特許第6283501号(P6283501)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6283501
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】周波数解析装置及び周波数解析方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 23/16 20060101AFI20180208BHJP
   G01R 31/26 20140101ALI20180208BHJP
【FI】
   G01R23/16 D
   G01R31/26 G
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-233776(P2013-233776)
(22)【出願日】2013年11月12日
(65)【公開番号】特開2015-94654(P2015-94654A)
(43)【公開日】2015年5月18日
【審査請求日】2016年8月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124291
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(72)【発明者】
【氏名】中村 共則
(72)【発明者】
【氏名】大高 章弘
(72)【発明者】
【氏名】西沢 充哲
【審査官】 續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−271307(JP,A)
【文献】 特開2002−247119(JP,A)
【文献】 特開昭63−048904(JP,A)
【文献】 特開2013−057687(JP,A)
【文献】 特開昭62−180274(JP,A)
【文献】 特開平02−136765(JP,A)
【文献】 特開平01−113676(JP,A)
【文献】 特開2004−167316(JP,A)
【文献】 特開2011−085691(JP,A)
【文献】 特開平08−211131(JP,A)
【文献】 特開2004−151065(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0046301(US,A1)
【文献】 特開2007−064975(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 23/16
G01R 31/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測対象物に入力する動作パルス信号を発生させる動作パルス信号発生部と、
前記動作パルス信号に応答した検出信号を出力する検出部と、
前記動作パルス信号に対する複数の高調波を含むリファレンス信号を、前記動作パルス信号と同期して発生させるリファレンス信号発生部と、
前記検出信号が入力され、検出周波数における、第1の電気計測部を動作させる基準信号に対する前記検出信号の位相及び振幅を取得する第1の電気計測部と、
前記リファレンス信号が入力され、前記検出周波数における、第2の電気計測部を動作させる基準信号に対する前記リファレンス信号の位相を取得する第2の電気計測部と、
前記検出信号の前記位相及び前記振幅、並びに、前記リファレンス信号の前記位相に基づいて、前記検出信号の時間波形を取得する解析部と、を備える周波数解析装置。
【請求項2】
前記計測対象物に照射される光である照射光を発生させる光発生部と、
前記照射光を前記計測対象物に照射し、その反射光を導光する光学系と、を更に備え、
前記検出部は、前記反射光を検出することにより、前記計測対象物に入力された前記動作パルス信号に応答した前記検出信号を出力する光センサである、請求項1記載の周波数解析装置。
【請求項3】
前記検出周波数を、前記リファレンス信号に同期して変更する変更部を更に備える、請求項1又は2記載の周波数解析装置。
【請求項4】
前記第1の電気計測部に、前記検出信号又は前記リファレンス信号が入力されるように切り替える切替部を更に備える、請求項1〜3のいずれか一項記載の周波数解析装置。
【請求項5】
前記切替部は、前記第1の電気計測部に前記リファレンス信号が入力されるように切り替え、
前記第1の電気計測部は、前記検出周波数における前記リファレンス信号の位相を取得し、
前記解析部は、前記第1の電気計測部及び前記第2の電気計測部が取得した前記リファレンス信号の位相に基づいて、前記第1の電気計測部及び前記第2の電気計測部の位相誤差を取得する、請求項4記載の周波数解析装置。
【請求項6】
前記リファレンス信号発生部は、前記動作パルス信号に対する基本高調波から少なくとも10次高調波までを含む前記リファレンス信号を発生させる、請求項1〜5のいずれか一項記載の周波数解析装置。
【請求項7】
前記リファレンス信号発生部は、パルス発生器であり、前記動作パルス信号の繰り返し周期よりも短いパルス幅のパルス信号を前記リファレンス信号として発生させる、請求項1〜6のいずれか一項記載の周波数解析装置。
【請求項8】
前記リファレンス信号発生部は、周波数の異なる信号を連続的にリファレンス信号として発生させる、請求項1〜6のいずれか一項記載の周波数解析装置。
【請求項9】
前記第1の電気計測部は第1のスペクトラムアナライザであり、前記第2の電気計測部は第2のスペクトラムアナライザであり、前記第1のスペクトラムアナライザと前記第2のスペクトラムアナライザとは互いに同期されている、請求項1〜8のいずれか一項記載の周波数解析装置。
