(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6283503
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】互いに負荷された遊星キャリアを具えるバックラッシュの無い遊星ギアユニット
(51)【国際特許分類】
F16H 57/12 20060101AFI20180208BHJP
F16H 57/08 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
F16H57/12 A
F16H57/08
【請求項の数】14
【外国語出願】
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-242183(P2013-242183)
(22)【出願日】2013年11月22日
(65)【公開番号】特開2014-105869(P2014-105869A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2016年10月18日
(31)【優先権主張番号】12007907.4
(32)【優先日】2012年11月23日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506358236
【氏名又は名称】マクソン モーター アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100164448
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 雄輔
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(72)【発明者】
【氏名】ステファン ウェストホルト
(72)【発明者】
【氏名】オラフ クライン
【審査官】
岡本 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開平03−209038(JP,A)
【文献】
実開平05−045294(JP,U)
【文献】
特表2010−530946(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/12
F16H 57/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽ギア(2)及びリングギア(16)を有し、これらが遊星ギア段の少なくとも1つの第一遊星ギア(5)と噛み合い、第一遊星ギア段は、前記第一遊星ギア(5)が回転可能に設置された第一遊星キャリア(3)を具えるとともに、さらに前記遊星ギア段には、前記太陽ギア(2)及びリングギア(16)と同様に噛み合う少なくとも1つの第二遊星ギア(8)を有する、バックラッシュの無い遊星ギアユニット(1)であって、
前記少なくとも1つの第二遊星ギア(8)は、前記遊星ギア段の第二遊星キャリア(4)に回転可能に支持され、前記2つの遊星キャリア(3,4)が前記太陽ギア(2)の周方向に互いに負荷されることによって、前記少なくとも1つの第一遊星ギア(5)が前記太陽ギア(2)の周方向に、前記少なくとも1つの第二遊星ギア(8)に対して負荷され、
前記第一遊星キャリア(3)を前記第二遊星キャリア(4)に対して荷重を印加するために、前記第一及び第二遊星キャリア(3,4)の間に延在する少なくとも1つのばね要素(11,12,13)を有することを特徴とする、バックラッシュの無い遊星ギアユニット(1)。
【請求項2】
前記遊星ギアユニット(1)の組立外径が40mm未満、好ましくは32mm未満、より好ましくは22mm未満であることを特徴とする、請求項1に記載の遊星ギアユニット(1)。
【請求項3】
前記第一遊星キャリア(3)が前記第二遊星キャリア(4)とは別の部品として設計され、前記2つの遊星キャリア(3,4)が共通軸の周りに、好ましくは前記太陽ギア(2)の回転軸(22)の周りに回転可能であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の遊星ギアユニット(1)。
【請求項4】
