特許第6283493号(P6283493)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6283493ダイアフラムアッセンブリー、および、それを備える感圧制御弁
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6283493
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】ダイアフラムアッセンブリー、および、それを備える感圧制御弁
(51)【国際特許分類】
   F16J 3/02 20060101AFI20180208BHJP
   F16J 15/52 20060101ALI20180208BHJP
   F16K 31/06 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
   F16J3/02 A
   F16J3/02 B
   F16J15/52 Z
   F16K31/06 340
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-217206(P2013-217206)
(22)【出願日】2013年10月18日
(65)【公開番号】特開2015-78754(P2015-78754A)
(43)【公開日】2015年4月23日
【審査請求日】2016年9月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大河原 一郎
(72)【発明者】
【氏名】石黒 元康
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 祐一
【審査官】 杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−169415(JP,A)
【文献】 特開2006−161831(JP,A)
【文献】 特開2007−024276(JP,A)
【文献】 実開昭63−137168(JP,U)
【文献】 特開2009−052718(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 3/00 − 3/06
F16J 15/52
F16K 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性基材が、繊維で形成された基布に含浸されて作られる貫通孔が開いていないダイアフラムと、
前記貫通孔が開いていないダイアフラムの基布の繊維相互間を通過する連結軸部を有する作動力伝達部材と、
前記作動力伝達部材の前記連結軸部を前記ダイアフラムに対し係止する係止部材と、
を具備して構成されるダイアフラムアッセンブリー。
【請求項2】
弾性基材が、繊維で形成された基布に含浸されて作られるダイアフラムと、
前記基布の繊維相互間を通過する連結軸部を有する作動力伝達部材と、
前記作動力伝達部材の前記連結軸部を前記ダイアフラムに対し係止する係止部材と、を備え、
前記作動力伝達部材の連結軸部が、前記ダイアフラムの前記基布の目開きの大きさに対応した先端部を有する紡錘形のキャップを介して該基布の繊維相互間を通過することを特徴とするダイアフラムアッセンブリー。
【請求項3】
前記弾性基材が、ゴム材料であることを特徴とする請求項1または請求項2記載のダイアフラムアッセンブリー。
【請求項4】
前記作動力伝達部材の連結軸部が、前記ダイアフラムの前記基布の目開きの大きさに対応した先端部を有し、該基布の繊維相互間を通過することを特徴とする請求項1または請求項2記載のダイアフラムアッセンブリー。
【請求項5】
請求項1または請求項2記載のダイアフラムアッセンブリーと、
流量を制御する弁体を前記ダイアフラムアッセンブリーの作動力伝達部材を介して作動させる作動流体が供給され、該ダイアフラムアッセンブリーにより隔絶される圧力室と、
を備える感圧制御弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイアフラムアッセンブリー、および、それを備える感圧制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
