(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6283518
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】スイッチ
(51)【国際特許分類】
H01H 21/00 20060101AFI20180208BHJP
【FI】
H01H21/00 330G
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-106(P2014-106)
(22)【出願日】2014年1月6日
(65)【公開番号】特開2015-130236(P2015-130236A)
(43)【公開日】2015年7月16日
【審査請求日】2016年12月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000131430
【氏名又は名称】シチズン電子株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097043
【弁理士】
【氏名又は名称】浅川 哲
(72)【発明者】
【氏名】天野 豊彦
(72)【発明者】
【氏名】三浦 充紀
(72)【発明者】
【氏名】宮下 功
【審査官】
片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭58−165220(JP,A)
【文献】
実開昭59−141631(JP,U)
【文献】
特開平09−069324(JP,A)
【文献】
実開昭62−116410(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電パターンが形成された基板と、該基板上に配置されたドーム状の金属バネとを備えたスイッチであって、
前記金属バネの上方に配置された押圧部と、前記金属バネの中心部からオフセットされた位置にある一端及び他端にそれぞれ設けられた支点部及び操作部とを有し、前記操作部を押圧することにより前記押圧部が前記金属バネの中心部を押圧するプランジャと、
該プランジャの支点部に係合し、前記プランジャの支点部を支点として前記プランジャを上下に回動可能に支持するケースと、を備え、
前記基板は前記プランジャの一部が機器構造物に重なるように機器内基板に実装されることを特徴とするスイッチ。
【請求項2】
導電パターンが形成された基板と、該基板上に配置されたドーム状の金属バネとを備えたスイッチであって、
前記金属バネの上方に配置された押圧部と、前記金属バネの中心部からオフセットされた位置にある一端及び他端にそれぞれ設けられた支点部及び操作部とを有し、前記操作部を押圧することにより前記押圧部が前記金属バネの中心部を押圧するプランジャと、
該プランジャの支点部に係合し、前記プランジャの支点部を支点として前記プランジャを上下に回動可能に支持するケースと、を備え、
前記プランジャは、前記支点部の側方に突出するストッパ部を有し、
前記ケースは、少なくとも前記プランジャの操作部が突出する切欠部と、前記プランジャのストッパ部に係合する前記切欠部の側縁壁と、前記側縁壁の下端から前記基板の表面に沿って伸びる接着部と、を有することを特徴とするスイッチ。
【請求項3】
前記プランジャは、前記支点部の側方に突出するストッパ部を有し、
前記ケースは、少なくとも前記プランジャの操作部が突出する切欠部と、前記プランジャのストッパ部に係合する前記切欠部の側縁壁とを有する請求項1に記載のスイッチ。
【請求項4】
前記操作部は、金属バネに対面する下面側に先端に向かって上昇する斜面を有し、前記操作部を押圧することにより前記押圧部が前記金属バネの中心部を押圧する際には、斜面が金属バネに触れてない請求項1又は2に記載のスイッチ。
【請求項5】
前記基板は前記プランジャの一部が機器構造物に重なるように機器内基板に実装される請求項2に記載のスイッチ。
【請求項6】
前記ケースは、前記側縁壁の下端から前記基板の表面に沿って伸びる接着部を有する請求項1に記載のスイッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上方から押圧操作する上面押しタイプのスイッチに関するものであり、特にその中心部からオフセットした位置で操作することが可能なものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の上面押しスイッチは、
図5及び
図6に示すように、端子部1a及び導電パターン1bが形成された基板1と、この基板1上に配置されたドーム状の金属バネ2とを備えており、金属バネ2を囲うように基板1上に固着されて基板1と一体となる接着シート3によって金属バネ2を覆う防水シート4を固着し、金属バネ2の中心部に対応するように防水シート4上にアクチュエータ5を取り付けた構造を有するものであった。
【0003】
このスイッチの場合、スイッチ中央に配置されたアクチュエータ5を押圧操作しなければならないため、このスイッチを組み込む携帯電話、パソコン等の機器における表示装置等の機器構造物がスイッチの上に重ならないように機器内基板に実装することが必要であった。このため、平面方向から見て、機器構造物とスイッチが重ならないように並ぶことになり、スイッチ分だけ外形が大きくなるという問題があった。