前記ばね要素(11,12,13)が、前記第一の遊星キャリア(3)上に一体的に形成された第一端部(19)を具える、請求項1〜3のいずれか一項に記載の遊星ギアユニット(1)。
【請求項5】
前記少なくとも1つのばね要素(11,12,13)が、前記第一遊星キャリア(3)及び/又は前記第二遊星キャリア(4)にて、凹部(23,24,25)内に支持されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の遊星ギアユニット(1)。
【請求項6】
前記ばね要素(11,12,13)が、前記第二遊星キャリア(4)のボアとして設計された前記凹部(23,24,25)内にポジティブ嵌合にて保持される、棒状の第二端部(20)を具えることを特徴とする、請求項5に記載の遊星ギアユニット(1)。
【請求項7】
前記第二遊星キャリア(4)の前記凹部(23,24,25)の直径が、前記第一遊星キャリア(3)に向かって、少なくとも第一増大部にて拡大することを特徴とする、請求項6に記載の遊星ギアユニット(1)。
【請求項8】
前記ばね要素(11,12,13)の棒状の前記第二端部(20)は、当該端部の端面が、前記ポジティブフィット接続部に隣接する第二増大部(30)にて支持されることを特徴とする、請求項6及び7に記載の遊星ギアユニット(1)。
【請求項9】
前記凹部(23,24,25)が通気口に接続していることを特徴とする、請求項5〜8のいずれか一項に記載の遊星ギアユニット(1)。
【請求項10】
前記第一遊星キャリア(3)に設置される前記遊星ギア(5,6,7)の数が、前記第二遊星キャリア(4)に設置される前記遊星ギア(8,9,10)の数と一致し、前記ばね要素(11,12,13)の数が、好ましくは前記第一遊星キャリア(3)に配置される前記遊星ギア(5,6,7)の数と一致する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の遊星ギアユニット(1)。
【請求項11】
前記遊星ギアユニット(1)が、ちょうど3つのばね要素(11,12,13)、ちょうど3つの第一の遊星ギア(5,6,7)及び、ちょうど3つの第二の遊星ギア(8,9,10)を具えることを特徴とする、請求項10に記載の遊星ギアユニット(1)。
【請求項12】
前記少なくとも1つのばね要素(11,12,13)は、張力が加えられていない状態で直線状に延在し、その長さ方向に沿って一定の円形断面を有するスプリングバーとして形成されることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の遊星ギアユニット(1)。
【請求項13】
前記第一遊星キャリア(3)の前記遊星ギア(5,6,7)及び、前記第二遊星キャリア(4)の前記遊星ギア(8,9,10)は、前記太陽ギア(2)及び前記リングギア(16)に接して互いに負荷されていることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の遊星ギアユニット(1)。
【請求項14】
負荷状態において、前記第一遊星キャリア(3)に配置された前記少なくとも1つの遊星ギア(5,6,7)の歯面が、前記リングギア(16)の歯面の第一面及び前記太陽ギア(2)の歯面の第一面に接して配置され、前記第二遊星キャリア(4)に配置された前記少なくとも1つの遊星ギア(8,9,10)の歯面が、前記太陽ギア(2)及び前記リングギア(16)の前記歯面の前記第一面とは逆の面である、前記リングギア(16)及び前記太陽ギア(2)の歯面の第二面に接して配置されることを特徴とする、請求項13に記載の遊星ギアユニット(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽ギア及びリングギアを有し、これらが遊星ギア段の少なくとも1つの第一遊星ギア(5)と噛み合い、第一遊星ギア段は、前記第一遊星ギアが回転可能に設置された第一遊星キャリアを具えると共に、前記遊星ギア段には、前記太陽ギア及びリングギアと同様に噛み合う少なくとも1つの第二遊星ギアを有する、バックラッシュのない遊星ギアユニットに関するものである。
【0002】