【請求項10】
計測対象物に入力する動作パルス信号を発生させる動作パルス信号発生工程と、
前記動作パルス信号に応答した検出信号を出力する検出工程と、
前記動作パルス信号に対する複数の高調波を含むリファレンス信号を、前記動作パルス信号と同期して発生させるリファレンス信号発生工程と、
前記検出信号に基づいて、検出周波数における、第1の電気計測部を動作させる基準信号に対する前記検出信号の位相及び振幅を取得する第1の電気計測工程と、
前記リファレンス信号に基づいて、前記検出周波数における、第2の電気計測部を動作させる基準信号に対する前記リファレンス信号の位相を取得する第2の電気計測工程と、
前記検出信号の前記位相及び前記振幅、並びに、前記リファレンス信号の前記位相に基づいて、前記検出信号の時間波形を取得する解析工程と、を含む周波数解析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周波数解析装置及び周波数解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路を検査する技術として、EOP(Electro Optical Probing)やEOFM(Electro-Optical Frequency Mapping)と称される光プロービング技術が知られている。光プロービング技術では、光源から出射された光を集積回路に照射し、集積回路で反射された反射光を光センサで検出して、検出信号を取得する。そして、取得した検出信号において、目的とする周波数を選び出し、その振幅エネルギーを時間的な経過として表示したり、2次元のマッピングとして表示したりする。これにより、目的とした周波数で動作している回路の位置を特定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−64975号公報
【特許文献2】特開2010−271307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような光プロービング技術は、集積回路等の半導体デバイスにおける故障個所及び故障原因などを特定し得ることから、極めて有効な技術である。ここで、光プロービング技術等の、所定の周波数の計測を行う技術においては、高帯域周波数の検出信号を計測することが求められている。
【0005】
そこで、本発明は、高帯域周波数の検出信号を計測することができる周波数解析装置及び周波数解析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の周波数解析装置は、計測対象物に入力する動作パルス信号を発生させる動作パルス信号発生部と、動作パルス信号に応答した検出信号を出力する検出部と、動作パルス信号発生部が発生させた動作パルス信号に対する複数の高調波を含むリファレンス信号を、動作パルス信号と同期して発生させるリファレンス信号発生部と、検出部が出力した検出信号が入力され、検出周波数における検出信号の位相及び振幅を取得する第1の電気計測部と、リファレンス信号発生部が発生させたリファレンス信号が入力され、検出周波数におけるリファレンス信号の位相を取得する第2の電気計測部と、第1の電気計測部が取得した検出信号の位相及び振幅、並びに、第2の電気計測部が取得したリファレンス信号の位相に基づいて、検出信号の時間波形を取得する解析部と、を備える。
【0007】
この周波数解析装置では、リファレンス信号発生部が、計測対象物に入力される動作パルス信号に対する複数の高調波を含むリファレンス信号を、動作パルス信号と同期して発生させている。そして、第1の電気計測部では検出周波数における検出信号の位相及び振幅が取得され、第2の電気計測部では同一の検出周波数におけるリファレンス信号の位相が取得されている。リファレンス信号には複数の高調波が含まれているため、検出周波数を高帯域の周波数とすることにより、高帯域におけるリファレンス信号に対する検出信号の位相差と、高帯域における検出信号の振幅とを求めることができる。以上より、本周波数解析装置によれば、高帯域周波数の検出信号を計測することができる。
【0008】
また、本発明の周波数解析装置では、計測対象物に照射される光である照射光を発生させる光発生部と、照射光を計測対象物に照射し、その反射光を導光する光学系と、を更に備え、検出部は、反射光を検出することにより、計測対象物に入力された動作パルス信号に応答した検出信号を出力する光センサであってもよい。この構成では、光センサである検出部が反射光を検出することによって検出信号が取得されているため、動作パルス信号に応答した検出信号の取得が簡易且つ確実に実施される。このことで、高帯域における検出信号の計測を簡易化するとともに、計測精度を高めることができる。
【0009】
また、本発明の周波数解析装置では、検出周波数を、リファレンス信号に同期して変更する変更部を更に備えていてもよい。この構成によれば、複数の帯域における検出信号の計測を確実且つ高精度に行うことができる。
【0010】
また、本発明の周波数解析装置では、第1の電気計測部に、検出信号又はリファレンス信号が入力されるように切り替える切替部を更に備えていてもよい。この構成によれば、第1の電気計測部に対する入力を、検出信号に替えてリファレンス信号とできる。このため、必要に応じて、第1の電気計測部及び第2の電気計測部の双方にリファレンス信号を入力することが可能となる。
【0011】
