(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6283498
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】デッキ材固定具
(51)【国際特許分類】
E04F 15/02 20060101AFI20180208BHJP
【FI】
E04F15/02 P
E04F15/02 101G
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-225476(P2013-225476)
(22)【出願日】2013年10月30日
(65)【公開番号】特開2015-86580(P2015-86580A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2016年9月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】514304603
【氏名又は名称】エア・ウォーター・エコロッカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村岡 隆
【審査官】
西村 隆
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2005/0063771(US,A1)
【文献】
国際公開第2009/145367(WO,A1)
【文献】
特開2011−084946(JP,A)
【文献】
特開2011−236601(JP,A)
【文献】
特開2004−218311(JP,A)
【文献】
特開2008−031757(JP,A)
【文献】
特開2012−167483(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/050130(WO,A1)
【文献】
特開2003−201758(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0182034(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 15/02
E04F 15/00
E04B 1/00
E04B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのデッキ材の間に配置されて前記デッキ材と係合し、根太に固定されるデッキ材固定具であって、2つの板状部と、2つの前記板状部をつなぐ連結部とを有し、
前記板状部には、前記デッキ材と嵌合する爪部が設けられており、
2つの前記板状部の一方の面には、2つの前記デッキ材の間に配置される条部材を固定するために固定部が設けられており、
前記板状部の他方の面には、両側の前記デッキ材と当接し、前記デッキ材の膨張に応じて膨張方向に沿って変形して膨張を吸収する変形部が設けられており、
前記連結部には、下方へ延在する脚部が設けられており、前記連結部および前記脚部には、ビスを挿入するための貫通孔が設けられており、
前記変形部は前記脚部よりも変形しやすく、
前記変形部は先細形状とされており、
前記脚部は下側へ近づくにつれて肉厚が薄くなるテーパー形状である、デッキ材固定具。
【請求項2】
前記変形部はX形状である、請求項1に記載のデッキ材固定具。
【請求項3】
前記デッキ材固定具は樹脂製である、請求項1または2に記載のデッキ材固定具。
【請求項4】
前記連結部に突起が設けられており、前記突起に金属プレートが取り付けられる、請求項1から3のいずれか1項に記載のデッキ材固定具。
【請求項5】
前記変形部は、可撓性を有する、請求項1から4のいずれか1項に記載のデッキ材固定具。
【請求項6】
前記変形部は、弾性部材を含む、請求項1から5のいずれか1項に記載のデッキ材固定具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はデッキ材固定具に関して、より特定的には、根太に固定されるデッキ材固定具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
デッキ材を固定する金具は、たとえば特開2008−31757号公報(特許文献1)、特開2007−314947号公報(特許文献2)、および特開2011−236601号公報(特許文献3)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−31757号公報
【特許文献2】特開2007−314947号公報