高精度の遊星ギアユニットの分野において、トルクを伝達するギア間のバックラッシュを無くすことは重要な課題と考えられている。それゆえ、従来技術によって既知の遊星ギアユニットにおける遊星ギアは分割されており、分割された遊星ギアの半部同士が互いに負荷されている。
【0003】
このような遊星ギアユニットは、例えば特許文献1から既知である。このギアユニットにおいて、遊星ギアの2つの半部は、少なくとも1つの遊星キャリアの遊星回転軸上に配置されるとともに、複数のスプリングバーによって互いに負荷されている。しかしながら、この実施形態では、遊星ギアの半部にスプリングバーを取り付けるために、互いに負荷される2つの遊星ギアの半部内に個別の凹部を形成する必要がある。これは、第一に、遊星ギアのジオメトリの低下を招き、第二に、高強度のスチール製ギアを機械加工するのには一般に非常な労力を要する。さらに、製造技術面では、空間上の理由により、これらの凹部は遊星ギアの特定の直径までしか設けることができない。このような凹部を小型のモデルに設けることは、もはや技術的に不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第102008011147号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、小型の遊星ギアユニットに荷重を印加し、遊星ギアの付加的な処理を伴うことなしにギアのバックラッシュを無くすことにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、当該目的は達成される。ここでは、少なくとも1つの第二遊星ギアが、遊星ギア段の第二遊星キャリアに回転可能に支持され、2つの遊星キャリアが太陽ギアの周方向に互いに負荷されることによって、少なくとも1つの第一遊星ギアも同様に、太陽ギアの周方向に、少なくとも1つの第二遊星ギアに対して互いに負荷される。
【0007】
これにより、遊星ギアユニットの遊星ギアを互いに負荷するために、当該遊星ギアに対して個別の処理を施す必要がなくなる。処理労力、特には小型のギアユニットにおける処理労力が大幅に軽減される。2つの遊星キャリアに負荷機構を取り付けることによって、高強度の鋼鉄からなるギアではなく、単に、さほど硬くない材料からなる遊星キャリアを処理すれば足りる点にもまた利点がある。2つの遊星キャリアを用いると、当該遊星キャリア同士を相対的に調整できることも利点の1つのである。荷重を印加する構成要素が一定の摩耗限界に達すると、摩耗による荷重の損失分を、2つの遊星キャリアの位置を相対的に調整することによって修正することができる。この調整によって、ギアユニットを組み立てた状態においても、荷重を印加するための構成要素の寿命が大幅に延長され得る。
【0008】
従属請求項に記載される有利な実施形態を、以下に説明する。
【0009】
本発明の有利な実施形態によれば、遊星ギアユニットの組立外径は40mm未満、好ましくは32mm未満、より好ましくは22mm未満である。この外径であれば、遊星ギアを効率的に負荷することができる。
【0010】
本発明のさらに有利な実施形態によれば、第一の遊星キャリアは、第二の遊星キャリアとは別の部品として設計可能であり、2つの遊星キャリアが共通軸の周りに、好ましくは太陽ギアの回転軸の周りに回転可能である。この構成により、組み立て及び組み立て状態における荷重の再調整が大幅に簡素化される。
【0011】
その上、本願発明のさらに有利な実施形態によれば、第二遊星キャリアに対して第一遊星キャリアを互いに負荷するために、当該第一及び第二遊星キャリア間に延在する少なくとも1つのばね要素を設けることが有利である。ばね要素のような構成により、ロードピークを緩和する弾性荷重が提供される。
【0012】
本願発明の有利な実施形態によれば、当該ばね要素が、第一遊星キャリア上に一体的に形成された第一端部を具える。この場合、遊星キャリアをばね要素と一体的に設計することが可能であり、これによって構成の複雑さが軽減される。
【0013】
本願発明のさらに有利な実施形態によれば、第一及び/又は第二遊星キャリアにおける少なくとも1つのばね要素が、好ましくは凹部によって支持される。この構成によれば、遊星キャリアに荷重を印加する場所が明確に定義されるとともに、ばね要素もまた、太陽ギアの回転軸に対して垂直な横方向に保持される。
【0014】