【0004】
そこで、
図7に示すように、基板6上に設けられた凸状の絶縁ゴム等の弾性部材7を押圧中心点が偏心した押ボタン8で押圧するように構成した押ボタン装置が提案されていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭62−116410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の押ボタン装置では、L形状の押ボタン8を真っ直ぐ下に押し込んだとしても、弾性部材7の中央に対して斜めに押圧力が作用することになる。このため、この装置では、弾性部材7にリブ状の支持片9aを設けて対応しているが、支持片9aを設けることで弾性部材7が反転し難くなり、精度良く確実に弾性部材7を変形させるには十分なものではなかった。
【0007】
また、押圧中心点が偏心している押ボタン8は、傾いたり斜めに押し込まれる可能性があり、これを防ぐため、ガイド部材9bなどで押ボタン8をガイドする構造が必要になる。このため、この押ボタン装置を組み込む機器の構造を押ボタン装置に合わせて変更しなければならなかった。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、上記従来技術の問題点を解決し、中心部からオフセットした位置で安定した操作が可能であり、表示装置等の機器構造物と一部が重なるように配置することが可能なスイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のスイッチは、導電パターンが形成された基板と、該基板上に配置されたドーム状の金属バネとを備えたスイッチであって、前記金属バネの上方に配置された押圧部と、前記金属バネの中心部からオフセットされた位置にある一端及び他端にそれぞれ設けられた支点部及び操作部とを有し、前記操作部を押圧することにより前記押圧部が前記金属バネの中心部を押圧するプランジャと、該プランジャの支点部に係合し、前記プランジャの支点部を支点として前記プランジャを上下に回動可能に支持するケースと、を備えている。
【0010】
また、このスイッチにおける前記プランジャは、前記支点部の側方に突出するストッパ部を有し、前記ケースは、少なくとも前記プランジャの操作部が突出する切欠部と、前記プランジャのストッパ部に係合する前記切欠部の側縁壁とを有している。また、前記基板は前記プランジャの一部が機器構造物に重なるように機器内基板に実装される。更に、前記ケースは、前記側縁壁の下端から前記基板の表面に沿って伸びる接着部を有している。
【発明の効果】
【0011】
本発明のスイッチでは、基板上の金属バネを押圧するプランジャと、それを支持するケースとを設けている。プランジャは、ドーム状の金属バネの上方にある押圧部と、金属バネの中心部からオフセットされた位置にある一端と他端にそれぞれ支点部と操作部とを有している。ケースはプランジャの支点部に係合し、プランジャをその支点部を支点として上下に回動可能に支持している。このように、本発明のスイッチでは、金属バネの中心部からオフセットされたプランジャの操作部を操作しても、常に金属バネの中心部がプランジャの押圧部により押圧されることになる。このため、操作位置をオフセットしても、安定した操作が可能となる。
【0012】
また、プランジャは基板に固着されたケースによって支持されており、その動作も安定しているので、スイッチを組み込む機器にプランジャのガイド等を設ける必要がない。従って、本発明のスイッチは、スイッチ単体でオフセット位置の操作が可能であり、組み込む機器の構造設計の自由度を高めることができる。
【0013】
また、本発明のスイッチは、このスイッチを組み込む機器の表示装置、筐体等の機器構造物が、スイッチの上方に部分的に重なるように配置することができるので、機器の外形が大きくなることを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係るスイッチを示す斜視図である。
【
図4】
図1に示すスイッチを機器に組み込んだ状態の一例を示す要部断面図である。
【
図5】従来の上面押しスイッチを示す斜視図である。
【
図7】中央からオフセットした位置での操作が可能な従来のスイッチを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本実施形態におけるスイッチは、
図1乃至
図3に示すように、端子部10aと導電パターン10bが形成された基板10と、この基板10上に配置されたドーム状の金属バネ11と、この金属バネ11の上方に配置されたプランジャ12と、このプランジャ12を支持するケース13とを備えている。
【0016】
基板10は絶縁性を有する樹脂等からなり、側面から底面にスルーホール等の実装用の端子部10aが形成され、表面の所定位置には接点となる導電パターン10bが設けられている。また、本実施形態における基板10は、その表面に接着シート14が接着されて基板10の一部をなすように一体化されている。この接着シート14は、その中央に金属バネ11に適応する円形の孔14aを有し、この孔14a内に金属バネ11が収められることで金属バネ11を囲うものとなっている。