【特許文献3】特開2011−236601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1ではデッキ材間の位置の取り決めのために、デッキ材側面部の形状に沿うように肉厚の壁板が設けられている構造が開示されている。
【0005】
しかし、かかる構造ではデッキ材が水分または気温の変化により幅方向に膨張した場合には壁板を強く押し付けることとなり、固定金具と当接する部分に局所ストレスがかかってデッキ材にひびが入る場合がある。
【0006】
また、このストレスによってデッキ面全体が押し合いへし合いになっているため、固定金具を基礎に固定しているビスを一本抜いても固定金具が強い力で挟まれているため、外したいデッキ材を一枚だけ外すことは容易ではない。
【0007】
特許文献2では、膨張による圧力を吸収するため、隣接するデッキ材の位置を規定する爪を設け、デッキ材が膨張した場合には爪が変形することで圧力を吸収する構造を採用している。
【0008】
しかし、この固定金具では固定用のビスを止める固定部が必要であり、左右対称構造のデッキ材には適していない。
【0009】
特許文献3では、金具の長手方向中央に隙間があり、デッキ材が膨張し固定金具がデッキ材に押される際に中央の隙間が狭くなることによって膨張圧力を吸収する形状を採用している。
【0010】
しかしながら、この固定具に記載の隙間程度では、膨張圧力を充分に吸収することができないと考えられる。
【0011】
そこで、この発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、デッキ材の幅方向の膨張を充分に吸収することが可能なデッキ材固定具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明に従ったデッキ材固定具は、2つのデッキ材の間に配置されてデッキ材と係合し、根太に固定されるデッキ材固定具であって、両側のデッキ材と当接し、デッキ材の膨張に応じて膨張方向に沿って変形して膨張を吸収する変形部を備える。
【0013】
このように構成されたデッキ材固定具では、変形部がデッキ材の膨張に応じて膨張方向に沿って変形して膨張を吸収するため、大きな膨張であっても吸収することができ、デッキ材の幅方向の膨張を充分に吸収することが可能となる。
【0014】
好ましくは、デッキ材固定具は、デッキ材の凹部に嵌まり合う。
好ましくは、デッキ材の凹部と係合する爪部を備える。
【0015】
好ましくは、複数のデッキ材の間に配置される条部材を固定するために固定部を備える。
【0016】
好ましくは、変形部は、可撓性を有する。
好ましくは、変形部は、弾性部材を含む。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施の形態1に従ったデッキ材固定具が用いられるデッキ構造の分解斜視図である。
【
図2】実施の形態1に従ったデッキ材固定具の斜視図である。
【
図3】
図2中の矢印IIIで示す方向から見たデッキ材固定具の正面図である。
【
図4】デッキ材固定部に取り付けられるコイン落下防止材の断面図である。
【
図5】デッキ材の間に挟まれたデッキ材固定具の正面図である。
【
図6】実施の形態1に従ったデッキ材固定具の平面図である。
【
図7】実施の形態1に従ったデッキ材固定具の側面図である。
【
図8】実施の形態1に従ったデッキ材固定具の底面図である。
【
図9】
図6中のIX−IX線に沿った端面図である。
【
図10】実施の形態1に従ったデッキ材固定具による取付方法を説明するための斜視図である。
【
図11】実施の形態2に従ったデッキ材固定具の変形部の底面図である。
【
図12】実施の形態3に従ったデッキ材固定具の変形部の底面図である。
【
図13】実施の形態4に従ったデッキ材固定具の変形部の底面図である。
【
図14】実施の形態5に従ったデッキ材固定具の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に従ったデッキ材固定具が用いられるデッキ構造の分解斜視図である。
図1を参照して、デッキ構造1は、デッキ材2、根太3、根太用蓋5、束金物6、ビス7、デッキ材固定具10を有する。デッキ材固定具10は隣接するデッキ材2の間に介在してデッキ材2の溝にはまり合い、かつ、ビスにより根太3に固定される。
【0019】
デッキ材2は、長手方向に延びており、幅方向には複数のデッキ材2が並べられている。各々のデッキ材2の長さおよび幅は等しくてもよく、異なっていてもよい。デッキ材2は、金属性および非金属性のいずれであってもよい。金属性のデッキ材2として、アルミニウム合金製のデッキ材2があり、非金属性のデッキ材2として、木製、プラスチック製、樹脂と木の複合材料製のデッキ材2がある。