また、本発明の周波数解析装置では、切替部が、第1の電気計測部にリファレンス信号が入力されるように切り替え、第1の電気計測部が、検出周波数におけるリファレンス信号の位相を取得し、解析部が、第1の電気計測部及び第2の電気計測部が取得したリファレンス信号の位相に基づいて、第1の電気計測部及び第2の電気計測部の位相誤差を取得してもよい。第1の電気計測部及び第2の電気計測部の位相誤差が取得されることにより、第1の電気計測部に検出信号を入力した際、第1の電気計測部と第2の電気計測部との位相誤差を考慮して検出信号を計測することができ、高帯域における検出信号の計測精度がより向上する。
【0012】
また、本発明の周波数解析装置では、リファレンス信号発生部が、動作パルス信号に対する基本高調波から少なくとも10次高調波までを含むリファレンス信号を発生させてもよい。検出周波数を10次高調波等の高帯域の周波数とすることによって、高帯域周波数の検出信号を計測することができる。
【0013】
また、本発明の周波数解析装置では、リファレンス信号発生部が、パルス発生器であり、動作パルス信号の繰り返し周期よりも短いパルス幅のパルス信号をリファレンス信号として発生させてもよい。この構成によれば、動作パルス信号のパルス間において検出周波数を変更することができる。このことで、複数の帯域における検出信号の計測を確実且つ高精度に行うことができる。
【0014】
また、本発明の周波数解析装置では、リファレンス信号発生部が、周波数の異なる信号を連続的にリファレンス信号として発生させてもよい。この構成によれば、例えば、リファレンス信号の正弦波の周波数が変わる期間において検出周波数を変更することができる。このことで、複数の高帯域における検出信号の計測を確実且つ高精度に行うことができる。
【0015】
また、本発明の周波数解析装置では、第1の電気計測部及び第2の電気計測部が、スペクトラムアナライザであってもよい。スペクトラアナライザを用いることにより、位相等を確実に取得することができる。
【0016】
本発明の周波数解析方法は、計測対象物に入力する動作パルス信号を発生させる動作パルス信号発生工程と、動作パルス信号に応答した検出信号を出力する検出工程と、動作パルス信号に対する複数の高調波を含むリファレンス信号を、動作パルス信号と同期して発生させるリファレンス信号発生工程と、検出信号に基づいて、検出周波数における検出信号の位相及び振幅を取得する第1の電気計測工程と、リファレンス信号に基づいて、検出周波数におけるリファレンス信号の位相を取得する第2の電気計測工程と、検出信号の位相及び振幅、並びに、リファレンス信号の位相に基づいて、検出信号の時間波形を取得する解析工程と、を含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、高帯域周波数の検出信号を計測することができる周波数解析装置及び周波数解析方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1実施形態の半導体デバイス検査装置の構成図である。
図2図1の半導体デバイス検査装置における動作パルス信号及びリファレンス信号の例を示すグラフである。
図3】スイッチの接続例を示す図である。
図4】スペクトラムアナライザの位相誤差計測処理を示すフロー図である。
図5】スイッチの接続例を示す図である。
図6】リファレンス信号に対する検出信号の位相差取得処理を示すフロー図である。
図7】本発明の第2実施形態の半導体デバイス検査装置の構成図である。
図8図7の半導体デバイス検査装置における動作パルス信号及びリファレンス信号の例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0020】
[第1実施形態]
図1に示すように、第1実施形態に係る半導体デバイス検査装置1Aは、被検査デバイス(DUT:Device Under Test)である半導体デバイス8において異常発生箇所を特定するなど、半導体デバイス8を検査するための装置である。具体的には、半導体デバイス検査装置1Aは、半導体デバイス8を計測対象物として、半導体デバイス8の動作信号に対する応答の周波数解析を行う周波数解析装置である。
【0021】
半導体デバイス8としては、トランジスタ等のPNジャンクションを有する集積回路(例えば、小規模集積回路(SSI:Small Scale Integration)、中規模集積回路(MSI:Medium Scale Integration)、大規模集積回路(LSI:Large Scale Integration)、超大規模集積回路(VLSI:Very Large Scale Integration)、超々大規模集積回路(ULSI:Ultra Large Scale Integration)、ギガ・スケール集積回路(GSI:Giga Scale Integration))、大電流用/高圧用MOSトランジスタ及びバイポーラトランジスタ等がある。また、半導体デバイス8は、熱による変調を基板にかけられる半導体デバイスであってもよい。
【0022】