さらに、本願発明の有利な実施形態によれば、少なくとも1つのばね要素は、好ましくはボアとして設計された第二遊星キャリアの凹部内にポジティブ嵌合にて保持される、棒状の第二端部を具える。好ましくは、ばね要素が挿入されてポジティブ嵌合される側の当該凹部の開口部は、第一遊星キャリアに面する。これによって、費用効果のあるばね要素の支持形態が可能となり、省スペースな方法にて、ばね要素を遊星キャリア間にさらに固定することができる。
【0015】
本願発明の有利な実施形態によれば、第二遊星キャリアの凹部の直径は、第一遊星キャリアに向かって少なくとも第一増大部にて拡大し得る。凹部が拡大することによって、ばね要素が早くも凹部内にて変形することが可能となるため、ばね要素の曲げ半径を拡大することができる。
【0016】
本願発明のさらに有利な実施形態によれば、ばね要素の棒状の第二端部は、ポジティブフィット接合部に隣接する第二増大部にて支持される。この構成により、ばね要素の位置が軸方向、すなわち太陽ギアの回転軸方向に保持される。
【0017】
本願発明のさらに有利な実施形態によれば、凹部は通気口に接続することができる。その結果、ばね要素がポジティブ嵌合にて挿入された後、凹部内の過度の圧力が逃がされる。このような通気口は、例えばボアホールによって可能となる。
【0018】
本願発明のさらに有利な実施形態によれば、第一遊星キャリアに配置される遊星ギアの数は、第二遊星キャリアに設置される遊星ギアの数と一致し、ばね要素の数は、好ましくは第一遊星キャリアに取り付けられた遊星ギアの数と一致する。この構成により、遊星キャリア周りの荷重を均一に分布させるべく、個々のばね要素が割り当てられた一対の遊星ギアを形成することができる。
【0019】
本願発明の実施形態によれば、遊星ギアユニットはちょうど3つのばね要素と、ちょうど3つの第一遊星ギアと、ちょうど3つの第二遊星ギアとを具えるか、又はちょうど4つのばね要素と、ちょうど4つの第一遊星ギアと、ちょうど4つの第二遊星ギアとを具える。この構成により、遊星ギアユニットの特に安定な実施形態が可能となる。
【0020】
本願発明のさらなる実施形態によれば、少なくとも1つのばね要素は、張力が加えられていない状態で直線状に延在し、その長さ方向に沿って一定の円形断面を有するスプリングバーとして構成することができる。スプリングバーを用いることにより、相対的な遊星キャリアを安価に負荷することができる。
【0021】
本願発明のさらに有利な実施形態によれば、第一遊星キャリア及び第二遊星キャリアの遊星ギアは、太陽ギア及びリングギアに接して相対的に負荷可能である。この構成により、バックラッシュの無い構造に用いられる負荷機構の複雑さが軽減される。
【0022】
本願発明のさらに有利な実施形態では、負荷状態において、第一遊星キャリアに配置された少なくとも1つの遊星ギアの歯面は、リングギアの歯面の第一面及び太陽ギアの歯面の第一面に接して配置され、第二遊星キャリアに配置された少なくとも1つの遊星ギアの歯面は、太陽ギア及びリングギアの歯面の第一面とは逆の面である、リングギア及び大用ギアの第二面に接して配置される。これにより、荷重に対する反力を容易に得ることができる。
【0023】
本願発明の有利な実施形態によれば、少なくとも1つのばね要素は、好ましくは第一及び第二遊星キャリアの少なくとも一方の側面に、接着又は圧入による取り付けが行われる。遊星キャリアにおけるばね要素の付加的な固定は、凹部を設けるように単純な方法にて可能となる。
【0024】
本願発明のさらに有利な実施形態によれば、少なくとも1つのばね要素は、遊星キャリア間にて、第一及び/又は第二遊星キャリアの遊星ギアの外側に延在する。この場合、遊星ギアは、ばね要素による影響を受けることなく設計される。さらに、ばね要素が遊星キャリア間に線形接続することで、当該ばね要素に要するスペースを削減できる。
【0025】
本願発明の有利な実施形態において、第一遊星キャリアは、第二遊星キャリアに接続可能である。特に簡単な方法によって、これら2つの遊星キャリア間の再調整が可能となる。
【0026】
本願発明の有利な実施形態によれば、複数のばね要素は、第一及び/又は第二遊星キャリアの回転軸に対し、互いに同一の角度距離にて配置される。この構成によって、遊星キャリアの周囲におけるばね要素の均一分布が約束され、その結果、スプリングバーに対する応力の均一分布も約束される。