【0020】
デッキ材2の延びる方向と直交するように、根太3が延びている。根太3は、デッキ材2の荷重を支えるために金属性であることが好ましく、鋼製であることがより好ましい。この実施の形態では、中空角柱の根太3を採用している。根太3は、束金物6により支持されている。
【0021】
根太3の側面4にもデッキ材2が取り付けられる。デッキ材2はビス7により根太3に固定される。根太3の端部開口は、根太用蓋5により封止される。
【0022】
図2は、実施の形態1に従ったデッキ材固定具の斜視図である。
図2を参照して、デッキ材固定具10は、2つの板状部11,13と、板状部11,13をつなぐ連結部12とを有する。
【0023】
板状部11,13には、デッキ材2と係合する爪部15が設けられている。爪部15がデッキ材2の凹部と嵌まり合い、施工前の状態においてデッキ材2にデッキ材固定具10が保持される。板状部11,13にはコイン落下防止部材を固定するための固定部14が設けられている。固定部14はフック形状であり、コイン落下防止部材を保持することが可能である。
【0024】
連結部12中央に貫通孔12aが設けられており、貫通孔12aの両側に突起12bが配置されている。突起12bは、連結部12上に設けられる金属板を位置決めするためのものであり、貫通孔12aは、ビスによりデッキ材固定具10を根太に固定するためのものである。
【0025】
連結部12の下方には中央脚部103が下方へ延在するように設けられている。中央脚部103の両側には、X形状の変形部101,102,104,105が設けられている。変形部101,102,104,105は、中央脚部103よりも剛性が低く、変形しやすい構造とされている。
【0026】
デッキ材固定具10は、望ましくは樹脂製であり金属よりも柔らかい材料で構成されている。そのため、金属製の固定具よりも変形しやすい。デッキ材固定具10を金属で構成することも可能であるが、その場合であっても、変形部101,102,104,105は、中央脚部103よりも変形しやすい
。
図3は、
図2中の矢印IIIで示す方向から見たデッキ材固定具の正面図である。
図3を参照して、板状部13の端面のうち、爪部15が設けられる側の端面はR形状であるのに対して、爪部15が設けられていない側の端面は矩形である。これは、爪部15が設けられた端面をデッキ材の凹部へ挿入しやすくするためである。
【0027】
突起12bと固定部14とが一直線上に並んでいる。固定部14の先端近傍には凸部140が設けられており、この凸部140がコイン落下防止部材とかみ合う。
【0028】
図4は、デッキ材固定部に取り付けられるコイン落下防止材の断面図である。
図4を参照して、条部材としてのコイン落下防止部材20は、弾性体により構成されており、隣接する2つのデッキ材2間に嵌め合わせられる。コイン落下防止部材20の凹部21と固定部14の凸部140とが嵌まり合う。コイン落下防止部材20は、デッキ材2間にコインが落下した場合にコインのさらなる落下を防止する。さらに、コイン落下防止部材20は、上側からデッキ材固定具10および根太3が見えることを防止する働きがある。
【0029】
図5は、デッキ材の間に挟まれたデッキ材固定具の正面図である。
図5を参照して、デッキ材固定具10は、2つのデッキ材2の凹部2aに嵌め合わせられる。板状部13が凹部2aに入り込んで爪部15が凹部2aの壁面に当接している。その結果、左側の凹部2aから板状部13が外れたとしても、右側の板状部13が凹部2aから外れることが無い。その結果、施工時にデッキ材固定具10は常にデッキ材2に保持されることになる。変形部105の両側面がデッキ材2と当接している。変形部105はデッキ材2の厚み方向に沿って延在しているため、厚み方向の広い範囲において変形部105とデッキ材2とが接触している。他の変形部101,102,104も変形部105と同じようにデッキ材2と接触している。
【0030】
変形部105は先細形状とされている。雨が降った場合には、デッキ材2の間のスリット(デッキ材固定具10を嵌めこむ溝)や、デッキ材2とデッキ材固定具10とが接触している部分で水が滞留する可能性があるが、その滞留を少なくして根太3へ水が流れやすくなるために変形部101,102,104,105が先細形状とされている。
【0031】
図6は、実施の形態1に従ったデッキ材固定具の平面図である。
図6を参照して、板状部11,13および連結部12は、ともに矩形であるが、これに限定されるものではなく、板状部11,13および連結部12の一部分に曲線状の形状が含まれていてもよい。さらに、デッキ材固定具10の長手方向の端部に固定部14および爪部15が設けられているが、これに限定されずに端部以外に固定部14および爪部が設けられていてもよい。固定部14および爪部15は、必ずしも設けられていなくてもよい。