半導体デバイス8は、テスタユニット16により入力された所定の動作パルス信号によって駆動する。従って、テストしたい駆動に対応した動作パルス信号(テストパターン)を半導体デバイス8に入力することにより半導体デバイス8の所望の動作状態における検査を実施できる。テスタユニット16は、半導体デバイス8に入力される動作パルス信号を発生させる動作パルス信号発生部である。具体的には、テスタユニット16は、半導体デバイス8を動作させるための動作パルス信号を発生させるパルスジェネレータと、動作パルス信号を半導体デバイス8に入力するテスタと、電源とを有している。動作パルス信号(テストパターン)は、テスタユニット16のパルスジェネレータの基準クロックに基づいて生成される。また、テスタユニット16は、半導体デバイス8への入力と同時に、パルス発生器17に対して、動作パルス信号に関する情報(動作パルス信号もしくは動作パルス信号の基本周波数や基本周期または、テスタユニット16のパルスジェネレータの基準クロック、基準クロックの周波数や周期など)を入力する。
【0023】
半導体デバイス検査装置1Aは、レーザー光源2を備えている。レーザー光源2は、半導体デバイス8に照射されるコヒーレントな光(レーザー光)である照射光を発生させる光発生部である。レーザー光源2から出射された光は、プローブ光用の偏光保存シングルモード光ファイバ3を介して、スキャン光学系(光学系)5に導光される。スキャン光学系5は、スキャンヘッド6及びレンズ系7を有している。これにより、スキャン光学系5に導光された光は、半導体デバイス8の所定位置に照射され、当該光の照射領域は、半導体デバイス8に対して2次元的に走査される。また、スキャン光学系5は、半導体デバイス8に照射された照射光の反射光を導光する。当該反射光は、戻り光用の光ファイバ9を介して、光センサ(光検出部)10に導光される。なお、スキャン光学系5及び半導体デバイス8は、暗箱4内に配置されている。
【0024】
光センサ10は、スキャン光学系5により導光された反射光を検出し検出信号を出力する。光センサ10は、アバランシェフォトダイオードやフォトダイオードなどである。この反射光は、半導体デバイス8に入力される動作パルス信号に応じて変調されるため、光センサ10は、動作パルス信号に基づいて動作している半導体デバイス8からの信号を検出することに相当し、半導体デバイス8に入力された動作パルス信号に応答した検出信号を出力することが可能となる。当該検出信号は、アンプ11に入力される。アンプ11は、光センサ10からの検出信号を増幅し、増幅後の検出信号を信号切替スイッチ(切替部)12に入力する。
【0025】
パルス発生器17は、テスタユニット16によって入力された動作パルス信号に関する情報に基づいて、動作パルス信号に対する複数の高調波を含むリファレンス信号を発生させるリファレンス信号発生部である。ここで、高調波は、動作パルス信号に対する基本高調波(1次高調波)も含み、動作パルス信号に対するn次高調波(nは正の整数)は、動作パルス信号の周波数のn倍の周波数をもつ信号(動作パルス信号の周期の1/n倍の周期を持つ信号と同義である)を差す。リファレンス信号は、動作パルス信号よりもパルス幅が短いパルス信号である(図2参照)。リファレンス信号に含まれる、動作パルス信号に対する複数の高調波は、互いにパワーが等しい。パルス発生器17は、周期Tの動作パルス信号と同期させるようにしてリファレンス信号を発生させ(図2参照)、当該リファレンス信号を信号切替スイッチ12に入力する。パルス発生器17としては、例えばパルスジェネレータやコムジェネレータなどのパルス信号を発生させるデバイスを用いることができる。
【0026】
パルス発生器17は、以下のようにしてリファレンス信号を発生させる。例えば、動作パルス信号に同期したデューティー比50の信号が存在した場合、これを2分岐し、一方をNOT回路に入力し反転する。そして、反転した信号と反転していない信号とをAND回路に数10psの時間差で入力する。すると、AND回路からは、動作パルス信号に同期した数10psの幅のパルス信号が得られる。パルス発生器17は、このパルス信号をリファレンス信号として出力する。なお、リファレンス信号のパルス幅は、得たい周波数の周期の上限に相当する高調波の周期よりも短くする必要がある。より具体的には、n次高調波までの検出周波数を得たい場合には、動作パルス信号の繰り返し周期の1/2n倍(nは正の整数)より短いパルス幅のパルス信号をリファレンス信号とすればよい。すなわち、例えば、100次高調波までの検出周波数を得たい場合には、動作パルス信号の1/200倍未満のパルス幅のパルス信号をリファレンス信号とすればよい。動作パルス信号の繰り返し周期(基本周期)の1/2n倍未満のパルス幅のパルス信号をリファレンス信号とすることで、動作パルス信号に対する1次高調波(基本高調波)からn次高調波までを含む信号をリファレンス信号とすることができる。リファレンス信号は、動作パルス信号に対する1次高調波(基本高調波)から少なくとも10次高調波までを含み、好ましくは100次高調波までを含む信号であればよい。動作パルス信号に対する動作パルス信号に対する1次高調波(基本高調波)から少なくとも10次高調波までを含む信号の場合(つまり、n=10)、リファレンス信号として動作パルス信号の繰り返し周期(基本周期)の1/20倍未満のパルス幅のパルス信号を出力すればよい。
【0027】
信号切替スイッチ12は、検出信号又はリファレンス信号を、スペクトラムアナライザ(第1の電気計測部)13、又は、スペクトラムアナライザ(第2の電気計測部)14に入力する。具体的には、信号切替スイッチ12は、スペクトラムアナライザ13に、検出信号又はリファレンス信号が入力されるよう、双方の信号を切り替えて入力する。また、信号切替スイッチ12は、スペクトラムアナライザ14に、リファレンス信号を入力する。
【0028】