減圧弁、または圧力制御弁等の感圧制御弁においては、例えば、特許文献1にも示されるように、ダイアフラムアッセンブリーを備えている。そのようなダイアフラムアッセンブリーは、例えば、円板状のゴム板で作られたダイアフラム(特許文献1においては、ダイヤフラムと呼称されている)と、ダイアフラムを挟持する第1のリテーナ、および第2のリテーナと、第1のリテーナおよび第2のリテーナをダイアフラムに固定するダイアフラムロッドおよびナットとを主な要素として含んで構成されている。そのようなダイアフラムは、ダイアフラムカバー内のばね室とボディの圧力作用室とを隔絶するように配置されている。ダイアフラムの外周縁は、ダイアフラムカバーの鍔部とボディのフランジ部との間に挟持されることにより、ボディに固定されている。変位可能とされるダイアフラムの中央部における第1のリテーナが固定される部分は、ボディの圧力作用室の圧力が作用するものとされる。また、作動力伝達部材としての第2のリテーナが、ダイアフラムカバー内に配されるばねの一端を受け止めるのでダイアフラムの中央部における第2のリテーナが固定される部分は、ばねの付勢力が作用するものとされる。その際、ダイアフラムの中央部の貫通孔には、ナットにより締結されるダイアフラムロッドの軸部が挿入されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−52718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のようなボディの圧力作用室内の圧力が、1MPa以上の比較的高圧となる場合、耐圧性能のあるダイアフラムが、ゴムと、基布とからなる複合材料により成形される場合がある。このような場合、一般にゴム材で気密性能を、基布で耐圧性能を得ており、この基布の選定により耐圧圧力を設定している。ところが、ダイアフラムの成形後、上述のようなダイアフラムロッドの軸部が挿入される貫通孔が、打ち抜き加工により、ダイアフラムの中央部に形成されるとき、基布の繊維の一部が打ち抜き加工により、切断される。従って、このように基布の繊維の一部が切断される場合、ダイアフラムの中央部の耐圧強度が著しく低下する。
【0005】
以上の問題点を考慮し、本発明は、ダイアフラムアッセンブリー、および、それを備える感圧制御弁であって、ダイアフラムの耐圧強度を低下させることなく、作動力伝達部材とダイアフラムとを互いに連結することができるダイアフラムアッセンブリー、および、それを備える感圧制御弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために、本発明に係るダイアフラムアッセンブリーは、弾性基材が、繊維で形成された基布に含浸されて作られる貫通孔が開いていないダイアフラムと、貫通孔が開いていないダイアフラムの基布の繊維相互間を通過する連結軸部を有する作動力伝達部材と、作動力伝達部材の連結軸部をダイアフラムに対し係止する係止部材と、を備えて構成される。
【0007】
本発明に係るダイアフラムアッセンブリーを備える感圧制御弁は、上述のダイアフラムアッセンブリーと、流量を制御する弁体をダイアフラムアッセンブリーの作動力伝達部材を介して作動させる作動流体が供給され、ダイアフラムアッセンブリーにより隔絶される圧力室と、を備えて構成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るダイアフラムアッセンブリー、および、それを備える感圧制御弁によれば、作動力伝達部材が、貫通孔が開いていないダイアフラムの基布の繊維相互間を通過する連結軸部を有し、係止部材が作動力伝達部材の連結軸部をダイアフラムに対し係止することによって、基布の繊維が傷つく虞がないのでダイアフラムの耐圧強度を低下させることなく、作動力伝達部材とダイアフラムとを互いに連結することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】(A),(B),(C)は、それぞれ、本発明に係るダイアフラムアッセンブリーの一例の組み立て方法の説明に供される図である。
図2】本発明に係るダイアフラムアッセンブリーを備える感圧制御弁の第1実施例の構成を示す断面図である。
図3】(A)は、図2に示される例において用いられるダイアフラムを示す断面図であり、(B)は、(A)に示されるダイアフラムの下面図である。
図4】本発明に係るダイアフラムアッセンブリーを備える感圧制御弁の第2実施例の構成を示す断面図である。
図5】(A)は、図4に示される例において用いられるダイアフラムを示す平面図であり、(B)は、(A)に示されるダイアフラムの断面図である。
図6図5(A)に示される例における部分拡大図である。
図7】(A),(B),(C)は、それぞれ、図4に示される本発明に係るダイアフラムアッセンブリーの一例の組み立て方法の説明に供される図である。
図8】(A)および(B)は、それぞれ、図3(B)に示されるダイアフラムの動作説明に供される部分拡大図である。