【0027】
特に、本願発明のさらに有利な実施形態において、各ばね要素は40〜50°の角度にて配置されている。好ましくは、第一及び第二遊星キャリアにて、当該第一及び/又は第二遊星キャリアの遊星ギアの回転軸に対して44°オフセットしている。
【0028】
本願発明の有利な実施形態によれば、少なくとも1つのばね要素の材料は、ばね鋼、硬質金属又は金属ガラスである。この構成によって、耐久性が高く、かつ高弾性の、強度の大きい負荷機構を提供することができる。
【0029】
本願発明のさらに有利な実施形態によれば、太陽ギアは、クロムモリブデン鋼、好ましくは硬化及び/又は軟窒化させたクロムモリブデン鋼からなる。この場合、太陽ギアの耐摩耗性が高まる。
【0030】
本願発明の実施形態によれば、遊星ギアユニットは負荷された複数の遊星ギア段を具える。この構成により、バックラッシュのないモードにおいて、複数の異なるギアを有するさらに複雑なギアユニットに切り替えることができる。
【0031】
本願発明の実施形態を、以下、図面を用いて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本願発明のバックラッシュの無い遊星ギアユニットの分解斜視図である。
【
図2】太陽ギアの回転軸に垂直な平面における、本願発明の遊星キャリアの正面図である。
【
図3】バネ要素を受けるための凹部領域について、
図2のIII-III線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図面に示すのは概略図に過ぎず、単に本願発明を理解するのに役立つものに過ぎない。同一の要素には同一の符号を付している。
【0034】
図1は、回転中心軸22上に回転可能に、中央に配置された太陽ギア2を有する、本願発明に係る遊星ギアユニット1を示す。回転軸に平行に延びる太陽ギア2の歯は、遊星ギア5,6,7,8,9,10と動作可能に噛み合っている。リングギア16も同様に、遊星キャリア3,4に支持されるこれらの遊星ギア5,6,7,8,9,10と動作可能に噛み合っている。
【0035】
これら3つの遊星ギア5,6,7を受けるべく、第一遊星キャリア3は3つのピン要素17を具え、当該ピン要素17の各々に、遊星ギア5,6,7が遊星回転軸に対して回転可能に設置されている。ピン要素17は、当該ピン要素17に設置される遊星ギア5,6,7が、太陽ギア2の回転中心軸に平行に整列する遊星回転軸を有するように、第一遊星キャリア3上に配置される。ピン要素17は、第一遊星キャリア3における第一の円周線26に沿って等間隔に配列されており、隣接する遊星ギア5,6,7の軸線間の角距離は120°である。これらの角距離は、
図2において特によく示されている。第一の遊星キャリア3もまた、太陽ギア2の回転中心軸22に対して回転可能に設置されている。
【0036】
遊星キャリア3の同一側面上に配置される遊星ギア5,6,7の方向に、遊星ギア8,9,10を具える第二遊星キャリア4がさらに配置される。遊星ギア5,6,7は遊星キャリア3の、第二遊星キャリア4と対面する方の側面に配列される。第二遊星キャリア4のこれら3つの遊星ギア8,9,10は、第一遊星キャリア3における遊星ギア5,6,7と同様の方法で、第二遊星キャリア4に配列されている。第二遊星キャリア4も同様に、3つのピン要素18を具え、該ピン要素18にて3つの遊星ギア8,9,10を受け、太陽ギア2の回転中心軸22に対して平行な遊星回転軸上に、当該遊星ギア8,9,10の各々を支持している。第二遊星ギアセット15の遊星ギア8,9,10は、第二遊星キャリア4において、同一の角距離を有する。すなわち、円周線に沿って120°オフセットして配列されている。第二遊星キャリア4の遊星ギア8,9,10もまた、遊星キャリア3の遊星ギア5,6,7を受ける側面と、遊星キャリア4の遊星ギア8,9,10を受ける側面とが相互に対面するように、遊星キャリア4の一方の側面に配列されている。第二遊星キャリア4も同様に、太陽ギア2の回転中心軸22に対して回転可能に設置されている。