スペクトラムアナライザ(第1のスペクトラムアナライザ)13は、検出信号又はリファレンス信号のいずれか一方が入力され、検出周波数における、入力された信号の位相及び振幅を取得する。スペクトラムアナライザ13は、取得した位相及び振幅を解析制御部18に入力する。また、スペクトラムアナライザ14(第2のスペクトラムアナライザ)は、リファレンス信号が入力され、検出周波数におけるリファレンス信号の位相を取得する。スペクトラムアナライザ14は、取得した位相を解析制御部18に入力する。なお、スペクトラムアナライザ14は、リファレンス信号の振幅についても取得することとしてもよい。
【0029】
ここで、検出周波数とは、スペクトラムアナライザ13,14において、入力された信号の位相等を取得する周波数である。スペクトラムアナライザ13,14は、それぞれシンセサイザを有しており、当該シンセサイザの周波数が検出周波数になるように制御される。スペクトラムアナライザ13,14は、信号同期部15を介して互いに電気的に接続されている。
【0030】
信号同期部15は、スペクトラムアナライザ13とスペクトラムアナライザ14とを同期させる。具体的には、信号同期部15は、スペクトラムアナライザ13,14を動作させる基準信号(タイムベースとなる信号)の周波数及び位相を同期させる。これにより、スペクトラムアナライザ13,14は、互いに同じ検出周波数で、入力された信号の位相等を取得することができる。信号同期部15は、例えばタイムベースとなる信号を出力する手段であり、該タイムベースとなる信号をスペクトラムアナライザ13,14に入力することによりスペクトラムアナライザ13,14を同期させる。なお、スペクトラムアナライザ13,14を同期させる手段として、必ずしも信号同期部15が用いられなくてもよく、例えば、どちらか一方のスペクトラムアナライザの信号をもう一方のスペクトラムアナライザに入力することにより同期が図られていてもよい。また、スペクトラムアナライザ13,14と信号同期部15とは一体となっていてもよい。
【0031】
また、信号同期部15は、スペクトラムアナライザ13,14とテスタユニット16のパルスジェネレータ(又はパルス発生器17)とを同期させる。これにより、テスタユニット16のパルスジェネレータから発生している動作パルス信号、及び、パルス発生器17から発生しているリファレンス信号と同期させるようにして、スペクトラムアナライザ13,14の検出周波数を変更することができる(変更部)。具体的には、信号同期部15は、スペクトラムアナライザ13,14とテスタユニット16のパルスジェネレータ(又はパルス発生器17)とを同期させることによって、例えば、図2に示すように、動作パルス信号のパルス間C1においてスペクトラムアナライザ13,14の検出周波数を変更することが可能となっている。
【0032】
解析制御部18は、複数の検出周波数におけるスペクトラムアナライザ13,14から入力された位相等の情報に基づいて、所定の解析を行う解析部である。具体的には、解析制御部18は、スペクトラムアナライザ13から入力された検出信号の位相及び振幅、並びに、スペクトラムアナライザ14から入力されたリファレンス信号の位相に基づき、逆離散フーリエ変換を用いて、検出信号(動作パルス信号に対する半導体デバイス8の応答)の時間波形を取得する。解析制御部18は、スペクトラムアナライザ13,14から入力された位相等の情報に加えて、取得した検出信号の時間波形を表示入力部19に入力する。また、解析制御部18は、スペクトラムアナライザ13,14から入力されたリファレンス信号の位相に基づいて、スペクトラムアナライザ13及びスペクトラムアナライザ14の位相誤差を取得する。当該位相誤差は、上述した検出信号の時間波形を取得する際に用いられる情報である。詳細は後述する。
【0033】
また、解析制御部18は、レーザー光源2、スキャン光学系5、スペクトラムアナライザ13,14、信号同期部15、パルス発生器17、及び信号切替スイッチ12と電気的に接続されており、これらの機器を制御する制御手段である。具体的には、解析制御部18は、信号同期部15に対して検出周波数の変更を指示する。
【0034】
表示入力部19は、スペクトラムアナライザ13,14で取得された位相及び振幅等の情報、及び、解析制御部18で取得された検出信号の時間波形等の情報を表示する。また、表示入力部19は、ユーザとのインターフェースであり、ユーザから、動作パルス信号や所望の検出周波数等の入力を受け付ける。
【0035】
次に、半導体デバイス検査装置1Aによる測定の流れについて説明する。半導体デバイス検査装置1Aによる測定は、最初に、2つのスペクトラムアナライザ13,14間の位相誤差の取得に関する処理が行われた後に、スペクトラムアナライザ13に入力された検出信号の時間波形を取得する処理が行われる。
【0036】
2つのスペクトラムアナライザ13,14間の位相誤差の取得に関する処理について、図3及び図4を参照して説明する。スペクトラムアナライザ13,14間の位相誤差を取得する際には、スペクトラムアナライザ13,14の双方に、パルス発生器17が発生させたリファレンス信号が入力される。図3に示すように、信号切替スイッチ12は、アンプ11により入力された検出信号を分岐するアイソレーション式信号分岐21、及び、パルス発生器17により入力されたリファレンス信号を分岐する50Ω分岐22を有している。なお、アイソレーション式信号分岐とは、出力間及び入出力間のアイソレーションを高く保つための機能を備えた分岐であり、方向性結合器、アンプ、減衰器などの組合せによって構成された分岐である。