPを蒸発させることにより正極活物質層を形成した。更に、正極活物質層をプレスすることによって、正極集電体の片面上に正極活物質層を塗布した。同様に他方の面にも活物質層を塗布し、正極を得た。
【0037】
負極を以下のように作製した。負極活物質として非晶質性炭素で被覆された球状天然黒鉛粉末(平均粒子径:20μm)とカーボンブラック系導電助剤をバインダーのスチレンブタジエンゴムとカルボキシメチルセルロースの水溶液に所定の割合で均一に分散させてスラリーを作製した。得られたスラリーを、負極集電体となる厚み15μmの銅箔上に塗布した後水を蒸発させることにより負極活物質層を形成した。更に、負極活物質層をプレスすることによって、負極集電体の片面上に負極活物質層を塗布した負極を作製した。同様に他方の面にも活物質層を塗布し、負極を得た。
【0038】
正極および負極を、活物質が塗布されていない集電体延長部を残しつつ、所定寸法に裁断して正極板、負極板を得た。次にポリエチレン及びポリプロピレンからなるセパレータの両面に上記負極と正極とを活物質層がセパレータを隔てて重なるように交互に所定枚数積層して発電要素を得た。
【0039】
次に負極板の負極集電体の延長部に対し負極端子の内側端(一端部)を接合した。同様に、正極板の正極集電体の延長部に対し正極端子の内側端(一端部)を接合した。この発電要素を外装体となるラミネートフィルムで覆いながら、比較的小さな充填口を残して周囲の4辺を熱融着した後、充填口に下記に述べる電解質を注液し、外装体内部を減圧し、その後、充填口を熱融着して外装体を密閉状態とした。4辺のうち1辺は、正極端子および負極端子を引き出した状態でラミネートフィルムの熱融着を行った。熱融着部と発電要素の間の距離は、端子引き出し辺においては15mm、それ以外の辺においては5mmとした。
【0040】
電解質としては、1mol/LのLiPF6とエチレンカーボネートとジエチルカーボネートの混合溶媒(体積比3:7)とからなる電解質に、ビニレンカーボネートを各試料ごとに決められた所定量添加したものを用いた。こうして、図1図2に示した構造の電池の試料S1〜S7(実施例1,3,5,、参考例2,4,6)と試料P1,P2(比較例1,2)を、下記の各評価用に試料番号ごとにそれぞれ3つずつ(一部試料は2つずつ)作製した。
【0041】
そして、各試料において、図3に示したような加圧手段(加圧板61の材質はステンレス)によりそれぞれの試料条件で外装体5の外側から電池を加圧しながら初回の充電(試料P1は加圧せずに初回の充電)を行った。このように準備した電池試料に対し、初回の充電後の外装体5内の電解質中添加剤残存量(ppm)、サイクル試験容量維持率(45℃の温度下で500サイクル試験を行った後の容量維持率(%)),および保存試験抵抗上昇率(45℃の温度下で16週間放置した後の抵抗上昇率(%))を調べた。
【0042】
なお、各試料の電解質量(発電要素の空孔体積に対する電解質量(倍率)),添加剤量(重量%),加圧力(MPa),厚さ比率(倍率)は、表1に示すとおりである。
【0043】
【表1】
【0044】
表1に示すように、比較例の試料P1,P2は、サイクル試験容量維持率は低く抵抗上昇率が高い結果となった。これは、試料P1の場合、電解質量が比較的多い(余剰電解質分を含む)が、加圧せずに初回の充電を行ったために、発電要素内に余剰分を含む電解質の殆どが含まれたままとなって電池厚さが厚くなり、初回の充電終了前に添加剤の殆どが還元分解により消費され(添加剤残留が920ppmと比較的少ない)、負極活物質の膨張前の活性面に添加剤由来皮膜を形成できたとしても、負極活物質膨張後の膨張由来活性面には添加剤由来皮膜が殆ど形成されなかったことに起因すると推測される。また、試料P2の場合は、電解質内に添加剤が含まれていないため、たとえ加圧しながら初回の充電を行っても、活性面に対して電解質由来皮膜のみが形成されたと推測される。
【0045】
一方、実施例の試料S1,S3,S5,S、および参考例の試料S2,S4,S6は、比較例の試料P1,P2と比較して、サイクル試験容量維持率は高く保存試験抵抗上昇率が低く抑えられた結果となった。これは、電解質量が比較的多く(余剰電解質分を含む)、加圧しながら初回の充電を行ったために、余剰電解質が外装体5内における周辺部5bに移動して、初回の充電後においても多くの添加剤が周辺部5bにおける電解質中に残存(例えば試料S1〜S7のように3000ppm以上残存)し、それが初回の充電後、あるいはサイクル試験中や高温保存試験中に有効に作用して、膨張由来活性面を含む活性面に対して添加剤由来皮膜を十分形成できたことに起因すると推測される試料S1,S2,S3,S5同士を比較し、添加剤残留量が多いほどサイクル特性が良く抵抗上昇率も低い傾向があることも、上記の推測メカニズムを支持する。
【0046】
なお、試料P1において、試料S1〜S7と同様に初回の充電を加圧しながら行ったところ、初回の充電後においても多くの添加剤が外装体5内に残存し、その結果、寿命特性が向上することを確認した。
【0047】
以上、本実施例について詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲で多彩な変更等が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変更等が特許請求の範囲に属することは当然のことである。
【0048】
たとえば、上述した例では所定枚数の正負極板をセパレータを介して交互に積層した扁平な発電要素を用いた例を示しているが、扁平な巻回型の発電要素を使用することも可能である。この場合、電解質を過剰に含む発電要素の扁平面を加圧したとき、電解質は巻回軸方向に押し出されることになるが、本発明の効果は得られる。
【符号の説明】
【0049】
1…電池
2,3…端子
4…発電要素
41…正極板
42…負極板
43…セパレータ
5…外装体
5b…周辺部
図1
図2
図3