図9】本発明に係るダイアフラムアッセンブリーを備える感圧制御弁の第3実施例の構成を示す断面図である。
図10】本発明に係るダイアフラムアッセンブリーを備える感圧制御弁の第4実施例の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図2は、本発明に係るダイアフラムアッセンブリーの一例を備える感圧制御弁の第1実施例の構成を示す。
【0011】
図2において、感圧制御弁は、例えば、空調システムの一部を構成する容量可変型の圧縮機のハウジングCHに形成される空洞内に配置される。感圧制御弁は、電磁コイルユニットおよびプランジャ24と、円筒状の吸引子14と、を有する弁体駆動部10と、弁体16、および、後述するダイアフラムアッセンブリーとを有する弁本体20と、を主な要素として含んで構成されている。
【0012】
弁体駆動部10における電磁コイルユニットは、コイルケース12内にコイルガイド12Gを介して配される環状のコイル部12Eと、環状プレート18とを備えている。コイル部12Eは、内部配線により端子10Tに電気的に接続されている。弁体駆動部10の外周部の環状溝には、OリングS1が設けられている。また、プランジャ24が、コイル部12Eの内周部における凹部内に配置される円筒状のプランジャチューブ25内に移動可能に配されている。プランジャ24は、内側にスプリング収容部を有している。スプリング収容部の底部とプランジャチューブ25の内周部との間には、プランジャ24を後述する吸引子14に向けて付勢するプランジャばね26が配されている。プランジャ24のスプリング収容部の底部の貫通孔には、弁体16の一端16E1が挿入されている。その貫通孔に隣接して連通孔24bが形成されている。連通孔24bは、スプリング収容部と吸引子14のプランジャ24側の端面の周囲に形成される隙間とを連通させる。円筒状のプランジャチューブ25の端部には、吸引子14の一端14E1が連結されている。吸引子14の内側の貫通孔には、弁体16が移動可能に配されており、この貫通孔により、ポートP20P1と、プランジャ24と向かい合う吸引子14のプランジャ24側の端面との間に形成される隙間を連通させている。
【0013】
弁本体20における上述の環状プレート18に当接する一端部20E1に形成される凹部には、吸引子14の他端14E2が挿入され保持されている。凹部20Rは、吸引子14の他端14E2が挿入される大径部20RLと、大径部20RLに連なる小径部20RSとから構成されている。同心上に形成される大径部20RLおよび小径部20RSは、弁本体20の中心軸線に沿って他端部に向けて延びている。大径部20RLおよび小径部20RSには、吸引子14の内周部に移動可能に配される弁体16が弁本体20の中心軸線に沿って延びている。弁体16における吸引子14の他端近傍には、止め輪SRが設けられており、止め輪SRが吸引子14の下端14E2に当接することにより後述の弁体16の最大開度が規定される。止め輪SRと大径部20RLの底部との間には、弁体16をプランジャ24に向けて付勢する弁体用ばね22が設けられている。弁体16における止め輪SRが設けられる部分と弁体16の他端16E2との間には、弁部16EVが、ポート20P2に向き合う溝の周縁に形成されている。この弁部16EVが、弁本体20の弁座部20Xに対して離接することで、後述のポート20P2から20P1へ流れる流体の流量を制御する。弁体16の他端16E2の端面は、弁本体20の小径部20RSから突出している。
【0014】
大径部20RLの周縁には、上述の圧縮機のクランク室に連通するポート20P1が弁本体20の中心軸線に対し略直交する方向に沿って形成されている。また、小径部20RSの周縁には、圧縮機のシリンダボアの吐出側通路に連通するポート20P2がポート20P1に対し略平行に形成されている。弁本体20における弁体16の他端16E2の端面に臨む位置には、圧縮機のシリンダボアの吸入側通路に連通するポート20P3が、ポート20P1およびポート20P2に対し略平行に形成されている。
【0015】
これにより、本実施例において、吸引子14がコイル部12Eにより励磁されている場合、弁部16EVと弁座部20dとの間は、吸入圧力Psに応じた所定の隙間(開度)となり、圧縮機の吐出側からクランク室に流入する流量が制御されることにより、圧縮機のクランク室圧力Pcが吸入圧力Psに応じて制御される。また、コイル部12Eに印加されている電流値に応じてプランジャ24が弁体用ばね22および後述の調整ばね32の付勢力に抗して吸引子14に吸引されることで隙間(開度)が小となり、より低い吸入圧力Psで圧縮機のクランク室圧力Pcは制御される。一方、吸引子14がコイル部12Eにより励磁されていない場合、弁体用ばね22の作用により、弁体16の他端16E2の端面と、当金部材40とが切り離され弁体16の開度は最大を保持する。