また、信号切替スイッチ12は、スペクトラムアナライザ13と電気的に接続された端子13a、スペクトラムアナライザ14と電気的に接続された端子14aを有しており、端子13aには他の端子と接続が可能な接続部13bが、端子14aには他の端子と接続が可能な接続部14bが、それぞれ接続されている。また、信号切替スイッチ12は、リファレンス信号を終端する50Ω終端31,41,32,42を有しており、50Ω終端31には他の端子と接続が可能な接続部31aが、50Ω終端41には他の端子と接続が可能な接続部41aが、50Ω終端32には他の端子と接続が可能な接続部32aが、50Ω終端42には他の端子と接続が可能な接続部42aが、それぞれ接続されている。そして、アイソレーション式信号分岐21の分岐先の端子のうち一方の端子である第1端子21aは接続部13b及び接続部32aと接続が可能となっており、他方の端子である第2端子21bは接続部14b及び接続部42aと接続が可能になっている。また、50Ω分岐22の分岐先の端子のうち一方の端子である第1端子22aは接続部13b及び接続部31aと接続が可能となっており、他方の端子である第2端子22bは接続部14b及び接続部41aと接続が可能となっている。
【0037】
図3に示す例では、リファレンス信号を分岐する50Ω分岐22の第1端子22aが接続部13bと接続されており、また、50Ω分岐22の第2端子22bが接続部14bと接続されている。また、アイソレーション式信号分岐21の第1端子21a、第2端子21bは、50Ω終端32の接続部32a、50Ω終端42の接続部42aとそれぞれ接続されている。これにより、スペクトラムアナライザ13,14の双方にリファレンス信号が入力される。
【0038】
つづいて、スペクトラムアナライザ13,14間の位相誤差の取得に関する具体的な処理について説明する。当該処理の前提として、信号切替スイッチ12の接続状況が上述した図3に示す例と同様になっている必要がある。図4に示すように、まず、テスタユニット16のパルスジェネレータによって、動作パルス信号に関する情報(動作パルス信号もしくは動作パルス信号の基本周波数や基本周期または、テスタユニット16のパルスジェネレータの基準クロック、基準クロックの周波数や周期など)がパルス発生器17に入力される(ステップS1)。つづいて、パルス発生器17により、動作パルス信号と同期したリファレンス信号が発生され、信号切替スイッチ12に入力される。いま、信号切替スイッチ12の接続状況が図3に示すようになっているため、スペクトラムアナライザ13,14には、リファレンス信号が入力される(ステップS2)。
【0039】
つづいて、スペクトラムアナライザ13,14それぞれにおいて、所定の検出周波数におけるリファレンス信号の位相が計測される(ステップS3)。そして、スペクトラムアナライザ13,14(又は信号同期部15)において、予めユーザが設定した、必要な検出周波数全てで計測が行われたか否かが判断され(ステップS4)、計測が行われていない検出周波数がある場合には、信号同期部15により検出周波数が変更され(ステップS5)、上述したステップS2〜S4の処理が再度行われる。一方、必要な検出周波数全てで計測が行われている場合には、解析制御部18により、各検出周波数におけるスペクトラムアナライザ13,14の位相の差分に基づいて、スペクトラムアナライザ13とスペクトラムアナライザ14との位相誤差が取得される(ステップS6)。なお、所定の検出周波数は、動作パルス信号の繰り返し周波数のn倍(nは正の整数)の周波数であることが好ましい。この場合、効率よく位相誤差を取得することができる。当該位相誤差は検出信号の時間波形を取得する際に用いられる情報である。以上が、スペクトラムアナライザ13,14間の位相誤差の取得に関する具体的な処理である。
【0040】
スペクトラムアナライザ13に入力された検出信号の時間波形を取得する処理について、図5及び図6を参照して説明する。検出信号の時間波形を取得する際には、スペクトラムアナライザ13に検出信号が入力されるとともに、スペクトラムアナライザ14にリファレンス信号が入力される。この場合信号切替スイッチ12では、図5に示すように、検出信号を分岐するアイソレーション式信号分岐21の第1端子21aが接続部13bと接続されており、また、50Ω分岐22の第2端子22bが接続部14bと接続されている。これにより、スペクトラムアナライザ13に検出信号が入力されるとともに、スペクトラムアナライザ14にリファレンス信号が入力される。なお、ノイズの発生を抑えるために、50Ω分岐22の第1端子22aは、50Ω終端31の接続部31aと接続され、アイソレーション式信号分岐21の第2端子21bは、50Ω終端42の接続部42aと接続される。
【0041】
つづいて、スペクトラムアナライザ13に入力された検出信号の時間波形取得に関する具体的な処理について説明する。当該処理の前提として、上述したスペクトラムアナライザ13,14間の位相誤差が取得されているとともに、信号切替スイッチ12の接続状況が上述した図5に示す例と同様になっている必要がある。
【0042】
図6に示すように、まず、テスタユニット16のパルスジェネレータによって、計測対象物である半導体デバイス8に動作パルス信号が入力される(S11)。当該動作パルス信号により、半導体デバイス8は駆動する。また、テスタユニット16は、半導体デバイス8への入力と同時に、パルス発生器17に対して、動作パルス信号に関する情報(動作パルス信号もしくは動作パルス信号の基本周波数や基本周期または、テスタユニット16のパルスジェネレータの基準クロック、基準クロックの周波数や周期など)を入力する。
【0043】