図1に示されるように、2つの遊星キャリア3、4は、互いに異なる別々の構成要素として設計されている。第一遊星キャリア3の一連の遊星ギア5,6,7の遊星回転軸が、第二遊星キャリア4の遊星ギア8,9,10の遊星回転軸と略同軸延長上に位置するように、第一遊星キャリア3は第二遊星キャリア4の方向を向いている。第一遊星キャリア3の3つの遊星ギア5,6,7は第一遊星ギアセット14を形成し、第二遊星キャリア4の3つの遊星ギア8,9,10は第二遊星ギアセット15を形成する。
【0037】
3つのばね要素11,12,14は、2つの遊星キャリア3及び4を互いに負荷するために存在し、これによって、第一遊星キャリア3に設置された遊星ギア5,6,7を、他方の第二遊星キャリア3に設置された遊星ギア8,9,10に対して相対的に配置される。これらのばね要素11,12,13はスプリングバーとして形成される。張力のかからない状態において、スプリングバーは直線状に延在し、円形断面を有する。
【0038】
第一遊星キャリア3及びばね要素11,12,13は一体的に形成される。第一遊星キャリア3に対向するばね要素11,12,13の第一端部19は、ばね要素11,12,13を当該第一の遊星キャリア2と一体的に形成するために、第一遊星キャリア上の形成面側に位置する。
【0039】
ばね要素11,12,13の第一端部の逆側の第二端部20は、第二遊星キャリア4上に支持されている。このため、ボア形状の凹部23,24,25が、ばね要素11,12,13の各々に対して設けられており、同様に、太陽ギア2の回転軸22に対して原則平行に延在している。
【0040】
これらの凹部23,24,25の詳細は、
図2及び3に示されている。
図3は、各凹部のボアはマルチに増大するが、ここでは2段階刻みで設計されている。貫通式のボアホールは、第一の直径がばね要素11,12,13の第二の棒状端部20直径より小さい、第二遊星キャリア4に設けられる。この貫通式のボアホールは、太陽ギア2の回転軸22に対して略平行に延在し、第一増大部29からより大きな第二直径へと、直径を広げて設けられている。第二の直径は、ばね要素11,12,13の各々の第二端部20の直径と同等の大きさであり、この第二直径を有する部分にて、ばね要素11,12,13のポジティブ嵌合が形成される。プレス嵌合も選択的に用いることができる。第一直径を有する部分と第二直径を有する部分との間に形成される第一増大部29は、それぞれのばね要素11,12,13の第二端部20側を支持するよう提供される。ボアホールはさらに、ボアの直径が第三直径に拡大する、二度目の増大部である第二増大部30を具える。第三直径は最大径であり、第三直径には、該第三直径部分の断面においてばね要素11,12,13の各々とボアホールとの間に間隙が生じる大きさが選択される。
【0041】
ばね要素11,12,13を組み立てる間、ばね要素11,12,13の第二端部20が面し、支持される第一増大部29に、好ましくは接着剤が適用される。これは、第一増大部29へ接着力を負荷することによって、ばね要素11,12,13の表面を固定するためである。遊星キャリア4に延在する貫通式のボアホールは換気口となり、ばね要素11,12,13の第二端部20の表面側と遊星キャリア4を組み立てる際の外気との均圧を可能にし、また第一増大部29の領域に接着剤の最適な硬化をもたらすことが可能となる。
【0042】
図2に特によく図示されるように、ばね要素11,12,13の第二端部30を受けるためのボアとして設けられた凹部23,24,25もまた、遊星キャリア4の第二の周円27の周りに、等角距離にて配列されている。凹部23,24,25の個々の縦軸間の相対的な距離は、ここでは120°である。また、さらに明らかなように、遊星ギア8,9,10の遊星回転軸上の周円26は、凹部23,24,25が配置される縦軸上の周円27と同心円であり、周円27の直径は周円26のそれより大きい。各凹部23,24,25は、隣接する2つのピン要素18の間に配列され、個々の凹部23,24,25の縦軸と、遊星ギア8,9,10のピン要素18との間の角距離は40°以上50°以であり、好ましくは44°である。本実施形態における角距離は44°である。
【0043】
遊星ギアユニット1の設計は、小型のギア用に最適化されてきた。小型のギアとは、その外径、特にリングギアの外径が40mm未満のものをいい、好ましくは32mm、22mm、16mm、13mm、6mmを超えないものをいう。