【0032】
図7は、実施の形態1に従ったデッキ材固定具の側面図である。
図8は、実施の形態1に従ったデッキ材固定具の底面図である。
図9は、
図6中のIX−IX線に沿った端面図である。
【0033】
これらの図を参照して、各々の変形部101,102,104,105は同じ形状であるが、これらが互いに異なる形状であってもよい。貫通孔12aに対して変形部101,102,104,105は対称に配置されている。中央脚部103は下側へ近づくにつれて肉厚が薄くなる、テーパー形状である。
【0034】
図10は、実施の形態1に従ったデッキ材固定具による取付方法を説明するための斜視図である。
図10を参照して、連結部12の突起12bを金属性のプレート210の貫通孔212に嵌め合わせると共に、プレート210の貫通孔211および連結部12の貫通孔12aにビス220を挿入し、ビス220の先端を根太3に螺合させる。このとき、板状部11,13は、ともにデッキ材2の凹部2aに嵌合している。これにより、根太3にデッキ材固定具10を取り付けることができる。
【0035】
デッキ材固定具10は、2つのデッキ材2の間に配置されてデッキ材2と係合し、根太3に固定されるデッキ材固定具10であって、両側のデッキ材2と当接し、デッキ材2の膨張に応じて膨張方向に沿って変形して膨張を吸収する変形部101,102,104,105を備える。デッキ材固定具10は、デッキ材2の凹部2aに嵌まり合う。デッキ材2の凹部2aと係合する爪部15を備える。2つのデッキ材2の間に配置される条部材としてのコイン落下防止部材20を固定するために固定部14を備える。変形部101,102,104,105は、可撓性を有する。
【0036】
このように構成されたデッキ材固定具10では、コイン落下防止部材20(目地材)とデッキ材固定具10の両者に飛散防止対策となる形状を付与したことによって、施工後もコイン落下防止部材20が飛散することがない。
【0037】
さらに、デッキ材固定具10の底面の形状を板状から断面X状にすることで、デッキ材2が幅方向に膨張してもデッキ材固定具10の変形部101,102,104,105が変形することによって、デッキ材2の膨張時のストレスをデッキ材固定具10が吸収するためデッキ材2本体が破壊されることが無い。そのため、従来品と比較してデッキ材固定具10を取り外しやすくなり、外したいデッキ材2を一枚だけ外すことが容易となった。
【0038】
さらにデッキ材2とコイン落下防止部材20を同時に固定することができるデッキ材固定具10を提供することができる。
【0039】
(実施の形態2)
図11は、実施の形態2に従ったデッキ材固定具の変形部の底面図である。
図11を参照して、実施の形態2に従ったデッキ材固定具の変形部105はS字状である点で、実施の形態1に従った変形部105と異なる。なお、複数の変形部の少なくともひとつがS字状であればよい。
【0040】
(実施の形態3)
図12は、実施の形態3に従ったデッキ材固定具の変形部の底面図である。
図12を参照して、実施の形態3に従ったデッキ材固定具の変形部105はジグザグ状である点で、実施の形態1に従った変形部105と異なる。なお、複数の変形部の少なくともひとつがジグザグ状であればよい。
【0041】
(実施の形態4)
図13は、実施の形態4に従ったデッキ材固定具の変形部の底面図である。
図13を参照して、実施の形態4に従ったデッキ材固定具の変形部105は樹脂部105aと、ゴムまたは多孔性樹脂などからなる弾性部105bの2層構造である点で、実施の形態1に従った変形部105と異なる。なお、複数の変形部の少なくともひとつが2層構造であればよい。
【0042】
(実施の形態5)
図14は、実施の形態5に従ったデッキ材固定具の斜視図である。
図14を参照して、、実施の形態5に従ったデッキ材固定具の変形部101,102,104,105の厚みが一定で先細形状でない点で、実施の形態1に従った変形部105と異なる。なお、複数の変形部の少なくともひとつが厚み一定の構造であればよい。
【0043】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0044】
1 デッキ構造、2 デッキ材、2a 凹部、3 根太、4 側面、5 根太用蓋、6 束金物、7,220 ビス、10 デッキ材固定具、11,13 板状部、12 連結部、12a 貫通孔、14 固定部、15 爪部、20 コイン落下防止部材、101,102,104,105 変形部、103 中央脚部。