半導体デバイス8に入力された動作パルス信号に応答した検出信号は、光センサ10により出力され、アンプ11及び信号切替スイッチ12を介して、スペクトラムアナライザ13に入力される(ステップS12)。スペクトラムアナライザ13では、所定の検出周波数における検出信号の位相及び振幅が計測される(ステップS13)。
【0044】
一方、パルス発生器17では、動作パルス信号と同期したリファレンス信号が発生される。当該リファレンス信号は、信号切替スイッチ12を介して、スペクトラムアナライザ14に入力される(ステップS14)。スペクトラムアナライザ14では、所定の検出周波数におけるリファレンス信号の位相が計測される(ステップS15)。
【0045】
ステップS13及びステップS15の処理が完了すると、スペクトラムアナライザ13,14(又は信号同期部15)において、予めユーザが設定した、必要な検出周波数全てで計測が行われたか否かが判断される(ステップS16)。計測が行われていない検出周波数がある場合には、信号同期部15により検出周波数が変更され(ステップS17)、上述したS12〜S16の処理が再度行われる。一方、必要な検出周波数全てで計測が行われている場合には、解析制御部18により、各検出周波数におけるスペクトラムアナライザ13の位相とスペクトラムアナライザ14の位相との差分が取得され、リファレンス信号に対する検出信号の位相差が取得される(ステップS18)。なお、検出周波数は、動作パルス信号の繰り返し周波数のn倍(nは正の整数)の周波数であることが好ましい。
【0046】
そして、解析制御部18では、各検出周波数におけるリファレンス信号に対する検出信号の位相差、各検出周波数における検出信号の振幅、及び、上述したスペクトラムアナライザ13,14間の位相誤差に基づいて、逆離散フーリエ変換によって、検出信号の時間波形が取得(再構成)される。取得された検出信号の時間波形は、表示入力部19によって表示される。以上が、スペクトラムアナライザ13に入力された検出信号の時間波形取得に関する具体的な処理である。
【0047】
以上説明したように、半導体デバイス検査装置1Aでは、パルス発生器17が、半導体デバイス8に入力される動作パルス信号に対する複数の高調波を含むリファレンス信号を、動作パルス信号と同期して発生させている。そして、スペクトラムアナライザ13では検出周波数における検出信号の位相及び振幅が取得され、スペクトラムアナライザ14では同一の検出周波数におけるリファレンス信号の位相が取得されている。リファレンス信号には複数の高調波が含まれているため、検出周波数を高帯域の周波数とすることにより、高帯域におけるリファレンス信号に対する検出信号の位相差と、高帯域における検出信号の振幅とを求めることができる。このことにより、高帯域における検出信号の時間波形を取得でき、従来困難であった高帯域周波数の検出信号の計測が可能となる。
【0048】
例えば、高帯域における検出信号の計測方法として、従来より、オシロスコープを用いた計測方法がある。オシロスコープはあらゆる帯域の信号を同時に計測するところ、その際のノイズは、計測帯域を基準にして、周波数帯域の平方根(√Hz)となる。よって、例えば10GHzの信号を計測する際には、1Hzの信号を計測する場合と比較して相対的に10万倍程度のノイズを計測してしまうことになる。
【0049】
この点、本実施形態に係る半導体デバイス検査装置1Aでは、計測対象の周波数が十分安定していれば、信号の計測帯域を極めて小さくすることができ、その分、ノイズを減少させることができる。例えば、100MHzの信号を計測する際、100次(10GHz)までの高調波を計測する場合には、10kHz分程度のノイズしか発生しないため、1Hzの信号を計測する場合と比較して相対的に100倍程度のノイズに抑えることができる。よって、上述したオシロスコープを用いた場合と比較して、ノイズが1/1000になり、1000倍のSN比を実現することができる。ただし、半導体デバイス検査装置1Aでは100次まで計測するため、あらゆる帯域の信号を同時に計測するオシロスコープと比較して計測時間が100倍必要となる。そのため、計測時間を考慮すると、実際には、オシロスコープを用いた場合と比較して100倍程度のSN比となる。なお、一般的に、スペクトラムアナライザはオシロスコープやデジタイザと比較して遥かに安価で入手することができる。以上より、半導体デバイス検査装置1Aによれば、高帯域における検出信号の時間波形の取得を、高いSN比で行うことができるとともに安価に行うことができる。
【0050】
また、半導体デバイス8に照射される光である照射光を発生させるレーザー光源2と、照射光を半導体デバイス8に照射し、その反射光を導光するスキャン光学系5と、を更に備え、光センサ10が、反射光を検出することにより半導体デバイス8に入力された動作パルス信号に応答した検出信号を出力することによって、動作パルス信号に応答した検出信号の取得が簡易且つ確実に実施される。このことで、高帯域における検出信号の計測を簡易化するとともに、計測精度を高めることができる。
【0051】
また、信号同期部15は、検出周波数をリファレンス信号に同期して変更する変更部として機能する。具体的には、信号同期部15は、スペクトラムアナライザ13,14とテスタユニット16のパルスジェネレータ(又はパルス発生器17)とを同期させることによって、パルス同期信号のパルス間C1(図2)においてスペクトラムアナライザ13,14の検出周波数を変更することにより、複数の帯域における検出信号の計測を確実且つ高精度に行うことができる。