【0016】
弁本体20の外周部におけるポート20P1、ポート20P2、および、ポート20P3に隣接した位置に形成される環状溝には、それぞれ、OリングS2,S3,S4,および、S5が設けられている。また、弁本体20の大径部20RLの周縁と吸引子14の他端14E2との間には、OリングS6が設けられている。
【0017】
弁本体20における他端部20E2には、ガイド部材28によりダイアフラムアッセンブリー46が保持されている。ガイド部材28は、弁本体20における他端部20E2の凹部内に、かしめ加工により固定されている。ガイド部材28内には、後述するダイアフラムアッセンブリー46の受金具44を付勢する調整ばね32および調整ばね32の付勢力を調整するための調整ナット30が設けられている。
【0018】
ダイアフラムアッセンブリー46は、弁体16の端面に当接する当金部材40と、ダイアフラム42と、受金具44とを含んで構成されている。ダイアフラム42の外周縁は、ガイド部材28の端面とポート20P3に連通する弁本体20における小部屋Rの開口端部との間に挟持されている。ダイアフラム42は、図3(A)および(B)に示されるように、ゴム材料、例えば、シリコンゴム、フッ素ゴム、NBR等からなる弾性基材と、平編みされた基布とからなる複合材料により円盤状に成形されている。ダイアフラム42は、弾性基材で成形される外縁部42Eおよび内縁部42Aと、外縁部42Eと内縁部42Aとを連結する膜状部42Bとから構成されている。膜状部42Bは、上述の弾性基材が基布に含浸されて作られている。基布は、合成繊維等で作られる経糸の束および緯糸の束により密に平編みされ、図8(A)に部分的に拡大されて示されるように、その目開きは、例えば、零から0.5mm以下に設定されている。目開きとは、互いに隣接する経糸の束相互間であって、その経糸の束に交差する緯糸の束相互間に形成される隙間42Gをいう。このような構成により、ダイアフラム42は、例えば、約20MPa程度の最大耐圧圧力を有している。
【0019】
作動力伝達部材としての当金部材40は、金属材料で作られ、円板状部と、円板状部と一体に形成される軸部40Sとから構成されている。連結軸部としての軸部40Sの一端には、後述する紡錘形のキャップ48の一端が挿入される凹部40aが形成されている。金属材料で作られるキャップ48の他端48Pの直径は、例えば、約0.1mm以上0.5mm以下に設定されている。
【0020】
係止部材としての受金具44は、金属材料で作られ、調整ばね32の一端を受け止めるフランジ部44Fを外周部に有している。また、円筒状の受金具44は、当金部材40の軸部40Sが挿入される貫通孔44Aを中央部に有している。当金部材40の軸部が挿入された後、貫通孔44Aから突出した当金部材40の軸部40Sの端は、かしめられる。これにより、当金部材40および受金具44がダイアフラム42に固定されることとなる。これにより、圧力室としての小部屋Rとガイド部材28の内側とが隔絶されることとなる。
【0021】
ダイアフラムアッセンブリー46を組み立てるにあたっては、図1(A)に示されるように、先ず、キャップ48の一端が当金部材40の凹部40aに挿入される。次に、当金部材40に取り付けられたキャップ48の他端48Pに、ダイアフラム42の内縁部42Aの窪み42Cが、挿入される。その際、窪み42Cは、図8(A)に部分的に拡大されて示されるように、貫通孔が開いておらず、キャップ48の他端48Pが、窪み42Cにおける基布の上述の隙間42Gである目開きを通過するものとされる。または、キャップ48の他端48Pは、図8(B)に拡大されて示されるように、経糸の束と緯糸の束との交差する部分における繊維相互間42Sを通過するものとされる。
【0022】
従って、抜き打ち加工等が必要とされず、基布が切断される虞がなく、即ち、基布の繊維が切断される虞がないのでダイアフラム42の耐圧性能が低下することが、回避される。また、キャップ48の他端48Pに、上述した図8(B)に部分的に拡大されて示されるように、窪み42Cにおける基布の経糸の束および緯糸の束自体が挿入される場合でも、経糸の束、緯糸の束を構成する繊維相互間42Sを通過するものとされる。従って、抜き打ち加工等により基布が切断される虞がないのでダイアフラム42の耐圧性能が低下することが、回避される。
【0023】