【0044】
遊星ギアユニット1は、相対的に配置された少なくとも2つの遊星ギア5〜10に荷重をかけることによって、当該遊星ギアユニット1におけるバックラッシュをほぼ完全に、又は完全に除去するよう設計されている。この少なくとも2つの遊星ギア5〜10は、太陽ギア及びリングギア16に接している。2つの遊星ギア5〜10は、ここでは遊星ギア5〜10の周方向に、反対向きに負荷されている。
【0045】
荷重が印加された組み立て状態において、第一遊星キャリア3に配列された遊星ギア5,6,7の歯面は、リングギア16及び太陽ギアの歯面の第一面に噛み合っている。同時に、第二遊星キャリア4に配列された遊星ギア8,9,10の歯面は、リングギア16及び太陽ギア2の歯面の第二面に噛み合っている。これは、リングギア16及び太陽ギア2の歯面の第一面の裏面に位置する。
【0046】
図1に示される本実施形態において、遊星ギア5,6,7は太陽ギア2及びリングギア16と噛み合っており、第二遊星ギアセット15の遊星ギア8,9,10も同様に、太陽ギア2及びリングギア16と噛み合っている。
【0047】
図1に関して説明される、ばね要素11,12,13が第一の遊星キャリア3と一体的に形成された実施形態に代わって、ばね要素11,12,13を第一遊星キャリア3とは別に形成することもできる。3つのばね要素11,12,13の第一端部の各々は、第一の遊星キャリア3のさらなる凹部において支持できる。この場合、それらの凹部は、上述した第二遊星キャリア4における凹部23,24,25と同様に形成される。また、ばね要素11,12,13の第一端部19は、当該ばね要素の第二端部が第二遊星キャリア4に取り付けられるよう、第一遊星キャリア3に取り付けられる。ばね要素11,12,13の第一端部19及び/又は第二端部20を、遊星キャリアの一方に他の方法で取り付けることも可能であり、例えば、ばね要素の一端を、遊星キャリア3,4の雌ねじに対するねじ接続とすることができる。
【0048】
スプリングバーとして設計されるばね要素11,12,13は、スチール製のものが応力の伝達には最適である。しかしながら、ばね要素11,12,13の機械的強度を増すために、硬質金属又は金属ガラス材料からなることも可能である。
【0049】
摩耗及び引き裂く力に耐えなければならない太陽ギア2は、硬化及び/又は軟窒したクロムモリブデン鋼及からなる。
【0050】
図示される第一遊星ギア段に加えて、遊星ギアユニット1に、さらなる遊星ギア段を一体化させることも可能である。
【0051】
図示されない他の実施形態において、遊星キャリア3,4のそれぞれに4つの遊星ギアを用いることも可能であり、この場合、隣接する遊星ギアの遊星回転軸間の角距離は、基本的に90°となる。第一遊星キャリア3及び第二遊星キャリア4のそれぞれに4つの遊星ギアを有する一実施形態では、第一及び第二遊星キャリア3,4を繋ぐ4つのばね要素を具え、当該バネ要素の各々は90°オフセットしている。各遊星キャリア3,4における4つの遊星ギア及び4つのばね要素は、上述した各遊星キャリア3,4における3つの遊星ギア5〜10と同様の方法で設計され、支持されている。その結果、遊星キャリア3,4の隣接する2つの遊星ギア間に、1つのばね要素が固定される。
【0052】
遊星ギアユニット1を組み立て、遊星キャリア3,4を遊星ギア5〜10と同様に互いに負荷するために、各遊星ギア5〜10はまず、ピン要素17,18に取り付けられる。その結果、第一遊星キャリア3のばね要素11,12,13が、第二遊星キャリア4の凹部23,24,25に挿入される。太陽ギア2及びリングギア16は、それから2つの遊星キャリア3,4の遊星ギア5〜10に係合される。まず、第一遊星ギアセット14を太陽ギア2と動作可能に係合し、それから第二遊星キャリア4に一定のトルクを印加することによって、第二遊星キャリア4を第一遊星キャリア3に対し相対的な向きとし、ばね要素11,12,13を変形させ、これらによって荷重を印加する第一遊星ギアセット14の歯が、第二遊星ギアセット15の歯と一直線上に並ぶ場合、第二遊星ギアセット15をリングギア16及び太陽ギア2の歯にも押し付けて、これら2つのギア2,16とも噛み合うことができる。