【0052】
また、スペクトラムアナライザ13に、検出信号又はリファレンス信号が入力されるよう、双方の信号を切り替えて入力する信号切替スイッチ12を備えていることにより、必要に応じて、スペクトラムアナライザ13及びスペクトラムアナライザ14の双方にリファレンス信号を入力することが可能となる。
【0053】
また、信号切替スイッチ12が、スペクトラムアナライザ13にリファレンス信号が入力されるように切り替え、スペクトラムアナライザ13,14が、検出周波数におけるリファレンス信号の位相を取得し、解析制御部18が、スペクトラムアナライザ13,14によって取得されたリファレンス信号の位相に基づいて、スペクトラムアナライザ13及びスペクトラムアナライザ14の位相誤差を取得することにより、後にスペクトラムアナライザ13に検出信号を入力した際、スペクトラムアナライザ13及びスペクトラムアナライザ14の位相誤差を考慮して検出信号を計測することができ、高帯域における検出信号の計測精度がより向上する。
【0054】
また、パルス発生器17は、動作パルス信号に対する1次高調波(基本高調波)から少なくとも10次高調波までを含むリファレンス信号を発生させることにより、高帯域周波数の検出信号を計測することができる。
【0055】
また、パルス発生器17は、動作パルス信号よりもパルス幅が短いパルス信号をリファレンス信号として発生させることにより、動作パルス信号のパルス間において検出周波数を変更することができる。このことで、複数の帯域における検出信号の計測を確実且つ高精度に行うことができる。
【0056】
[第2実施形態]
次に、図7及び図8を参照して、第2実施形態に係る半導体デバイス検査装置について詳細に説明する。なお、本実施形態の説明では、上記実施形態と異なる点について主に説明する。
【0057】
図7に示されるように、本実施形態に係る半導体デバイス検査装置1Bでは、リファレンス信号発生部として、シンセサイザ20を用いている。シンセサイザ20は、周期Tの動作パルス信号に同期した周波数の異なる正弦波を、リファレンス信号として連続的に発生させる(図8参照)。すなわち、シンセサイザ20は、動作パルス信号の基本波に相当する正弦波、2次高調波に相当する正弦波、3次高調波に相当する正弦波、…と、動作パルス信号に同期した正弦波を連続的に出力する。信号同期部15は、シンセサイザ20が出力するn次高調波に相当する正弦波の周波数と同じ周波数になるように、スペクトラムアナライザ13,14の検出周波数を変更する。このような信号同期部15による検出周波数の変更は、シンセサイザ20から連続的に出力される正弦波の切り替え時に行われる。
【0058】
すなわち、図8に示されるように、ある正弦波S1から次の正弦波S2に切り替わる期間である切替期間C2において、信号同期部15によりスペクトラムアナライザ13,14の検出周波数が正弦波S2と同じ周波数に変更される。また、ある正弦波S2から次の正弦波S3に切り替わる期間である切替期間C2において、信号同期部15によりスペクトラムアナライザ13,14の検出周波数が正弦波S3と同じ周波数に変更される。
【0059】
このように、正弦波の周波数が切り替わる期間においてスペクトラムアナライザ13,14の検出周波数が変更されることにより、複数の帯域における検出信号の計測を確実且つ高精度に行うことができる。なお、各高調波に相当する正弦波に替えて余弦波を用いても良い。また、シンセサイザ20の代わりに、リファレンス信号発生部として、周期Tの動作パルス信号に同期した周波数の異なるパルス信号を、リファレンス信号として連続的に発生させるパルス発生器を用いてもよい。
【0060】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、半導体デバイス8に照射される光を発生する光発生部はレーザー光源2に限られず、レーザー光以外のコヒーレントな光を発生させる光源であってもよいし、SLD(スパールミネッセントダイオード)等を用いた非コヒーレントな光を発生させる光源であってもよい。SLDを用いた光源では、非コヒーレントな光が半導体デバイスに照射されるため、干渉ノイズを低減することができる。また、半導体デバイス8に対して電気信号に替えて熱を印加してもよい。
【0061】
また、第1の電気計測部及び第2の電気計測部としては、スペクラムアナライザなどのスペクトル分析器に限らず、ロックインアンプやオシロスコープなどさまざまな電気計測機器(又はそれらの機能を有する装置)でもよい。また、それらの電気計測機器を組み合わせてもよく、例えば、第1の電気計測部としてスペクトラムアナライザを、第2の電気計測部としてロックインアンプを採用してもよい。さらに、複数のスペクトル分析部を備えるスペクトラムアナライザを用いても良い。
【0062】
また、本発明に係る周波数解析装置は、半導体デバイス検査装置1A,1B以外の、高帯域における検出信号を計測する各種装置にも応用することが可能である。また、本発明に係る周波数解析装置は、高帯域における検出信号の計測で効果を発揮するが、低帯域など他の帯域で用いることもできる。
【符号の説明】
【0063】
1A,1B…半導体デバイス検査装置、2…レーザー光源、8…半導体デバイス、10…光センサ、12…信号切替スイッチ、13,14…スペクトラムアナライザ、15…信号同期部、16…テスタユニット、17…パルス発生器、18…解析制御部、20…シンセサイザ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8