【0017】
金属バネ11は、上方から中心部を押圧することにより弾性的に反転するタクトバネ等からなるものであり、可動接点を構成している。
【0018】
また、本実施形態においては、金属バネ11を上方から保持し、水、埃等の浸入を防ぐため、金属バネ11を覆うように接着シート14の上面に防水シート15を固着している。
【0019】
本実施形態におけるプランジャ12は、樹脂成形板等からなり、金属バネ11の上方に位置する中央の押圧部12aと、金属バネ11の中心部からオフセットされた位置にある前後方向(
図2における左右方向、
図3における下上方向)の一端及び他端にそれぞれ設けられた支点部12b及び操作部12cと、を有している。押圧部12aは、金属バネ11に対面する底面に凸部12dを有し、この凸部12dの頂部が金属バネ11の中心部に当接するように位置付けられている。また、支点部12bは、押圧部12aの凸部12dが金属バネ11に当接した状態において、その上面がケース13の上壁13dの内面に係合するように形成されている。押圧部12aの上面は支点部12bの上面より段差12gによって一段高く形成され、ケース13の後述する切欠部13a内に適合するものとなっている。また、操作部12cは、その上面が押圧部12aの上面より更に段差12hによって一段高く形成されており、金属バネ11に対面する下面側には先端に向かって上昇する斜面12fが形成されている。
【0020】
また、このプランジャ12には、支点部12bの側方に突出する一対のストッパ部12eが設けられており、ケース13の後述する切欠部13aの左右の側縁壁13bにそれぞれ係合するものとなっている。
【0021】
ケース13は金属等からなり、少なくともプランジャ12の支点部12bと、一対のストッパ部12eを上方から覆う下方が開口した略箱状をなすものであり、本実施形態では、プランジャ12の押圧部12aと操作部12cが突出する切欠部13aが上面から前方の側面にかけて設けられている。
【0022】
プランジャ12の押圧部12aは、ケース13の切欠部13aに適合する状態で突出するため、切欠部13aの内側面に接触して左右及び後方への位置決めがなされる。また、プランジャ12は、ケース13の前方の側壁、即ち切欠部13aの左右の側縁壁13bがプランジャ12の各ストッパ部12eに係合することで、前方への位置決めがなされている。
【0023】
また、ケース13には、その側縁壁13bの下端から基板10の表面に沿って前方に伸びる接着部13cが設けられている。この接着部13cは、防水シート15を介して接着シート14の上面にケース13を接着する際に、外周部分だけでなく、その接着面積を広げてより強固にケース13を接着するために設けられている。この接着部13cの先端部分は金属バネ11やプランジャ12の操作部12cに重ならない程度に延伸されている。
【0024】
次に、上記構成からなるスイッチの動作を
図4に基づいて説明する。このスイッチにおけるプランジャ12は、金属バネ11の中心部からオフセットされた操作部12cを上から押圧すると、支点部12bがケース13の上壁13dに係合しているため、ここを支点として回動し、その押圧部12aが下降してその凸部12dが金属バネ11の中心部を押圧して金属バネ11を反転させる。なお、このときに、操作部12cは、その斜面12fにより金属バネ11に触れることなく下降することになる。
【0025】
その後、操作部12cの押圧を止めると、押圧部12aは金属バネ11の弾性復元によって押し戻されて元の状態に戻る。
【0026】
このスイッチは、プランジャ12の操作部12cが金属バネ11の中心部からオフセットされているので、
図4に示すように、このスイッチを組み込む機器における表示装置等の機器構造物16の下に重なるように位置付けて機器内基板17に実装することができる。この場合、少なくともプランジャ12の操作部12cが機器構造物16に重ならないように位置付ければ、スイッチ操作が可能となる。従って、スイッチと機器構造物16とが全く重ならないように配置した場合に比べて、機器の外形を大幅に小型化することが可能となる。
【0027】
なお、プランジャ12の操作部12cの押圧操作は、直接押圧操作しても良いし、
図4に示すように、棒状の押圧部材18を用いて押圧操作しても良い。この押圧部材18を用いた場合、このスイッチにおけるプランジャ12がケース13によって精度よく位置決めされた状態で上下に回動するため、仮に押圧部材18が傾いて斜めに操作部12cを押圧しても、プランジャ12は精度良く回動して金属バネ11の中心部を押圧することになる。このため、プランジャ12や押圧部材18をガイドする構造を機器側に設ける必要がなく、機器の構造設計の自由度を高めることができる。
【符号の説明】
【0028】
10 基板
11 金属バネ
12 プランジャ
12a 押圧部
12b 支持部
12c 操作部
12d 凸部
12e ストッパ部
12f 斜面
12g,12h 段差
13 ケース
13a 切欠部
13b 側縁壁
13c 接着部
13d 上壁
14 接着シート
15 防水シート
16 機器構造物
17 機器内基板
18 押圧部材