そして、図1(B)に示されるように、キャップ48が取り外された後、受金具44の軸部40Sに受金具44の貫通孔44Aの一端が挿入される。そして、図1(C)に示されるように、貫通孔44Aの他端から突き出た当金部材40の軸部の端が、かしめ加工により押し広げられる。これにより、かしめ部SWが当金部材40の軸部に形成されることによって。ダイアフラム42と当金部材40とが一体とされ、組み立てが完了する。なお、受金具44をキャップ48に挿入した後で、キャップ48を取り外してもよい。
【0024】
図4は、本発明に係るダイアフラムアッセンブリーの他の一例を備える感圧制御弁の第2実施例の構成を示す。なお、図4において、図2に示される例において同一の構成要素について同一の符号を付して示し、その重複説明を省略する。
【0025】
図4において、感圧制御弁は、例えば、空調システムの一部を構成する容量可変型の圧縮機のハウジングCHに形成される空洞内に配置される。感圧制御弁は、電磁コイルユニットおよびプランジャ64と、円筒状の吸引子54と、を有する弁体駆動部10´と、弁体68、および、後述するダイアフラムアッセンブリー76とを有する弁本体80と、を主な要素として含んで構成されている。
【0026】
弁体駆動部10´における電磁コイルユニットは、コイルケース12内にコイルガイド12Gを介して配される環状のコイル部12Eと、環状プレート60とを備えている。コイル部12Eは、内部配線により端子10´Tに電気的に接続されている。また、プランジャ64が、コイル部12Eの内周部における凹部内に配置される円筒状のプランジャチューブ62内に移動可能に配されている。プランジャ64は、ガイド50内の調整ねじ58の先端部を受け止める当接面64TSを端面に有している。調整ねじ58は、非励磁時のプランジャ64と吸引子54の距離を調整するものとされ、プランジャ64、連結棒56を介して調整ばね66の圧縮量を調整し、圧縮機の設定吸入圧力を調整するものとされる。プランジャ64の当接面64TSの中央に開口する貫通孔64aには、連結棒56の一端56E1が挿入されており、連結棒56の段部がプランジャ64の下端面に当接されている。また、その貫通孔64aに隣接した位置には、プランジャ64と向かい合う吸引子54の端面54E1との間に形成される隙間と当接面64TSとを連通させる連通孔64bが形成されている。円筒状のプランジャチューブ62の中間部には、吸引子54が溶接により固定されている。吸引子54の内側の貫通孔には、連結棒56が移動可能に配されている。吸引子54とプランジャ64との間には、プランジャ64を調整ねじ58の先端部の方向に付勢するプランジャばね52が配されている。連結棒56の他端56E2と後述するダイアフラムアッセンブリー76の当金部材70との間に形成される調整ばね収容部Rsには、調整ばね66が配置されている。
【0027】
弁本体80における弁体駆動部10´の下端が連結される端部には、ダイアフラムアッセンブリー76のダイアフラム72の周縁が、弁体駆動部10´の下端の段差部と弁本体80の連結端80E1との間で挟持されている。その連結端80E1に形成される小部屋Raには、ダイアフラムアッセンブリー76の受金具74が挿入されている。その小部屋Raは、圧縮機のシリンダボアの吸入側通路に連通する弁本体80のポート80P3に連通している。ポート80P3は、連結棒56の中心軸線に対し略直交するように形成されている。その小部屋Raには、ボール78がボール収容部に配置されている。ボール78は、受金具74の下側内周面と後述する弁体68の一方の端面68E1との間に配され、受金具74の外周面および弁体68の一方の端面に当接している。弁体68は、その軸線が連結棒56の中心軸線上にある状態で移動可能に配されている。弁体68の他方の端部は、フランジ部を有し、弁本体80の下端に設けられる凹部内に突出している。弁体68の他方の端部におけるフランジ部近傍の外周部には、弁部68E2が、弁体68の溝の周縁に形成されている。その溝は、ポート80P1と弁本体80の下端に設けられる凹部との間に跨っている。この弁部68E2が、弁本体80の弁座部80E2に対して離接することで、弁体68が後述のポート80P2から80P1へ流れる流体の流量を制御する。
ポート80P1は、ポート80P3に対し略平行に形成されている。弁体68の他方の端部におけるフランジ部と弁本体80の下端に設けられるばね受84との間には、ポート80P1と凹部との間の弁座部80E2と弁部68E2との隙間を閉じる方向に弁体68のフランジ部を付勢する弁体用ばね82が配されている。また、圧縮機のシリンダボアの吐出側通路に連通するポート80P2が、上述の凹部に連通し、ポート80P1に対し直交するように形成されている。
【0028】
これにより、非励磁時において、図4に示されるように、弁部68E2と弁座部80E2との隙間が吸入圧力Psに応じた所定の隙間(開度)となるので圧縮機の吐出側からクランク室に流入する流量が制御されることによって、圧縮機のクランク室圧力Pcが吸入圧力Psに応じて制御される。また、コイル部12Eに印加されている電流値に応じてプランジャ64が弁体用ばね82、プランジャばね52及び後述の調整ばね66の付勢力に抗して吸引子14に吸引され、上述の隙間(開度)が大となり、より高い吸入圧力Psで圧縮機のクランク室圧力Pcは制御される。本実施例は、吸引子54がコイル部12Eにより励磁されていない場合であっても吸入圧力Psに応じてクランク室圧力Pcが制御される点、コイル部12Eに印加される電流値が大きくなる程、隙間(開度)が大となり、より高い吸入圧力Psで圧縮機のクランク室圧力Pcは制御される点で第1実施例とは相違する。
【0029】
弁本体80の外周部におけるポート80P1、および、ポート80P3に隣接した位置に形成される環状溝には、それぞれ、OリングS2,S7,および、S8が設けられている。
【0030】
ダイアフラムアッセンブリー76は、調整ばね66により付勢される作動力伝達部材としての当金部材70と、ダイアフラム72と、受金具74とを含んで構成されている。ダイアフラム72の外周縁は、弁本体80の端面と弁体駆動部10´の下端との間に挟持されている。ダイアフラム72は、図5(A)および(B)に示されるように、ゴム材料、例えば、シリコンゴム、フッ素ゴム、NBR等からなる弾性基材と、平編みされた基布とからなる複合材料により円盤状に成形されている。ダイアフラム72は、弾性基材で成形される外縁部72Eおよび内縁部72Aと、外縁部72Eと内縁部72Aとを連結する膜状部72Bとから構成されている。膜状部72Bは、上述の弾性基材が基布に含浸されて作られている。基布は、合成繊維等で作られる経糸の束および緯糸の束により密に平編みされ、その目開きは、例えば、零から0.5mm以下に設定されている。目開きとは、互いに隣接する経糸の束相互間であって、その経糸の束に交差する緯糸の束相互間に形成される隙間42Gをいう。このような構成により、ダイアフラム72は、例えば、約20MPa程度の最大耐圧圧力を有している。
【0031】
作動力伝達部材としての当金部材70は、金属材料で作られ、円柱状部と、円柱状部と一体に形成される針状部70Pとから構成されている。連結軸部としての針状部70Pの先端の直径は、約0.1mm以上0.5mm以下に設定されている。
【0032】
受金具74は、金属材料で作られ、ボール78を受け止める凹部の周縁を端面に有している。また、円筒状の受金具74は、当金部材70の針状部70Pに、挿入される貫通孔74Aを中央部に有している。当金部材70の針状部70Pに、貫通孔74Aが挿入された後、貫通孔74Aから凹部内に突出した当金部材70の針状部70Pの端は、溶接され、受金具74と共に溶接され固定される。これにより、調整ばね収容部Rsとポート80P1に連通する圧力室としての小部屋Raとの間が隔絶されることとなる。
【0033】
ダイアフラムアッセンブリー76を組み立てるにあたっては、図7(A)に示されるように、先ず、当金部材70の針状部70Pに、ダイアフラム72の内縁部72Aの窪み72Cが挿入される。その際、窪み72Cは、図6に部分的に拡大されて示されるように、貫通孔が開いておらず、針状部70Pが、窪み72Cにおける基布の目開きを通過するものとされる。従って、基布の繊維が切断される虞がないのでダイアフラム72の耐圧性能が低下することが、回避される。
【0034】
そして、図7(B)に示されるように、当金部材70の針状部70Pに受金具74の貫通孔74Aの一端が挿入され、次に、図7(C)に示されるように、貫通孔74Aの他端から突き出た当金部材70の針状部70Pの端が、受金具74と共に溶接され固定される。これにより、溶融部WEが当金部材70の針状部70Pおよび受金具74の凹部内に形成されることによってダイアフラム72と当金部材70とが一体とされ、組み立てが完了する。
【0035】
図9は、本発明に係るダイアフラムアッセンブリーの他の一例を備える感圧制御弁の第3実施例の構成を示す。なお、図9において、図2に示される例において同一の構成要素について同一の符号を付して示し、その重複説明を省略する。
【0036】
図9において、感圧制御弁は、例えば、空調システムの一部を構成する容量可変型の圧縮機のハウジングCHに形成される空洞内に配置される。感圧制御弁は、電磁コイルユニットおよびプランジャ24と、円筒状の吸引子14と、を有する弁体駆動部10と、弁体86、および、後述するダイアフラムアッセンブリーとを有する弁本体20´と、を主な要素として含んで構成されている。
【0037】
弁体駆動部10における電磁コイルユニットは、コイルケース12内にコイルガイド12Gを介して配される環状のコイル部12Eと、環状プレート18とを備えている。プランジャ24のスプリング収容部の底部の貫通孔には、連結棒86の一端86E1が挿入されている。その貫通孔に隣接して連通孔24bが形成されている。連通孔24bは、スプリング収容部と吸引子14のプランジャ24側の端面の周囲の隙間とを連通させる。
吸引子14の内側の貫通孔には、連結棒86が移動可能に配されており、この貫通孔により、ポートP20P1と、プランジャ24と向かい合う吸引子14のプランジャ24側の端面との間に形成される隙間を連通させている。
【0038】
弁本体20´における上述の環状プレート18に当接する一端部に形成される凹部20´Rには、吸引子14の他端14E2が挿入され保持されている。凹部20´Rは、吸引子14の他端14E2が挿入される大径部20´RLと、大径部20´RLに連なる小径部20´RSとから構成されている。同心上に形成される大径部20´RLおよび小径部20´RSは、弁本体20´の中心軸線に沿って他端部に向けて延びている。大径部20´RLおよび小径部20´RSには、吸引子14の内周部に移動可能に配される連結棒86が弁本体20´の中心軸線に沿って延びている。連結棒86における吸引子14の他端近傍には、止め輪SRが設けられている。止め輪SRと小径部20´RSの内周部に形成される環状の突起部との間には、連結棒86をプランジャ24に向けて付勢する弁体用ばね22が設けられている。連結棒86の他端86E2には、弁体としてのボール86Bが固着されている。ボール86Bの直径は、上述の突起部の内径よりも大に設定されている。突起部のボール86B側角部には弁座部20´dが形成され、ボール86Bが弁座部20´dに対して離接することで、後述のポート20´P3から20´P1へ流れる流体の流量を制御する。
【0039】
止め輪SRおよび弁体用ばね22の周囲には、上述の圧縮機のクランク室に連通するポート20´P1が弁本体20´の中心軸線に対し略直交する方向に沿って形成されている。弁本体20´におけるボール86Bに臨む位置には、圧縮機のシリンダボアの吸入側通路に連通するポート20´P3が、ポート20´P1に対し略平行に形成されている。
【0040】
これにより、本実施例において、吸引子14がコイル部12Eにより励磁されている場合、ボール86Bと弁座部20´dとの間の隙間は、吸入圧力Psに応じた所定の隙間(開度)となり、圧縮機のクランク室圧力Pcが吸入圧力Psに応じて制御される。また、コイル部12Eに印加されている電流値に応じてプランジャ24が弁体用ばね22及び調整ばね32の付勢力に抗して吸引子14に吸引され、上述の隙間(開度)が大となり、圧縮機のクランク室圧力Pcはより低い吸入圧力Psで制御される。一方、吸引子14がコイル部12Eにより励磁されていない場合、弁体用ばね22の作用により、ボール86Bと当金40とが切り離され開度は、ボール86Bの弁が閉じた状態を保持する。
【0041】
弁本体20´の外周部におけるポート20´P1、および、ポート20´P3に隣接した位置に形成される環状溝には、それぞれ、OリングS2,S4,および、S5が設けられている。また、弁本体20´の大径部20´RLの周縁と吸引子14の端部との間には、OリングS6が設けられている。
【0042】
弁本体20´における他端部20´E2には、ガイド部材28によりダイアフラムアッセンブリー46が保持されている。これにより、圧力室としての小部屋Rpとガイド部材28の内側とが隔絶されることとなる。ダイアフラムアッセンブリー46は、ボール86Bの端面に当接する当金部材40と、ダイアフラム42と、受金具44とを含んで構成されている。
【0043】
図10は、本発明に係るダイアフラムアッセンブリーの他の一例を備える感圧制御弁の第4実施例の構成を示す。
【0044】
図10において、感圧制御弁は、例えば、二酸化炭素が貯留するガスボンベTAの出口に接続された減圧弁とされる。減圧弁は、図示が省略される飲料用サーバーの接続口に、弁本体部100に設けられる継手130および袋ナット128を介して接続されている。
【0045】
減圧弁は、ガスボンベTAの出口にパッキンS10を介して接続される弁本体部100と、ダイアフラムアッセンブリー96と、ダイアフラムアッセンブリー96に対する押圧力を調整する押圧力調整機構部と、ダイアフラム92の変位に応じて弁体122の開度を調整する開度調整機構部と、を主な要素として含んで構成されている。
【0046】
押圧力調整機構部は、弁本体部100の上部に取付金具116により固定される蓋部材108と、蓋部材108の内側に配され受金具94を付勢する調整ばね114と、調整ばね114の変位量をばね受け110およびボール112を介して調整する調整ネジ部104と、調整ネジ部104の端部にセットスクリュー106を介して固定されるハンドル102とを含んで構成されている。調整ネジ部104の雄ネジ部は、蓋部材108の雌ネジ部にねじ込まれている。これにより、ハンドル102が操作されることにより、調整ネジ部104が蓋部材108に対し相対移動した場合、調整ばね114の圧縮量が変化するのでダイアフラムアッセンブリー96に対する押圧力が調整されることとなる。
【0047】
開度調整機構部は、連結棒118と、連結棒118の中心軸線上に配される弁体122と、オリフィス100Fの開度を小とするように弁体122を付勢する弁体用スプリング124と、を含んで構成されている。
【0048】
連結棒118は、弁本体部100の内部における継手130の内部通路と共通の直線上に形成される通路100aに対し直交するように形成されるガイド孔に移動可能に挿入されている。連結棒118の先細部は、ガイド孔と共通軸線上に形成されるオリフィス100F内に挿入されている。また、円筒状のガイド120内に移動可能に案内される弁体122の先端部は、弁体シート119の孔を介してオリフィス100Fに向き合っている。
【0049】
通路100aと後述の小部屋Rbとは、弁本体100に設けられた連通路100dによって連通され、ダイアフラム92の弁本体100側の面に通路100a内の圧力を作用させている。これにより、圧力室としての小部屋Rb内の圧力と調整ばね114の付勢力とのつり合いによりダイアフラム92が変位し、弁体122の先端部とオリフィス100Fとの間に通路100a内の圧力に応じた所定の隙間が形成されることとなる。従って、フィルタFIを介してボンベTAから供給されたガスが、所定の隙間を通じて押圧力調整機構部によって設定された所定の圧力で通路100aに供給されることとなる。
【0050】
ダイアフラムアッセンブリー96は、連結棒118の端面に当接する作動力伝達部材としての当金部材90と、ダイアフラム92と、受金具94とを含んで構成されている。ダイアフラム92の外周縁は、蓋部材108のフランジ部の端面と弁本体100の端面との間に挟持されている。
【0051】
ダイアフラム92は、ゴム材料、例えば、シリコンゴム、フッ素ゴム、NBR等からなる弾性基材と、平編みされた基布とからなる複合材料により円盤状に成形されている。ダイアフラム92は、弾性基材で成形される外縁部および内縁部と、外縁部と内縁部とを連結する膜状部とから構成されている。ダイアフラム92の膜状部は、弾性基材が基布に含浸されて作られている。合成繊維等で作られる基布は、密に平編みされ、その目開きは、例えば、零から0.5mm以下に設定されている。目開きとは、互いに隣接する経糸の束相互間であって、その経糸の束に交差する緯糸の束相互間に形成される隙間をいう。このような構成により、ダイアフラム92は、例えば、約20MPa程度の最大耐圧圧力を有している。
【0052】
作動力伝達部材としての当金部材90は、金属材料で作られ、円板状部と、円板状部と一体に形成される軸部90Sとから構成されている。軸部90Sの一端には、上述した紡錘形のキャップ48の一端が挿入される凹部が形成されている。キャップ48の他端48Pの直径は、約0.1mm以上0.5mm以下に設定されている。
【0053】
受金具94は、金属材料で作られ、調整ばね114の一端を受け止めるフランジ部を外周部に有している。また、円筒状の受金具94は、当金部材90の軸部が挿入される貫通孔を中央部に有している。当金部材90の軸部90Sが貫通孔に挿入された後、貫通孔から突出した当金部材90の軸部90Sの端は、かしめられる。これにより、圧力室としての小部屋Rbと蓋部材108の内側部分とが隔絶されることとなる。
【0054】
ダイアフラムアッセンブリー96を組み立てるにあたっては、図1(A)〜(C)に示される手順と同様な手順に従い組み立てられる。
【0055】
なお、上述の本発明に係るダイアフラムアッセンブリーの各実施例が、減圧弁等の感圧制御弁に適用されているが、斯かる例に限られることなく、例えば、ダイアフラムアッセンブリーを備える圧力スイッチ等の他の装置に適用されてもよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0056】
40、70、90 当金部材
40S、90S 軸部
42、72、92 ダイアフラム
44、74、94 受金具
70P 針状部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10